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  • F1エンジン圧縮比問題が山場へ メーカーとFIAが2つの重要会合

    F1エンジン圧縮比問題が山場へ メーカーとFIAが2つの重要会合

    2026年F1レギュレーションを巡り浮上している「エンジン圧縮比の抜け穴」問題について、F1のパワーユニットメーカーとFIAが、決定的となり得る2つの会合を行うことが分かった。

    FIAと各メーカーは、圧縮比に関する解釈と測定方法を巡る対立を解消するため、週明けから段階的に議論を進める予定だ。関係者の間では、2026年シーズン開幕前に問題へ一定の線引きを行えるかどうかの正念場になると見られている。

    月曜は技術専門家会合、木曜はPUAC
    まず月曜日、FIAはエンジン技術の専門家を集めた2回目の技術会合を開催する。ここでは、エンジンが高温状態で稼働している際の圧縮比をどのように測定・評価するか、その枠組みについて合意形成を目指す。

    続いて木曜日には、F1パワーユニット諮問委員会(PUAC)の定例会合が予定されており、この圧縮比問題が正式な議題として取り上げられる見通しだ。PUACでは、今後どのような対応を取るのか、より踏み込んだ議論が行われる可能性がある。

    焦点は「高温時の圧縮比」
    今回の論争の中心にあるのは、新レギュレーションで定められた圧縮比16:1の上限が、実際の運用でどこまで厳密に守られているかという点だ。

    現行の検査は常温環境で行われているが、メルセデス、そして程度は小さいもののレッドブルが、パワーユニットが高温になった状態でより高い圧縮比を実現できる手法を見出しているのではないか、という疑念が一部陣営から示されている。

    FIAはこの問題を2026年開幕前に沈静化させたい意向だが、短期的にレギュレーションそのものを変更する考えはないとされている。代わりに、すべてのメーカーが納得できる「高温時における圧縮比測定方法」を確立できるかが最大の争点となっている。

    合意はまだ限定的
    すでにFIAと技術専門家による初回会合は行われ、一定の方向性は共有されたものの、すべての要素で一致には至っていない。関係筋によれば、意見が概ね一致しているのは4社のみで、どのメーカーかは明らかにされていない。

    一方で、フェラーリ、アウディ、ホンダはこの問題について協議を重ね、クリスマス前にはFIAに対して共同書簡を提出し、明確な説明を求めていたことが分かっている。

    FIAは初回会合後、圧縮比チェックに関する追加データが必要と判断し、さらなるテストの実施を要請。その結果を踏まえたうえで、月曜の技術ワークショップが招集されたとみられている。

    エンジン F1

    フェラーリも「建設的」と評価
    今月初め、フェラーリのエンジン部門責任者エンリコ・グアルティエリは、FIAとの協議について前向きな手応えを語っていた。

    「我々はFIAと引き続き議論を続けている。技術ワークショップを1度行い、今後数日のうちに追加の会合も予定されている。それは次回のPUAC会合まで続く流れだ」

    「規定に基づく手続きとガバナンスを通じて、FIAが適切にこの問題を管理してくれると信頼している。このプロセスは、今後数日から数週間のうちに結論へ近づいていくはずだ」

    PUACで初めて“実装”が議論か
    技術専門家レベルでは、新たな測定手法を実際に導入するかどうかは議論されておらず、その判断はPUACの場で初めて検討されるとされている。

    ただし、もし新たな手法がメルセデスやレッドブルの競争力を損なう可能性がある場合、両陣営がルール変更に賛成しないことは明らかだ。

    開幕後の抗議の可能性も
    現時点では、メルセデスやレッドブルの手法に不満を持つメーカーが、2026年シーズン開幕後に正式な抗議を提出し、合法性の判断を求めるかどうかは不透明なままだ。

    来週の2つの会合は、圧縮比論争が技術的合意によって収束するのか、それともシーズン中の抗議合戦へ発展するのか、その行方を左右する重要な局面となりそうだ。

  • ロス・ブラウン、2026年F1エンジン論争を一蹴「巧みなレギュレーション解釈」

    ロス・ブラウン、2026年F1エンジン論争を一蹴「巧みなレギュレーション解釈」

    ロス・ブラウンは、2026年F1パワーユニットを巡って浮上している「抜け穴」疑惑について、「レギュレーションの巧みな解釈に過ぎない」と述べ、騒動を冷静に受け止めている。

    かつてフェラーリ、メルセデス、そしてブラウンGPを率い、2022年にF1の第一線から退いたロス・ブラウンは、2026年F1レギュレーション下でのエンジン技術を巡る議論について見解を示した。報道では、一部メーカーが新パワーユニット規則で定められた圧縮比の上限を事実上超える手法を見つけたのではないかとされている。

    この件を受け、FIAは1月22日、各チームの主要技術関係者と会合を開き、新しいパワーユニットおよびシャシー規則について協議を行った。問題視されているのは、ピストンの圧縮比が最大16:1と定められているにもかかわらず、実走行時の熱膨張を利用することで、結果的により高い圧縮比で運転できる可能性がある点だという。

    圧縮比とは、燃焼行程におけるピストン内部の最大容積と最小容積の比率を指す。一般的な市販車では8:1〜12:1程度が主流だが、2026年F1では上限が16:1に設定されている。これは従来の18:1から引き下げられた数値だ。

    2025年後半には、1社または2社のパワーユニットメーカーが、この規則における「グレーゾーン」を見つけたとの報道が浮上した。常温では規則を満たしつつ、走行中にユニットが高温となることで、実質的により高い圧縮比で作動させることが可能になる、というものだ。

