タグ: 本田技研工業

  • ホンダF1苦戦に体制問題の指摘「日本企業特有の人事ローテーション」

    ホンダF1苦戦に体制問題の指摘「日本企業特有の人事ローテーション」

    ホンダF1のパワーユニットを搭載するアストンマーティンは、2026年F1シーズン開幕直後から厳しい状況に直面している。振動問題などパワーユニットの課題が指摘されており、マシン本来のパフォーマンスを十分に発揮できていない状態が続いている。

    こうした苦戦の背景について、元F1ドライバーで解説者のジョニー・ハーバートはホンダの体制面に問題がある可能性を指摘。

    ハーバートは「日本企業特有の人事ローテーション」が現在の開発体制に影響しているとの見方を示し、状況の改善には時間がかかる可能性があると語った。

    ニューウェイでも解決できない問題
    ジョニー・ハーバートは、現在の問題はシャシーではなくパワーユニット側にあると指摘する。たとえエイドリアン・ニューウェイのような名デザイナーが関わっていたとしても、すぐに状況を変えることはできないと語った。

    「エイドリアンは状況を変えられない。彼の手の届くところにない問題だ」

    「これはシャシーの問題ではない。シャシーは問題なさそうだ。問題は内燃エンジンにある。なぜかホンダは適切な人材を揃えられていない」

    現在のホンダのパワーユニットは振動問題など複数の課題を抱えており、その影響でアストンマーティンAMR26のシャシーや空力性能の本来の実力を確認することも難しい状況にある。エンジンが完全なパフォーマンスで稼働できるようになって初めて、マシンの本当のポテンシャルが見えてくるとみられている。

    「日本企業特有の人事ローテーション」
    ハーバートはさらに、ホンダの人事体制にも問題の要因がある可能性を指摘した。レッドブルとタイトルを争っていた時代とは開発体制が変わっている可能性があるという。

    「レッドブルにエンジンを供給していた頃と同じ体制ではない。これは日本企業ではよくあることだ。経験を積ませるために人材をローテーションする」

    「その結果、ある時点で組織が少し混乱する。優秀なエンジニアが関わっていても、別のプロジェクトへ移ってしまうからだ」

    その結果、新しい内燃エンジン開発において他メーカーが築いた開発体制や方法論が、現時点では十分に機能していない可能性があると指摘した。

    ホンダ F1 本田技研工業

    今季は厳しいシーズンに
    ハーバートは、現状の問題がすぐに解決するとは考えておらず、アストンマーティンとホンダは長い苦戦を強いられる可能性があると見ている。

    「現時点では適切なシナジーがあるようには見えない。方向転換には長い時間がかかる。双方の協力が必要になる」

    そして今季の見通しについて、次のように語った。

    「今年は完全な失敗だ。そして来年もうまくいく保証はない。やるべき仕事があまりにも多すぎる」

    「日本で開発を進めることはできるだろうが、エンジンはまだ非常に遅れている。彼らが言っている振動問題はかなり深刻なもののようだ。簡単に解決できる問題ではない」

    振動の原因特定は難しく、修正には時間がかかる可能性が高いとみられている。結果として、アストンマーティンとホンダは2026年F1シーズンを通じて厳しい戦いを強いられる可能性がある。

  • アストンマーティンF1 ホンダPU振動問題は長期化の可能性「完全に想定外」

    アストンマーティンF1 ホンダPU振動問題は長期化の可能性「完全に想定外」

    アストンマーティンF1のシミュレータードライバーであるダニエル・ジュンカデラは、ホンダ製パワーユニットの振動問題について「完全に想定外だった」と明かした。チームは2026年F1シーズン開幕戦オーストラリアGPで深刻な信頼性問題に直面しており、中国GPでも状況は依然として不透明なままだ。

    中国GPを前にホンダは修理されたバッテリーを上海に送り返し、アストンマーティンは2台合計で3基のバッテリーを確保した。

    しかしチーム関係者は、問題の解決には時間がかかる可能性が高いと見ており、パドックでは別の見方も広がっている。

    ジュンカデラ「シミュレーターでは兆候がなかった」
    2024年末にチームへ加入したダニエル・ジュンカデラは、今回の問題についてシミュレーターでは兆候が確認できなかったと語った。

