ピエール・ガスリーが2026年F1イタリアGP予選でキャリア初のポールポジションを獲得した。F1参戦191戦目でつかんだ初ポールは、史上2番目に長い道のりを経て達成された記録となった。
アルピーヌのガスリーはモンツァで1分21秒786を記録し、ジョージ・ラッセルとオスカー・ピアストリを抑えて予選トップに立った。2020年にF1初優勝を飾った思い出のモンツァで、今度は自身初となるポールポジションを手にした。
F1では、競争力のあるマシンを得るまで長い時間を要しながら、チャンスをものにして初ポールを獲得したドライバーが何人もいる。ガスリーの191戦はセルジオ・ペレスの216戦に次ぐ歴代2位。ここでは、初ポールまで最も多くのレースを要したドライバー10人を振り返る。
9位タイ:ミカ・ハッキネン(94戦)
ミカ・ハッキネンはF1最初の2シーズンを苦戦していたロータスで過ごした後、1993年にマクラーレンのリザーブドライバーに就任。マイケル・アンドレッティの離脱を受け、シーズン終盤にレースシートを得た。
すぐに速さを示したハッキネンだったが、ちょうどその時期のマクラーレンは低迷期に入り、タイトルを争える状況にはなかった。
1994年から1996年にかけて何度も表彰台に上がり、1997年にはマクラーレンの競争力が向上。シーズン終盤のニュルブルクリンクで行われたルクセンブルクGPで、参戦94戦目にして待望の初ポールを獲得した。

9位タイ:ダニエル・リカルド(94戦)
HRTで半シーズンを戦った後、トロロッソで2年間実力を示したダニエル・リカルドは、2014年に4年連続王者だったレッドブルへ昇格した。しかし、そのタイミングで新レギュレーションを味方につけたメルセデスが圧倒的な強さを発揮し始めた。
リカルドは2014年にメルセデス勢以外で唯一勝利を挙げたドライバーとなったものの、ポールには届かなかった。レッドブルが苦戦した2015年も状況は変わらなかった。
2016年もメルセデス優勢が続いたが、モナコではレッドブルがトップ争いのできる速さを発揮。リカルドはQ3で会心のラップをまとめ、参戦94戦目で初ポールを獲得した。

8位:ニコ・ロズベルグ(111戦)
初代GP2王者のニコ・ロズベルグは2006年にウィリアムズからF1デビューした。しかし当時のウィリアムズは低迷期に入り、中団での戦いが続いた。
4シーズンを過ごした後、ロズベルグはブラウンGPを買収して誕生したメルセデスへ2010年に移籍。チームの再構築には時間を要したが、2012年になるとマシンは特定の条件で高い速さを見せるようになった。
そのチャンスが訪れたのが中国GPだった。ロズベルグは上海でミハエル・シューマッハを上回ってポールを獲得し、メルセデスに1955年以来となるF1ポールポジションをもたらした。翌日の決勝では、そのまま自身初優勝も達成した。

7位:ティエリー・ブーツェン(115戦)
ティエリー・ブーツェンは1983年にアロウズからF1に参戦し、その後ベネトンを経て1989年にウィリアムズへ加入した。
当時はマクラーレンがF1を支配しており、他チームにポールのチャンスが回ってくることは少なかった。1989年にはチームメイトのリカルド・パトレーゼがハンガリーGPでポールを獲得している。
翌1990年のハンガリーGPではブーツェンがパトレーゼをわずか0.036秒差で破り、参戦115戦目で初ポールを獲得した。これがブーツェンにとって唯一のF1ポールとなり、決勝でも勝利して自身3勝目を挙げた。

6位:ヤルノ・トゥルーリ(119戦)
ヤルノ・トゥルーリはF1キャリアを通じて予選での速さに定評があったが、初期には中団チームで過ごす時間が長かった。
ルーキーだった1997年にはプロストでオーストリアGP予選3番手を獲得し、ジョーダン時代の2000年には2度フロントローに並んだ。特にモナコでは高い予選能力を発揮していた。
2003年にルノーへ移籍したものの、その年はチームメイトのフェルナンド・アロンソが先にポールを獲得。トゥルーリの番が訪れたのは2004年のモナコGPだった。R24で見事なラップを決めて参戦119戦目で初ポールを獲得し、翌日の決勝では自身唯一となるF1優勝を飾った。

