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  • アウディF1の現状は「1995年のフェラーリ」 ビノットが2030年王座へ描く再建計画

    アウディF1の現状は「1995年のフェラーリ」 ビノットが2030年王座へ描く再建計画

    アウディF1の責任者を務めるマッティア・ビノットは、現在のチームが「1995年のフェラーリ」に似た段階にあるとの見方を示した。

    施設や人員、組織体制ではトップチームとの差が残る一方、2030年までにF1世界選手権を争うという目標については「具体的な目標」であり、達成可能だと強調している。

    アウディは2026年、ザウバーを完全に引き継ぐ形でワークスチームとしてF1に参戦した。ニコ・ヒュルケンベルグとガブリエル・ボルトレトを擁し、11戦終了時点で12ポイントを獲得しているものの、6レースで11位フィニッシュを記録するなど、トップグループとの差は依然として大きい。

    2030年のタイトル争いを見据えるアウディF1
    アウディはF1参戦当初から、短期間での成功ではなく長期的なプロジェクトとしてチームを構築する方針を明確にしてきた。そのなかで掲げているのが、2030年までに世界選手権を争えるチームになるという目標だ。

    現時点で競争力向上の最大の焦点となっているのは、自社開発するパワーユニットである。一方、ビノットは課題がパワーユニットだけにあるわけではないと考えている。

    アウディがザウバーから引き継いだスイス・ヒンウィルのファクトリーは、近年トップチームほど大規模な投資を受けてこなかった。ザウバーは2016年にスウェーデンの実業家フィン・ラウジングの支援を受けて以降、ザウバー、アルファロメオ、ステークと名称を変えながら参戦を続けたが、基本的には中団下位で戦うシーズンが続いていた。

    そのため、現在のアウディにはメルセデス、フェラーリ、マクラーレン、レッドブル・レーシングと競争するためのインフラ整備も求められている。

    ビノットはRacingNews365のインタビューで、トップチームとの差について率直に認めた。

    「メルセデス、フェラーリ、あるいはマクラーレンを訪れ、そのあとで我々のところを訪れれば、そこにギャップ、明確な違いがあることに気づくだろう」

    「我々の建物やインフラはトップチームと同じレベルにはない。ただ、それを誰かの責任だと言っているわけではない。以前のチームオーナーがどのような野心を持っていたのかという事実の結果だ。だから現在はギャップがあり、それを埋めていかなければならない」

    「もっと大きくならなければならない」
    アウディがタイトルを争うためには、単純に既存設備を改善するだけでは十分ではないとビノットは考えている。人員、製造能力、ファクトリーそのものを拡大する必要があるという。

    「将来的にはもっと大きくならなければならない。もっと多くの人材が必要だし、製造のためのスペースもさらに必要になる」

    「だから当然、拡張計画について検討している。拡張は将来の成功を左右する要素になるからだ」

    ただし、大規模な施設拡張は短期間で完成するものではない。

    「拡張は一夜にして実現するものではない。それでも、そうしたプロジェクトについて検討しているし、真剣に考えている。決定が下されれば、そのときに知らせることになる」

    ビノットが重ねる「1995年のフェラーリ」
    ビノットにとって現在のアウディの状況は、自身がフェラーリに加入した1995年と重なって見えるという。

    当時のフェラーリは、現在のようなF1を代表する巨大組織とは大きく異なっていた。ジャン・トッドの指揮下でチーム再建が始まっていた時期であり、その後、ミハエル・シューマッハ、ロス・ブラウン、ロリー・バーンらを迎え、2000年代初頭の黄金時代につながる基盤が築かれていった。

    ビノット自身も1995年にエンジンのテストエンジニアとしてフェラーリに加入。その後、技術部門でキャリアを重ね、最終的には2019年から2022年までチーム代表を務めた。

    「僕がここに来たときに目にしたものは、1995年のフェラーリのようだった。僕にとって比較対象になるのは1995年のフェラーリだ」

    「古くて小さなファクトリーで、人員も少なく、導入されているプロセスも限られている。だから僕にとっては、本当に当時のフェラーリとの比較になる。1995年のフェラーリと現在のフェラーリを比較するようなものだ」

    1995年のフェラーリは、まだタイトルを争える完成された組織ではなかった。しかし、その翌年にはシューマッハを迎え、その後の数年間をかけて組織、技術、人材を整備。最終的にコンストラクターズ選手権6連覇、ドライバーズ選手権5連覇という黄金期につなげた。

