カテゴリー: マクラーレンF1チーム

  • マクラーレン「McL 6GT」発表 F1以来のMT復活でブルースの夢を現代に

    マクラーレン「McL 6GT」発表 F1以来のMT復活でブルースの夢を現代に

    マクラーレン・オートモーティブは、新たなスーパーカー・コンセプト「McL 6GT」を発表した。

    創業者ブルース・マクラーレンが1960年代末に構想しながら実現できなかったロードカー「M6GT」の精神を現代に蘇らせたモデルで、V8内燃エンジン、後輪駆動、そしてマクラーレンF1以来となる本格的なマニュアルトランスミッションを組み合わせる。

    McL 6GTは単なる過去の名車の復刻ではなく、マクラーレンが今後展開する新たな高級スーパーカーの方向性を示す存在でもある。油圧式ステアリングや機械式スイッチ、露出したエンジニアリングなど、電動化とデジタル化が進む現代とは対照的に「触覚」「アナログ」「機械的なつながり」を前面に押し出した。

    ブルース・マクラーレンが果たせなかったM6GTの夢
    McL 6GTの原点となったM6GTは、ブルース・マクラーレンがレーシングカーで培った技術をロードカーへ持ち込もうとしたプロジェクトだった。

    ベースとなったのはCan-Amを戦ったM6Aで、ブルースはレースで成功を収める一方、マクラーレンの名を冠したロードカーを生み出す構想を抱いていた。しかし、1970年にブルースがM8Dのテスト中の事故で亡くなったことで、その計画が本格的な市販車事業へ発展することはなかった。

    McL 6GTという名称も、マクラーレンのモータースポーツ活動とロードカーの原点を結びつけるものだ。ボディカラーはブルース自身のM6GTの赤をモチーフとし、現代の塗装技術による高いメタリック感と赤色顔料を組み合わせている。

    燃料タンクを覆っていたM6GTの胴体パネルもデザイン要素として再解釈され、エンジンベイにはブルースのサイン、燃料フィラーキャップには「Speedy Kiwi」が刻まれるなど、細部にも創業者へのオマージュが盛り込まれた。

    マクラーレン・オートモーティブのニック・コリンズCEOは、このクルマについて次のように説明する。

    「McLaren McL 6GTは、私たちにインスピレーションを与え続ける創業者が完成させたいと願っていたものを大胆に想像したクルマです。そこにさらに60年分のイノベーションと情熱をあらゆる要素に織り込み、ドライバーとのつながりを体現する現代のアイコンを生み出しました」

    マクラーレン・McL 6GT マニュアルトランスミッション

    マクラーレンF1以来となる本格的なマニュアル
    McL 6GTを特徴づける最大の要素がマニュアルトランスミッションだ。マクラーレンによれば、本格的なマニュアルトランスミッションを採用するのは、1990年代を代表するスーパーカーであるマクラーレンF1以来となる。

    マクラーレンはV8内燃エンジンを搭載し、その駆動力をマニュアルトランスミッションを介して後輪へ伝えることを明らかにしている。Car and Driverによれば、公開されたプロトタイプのシフトパターンから6速MTとみられる。

    さらに油圧式ステアリングを採用し、スイッチ類にも操作した感触を重視した設計を導入。アルミニウムから削り出されたローレット加工のコントロール類や、操作感とストロークを追求したシフトレバーなど、人間と機械の直接的なつながりが重視されている。

    シフトレバーには立体的な「Speedy Kiwi」が組み込まれ、リンケージの一部も露出している。単に変速速度を追求するのではなく、ドライバー自身がギアを選び、機械を操作する行為そのものをMcL 6GTの価値として位置づけている。

    M6GTを現代化した低くワイドなスタイリング
    デザインもM6GTの単純な再現ではない。McL 6GTは極端に低くワイドなプロポーションを持ち、M6GTのベースとなったM6A Can-Amレーサーを思わせる低いノーズを採用する。

    ボディ表面は近年のマクラーレンとは異なり比較的クリーンで、低いノーズから特徴的なカムバック形状のリアまで連続したボリュームで構成。ルーフからリアデッキ、エンジンカバーまでをひとつの流れとして見せることで、キャビンがボディの上に載るのではなく、その内部へ埋め込まれたようなシルエットを作り出している。

    車体の中心には軽量なカーボンファイバー製モノコックを採用。その積層構造をあえて各部で見せることで、素材そのものもデザインの一部として扱った。

    M6GTのテールライトから着想を得た「Racing loop」と呼ばれるモチーフは空力構造に組み込まれ、ブルースのM6GTが装着していたナンバープレートも同系色のグラフィックとして再解釈された。インテリアでは当時のボックス型キルティングを現代的に仕立て直し、デジタルメーターもオリジナルの視認性と雰囲気を意識したものとなっている。

    マクラーレン・McL 6GT

    2028年の市販化へ 500台限定で約150万ドルと報道
    現段階で公開されたMcL 6GTは市販仕様そのものではなく、プリプロダクション・プロトタイプという位置づけだ。

    Car and Driverは、市販モデルのデリバリー開始は2028年で、生産台数は500台、価格は約150万ドルになると報じている。エンジンの詳細なスペックについてマクラーレンはまだ公表していない。

