カテゴリー: マクラーレンF1チーム

  • ランド・ノリス F1オランダGPスプリント予選で0.041秒差の2番手「少し残念」

    ランド・ノリス F1オランダGPスプリント予選で0.041秒差の2番手「少し残念」

    ランド・ノリスは、2026年F1オランダGPのスプリント予選で2番手となり、ポールポジションをわずか0.041秒差で逃した。マクラーレンの競争力には手応えを感じる一方、トップに届かなかった結果については「少し残念」と率直に振り返った。

    前戦ハンガリーGPでポール・トゥ・ウインを飾ったノリスは、アップデートが投入されたMCL40でも好調を維持。ザントフォールトではメルセデス、フェラーリとの接戦となり、週末に向けてさらなる改善の余地があるとみている。

    わずか0.041秒差でスプリントポールを逃す
    ノリスはSQ1、SQ2をともに2番手で通過。SQ3では1分11秒608を記録して暫定トップに立ったが、最後はメルセデスのジョージ・ラッセルが0.041秒上回り、フロントロウ2番手となった。

    セッション後、その僅差を知らされたノリスは結果を前向きに受け止めつつも、悔しさを隠さなかった。

    「そうなんだ。それでも何かはあるね! まずまず満足していると思う。まだいいポジションだ」

    「まずまずのラップだったし、これだけ僅差だったことを考えれば、簡単に1番手にもなれたし、4番手や5番手にもなり得た。いいスプリント予選だった」

    「どのチームも接近していて、まさに僕たちが予想していた通りだった。でももちろん、1番手ではなく2番手だったのは少し残念だ」

    実際、上位争いは極めて僅差だった。ポールのラッセルとノリスとの差は0.041秒。3番手シャルル・ルクレール、4番手オスカー・ピアストリまでを含めても、その差はわずかだった。

    ソフトタイヤで「もう少し攻められた」
    ノリスが改善点として挙げたのは、SQ3で使用したソフトタイヤへの対応だった。ミディアムからソフトへ切り替えた際、増加したグリップを完全には引き出せなかったという。

    「SQ3でミディアムからソフトに替えたとき、グリップがもう少し増えていたと思うけど、そこを十分に引き出せなかった」

    「もう少し攻められたかもしれない。でも、それ以外ではマシンはしっかり機能しているし、ブダペストで見せた強さをそのまま継続できているように思う」

    前戦ハンガリーGPで速さを見せたマクラーレンにとって、ザントフォールトでもメルセデスやフェラーリとトップ争いを演じられたことは重要な材料となった。異なる特性を持つサーキットでもMCL40が競争力を維持していることを示した形だ。

    「ポジティブなことはたくさんあるし、このまま週末の残りも続いてほしい。僕自身が改善できるところもあるし、明日の予選に向けてマシンからもう少し引き出せる部分もあるかもしれない」

    「週末をいい形でスタートできたので、それについては満足している」

    ランド・ノリス(マクラーレン)

    ピアストリもソフトタイヤへの切り替えに苦戦
    チームメイトのオスカー・ピアストリはSQ2でミディアムタイヤを履いて好タイムを記録したものの、SQ3では4番手。1分11秒666を記録し、3番手ルクレールとは0.044秒、ノリスとは0.058秒差だった。

    ピアストリもノリスと同様、ソフトタイヤに履き替えた際のバランス変化を課題に挙げた。

    「ソフトでのラップが少し良くなかっただけだと思う。今年はよくあることだけど、ソフトタイヤを履くと、ミディアムで得られていたバランスほど良く感じられないことがある」

    それでも、フリー走行からマシンを改善できたことには手応えを感じている。

    「今朝のプラクティスと比べれば、かなり満足している。いくつか変更して、ずっと良くなった。そこがポジティブなところだし、朝から進歩できた」

    「もちろんかなり僅差だったし、もっといいラップをまとめられていればポールを取れたかもしれない。でも、僕は学んで改善している。それが一番大事だ」

    ピアストリはスプリントでの勢力図について「僕たちとフェラーリ、メルセデスの間でかなり接戦になると思う」と予想。「最後の細かな部分やギャップを埋めて、何ができるかを見ることになる」と語った。

    マクラーレンはスプリント予選でノリスが2番手、ピアストリが4番手につけ、ハンガリーGPから続く競争力を示した。一方、2人ともソフトタイヤで最大限のパフォーマンスを引き出せなかったとの認識で一致しており、その改善がスプリントと決勝予選でメルセデス、フェラーリを上回る鍵となりそうだ。

  • ランド・ノリス マクラーレンF1の弱点を指摘「今でもものすごく運転が難しい」

    ランド・ノリス マクラーレンF1の弱点を指摘「今でもものすごく運転が難しい」

    ランド・ノリスは、2026年F1第11戦ハンガリーGPで勝利を挙げたマクラーレンのマシンについて、依然として「ものすごく運転が難しい」と語った。新フロアの投入によってパフォーマンスは向上したものの、特にストリートサーキットでは扱いづらさが大きな課題として残っているという。

    サマーブレイク前最後の一戦となったハンガリーGPでノリスは今季初勝利を達成。マクラーレンはアップデートによって大きな前進を果たしたが、ノリスはその速さが簡単に引き出せるものではないと強調している。

    「マシンは今でもものすごく運転が難しい」
    2026年F1第12戦オランダGPを前に行われたFIA木曜記者会見で、ノリスはシーズン後半戦に向けてマクラーレンが改善すべき部分について質問された。

    ノリスが最初に挙げたのは、さまざまなタイプのコーナーやコンディションへの対応力だった。そして、現時点で最大の疑問としてストリートサーキットを挙げた。

    「いろいろなタイプのコーナーや、異なるコンディションがある。現時点では、ストリートサーキットがおそらく一番大きな疑問点だ」

    その理由について、ノリスは現在のマシンが持つ根本的な難しさを率直に語った。

    「マシンは今でも本当に、本当に運転するのが難しい」

    ハンガリーGPで勝利できるだけの速さを持ちながらも、ドライバーが簡単にその性能を引き出せるマシンではないという。

    「もちろん、ものすごく速くなることはある。それは前回も見せることができた。でも、ただマシンをコースに置けば速いというわけではないんだ」

    ノリスによれば、そのポテンシャルを引き出すためには、ドライバー側がマシンの特性を細部まで理解する必要がある。

    「すべてのコーナー、すべてのコンディション、そしてタイヤライフのあらゆる段階で、どうやってドライブしなければならないのかを理解する必要がある」

    マクラーレンの速さは明らかになっている一方、それを安定して引き出すための許容範囲は依然として狭いというのがノリスの評価だ。

    ここ1~2カ月で理解は進んだ
    ノリス自身もシーズン序盤からマシンへの理解を深め、最近になって扱い方をかなりつかめるようになったと感じている。

    「ここ1~2カ月で、そういうことをかなりうまく理解できるようになってきたと感じている」

    それでも、根本的な扱いづらさが解消されたわけではない。

    「それでも、まだものすごく難しい。だから、もう少しだけ簡単になってくれればいいと思っている」

    マシンがより扱いやすくなれば、ドライバーが限界を探るための余裕も増える。特にその影響が大きくなるとノリスが考えているのが、ミスの許される範囲が小さいストリートサーキットだ。

    「そうなれば、ストリートコースのように、いろいろなことを試したり探ったりする余裕が少ない場所でも、もっと良くなれると思う」

    常設サーキットとは異なり、ストリートコースではランオフエリアが限られ、マシンの挙動を探りながら限界を見つけていくことが難しい。そのため、現在のマクラーレンが持つ扱いづらさが、より大きな弱点として表れやすいとノリスは考えている。