    「シミュレーターでは何が起きたのか理解するのは難しい。僕はそれが来るのを見ていなかった」とジュンカデラは語った。

    「シミュレーターでは、チームが提供するデータをもとに数値を入力するだけだから、すべてが非常に正確なんだ。あとになってパワーユニットが想定していた出力を発揮していないと分かったとしても、僕がクルマをテストした時にはこうした問題が起きるとは思っていなかった」

    この状況は、HRCのチーフエンジニアである折原慎太郎の説明とも一致する。折原慎太郎は、パワーユニットとシャシーの組み付けがプレシーズンテスト開始の直前だったことを明らかにしている。

    中国GPでは最低限の体制を確保
    メルボルン仕様のバッテリー1基がホンダのさくらの施設で修理され、上海に戻されたことで、アストンマーティンは中国GPに向けて2台合計3基のバッテリーを確保することができた。

    フェルナンド・アロンソは、日本GPまでにより意味のある進展が見られる可能性を示唆している。

    「日本ではいくつか改善があるかもしれないし、スペアも増えると思う。新しいパーツも入るはずだ」

    「バッテリーもさらに届くだろうし、そうなれば修理できることが分かった状態でクルマをプッシュできると思う」

    ペドロ・デ・ラ・ロサ「これは中期的な問題」
    しかし、アストンマーティンのアンバサダーであるペドロ・デ・ラ・ロサは、問題の解決には時間がかかると警告している。

    「ホンダはさくらで実車とギアボックスを使って昼夜を問わず作業している」とデ・ラ・ロサは語った。

    「できるだけ早く問題を解決しようとしているが、これは長いプロセスだ。誰にも誤解を与えたくない」

    「ホンダは小さなソフトウェアの調整だけではなく、性能を改善するために設計変更を行う必要がある。日程を決めることはまったく現実的ではない。これは中期的な問題だ」

    本田技研工業 F1 アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

    パドックではADUOを巡る疑念も
    一方で、パドックでは別の見方も広がっている。日本の専門メディアは、エイドリアン・ニューウェイが問題を強調することで、進捗を早めるための優遇措置であるADUOの適用を狙っているのではないかという疑念がライバル陣営にあると報じた。

    あるライバルチーム代表は率直にこう語っている。

    「2015年と2016年にホンダが苦しんでいた時、我々は彼らを助けることに同意した」

    「その後、彼らは4回連続で選手権を勝った」

    「だから今回は同じことはしない。2028年や2029年にタイトルを獲る手助けをしたくないからだ」

    「ルールは全員に同じように適用される」

  • ホンダF1、エンジン論争でFIAに明確な姿勢「解釈の余地は議論すべき」

    ホンダF1、エンジン論争でFIAに明確な姿勢「解釈の余地は議論すべき」

    ホンダ・レーシングの渡辺康治社長は、現在進行中のF1パワーユニットを巡る問題について、明確な姿勢を示した。

    新たなレギュレーションサイクルを土台とする新シーズン開幕が数週間後に迫るなか、エンジンメーカーの一部では不満が高まっている。その背景にあるのが、新レギュレーションに含まれる50:50のV6ハイブリッドエンジンにおける圧縮比を巡る、いわゆる「抜け穴」の存在だ。

    圧縮比の上限は16:1と定められており、その測定は周囲温度(アンビエント)で行われる。この点こそが、問題の抜け穴が見つかったとされる部分である。

    メルセデスとレッドブル・フォードのパワートレイン・プロジェクトは、周囲温度を上回る条件下で圧縮比を高める方法を見出したとされ、これが性能面での優位につながる可能性が指摘されている。

    この手法によって、1周あたりで大きなゲインが生まれる可能性があり、メルボルンのアルバート・パーク・サーキットで行われる開幕戦では、1周あたりコンマ3〜4秒の差になるとの予測も出ている。

    他の3つのOEMであるアウディ、フェラーリ、ホンダは、バルセロナで行われる最初のプレシーズンテストを前に、FIAとの会合に臨んだ。

    アストンマーティンに独占供給するパワーユニットのローンチの場で、渡辺康治社長はこの状況に対する日本メーカーとしての立場を語った。

    「今年は新しいレギュレーションが始まる年であり、その解釈や運用についても、今回の件に限らず多くの要素が議論の対象になると考えています」

    「ですので、現時点ではすべてを切り分けて考えていきたいと思っていますが、我々としては、開発にあたってレギュレーションを順守し、それに沿って取り組んでいるという点を明確にしたいです」

    「レギュレーションというのは、すべてが細部まで明確に書かれているわけではありません。そのため新しいレギュレーションの中で、各パワーユニットごとに新しい技術の可能性を探っていくことになります」

