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  • HRC 渡辺康治社長 インタビュー「ホンダはF1なしでは生きられない」

    HRC 渡辺康治社長 インタビュー「ホンダはF1なしでは生きられない」

    なぜ今、ホンダは再びF1に戻るのか。その問いに対し、ホンダ・レーシング・コーポレーション(HRC)社長の渡辺康治は、迷いなくこう語る――「ホンダはF1なしでは生きられない」。

    2026年、新しいパワーユニット規則のもとで始まるF1の次の時代。アストンマーティンとのワークスパートナーシップ、電動化とサステナブル燃料への本格移行、そして“勝つため”に築かれるワンチームの哲学。

    そのすべてを、さくらからシルバーストーンへと続く率直なUNDERCUTインタビューシリーズの最新回として行われた1時間のインタビューの中で、渡辺康治が明かした。

    17:27。

    平日のこの時間、多くの人々は仕事を終え、ログオフし始める頃だ。

    だが、渡辺康治は“多くの人”ではないし、モータースポーツも“多くの産業”とは違う。さくらを拠点にし、約9500km離れ、9時間の時差があるF1チームとワークスパートナーシップを進めていると理解すれば、彼の仕事が決して9時〜17時で収まらないのは当然だ。

    ちょうど彼は、アストンマーティンのエグゼクティブ・チェアマンであるローレンス・ストロールとの電話を終えたところで、このUNDERCUTインタビューが終わると、19時からはエイドリアン・ニューウェイとの“典型的な『激しい電話』”が控えており、その後にはアンディ・コーウェルとの通話も続く。

    ストロール、ニューウェイ、コーウェルという面々の間にこのUNDERCUTインタビューが挟まれていると考えると、渡辺氏の火曜夕方の通話リストの中では少し“地味”に思えるかもしれないが、彼はこの率直なインタビューシリーズの熱心な読者であることをすぐに強調する。

    40年に近いキャリアの中で彼はホンダとともに世界各地を飛び回り、ヨーロッパ、アメリカ、中国での役職も務めてきた。自動車事業、コミュニケーション、モータースポーツ、さらには企業の最上層部での職務も経験してきた。現在、彼はHRCを率い、MotoGPからインディカー、そして今ではアストンマーティン・アラムコ・フォーミュラワン・チームとの本格的なワークスパートナーとしてのF1復帰まで、世界中のモータースポーツ活動を統括している。

    新しいパワーユニット規定はホンダにとって大きなチャンスだ。なぜなら、F1は、そして過去においても、ホンダにとって決して“マーケティング主導”の活動ではなかったからだ。F1は実験室である。ホンダがその実力を試し、開発技術を研ぎ澄まし、エンジニアたちに挑戦させる場だ。それは回転扉のようなものであり、ホンダの技術力をモータースポーツの頂点に投入すると同時に、そこで得た知識と経験を社内に持ち帰り、ホンダ全体を強くする。競争という坩堝は、アイデアを試す“試験場”であると同時に、才能を磨く“仕上げの学校”でもある…。そして、我々は2026年のF1マシンのエンジンカウルにあの有名なホンダのロゴを掲げられることを、心から誇りに思っている。

    だが、これは誇りだけの話ではない。非常にワクワクする話なのだ――もっとも、そのワクワクには“期待”という重みが加わっている。賭け金は大きく、期待値は途方もなく高い。冷静な判断と豊富な経験が求められる局面であり、我々の味方として渡辺康治以上にふさわしい人物はいない。ここでは、彼が語ったことを紹介する――。

    渡辺さん、あなたはF1からインディカー、MotoGPまで、モータースポーツ界で広く知られた存在です。ただ、ここまで到達された背景――あなたを突き動かし、インスピレーションを与えているものは何でしょうか?
    私はモータースポーツが大好きです。情熱があります――そして幸運なことに、これはホンダの哲学と非常に合致しています。“挑戦の哲学”です。高いハードルに挑むこと。これはレースにおいて重要であると同時に、ホンダという会社の特徴でもあります。挑戦し、高い目標に向かって進むことが、常に会社を前進させてきました。これは会社の全員、そしてもちろん私自身をも鼓舞する精神です。

    次に技術です。モータースポーツは技術の戦場です。激しく、容赦がありません。技術を向上させる素晴らしい舞台であると同時に、私たち自身のエンジニアを育て、彼らの才能を最大限に引き出し、さらに高いスキルのレベルへと引き上げる場でもあります。

    そして最後に、“喜び”があります。レースをすることは…本当に楽しいです。ファンの皆さんとモータースポーツへの情熱や、走ることの楽しさを共有できるというのは、非常に特別なことです。

    では、なぜ“今”がホンダにとって、F1における次の章をパワーユニットメーカーとして始める正しいタイミングなのでしょうか? 2026年のレギュレーションの何が、ホンダを再びF1へ引き戻したのですか?
    ホンダは、おそらくF1なしでは生きられない会社です。ただ、技術という観点で申し上げると、2026年のパワーユニット規則の変更は、ホンダがF1へ復帰する決断をするうえで非常に重要な要因でした。

    この規則では、内燃機関(ICE)と電動モーターの出力配分が50:50になることが求められ、後者――つまり電動モーターの出力は120kWから350kWへと、ほぼ3倍に引き上げられます。

    さらに、先進的な持続可能燃料(サステナブル燃料)の使用が必須になりますので、これはホンダの将来の推進システムに関する哲学と強く一致するものです。

    そして、これは我々の事業の方向性とも合致しています。モータースポーツの頂点は、技術を磨き、技術的能力を向上させ、ホンダのすべてを世界に示すことができる舞台です。これはホンダの将来にとって非常に重要なことです。

    本田技研工業

    では、なぜアストンマーティン・アラムコなのでしょうか? ホンダが次のF1時代のパートナーとして、このチームが“正しい相手”だと確信した理由は何ですか?
    私たちは、パートナー選びには常に慎重です。今回のケースでは、アストンマーティンのリーダーシップ、そしてローレンス・ストロール会長の情熱とビジョンに非常に感銘を受けました。彼は非常に競争心が強く、常に“勝つ”という視点を持っています。とても印象的です。

    AMRテクノロジーキャンパスの新しい施設を見れば、その勝ちたいという思いが表れていますし、ここ数年で経験豊富な人材を迎え入れて組織が強化されてきたことからも、その意志を強く感じます。チームのコミットメントと集中力は非常に強く、そこが私たちにとって非常に魅力的でした。ワクワクする要素でもあります。