    モナコは「かなりひどいレースだった」
    その具体例としてノリスが挙げたのが、今季のモナコGPだった。

    「ストリートコースはまだ課題だ。振り返ってみれば、モナコは僕たちにとってかなりひどいレースだった」

    モナコのようにコース幅が狭く、ドライバーがマシンの限界を探る余地がほとんどないサーキットでは、マクラーレンの扱いづらさがパフォーマンスに大きく影響したという。

    ノリスは特定のサーキットだけではなく、「いくつかのタイプのコーナーでも十分に強くない」と分析しており、シーズン後半戦に向けて改善すべき領域が残されていると認めている。

    それでもハンガリーでは昨年以上のペース差
    一方で、マクラーレンのマシンにポテンシャルがないわけではない。むしろ、条件が合えば非常に高いパフォーマンスを発揮できることをハンガリーGPで証明した。

    ノリスはハンガリーでのパフォーマンスについて、かなり強い表現で評価している。

    「前回の日曜日に僕たちが持っていたペースアドバンテージを見ると、昨年のどの時点で僕が持っていたものよりも大きかったと思う」

    前年にタイトルを獲得したシーズンと比較しても、ハンガリーで示した相対的な速さはそれ以上だったという認識だ。

    「それが残りのシーズンにもつながってくれることを願っている」

    つまり現在のマクラーレンが抱えている問題は、絶対的な速さが不足しているという単純なものではない。高いピークパフォーマンスを持ちながら、それを幅広い条件で安定して引き出すことが難しいという点にある。

    ランド・ノリス(マクラーレン)

    新フロア投入で明確な前進
    ハンガリーGPでは、マクラーレンが新しいフロアを投入していた。オランダGPを前にノリスは、そのアップデートによってチームが一歩前進したこと自体には手応えを示している。

    「僕自身にとってもチーム全体にとっても、かなり自信になった」

    ただし、ハンガリーで発揮した速さが新フロアによる普遍的な改善なのか、それともハンガロリンクの特性との相性によって生まれたものなのかについては、まだ判断を急いでいない。

    「ブダペストで投入した新しいパーツ、新しいフロアについて、それがすべての場所ですべてのパフォーマンスをもたらしてくれたのかを理解する必要がある」

    「すべてのサーキット、あらゆる路面、あらゆるタイプのコーナーで効果があるのか、それともあそこにより特化したものだったのか。それについてはまだ理解している途中だ」

    それでも、アップデートが一定の成果をもたらしたことには疑いを持っていない。

    「でも、一歩前進したことは明らかだった。それはいい兆候だ」

    ノリスはザントフォールトでも高い競争力を発揮できると期待している。

    ザントフォールトで真価を確認
    ザントフォールトは、ハンガロリンクと一部似た特徴を持つ一方、風や気温など条件には違いがある。

    ノリスも「いくつかの点ではブダペストとそれほど違わないけど、風のコンディションや、明らかにかなり気温が低いことなど、違うところもある」と説明している。

    そのため、ハンガリーで大きな成果を挙げたアップデートが異なる条件でも機能するかを確認するうえで、オランダGPは重要な機会となる。

    「マシンの弱点がどこにあるのか、何が良くなったのかは明確だったと思う」

    「でも、日曜日のパフォーマンスは、おそらく昨年のどの時点よりも良かった。それでも僕たちは昨シーズンより少し波があって、一貫性に欠けることがあるということでもあると思う」

    マクラーレンは現在もマシンを「完全に理解しようとしている段階」だとノリスは説明する。その一方で、ザントフォールトは自身が以前から好んできたサーキットであり、マクラーレンも過去に好成績を残してきたことから、今週末については期待を寄せている。

    ハンガリーGPで勝利し、昨年を上回るほどのペースを示したマクラーレン。それでもノリスが「今でもものすごく運転が難しい」と語るように、その速さを引き出す難しさは依然として残されている。

    絶対的な速さをさらに高めるだけでなく、幅広いコースやコンディションでドライバーが性能を引き出しやすいマシンにできるか。ハンガリーで大きな前進を果たしたマクラーレンにとって、後半戦ではピークパフォーマンスと扱いやすさを両立させることがさらなる課題となりそうだ。

  • マクラーレンF1 2027年型でショートホイールベース廃止 ピアストリ苦戦で方針転換

    マクラーレンF1 2027年型でショートホイールベース廃止 ピアストリ苦戦で方針転換

    マクラーレンは、2027年F1マシンでホイールベースを延長する方針を明らかにした。2026年型MCL40では軽量化を狙って規則上限より短いホイールベースを採用したが、来季はより上限に近い車体寸法へと設計思想を転換する。

    エンジニアリングディレクターのニール・ホールディによれば、短いホイールベースは最低重量への対応という明確な目的を持って採用されたものだった。

    一方、今季のMCL40ではグリップ面が課題となり、特にオスカー・ピアストリはチームメイトのランド・ノリスほどマシンの特性を引き出せずにいる。マクラーレンは開発を通じて軽量化を進めたことで、2027年には車体を長くし、フロア下面の空力開発により大きな自由度を持たせる方向へ進む。

    MCL40で採用した短いホイールベース
    2026年のF1技術規則では、従来のグラウンドエフェクト時代と比較してマシンの機敏さが重視され、車体寸法も変更された。マクラーレンはその新しい規則に対し、許容される最大寸法までホイールベースを伸ばすのではなく、よりコンパクトなMCL40を設計した。

    ホールディは、この判断の大きな理由が重量だったと説明する。

    「マシンを短くしたのは、その方が軽くなるからだ。重量規則への対応が非常に、非常に大きなチャレンジになることは分かっていた」

    「それによって良いスタートを切ることができ、ほかの領域にパフォーマンスを投資することができた」

    F1マシンでは、わずかな性能向上を追求するための新しい部品や構造が重量増につながることがある。そのため設計段階で重量に余裕を作ることは、その後の開発自由度を確保するうえで重要となる。

    「ほんのわずかなパフォーマンス向上を狙う場合でも、あちこちで少しずつ重量が増えることがよくある。だから早い段階でその重量を節約できたことで、その一部をパフォーマンスのために使うことができた」

    「そしてマシンを開発していくなかで、さらに重量を削ることもできた」

    つまり短いホイールベースは単純な失敗ではなく、2026年規則への対応においてマクラーレンが意図的に選択したトレードオフだった。

    ピアストリが苦戦したMCL40のグリップ特性
    一方、MCL40はシーズン前半を通じてグリップ面に課題を抱えてきた。

    2025年には最終戦アブダビGPまでF1ワールドチャンピオン争いを繰り広げたピアストリだが、2026年は前年ほど安定してパフォーマンスを発揮できていない。

    メルセデスがシーズン序盤から高い競争力を発揮していることも成績に影響しているが、同じMCL40をドライブするノリスと比較しても、ピアストリがマシンの特性への適応に苦しんでいることは今季の課題のひとつとなっている。

    短いホイールベースは車体の軽量化や機敏さというメリットをもたらす一方、空力開発に使用できる車体下面の面積は小さくなる。マクラーレンは開発を進めるなかで、この部分にさらなるパフォーマンスを引き出せる可能性を見いだした。

    2027年はホイールベースを延長
    ホールディは、2027年型マシンではMCL40よりもホイールベースを長くすることを明言した。

    「来年については、最終的にもっと長いマシンになる。空力的に見れば、そうすることでアンダーボディに使える面積をわずかに大きくできるからだ」

    「アンダーボディの開発をさらに進めていくなかで、それをうまく扱えるようになってきている」

    マシンを長くすれば単純に性能が向上するわけではなく、重量や機敏性とのトレードオフが発生する。しかしMCL40の開発によってさらなる軽量化を実現したことで、マクラーレンは2027年型では車体寸法を拡大する余地を得たことになる。