    ホンダ技研工業 F1 ホンダ

    渡辺康治社長は、ルールには「解釈の余地」が残されていることを認めたうえで、ホンダ自身も「異なるアイデア」を持っており、それについてFIAの判断を仰ぎたい考えを示した。

    「解釈の余地は多く残されていますし、それもまたレースの一部だと思っています。FIAにとっては、それが良いのか悪いのかを判断する立場になります」

    「ホンダとしては、さまざまなアイデアを持っていますので、それが受け入れられるのか、それとも問題があるのかを理解するために、FIAと話し合いたいと考えています」

    「そのような形で進めていくつもりですし、レギュレーションに関わる事柄については、常にFIAと協議していきたいと考えています」

  • ロン・デニス、マクラーレン・ホンダF1の失敗を認める「私は間違っていた」

    ロン・デニス、マクラーレン・ホンダF1の失敗を認める「私は間違っていた」

    元マクラーレンのチーム代表であるエリック・ブーリエは、2015年F1シーズンを前にホンダに対する懸念を退けていたロン・デニスが、その判断を後に謝罪したと明かした。

    マクラーレンは2015年、約30年ぶりにホンダと再タッグを組んだ。両者は1980年代後半から1990年代初頭にかけて、アラン・プロストやアイルトン・セナとともにF1を席巻した名コンビだった。

    しかし2015年初頭、その現実が「悲惨」なものであることが明らかになると、ロン・デニスはブーリエに謝罪したという。

    フェルナンド・アロンソとジェンソン・バトンというスター級ドライバーを擁していたにもかかわらず、ホンダ製パワーユニットは遅く、信頼性にも欠け、マクラーレン・ホンダの再結成は失敗に終わった。

    両者は2017年末に袂を分かち、その時点でデニスはすでにマクラーレンを去っていた。ブーリエも翌年、チームを離れている。

    ブーリエによれば、2014年シーズン中に何度も日本を訪れ、ホンダのF1エンジン開発について懸念を示していたが、デニスはそれを取り合わなかったという。

    ところが2015年初頭、プレシーズンテストで最悪の懸念が現実となったことで、デニスは態度を改めた。

    ブーリエは『モータースポーツ』誌に次のように語っている。

    「2014年のある時、日本にあるホンダのF1本拠地を訪問してウォーキングに戻り、ロン・デニスにこう尋ねたのを覚えている。『ホンダが来年すぐにメルセデスや他と戦える準備ができるなんて、どうして可能なんだ? 明らかに大きく遅れているのに』とね」

    「ロンは『心配するな』と答えた」

    「その後、再びホンダの工場を訪れ、そこからロンに電話をかけた」

    「『ここに来て、自分の目で見てくれ』と私は言った。でも、またしてもロンは『すべてうまくいく』と断言した」

    「しかし、うまくいかなかったし、実際そうならなかった。ホンダは準備ができていなかった。彼らがF1プロジェクトに着手したのは2012年末だった」

    「フェラーリとルノーは2010年、メルセデスは2009年に始めていた。ホンダは何マイルも遅れていた」

    「2015年2月にヘレスでテストをしたとき、我々は本当にひどかった。遅くて信頼性もなかった。その時ロンが私に電話をしてきて、こう言った。『君が正しかった、私は間違っていた、エリック。おそらく私がフランス人に謝ったのは、これが初めてだろう』とね」

    本田技研工業 F1 ホンダ

    その後、マクラーレンは2024年に復活を果たし、1998年以来となるドライバーズタイトルとコンストラクターズタイトルのダブル制覇を達成した。

    一方ホンダは、レッドブルとの非常に成功したパートナーシップを築き、2021年から2024年にかけてマックス・フェルスタッペンを4年連続タイトルに導いた。

    日本の自動車メーカーであるホンダは、2026年F1シーズンを前にアストンマーティンと新たなテクニカルパートナーシップを結んでいる。

    ホンダは2021年末でF1から撤退したものの、2025年末までレッドブルへの技術支援を継続しており、今回の提携はF1への公式復帰を意味する。

    ホンダは最近、東京で火曜日に開催されるローンチイベントを前に、2026年F1エンジンの画像を公開した最初のメーカーとなった。

  • ホンダF1初勝利60周年 1965年カバーオールが完全復刻された舞台裏

    ホンダF1初勝利60周年 1965年カバーオールが完全復刻された舞台裏

    ホンダが1965年のF1メキシコGPで初勝利を挙げてから60年。その節目にあたる記念イベントにおいて、当時のメカニックが着用していたカバーオールが、細部に至るまで忠実に復刻された。