    ホンダのエンジニアたちは、アストンマーティン・アラムコ側のエンジニアとどれくらい密接に協力しているのでしょうか? 世界をまたぐ連携はどのように機能しているのですか?
    両者のエンジニア同士の関係は、現在すでに非常に強いものですが、プロジェクトが進めば進むほど、さらに深まり、密度が増していくと期待しています。

    スタート地点で我々に共通していたのは“勝利への精神”です。そして、ローレンスをはじめ、AMRテクノロジーキャンパスのリーダーシップ陣と話すと、常に“ワンチーム”であるという感覚がありました。これは非常に重要なことです。“One Team”の哲学です。

    現在、アストンマーティン・アラムコのエンジニアが日本のHRCさくらに駐在しており、HRCのエンジニアもシルバーストーンのAMRテクノロジーキャンパスにいます。
    私たちは非常に密接に連携しており、両組織の間では膨大な量の知識と経験が行き交っています。

    では、時差の問題はどうでしょうか? さくらとシルバーストーンは9時間の差があります。
    これは逆に、我々の強みにできる部分だと思っています。日本が働いているとき、イギリスは眠っていて、イギリスが働いているとき、日本は眠っている。つまり、このプロジェクトは24時間動き続けるということです。誰かが出社すれば、もう片方のチームから新しい結果やデータが届いている――そんな形で前に進んでいます。

    ニューウェイがアストンマーティン・アラムコに加入した後の最初の会議では、皆で大笑いしたそうですね。また一緒ですね!という雰囲気だったとか。彼との再会は嬉しいものでしたか? そして、彼が2026年マシンのシャシーを担当することで、PU開発の後半にも影響が出ているのでしょうか?
    彼が加入して最初の会議では、本当にたくさん笑いました。“ああ、またこうして一緒に仕事をするんですね!”という感じでした。彼がチームにいることは本当にエキサイティングですし、もちろん彼の能力に対する尊敬の念は非常に大きいです。

    パワーユニットの開発に関しては、私たちには我々のプロセスとスケジュールがありますし、エイドリアンも初日からシャシー側で同じように“勝てるものを作る”ために仕事をしています。
    ですので、その2つが交わる部分では非常に密にコミュニケーションを取りながら進めています。

    では、エイドリアン・ニューウェイとの議論はどのようなものなのでしょうか?
    エイドリアンとは頻繁に連絡を取り合っていますし、やり取りはいつもかなり“濃い”ものになります。意見や提案、フィードバックの交換が続きます――ただし、その目的は常に“勝つため”です。

    私たちが技術的な議論をしているとき、それが部品のディテールに関することでも、競合分析でも、人材をどうマネジメントして最大限に力を引き出すかでも、あるいはコストキャップの中でどう最適化するのかでも、話題は何であれ、議論の焦点は“どう勝つか”にあります。

    つまり、最終的には常に“勝つこと”に行き着くということでしょうか? 勝つことこそが唯一の重要な要素なのですか?
    焦点が常に“勝つこと”に向いているのは確かですが、もう一つ付け加えたいことがあります。

    以前のUNDERCUTインタビューで、エイドリアンが“これはすべて人の話である”という哲学を説明していましたが、私はこの考え方に完全に同意しています。

    F1は“人のスポーツ”です。私たちは技術や開発について多く話しますが、そのすべては人のアイデアや情熱、努力から生まれます。これはホンダにとっても絶対に当てはまることです。

    ホンダ F1 アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

    エイドリアン・ニューウェイは複数のワールドチャンピオンシップを獲得し、ホンダも同じです。しかし、アストンマーティン・アラムコはまだタイトルを獲得していません。ホンダは、初めて世界選手権獲得を目指すチームに、どんな“学び”を提供しているのでしょうか?
    すべては“ワンチームであること”に戻ると思います。パートナーを信頼し、尊重しながら、共に改善を続けることが重要です。

    ホンダはこれまで何十年にもわたり、さまざまなチームにエンジンやパワーユニットを供給してきました。非常に良い結果が得られた日や年もあれば、結果が振るわなかった日や年もあります。

    どんな結果が出たとしても、“一つのチームであり続けること”が重要です。

    F1は…とても厳しい世界です。望んでいた結果が得られないときには、改善するのが難しいこともあります。

    しかし、それでもパートナーとの信頼関係と尊重の姿勢を維持することは絶対に不可欠です。

    全く新しいパワーユニット規則は、F1にとって大きな転換点となります。ホンダにとっての最大の課題とチャンスは何ですか?
    新しいパワーユニットでは、MGU-H――排気ガスの熱エネルギーを電気エネルギーに変換する要素――が廃止されます。これは“ターボラグ”という新しい課題を扱わなければならないことを意味します。

    もう一つの課題は、電動モーターの出力を3倍にしながら、エナジーストア(バッテリー)の容量はほとんど変わらないことです。ここで鍵になるのは、“エネルギーマネジメントをいかに効率化するか”です。これが新レギュレーションで最も難しい技術課題です。

    F1の新時代において決定的な要素となるのは“効率”です。ホンダは世界で最も進んだバッテリー技術を持っていると自負していますので、この強みを生かすと同時に、エネルギーマネジメント性能をさらに高める必要があります。

    また、2026年からはパワーユニットのコストキャップも導入され、年間1億3000万ドルで、パワーユニットの設計・製造・供給に関わるすべてのコストが対象になります。これは非常に重要なテーマであり、大きな技術変化が起こるタイミングで導入されるという点でも大きな転換となります。

    私は、これらの課題に十分に対応できると確信しています。ホンダは1964年からF1で経験を積み続けてきましたし、アストンマーティン・アラムコと“ワンチーム”として協力していけば、新時代のF1でも非常に競争力を発揮できると信じています。

    50:50の出力配分は、F1にとって大きな変化です。これはマシンにどんな影響を与えるのでしょうか?
    出力をICEと電力の50:50にするということは、より多くの電力を発電・蓄電しなければならないということになりますが、それだけでなく、“どこで、どのくらい使うか”を管理する必要があります。

    これは新しい話ではありません。現在のパワーユニットでも、どこでエネルギーを回生し、どこで展開するかは慎重に管理されています。ただし、2026年ではこれがより重要になります。

    コーナーごとにエネルギーの使い方が異なり、1つのサーキットで何千通りものエネルギー使用パターンが存在します。HRCでは、2万以上のデータパラメータを扱いながら、最適なエネルギー使用パターンを決めるためのソフトウェアを独自に開発しています。

    これは一般的にあまり注目される作業ではありませんが、現代のF1ではテスト走行の機会が限られているため、こうしたデジタル技術やシミュレーションは極めて重要です。特に2026年では、電力量が増えることでエネルギー回生と展開の管理が複雑になりますので、これはプロジェクトの中でも最も重要な技術課題の一つです。

    1チームのみにパワーユニットを供給することは、開発のためのデータ量という点で不利になる可能性はありますか?
    将来的にカスタマーチームへの供給を検討する可能性はありますか?