    この噂に関連して名前が挙がったのがレッドブル・フォードだが、レッドブル・パワートレインズのテクニカルディレクターであるベン・ホジキンソンは、「何でもない話題が騒がれているだけだ」と否定し、フォードと共同開発した最初のパワーユニットは「合法性を問題にされるほど高い圧縮比ではない」と説明している。

    こうした状況について、ロス・ブラウンは自身の経験を踏まえ、冷静な見方を示した。ブラウンは2009年、ブラウンGPとして参戦した際、レギュレーションの解釈を突いたダブルディフューザーを武器に、予想外のチャンピオン獲得を果たしている。

    「私に説明された限りでは、これは単にレギュレーションの巧みな解釈に聞こえる」とブラウンは語った。

    「もう以前ほど詳しくは分かっていないが、新しいレギュレーションが導入されると、過去を見ても必ず誰かが賢い解釈を見つけてくる。それが起きているだけだと思う」

    フォーミュラ1エンジン F1

    さらにブラウンは、そうした解釈に対して他チームが反発するのも自然な流れだと指摘した。

    「もちろん、抜け穴を見つけられなかった側にとっては、それを不公平だと感じ、抑え込もうとする。その最善の防御は攻撃だ。彼らがやっているのは、まさにそれだ」

    1月22日の会合の具体的な結論については、現時点で公表されていない。ただしFIAは、この会合が純粋に技術的な性質のものであったことを認めている。

    FIAの広報担当者は次のように説明した。

    「新しいレギュレーション導入時には慣例として、2026年仕様のパワーユニットおよびシャシーを対象とした議論が継続的に行われる」

    「1月22日に予定された会合は、技術専門家同士のものだ」

    「FIAは常に、すべての参加者の間でレギュレーションが同じように理解され、適用されているかを確認するため、状況を評価している」

  • FIA、2026年F1エンジン規則を巡る訴訟リスク回避を最優先に

    FIA、2026年F1エンジン規則を巡る訴訟リスク回避を最優先に

    FIA(国際自動車連盟)のシングルシーター部門ディレクターであるニコラス・トンバジスは、2026年F1パワーユニット規則に存在するとされる“抜け穴”を巡り、FIAが法廷闘争に巻き込まれる事態を回避することが「最優先事項」だと語った。

    2026年F1シーズンからは、レギュレーションが大きく刷新され、1.6リッターV6ターボハイブリッドは電動要素が大幅に強化される。電気出力は現在の約3倍となり、内燃機関は100%持続可能燃料での走行が認められる。

    一方で、新時代に向けて各チームが優位性を探る中、メルセデスとレッドブルがレギュレーションの抜け穴を突く手法を試しているのではないか、という噂が浮上している。

    問題とされているのは幾何学的圧縮比だ。報道によれば、両チームはエンジン停止時には規定どおり16:1に適合しつつ、走行時には従来認められていた18:1まで圧縮比を高める方法を見つけた可能性があるとされ、これにより約15馬力の上乗せが可能になるとも言われている。

    この件を受け、アウディを含む他のパワーユニットメーカーからは、FIAが規則についてより明確な説明を行う必要があるとの声が上がっている。FIAはこの潜在的な抜け穴と、より広範なレギュレーション変更について協議する会合を開くことをすでに確認している。

    トンバジスはこの問題について、ロイターに対して次のように語った。

    「もちろん、誰もが非常に情熱的で競争心が強い。そうした精神状態にあると、他の見方に対して少し盲目的になることもある。」

    「その結果、自分たちの主張だけが唯一の真実であるかのように提示する人もいる。残念ながら、物事は決してそこまで単純ではない。だからこそ、我々が介入し、明確化する必要がある。」

    「いずれにしても、現在メディアで言われているほど大きな問題だとは私は思っていない。」

    また、もし特定のチームが大きく抜け出した場合、開幕戦オーストラリアGPで抗議が提出される可能性について問われると、トンバジスは次のように述べた。

    「我々は問題なく対処できると考えている。最優先事項は、論争を生まないことだ。初戦後に法廷や公聴会に座るのではなく、レースをしたい。」

    エンジン F1 国際自動車連盟

    報じられているところでは、レッドブルとメルセデスが見つけたとされるこの手法は、1周あたり約0.3秒のアドバンテージをもたらす可能性があるという。

    実際、アウディのマッティア・ビノットは、この幾何学的圧縮比トリックが事実であれば、他チームにとっては「ゲームオーバー」になりかねないと示唆していた。

    この噂が出る以前から、メルセデスは2014年と同様に、大幅なレギュレーション変更を最もうまく乗りこなす立場にあると見られていた。

    2026年F1開幕戦オーストラリアGPでの勢力図がどうなるかは、現時点では不透明だ。ただし、2025年シーズン終盤とは異なる競争序列になることは間違いなさそうだ。

  • 2026年F1レギュレーションは内燃エンジンの常識も書き換える

    2026年F1レギュレーションは内燃エンジンの常識も書き換える

    2026年F1レギュレーションを見ると、シリンダー数は同じ、寸法も同じ、バンク角も同じで、過去12年間と同じV6内燃エンジンが使われ続けるように思えるかもしれない。そのため、開発における重要性は低いと錯覚しがちだ。しかし実際はまったく逆である。