    数千時間に及ぶ調査と2度の日本渡航を経て実現したこのプロジェクトは、単なる記念品の制作にとどまらず、ホンダが積み重ねてきたF1の歴史と文化を「着られる形」で現代に甦らせる試みとなった。

    クルマ文化とは何か
    クルマ文化は、特定のジャンルや価値観に限定されるものではない。旧車、量産車、エキゾチックカー、あるいはよりニッチな自動車の世界に至るまで、その根底には「自動車文化が重要である」という共通認識が存在する。では、クルマ文化とは何を指し、どこまでを内包するものなのか。その問いは、しばしば明確な定義を持たないまま語られてきた。

    今回のプロジェクトは、その問いに対し、ひとつの具体的な答えを提示するものだった。

    パトリック・カレロとHonda Vintage Culture
    このプロジェクトを主導したのは、Honda Vintage Cultureを手がけるパトリック・カレロである。カレロとの接点が生まれたのは、2024年のモントレー・カーウィーク終了後だった。ラグナ・セカで行われた、ホンダ初のF1優勝車によるデモンストレーション走行の取材時、日本から車両とともに帯同したチームの一部が、彼の制作したアイテムを着用していたことが、そのきっかけとなった。

    この偶然の出会いが、のちにホンダF1初勝利60周年を巡る象徴的なプロジェクトへと発展していく。

    デザインとホンダを結ぶ原点
    カレロは幼少期からモノづくりに親しみ、15歳でレコーディングアーティストのロゴを手がけていた。カーネギーメロン大学ではグラフィックデザイン、インダストリアルデザイン、ビジネスを学び、これまでに40台以上のホンダおよびアキュラを所有してきた経歴を持つ。

    木製カー・トイ「Automoblox」で成功を収めた後、ホンダとの関係が生まれた。カレロは当時を次のように振り返っている。

    「大学に入った頃、本気でカーデザイナーになることを考えていた。Car Styling Magazineを定期購読していて、当時は1冊25ドルくらいしたと思う。その後は別の道に進んだけど、Automobloxを通じて、クルマをデザインするという夢やアイデアにもう一度戻ることができた。それがホンダにつながった。」

    「僕のアイデア、あるいは提案はこうだった。『アメリカの家庭のリビングルームに入り込めたら、どれだけクールだろう?』って。大企業は消費者とつながるために、テレビ広告などに莫大なお金を使っている。でも、新しいホンダ・オデッセイを買った人が、同時にAutomobloxのオデッセイも手に入れたらどうだろう。オデッセイのAutomobloxがクルマと一緒についてきたらどうだろう、ってね。」

    「Automobloxのプロジェクトで本当にクールだったのは、ホンダが実車が公開される1年半も前に、オデッセイのCADデータを渡してくれたことだ。最終的にそのプロジェクトは実現しなかったけど、ホンダブランドをアメリカのリビングルームに届け、消費者とブランドをつなぐという考え方こそが、まさに僕の専門分野なんだ。」

    “着たいホンダ”という発想
    その後、カレロはホンダファンが身に着けられるプロダクトの必要性を感じるようになった。

    「ホンダのTシャツやフーディーを着てもらいたかった。でも、誰かに『なんでアコードやオデッセイの服を着ているの?』って思われるようなものにはしたくなかった。ホンダのクールな側面について語る必要があった。それで、豊かなレースの歴史に焦点を当てた。」

    この発想から、ヴィンテージ・アキュラのTシャツ、HRCジャケット、ヴィンテージF1ギア、ウォールポスターなど、Honda Vintage Cultureのラインアップが形成されていった。

    1965年、ホンダF1初勝利という原点
    ホンダがF1で初めて勝利を挙げたのは1965年のメキシコGPだった。アメリカ人ドライバー、リッチー・ギンサーが、チャンピオンシップホワイトに塗られたV12エンジン搭載のRA272を駆り、日本メーカーとして初のF1勝利を達成した。

    この歴史的瞬間から60年を迎えるにあたり、カレロはホンダに対して自ら提案を行った。

    「60周年が近づいているから、『何かできると思う』と連絡したんだ。『サポートしたいし、いくつかアイデアがある』ってね。」

    「1960年代のホンダチームジャケットのオリジナル写真を30〜40枚ほど見つけたけど、特に1965年に焦点を当てた。それでレプリカのジャケットを作ったら、『レースに間に合うように用意できる?』って聞かれた。」