    ホールディは、2026年型を設計した当初の判断についても説明している。

    「当初は、マシンを短くしてもラップタイムという点で大きなペナルティにはならないように見えていた」

    この発言からも、マクラーレンが2026年のコンセプトを全面的な失敗と捉えているわけではないことが分かる。当初は重量面のメリットを優先したものの、実際の開発を通じて空力面でより大きな可能性を見いだし、2027年に向けてバランスを変えるという判断だ。

    「短さ」からフロア開発の余地を重視する方向へ
    2026年型MCL40の短いホイールベースは、最低重量への対応という明確な狙いから生まれた。しかしシーズンを通じた開発で軽量化が進んだことで、マクラーレンはそのメリットを維持する必要性が薄れつつある。

    その一方で、より長いホイールベースによってアンダーボディの利用可能面積を拡大すれば、フロアを中心とした空力開発の可能性を広げられる。

    ピアストリとノリスがMCL40で経験しているグリップ面の課題を踏まえながら、マクラーレンは2027年型で重量を優先したコンパクトな設計から、より大きな空力開発の余地を持つパッケージへと軸足を移すことになる。

  • フェラーリF1 マクラーレンの台頭を警戒せず「週末ごとに勢力図は大きく変わる」

    フェラーリF1 マクラーレンの台頭を警戒せず「週末ごとに勢力図は大きく変わる」

    2026年F1ハンガリーGPでマクラーレンが今季初勝利を挙げたが、フェラーリのチーム代表フレデリック・バスールは、後半戦に向けて新たな脅威として警戒する考えを否定した。週末どころかセッション間でもパフォーマンスが「大きく変動する」と指摘し、ライバルではなくSF-26の改善に集中する姿勢を強調している。

    一方、マクラーレンのアンドレア・ステラ代表は、フェラーリが依然としてグリッド最高のシャシーを持っていると評価。

    特に低速コーナーで明確な優位が残っているとしており、ハンガリーでの勝利だけをもって勢力図が変わったとは考えていない。

    マクラーレン今季初勝利でもバスールは動じず
    2026年シーズン序盤はメルセデスが圧倒的な強さを見せたが、第7戦スペインGPでルイス・ハミルトンが勝利し、その連勝を止めた。その後、フェラーリはさらに1勝を追加し、第11戦ハンガリーGPではランド・ノリスがマクラーレンに今季初勝利をもたらした。

    ハンガロリンクではノリスがポールポジションから優勝。マックス・フェルスタッペンが2位、キミ・アントネッリが3位に入り、フェラーリ勢はシャルル・ルクレールが4位、ハミルトンが5位だった。

    フェラーリにとって完璧なレースではなかったものの、表彰台を争えるだけのペースは示していた。

    マクラーレンがメルセデス、フェラーリと並ぶトップ争いの一角に加わったのではないかと問われたバスールは、その見方自体にあまり意味はないと語った。

    「私はそういう質問を自分自身にはしていない。週末ごとに状況が違うからだ」

    「自分たち自身に集中して、マシンにパフォーマンスをもたらすことに取り組まなければならない」

    さらにバスールは、同じグランプリの中でも勢力関係が大きく変化する可能性を指摘する。

    「FP1からFP2の間だけでも、パフォーマンスには大きな振れ幅がある。勢力バランスについて考えるなら、それは興味深いことだ」

    つまり、ハンガリーでマクラーレンが勝ったという一つの結果から、後半戦の勢力図を固定的に判断することはできないという考えだ。

    スクーデリア・フェラーリ

    バスール「ランドは飛ぶように走っていた」
    バスールは、マクラーレンの勝利にはハンガロリンクでノリスが発揮した個人的な速さも大きく影響したとみている。

    「明らかなのは、ランドが非常に速かったということだ。オスカーよりもかなり速かった」

    「我々がオスカーの後ろで詰まっていたとき、おそらく我々の方が彼より速かったと思う。一方でランドは、単独で走っているときには飛ぶように速かった」

    ノリスは前年のハンガリーGPでも勝利しており、ハンガロリンクとの相性の良さを改めて示した形となった。

    この発言からも、バスールが今回の結果を単純な「マクラーレンのマシンがフェラーリを上回った」という構図では捉えていないことが分かる。

    フェラーリとマクラーレンがメルセデスを追う展開
    ハンガリーGPは、フェラーリとマクラーレンの双方がメルセデスを上回るポイントを獲得した今季2度目のレースとなった。最初はスペインGPだった。

    ただし、コンストラクターズ選手権では依然としてメルセデスが大きくリードしている。ハンガリーGP終了時点でフェラーリは72ポイント差、マクラーレンは159ポイント差を追う立場にある。

    メルセデスが序盤ほど圧倒的ではなくなっている一方で、フェラーリとマクラーレンがその差を一気に縮められる状況にはまだ至っていない。

    特にマクラーレン側は、ハンガリーで勝利したからといって、今後すべてのサーキットでフェラーリと互角に戦えるとは考えていない。

    ステラ「フェラーリにはまだ最高のシャシーがある」
    マクラーレン代表のアンドレア・ステラは、SF-26について極めて高い評価を示している。

    「フェラーリは、コーナーでグリップを生み出すという意味では、依然として最高のシャシーを持っていると思う」

    その差が特に表れているのが、ブレーキングから低速コーナーへ進入する局面だという。

    「それはブレーキングで非常に明確だ。ターン1やターン12のように、ブレーキをかけながら低速コーナーへターンインするところでは、依然として他の全チームよりかなり先にいる」

    ハンガロリンクのターン1とターン12はいずれも、強いブレーキングからマシンを旋回させる必要がある。そこでフェラーリはSF-26の強みを発揮していたというのがステラの分析だ。

    マクラーレンは中高速域でフェラーリとの差を縮小
    一方で、マクラーレンもシーズンを通して弱点を改善している。

    「我々は中高速域でマシンを改善することができた。そこではフェラーリとより近いところまで来ている」

    ただし、低速域については依然として差がある。

    「ターン1やターン12を見ると、まだかなりのタイムを失っている」

    ハンガロリンクはコーナリング性能が重要なサーキットだが、興味深いことにマクラーレンがフェラーリに対して稼いでいた部分のひとつはストレートだったという。

    「ハンガリーはコーナーでのパフォーマンスが非常に重要なコースだが、実際にはフェラーリとのラップタイム差の一部をストレートで稼いでいた」

    「いくつかの領域では改善できていて、少なくともここハンガリーではフェラーリと比較できるレベルになった。ただ、低速ではさらに改善する必要がある」

    メルセデスHPP製PUもマクラーレンの武器
    ステラはストレートでの改善について、メルセデス・ハイパフォーマンス・パワートレインズ(HPP)製パワーユニットの恩恵もあると説明した。

    「パフォーマンスの一部はストレートから来ていた。これはHPPのパワーユニットを使っているメリットだと思う」

    2026年の新パワーユニット規則下では、エネルギーマネジメントや電気エネルギーの使い方がラップタイムを大きく左右する。ハンガリーではマクラーレンがコーナリングだけでなく、ストレートでタイムを稼げたことも勝利につながった。

    ただし、ステラ自身が認めるように、低速コーナーでのSF-26の性能は依然としてマクラーレンを上回っている。

    後半戦の焦点は「誰が速いか」より開発競争
    ハンガリーGPだけを見ればマクラーレンが勝者となったが、フェラーリとマクラーレン双方の分析は、単純な序列変更を示してはいない。