    現時点では、他チームへの供給は考えていません。私たちはアストンマーティン・アラムコと“勝つこと”に集中したいと思っています。

    もちろん、将来的に複数チームへ供給することでメリットがあると判断される場合には、検討の余地はあります。

    少し前の話題になりますが、2026年に導入される“先進的サステナブル燃料”について触れられました。この変更はどれほど重要なものなのでしょうか?また、ホンダとアラムコは、AMR26のための燃料ブレンドをどのように共同開発しているのですか?
    100%の先進的サステナブル燃料へ移行することは、F1にとって重要であるだけでなく、より広い意味で“持続可能な世界”を実現する上でも大きな意味があります。乗用車をグローバルに製造している企業として、カーボンニュートラリティの達成はホンダにとって非常に重要な課題です。

    私たちはアストンマーティン・アラムコとの技術協力契約に加えて、アラムコ、バルボリンとも契約を結んでおり、先進的なサステナブル燃料だけでなく、先進的な潤滑油についても非常に緊密に共同開発を行っています。ここでも、アンディ・コーウェルが新しいチーフ・ストラテジー・オフィサーとして深く関与しています。

    ホンダは長年のレース用燃料・潤滑油開発で蓄積してきた知見を共有しつつ、非常に進んだ技術の開発をともに進めています。

    AMR26の発表が2月9日に迫っています。2026年にアストンマーティン・アラムコとホンダがともに走り出す姿をファンが初めて目にするその瞬間、
    どんな気持ちを感じてもらいたいと思いますか?

    ファンの皆さんには、“本当に新しい時代が始まる瞬間だ”と感じていただきたいです。

    私たち全員がこのスタートに非常にワクワクしていますし、最初にマシンがコースへ出ていく瞬間こそ、その喜びと興奮を皆さんと共有できる時だと思っています。

    そして、あなたにとって2026年の“成功”の定義とは何ですか?どのようなシーズンになれば成功だったと言えるのでしょうか?
    “成功の定義”…これは、私にとって2026年が、アストンマーティン・アラムコとホンダの間で築いてきたパートナーシップが、計画どおりに“一つの統合されたチーム”として機能していると確認できる年であることだと思っています。

    そして、私たち自身が掲げた価値観を実現し、パフォーマンス目標を達成できることです。

    ただし、私たちが予測できないこと――それは“競争相手がどんな状態か”という点です。それが分からない段階では、シーズンの結果について、内部目標以上のことを語ることはできません。

    もちろん長期的には、このパートナーシップの究極の目標、そして私たちが考える“成功”とは世界選手権を獲得することです。

    これは長期的な視点で取り組むべきものです。アストンマーティン・アラムコとの関係は、単なる技術的協業を超え、“共通のビジョンを共有する関係”へと進んでいます。

    AMRテクノロジーキャンパスには大きな情熱があり、同時に非常に高いクオリティがあります。

    そしてそこにホンダの開発力と、勝てるパワーユニットを提供する能力が合わされば、2026年だけでなく、27年、28年、そしてその先でも成功を収められる可能性があります。

    私たちは今、“とても特別なものの始まり”に立っているのだと思います。

    2026年F1パワーユニット構築のための6ステップガイド――HRC社長・渡辺康治に、そのプロセスを分解してもらいました:
    2026年のパワーユニットは、1.6リッターV6の内燃機関(ICE)を中心に、ターボチャージャー、そしてブレーキングから運動エネルギーを回収・再利用するモーター・ジェネレーター・ユニット(MGU-K)で構成されます。またエナジーストア――つまりバッテリー――と、コントロールエレクトロニクスも含まれます。

    目標は、パワーユニットの熱効率(燃料に含まれる総エネルギーに対して“有効な仕事”として変換される割合)を50%程度にすることです。これは、現在の市販車よりも高い値です。

  • ホンダ、2026年F1パワーユニット遅延説を一蹴「実走確認段階に入っている」

    ホンダ、2026年F1パワーユニット遅延説を一蹴「実走確認段階に入っている」

    ホンダは、元アルピーヌF1代表マルチン・ブドコウスキーが最近広めた「ホンダの2026年型パワーユニットが遅れている」との噂を明確に否定した。両者は、2026年に向けた公式バルセロナテストに全面的に参加することを確認している。

    ホンダの渡辺康治CEOは、開発状況について「完全なパワーユニットはすでにAMR26に搭載されており、実走確認段階に入っています。すべてが順調に進めば、この仕様を量産段階に持ち込む予定です」と語った。

    また、フェルナンド・アロンソも遅延説を一蹴し、1月に予定されているテストに向けて、すでにシート合わせの日程や渡航手配が組まれていることを明かしている。

    こうした公式コメントにより、アストンマーティン=ホンダの2026年プロジェクトが計画通り進行していることが改めて強調された形だ。

    ホンダ F1 本田技研工業

    2026年に向けた安心材料となった“エンジンサウンド”公開
    このタイミングでホンダは、2026年からアストンマーティンのF1マシンを駆動する次世代パワーユニットのエンジンサウンドも公開した。1.6リッターV6ターボのテストベンチ音声を短いクリップとして投稿し、アストンマーティンも公式SNSでこれを共有している。

    映像は一切なく、音だけの公開だったが、その反応は極めて大きかった。回転数の上昇とともに鋭い咆哮が響き、素早いシフトダウンでは攻撃的なブリッピングとバブル音が重なる。機械的で切迫感のあるサウンドは、「2026年でもF1らしさは失われない」というメッセージを強く印象づけた。

    アストンマーティンのインスタグラムでは、数時間で20万件以上の「いいね」と2000件を超えるコメントが集まり、ファンからは安堵や興奮の声が相次いだ。

    電動化時代でも“音”は健在というメッセージ
    2026年からF1は電動比率を大きく高めた新パワーユニット規則へ移行する。そのため、エンジンサウンドが抑えられるのではないかという懸念が以前から広がっていた。