    新規エンジンメーカーの参入を促すため、FIAは燃焼そのものを根底から変える数多くの変更を加えた。電動部分が強化される一方で、メーカー間の競争は今後も、古くからのガソリンエンジンを巡って繰り広げられる。

    隠された革命
    2026年レギュレーション策定の過程で、新規参入メーカーは既存メーカーの優位性を最小限に抑えるため、従来のV6に対する一連の変更を強く求めた。内燃エンジンの基本的なジオメトリーは同じだが、燃焼プロセスは白紙から再設計されている。

    最初の変更点は、シリンダーに送り込まれる空気条件だ。ターボ圧は最大4.8バールに制限され、従来のパワーユニットで見られた6バール近いピークは許されない。さらに、ターボを電動で加速していたMGU-Hは廃止され、低回転域での過給圧や燃焼制御は格段に難しくなった。加えて、圧力波の共鳴周波数を利用して吸気量を最適化していた可変吸気ファンネルも禁止されている。

    燃焼に不可欠なもう一つの要素である燃料にも、大きな変更が加えられた。燃料は初めて、生物由来および/または合成由来成分の混合を義務付けられ、最大燃料流量は約30%削減される。圧縮比も18から16へと引き下げられ、点火直前の圧力と温度は低下する。さらに、スパークプラグによる点火回数は従来の最大5回から1回に制限され、燃焼を開始することはできても、その過程を最初から最後まで制御することはできなくなった。外見上の器は同じでも、その内部で起きていることは完全に別物なのである。

    パワーがすべてではない
    MGU-Hと可変吸気ファンネルの廃止により、エンジンメーカーは回転数に応じて燃焼を制御する二つの重要な手段を失った。その結果、内燃エンジンをどの作動点に最適化するか、すなわち有効な作動ウインドウをどこに設定するかという問題が生じる。

    この点について、アストンマーティンのチーム代表であり、2014年以降の支配的な時代にメルセデスのエンジン部門を率いていたアンディ・コーウェルは次のように語っている。

    「MGU-Hには素晴らしい点が二つある。一つは本来捨てられるはずのエネルギーを回収できること、もう一つはターボの回転数を制御できることだ。だからアンチラグは不要だった。2026年には必要になるのか。もし必要なら、どうやって実現するのか。それとも、常に高回転でエンジンを回し続けるのか。各社がどうするのかは興味深い」

    低回転域でのトルク、すなわちコーナー立ち上がりの加速を優先するのか、それとも最高出力と最高速を重視するのかという選択が迫られる。小型で軽量なターボはターボラグを抑えられる一方、高回転域での出力は犠牲になる。

    このジレンマはさらに広がり、エンジン性能とマシン全体の空力効率との妥協点を見つける必要がある。例えば、エンジン温度を低く保てば熱効率は最大化されるが、そのためには大型の冷却系が必要となり、空力や重量に悪影響を及ぼす。内燃V6のコンセプトとシャシーの設計は密接に結び付いており、エンジンのデューティサイクルが空力性能に影響し、その逆もまた然りである。

    エンジン F1レギュレーション 2026年のF1世界選手権

    エネルギーフローの導入
    2014年の大きな革新の一つは、10500回転以上で燃料流量を100kg/hに制限した点にあったが、2026年にはこの考え方が進化する。燃料の化学組成には一定の自由度が認められ、供給元によってエネルギー密度が異なる可能性があるため、制限は燃料質量ではなく、エンジンに投入される化学エネルギーの流量そのものに課される。上限は3000MJ/hで、燃料の質量流量とエネルギー密度から算出される。

    この値は従来のパワーユニットと比べて低く、当初は1レースあたり70kgの燃料で走り切ることを目標としていたが、この数値は規則には明記されなかった。

    規則では走行状況に応じて異なる制限も設けられている。ブレーキング時や部分スロットル時には燃料流量が低く抑えられ、減速区間やコーナー中にエンジンを全開で回してバッテリーを充電する、といった不自然な使い方を防ぐ。FIAは従来通りフローメーターで監視するが、今回は1基のみとされ、非測定区間で瞬間的に流量を増やすことを防ぐアンチエイリアシング技術が導入される。さらに、排気ガス中の混合気の濃さを検知するラムダセンサーも追加され、リッチかリーンかを把握できるようになる。

    新たな開発ルール
    構造面での変更も大きい。2026年から内燃エンジンの最低重量は130kgに設定され、ピストンとコンロッドの重量もそれぞれ50g、20g引き上げられる。これはピストンに特定の鋼合金のみを使用することが義務付けられ、軽量なアルミ合金が使えなくなったためである。

    スプリットターボ構造も禁止され、タービンとコンプレッサーはエンジン後方で一体化しなければならない。インジェクターは全メーカー共通の標準品となり、スパークプラグも指定された設計に従う必要がある。

    エンジンメーカーは、旧世代V6から流用できる部品は一つもないと口を揃える。特に新規参入メーカーが大きく出遅れ、挽回できなくなるのではないかという懸念も生まれている。今回はパワーユニット開発にもコストキャップが適用され、アップデートも厳密なスケジュール管理下に置かれる。例えば、新しい燃焼室をホモロゲーションできるのは2027年と2029年のみである。

    そこでFIAは、ADUO(追加アップデートおよび開発機会)と呼ばれる救済制度を導入した。これはコストキャップの引き上げ、内燃エンジンのベンチテスト時間を30%増やす措置、そして追加アップデートのホモロゲーションを可能にするものである。