    「ジャケットの次に、幹部がメキシコで着るポロシャツのアイデアが出て、それも急いで用意した。そして一番のクラウンジュエルがカバーオールだった。これは最初から絶対にやりたかった。とにかく徹底的なリサーチが必要だと分かっていた。」

    本田技研工業 F1

    カバーオール復刻への徹底した調査
    「Motorsport Imagesと連絡を取り、ライセンス契約を結んだ。そうすることで、アーカイブ写真に深く入り込むことができた。おそらく何万枚という写真を見た。その中で、1960年代のオーバーオールを見た瞬間、『これは信じられない。これは本当にすごい』と思った。」

    「チームは1964年から1965年にかけてこのカバーオールを着用していた。でも調べていくと、同じものが二輪チームでも使われていたことが分かった。1958年か1959年頃からだ。違いは袖に“Car Racing Team”と書かれていたかどうかだけだった。」

    「ホンダのライセンス部門の関係者が、モテギの博物館で展示されているカバーオールの写真を見せてくれた。ガラスケース越しに見たとき、『なんてことだ、これは本当にすごい』と思った。」

    「アーカイブへのアクセスを許可してもらい、展示されていないものも含めて実物を出してもらった。写真を大量に撮り、いつか必ず作るつもりだった。」

    「同時に、2着のセナのスーツも出してきた。ただし密閉されたバッグから出すことは許されなかった。それでも手に持つことができただけで衝撃的だった。」

    細部に宿る再現性
    「最初のサンプルは、市販ブランドのパターンを使った。でも気に入らなかった。」

    「2度目の日本行きで、さらに細部を撮影し、何百もの寸法を測った。背中の“Honda Motor Tokyo”と袖の文字はフラットベッドスキャナーで取り込んだ。アートワークは完全に同一だ。」

    「オリジナルは古くて少し不完全だけど、その不完全さも含めて再現した。当時はCADなんてなかったから、地元の作業着屋が持っていた文字を使って縫っていた。」

    「写真が白黒ばかりで、色や素材を判断するのも簡単じゃなかった。」

    「縫い目の幅、ステッチのパターン、バックルやストラップの寸法まで全部測った。サプライヤーが短期間で信じられないパターンを作ってくれたことには本当に感謝している。」

    ホンダ・レーシング F1

    メキシコで甦った歴史
    完成したカバーオールは航空便で日本へ届けられ、その後メキシコへ運ばれた。記念イベントでは、角田裕毅がステアリングを握り、RA272が1965年に歴史を刻んだ同じサーキットを走行した。V12エンジンは13,000回転まで回り、当時を彷彿とさせるサウンドを響かせた。

    それは、ホンダが過去だけでなく、現在、そして未来においても、オープンホイールレースという最も複雑で競争の激しい舞台をDNAとして持つメーカーであることを示す瞬間だった。

    「歴史は作れない」
    「ライセンス部門の人たちには本当に感謝している。ホンダ・ヘリテージ・コレクション・ミュージアムの人たちも信じられないほど協力的だった。」

    「カバーオールは航空便で日本に届けられ、予定どおり間に合った。幹部たちはそれを着てメキシコのサーキットに向かい、本当に満足してくれた。」

    「ホンダの情熱なしでは、これを成し遂げることはできなかった。ナイジェル・マンセルのウィリアムズF1を走らせるときも、ホンダは私の装備を着てくれている。」

    「この話を伝えることが重要だと思っている。ホンダのアジアの競合は、同じ物語を語ることができない。存在しなかった歴史は作れない。こうしたブランドエクイティは、エンスージアストの未来にとって極めて重要だ。」

  • ホンダがF1をやめなかった理由 渡辺康治が語るアストンマーティンとの覚悟

    ホンダがF1をやめなかった理由 渡辺康治が語るアストンマーティンとの覚悟

    ホンダ・レーシング・コーポレーション(HRC)の社長である渡辺康治が、ホンダがF1参戦を継続する理由、アストンマーティンに魅力を感じた点、そしてこのパートナーシップの最終目標について語った。

    ホンダは2015年から2017年にかけてマクラーレンにパワーユニットを供給したが、性能と信頼性の問題から、マクラーレンはルノーへ移行した。2018年にトロ・ロッソと組み、状況は改善し、2019年からはレッドブルと提携。