    ビノットが現在のアウディに重ねているのも、当時のフェラーリの成績そのものではなく、トップチームになるための土台を構築している「段階」だ。

    アウディ F1

    表から見えないところで進むアウディの再建
    2026年の結果だけを見れば、アウディはまだF1のトップチームとは大きな隔たりがある。しかしビノットは、レース結果には現れない部分で重要な変化が進んでいると説明する。

    「これまでやってきたことは正しい方向に進んでいると思う。チームは改善し、前進している。そしてファクトリーでは、メディアやファンからは見えないところで多くのことが起きている」

    「本当に多くのことが進んでいる。我々は正直に、そして本当の意味で将来のための基盤を築いている」

    そのうえでビノットは、2030年という目標が単なるスローガンではないことを強調した。

    「だから、2030年までに世界選手権を争うという目標は間違いなく達成可能だと確認できる。2030年は具体的な目標だ」

    アウディにとって2026年は完成形を示すシーズンではなく、タイトルを争う組織へ変貌するための出発点に位置づけられている。ビノットが経験した1995年のフェラーリと同じように、現在の成績以上に、今後数年間でどこまで人材、設備、開発体制を積み上げられるかが2030年の成否を左右することになりそうだ。

  • 2026年F1バーレーンGP マレーシア開催のチケット販売開始

    2026年F1バーレーンGP マレーシア開催のチケット販売開始

    バーレーン・インターナショナル・サーキット(BIC)とセパン・インターナショナル・サーキット(SIC)は、マレーシアで開催される2026年F1バーレーンGPのチケット販売を開始した。

    2026年F1バーレーンGPは10月2日から4日にかけてセパン・インターナショナル・サーキットで開催される。2017年以来となるF1のセパン復帰に向け、グランドスタンド席と一般入場券の販売がスタートした。

    マレーシア国籍を持たない海外ファン向けのチケットは、バーレーン・インターナショナル・サーキットの公式サイトで販売されている。3日間の一般入場券は1人219ドルから、グランドスタンド席は350ドルから、メイングランドスタンドは566ドルとなっている。価格はいずれも税込みだ。

    一方、マレーシア国民の身分証明書「MyKad」の保有者には、3日間チケットの特別料金が設定される。一般入場券は200リンギットから、グランドスタンド席は1,291.4リンギットからとなる。この特別料金を利用するにはMyKadの確認手続きが必要となる。

    3歳から6歳までの子どもには25%の割引が適用され、3歳未満は無料となる。また、追加のサポートを必要とする観客向けにアクセシブルシートも用意される。

    主催者はレースウイークエンドのチケットに高い需要が見込まれるとして、希望する座席を確保するため早めに購入するよう呼びかけている。

    F1がマレーシアのセパン・インターナショナル・サーキットで最後にレースを開催したのは2017年。今回のイベントでは、バーレーンGPの名称と雰囲気をマレーシアへ持ち込み、セパンで開催する異例のグランプリとなる。

    ホスピタリティパッケージについては今後数日以内に詳細が発表される予定で、レースウイークエンドに関する最新情報はBICおよびSICの公式サイトで案内される。

    また、ガルフ・エアはバーレーンとクアラルンプールを結ぶ直行便を2026年9月29日から運航すると発表している。これにより、同社のネットワークを利用する海外ファンがレースウイークエンドに合わせてマレーシアへアクセスしやすくなる。

    「F1の歴史の一部になる機会」
    バーレーン・インターナショナル・サーキットの最高経営責任者(CEO)を務めるシェイク・サルマン・ビン・イサ・アル・ハリファは、チケット販売開始について次のように語った。

    「チケット販売の開始は、セパンでの歴史的なレースウイークエンドに向けて準備を進めるなかで、大きな節目となる」

    「マレーシアでバーレーンGPを開催すると発表して以来、ファンやこのスポーツに関わる人々から寄せられた反響は信じられないほど大きかった。ファンにとって、F1の歴史におけるこのユニークな瞬間の一部となる機会がついに訪れた」

    「できるだけ幅広いファンが利用できるよう、多様なチケットの種類と価格設定を用意するため、セパン・インターナショナル・サーキットの仲間たちと緊密に取り組んできた」

    「また、SICおよびF1とともに、コース外でも素晴らしいエンターテインメントを提供するための準備がかなり進んでいる。近いうちにさらに詳しい内容を発表できることを楽しみにしている」