    この制度は、最も競争力のあるパワーユニットに対して2%以上出力が劣るメーカーを対象とし、パフォーマンスはドライブシャフトに取り付けられたトルクセンサーで監視される。信頼性に深刻な問題がある場合には、複数のパワーユニット製造にかかる費用を補填する形で、予算上限の引き上げも認められる。

    これらの支援策は、外見とは裏腹に、2026年のV6内燃エンジンがいかに徹底的に変革されているかを示す、何よりの証拠である。

  • 2026年F1エンジン戦争 アウディがレッドブル・フォードに勝つための時間軸

    2026年F1エンジン戦争 アウディがレッドブル・フォードに勝つための時間軸

    2026年F1レギュレーションを前に、新たにパワーユニットメーカーとして参戦する2陣営――アウディF1とレッドブル・パワートレインズ・フォード。その比較について、アウディF1プロジェクトを率いるマッティア・ビノットが率直な見解を示した。

    ビノットは、短期的にはレッドブル・パワートレインズ・フォードが「より特化したスキル」を持っていると認める一方で、「アウディというブランドのバックグラウンドと、その知識が長期的には確実に差を生む」と語っている。

    2026年F1規則と新規メーカー参戦
    2026年F1は、マシンの小型・軽量化、アクティブエアロの導入、そして電動比率50%のパワーユニットという大きな転換点を迎える。F1史上でも屈指の大改革であり、これが新規メーカー参戦を後押しした。

    フォードはレッドブルと提携し、レッドブル・パワートレインズ・フォードとして参戦。一方、アウディはザウバーを母体としてF1ワークス体制を構築している。チーム代表にはジョナサン・ウィートリーが就任し、組織作りは着実に進められている。

    「正しい道」を進むアウディF1
    ビノットはロイターの取材に対し、アウディF1の現状を次のように説明した。

    「プロジェクトは正しい道を進んでおり、正しい方向性にある。信頼性も少しずつ築けている」

    アウディF1は、カタール投資庁(QIA)の出資を受け、さらにRevolutとのタイトルスポンサー契約も締結した。これにより、F1参戦への本気度を疑問視する声は沈静化したとビノットは語る。

    「社員にとっては非常に明確だ。我々は拡大し、長期的に投資している。現在行っている投資はすべて長期プロジェクトで、パフォーマンスという形で成果が見えるのは3年から4年後になる」

    短期の現実と2030年を見据えた戦略
    ビノットは、2026年シーズンからいきなりトップに立つことは想定していないことも明言している。

    「来年、最高のエンジンを持つとはまったく思っていない。我々は来年、サプライズを起こすつもりはない」

    アウディF1は、2030年を本格的なタイトル争い参入の目標年に据えている。

    レッドブル側の即効性とアウディの対抗軸
    レッドブル・パワートレインズ・フォードについては、クリスチャン・ホーナーが「メルセデスから200人以上の人材を引き抜いた」と語っており、即戦力となる専門家の集積が短期的な強みになるとされる。

    この点についてビノットも、次のように認めている。

    「彼らは、より特定分野に特化したスキルを持っている。ただし、我々にはアウディというメーカーのバックグラウンドがあり、その知識は長期的には確実に差を生む」

    アウディ F1 エンジン

    ザウバーを基盤とする現場の手応え
    アウディF1の基盤となるザウバーは、2025年シーズンに70ポイントを獲得。ドライバーはニコ・ヒュルケンベルグとガブリエル・ボルトレトのコンビで、アウディF1時代へと移行する。

    ヒュルケンベルグは、チームの成長と統合についてこう語っている。

    「今年の進歩は本当に良かった。チームとしての働き方やコミュニケーション、オペレーション面で大きな改善が起きている。決して悪い位置にはいない」

    さらに、今後の課題として、新パワーユニット部門とヒンヴィルのレースチームをどう統合していくかが重要になると指摘した。

    “即効性”か“蓄積”か
    即戦力の専門人材を大量に集めたレッドブル・パワートレインズ・フォードと、巨大自動車メーカーとしての研究開発の蓄積を武器にするアウディF1。両者のアプローチは対照的だ。

    2026年の初期段階では明確な差が見える可能性はあるが、ビノットの視線はさらに先にある。最終的に差を生むのは、短期的な成果ではなく、長期的な知識と開発力の積み重ねになる。

  • フェラーリ、2026年F1エンジンで鋼合金ヘッド採用を決断

    フェラーリ、2026年F1エンジンで鋼合金ヘッド採用を決断

    フェラーリは、2026年F1パワーユニットにおいて、アルミニウムではなく鋼合金製のシリンダーヘッドを採用する決定を下した。エンジン部門のテクニカルディレクターであるエンリコ・グアルティエリがこの解決策を承認し、ダビデ・マッツォーニが持ち込んだ案を、経験豊富なエンジニアであるグイド・ディ・パオラが再検討した。ディ・パオラは、ツィンマーマンとシュミットの離脱以前から、より積極的な役割に復帰していた。

    フェラーリは、プロジェクト678がマラネロの同一ファクトリーで設計・製造されたという利点を最大限に活かそうとしている。2026年型フェラーリは、エンリコ・グアルティエリ率いるエンジン部門と、テクニカルディレクターにロイック・セラを据えるシャシー部門との、極めて高い統合による成果だ。

    2026年パワーユニットは、ディエゴ・トンディおよびフランク・サンチェスが率いる空力部門に対し、空気抵抗低減に有効なコンセプトを極限まで追求する余地を与えるよう構想されている。すでに報じられている通り、新型フェラーリは放熱系のマスを縮小し、電動バッテリーも軽量かつ非常にコンパクトに設計されており、空力的により有利な形状設計を可能にするはずだ。