    ホンダの今回の音声公開は、そうした不安を和らげるものとなった。技術的な数値や設計の詳細は一切明かされなかったが、「音」そのものが、開発が順調であることと同時に、F1のキャラクターが継続されることを示している。

    2026年からアストンマーティンはホンダのワークスパートナーとして新時代を迎える。レッドブルとの成功の歴史を経て始まる次の章に向け、少なくとも現時点では、開発の遅れを示す兆候は見られない。

  • ホンダF1初優勝60周年を記念した特別モデルがカシオEDIFICEから登場

    ホンダF1初優勝60周年を記念した特別モデルがカシオEDIFICEから登場

    カシオ計算機は、腕時計ブランド「EDIFICE(エディフィス)」の新製品として、ホンダのF1初優勝60周年を記念したコラボレーションモデル「ECB-2300HR」を2026年3月に発売する。全国のEDIFICE取扱店舗およびカシオ公式オンラインストアにて、2026年3月1日から予約受付を開始し、同月中の展開を予定している。価格は6万6000円(税込)。

    本モデルは、1965年10月24日にF1メキシコGPでホンダが初優勝を飾ったマシン「RA272」をオマージュしたスペシャルモデルだ。

    RA272は、エルマノス・ロドリゲス・サーキットで行われた同レースにおいて、リッチー・ギンザーのドライブにより、F1参戦2年目にして歴史的な初勝利を挙げたマシンとして知られている。

    ホンダ F1 カシオEDIFICE

    外装デザインでは、RA272のボディカラーである「チャンピオンシップホワイト」の実車塗料を、手で触れられる外装パーツであるベゼルに初採用。実際のレーシングマシンと同じ塗料を使用することで、ホンダのレーシングスピリットを直接感じられる仕様とした。ダイヤル外周には鮮やかなレッドサークルを配置し、RA272の車体に描かれていた日の丸デザインを表現している。

    9時位置のインダイヤルは、RA272のタコメーターをモチーフにデザイン。針の形状やフォント、レッドゾーンのディテールに至るまで、実機の雰囲気を忠実に再現した。裏蓋には、ホンダのF1初優勝60周年を記念したオリジナルアニバーサリーロゴをレーザー刻印し、記念モデルならではの特別感を演出している。

    本田技研工業 F1

    また、ゴールドカラーのメタル遊環には、優勝直後に現地からホンダ本社へ打電されたメッセージ「Veni, Vidi, Vici.(来た、見た、勝った)」と、ギンザー車のカーナンバー「11」を刻印。剣先側バンドの裏面には、当時としては異例だった1.5リッターV型12気筒エンジンの図面をグラフィック化してあしらった。バンド素材にはナッパレザーとウルトラスエードを組み合わせ、質感と耐久性を両立させている。

    機能面では、太陽光や蛍光灯の光で駆動するタフソーラーを搭載するほか、Bluetooth®による自動時刻修正、ワールドタイム、スーパーイルミネーターなどを備え、日常使いにおいても高い実用性を確保した。

    ホンダF1の原点ともいえるRA272の栄光を現代に落とし込んだ「EDIFICE ECB-2300HR」は、モータースポーツファンやホンダファンにとって、節目の年を象徴する記念モデルとなりそうだ。

    ホンダ F1 本田技研工業

  • ホンダ、2026年F1パワーユニットのサウンドを初公開

    ホンダ、2026年F1パワーユニットのサウンドを初公開

    ホンダは、2026年F1シーズンに向けた自社パワーユニットのサウンドを、短い映像クリップとして公開した。日本の自動車メーカーは来季、アストンマーティンのワークスパワーユニットサプライヤーとして、F1にフルスケールで復帰する。

    ホンダは2021年末をもってF1から公式に撤退したが、その後もエンジンサポート契約を通じてレッドブルとの関係を継続してきた。この体制により、レッドブル・レーシングとレーシングブルズは2025年シーズン終了までホンダ製パワーユニットを使用している。

    しかし、2026年のF1レギュレーション刷新に伴い、レッドブルはフォードと協力した初の自社製パワーユニットへ移行する。それにより、ホンダは新たなパートナーとしてアストンマーティンと組むことになった。同チームはこれまでメルセデスのカスタマーチームだった。

    2026年型ホンダPUの第一印象
    金曜日、ホンダはソーシャルメディア上で、2026年仕様パワーユニットのサウンドを収めた短いクリップを投稿した。詳細な技術情報は明かされていないものの、新時代のF1を象徴する音として注目を集めている。

    この投稿は、ホンダが再びF1の最前線に戻ってくることを強く印象づけるものとなり、アストンマーティンとの新たなワークス体制が本格的に動き出していることを示している。

  • ホンダ × アストンマーティン:F1での戦略的パートナーシップの裏側

    ホンダ × アストンマーティン:F1での戦略的パートナーシップの裏側

    ホンダが2026年にF1へ本格復帰する決断を下した背景には、単にパワーユニット規則の変化だけでなく、「誰と戦うのか」という本質的な問いがあった。

    ホンダは挑戦する企業であり、その挑戦を“勝利”につなげるためには、技術力と姿勢、そして哲学の面で一致するパートナーが必要だった。その答えがアストンマーティン・アラムコだった。

    ホンダ・レーシング(HRC)の渡辺康治社長が明かした“ホンダ×アストンマーティン”戦略的パートナーシップの深層に迫る。

    ローレンス・ストロールとの出会い:ホンダを動かした“勝利への執念”
    アストンマーティンとの協業で最初に渡辺康治が強く惹かれたのは、ローレンス・ストロールの姿勢だったという。ストロールは数年前から、アストンマーティンをF1タイトル争いへ押し上げるべく莫大な投資を進め、最新設備の整ったAMRテクノロジーキャンパスを完成させ、経験豊富なエンジニアを次々と引き入れてきた。

    渡辺康治はストロールを“常に勝利を志向する人物”と表現する。

    「ローレンスさんは本当に勝つことにこだわる方です。ビジョンが明確で、言葉だけでなく行動も伴っている。その姿勢がとても印象的でした」

    ホンダは“勝つための復帰”を掲げていた。勝利への熱量が揃わなければ、ワークス体制でのパートナーシップは成立しない。アストンマーティンはその条件を満たすどころか、それを大きく超えるエネルギーを持っていた。