    セパンでは2017年以来のF1開催
    セパン・インターナショナル・サーキットのCEOを務めるアズハン・シャフリマン・ハニフも、チケット発売をF1復帰に向けた重要な節目と位置づけた。

    「今日のチケット販売開始は、2017年以来初めてとなるF1のセパン復帰に向けて準備を進めるなかで、もうひとつの重要な節目となる」

    「マレーシアのファンがホームサーキットでF1を体験することをどれほど待ち望んでいたか、私たちは理解している。バーレーン・インターナショナル・サーキット、そしてF1とともに、マレーシア、地域各国、そして世界中からファンを迎え、セパンで素晴らしいF1ウイークエンドを開催できることを楽しみにしている」

    「特に、マレーシアの皆さんにこの特別なレースウイークエンドをより身近に感じてもらえるよう、MyKad保有者限定の料金を提供できることをうれしく思う」

    「コース上での世界最高峰のレースに加え、今後発表する刺激的なファン体験も用意している。残念な思いをすることがないよう、早めにチケットを購入し、セパンで素晴らしいF1の祭典に参加してほしい」

    2026年F1バーレーンGPは10月2~4日にセパンで開催される。2017年以来9年ぶりとなるF1のマレーシア復帰は、バーレーンGPを国外で開催するという異例の形で実現する。

  • デビッド・クルサード レッドブルF1時代の激怒無線「全員バカ!」マテシッツも傍受

    デビッド・クルサード レッドブルF1時代の激怒無線「全員バカ!」マテシッツも傍受

    デビッド・クルサードが、レッドブル・レーシングでF1を戦っていた時代の印象的な無線エピソードを明かした。

    姉妹チームのトロロッソに行く手を阻まれ、怒りのあまりチーム無線で「全員バカだ!」と罵倒。そのやり取りを、当時レッドブルのオーナーだったディートリッヒ・マテシッツが聞いていたという。

    クルサードが振り返ったのは、レッドブルがまだ現在のようなF1のトップチームへと成長する前の出来事だ。レッドブル・レーシングとトロロッソは同じオーナーの傘下にありながら、コース上では独立したチームとして競争する。その方針を、クルサードは身をもって知ることになった。

    新品タイヤでトロロッソの後方へ
    クルサードは自身のF1キャリア終盤をレッドブル・レーシングで過ごし、クリスチャン・ホーナーらとともにチームの黎明期を支えた。

    2006年にはレッドブルが2チーム体制を確立。レッドブル・レーシングに加え、ミナルディを買収して誕生したトロロッソが参戦していた。後者は現在のレーシングブルズにつながるチームである。

    クルサードがポッドキャスト『Up To Speed』で語ったエピソードは、その初期の時代に起きたものだった。

    「かなり昔の話だけど、ホッケンハイムで、おそらく2007年だったと思う。ピットストップを終えてコースに戻ったら、当時トロロッソと呼ばれていたマシンの後ろに出た。今のレーシングブルズだね」

    クルサードは新品タイヤを履いていた一方、前を走るトロロッソは使用済みタイヤだった。両者は同じレッドブル傘下であり、レース戦略も異なっていたことから、クルサードはすぐに道を譲ってもらえると考えていた。

    「僕は新品タイヤで、向こうは古いタイヤだった。それに僕たちは同じファミリーだった。どちらもレッドブルのチームだったからね」

    そこでクルサードは無線を通じ、トロロッソ側に自分を先行させるよう伝えてほしいとチームに求めた。

    「無線で『トロロッソに、僕たちはレースの違うフェーズにいると伝えてくれ』と言った。当時はレッドブル・レーシングもトロロッソも、コンスタントにポイントを獲得していた時代ではなかった。まだチームを作り上げている段階だったんだ」