    McL 6GTが示しているのは、単なる懐古的なスーパーカーではない。マクラーレン自身も、このコンセプトが既存ラインアップとは異なる「新たに位置づけられた極めてエクスクルーシブなタイプ」のスーパーカーの基礎になるとしている。

    速さや変速時間だけを追求すれば、現代のデュアルクラッチ式トランスミッションに優位性がある。それでもマクラーレンがV8、後輪駆動、油圧式ステアリング、そしてマニュアルトランスミッションを選んだことには明確な意味がある。ブルース・マクラーレンが目指したレーシングカーとロードカーの境界を越える思想を、60年以上を経た現代に「ドライバーと機械のつながり」という形で再構築したのがMcL 6GTである。

  • レオナルド・フォルナローリ F1シート獲得へマクラーレンで積む開発経験

    レオナルド・フォルナローリ F1シート獲得へマクラーレンで積む開発経験

    マクラーレンの育成ドライバーを務めるレオナルド・フォルナローリが、F1シート獲得を目指すなかで取り組んでいるドライバー育成プログラムの内容を明かした。

    2025年のFIA F2選手権王者であるフォルナローリは、タイトル獲得後にマクラーレンのドライバー育成プログラムへ加入。2026年にはF1チームの公式リザーブドライバーに就任し、ランド・ノリスとオスカー・ピアストリを擁するチームの一員として経験を積んでいる。

    F2王者からマクラーレンF1のリザーブへ
    21歳のフォルナローリは、今季マクラーレンとともに世界各地のグランプリを転戦しながら、FP1やTPC(旧型車テスト)に参加してきた。

    FP1ではバルセロナとハンガリーでマシンをドライブ。限られた走行時間のなかでチームのプログラムを遂行し、F1マシンへの適応を進めている。

    一方、実車を走らせていない時間にも重要な役割を担っている。マクラーレンのシミュレーターでTPCやFP1に向けた準備を行うほか、F1のレース週末には金曜日のサポート作業にも加わっている。

    フォルナローリは、こうした一連の仕事が自身のドライバーとしての成長につながっていると説明した。

    「いろいろなことをやっている。すべてのTPCとFP1に向けて準備するために、たくさんのシミュレーターセッションを行ったし、F1の週末には金曜日のサポート作業もやった。それは自分の成長にとても役立っていると感じている」

    TPCとFP1でF1に必要な仕事を学ぶ
    マクラーレンがフォルナローリに与えているのは、単純にF1マシンを走らせる機会だけではない。

    TPCでは走行を重ねるごとに改善を積み上げ、FP1では限られた時間のなかでチームが必要とするデータを収集する。若手ドライバーにとっては速さを示すことだけでなく、エンジニアの要求を理解し、正確なフィードバックを返す能力を磨く場でもある。

    「もちろん、これまでに行ったTPCもある。セッションを重ねるたびに、いいステップを踏むことができた。そしてバルセロナで初めてFP1を走った。本当にいい経験だった」

    「プッシュできる周回はそれほど多くなかったけど、目的はチームを助けることだった。空力について有益なデータを提供することが自分の仕事だった」

    F1のフリー走行では、若手ドライバーが自由にタイムアタックできるとは限らない。特にレギュラードライバーからマシンを借りて走るFP1では、空力計測やセットアップ確認など、チームが設定したプログラムを正確にこなすことが優先される。

    フォルナローリにとって、こうした経験はF1で求められる仕事の進め方を実際のグランプリ週末で学ぶ機会となっている。

    シミュレーターでもマクラーレンの開発を支援
    フォルナローリの育成において重要な位置を占めているのがシミュレーター作業だ。

    F1チームでは、グランプリに向けたセットアップの検証や開発パーツの評価などでシミュレーターが重要な役割を担う。リザーブドライバーにとっても単なる練習ではなく、実際のマシン開発やレース週末の準備に関わる仕事となる。

    フォルナローリはTPCやFP1の前にもシミュレーターで準備を重ねており、実車とシミュレーターの両方を通じてマクラーレンの仕事の進め方を学んでいる。

    「マクラーレン、そしてドライバー育成プログラムで働いている全員のサポートに本当に感謝している」

    「チームのみんなはとてもプロフェッショナルだし、自分たちの仕事を愛している。そして、僕がこのプロセスやすべての仕事を楽しめるようにしてくれている」

    次の課題はF1のレースシート獲得
    F2王者という実績を持つフォルナローリだが、F1への道が確定しているわけではない。

    マクラーレンではノリスとピアストリがレギュラーを務めており、フォルナローリ自身はF1でレースを戦うためのシートを探し続けている。

    それでも、シミュレーター、TPC、FP1という異なる環境で経験を重ねられる現在の立場は、F1昇格に向けた重要な準備期間となっている。

    F2王者として速さを証明した次に求められるのは、F1チームの開発作業を理解し、限られた走行機会でも要求された仕事を確実に遂行できることだ。フォルナローリはマクラーレンの育成プログラムを通じてその能力を磨きながら、次のステップとなるF1のレースシート獲得を目指している。