    2つの拠点が“1つのチーム”に変わる:さくら×シルバーストーンの24時間体制
    ホンダとアストンマーティンの関係を象徴するのが、さくらとシルバーストーンの間で構築された「24時間開発体制」だ。

    日本が昼なら、イギリスは夜。イギリスが昼になれば、日本は夜。

    両者の時差は、通常は障害となる。しかし渡辺康治は、この9時間の差を“強みに変えた”と語る。

    「誰かが出社すると、もう片方の拠点で新しいデータが生まれている。プロジェクトが24時間止まらず前に進むのです」

    アストンマーティンのエンジニアはさくらに常駐し、ホンダのエンジニアはシルバーストーンに常駐する。PUとシャシーの融合というF1最大の難題に取り組むために、両者は物理的な距離を越えて一体化している。

    この“ワンチーム化”こそが、ホンダがアストンマーティンを選んだ最大の理由のひとつでもあった。

    技術だけではない──理念の一致が生んだ協業
    技術的な親和性はもちろん重要だが、渡辺康治は“理念の一致”の方がより本質的だと語る。

    ホンダは挑戦、革新、そして勝利への意志を根幹に持つ企業。アストンマーティンもまた、徹底した勝利志向を掲げ、技術的な不足を埋めるために外部の知見を積極的に取り入れ、組織改革を進めていた。

    そのプロセスはホンダの哲学に非常に近い。

    「アストンマーティンは常に改善に向かって動き続けている。これはホンダと同じです」

    同じ方向を向いているパートナーだからこそ、大規模プロジェクトを“共に”進めることができる。

    アンディ・コーウェルという“橋渡し役”の存在
    アストンマーティンがPUサプライヤーとしてホンダを迎える上で大きな役割を果たしているのが、元メルセデスPU部門のトップであり、現在アストンマーティンのチーフ・ストラテジー・オフィサーを務めるアンディ・コーウェルだ。

    渡辺康治はコーウェルを“いつでも電話できる存在”と表現する。

    「アンディさんはPU開発の難しさをよく理解している方です。彼との議論はいつも非常に有益で、私たちの考えや技術の進捗を互いに共有する上で欠かせない存在です」

    PUとシャシーの境界線は曖昧であり、両者は“どちらかが正解を持っている”というものではない。だからこそ、PUとシャシーの視点を両方理解するコーウェルの介在は、ホンダ×アストン連携の大きな強みとなる。

    “ワンチーム”を実現したアストンマーティンの組織改革
    アストンマーティンはここ数年で劇的に組織を変化させ、大型投資によって設備を一新し、シャシー部門と空力部門を大幅に強化した。AMRテクノロジーキャンパスは従来のチーム体制を根本から変えるレベルのインフラとなり、ホンダとの共同開発に最適な環境を整えている。

    渡辺康治はこうした改革を「勝つために必要な姿勢」と評価している。

    「新しい施設に象徴されるように、アストンマーティンは成功を本気で追いかけています。その熱量が私たちを惹きつけたのです」

    ホンダがアストンマーティンを選んだのは、設備が立派だからではない。設備は“勝つための覚悟”を形にしたものであり、その覚悟にホンダは共鳴した。

    本田技研工業 F1 ホンダ

    技術連携の深まり:PU開発はホンダ、シャシーはアストン──だが境界線はない
    ホンダが担当するのはPUの開発であり、アストンマーティンはシャシー開発を担当する。しかし現代F1では、PUとシャシーは別々に作れば突然うまく機能するものではない。冷却要求、重量配分、空力パッケージ、電力回生ポイントなど、互いの設計が密接に絡み合う。

    そのため、ホンダとアストンは“境界線のない共同作業”を進めている。

    渡辺康治は「どこからがシャシーでどこからがPUという境界はありません。交差点が非常に多いのです」と語り、双方が一つのプロジェクトとして動いていることを明かす。

    こうした開発体制は、単なる供給関係ではなく、“共同で勝利を作る関係”へ進化している。

    ニューウェイの加入は“共同体”をさらに強固にした
    ニューウェイの加入は記事2で深掘りするが、本記事においてもパートナーシップの強度を示す象徴として触れておくことが自然だ。

    渡辺康治はニューウェイとの最初のミーティングを振り返り「また一緒に仕事ができますね、と皆で笑い合いました」と語る。
    両者にはレッドブル時代の付き合いがあり、PUとシャシーの融合という難題に取り組む上で、ニューウェイの存在は極めて心強い。

    アストンマーティンは、ホンダのPUを中心に据えたマシン作りができる人物を迎えた。
    ホンダにとっても、自らのPUを最大限に活かせる相手と組むことができた。

    この相互補完こそ、強いパートナーシップの証だ。

    “共同体”と呼べるレベルに達したホンダ×アストンの関係
    ホンダとアストンマーティンの関係は、単なるPU供給や技術協力では説明しきれない段階にある。両者の開発拠点は密接につながり、エンジニアは日常的に往来し、議論が深まり、価値観が共有され、そして“勝つ”という目標が同じ方向を向いている。

    渡辺康治はこう語る。

    「アストンマーティンには情熱があり、質の高い組織があり、勝つための環境があります。私たちホンダと同じ方向を向いて歩んでいるのが分かるのです」

    この発言は、パートナーシップという言葉を超え、“共同体”に近い関係が築かれつつあることを示している。

    総括:ホンダはなぜアストンマーティンと組むのか?
    答えは“勝つため”である

    ホンダがアストンマーティンを選んだ理由は明確だ。

    理念が一致し、組織が本気で勝利を目指し、技術的な補完関係が成立し、そしてPUとシャシーを一体で開発できる環境が整っていたからだ。

    挑戦する企業ホンダにとって、このパートナーシップは“復帰の必然”であり、“挑戦を勝利に変えるための選択”だった。

    ホンダとアストンマーティン。その関係は、もはやチームとサプライヤーではなく、“共に勝利を作りにいく存在”へと進化している。

  • エイドリアン・ニューウェイ 「ホンダF1エンジン統合に近い形で取り組める」

    エイドリアン・ニューウェイ 「ホンダF1エンジン統合に近い形で取り組める」

    アストンマーティンにおけるエイドリアン・ニューウェイの存在感が、一気に強まっている。カタールに続きアブダビにも姿を見せ、2026年の新レギュレーション導入に向けてフルスピードで動き出したことを示す明確なサインと受け止められている。

