アルピーヌF1チームの株式24%を保有するOtro Capitalが、その持ち分をF1とは無関係の裕福な米国人投資家に売却する見通しだという。英国のF1ジャーナリスト、ジョー・サワードが『2 Guys, A Girl, and F1』ポッドキャストで明らかにした。
アルピーヌへの関与を模索してきた元レッドブル・レーシング代表のクリスチャン・ホーナーにとって、この動きは復帰構想を難しくするものとなる。
サワードによれば、ホーナーが求めているのは単なる少数株主ではなく、チーム経営に実質的な影響力を持つ立場であり、ルノーがチーム全体の売却を拒んでいることが最大の障壁になっている。
Otro Capitalのアルピーヌ株24%が売却へ
ルノーは2023年、アルピーヌF1チームの株式24%を投資グループのOtro Capitalなどに売却した。その後F1チームの企業価値が大幅に上昇したことで、Otro Capitalは保有株式を売却して利益を確定させることを検討してきたという。
一方、2025年にレッドブルを離れたホーナーは、F1への復帰に向けた道を模索してきた。その選択肢のひとつとして浮上したのがアルピーヌへの出資だった。
ホーナーは富豪を含む投資家グループから支援を受け、Otro Capitalが保有する24%の株式を取得することでアルピーヌへの関与を始める可能性が取り沙汰されてきた。
しかし、サワードによると、これまでの契約にはOtro Capitalによる株式売却に対してルノーが拒否権を行使できる条項が存在していた。
「これが何か大きな転換点になるのかは分からない」とサワードは語った。
「彼らは多額の資金を調達して24%を手放した。ただ、24%を持っていても何かをコントロールできるわけではないので、実際にはそれほど意味のある持ち分ではなかった」
「9カ月ほど前、Otro Capitalは『そろそろ現金化したい。F1チームの評価額は上がっている。投資額を2倍、3倍、4倍にしたい。24%を売却したい』となった」
ルノーの拒否権が9月8日に失効
重要な転機となったのが9月8日だったという。
サワードによれば、ルノーにはOtro Capitalの株式売却を阻止できる契約上の権利があったものの、その条項が9月8日をもって失効した。
「契約にはルノーが取引を拒否できる条項があった。それが9月8日に失効した。だから今週から彼らは売却できるようになった」
これによってOtro Capitalは、ルノーの意向とは関係なく、自らが保有する株式を第三者へ売却できる状況になったという。
ホーナーがここで動く可能性も考えられていたが、サワードによれば、実際の買い手として浮上しているのはホーナーではない。
買い手は「F1とは何の関係もない」裕福な米国人
サワードは、Otro Capitalの24%を取得する人物について、F1とのつながりを持たない裕福な米国人だと説明している。ただし、その人物の身元は現時点で明らかになっていない。
「買い手がいる。F1とは何の関係もない裕福な米国人だ。ただ、僕はそれが誰なのか知らない。彼はOtro Capitalに大金を支払うことになる」
「ルノーはそうなることを望んでいないが、この人物は気にしていない。彼は支配権を欲しがっているわけではなく、大金を稼ぎたいだけだ」
さらにサワードは、その人物についてF1そのものへの関心はほとんどないと強調した。
「興味はまったくない。F1マシンにひかれたとしても、それがF1マシンだとほとんど分からないくらいだ」
つまり、この投資家にとってアルピーヌ株の取得はモータースポーツへの情熱によるものではなく、F1チームの企業価値上昇を見込んだ純粋な投資案件だという見方だ。

ホーナーが24%だけを買わない理由
これがホーナーにとって大きな問題となる。
サワードによれば、ホーナーはアルピーヌの株式を単純な金融投資として取得したいわけではない。F1に復帰するのであれば、チーム運営に関与できるだけの権限を求めているという。
「だからクリスチャン・ホーナーが買い手にはならない。クリスチャン・ホーナーは、自分に何の支配権も与えられない24%を買いたいわけではない。それでは意味がない」
「ルノーはチーム全体を売るつもりがない。現状はそういうことだ」
ホーナーがOtro Capitalの株式取得を入口としてアルピーヌに関与したとしても、残る株式を握るルノーがチームそのものを手放さない限り、ホーナーが望む経営権を確保することはできない。
したがって、Otro Capitalの持ち分だけを取得することは、チーム運営への復帰を目指すホーナーにとって魅力的な選択肢ではないという。
新たな株主を近く発表か
サワードは、Otro Capitalによる株式売却について、正式発表が近いとの見通しも示している。
「近いうちに、Otroが去り、別の人物が入ってくるという発表があると完全に予想している。それが誰なのかは分からない。それが結論だ」
この情報が正しければ、アルピーヌF1チームでは近く少数株主の交代が発表されることになる。ただし、24%の株式が新たな投資家へ渡っても、ルノーが引き続き過半数を保有するため、チームの支配権そのものが移るわけではない。
ホーナーにとってアルピーヌへの道が完全に閉ざされたことを意味するわけではないものの、ルノーがチーム全体を売却しない姿勢を維持する限り、経営権を伴う形でのF1復帰を実現するには別の道を探す必要がありそうだ。

