  • マクラーレンF1 2027年マシンへの開発移行に自信「昨年よりはるかにスムーズ」

    マクラーレンF1 2027年マシンへの開発移行に自信「昨年よりはるかにスムーズ」

    マクラーレンF1のチーム代表アンドレア・ステラは、2026年型マシン「MCL40」の開発と2027年型マシンへの移行について、昨年よりも適切なバランスを取りやすい状況にあると語った。

    2025年はドライバーズタイトルを争いながら、シャシーとパワーユニットの両面で大幅な規則変更が導入される2026年に向けて、ほぼゼロから新車を開発する必要があった。その結果、マクラーレンは2026年シーズン序盤で後れを取り、MCL40の競争力向上を迫られることになった。

    2025年は「2つの極端」の間で難しい判断
    マクラーレンは2025年、ランド・ノリスが2008年のルイス・ハミルトン以来となるチームのドライバーズタイトルを獲得。コンストラクターズ選手権でも連覇を達成した。

    しかし、そのタイトル争いに最後までリソースを投入したことは、全面的な技術規則変更を伴う2026年への準備との両立を難しくした。

    ステラは、当時の状況を「2つの極端」の間でバランスを取らなければならなかったと振り返る。

    「ある意味、今年は2つの要求の間で中間点を見つけることがより簡単だ」

    「2025年には、世界選手権を勝ち取るために限界までプッシュすることと、事実上ゼロから新しいマシンを設計しなければならないことという、2つの極端な状況の間でバランスを取る必要があった」

    「今年は規則変更が比較的小さいため、2つのプロジェクト間の移行ははるかにスムーズだ」

    2026年はF1のシャシーとパワーユニット規則が同時に刷新される大きな転換点だった。一方、2027年に予定されている変更はそれほど大規模ではない。

    そのため、MCL40で進めている開発や得られたデータの多くを、2027年型マシンにも生かすことができる。

    MCL40で得る知見は2027年にも生かせる
    マクラーレンにとって重要なのは、2026年型マシンの開発をいつ打ち切るかという単純な二者択一ではない。MCL40から得られる知見そのものが、次世代マシンの開発につながるからだ。

    ステラは、現行世代のF1マシンはシャシー、パワーユニットともにまだ開発初期の段階にあると指摘する。

    「この世代のマシンは、シャシーとパワーユニットの両方において、まだ非常に初期の段階にあるということを考慮しなければならない」

    「したがって、2026年に学び続けるほぼすべてのことが、来年にも役立つことになる」

    これは、2025年から2026年への移行との大きな違いだ。前年は規則が根本から変わるため、旧型マシンへの開発投資が新車に直接つながらない部分も多かった。

    一方、2026年から2027年では技術的な連続性が高く、今季の開発を継続すること自体が2027年への準備にもなる。

    予算上限と風洞時間の配分が焦点
    ただし、リソースを無制限に投入できるわけではない。F1ではコストキャップに加え、風洞やCFD(数値流体力学)による空力開発時間も制限されている。

    さらに、設計部門だけでなく、実際にパーツを製造するための人的・設備的なリソースも、2026年型と2027年型の間で振り分ける必要がある。

    「もちろん、予算上限、風洞でのテスト時間、コンピューターシミュレーション、そして設計と製造におけるリソース配分について、適切なバランスを見つけなければならない」

    「だが、すべての面で我々は良いポジションにいると思っている」

    マクラーレンは2025年、タイトル獲得を優先したことで2026年型MCL40への準備に一定の代償を払った。だが、規則の連続性が高まる2027年に向けては事情が異なる。今季のマシンを改善しながら、その成果を次期マシンへつなげられることが、ステラのいう「中間点」を見つけやすくしている。

  • F1王者ランド・ノリス パパラッチの追跡に怒り「プライベートを侵害された」

    F1王者ランド・ノリス パパラッチの追跡に怒り「プライベートを侵害された」

    2025年のF1ワールドチャンピオン、ランド・ノリスは、知名度の高まりとともに私生活まで追い回されるようになった現状について、「侵害されていると感じた」と強い不快感を示した。

    F1王者となって以降、ランド・ノリスを取り巻く環境は大きく変わった。グランプリの週末だけでなく、サーキットを離れた日常生活でもカメラを向けられる機会が増え、本人は「F1ドライバーであること」と「ひとりの人間として生活すること」の境界線をどこに引くべきかという問題に直面している。

    ロンドンでの外出がSNSで拡散
    ノリスの不満が表面化するきっかけのひとつとなったのが、ロンドンのプライベート会員制クラブ「The Twenty Two」から出てきた際の出来事だった。

    ノリスはそこで、アメリカ人モデル兼インフルエンサーのアリックス・アールと会っていたとされ、店を出たところを撮影された。パパラッチから逃れるように走る姿まで撮られ、その映像や写真がSNSなどで広まった。

    だが、ノリスが問題視しているのは、単に外出しているところを撮影されたことだけではない。F1とは無関係の時間まで継続的に追跡され、誰と会い、どこへ向かうのかまで監視されるような状況になっていることだ。

    「僕も少しずつ歳を重ねてきたし、外に出られるようになりたいんだ。外に出るといっても、パーティーに行くという意味じゃない。友達と夕食を食べたり、家の外に出たりするということだよ」