    今季、レース現場に姿を見せたのは1戦のみだったにもかかわらず、ここにきて常駐に近い形へ変化。その理由は率直だ。ニューウェイ以前の体制で設計された今季マシンは期待外れであり、新時代に向けて彼の直接指揮が不可欠だという判断である。

    「今年のクルマはみんなにとって失望だった。ドライブするのも、セットアップするのも難しかった」とニューウェイはアブダビでDAZNに語った。

    来季、すべてが変わる。アストンマーティンはニューウェイが全面的に指揮した初のシャシーを投入し、ホンダのワークスPU、そしてチーム史上初となる自社製ギアボックスを搭載する。統合作業の規模があまりに大きいため、ニューウェイはアンディ・コーウェルに代わってチーム代表を兼務することになった。

    「アンディは非常に寛大にその部分を任せてくれた。来年の複雑なパワーユニット、ホンダとアラムコと我々の統合を考えると、すべてが完璧に調整される必要があると気づいたんだ。細かい部分が抜け落ち始めることを彼は心配していた」とニューウェイは説明した。

    パドック内には、“チーム運営”がニューウェイの技術的才能を妨げるのではという懸念もある。しかし本人はそれを一蹴する。

    「主な違いはメディア対応と、いくつかの細かいことだけで、それ以外はほとんど変わらない」と述べている。

    ホンダ F1 エイドリアン・ニューウェイ

    2026年プロジェクトに関しては、むしろ意欲を隠さない。「エンジン統合に非常に近い形で取り組める。それに、我々が長い間行ってこなかった“自社製ギアボックス”も必要で、完全な新部門を立ち上げることになる」と語った。

    また、レッドブルを離れた際、当初はアストンマーティン行きを想定していたわけではないとも明かしている。

    「レッドブルを去ったとき、次にどうなるかなんて全く分かっていなかった。これまでのキャリアを本当に楽しんできたし、このスポーツの一員でいられたことをとても幸運に思っている。もし仕事を続けるなら、情熱に従うべきだと思った。それを実行しただけだ」と66歳のニューウェイは語った。

    そして2026年のもうひとつの武器であるフェルナンド・アロンソも、44歳で迎えた今季が個人的に“最高の一年のひとつ”だったと強調する。

    「僕が言う必要はない。最後の判断を下すのはストップウォッチだ。結果としては最悪のシーズンのひとつだけど、個人的には最高のシーズンのひとつ。説明することは不可能だし、家で見ている人に理解してほしいとも思わない。そういうものなんだ」とスペインメディアに語った。

    「このパドックでは、間違いなく僕が最も価値を感じ、最もリスペクトを得られた一年だったと思う」

  • ホンダF1復帰の理由と2026年PUレギュレーションの核心

    ホンダF1復帰の理由と2026年PUレギュレーションの核心

    ホンダは2026年、アストンマーティン・アラムコF1チームとのワークス体制によりF1へ本格復帰する。2021年末の活動終了からわずか数年で復帰へと舵を切った背景には、単なる気まぐれでも回帰でもない、“ホンダという企業の本質が選ばせた必然”があった。

    ホンダ・レーシング(HRC)渡辺康治社長は、復帰の理由を語る際にまず「ホンダは挑戦する企業です」と言い切った。

    モータースポーツは技術を磨く戦場であり、人材を育てる学校であり、そして走ることの喜びを世界と共有する舞台でもある。そのすべてがホンダの企業文化と結びついており、F1はそれを最も純粋な形で体現できる場だという。

    2026年PU規則が復帰を“決定的”にした
    ホンダがF1復帰を決めた最大の契機は、2026年に導入されるパワーユニット新規則にある。新しいPUは、内燃機関と電動モーターの出力比率がほぼ50:50となり、モーター出力は従来の約3倍である350kWに引き上げられる。また100%サステナブル燃料の使用が義務づけられ、MGU-Hは廃止される。これらの変更は単なる技術の入れ替えではなく、F1そのものを大きく組み替える“新時代の入口”となるものだった。

    渡辺は、2026年PUがホンダにとって「将来の推進システムの方向性と完全に一致した」と語る。ホンダは電動化とカーボンニュートラル技術を企業の根幹に据えており、まさにF1がその理念と重なる形になった。つまり、ホンダが積み上げてきた未来の技術をF1という極限環境で鍛えることができる。それは企業にとっても研究開発にとっても、唯一無二の価値を持つ挑戦だった。

    F1はホンダにとって“実験室”であり“育成機関”でもある
    ホンダにとってF1はマーケティング活動ではない。技術を磨き、人材を育て、企業の将来を形づくる巨大な実験場だ。F1のパワーユニットは、高電圧システム、バッテリーの最適化、瞬時のエネルギー回生と展開、耐久性、熱効率の向上など、あらゆる技術要素が極限環境の中で試される。

    特に2026年PUは、2万を超えるパラメータを扱いながらエネルギーの流れを最適化する、きわめて高度なマネジメントが勝敗を左右する。HRCはそのための独自のシミュレーション技術を開発しており、厳しいテスト制限の中で戦う現代のF1では大きな武器となる。

    渡辺は「モータースポーツは技術を鍛える場であり、エンジニアの才能を引き上げる場です。F1で得た知見はホンダ全体を強くします」と説明する。F1で磨かれた人材が企業のコア技術を支えるという循環が、ホンダ復帰の大きな意義となっている。

    アストンマーティンは“勝つための相手”だった
    復帰の理由を語る上で、アストンマーティンとのワークス提携は欠かせない。渡辺が強く惹かれたのは、ローレンス・ストロールの“勝つことへの執念”だった。新設されたAMRテクノロジーキャンパスには、トップチームを本気で目指す姿勢が明確に表れており、組織改革も着実に進んでいた。

    ホンダは挑戦する企業であり、その挑戦を「勝利」に結びつけるには、勝利を本気で求めるパートナーが不可欠だった。さくらとシルバーストーンのエンジニアが互いの拠点に駐在し、時差を活かして24時間体制で開発が進む今の体制は、ホンダ復帰に確信を与える要素にもなった。

    この記事の主題は復帰と規則だが、復帰の意志を後押ししたのが“勝利を狙えるパートナーの存在”であることは、十分に記事の厚みを支える要素になる。

    2026年は“リセットの年”。だからこそホンダにチャンスがある
    2026年は、F1の勢力図が大きく揺らぐ年だ。メルセデス、フェラーリ、レッドブルという既存の優位性が一度リセットされ、全メーカーが新しいPUと新しい空力概念でゼロベースからスタートする。ホンダにとってこれは、過去の流れを断ち切り、純粋に技術力で勝負できる舞台を得ることを意味する。