    バスールが強調するのは、FP1からFP2だけでもパフォーマンスが大きく変化するほど、現在のF1ではマシンのセットアップやサーキット特性による振れ幅が大きいという点だ。そのためフェラーリは、マクラーレンを新たな脅威として意識するよりも、SF-26からさらに性能を引き出すことを優先している。

    一方のマクラーレンも、中高速域やストレートではフェラーリとの差を縮めたものの、低速コーナーでは依然としてSF-26に優位があると分析している。

    メルセデスを追うフェラーリとマクラーレンにとって、後半戦の争点は一戦ごとの勝敗だけではない。サーキットごとに大きく変化する勢力図の中で、それぞれの弱点をどこまで減らせるかが、シーズン終盤に向けた競争力を左右することになりそうだ。

  • オスカー・ピアストリに大胆なF1マシン変更を進言「2〜3戦を犠牲にしてもいい」

    オスカー・ピアストリに大胆なF1マシン変更を進言「2〜3戦を犠牲にしてもいい」

    オスカー・ピアストリは、2026年F1シーズンで苦戦が続くなか、マクラーレンのMCL40で大胆なセットアップ変更を試すべきだと元F1ドライバーのファン・パブロ・モントーヤから助言を受けた。

    モントーヤは、ランド・ノリスに合っているセットアップが必ずしもピアストリにも適しているわけではないと指摘。残り12戦すべてで平均的な結果に終わるより、2〜3戦を「犠牲」にしてでも異なる方向性を試し、自分に必要なマシン特性を見つけるべきだと主張している。

    序盤から後手に回ったピアストリ
    ピアストリの2026年シーズンは厳しいスタートとなった。母国オーストラリアGPではフォーメーションラップでクラッシュし、中国GPでは電気系トラブルによってグリッドにつくことができず、開幕から2戦連続でDNSとなった。

    昨季、チームメイトのノリスにF1ワールドチャンピオンの座を奪われたピアストリにとって、今季はマクラーレンの「ナンバー2」ではないことを証明する重要なシーズンでもある。

    日本GPとマイアミGPでは表彰台を獲得して巻き返したものの、その後の7戦では表彰台から遠ざかっている。

    直近のハンガリーGPでは一時トップを走ったが、周回遅れのカルロス・サインツJr.をオーバーテイクしようとした際に接触。その間にノリスが差を縮め、最終的に首位を奪われた。普段は冷静なピアストリも、この接触には強い苛立ちを見せていた。

    その後、ピアストリはギアボックストラブルでリタイア。一方のノリスは優勝し、両者のポイント差はノリスが36ポイントリードするまでに広がった。

    「ランドに合うものがオスカーにも合うとは限らない」
    F1で7勝を挙げたモントーヤは、ピアストリが現状を打開するためには、MCL40のセットアップについてもっと大胆に実験する必要があると考えている。

    「彼は、なぜランドの方がマシンに快適さを感じているのか、自分には何が足りないのか、そして何をする必要があるのかを理解しなければならない」

    モントーヤはnews.com.auにそう語った。

    「ランドにうまく機能しているものが、必ずしもオスカーにもうまく機能するとは限らない。オスカーがマシンに求めているものはまったく違う」

    そこでモントーヤは、ピアストリ自身がマクラーレンに対して実験を求めるべきだと主張する。

    「オスカーはマクラーレンに行って、『完全に間違った方向に行ってしまってもいいから、実験させてほしい。いくつかの“ラビットホール”に入り込ませてほしい』と言うべきだ」

    ここでいう「ラビットホール」とは、通常とは異なるセットアップや開発の方向性を深く掘り下げ、可能性を探ることを意味する。

    「彼らは今いるバブルから抜け出す必要がある。今のやり方はランドには機能しているが、オスカーには機能していない」

    「もっと範囲を広げる必要があるし、その結果として何戦か苦戦することになってもいい」

    「2〜3戦を犠牲にして残り9戦につなげればいい」
    モントーヤは、目先の結果を追い続けるよりも、シーズン後半を見据えて数戦を実験に使う価値があると考えている。

    「それが何だというんだ? まだ12戦残っている。残り12戦すべてで平均的なレースをするくらいなら、そのうち2〜3戦を犠牲にして、残り9戦につなげればいい」

    「週末ごとに対応していると、『今週末はダメでもいい』と割り切るのはとても難しい。でも、何が足りないのかを突き止める必要がある」

    「オスカーの周囲には本当に優秀な人材がたくさんいる。思い切って大きく振ることを恐れてはいけない」

    モントーヤの主張は、単にピアストリにリスクを取るよう求めるものではない。ノリスを基準としたセットアップの延長線上ではなく、ピアストリ自身が速さを引き出せるMCL40の特性を探し出す必要があるという考えだ。

    オスカー・ピアストリ(マクラーレン)

    昨年のタイトル敗北が今も影響
    モントーヤはまた、ピアストリの現在の苦戦には技術面だけでなく、2025年のF1タイトル争いで敗れた心理的な影響もあるとみている。

    昨年のオランダGP終了時点で、ピアストリはノリスに34ポイント、マックス・フェルスタッペンに104ポイントの差をつけて選手権をリードしていた。

    しかし、その後の9戦で形勢は逆転。最終戦アブダビGPを終えた時点ではランキング3位となり、王者ノリスに13ポイント、フェルスタッペンにも11ポイント及ばなかった。

    「昨年チャンピオンシップを失ったことは、精神的に彼を本当に傷つけた」

    「そこから立ち直り、状況を理解し、仕事をやり遂げるための集中力とエネルギーを取り戻していく過程にある。彼はものすごく優れたドライバーだから、僕は立ち直れると思っている」

    「心理的な部分は非常に大きい。昨年は誰もがタイトルは彼のものだ、もう決まったようなものだと話していた」

    「無敵に見えるような立場にいながらチャンピオンシップを失うのは、受け入れるのが本当に難しいことだ」

    「世界王者になれない可能性も受け入れなければならない」
    一方でモントーヤは、ピアストリが昨年の敗北にとらわれ続けるべきではないとも強調した。F1ではタイトルを争える機会そのものが保証されているわけではないからだ。

    「またチャンスが来るかもしれない。でも、ああいう機会はそれほど頻繁には訪れない」

    「それがこのスポーツの現実だ。彼は素晴らしいことを成し遂げてきた。ただ、世界チャンピオンになることだけが唯一のモチベーションなら、現実としてタイトルを獲るためにはすべてが自分の方に転がってこなければならない。最高のマシンに乗っている必要もある」

    そのため、タイトルそのものではなく、目の前のレースで最大限の仕事をすることに集中すべきだとモントーヤは語る。

    「日々のことに集中する必要がある。レースに勝つこと、プラクティスに集中すること、すべてを最大限に生かすことだ。そうすれば、チャンスは自然とやってくるかもしれない」

    「世界選手権で2位や3位になったからといって、それで残りのキャリアを決めつけることはできない。チームメイトが勝ったのは悔しいだろう。でも、だからこそ僕たちはレースをしている」

    ノリスに36ポイント差をつけられているピアストリにとって、残り12戦で求められるのは単純に現在のMCL40からタイムを削り取ることだけではない。ノリスとは異なる自分自身の要求を明確にし、それに合ったセットアップの方向性を見つけられるかどうかが、シーズン後半の巻き返しを左右することになりそうだ。