    「去年だったら、ずっとゲームをして、自分の家にこもって負け犬みたいな気分になっていた。それが悪いことだという意味じゃないよ。自分だけで過ごして、規律を保っていたんだ」

    「でも今は、夜中までゲームをする代わりに、友達と出かけて夜中まで夕食を楽しむようになった。そういうことは昔から好きだったけど、今はその様子がSNSに出ることが増えたし、カメラも増えている」

    「F1の世界の外にある人生を経験するということなんだ。僕にはそうする権利がある」

    F1王者になって変わった日常
    ノリスの発言の背景にあるのは、ここ1年ほどで急激に高まった知名度だ。

    F1ワールドチャンピオンとなったことで注目度はさらに増し、グランプリの週末にはファンやメディアから多くの時間を求められるようになった。ノリス自身も、サーキットにいる間はそれが仕事の一部であることを理解している。

    一方で、私生活については別の線引きが必要だと考えている。

    その考えを決定的にしたのが、ロンドンで友人宅へ向かった際の経験だった。

    「さらに次のレベルになると、パパラッチがどこかで待っていたり、後をつけてきたりする。ロンドンで友達の家に車で向かったとき、パパラッチがずっと僕を追いかけているのが分かったんだ」

    「ロンドンの街中を40分間もずっとついてきた。僕が誰に会うのか、どこへ行くのかを確認するためだけにね」

    ノリスにとって、単に写真を撮られることと、移動先を突き止める目的で長時間追跡されることはまったく別の問題だった。

    「そこで初めて、自分の人生が少し侵害されているように感じるようになった。ホテルや家から出るだけで、誰かが僕の行動をひとつ残らず見ようとしているような状況だからね」

    「人について回るのはおかしい」
    著名なF1ドライバーである以上、完全な匿名性を保つことが難しいことはノリス自身も認識している。

    それでも、有名人だからという理由ですべての私生活が公のものになるわけではないというのがノリスの主張だ。

    「もうプライベートな生活がプライベートだとは感じられない。ただの『生活』になってしまった感じだね」

    「それもF1ドライバーであることの一部ではある。でも、そこには境界線がある。僕は人につけ回されることまでは受け入れない。それは単純におかしなことだよ」

    この発言でノリスは、メディアから注目されること自体を拒絶しているわけではない。サーキットではF1ドライバーとして注目を受ける立場を受け入れる一方、仕事を離れた時間まで継続的に追跡されることには明確に一線を引いている。

    ランド・ノリス(マクラーレン)

    好調マクラーレンを牽引する一方で直面する「王者の代償」
    コース上では、ノリスは直近のF1ハンガリーGPで優勝を飾った。新レギュレーション導入後に出遅れたマクラーレンもここ数戦で競争力を高めており、ノリス自身も再び結果を残し始めている。

    しかし、F1で頂点に立ったことで得たものは、成功や名声だけではなかった。

    世界王者として注目度が高まれば、サーキット外での関心も必然的に大きくなる。ただし、40分間にわたって車で追跡され、誰と会うのかまで探られる行為は、通常の取材やファンからの注目とは性質が異なる。

    ノリスが求めているのは、注目されない生活ではない。F1ドライバーとして公の場に立つ時間と、友人と夕食を楽しんだり、誰かの家を訪ねたりする個人としての時間を区別することだ。

    F1王者となり、以前とは比較にならないほど大きな注目を浴びるようになったノリス。その成功によって変化した日常のなかで、今度は「どこまでが公人で、どこからが私人なのか」という新たな問題と向き合っている。

  • マクラーレンF1 2026年苦戦は前年王座の「重い代償」 それでも崩れなかった理由

    マクラーレンF1 2026年苦戦は前年王座の「重い代償」 それでも崩れなかった理由

    マクラーレンは、2026年F1シーズン序盤の苦戦について、前年のタイトル争いでマシン開発を最後まで続けた「重い代償」があったと認めている。一方、その困難から立ち直る原動力となったのが、アンドレア・ステラ代表の下で築かれた「誰かを責めない」チーム文化だったという。

    2024年と2025年にコンストラクターズ選手権を連覇し、2025年にはランド・ノリスが自身初のドライバーズタイトルを獲得。

    ダブルタイトルを手に2026年を迎えたマクラーレンだったが、新レギュレーション下ではメルセデスに先行を許し、MCL40はシーズン前半に期待された競争力を発揮できなかった。

    しかし、大型アップデートを経て迎えたハンガリーGPではノリスが優勝。王者として迎えたシーズンで初勝利を挙げ、マクラーレンはようやくトップ争いへの本格的な復帰を果たした。

    2025年タイトル争いを最後まで続けた「重い代償」
    アンドレア・ステラは、2026年の出遅れには明確な理由があったと説明する。そのひとつが、2025年型マシンの開発をシーズン終盤まで継続したことだった。

    2025年は序盤こそノリスとオスカー・ピアストリによるタイトル争いになるかに見えたが、レッドブルが開発を続けたことでマックス・フェルスタッペンが終盤にタイトル争いへ加わった。