    フレデリック・バスールのテクニカルスタッフは、4月末に風洞でのSF-25開発を停止した判断が、新レギュレーション導入初年度に結果として現れることを示さなければならない。前例のない規模の規則刷新を前に、エンジン部門がもたらす大胆な設計解によって空力面を攻められる機会を、無駄にすることは許されない。

    マラネロでは、2025年の厳しいシーズンを受けてトーンを抑えている。その中で明らかになったのが、メルセデスとレッドブルが、レギュレーション上は常温測定で16:1と定められた圧縮比を、エンジン作動時の温度上昇によって18:1まで引き上げる仕組みを有しているという事実だった。

    この情報は大きな反響を呼び、フェラーリはホンダおよびアウディとともにFIAに説明を求めた。しかしFIAは、ブリックスワースで生まれ、メルセデスからレッドブルへの技術者移籍後にミルトンキーンズでも採用されたこのアイデアを、完全に合法と判断した。

    一部の関係者によれば、計測上のアドバンテージは約13馬力とされている。1馬力あたりのラップタイム短縮が約0.02秒であるならば、効果は0.25秒程度であり、報じられていたような0.4秒以上にはならないという。

    フェラーリ F1 エンジン

    そして、これまでほとんど伏せられてきた事実として、エンリコ・グアルティエリが、アルミニウム製と並行開発されていた案に代わり、鋼合金製シリンダーヘッドを正式に承認したことがある。4基のパワーユニットを1シーズンで使用する耐久性が確保できない場合に備え、代替案として検討されていたものだ。

    ヴォルフ・ツィンマーマンと副官のラース・シュミットがアウディへ移籍したことで、銅やセラミックを含む鋼合金製ヘッドは短命に終わると見られていた。しかし、2026年パワーユニットのプロジェクトリーダーであるダビデ・マッツォーニはすでに以前から、グイド・ディ・パオラに対し、オーストリアのAVLと共同でまとめられたこの極端な解決策を見直し、信頼性の基礎を確立するよう指示していた。

    鋼はアルミニウムより重いものの、これまで到達したことのない燃焼室内の圧力と温度条件を試すことが可能になる。2026年のパワーユニットは重量が30kg増加し、150kgとなるため、この特性はむしろ利点になり得る。

    ディ・パオラにより積極的な役割を再び与えたことは、マラネロのエンジン部門における重要な柱が戻ったことを意味する。ルノーやメルセデスから加わった有能な人材も含め、結束力のある作業グループが再形成されつつあるようだ。

  • アウディ 2026年F1エンジン開発で出遅れ?メルセデスとの差は約30馬力

    アウディ 2026年F1エンジン開発で出遅れ?メルセデスとの差は約30馬力

    アウディF1が2026年のF1世界選手権でのデビューに向けて準備を進める中、その新型パワーユニットがメルセデス製エンジンに対して最大で31bhp(約31馬力)劣っているとの報道が浮上した。

    2026年からザウバーF1チームは正式に「アウディF1」へと名称を変更し、ドイツの自動車メーカーが完全買収したスイス拠点のチームとして新時代を迎える。

    アウディはメルセデス、フェラーリ、ホンダ、そして新規参入のレッドブル・パワートレインズ=フォードと並び、5つのF1エンジンメーカーの一角を担う。

    メルセデスが571bhp、アウディは540〜550bhpとの報道
    伊『Motorsport.com』によると、メルセデスの2026年仕様エンジンは420kW(約571bhp)を達成している一方、アウディは「400kWの壁を突破」した段階にあり、540〜550bhpの範囲にとどまっているという。

    その差はおよそ21〜31bhp。比較対象として、FIAが2023年に実施したパワーユニット解析では、最も非力とされたルノー製エンジンでさえ、先頭グループに対して20〜33bhpの差に収まっていた。

    報道によれば、こうした情報は「開発現場の空気を感じ取っている関係者」から漏れ伝わったもので、現在も各メーカーがエンジンダイナモ上で開発テストを進めている最中だとされる。

    「信頼性重視の段階」─ウィートリー代表が最新状況を説明
    ザウバーF1チーム代表のジョナサン・ウィートリーは先月のアゼルバイジャンGPで、アウディのエンジン開発が「スケジュール通り進行中」と説明。現在はパフォーマンスよりも信頼性の確立に重点を置いており、エンジンとシャシーを初めて統合テストするのは12月になると明かした。

    「パフォーマンスを語るのはまだ早すぎる」としながらも、アウディが次世代エンジンの信頼性確保を優先していることを強調した。

    フェラーリからの技術者流入で巻き返しへ
    アウディの開発体制には今後、フェラーリからICE開発責任者のヴォルフ・ツィンマーマンとその副責任者ラース・シュミットが加わる見通し。両名は2026年用フェラーリエンジンの開発完了後に移籍すると報じられており、チーフオペレーティング兼テクニカルオフィサーを務めるマッティア・ビノットの下で再びタッグを組むことになる。

    なお、フェラーリではツィンマーマンが提案した「スチール製シリンダーヘッド案」が信頼性の問題で採用されず、「極秘吸気システム」に開発の焦点を移しているという。

    2026年の新ルールと各メーカーの課題
    2026年はF1史上最大級の技術改革期となり、エンジンとシャシーのレギュレーションが同時に刷新される。新型パワーユニットは電動化比率50%、持続可能燃料の採用、アクティブエアロの導入など、従来の概念を大きく変える。

