マクラーレンは、2027年F1マシンでホイールベースを延長する方針を明らかにした。2026年型MCL40では軽量化を狙って規則上限より短いホイールベースを採用したが、来季はより上限に近い車体寸法へと設計思想を転換する。
エンジニアリングディレクターのニール・ホールディによれば、短いホイールベースは最低重量への対応という明確な目的を持って採用されたものだった。
一方、今季のMCL40ではグリップ面が課題となり、特にオスカー・ピアストリはチームメイトのランド・ノリスほどマシンの特性を引き出せずにいる。マクラーレンは開発を通じて軽量化を進めたことで、2027年には車体を長くし、フロア下面の空力開発により大きな自由度を持たせる方向へ進む。
MCL40で採用した短いホイールベース
2026年のF1技術規則では、従来のグラウンドエフェクト時代と比較してマシンの機敏さが重視され、車体寸法も変更された。マクラーレンはその新しい規則に対し、許容される最大寸法までホイールベースを伸ばすのではなく、よりコンパクトなMCL40を設計した。
ホールディは、この判断の大きな理由が重量だったと説明する。
「マシンを短くしたのは、その方が軽くなるからだ。重量規則への対応が非常に、非常に大きなチャレンジになることは分かっていた」
「それによって良いスタートを切ることができ、ほかの領域にパフォーマンスを投資することができた」
F1マシンでは、わずかな性能向上を追求するための新しい部品や構造が重量増につながることがある。そのため設計段階で重量に余裕を作ることは、その後の開発自由度を確保するうえで重要となる。
「ほんのわずかなパフォーマンス向上を狙う場合でも、あちこちで少しずつ重量が増えることがよくある。だから早い段階でその重量を節約できたことで、その一部をパフォーマンスのために使うことができた」
「そしてマシンを開発していくなかで、さらに重量を削ることもできた」
つまり短いホイールベースは単純な失敗ではなく、2026年規則への対応においてマクラーレンが意図的に選択したトレードオフだった。
ピアストリが苦戦したMCL40のグリップ特性
一方、MCL40はシーズン前半を通じてグリップ面に課題を抱えてきた。
2025年には最終戦アブダビGPまでF1ワールドチャンピオン争いを繰り広げたピアストリだが、2026年は前年ほど安定してパフォーマンスを発揮できていない。
メルセデスがシーズン序盤から高い競争力を発揮していることも成績に影響しているが、同じMCL40をドライブするノリスと比較しても、ピアストリがマシンの特性への適応に苦しんでいることは今季の課題のひとつとなっている。
短いホイールベースは車体の軽量化や機敏さというメリットをもたらす一方、空力開発に使用できる車体下面の面積は小さくなる。マクラーレンは開発を進めるなかで、この部分にさらなるパフォーマンスを引き出せる可能性を見いだした。
2027年はホイールベースを延長
ホールディは、2027年型マシンではMCL40よりもホイールベースを長くすることを明言した。
「来年については、最終的にもっと長いマシンになる。空力的に見れば、そうすることでアンダーボディに使える面積をわずかに大きくできるからだ」
「アンダーボディの開発をさらに進めていくなかで、それをうまく扱えるようになってきている」
マシンを長くすれば単純に性能が向上するわけではなく、重量や機敏性とのトレードオフが発生する。しかしMCL40の開発によってさらなる軽量化を実現したことで、マクラーレンは2027年型では車体寸法を拡大する余地を得たことになる。
ホールディは、2026年型を設計した当初の判断についても説明している。
「当初は、マシンを短くしてもラップタイムという点で大きなペナルティにはならないように見えていた」
この発言からも、マクラーレンが2026年のコンセプトを全面的な失敗と捉えているわけではないことが分かる。当初は重量面のメリットを優先したものの、実際の開発を通じて空力面でより大きな可能性を見いだし、2027年に向けてバランスを変えるという判断だ。
「短さ」からフロア開発の余地を重視する方向へ
2026年型MCL40の短いホイールベースは、最低重量への対応という明確な狙いから生まれた。しかしシーズンを通じた開発で軽量化が進んだことで、マクラーレンはそのメリットを維持する必要性が薄れつつある。
その一方で、より長いホイールベースによってアンダーボディの利用可能面積を拡大すれば、フロアを中心とした空力開発の可能性を広げられる。
ピアストリとノリスがMCL40で経験しているグリップ面の課題を踏まえながら、マクラーレンは2027年型で重量を優先したコンパクトな設計から、より大きな空力開発の余地を持つパッケージへと軸足を移すことになる。