    マクラーレンも対抗する必要に迫られ、翌年に大規模なレギュレーション変更を控えながら、2025年型マシンへリソースを投入し続けた。

    「2024年から2025年にかけて4つのタイトルのうち3つを獲得するまで、3年間着実に前進してきたが、今シーズンのスタートは本当の意味でリセットだった」とステラは振り返る。

    「レギュレーション変更がおそらくこのスポーツの歴史でも最大級だったというだけではない。何より、2025年にダブルタイトルを確保するために注ぎ込んだ努力によって、どれほど重い代償を払っていたのかを思い知らされた」

    2025年の成功を追求したことが、2026年型マシンの準備に影響したということだ。

    それでもステラが強調するのは、そこでチームが崩れなかったことである。

    「僕たちはバラバラになることもできた。前年のような形で選手権をスタートできなかったことについて、言い訳を探すこともできた。でも、そうはならなかった」

    「技術的、戦略的な理由を理解しようとし、そこに努力を集中させた。それこそが、僕がこのチームを本当に誇りに思っている理由だ」

    危機に直面しても「誰かを責めない」マクラーレン
    ステラが語る「結束」は、近年のマクラーレンが進めてきた組織改革とも深く結びついている。

    現在の姿は、ホンダとのパートナーシップを再開した2015年とは大きく異なる。当時のマクラーレンはコンストラクターズ選手権9位に低迷。翌2016年には6位まで浮上したものの、チーム内部では主導権争いが続いていた。

    最終的にはロン・デニスがウォーキングでの37年間に及ぶ時代を終え、ザク・ブラウンが組織改革を推進。2018年には当時のチーム代表エリック・ブーリエも退任した。

    さらに2022年末、アンドレアス・ザイドルの後任としてステラがチーム代表に就任すると、マクラーレンのマネジメントスタイルは大きく変化した。

    チーム関係者のシンは、その最大の特徴を「責任追及をしない文化」だと説明している。

    「一番大きいのは、アンドレアとザクによってリーダーシップが変わり、全員が自分の仕事をできるように力を与えられたことだと思う」

    「ここには誰かを責めるということがない。それがどれほど大きなことなのか、外からでは分かりにくいかもしれない」

    特にレース戦略のように、限られた情報と確率を基に短時間で判断しなければならない仕事では、失敗した際に責任を追及されるという恐怖が意思決定を鈍らせる可能性があるという。

    「戦略のように、かなりストレスがかかり、確率に基づいていて、間違った方向へ行く可能性もある仕事をしていると、『もしミスをしたら周囲はどう思うだろう』と考えてしまうことがある」

    「でも、ここにはそれがない。ただ常に改善することに集中する。悪い結果が出ても、それを心配することはない」

    マクラーレン F1

    ミスも成功も同じように分析する
    もちろん、失敗を無視するわけではない。重要なのは、誰が悪かったのかではなく、なぜその判断に至り、次にどう改善するかを検証することだ。

    「悪い判断があれば、当然それを掘り下げ、理解し、改善しようとする。でも、本当に誰かを責めることはまったくない」

    「ミスがあったレースから戻ってくることもある。良かったことも悪かったこともあるけれど、それらを同じように扱う。それは本当に力を与えてくれる環境だ」

    この考え方は、ステラ自身が2026年の苦戦について語った内容とも一致する。

    ステラは、この7カ月間で得た最大の教訓について「大きな困難に直面したときこそ、結束が力になる」と語った。

    「何よりもまず自分たち自身に対して、立ち直り、トップへ向かう軌道に戻るためにチームの結束がどれほど重要なのかを証明できたと思う」

    10年前の9位からF1王者へ
    2015年にコンストラクターズ選手権9位だったマクラーレンは、その10年後にはF1世界王者としてシーズンを迎えるチームへと変貌した。

    その過程にはマシンや施設への投資、技術部門の再編といった数多くの要素がある。しかし、チーム内部では特定の技術的ブレイクスルーだけではなく、ブラウンとステラが築いた組織文化そのものが復活の重要な要因だったと考えられている。

    そして、その文化は成功しているとき以上に、2026年のような苦境で試されることになった。

    2025年のダブルタイトルを守るために開発を続けた結果、翌年のスタートで「重い代償」を払った。それでも責任の押し付け合いに陥ることなく原因を分析し、MCL40を改善。ハンガリーGPでノリスを再び優勝へ導いた。

    2026年のマクラーレンの復調は、単なるアップデートによる技術的な挽回だけではない。10年前の混乱から作り上げてきた「失敗しても誰かを責めない」という組織文化が、タイトル獲得後に訪れた最初の大きな試練で機能した結果ともいえそうだ。

  • オスカー・ピアストリ F1シミュレーター巡るハミルトンとの「世代の違い」指摘

    オスカー・ピアストリ F1シミュレーター巡るハミルトンとの「世代の違い」指摘

    オスカー・ピアストリは、F1のシミュレーターについて、グランプリ週末に向けた準備に「役立つツール」だとの考えを示した。一方で、シミュレーターに否定的なルイス・ハミルトンとは育ってきた時代が異なるとして、「世代の違い」にも言及している。