    渡辺康治はアストンマーティンのインタビューで、「ホンダはおそらくF1なしでは生きられないと思っています」と述べ、継続の理由をそう表現した。さらに、「技術面に目を向けますと、2026年のパワーユニット規則の変更が、我々がF1に戻る決断をするうえで重要な要因でした」と語っている。

    2026年からは電動モーターの比重が高まり、内燃機関との出力配分はおよそ50/50になる。

    「電動モーターの出力は120kWから350kWへと、ほぼ3倍に増えます。そこに持続可能燃料の要件が加わり、将来の駆動システムに対するホンダの哲学と完全に一致しています」と渡辺康治は理由を挙げた。

    「これは我々の企業戦略にも合致しています。モータースポーツの頂点は、技術を磨き、技術力を高め、それを世界的な舞台で示す場です。ホンダの将来にとって非常に重要だと考えています」

    本田技研工業 F1 アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

    パートナー選択と最終目標
    ホンダが最終的にアストンマーティンを選んだ理由について、渡辺康治はチームオーナーであるローレンス・ストロールの存在を挙げる。

    「我々は常にパートナー選びに慎重です。このケースでは、チームのリーダーシップ、そしてローレンス・ストロールの情熱とビジョンに強い印象を受けました」と述べた。

    「彼は非常に競争心が強く、常に勝利を目指しています。その姿勢は非常に印象的です。AMRテクノロジー・キャンパスの新施設にもその志向が表れていますし、近年、経験豊富な人材で組織を強化してきた点からも、それが見て取れます。チーム内の関与度と集中力は非常に高く、それがこの協業を我々にとってとても魅力的なものにしています。非常にワクワクする挑戦でもあります」

    2026年はパワーユニット面で大きな変化があるため、具体的な予測は難しいという。渡辺康治は2026年を、「アストンマーティンとホンダの協業が、意図した通りに一体のチームとして機能することを確認する年です」と位置づける。

    「我々の中核となる価値観が実行され、設定したパフォーマンス目標を達成できるようにしなければなりません」と語った。

    「我々が予測できず、影響も及ばないのは、ライバルがどの位置にいるかという点です。それが分かるまでは、シーズンにおける内部目標以上のことは見通せません。しかし長期的には、このパートナーシップの究極の目標、そして成功の定義は、世界選手権を勝ち取ることです」

  • ホンダ、2026年F1パワーユニット遅延説を一蹴「実走確認段階に入っている」

    ホンダ、2026年F1パワーユニット遅延説を一蹴「実走確認段階に入っている」

    ホンダは、元アルピーヌF1代表マルチン・ブドコウスキーが最近広めた「ホンダの2026年型パワーユニットが遅れている」との噂を明確に否定した。両者は、2026年に向けた公式バルセロナテストに全面的に参加することを確認している。

    ホンダの渡辺康治CEOは、開発状況について「完全なパワーユニットはすでにAMR26に搭載されており、実走確認段階に入っています。すべてが順調に進めば、この仕様を量産段階に持ち込む予定です」と語った。

    また、フェルナンド・アロンソも遅延説を一蹴し、1月に予定されているテストに向けて、すでにシート合わせの日程や渡航手配が組まれていることを明かしている。

    こうした公式コメントにより、アストンマーティン=ホンダの2026年プロジェクトが計画通り進行していることが改めて強調された形だ。

    ホンダ F1 本田技研工業

    2026年に向けた安心材料となった“エンジンサウンド”公開
    このタイミングでホンダは、2026年からアストンマーティンのF1マシンを駆動する次世代パワーユニットのエンジンサウンドも公開した。1.6リッターV6ターボのテストベンチ音声を短いクリップとして投稿し、アストンマーティンも公式SNSでこれを共有している。

    映像は一切なく、音だけの公開だったが、その反応は極めて大きかった。回転数の上昇とともに鋭い咆哮が響き、素早いシフトダウンでは攻撃的なブリッピングとバブル音が重なる。機械的で切迫感のあるサウンドは、「2026年でもF1らしさは失われない」というメッセージを強く印象づけた。

    アストンマーティンのインスタグラムでは、数時間で20万件以上の「いいね」と2000件を超えるコメントが集まり、ファンからは安堵や興奮の声が相次いだ。

    電動化時代でも“音”は健在というメッセージ
    2026年からF1は電動比率を大きく高めた新パワーユニット規則へ移行する。そのため、エンジンサウンドが抑えられるのではないかという懸念が以前から広がっていた。