5位:マーク・ウェバー(131戦)
マーク・ウェバーは2002年、ミナルディからF1デビューし、地元オーストラリアGPでいきなり5位入賞を果たして注目を集めた。
2003年にジャガーへ移籍すると予選でたびたび印象的な走りを披露。2004年マレーシアGPで2番手、ウィリアムズへ移籍した2005年スペインGPでも2番手につけた。2006年モナコGPでは3番手、レッドブル移籍後の2008年イギリスGPでも2番手を獲得している。
2009年にレッドブルが一気に優勝争いへ加わると、ウェバーにもついにチャンスが訪れた。ニュルブルクリンクで行われたドイツGPで、参戦131戦目にして初のポールポジションを獲得した。

4位:ケビン・マグヌッセン(141戦)
ケビン・マグヌッセンは2014年、マクラーレンでのF1デビュー戦でいきなり表彰台に上がった。しかし、それがその後のキャリアを象徴する結果にはならなかった。
マクラーレンの競争力は低下し、マグヌッセンはシートを失った。2016年にルノーから復帰し、その後はハースで4年間を戦ったが、主に中団での戦いが続いた。2020年限りで一度F1を離れたものの、2022年開幕直前にハースへ電撃復帰した。
そして同年のサンパウロGPで大番狂わせを起こす。Q3で最初にコースへ出たマグヌッセンは、雨が強まる直前のドライコンディションで好タイムを記録。その直後にジョージ・ラッセルがコースアウトして赤旗となり、再開時には路面が完全に濡れていた。
誰もタイムを更新できず、マグヌッセンが参戦141戦目で初ポールを獲得。ハースにとってもF1初ポールとなった。

3位:カルロス・サインツJr.(151戦)
カルロス・サインツJr.は2015年にF1デビューし、トロロッソ、ルノー、マクラーレンと中団チームを渡り歩いた。
2021年にフェラーリへ移籍して初めて本格的にポールを狙える環境を手にしたが、マシンに速さがある場面では予選巧者のシャルル・ルクレールが先に結果を残した。
2022年にはフェラーリが高い競争力を発揮し、サインツJr.もマイアミとモナコでルクレールに次ぐ予選2番手を獲得。そしてウエットコンディションとなったイギリスGP予選でマックス・フェルスタッペンを0.072秒差で破り、参戦151戦目で初ポールを手にした。
翌日の決勝でも勝利し、F1初優勝を達成した。

2位:ピエール・ガスリー(191戦)
そして2026年F1イタリアGPで、このランキングの2位に入ったのがピエール・ガスリーだ。
トロロッソ、レッドブル、アルファタウリ、アルピーヌでキャリアを重ねてきたガスリーは、これまでも予選で何度も印象的なパフォーマンスを披露してきた。特に2021年には複数回にわたって4番手を獲得している。
アルピーヌ移籍後も2024年ラスベガスGPで3番手、2025年バーレーンGPで5番手につけるなど、マシンの実力を上回る予選結果を残すことがあった。
そして2026年、ガスリーは2020年にF1初優勝を挙げたモンツァで再び大きな結果を残した。予選を通してアルピーヌが予想外の速さを発揮するなか、Q3で1分21秒786をマーク。ラッセルを0.060秒差で抑え、参戦191戦目で初ポールを獲得した。
それまでガスリーは「ポール未獲得の最多出走」でエステバン・オコンに次ぐ2番手だったが、この一戦でそのリストから抜け、初ポール獲得までの出走数で歴代2位となった。

1位:セルジオ・ペレス(216戦)
F1史上、初ポール獲得まで最も長く待ったのはセルジオ・ペレスだ。
ザウバー、マクラーレン、フォース・インディア/レーシングポイントと長く中団チームで戦ったペレスは、決勝では何度も番狂わせを演じた一方、純粋な速さが要求される予選でポールを狙える機会はほとんどなかった。
レッドブル加入後はようやくトップマシンを手にしたが、チームメイトのフェルスタッペンが予選でも優位に立つことが多かった。2021年エミリア・ロマーニャGPではポールまでわずか0.035秒に迫ったものの、初ポールには届かなかった。
その瞬間が訪れたのは2022年サウジアラビアGPだった。ジェッダ市街地コースでルクレールをわずか0.025秒差で破り、参戦216戦目にしてF1初ポールを獲得した。

ガスリーの191戦目での初ポールは、このペレスの216戦に次ぐ歴代2位の記録となる。長く中団で戦いながらチャンスを待ち続けたドライバーが並ぶランキングのなかでも、約9年にわたるF1キャリアを経てモンツァで実現したガスリーの初ポールは、2026年シーズンを象徴するサプライズのひとつとなった。


