    メルセデスのトト・ヴォルフ代表は、フルパワー時に「時速400kmに達する可能性がある」と述べており、同チームの開発が他メーカーより進んでいることを示唆した。

    一方で、FIAは少なくとも1社が開発面で大きな遅れを取っていることを認め、「追加開発・アップグレード機会制度(ADUO)」を導入。コストキャップの緩和やベンチテスト時間の追加など、遅れているメーカーを支援する仕組みを整備する。

    アウディの課題は“パワーより成熟”
    現時点での馬力差は懸念材料ではあるが、アウディの開発ロードマップを見る限り、焦点は「信頼性」と「効率性の最適化」にある。

    2026年は電動化率の高さゆえ、単純なICE出力よりもエネルギーマネジメント能力が重要になる。初年度からメルセデス並みのパフォーマンスを発揮するのは難しいが、豊富な人的リソースとフェラーリ出身エンジニア陣の加入により、中期的な競争力強化の見込みは十分にある。

    一方、メルセデスが2014年に示したように、新レギュレーション初年度での技術的優位はタイトルを左右する要素になり得る。
    アウディがこの差をどこまで短期間で埋められるか──それが2026年シーズン最大の注目点のひとつとなりそうだ。

  • 2026年F1エンジン規定改訂 新制度「ADUO」で出遅れメーカー救済

    2026年F1エンジン規定改訂 新制度「ADUO」で出遅れメーカー救済

    FIA(国際自動車連盟)は、2026年から施行されるF1新レギュレーションにおいて、パワーユニット(PU)メーカーの開発機会を拡大する新制度「ADUO(Additional Development and Upgrade Opportunities/追加開発・アップグレード機会)」を導入することを正式に承認した。

    この改訂は、木曜日に行われた世界モータースポーツ評議会(WMSC)の会合で決定されたもので、ロンドン・ナイツブリッジに新設されたFIAオフィスからビデオ会議形式で開催された。

    ADUOコンセプトとは何か
    「ADUOコンセプト」は、2026年の新PU時代において、他メーカーよりも性能面で遅れを取ったサプライヤーに対し、追いつくための追加的な開発機会を与える仕組みだ。これにより、FIAは競争バランスを保ちながら、各PUメーカーが公平な環境で進化を続けられるようにする狙いがある。

    F1の2026年型エンジンは現行の1.6リッターV6ターボを基礎にしつつ、MGU-Hの廃止と電動出力比率の大幅増加によって、内燃機関とハイブリッド系の出力をほぼ等分にする全く新しいフォーミュラとなる。来季のPUサプライヤーはフェラーリ、メルセデス、レッドブル・パワートレインズ、ホンダ、そしてアウディの5社だ。

    FIAによる進捗評価と支援プロセス

    FIAはシーズン中の特定の節目で各メーカーのPU性能を評価する。評価ポイントは、シーズン6戦目(25%時点)、12戦目(50%)、18戦目(75%)の3段階で設定されており、そこで性能不足が認められたメーカーには以下のような支援策が適用される:

    ■ PUのホモロゲーション(公認)変更の追加許可
    ■ コストキャップ(予算上限)の緩和措置
    ■ PUベンチテストでの追加開発時間の付与

    また、信頼性に深刻な問題を抱えるPUメーカーには、特別なコストキャップ緩和が別途認められる。これは開発凍結下での信頼性修復が財政的に過大な負担となるのを防ぐための措置だ。

    “失敗を救済する安全網”としての新制度
    これらの新ルールは、開発に出遅れたメーカーに対して「安全網(セーフティネット)」を提供するものだ。成功したメーカーが優位を保てる期間は短縮され、逆に苦戦するメーカーは改善の機会を得る。これにより、F1が2014年にハイブリッドPUを導入した際のような極端な性能差(当時のメルセデスの独走)を防ぐ狙いがある。

    2014年当時は、異なる仕様のハードウェア/ソフトウェアを顧客チームに供給できたことや、開発トークン制が導入されていたことが競争の偏りを生み、メルセデスの長期支配を許す結果となった。FIAは今回の「ADUOコンセプト」により、こうした格差の再発を未然に防ぐ構えだ。

    Source: PlanetF1

  • アウディ 2026年F1エンジン開発は順調と強調「信頼性を最優先」

    アウディ 2026年F1エンジン開発は順調と強調「信頼性を最優先」

    ウディF1代表のジョナサン・ウィートリーは、2026年のフォーミュラ1参戦に向けた開発状況について「信頼性を最優先している」と最新の進捗を明かした。アウディは来季からザウバーを母体としたワークスチームとしてF1に参戦し、新時代のレギュレーションに挑む。

    現在、独自開発したパワーユニットはすでにダイナモでのテスト段階にあり、年末には初めてシャシーとパワートレインを組み合わせる予定だという。

    ウィートリーは「エキサイティングな時期」と表現しつつ、実際の性能評価は2026年の開幕戦まで待つことになると強調した。

    ヒンウィルを拠点とするチームは、来季からワークス体制のアウディへと変貌を遂げ、スポーツの新たな時代を迎える準備を整えている。アウディだけでなく、キャデラックも11番目のチームとしてF1に加わる予定であり、新規則と新規参入に対する期待は自然と高まっている。