    F1各チームはファクトリーにシミュレーターを備え、レース前のセットアップ検討やデータ収集に活用している。

    ただし、その有効性に対するドライバーの評価は一様ではない。ハミルトンは今年、シミュレーターに「惑わされた」と感じた経験から、今後は使用しない意向を示していた。

    ピアストリ「僕は役に立つと感じている」
    ピアストリは、RacingNews365を含むメディアに対し、自身にとってシミュレーターは有効な準備手段だと説明した。

    「僕は役に立つと感じている。僕はルイスが育った時代とは違う世代で育ってきたということもある」

    「もちろん、シミュレーター自体はもう長い間存在している。でも、すべての人に合うものではないというのも理解できる」

    ピアストリは、現在のF1マシンの複雑さも、シミュレーターを活用する理由のひとつに挙げている。

    「今のマシンはとても複雑だから、シミュレーターで走っておくことはかなり役に立つと感じている。僕自身にとっても、チームにとってもそうだ」

    ハミルトンは「惑わされた」と使用に否定的
    一方、7度のF1ワールドチャンピオンであるハミルトンは、シミュレーターに対して異なる見方を示している。今年、シミュレーターから得た感覚や情報が実車での走行につながらず、むしろ自身を「惑わせた」として、使用しない意向を明らかにしていた。

    F1ではシミュレーターの精度が向上し、セットアップの事前検討や新しいパーツの評価など幅広い用途で活用されている。しかし、実車との感覚の違いをどこまで許容できるかは、ドライバーによって異なる。

    25歳のピアストリと41歳のハミルトンでは、ドライバーとして成長した環境にも大きな違いがある。ピアストリにとってシミュレーターはキャリア形成期から身近な存在だったのに対し、ハミルトンがシングルシーターでキャリアを築き始めた時代には、現在ほどシミュレーターがドライバー育成やレース準備に深く組み込まれてはいなかった。

    「実車と同じにはならない」限界も認識
    もっとも、ピアストリもシミュレーターを絶対的なものとは考えていない。実際のF1マシンを走らせる経験を完全に再現することはできないと強調した。

    「でも、人それぞれだ。シミュレーターが完璧になることはない」

    「絶対に間違いのないツールになることもないし、実際のマシンをドライブするのと同じくらい優れたものになることもない」

    そのうえで、最終的にはドライバー自身が、自分に合った方法を選択することが重要だと語った。

    「自分たちが持っているツールを使って取り組む。それが自分にとって良くないと思うなら、使わない。それだけのことだ」

    シミュレーターを積極的に活用するピアストリと、実車との相違から距離を置くハミルトン。両者の考え方の違いは単なる好みだけでなく、F1ドライバーとして育ってきた時代や環境の変化も映し出している。

  • ミカ・ハッキネン マクラーレンF1に忠告「フェルスタッペン獲得で調和を壊すな」

    ミカ・ハッキネン マクラーレンF1に忠告「フェルスタッペン獲得で調和を壊すな」

    マクラーレンF1が2027年にマックス・フェルスタッペン獲得を検討しているとの噂が浮上するなか、元F1ワールドチャンピオンのミカ・ハッキネンは、現在のドライバーラインアップを維持すべきだとの考えを示した。

    2026年シーズン序盤から、現行レギュレーションへの不満や契約に含まれる成績条項を背景に、フェルスタッペンの去就を巡る憶測が続いている。

    最近では2027年からマクラーレンへ移籍する可能性が取り沙汰されたが、フェルスタッペンのマネージャーは2028年末まで契約を全うすると否定。また『BILD』は、レッドブルが契約を2029年末まで延長し、成績条項を削除する新契約を提示したと報じている。

    「チームの調和を崩す必要はない」
    ランド・ノリスとオスカー・ピアストリはともに2027年まで契約を結んでおり、仮にフェルスタッペンを獲得する場合は、どちらかがシートを失うことになる。

    デビッド・クルサードとのポッドキャスト『Up to Speed』に出演したハッキネンは、マクラーレンが現在のチームバランスを崩すべきではないと語った。

    「とても興味深い話だ。もちろん、そこにはマックスだけではなく、多くの優れたドライバーがいる」

    「でも、私が見てきたマクラーレンというチームは、常にチーム全体のパッケージを重視して運営している」

    「成功するためには、チーム内に素晴らしい結束力を築くことが唯一の方法だ」

    「だから私なら、そのリスクをできる限り小さくしたいと思う」

    ハッキネンは、スター選手を加えることで現在の良好な雰囲気を損なう可能性があると警鐘を鳴らした。

    「そういうことをすれば、このようなチームスピリットを失ってしまう」

    「チームに2人の素晴らしいドライバーがいるなら、なぜわざわざ船を揺らす必要があるんだ?」

    「しかもマクラーレンには、世界チャンピオン(ノリス)がいる」

    ミカ・ハッキネン

    クルサードとの長期コンビを引き合いに
    ハッキネンは自身とデビッド・クルサードが長年マクラーレンでコンビを組んだ経験を引き合いに出し、安定したドライバー体制が成功につながるとの考えを示した。