    ホンダの今回の音声公開は、そうした不安を和らげるものとなった。技術的な数値や設計の詳細は一切明かされなかったが、「音」そのものが、開発が順調であることと同時に、F1のキャラクターが継続されることを示している。

    2026年からアストンマーティンはホンダのワークスパートナーとして新時代を迎える。レッドブルとの成功の歴史を経て始まる次の章に向け、少なくとも現時点では、開発の遅れを示す兆候は見られない。

  • アストンマーティンF1技術責任者 「ホンダは開発に全力、攻めの姿勢が違う」

    アストンマーティンF1技術責任者 「ホンダは開発に全力、攻めの姿勢が違う」

    アストンマーティンF1のチーフテクニカルオフィサー(CTO)エンリコ・カルディーレは、ホンダが「他メーカーよりも強くプッシュできる」と語った。2026年に向け、ホンダが唯一供給するチームがアストンマーティンであることが大きな強みになるという。

    アストンマーティンは2009年のフォースインディア時代からメルセデス製パワーユニットを使用してきたが、2026年からはホンダ製エンジンに切り替え、正式なワークスチームとなる。

    エイドリアン・ニューウェイとカルディーレの加入、そして2023年5月に発表されたホンダとの提携によって、チームは大きな転換点を迎えている。

    カルディーレはポッドキャスト『Beyond the Grid』で次のように語った。

    「開発段階では、彼ら(ホンダ)は我々のリクエストに完全に集中してくれている。他チームとの妥協をする必要がない。供給先がひとつだけというのは大きなメリットだ」

    「また、供給量が少ない分、開発の自由度が高くなり、より積極的に開発を進めることができる。複数チームを相手にするよりも“攻められる”状況にあるんだ」

    ホンダの“アグレッシブな姿勢”に驚き
    ホンダは過去4シーズンにわたりドライバーズタイトルを獲得しており、アストンマーティンにとってその実績は大きな期待材料となっている。

    カルディーレはフェラーリ在籍時には同チームのエンジン部門と協働していたが、現在は主にシャシー開発に集中しているという。

    「私は基本的にシャシー側の開発に集中しているので、ホンダの動きをすべて見ているわけではない」と前置きしつつも、「ただ、彼らのコミットメントと開発へのアグレッシブなアプローチには本当に驚いている」と称賛した。

    「彼らは非常にオープンで、我々のシャシー側からの要望にも柔軟に対応してくれている」

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム 本田技研工業 F1

    2026年レギュレーションにも創造の余地
    2026年の新レギュレーションは「制約が多すぎる」との批判もあるが、カルディーレはむしろ創造性を発揮する余地があると指摘する。

    「2021年の新レギュレーションのときも同じ感覚を覚えた」とカルディーレは振り返る。

    「一見すると制限が多くて残念に思えるが、実際に取り組んでみると、創造的な発想を生かせる余地がある。新しい解決策を見つけ、開発の中でロード(空力的な荷重)を引き出す自由度が確かにあるんだ」

    「今回のレギュレーションも同じだ。最初は“厳しすぎる”と思ったが、実際に手を動かすと、開発に使える自由度が見えてくる」

    アストンマーティン×ホンダ体制の可能性
    カルディーレの言葉からは、ホンダとアストンマーティンの協力体制が非常に密接で、双方が2026年の新時代に向けて積極的に取り組んでいる様子がうかがえる。

    1チーム体制により、ホンダはアストンマーティン専用のPU開発に全力を注ぐことが可能になり、レッドブル時代には得られなかった“完全なワークス環境”が整う。

    エイドリアン・ニューウェイ、カルディーレ、そしてホンダ——この新たな技術トライアングルがどのようなマシンを生み出すのか、2026年はその真価が問われるシーズンとなる。

  • ホンダ、本格レーシングシミュレーター「Honda eMS SIM-01」を限定発売

    ホンダ、本格レーシングシミュレーター「Honda eMS SIM-01」を限定発売

    ホンダ・レーシング(HRC)は2025年11月11日、ホンダ・レーシング・スクール鈴鹿(HRS)の教習用フォーミュラマシンをベースに開発したレーシングシミュレーター筐体「Honda eMS SIM-01(ホンダ・イーエムエス・シム・ゼロワン)」を、10台限定で発売すると発表した。価格は税別1,000万円。