    レッドブルのスポーティングディレクターを離れ、ドイツの自動車メーカーによるプロジェクトを率いる立場となったウィートリーは、アウディのエンジンプログラムの進捗について次のように語った。

    「今はすべてのF1チームにとって非常に忙しい時期であり、誰もが当然のように2026年に焦点を向けている。我々はダイナモプログラムを予定通り進めている。エンジンはすでにダイナモにかけられてしばらく経っている」

    さらにウィートリーは、2026年がアウディにとってF1で自社製パワーユニットを設計・製造する初年度であることを踏まえ、パフォーマンスよりも信頼性を優先していると強調した。

    「今の焦点は信頼性だ。というのも、非常に短期間でマシンを走らせなければならないからだ」

    アウディ F1

    今季は残り7戦となり、多くのチームはすでに2026年規則に照準を合わせている。パドックでの大きな話題のひとつは、シャシーとパワートレインの統合である。新規則のもとで両者は大幅に刷新され、メルセデスやフェラーリからエンジンやギアボックスを供給されるカスタマーチームは、その設計を適合させる必要がある。

    しかし、アウディはワークス体制であるため、製造においてはより効率的なプロセスを進めることができる。ウィートリーは、チームが年末までにパッケージ全体を結合し始める見込みであると述べた。

    「アウディF1プロジェクトにとってエキサイティングな時期だ。12月には初めてシャシーとパワートレインを組み合わせることになる。シミュレーターのプログラムも自然と2026年に向かっている。しかし、どちらのプログラムにおいてもパフォーマンスについて語るのはまだ少し早すぎるだろう」

    「そしてもちろん、我々が本当にその全貌を知るのは、最初の予選とメルボルンでの開幕戦になるだろう」

  • ホンダも同意? F1 V8エンジン復活案は当初計画通り2031年を軸に進行

    ホンダも同意? F1 V8エンジン復活案は当初計画通り2031年を軸に進行

    F1で議論が続いていた「持続可能燃料で駆動するV8エンジン」復活案は、2029年導入が正式に消滅し、2031年以降に先送りされる見通しとなった。モンツァでFIA会長モハメド・ビン・スライエムがメーカー会合の中止を通知したことで、当初想定されていた妥協案の2030年導入も実現の可能性が低下。ホンダやアウディを含む大半のメーカーがコスト負担や開発リスクの観点から早期移行に消極的な姿勢を示し、F1の将来のエンジン規則は当初計画通り2031年を軸に進むことになる。

    F1のエンジンメーカーたちは、モンツァでFIA会長モハメド・ビン・スライエムが2029年のV型8気筒エンジン導入に関する会合をキャンセルしたと通知し、不意を突かれた。

    数カ月にわたり、次世代のターボハイブリッドから持続可能燃料で駆動するV8エンジンへと移行する枠組み合意をまとめようと議論が続けられてきた。そのため、最近数週間では何らかの合意に至れるのではないかという見通しがあった。

    実際、『The Race』が独占的に報じたように、ビン・スライエムは9月11日にロンドンでメーカーたちを集め、合意に向けて話を進める会合を招集していた。

    もちろん、メーカー間にはまだ意見の相違が残っていた。しかし、だからこそ全員を一堂に集め、その場で議論して解決する意味があった。

    基本的な「2.4リッターV8内燃機関」コンセプトは広く支持されていたが、多くの細かい点では見解が分かれていた。

    ターボ要素を含めるかどうかもそのひとつだった。また、すべての自動車メーカーが何らかのバッテリーハイブリッド要素は不可欠と認識していたが、その全体出力への寄与度をどの程度にするかは意見が割れていた。

    10%で良いと考える者もいれば、30%を望む者もおり、数値にあまりこだわらない者もいた。

    しかし最も論争を呼んだのは、導入時期の問題だった。

    いつ導入するのかという問題
    ビン・スライエムは2029年に新エンジンを導入することを望んでいた。そうすれば、彼が懸念する2026年からの新世代ターボハイブリッドにかかる巨額コストを3シーズンだけ負担すれば済むと考えたからだ。

    しかし、このタイムラインは大多数の自動車メーカーには支持されなかった。

    レッドブルとキャデラックはこの日付に賛成していたとされるが、他のメーカーはそうではなかった。メルセデスとフェラーリは2030年がより現実的だと理解していた。

    そしてホンダとアウディは、2030年末まで新しいターボハイブリッドを維持するという現行計画を変更することには特に関心を示していなかった。

    F1のパワーユニット・ガバナンス協定では、「抜本的」な変更──新しいエンジンの導入のようなもの──を2031年以前に行うにはメーカーの「スーパー・マジョリティ」が必要とされる。

    関係者によると、この承認を得るには4メーカーの支持が必要だった。

    決定の対象となる年によって、支持が必要な母数は2026年から参入する5社(フェラーリ、メルセデス、レッドブル、ホンダ、アウディ)のうち4社、または2029年に参入予定のキャデラックを加えた6社のうち4社ということになる。

    ホンダとアウディが強く反対し、メルセデスとフェラーリが2030年以前の導入を望まなかったため、2029年案が成立する可能性はなかった。

    しかし、2030年であれば不可能ではなかった。フェラーリ、メルセデス、レッドブル、キャデラックがそのタイムラインを支持すれば、理論的には合意に進むことができ、さらにホンダかアウディのいずれかを説得できる可能性もあった。

    だが、ロンドン会合を利用して2030年での妥協に向かう余地があったにもかかわらず、ビン・スライエムはすべてを中止した。

    彼の視点では、2029年に変更が支持されないことが明らかになった以上、ロンドン会合を行う意味がなかった。

    しかし驚くべきことに、チームに送られた通知では「2029年が消えた以上、次は2030年の準備」という話にはならなかった。焦点は2031年に向けたルール作りに移るとされたのだ。

    つまり、当初の計画通り、新しいターボハイブリッド規則の5年間を全うすることになる。

    感情か、それとも理性か?