    渡辺はこう語る。

    「ホンダは挑戦する企業です。2026年は新しいF1の形が始まる年であり、その中心で勝負しなければなりません」

    これはスローガンではなく、新時代のスタートラインでチャンスを取りに行くという、ホンダの強い意志である。

    ホンダ F1 本田技研工業

    復帰を後押しした“人の力”――コーウェルとニューウェイの存在
    深い内容は別記事で扱うが、ホンダの挑戦を支える要素として、アンディ・コーウェルとエイドリアン・ニューウェイという2人の存在は欠かせない。コーウェルはPU開発の緻密さと難しさを最も理解する人物であり、ニューウェイはシャシーとPUの融合というF1最大の難問に対して明確な哲学を持つ。

    この2人と緊密に連携できる体制が整ったことも、ホンダが復帰を現実的に選択できた理由のひとつだ。挑戦する舞台に挑戦できる仲間が揃った――そう言える状況だった。

    “復帰の理由”を総合すると、すべてが2026年でつながった
    ホンダがF1に戻る決断をした背景には、企業文化、未来の技術戦略、パートナーシップ、人材育成、そして2026年規則がもたらす大転換という、複数の要素が一つの線でつながった瞬間があった。

    ・挑戦する企業であるというDNA
    ・未来の推進技術と一致した新PU規則
    ・技術を磨き人材を育てる場としてのF1
    ・勝利をともに狙えるパートナーとの出会い
    ・ゼロベースで戦える2026年という“ゲームチェンジの年”。

    すべてが揃ったことで、ホンダは再びF1へ戻ることを選んだ。

    そして渡辺康治が語った次の言葉こそ、この決断のすべてを象徴している。

    「ホンダは挑戦する企業です。2026年は新しいF1の形が始まる年であり、その中心で勝負しなければなりません」

    復帰は必然だった――その理由が、こうして明確に浮かび上がる。

  • レッドブルF1 「ホンダの7年間のサポートは本当に素晴らしかった」

    レッドブルF1 「ホンダの7年間のサポートは本当に素晴らしかった」

    レッドブル・レーシングのパフォーマンスエンジニアリング責任者ベン・ウォーターハウスは、2025年アブダビのポストシーズンテストを終え、7年間にわたるホンダとのパートナーシップへ深い感謝を述べた。

    2026年からレッドブルは新しいパワーユニット体制へ移行するため、今回が現行体制としての“最後の公式テスト”となった。

    「アブダビでとても充実したテストデーを過ごすことができ、長いシーズンを締めくくる良い形になった。今日のプログラムは2台で分担し、アイザックは2026年ピレリタイヤのテストプログラムを担当し、歩夢は現行タイヤを使用してRB21でヤングドライバーテストを行った。2人とも本当に素晴らしい仕事をしてくれて、非常に詳細なフィードバックを提供し、両マシンともトラブルなく全てのプログラムをやり遂げてくれた」とベン・ウォーターハウスは語った。

    「このテストはチームにとって非常に価値あるものだったし、アイザックとより深く関係を築く良い機会にもなった。今回得られたデータはミルトンキーンズに持ち帰り、これから7週間後に迫るバルセロナへ向けてシミュレーションツールの改良に役立てていく」

    「そして最後に、ホンダには心から感謝を伝えたい。ここ7年間、我々に素晴らしいパワーユニットを提供し、圧倒的なサポートをしてくれた。本当に素晴らしいパートナーだったし、来年も一緒に戦えることを楽しみにしている」

    この「ホンダへの特別な感謝」は、レッドブルとホンダが歩み続けてきた7年間の濃密な歴史を象徴するものだった。2025年最終戦アブダビでマックス・フェルスタッペンが勝利し、両者のパートナーシップは当初の契約どおり“ひと区切り”を迎えた。

    ホンダ F1

    ホンダとレッドブルの歩み(2018年~2025年)
    ホンダは2021年シーズンをもってPUサプライヤーとしての直接参戦を終了したものの、その後も HRC(株式会社ホンダ・レーシング)がRBPTへ技術支援 を行い、レッドブル・レーシングおよびレーシングブルズ(旧トロロッソ/アルファタウリ)を支えてきた。

    両者のパートナーシップは 2018年にトロロッソへPU供給を開始 したことから始まり、2019年にはレッドブル・レーシングにもPUを供給。2021年にはマックス・フェルスタッペンがドライバーズタイトルを獲得し、ホンダに 30年ぶりのF1タイトル をもたらした。

    2022年以降はHRCがRBPTに技術支援を行い、2023年にはレッドブルが22戦21勝という驚異的な成績で2年連続のダブルタイトルを達成。2024年にはフェルスタッペンがドライバーズタイトル4連覇を成し遂げ、数々の伝説的瞬間をともに作り上げた。

    ■ ホンダ×レッドブル・グループ パートナーシップ戦績(2018〜2025)
    総レース数:172戦
    勝利数:72勝
    表彰台:141回
    ポールポジション:51回
    ドライバーズタイトル:4回
    コンストラクターズタイトル:2回

    2025年アブダビGPでのフェルスタッペンの勝利をもって、レッドブル・グループとのパートナーシップは当初契約どおり一区切りを迎えた。

  • ホンダ、レッドブルF1との最終戦で有終の美「今後も技術革新を推し進める」

    ホンダ、レッドブルF1との最終戦で有終の美「今後も技術革新を推し進める」

    ホンダは、2025年12月7日にF1最終戦となる第24戦アブダビGPをもって、Red Bull Powertrains(レッドブル・パワートレインズ/RBPT)へのレースにおけるF1パワーユニット(以下、PU)技術支援を終了した。

    ホンダは2021年シーズンをもってPUサプライヤーとしてのF1参戦を終了した後も、株式会社ホンダ・レーシング(HRC)による、RBPTへのF1 PU技術支援を通じ、レッドブル・レーシングおよびビザ・キャッシュアップ・レーシング・ブルズ)に対し、F1活動のサポートを行ってきた。

    だが、ホンダとレッドブル・グループのパートナーシップは2018年にScuderia Toro Rosso(スクーデリア・トロロッソ、現在のRB)へPUを供給したことから始まり、翌2019年にはレッドブル・レーシングにもPU供給を開始。2021年にはマックス・フェルスタッペン選手がドライバーズタイトルを獲得し、ホンダに30年ぶりのF1タイトルという栄冠をもたらした。