  • ランド・ノリス フェルスタッペンに反論「F1ではドライバーがまだ差をつけられる」

    ランド・ノリス フェルスタッペンに反論「F1ではドライバーがまだ差をつけられる」

    ランド・ノリスは、2026年のF1で導入された新しいパワーユニット(PU)のエネルギーマネジメントによって「ドライバーが違いを生み出せなくなった」とするマックス・フェルスタッペンの見解に異論を唱えた。

    フェルスタッペンは、新世代PUでは電気エネルギーの展開がアルゴリズムによって強く管理されるため、ドライバーが自らの判断やテクニックによってラップタイムを稼げる余地が狭まっていると指摘している。

    一方、ノリスは一部のコーナーで差が縮まったことは認めながらも、「より優れたドライバー」であれば依然としてアドバンテージを生み出せると主張した。

    フェルスタッペンが問題視する新PUのエネルギー制御
    2026年のF1では、電動出力の比重が大幅に高まった新世代PUが導入され、バッテリーに蓄えられたエネルギーをどこで、どのように使用するかがパフォーマンスを左右する重要な要素となっている。

    そのエネルギー展開を支えているのが高度なアルゴリズムだ。システムはドライバーの走行をもとにラップ全体で効率的にエネルギーを使用しようとするため、ドライバーにはクリーンで一貫性のある走りが求められる。

    フェルスタッペンは、この仕組みがドライバーの自由度を奪っていると考えている。

    「違いを生み出すことが許されていない。そうすると次のストレートでペナルティを受けることになる」

    例えば、あるコーナーで通常より強く攻めてタイムを稼いだとしても、それによってエネルギーの使用パターンが変化し、その後のストレートで十分な電力を使えなくなる可能性がある。フェルスタッペンが問題視しているのは、こうしたドライバーの入力とエネルギーマネジメントの関係だ。

    ノリス「優れたドライバーならまだ差をつけられる」
    しかし、ノリスはフェルスタッペンの見方には全面的には同意していない。

    RacingNews365を含むメディアに対し、ノリスはスパ・フランコルシャンの高速コーナー、プーオンを例に挙げた。

    「確かに、いくつかのコーナーでは差が小さくなっている。例えばプーオンでは、去年なら全開で行けるドライバーと行けないドライバーがいて、それによって0.05秒くらい稼げたかもしれない」

    「そういう意味では、一部のコーナーで差が縮まっていることはある。でも、より優れたドライバーなら、他のみんなに対してアドバンテージを得られるコーナーはまだある。だから、彼の言っていることすべてに同意するわけではない」

    ノリスは、シルバーストンやスパのような高速サーキットでは、そもそもラップタイムを生み出せるコーナーの数が少ないため、ドライバー間の差が表れにくくなる側面もあると説明する。

    「より良いドライビングをしていれば、シルバーストンやスパのような非常に高速なサーキットでも前にいられると思う。ただ、そういうコースでは、そもそもラップタイムを稼げるコーナーが少ない」

    ハンガロリンクでは「まったく当てはまらない」
    一方、低速から中速コーナーが連続するハンガロリンクでは事情が異なるという。

    「ハンガロリンクのようなコースでは、彼の言っていることはまったく当てはまらないと思う」

    ノリスによれば、問題は単純にドライバーの走りによってアルゴリズムが「混乱する」ことだけではない。

    「アルゴリズムを混乱させるというだけじゃない。単純に、ときどきランダムなことをするんだ」

    つまり、2026年のF1ではドライバーがエネルギー展開を完全に予測できるわけではなく、システム側の挙動に合わせながら走り方を調整する必要があるということだ。

    バッテリーに合わせてドライビングも変化
    ノリスは、新世代PUへの対応によってドライビングスタイルそのものにも変化が生じていると説明した。

    「バッテリーを助けるために、特定の場面でやらなければならないことがある。以前よりうまく機能するドライビングスタイルもあるし、去年まで以上に意識してやらなければならないこともある」

    ただし、変化しているのはPUだけではない。

    「それはクルマそのものというより、明らかにバッテリーのための部分が大きい。でも、タイヤも少し変わっているし、その特性によって、以前のようにクルマをアグレッシブに攻められない部分もある。少なくとも僕たちのクルマではそうだ」

    2026年のレギュレーション変更ではPUだけでなくシャシーとタイヤも変化している。そのため、前年までのドライビングスタイルをそのまま持ち込めるわけではなく、それぞれのマシンに合わせた適応が必要になる。

    「ただ、クルマによって大きく違うから、他のみんなを代表して話すことはできない。僕たちも去年とはかなり違う方法でこのクルマを走らせなければならない。でも、それが僕たちの仕事だ」

    「ドライバーの差」は消えたのか
    フェルスタッペンとノリスの主張は、必ずしも完全に対立しているわけではない。

    フェルスタッペンが問題視しているのは、ドライバーがコーナーで積極的にタイムを稼ごうとした結果、その入力が後のエネルギー展開に影響し、従来とは異なる形で帳尻を合わせられてしまう点だ。

    一方のノリスも、新しいエネルギーマネジメントによって一部のコーナーでドライバー間の差が縮まったこと自体は認めている。そのうえで、コーナリング、タイヤマネジメント、そして新しいPUに適応したドライビングなど、ドライバーが違いを生み出せる領域は依然として残されていると考えている。

    2026年のF1では「速く走る」ことだけでなく、バッテリーとアルゴリズムが求める走行パターンを理解し、それを最大限に利用する能力もドライバーの技量の一部になった。フェルスタッペンがその変化をドライバーの自由度低下と捉えるのに対し、ノリスは新しい条件への適応もまた、優れたドライバーが差を生み出す要素だと捉えている。

  • マクラーレンF1 予算上限に余力「MCL40の開発を続けられる」

    マクラーレンF1 予算上限に余力「MCL40の開発を続けられる」

    マクラーレンは、2026年F1シーズン後半に向けてもMCL40のアップグレードを継続する方針だ。ライバル勢がコストキャップ(予算上限)の残額を意識し始めるなか、チーム代表のアンドレア・ステラは、シーズン中の開発競争を想定してあらかじめ十分な予算を確保していたことを明かした。

    マクラーレンは第11戦ハンガリーGPで今季初勝利を挙げたが、コンストラクターズ選手権では220ポイントで3位。首位メルセデスとは159ポイント差がある。

    タイトル防衛に向けて厳しい状況にある一方、チームは現在のMCL40の開発を止める考えはない。

    2026年F1は「初期性能よりアップグレード競争」
    2021年から導入されているF1のコストキャップは、トップチームと中小チームの財政力による格差を縮小することを目的としている。2026年の上限額は2億1500万ドルに設定され、21戦を超えるグランプリについては1戦あたり180万ドルが追加される。

    新テクニカルレギュレーション初年度となった今季は各チームが積極的にマシンを開発しており、どの段階まで現行車への投資を続けるかも重要な戦略となっている。

    メルセデス代表のトト・ヴォルフは、特にフェラーリの開発ペースに注目。フェラーリがマイアミGPとバルセロナで大規模なアップグレードを投入したことについて、予算上限の余裕がどこまで残っているのか疑問を呈している。

    「フェラーリがあれほど大規模なアップデートをマシンに投入できることには、いつも少し驚かされている」

    「僕の考えでは、そろそろ予算上限の資金を使い果たしていてもおかしくない。僕たちには同じことはできない。あれほど多くのパーツを投入するための予算上限内の余裕が単純にないからだ」

    「だからシーズン終盤には状況が変わり、彼らがもうパーツを投入できなくなることを期待している。少なくとも論理的にはそうなるはずで、そのときには僕たちがより多く投入できる」

    マイアミ以降の新パーツ数はマクラーレンが最多
    ただし、マイアミGP以降に最も多くの新パーツを投入しているのは、ヴォルフが名前を挙げたフェラーリではなくマクラーレンだ。