    「2029年か、さもなくば2031年」という姿勢は、なぜこうした判断が下されたのかとメーカーたちの間に興味を呼んだ。

    これは、巨額コストを回避することにメーカーが関心を示さないことに対するビン・スライエムの苛立ちが噴出したものなのか。彼は以前、よりシンプルで安価なV8エンジン構想について「彼らは受け入れなければならない、だってそれが常識だからだ」と語っていた。

    それとも、より論理的で現実的な理由があったのか。

    上層部の情報筋によれば、「2029年か2031年か」という判断は感情的反応ではなく、メーカーが直面している状況を踏まえた現実的な判断だったという。

    2029年に変更すれば、新ターボハイブリッドにかかるコストを2年間分節約できる。しかし2030年に変更した場合は、わずか1シーズンしか恩恵がなく、拙速すぎると見なされたのだ。

    ある情報筋は『The Race』に「たった1年のために本当にそれをやる価値があったのか?」と語った。

    2029年末までに新しいエンジン技術(特にバッテリー)が成熟し、財政的効率性がシステムに根付くと期待されている。そのため、1シーズンだけのルール改訂では大きな利益が得られず、2031年からしっかりと導入する方が合理的と判断された。

    さらに、メーカーたちがビン・スライエムに返した反応の中で、「世界は変わった」という認識が広がっていた。

    米国大統領ドナルド・トランプによる関税、各国政府によるEV政策の揺れ、中国経済の減速がメーカーの財務に重くのしかかった。

    その結果、F1参戦メーカーたちは、ターボハイブリッドとV8の二重開発プロジェクトに資金を投じる意欲を持たなくなった。

    メルセデス代表トト・ヴォルフは「ほとんどのOEM(自動車メーカー)は『2年以内に新エンジンを開発しなければならない二重コストプログラムは望まない』と言っている。我々も同じだ」と『The Race』に語った。

    F1 V型8気筒 エンジン / ホンダ(本田技研工業)

    適切なタイミングを選ぶ
    一部メーカーが表明していた懸念は、V8移行を急ぎすぎているという感覚だった。

    将来のエンジンロードマップは、時間をかけて適切に検討すべき問題だと多くが考えていた。

    2029年変更案を終わらせたことにより、メーカーが財務状況やF1で何を望むのかをじっくり考える余地が生まれた。

    また、2026年規則で犯した失敗を避けられる。

    翌年導入される規則については、完璧ではないエンジンルールを作ってしまったことで、シャシー規則を妥協せざるを得ない状況に陥り、不確実性を招いた。

    エネルギー回生やエネルギー投入がレースに与える影響には依然として疑問があり、可動式エアロの全面導入も結局はエンジン出力不足を補うための応急処置にすぎない。

    したがって一部メーカーからすれば、V8+ハイブリッドという新規則を急いで決定するのは理想的ではなかった。

    むしろ、F1の車両がどうあるべきかについて総合的な議論を行うべきだと考えている。重量、寸法、パワーウェイト比、どのようなレースをF1が目指すのか。そして、顧客チームのコストなど、メーカーにとって重要な課題も含まれる。

    こうした答えは、数時間のロンドン会議から生まれるものではなく、関係者を交えて数カ月にわたる詳細な議論からしか得られない。

    V8の次のステップ
    2029年のV8移行案は完全に消えたが、その後の状況はまだ明確ではない。

    現在の計画は、2031年に向けて正しい手順を検討する作業を続けることだ。FIA、FOM、メーカーは今後数カ月間協議を続け、このプロセスを前進させる。

    理論的にはFIAが2031年以降のルールを独自に定めることも可能だが、そうすればメーカーが好まない道をF1が進むリスクを伴う。

    したがって、すべての当事者が合意し、受け入れられる形でルールをまとめる方が理にかなっている。

    「V8+ハイブリッド+持続可能燃料」という構想自体は、大多数が受け入れられる案として残っている。

    ただし、2030年が完全に消えたわけではない。2026年規則がどのような結果をもたらすか次第である。

    もし懸念されるような大失敗にはならなければ、2031年以前に変更する可能性はほぼ消えるだろう。

    だが、もし問題が起こり、レースやコスト、技術面で規則があまりにマイナスに作用する場合は、2030年が再び俎上に載る可能性がある。

    イタリアGPでこの件について語ったヴォルフは、F1の将来に向けた大まかな方向性は定まったと述べた。ただし、要素を確定し、最終パッケージをまとめるにはまだ時間が必要だとした。

    「最終的にV8が最良の妥協点だった。高回転で回る自然吸気、依然として性能差を生むエネルギー回生システム、持続可能燃料──そのすべては一致している。

    今はモハメド(ビン・スライエム)、ステファノ(ドメニカリ)と対話し、『今後どうするか?』をメーカー全員で話し合う段階だ。

    利害の一致があると思う。我々がしている会話は非常にバランスが取れていて、理性的だ」

    F1の過去を彩ったV8は、未来においてもその中心となりそうだ。ただし、それは当初望まれていた2029年ではなく、2031年以降になる見通しである。