    譲らない姉妹チームにクルサードが激怒
    しかし、前を走るトロロッソはポジションを譲らなかった。

    「向こうは退かなかった。それでまた無線を入れて、『みんな、僕はここで時間を失っているだけだ』と言った」

    現在とは違い、当時のF1にはDRSがなく、KERSもまだ導入されていなかった。ペース差があっても、コース上で追い抜くのは簡単ではなかった。

    「KERSもなかったし、DRSもなかった。何とかして自分でオーバーテイクのチャンスを見つけるしかなかったんだ」

    クルサードの苛立ちは次第に高まり、ついに我慢の限界を迎えた。

    「結局、彼らは退かなかった。それで無線で『お前たちはバカだ。全員どうしようもない奴らだ!』って言っていたんだ」

    この無線はテレビ中継では放送されなかった。クルサードとしては、あくまでチーム内部だけで交わされた怒りの言葉だった。

    ところが、その無線を聞いていた人物の中には、レッドブルという組織で最も重要な人物のひとりがいた。

    「そのあと、レッドブルのオーナーだったマテシッツさんが無線を聞いていたことを知ったんだ」

    デビッド・クルサードとディートリッヒ・マテシッツ

    マテシッツが示した「2チームは独立」の哲学
    ディートリッヒ・マテシッツに直接聞かれていたとなれば、クルサードが叱責されても不思議ではなかった。しかし、実際にはそうならなかった。

    むしろクルサードは、この出来事を通じてマテシッツがレッドブルの2チームをどのように位置づけているのかを理解したという。

    「彼の考え方はこうだった。レッドブルが所有するチームは2つある。でも、それぞれ独立して運営されていて、どちらがトップまで上がれるかを競っているんだ、とね」

    レッドブル・レーシングとトロロッソは同じ企業の所有下にあっても、一方がもう一方をコース上で優遇することを前提としていなかった。少なくともマテシッツは、両チームを競争させることを重視していた。

    クルサードは、その姿勢に敬意を抱いたという。

    「僕はそれを尊重している。それに、彼があとから僕のところへ来て『二度と無線であんなことを言うな』と言わなかったことも尊敬しているよ」

    ホーナーからは「褒め言葉をありがとう」
    もっとも、クルサードの怒りの無線がチーム内で聞き流されていたわけではなかった。

    ピットへ戻ると、当時レッドブル・レーシングのチーム代表だったクリスチャン・ホーナーやスタッフから反応があったという。

    「放送には流れていなかった。でもピットに戻ったら、クリスチャン・ホーナーとチームのみんなから『ああ、褒め言葉をありがとう!』って言われたよ」

    クルサードは2005年のレッドブル・レーシングF1参戦初年度からチームに所属し、2008年シーズン限りで現役を引退した。F1通算13勝を挙げ、ウィリアムズで1勝、マクラーレンで12勝を記録している。

    レッドブルでは勝利を挙げることはできなかったものの、2006年モナコGPでチーム初表彰台を獲得するなど、その後の飛躍につながる基盤づくりに貢献した。

    一方、ホーナーは2005年の参戦開始から長年にわたってレッドブル・レーシングを率い、複数のF1世界タイトル獲得を指揮。2025年イギリスGP後にチームを離れ、約20年に及ぶ代表としての時代に幕を下ろした。

    同じレッドブル傘下だからといって、コース上で特別扱いするわけではない。クルサードの怒りの無線と、それを聞いても介入しなかったマテシッツの対応は、後にF1を代表する勢力へと成長するレッドブルの競争哲学を象徴するエピソードでもある。

  • メルセデスF1 開発速度は昨年の「6〜7倍」アリソンが明かす驚異的な進歩

    メルセデスF1 開発速度は昨年の「6〜7倍」アリソンが明かす驚異的な進歩

    メルセデスのテクニカルディレクターを務めるジェームス・アリソンは、2026年に導入された新F1レギュレーションのもとで、各チームの開発速度が「桁違い」のレベルに達していることを明かした。

    F1では新たなレギュレーションが導入されると、エンジニアが規則への理解を深め、さまざまな可能性を発見していくことで、通常よりも開発ペースが速くなる傾向がある。

    特に2025年から2026年にかけてはマシン規則が大幅に変更された。そのため今季は比較的小規模なアップグレードでも大きな効果を生み、グリッド上の勢力図が頻繁に変化している。