    マクラーレンはマイアミからハンガリーまでに計32点の新パーツを投入。フェラーリとレッドブル・レーシングがそれぞれ29点、メルセデスが20点となっている。

    マイアミではマクラーレン7点、メルセデス2点、フェラーリ11点、レッドブル7点。カナダでは7点、8点、0点、4点、モナコでは6点、1点、3点、4点だった。

    バルセロナではマクラーレン1点に対してフェラーリが8点を投入。オーストリアではマクラーレン2点、メルセデス2点、フェラーリ4点、レッドブル7点となり、イギリス、ベルギーを経て、ハンガリーではマクラーレンがさらに5点を持ち込んだ。

    そして、その開発はまだ終わっていない。

    「ハンガリーに持ち込んだアップグレードは、数戦にわたって投入する一連のアップグレードの一部だ。今回がその最初のパートだった」

    「次の数戦でも、いくつか新しいものを投入する予定だ」

    マクラーレンは予算に「余力」を確保
    新パーツの投入数が多いにもかかわらず、ステラはコストキャップについて懸念していない。

    マクラーレンは2026年の新レギュレーションでは開幕時点のマシン性能だけでシーズンが決まるのではなく、年間を通じた開発競争になると予測。そのため、シーズン途中のアップグレードに使える予算を最初から残していたという。

    「予算上限へのアプローチという点では、2026年はスタート地点がそれほど重要なのではなく、むしろマシンをアップグレードしていく競争になると分かっていた」

    「だから予算の見通しには十分な余裕を残して、マシンのアップグレードに資金を使える状態にしておきたかった」

    この計画によって、マクラーレンは2026年後半もMCL40に開発資金を投入できるという。

    「2027年のパワーユニット規則変更によって認められる追加枠とは関係なく、僕たちはすでにMCL40のアップグレードに投資できるという意味で良いポジションにいた」

    2027年向け追加枠をどう使うか
    一方、2027年の規則変更に関連して認められる追加の予算枠については、慎重な判断が必要になる。

    「来年に向けて認められている枠を使うことはできる。ただし、その資金がマシンに適用しなければならない変更のために必要になる可能性があるので、当然ながら注意しなければならない」

    「とはいえ、今季に集中したいのであれば、前倒しして活用できるものではある」

    つまり、制度上利用可能な余裕があるからといって、すべてを2026年型MCL40の性能向上に投入できるわけではない。2027年に必要となる変更を見越して資金を残す必要があるためだ。

    予算だけではない「2026年か2027年か」の判断
    さらにステラは、シーズン後半の開発を左右するのはコストキャップだけではないと指摘する。

    限られた設計リソースを現行マシンと翌年型マシンのどちらに振り分けるのか、風洞でどちらのマシンを優先するのかといった判断も必要になる。

    「いくつかのチームにとっては、ある段階でどちらのシーズンに集中するのかという問題にもなると思う」

    「制約になるのは予算だけではない。設計面でも制約があるし、風洞に入れるのは来年のマシンなのか、それとも今年のマシンなのかという問題もある」

    「だから答えを出さなければならない問題はいくつもある。その答えの一部は、今季にどこまで重点を置くのか、それとも完全に来年へ焦点を移すのかによって変わってくる」

    マクラーレンは新レギュレーション初年度を単なる開幕時の性能勝負ではなく、シーズンを通じた開発競争と捉えて予算を配分してきた。すでにライバルを上回る数の新パーツを投入しているものの、ステラによればMCL40をさらに進化させるための余力は残されている。

    ただし、シーズン後半になれば各チームにとって「2026年を追うのか、2027年へ移行するのか」という判断の重要性が増していく。マクラーレンが現在の159ポイント差を追いながら、どのタイミングで次期マシンへ開発リソースを切り替えるのかも今後の焦点となる。

  • マクラーレンF1 同じメルセデスPUでなぜ遅い? ワークスとの差は「投資」

    マクラーレンF1 同じメルセデスPUでなぜ遅い? ワークスとの差は「投資」

    マクラーレンは2026年F1シーズン、メルセデスと同じパワーユニット(PU)を搭載しながら、その性能をワークスチームほど引き出せていない。この差をめぐり、メルセデスとマクラーレン双方の技術陣が、その背景にある複雑な事情を明らかにしている。

    問題の核心にあるのは、単純なPUの仕様差ではない。新世代PUを車体と組み合わせて最適に運用するためのシミュレーションツールやソフトウェア、そしてそれらを開発・運用するためのリソースだ。

    メルセデス側は、マクラーレンがさらに自ら投資する必要があるとの見方を示している。

    同じメルセデスPUでも生まれた性能差
    2025年にドライバーズ、コンストラクターズの両タイトルを獲得したマクラーレンだが、新しいテクニカルレギュレーションが導入された2026年は苦戦を強いられている。

    夏休み前のハンガリーGPではランド・ノリスが今季初のポールポジションから勝利を挙げたものの、それまでの10戦で表彰台は4回。コンストラクターズランキングでは、前年に364ポイント差をつけて破ったメルセデスに対し、現在は159ポイントのビハインドを抱えている。

    その要因のひとつとして注目されてきたのがPUの使い方だ。

    2026年のF1では、内燃エンジンと電動部分の出力比率が53対47となり、従来以上にエネルギーマネジメントが重要になった。同じメルセデス製PUを使用していても、車体特性に合わせた制御やエネルギー配分によって実際のパフォーマンスには差が生じる。

    マクラーレンのチーム代表アンドレア・ステラは6月末、ストレートでメルセデスに最大約0.15秒/周を失っていると説明していた。

    さらに7月のイギリスGPでは、メルセデスのワークス車両が予選で使用していたPUのパフォーマンスを引き出す手法について、マクラーレン側が驚きを示す場面もあった。

    「HPP(メルセデス・ハイパフォーマンス・パワートレインズ)とは技術レベルで継続的に話し合っている。この素晴らしいPUで利用可能なものを確実に使えるようにするためだ」とステラは語った。

    「これは本当に素晴らしい技術で、多くのパフォーマンスがある。ただ、その性能は細かな使い方の部分にも存在している」

    「ストレートでのパフォーマンスを見ると、彼らの方がドラッグが少ない可能性を考慮しても、まだいくつか疑問が残っている」

    メルセデス「意図的に差をつけているわけではない」
    この問題について、メルセデスの副チーム代表ブラッドリー・ロードは、ワークスチームが意図的にカスタマーチームへ情報を与えていないという見方を否定している。

    「すべてはレギュレーションと契約に従っている。マクラーレンだけでなく、アルピーヌやウィリアムズも素晴らしいパートナーだ。彼らが要求の高い存在なのは当然だし、優れたサポートと製品を提供する会社としてメルセデスを選んでいる」

    ロードによれば、ブリックスワースのHPPは長年にわたりカスタマー供給において公平な対応を続けてきた。

    それでもワークスとカスタマーの間で差が生まれる理由として、ロードが挙げたのがシミュレーションツールだ。

    「違いがあると認識されたり、カスタマー側が一歩遅れていると感じたりする部分があるとすれば、多くの場合、それはシミュレーションツールやPUとシャシーの挙動を予測する能力といったところにある」

    ここで重要なのは、メルセデスが使用するツールのすべてがHPPだけで開発されたものではないという点だ。

    ワークス専用の技術はそのまま渡せない
    メルセデスのPU運用ツールには、ブリックスワースのHPPだけでなく、F1ワークスチームであるメルセデスのシャシー部門と共同開発したものも含まれている。