    この「Honda eMS SIM-01」は、実際にサーキット走行トレーニングで使用されていた車両「童夢SDH-F04」をベースに製作されたもので、6.2chサラウンドシステムや1,500W振動子、サイドポンツーン内蔵のサブウーファーなどを搭載。五感を刺激するリアルなドライビング体験を提供する。

    HRCは2023年からeモータースポーツに本格参入し、「車を操る楽しさ・競う楽しさ・観る楽しさ」を世界中に広げる活動を展開。年に一度開催する公式イベントでは、初年度20万人、2024年23万人、2025年には22万人が参加するなど人気が高まっている。

    購入時には希望のリバリー(カラーリング)にカスタマイズすることも可能で、レンタルでの体験も受付中。販売はZENKAIRACINGの公式サイトで行われる。

    ■商品概要
    ・商品名:Honda eMS SIM-01
    ・価格:10,000,000円(税別)
    ・販売予定数:10台(数量限定)
    ・サイズ:L 3000 / W 1700 / H 1000mm
    ・重量:200kg
    ・搭載システム:6.2chサラウンドシステム、1500W振動子、サイドポンツーン内蔵サブウーファー、コンソール・PC接続対応
    ・ベース車両:童夢SDH-F04
    ・購入方法:ZENKAIRACINGサイト(contact@zenkairacing.com)
    ・レンタル方法:eMSお問合せ窓口(te_hondaracing-ems_shared@jp.honda)

    本田技研工業

  • 三部敏宏社長 RA272走行はホンダF1の「過去から未来へ挑戦をつなぐ象徴」

    三部敏宏社長 RA272走行はホンダF1の「過去から未来へ挑戦をつなぐ象徴」

    本田技研工業の三部敏宏社長が、2025年F1メキシコGPの開催地であるエルマノス・ロドリゲス・サーキットを訪問し、角田裕毅によるホンダF1初勝利マシン「RA272」のデモ走行を見守った。1965年メキシコGPでリッチー・ギンサーが挙げたホンダF1初優勝から60年を記念した特別な瞬間となり、現地では多くのファンが日本メーカーの伝統と挑戦の歴史を称えた。

    三部社長は現地でメッセージを発表し、「過去から未来へ挑戦をつなぐ象徴」として今回の走行を位置づけ、2026年からのF1ワークス復帰に向けた強い意欲を示した。

    「皆さんこんにちは、ホンダの三部です。今回はメキシコのエルマノス・ロドリゲスサーキットに来ています。ホンダは1965年メキシコグランプリで挙げたF1初勝利は、ホンダが世界の舞台で示した歴史的な一歩でした。本日、角田裕毅選手がその初優勝マシーンであるRA272で走行し、多くのファンが声援を送る姿に、私も胸が熱くなりました」

    「2026年からワークスとしてF1に参戦するホンダにとって、今日の走行は過去から未来へ挑戦をつなぐ象徴と言えると思います。今後もホンダは世界最高峰の舞台での挑戦を通じて、ファンの皆様に感動をお届けできるよう努めてまいります。引き続き応援をよろしくお願いします」

    角田裕毅、歴史的マシンをドライブも途中でストップ
    角田裕毅は、ホンダがF1で初勝利を飾った伝説のマシンRA272をドライブし、スタジアムセクションに詰めかけたファンから大歓声を浴びた。RA272は1965年のメキシコGPでリッチー・ギンサーが優勝したシャシーであり、V12エンジンのサウンドが会場に響き渡った。

    しかし走行の途中、角田はギヤトラブルによりマシンを停止させることを余儀なくされた。それでも短い走行ながら、ホンダとファンにとって特別な瞬間となった。


    分析:ホンダF1復帰への「象徴的な橋渡し」
    今回のデモランは、単なる記念イベントにとどまらない。2026年にアストンマーティンとのパートナーシップでF1ワークスとして復帰するホンダにとって、かつての栄光を再確認し、未来への決意を示す“儀式”とも言えるものだ。

    特に角田裕毅がこの歴史的マシンをドライブしたことは、ホンダF1の“過去と現在をつなぐ”象徴的な演出となった。ホンダのDNAを継ぐ日本人ドライバーが現役でF1を戦い、そしてRA272を操る姿は、企業としての連続性と挑戦心を体現している。

    三部社長の言葉どおり、「過去から未来へ挑戦をつなぐ」というメッセージは、ホンダのF1プロジェクト再始動に向けた確固たる意思表明だった。