    2022年以降はHRCによるRBPTへの技術支援を行っており、2023年にはRed Bull Racingが22戦中21勝という圧倒的な成績で2年連続となるダブルタイトルを獲得。2024年にはフェルスタッペン選手がドライバーズタイトル4連覇を達成するなど、数々のドラマと偉業を生み出してきた。

    ホンダは、これまでF1活動を通じて培ってきた技術と人材の発展と展開により、モータースポーツ活動の強化ならびに、さまざまな商品と先進技術の開発に取り組んでいくい。

    株式会社ホンダ・レーシング 代表取締役社長 渡辺康治のコメント
    「8年間にわたり、両チームおよびRed Bull Powertrainsとの強い協力関係のもとで、F1の最前線に関わり続けられたことを誇りに思います。この期間にOracle Red Bull Racingが達成した数々の勝利とチャンピオンシップ獲得に、Hondaの技術と人材が貢献できたことは大きな喜びです。関係者の皆様に心より感謝申し上げます。HRCはこれまでの経験を糧に、今後もモータースポーツの発展とHondaの技術革新を推し進めていきます」

    本田技研工業 F1 ホンダ・レーシング

    ■ ホンダとレッドブル・グループのパートナーシップの歴史
    2018年 HondaがScuderia Toro RossoにPUの供給を開始
    戦いの中でPUをアップグレードさせていく
    2019年 Red Bull RacingにもPU供給を開始
    第9戦オーストリアGPでの第4期Honda F1初優勝を含め、3勝を挙げる
    2020年 Scuderia AlphaTauri(スクーデリア・アルファタウリ 旧Scuderia Toro Rosso)が
    第8戦イタリアGPにて悲願の初優勝を達成。Red Bull Racingと合わせて3勝を挙げる
    2021年 Red Bull Racingのマックス・フェルスタッペン選手がドライバーズタイトルを獲得
    Hondaに30年ぶりの栄冠をもたらす
    2022年 HRCによるRBPTを通じた技術支援を開始
    Red Bull Racingがコンストラクターズ、ドライバーズのダブルタイトルを獲得
    2023年 Red Bull Racingがコンストラクターズ、ドライバーズのダブルタイトルを連覇
    22戦中21勝という偉業を達成
    2024年 Red Bull Racingのフェルスタッペン選手がドライバーズタイトル4連覇を達成
    2025年 Red Bull Racingがコンストラクターズ3位、フェルスタッペン選手がドライバーズランキング2位、
    Visa Cash App Racing Bullsがコンストラクターズ6位でシーズンを終了

    ■ ホンダとレッドブル・グループのパートナーシップ情報まとめ(2018年~2025年)
    総レース数:172戦
    勝利数:72勝
    表彰台:141回
    ポールポジション:51回
    ドライバーズタイトル:4回
    コンストラクターズタイトル:2回最終戦でのマックス・フェルスタッペンの勝利にて、レッドブル・グループとのパートナーシップは当初の契約通り、区切りを迎えた。

  • ホンダ 2026年F1エンジンの開発が遅延? アストンマーティンが噂を否定

    ホンダ 2026年F1エンジンの開発が遅延? アストンマーティンが噂を否定

    アストンマーティンは、ホンダが2026年仕様PUの準備に間に合わない可能性があるという噂を否定した。

    この疑惑は、マルチン・ブドコウスキーが「アストンは遅延を“ニューウェイがより多くの時間を必要としている”という形で対外的に説明するが、実際の問題はホンダ側にある」と示唆したことから拡散した。

    アストンマーティンはこれを否定し、追加コメントは行わなかった。

    ニューウェイのチーム代表就任はパドックに衝撃 アロンソは存在感を絶賛
    2026年に向けたエイドリアン・ニューウェイのチーム代表就任はパドックを驚かせたが、カタールでの姿は今季2回目の現地訪問となった。

    フェルナンド・アロンソは AS に対し、ニューウェイがまだ正式稼働前であることを前置きしつつ、週末の技術面に深く関わっていたと語った。

    「彼はまだ始めていない。ミーティングでも姿を見たし、週末の技術的な側面についても関わっていた。でも僕ら側の“追加のエンジニア”という感じで、セットアップや戦略に別の視点を与えてくれた。それが見られて良かった」

    アロンソは、ニューウェイが前面に立つ役職に向いていないという一部の見解に反論した。

    「彼はとても積極的で興味深い存在だ。これまでも様子を見るために他のレースへ来ていたが、今はもっと関わっていて、彼とのミーティングは長くなるし、終わった後も特定の2、3人に必ず質問を投げかける。ドライバーにも時々聞いてくる」

    「彼の言うことはすべて理にかなっているし、パフォーマンスの視点を持っている。しばしばブリーフィングは長くなるけど、どう速くするかという結論が出ないまま終わることがある。彼はその結論を頭の中に持っていて分析している。だからチームが成長する助けになると思う」

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム ホンダ

    アストンマーティンの2025年は苦戦続き “運転不能な週末”とアロンソ
    アストンマーティンの2025年シーズンは深刻な苦戦が続いており、アロンソは DAZN に対し、AMR25の操縦性について厳しい評価を述べた。

    「このマシンは時に完全に運転不能だ。テレビで見るよりはるかに難しい」

    それでもカタールGPでは久々に光明が差し、アロンソは7位で8ポイントを獲得した。

    「嬉しいか? いや、想像してみてくれ。僕は今年30ポイントほどしか取っていないのに、ここで8ポイントも得られたんだ。すべてのセッションでトップ10に入り、レースでは追い抜きができないサーキットで、戦略も同じだったから、ポジションを維持するだけでうまくいった」

    アロンソ「根本的には厳しいまま」:予選は速いが決勝で後退
    アロンソは結果に喜びつつも、チームの根本的課題は解決していないと明言した。

    「今年は思い出したくない年だ。巨大な問題を抱えてきた。今日も全員がクリアなトラックを持っていたら、僕らはもっと後ろで終わっていただろう」

    「土曜は予選でうまくいくが、日曜は追い抜きが可能なサーキットでは徐々に後退していく」

    アストンマーティンの浮上はまだ見通せないが、ニューウェイの関与強化が来季の改善の鍵になるとの期待が高まっている。