    「私たちはF1で最も長くチームメートを務めた組み合わせだった」

    「それは、チーム内に良い調和があれば、なぜ別の誰かを迎える必要があるのかということを示している」

    最後はクルサードに冗談を飛ばし、笑いを誘った。

    「まあ、デビッド、君は時々扱いが難しかったけど、それでも私はうまく対処できたよ」

    今回の発言は、フェルスタッペンほどの実力者であっても、チームの成功には速さだけでなく組織全体の調和が不可欠だという、ハッキネンらしい哲学を示すものとなった。

  • オスカー・ピアストリ「2026年F1マシンはドライビングが根本的に変わった」

    オスカー・ピアストリ「2026年F1マシンはドライビングが根本的に変わった」

    2025年にタイトル争いを繰り広げたオスカー・ピアストリだが、2026年シーズン前半は新レギュレーションへの適応に苦戦した。しかし、マクラーレンのドライバーは、シーズン終盤戦へ向けてマシンを速く走らせるための重要なヒントを見つけつつあると明かした。

    2026年はシャシーとパワーユニットが全面刷新され、ドライバーにも従来とは異なるアプローチが求められている。

    ピアストリは、この変化は単なるマシン性能の違いではなく、「レースカーの運転方法そのものが変わった」と語っている。

    2026年マシンへの適応に苦戦した前半戦
    2025年は開幕前半だけで6勝を挙げ、選手権首位で夏休みに入ったピアストリだったが、2026年は状況が一変した。

    ここまで獲得ポイントは92点。表彰台はマイアミGP以降なく、今季はわずか2回にとどまっている。マクラーレンのMCL40自体がライバル勢ほど競争力を発揮できていないことに加え、チームメイトのランド・ノリスに対しても予選で苦戦。マイアミGP以降の8戦では、公道コースのモナコGPを除き、ノリスがすべて予選で前につけている。

    ピアストリは、その理由の一つとして2026年マシン特有のドライビングスタイルへの適応を挙げた。

    「マシンや自分自身からパフォーマンスを引き出すために、本当にたくさんの新しいこと、新しいやり方を見つけなければならない」

    「これまでずっとやってきた自分のリズムや運転の仕方に落ち着いてしまうのは簡単だけど、このマシンでは必ずしもそれが通用しない。バルセロナはまさにその例だった」

    オーストリアGPから新しい走らせ方を模索
    ピアストリは、オーストリアGPをきっかけに自らのアプローチを変え始めたという。

    「オーストリアでは、自分自身をもう少し追い込んで、新しいことを試さなければいけないと感じた。そして、少し違う方法でクルマを走らせるようにした」

    その試行錯誤を続けた結果、夏休み前の数戦で重要な発見があったと説明した。

    「どのクルマにも速く走るために必要なものは少しずつ違う。そして夏休み前の数戦で、このクルマをどう運転すべきか、どういう特性なのか、どうすれば速く走れるのかを以前よりずっと理解できるようになった」

    「それは必ずしも直感的でも自然なことでもない」

    オスカー・ピアストリ(マクラーレン)

    「レースカーの運転方法そのものが変わった」
    ピアストリは、2026年レギュレーションを過去の技術規則変更とは別物だと位置付けている。

    これまでのレギュレーション変更では、ダウンフォース量や発生方法が変わることはあっても、基本的なドライビングの考え方は大きく変わらなかった。しかし2026年は、マシンの性能を引き出すための運転方法そのものを見直さなければならないという。

    「今回のレギュレーションは、本当にいろいろな意味でまったく違う」

    「以前のレギュレーション変更では、ダウンフォース量やダウンフォースの生み出し方など、クルマ自体はかなり変わった」

    「でも今回は、ある意味ではレースカーの運転方法そのものが完全に根本から変わったようなものなんだ」

    「僕たちにとっても、僕自身にとっても大きなリセットだった。物事への取り組み方や、いろいろなことの進め方を変えなければならなかった」

    後半戦へ向けた復調の兆しか
    ピアストリのコメントからは、2026年型マクラーレンの性能だけでなく、自身のドライビングスタイルにも課題があったことを率直に認めている様子がうかがえる。一方で、オーストリアGP以降に新たな走らせ方を見つけたことで、夏休み明け以降は本来の速さを取り戻せる可能性も見えてきた。新世代F1マシンへの理解をさらに深められるかが、後半戦の巻き返しを左右する重要な鍵となりそうだ。

  • デビッド・クルサード再評価 元マクラーレンF1メカニック「過小評価されている」

    デビッド・クルサード再評価 元マクラーレンF1メカニック「過小評価されている」

    マクラーレンで長年メカニックを務めたインディ・ラルが、デビッド・クルサードの功績が十分に評価されていない現状を「悲しい」と語った。

    クルサードは1996年から2004年まで9シーズンにわたってマクラーレンに在籍し、13勝を挙げたほか、2001年にはドライバーズランキング2位を獲得。しかし、チームメイトだったミカ・ハッキネンの2度のワールドタイトルの陰に隠れ、その貢献は過小評価されているとラルは指摘している。

    「13勝は運だけでは成し遂げられない」
    クルサードは1996年にウィリアムズからマクラーレンへ移籍。1995年最終戦オーストラリアGPではピットレーンでクラッシュを喫し、ウィリアムズからのボーナス50万ポンドに加え、マクラーレンとの契約で設定されていた優勝ボーナス150万ポンドも失うという不運に見舞われた。