    F1の技術規則では、チーム間で共有できる知的財産(IP)について厳格な制限が設けられている。そのため、メルセデスが持っているツールをそのままマクラーレンへ渡せるわけではない。

    「そうしたツールの多くはブリックスワースだけでなく、MGP(メルセデスF1チーム)のシャシー部門とHPPが共同で開発したものだ」とロードは説明する。

    「当然ながら技術規則では、シャシーチームのIPについて、チーム間で何を共有できて何を共有できないのかが非常に明確に定められている」

    このため、カスタマーへ提供する前にワークス側のIPを切り離す作業が必要になるケースがある。

    そして、ここからマクラーレン自身の「投資」という問題が浮上する。

    「場合によっては、カスタマーチーム自身が作業を行い、自分たちのコストキャップのリソースを使って、PUから最大限の性能を引き出すためのツールを開発する必要がある」

    「おそらく、これが我々が直面している複雑さのひとつだ。ただ、新しいレギュレーションであり、しかも以前より複雑な規則になっていることを考えれば理解できることでもある」

    つまり、同じPUを購入すれば同じ性能が自動的に手に入るわけではない。PUそのものに加えて、それを最大限に活用するための解析環境にもマクラーレン自身がリソースを投入しなければならない。

    マクラーレンも「リソース不足」を認める
    この点については、マクラーレン側の説明とも一致する。

    マクラーレンのエンジニアリング担当テクニカルディレクター、ニール・ホールディは、2026年シーズン開幕前の準備について、自分たちとHPPの双方で十分なリソースを投入できていなかったと認めている。

    「PUという観点では、その運用方法や複雑さについて、まだ学ばなければならないことが多いのは明らかだった。僕たちとHPPの間で、そこに十分なリソースを投入できていなかった」

    「このレギュレーションではエネルギーマネジメントが難しくなることは分かっていたし、スタートするために良いと思えるものは準備していた」

    しかし、特にソフトウェア面ではさらに準備できる余地があったという。

    「テストや最初の数戦までに、僕たちもHPPもソフトウェア面でもっと作業できたと思う。そうしていれば、エネルギーマネジメントについて、もっと能力の高い状態でシーズンを始められたはずだ」

    マクラーレンとメルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ

    MCL40専用のキャリブレーションが必要
    問題をさらに複雑にしているのが、マクラーレンMCL40とメルセデスのマシンでは車体特性が異なることだ。

    PUが同じでも、空力特性やドラッグ、車速、燃料搭載量などが違えば、最適なエネルギーの使い方も変わる。そのためマクラーレンにはMCL40専用のキャリブレーションが必要になる。

    「僕たちのマシンはワークスチームとは違う。だから僕たちのマシン専用のキャリブレーションが必要になるが、現時点ではそれを素早く承認できるだけの能力がない」とホールディは説明する。

    開幕から3〜4戦では大きな進歩を遂げたものの、まだPUから引き出せていない性能が残されているという。

    「今後数戦、そして2027年に向けても、さらにステップを踏む必要がある。PUから得られる可能性がある最後の0.1秒を、現時点では完全には引き出せていない」

    マクラーレンは「メインループ」の外側
    マクラーレンのパフォーマンス担当テクニカルディレクター、マーク・テンプルも、カスタマーチーム特有の難しさを説明している。

    マクラーレンもPUの設計や搭載方法について相当な意見を出すことはできる。しかし最終的な決定権は、HPPとメルセデスのワークスチーム側にある。

    「僕たちにもかなりのインプットはあるが、最終的にHPPと何をするのかについて最終決定権を持つのはMGPだ。だからといって僕たちが無視されているという意味ではない。ただ、完全にコントロールしているのは僕たちではない」

    レース週末にHPPはワークス側の「メインチーム」と各カスタマー向けのサポートチームという形で活動する。

    「僕たちは少しメインループの外側にいて、プログラムへ情報を送り込むサイドループで仕事をしている。そのため、僕たちが望む設定や、自分たちに適した設定を必ずしも得られるとは限らない」

    情報が届くタイミングにも違いがある。

    「レースに向けてHPPから情報を受け取るが、その前には僕たちが参加していない意思決定や開発がある。何が使えるのか分かった時点では、それに反応して対応する時間があまり残されていないことも多い」

    マクラーレンは、この弱点を解消するために従来存在しなかった「PUパフォーマンスチーム」を新たに構築している。

    短いギア比もマクラーレンの足かせに
    もうひとつの違いがギア比だ。

    マクラーレンはシーズン開幕前に得られたメルセデス側の情報を基に、比較的短いギア比を選択した。短いギア比には加速性能やスタートなどでメリットがある一方、高速域では不利になる可能性がある。

    現在の知識を持ってもう一度選択できるならどうするかと問われたホールディは、「メルセデスにもっと近づける」と認めた。

    「もう一度やり直せるなら、メルセデスに近いギア比にすると思う」

    「短いギア比だからこそ得られるパフォーマンス上の機会もある。コーナーでより低いギアまで落とさずに済む場合もあるし、リスタートやスタートでもメリットがある」

    「ただ、高速側を考えれば、おそらく他のチームが持っているものを選ぶだろう」

    もっとも、ホールディはギア比だけで大きな差が生じているわけではないことも強調する。

    「小さなラップタイムの違いだ。ただ、そういう小さなものが積み重なると、それなりのラップタイムになる」

    「とはいえ、ここで話しているのは10分の1秒ではなく、数ミリ秒だ」

    2027年に向けて問われるマクラーレンのPU運用能力
    メルセデスとマクラーレンの説明を合わせると、2026年に生じている差を単純な「ワークス対カスタマー」という構図だけで説明することはできない。

    PUそのものは同じでも、メルセデスにはHPPとシャシー部門が共同で蓄積したシミュレーション環境があり、PUとマシンを一体として最適化できる。一方、その中には規則上マクラーレンへそのまま提供できないIPも含まれる。

    マクラーレンは独自のツールやソフトウェア、人員にコストキャップ内のリソースを投入し、MCL40に合わせたエネルギーマネジメントやキャリブレーションを構築しなければならない。

    さらに、情報を受け取るタイミング、設定に対する最終決定権、ギア比といった小さな違いも積み重なっている。

    2025年にメルセデスを364ポイント上回った王者マクラーレンが、2026年には同じPUを搭載するワークスチームを追う立場となった背景には、新世代F1で「エンジンを持っていること」と「エンジンを完全に使いこなすこと」が別の問題になったという現実がある。

    ハンガリーGPでノリスが示した速さはMCL40そのものに競争力があることを証明した。だからこそ、PUから取りこぼしている最後のパフォーマンスをどこまで回収できるか。そのための投資と技術基盤の構築が、残る2026年シーズンだけでなく2027年に向けてもマクラーレンの重要な課題となる。

  • ミカ・ハッキネン マクラーレンF1でクルサードと築いた健全な関係を回顧

    ミカ・ハッキネン マクラーレンF1でクルサードと築いた健全な関係を回顧

    ミカ・ハッキネンが、マクラーレンF1時代にデビッド・クルサードと築いた関係について振り返った。コース上では接触や緊張もあったものの、チームとともに成功するという共通の目標があったことで、対立を長引かせることはなかったという。

    F1で2度のワールドチャンピオンに輝いたハッキネンと元チームメイトのクルサードは、ポッドキャスト『Up To Speed』で当時のライバル関係について語り、激しく競い合いながらも健全な関係を維持できた理由を明かした。