    それでもマクラーレンでは9年間にわたり活躍し、1997年、1998年、2000年にランキング3位、2001年には2位とタイトル争いにも加わった。

    一方で、1998年と1999年に連続で世界王者となったハッキネンの存在が大きく、クルサード自身もチーム内ではハッキネンの方がタイトル獲得に適した立場だったと振り返っている。

    ラルは『Autosport』の取材で、クルサードの評価について次のように語った。

    「とても楽しい時代だった」

    「デビッドがあまり評価されていないのは少し悲しい。彼は調子が良い日は本当に速かった。ミカやミハエル・シューマッハーを相手に13勝を挙げるなんて、運だけでできることではない。デビッドは非常に献身的だった」

    デビッド・クルサードとミカ・ハッキネン(マクラーレン)

    ハッキネンとは特別な信頼関係
    一方でラルは、ハッキネンとはより深い関係を築いていたことも明かしている。

    当時のマクラーレンはテストで度重なる技術的トラブルに苦しみ、それがハッキネンの自信を大きく揺るがしていたという。

    「僕はミカととても親しくなった。ある年はテストで故障が続き、それが彼を壊しかけていた。自信という意味でも、まさに分岐点になりかねない状況だと感じたので、僕は彼に寄り添うようになった」

    「サーキットの外でも一緒に多くの時間を過ごし、信頼関係を築いた。そういう時間には、お互いにより率直な話ができる。ミカには驚異的な生まれ持った才能があった」

    ラルは、ハッキネンの卓越した才能を認めながらも、クルサードもまた同時代のトップドライバーたちと互角に戦い続けた実力者だったと強調。マクラーレン黄金期を支えた両ドライバーの功績は、ともに正当に評価されるべきだとの考えを示した。

  • フェルナンド・アロンソ マクラーレンF1時代にハミルトンへのデータ共有停止を要求

    フェルナンド・アロンソ マクラーレンF1時代にハミルトンへのデータ共有停止を要求

    2007年にマクラーレンでチームメイトとなったフェルナンド・アロンソが、当時新人だったルイス・ハミルトンへのデータ共有を停止するようチームに要求していたことが明らかになった。

    当時アロンソのレースエンジニアを務めたマーク・スレイドが振り返り、この要求は却下されたものの、アロンソがチーム内で不公平な扱いを受けていると強く感じていたことの表れだったと証言している。

    スレイドが明かしたアロンソの要求
    2007年シーズン、前年まで2年連続でワールドチャンピオンを獲得していたフェルナンド・アロンソは、マクラーレンへ移籍。一方、チームメイトにはF1デビューを果たした新人ルイス・ハミルトンが起用された。

    しかし、シーズンが進むにつれて両者の関係は急速に悪化。アロンソはチームが新人のハミルトンを優遇していると感じ、不満を募らせていった。

    当時アロンソのレースエンジニアだったマーク・スレイドは、ピーター・ウィンザーのインタビューで次のように明かした。

    「2007年、フェルナンドとルイスの関係が最悪だった頃、シルバーストンあたりの時期にフェルナンドはルイスに自分のデータを見せないよう要求した」

    「彼は、自分もルイスのデータを見なくて構わないと言っていた。両方のマシンのデータにアクセスできることは、ルイスにとって有利になるだけだと確信していたんだ」

    この要求は最終的にマクラーレンに却下された。

    マクラーレンが要求を拒否した理由
    スレイドは、チームが要求を受け入れなかった理由について、チーム全体の競争力を優先したためだと説明した。

    「もちろん認められなかった。しかしフェルナンドは本気だった」

    「彼もルイスのデータを見ることはできた。その情報をもっと有効に使って自分のパフォーマンス向上につなげるべきだったと思う」

    さらにエンジニアの立場から、データ共有はチーム全体の利益につながると強調した。

    「エンジニアとして言えば、情報は多いほど判断の質が高まり、チームは速くなる。戦っている相手はチームメイトだけではなく、グリッド上のすべてのライバルだからだ」

    「もし両ガレージで扱える情報を制限すれば、結果としてチーム全体のパフォーマンスも制限してしまう」

    要求の背景にあった不信感
    スレイドによれば、アロンソは要求が拒否されたことにも強い不満を抱いていたという。

    「最終的には拒否されたが、彼は非常に真剣だった。そして自分の望みがかなわなかったことに非常に不満を抱いていた」

    一方で、この要求そのものが問題の本質ではなく、チームとの関係悪化が生んだ結果だったと振り返る。

    「この要求は、彼がさまざまな面で不公平な扱いを受けていると感じていたことの表れだった」

    「これは多くの要因の一つに過ぎない。彼なりに、不公平だと感じていた状況を正そうとした行動だったのだろう」

    2007年のマクラーレンは、アロンソとハミルトンの激しいタイトル争いに加え、チーム内対立やスパイゲート問題などで混乱したシーズンとして知られる。アロンソは3年契約で加入したものの、わずか1年でチームを離脱しており、今回の証言は当時の緊張関係の一端を改めて示すものとなった。