    1999年オーストリアGPでの接触も「チームメイトなら普通」
    クルサードは、2人の間に時折生じた摩擦の例として、1999年F1オーストリアGPで起きた有名な接触を挙げた。当時マクラーレンはフェラーリとタイトルを争っていたが、ハッキネンはこうした出来事もチームメイト同士なら避けられないものだったと振り返る。

    「それもモーターレーシングの一部だ。チームメイトとして過ごすうえでの一部でもある。まったく普通のことだよ」

    「でも、なぜか僕たちは2人とも、この先に未来があること、そして一緒に成功できる未来があることを分かっていた」

    「僕たちはチームのためにいい仕事ができる。だから、怒りを2カ月も3カ月も頭の中に抱えている意味はない。問題を解決して、前に進んで、またレースに戻ればいい」

    ハッキネンは、チーム首脳陣から一定のサポートがあったことも認めている。

    「もちろん、チームのマネジメントから助けてもらった。でも、それで問題はなかった。それに君が言ったように、オーストリアGPで君が僕にぶつかったときも、本当に少し触れただけだった」

    「僕のマシンも壊れなかったし、君のマシンも壊れなかった。だから僕たちはそのまま走り続けることができた」

    クルサード「今ならノリスとピアストリに近い」
    クルサードは、当時の自分たちの関係を現在のマクラーレンのランド・ノリスとオスカー・ピアストリになぞらえた。タイトルを争うチームメイト同士として競いながら、チーム側が両者の関係を管理する必要がある点に共通性を感じているという。

    「今のドライバーを見ると、チームメイトとしての僕たちに最も近い例は、ランドとオスカーの関係かもしれない」

    「昨年も、彼らが接触しそうになった場面が何度かあった。チームがドライバーそれぞれの期待をコントロールしようとしていた場面も何度かあった」

    クルサード「最高の中の最高ではなかった」
    クルサードはF1でワールドチャンピオンになることはできなかったが、イギリス出身のドライバーとしてウィリアムズとマクラーレンというトップチームで走れたキャリアを誇りに感じている。

    「僕はそれなりの成功を収めた。でも、間違いなく最高の中の最高というカテゴリーには入っていなかった」

    「それでも、このスポーツにたどり着けるだけの力は明らかにあったし、主にイギリスのチームから素晴らしい支援を受けることができた」

    「サー・フランク・ウィリアムズが僕にチャンスを与えてくれた。デイモン・ヒルやジェンソン・バトンにも同じようにチャンスを与えた。ナイジェル・マンセルはロータスを経て加入したけど、ワールドチャンピオンになったのはウィリアムズだった」

    ハッキネンとクルサードはマクラーレンで長年コンビを組み、時にはコース上で衝突しながらも、対立を引きずらずチームの成功を優先した。その関係性は、現在のノリスとピアストリにも通じるチームメイト同士のライバル関係として、クルサードの目には映っている。

  • アイルトン・セナが「F1の基準を引き上げた」元マクラーレンのピロが証言

    アイルトン・セナが「F1の基準を引き上げた」元マクラーレンのピロが証言

    元マクラーレンF1ドライバーのエマニュエル・ピロが、1980年代後半にアイルトン・セナとアラン・プロストの仕事ぶりを間近で見た経験を振り返り、セナが技術面で「ドライバーの基準を引き上げた」と語った。

    当時マクラーレンのテストドライバーを務めていたピロは、セナとプロストがエンジニアにマシンの挙動を伝える技術に優れていたと証言。

    なかでもセナは、ドライバーが感じたことを極めて詳細に言語化し、エンジニアがセットアップを改善するために必要な情報を余すところなく伝えていたという。

    セナが変えた「マシンを伝える」技術
    1988年と1989年、マクラーレンではセナとプロストというF1史を代表する2人のドライバーがチームメイトとして激しい争いを繰り広げた。

    タイトル争いだけでなく、開発の現場でも両者は極めて高いレベルにあった。その様子を間近で見ていたのが、当時マクラーレンのテストドライバーを務めていたエマニュエル・ピロだ。

    ピロはベネトンでレースに参戦する一方、マクラーレンのテストや開発にも携わり、セナとプロストが参加する技術ミーティングにも同席していた。

    Davide Cironiとのインタビューで、ピロは2人について「明らかに並外れたドライバーだったし、テストドライバーとしても並外れていた」と振り返る。

    そのうえで、セナには特に際立った能力があったと説明した。

    「セナは、ドライバーがマシンの挙動をエンジニアに説明する方法という点で、本当に基準を引き上げた人物だった」

    現在のF1では膨大なセンサーデータやシミュレーションを利用できるが、当時はドライバーの感覚と、それをエンジニアへ正確に伝える能力が現在以上に重要だった。

    「もちろん今では多くのツールがあるから、このやり方自体は変わっているし、以前ほど重要ではなくなっている。それでも、今でも重要なことに変わりはない」

    1時間以上続いたセナの技術デブリーフ
    ピロによれば、セナの技術デブリーフは非常に長く、少なくとも1時間から1時間半に及ぶことも珍しくなかった。

    ただ長く話していたわけではない。セナはコース上で経験したマシンの挙動を細部まで再現するように説明していたという。

    「つまり、彼は自分がドライブしているときの経験をエンジニアの目の前に再現していた。マシンがその瞬間、その瞬間に何をしていたのかを伝えて、必要な調整をするための情報をすべてエンジニアに与えていたんだ」

    セナはコーナーごとの挙動やマシンから受け取った感覚を詳細に言葉へ置き換え、エンジニアが問題を理解できるところまで掘り下げていた。

    データ解析が現在ほど発達していなかった時代において、そのフィードバック能力はマシン開発そのものに大きな価値を持っていた。

    プロストは半分以下の時間で「必要なことだけ」
    興味深いのは、同じく開発能力の高さで知られたプロストが、セナとはまったく異なるアプローチを取っていたことだ。

    「アラン・プロストのブリーフィングは、長くてもセナの半分くらいだった。おそらく、それより短かったと思う」

    しかし、ピロはプロストのフィードバックがセナより劣っていたとは考えていない。

    「彼は本質的な部分だけに集中していた。だから最終的には、僕の見方ではフィードバックの質は同じくらいだった」

    その違いを、ピロは端的にこう表現する。

    「セナはすべてを説明した。プロストは必要なことをすべて説明した」

    セナがマシンで起きている現象を徹底的に言語化したのに対し、プロストは改善に必要なポイントを絞り込み、簡潔にエンジニアへ伝えるタイプだった。

    アプローチは対照的だったが、どちらもマシンを速くするという目的に対して非常に高いレベルに到達していた。

    ピロのキャリアにも残ったセナとプロストの仕事ぶり
    セナとプロストの関係は、コース上ではF1史上でも屈指の激しいライバル関係として知られている。しかしピロにとって、2人を間近で見る経験は単なるライバル対決以上のものだった。

    「彼らの技術デブリーフを聞くことは本当に楽しかったし、ものすごく勉強になった。その経験を、その後の自分のキャリアにも間違いなく持っていった」

    ピロはその後、F1だけでなくスポーツカーでも長いキャリアを築き、ル・マン24時間レースでは5度の総合優勝を達成した。

    そのピロが長いキャリアを経た後も鮮明に記憶しているのが、マクラーレンの技術ミーティングで目にしたセナとプロストの仕事ぶりだった。

    激しいライバル関係ばかりが語られる2人だが、マクラーレンが1980年代後半に圧倒的な強さを発揮できた背景には、速さだけではなく、マシンの状態を理解し、それをエンジニアへ伝える2人の卓越した能力があった。なかでもセナの詳細なフィードバックは、ピロが「基準を引き上げた」と表現するほど、当時のF1におけるドライバーとエンジニアの仕事の水準を押し上げるものだった。