    シーズン序盤に強さを見せたメルセデスも、最近ではフェラーリをはじめとするライバル勢の追い上げを受けている。

    風洞での開発速度は昨年の6〜7倍
    アリソンによれば、2026年のレギュレーションはまだ成熟しておらず、それが驚異的な開発速度につながっているという。

    「今回のレギュレーションサイクルを特徴づけているもののひとつは、規則がまだ非常に未成熟だということだ」

    アリソンは『Nu Silver Arrows Podcast』でそう語った。

    「開発速度は過去数年と比べて桁違いに大きい。空力面では、風洞で確認している向上率は昨シーズンのおよそ6〜7倍になっている」

    それが実際のラップタイムにどれほど影響するのかについて、アリソンは次のように説明した。

    「およそ2カ月ごとに0.5秒というペースだ。これは非常に大きな進歩率だ」

    つまり、現在のF1では数カ月の開発の遅れが、そのまま大きなパフォーマンス差につながりかねない状況にある。

    メルセデスは開幕戦に向けて開発を限界まで継続
    メルセデスは2026年型マシンの初期性能を最大限に高めるため、開幕直前まで開発を続ける戦略を選択した。

    「シーズン前に、最初のマシンをこれまで以上に限界までプッシュするという意識的な決断をした」

    「通常よりも遅い段階まで作業を続け、事実上、ほとんど余裕のないプログラムを組んだ」

    その判断には大きなメリットがあった。

    「その利点は、最初のレースまでに急激な開発曲線から可能な限り多くのパフォーマンスを取り込めたことだ。それが、マシンが非常に高いパフォーマンスレベルでシーズンを迎えることができた理由だ」

    メルセデスはシーズン序盤から高い競争力を発揮したが、その代償として、シーズン中のアップグレード投入という点ではライバルに後れを取ることになった。

    メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ

    「最初にパフォーマンスを使い切った」
    アリソンは、開幕時点の性能を優先した戦略には明確なデメリットもあったと認める。

    「欠点は、基本的にそのパフォーマンスを最初にすべて使ってしまったことだ。他のチームはマシンをもっと早く確定させたため、その分、アップグレードの開発を早く始めることができた」

    「今の僕たちは、いくつかのライバルとは開発サイクルが少しずれている」

    その結果、メルセデスが次の開発段階に向けて準備を整えている間に、ライバル勢が新パーツを投入するという状況が生まれている。

    「彼らがアップグレードを投入している一方で、僕たちは開発パイプラインを再構築してきた」

    「いま分かっているのは、どのチームもおおむね同じような速度で進歩しているということだ。つまり、競争力の勢力図は非常に速く変化する可能性がある」

    次のアップグレードで再び優位を狙うメルセデス
    メルセデスの目標は、次の大型アップグレードによってシーズン序盤に築いたアドバンテージを取り戻すことにある。

    「僕たちの目標は単純に先頭を維持し、次のアップグレードによってシーズン序盤に築いたアドバンテージを取り戻すことだ」

    「それまでは、他のチームが大きな新開発を持ち込んでくるタイミングを何とか乗り切るしかない」

    2026年のF1では、風洞での開発速度が前年の6〜7倍、ラップタイム換算では約2カ月で0.5秒という驚異的なペースで性能向上が続いている。開幕時の完成度を優先したメルセデスにとって、今後投入するアップグレードでライバル勢の追い上げを再び突き放せるかが、シーズン後半の大きな焦点となる。

  • エイドリアン・ニューウェイに「終焉」説 アストンマーティンF1苦戦で浮上

    エイドリアン・ニューウェイに「終焉」説 アストンマーティンF1苦戦で浮上

    アストンマーティンF1は2026年シーズン、エイドリアン・ニューウェイを中心とする新体制とホンダとのワークス提携で大きな期待を集めたが、ここまでその期待に応える結果を残せていない。

    元F1ドライバーのジョニー・ハーバートは、この苦戦を受け、ニューウェイがキャリアの「下降スパイラル」に入り始めた可能性があるとの大胆な見方を示した。

    一方で、アストンマーティンはF1ハンガリーGPで大幅改良型のAMR26Bを投入し、フェルナンド・アロンソがQ2進出、決勝ではランス・ストロールが13位、アロンソが14位でフィニッシュした。

    さらにホンダもオランダGPで新スペックのパワーユニットを投入する予定であり、チームが復調への足掛かりをつかみつつある段階でニューウェイの「終焉」を論じるのは、時期尚早ともいえる。

    ハーバートが唱えるニューウェイの「下降スパイラル」
    2026年からアストンマーティンのチーム代表を務めるニューウェイは、F1史上屈指のデザイナーとして知られている。これまで関わったマシンはドライバーズ選手権とコンストラクターズ選手権を合わせて計26回のタイトル獲得に貢献してきた。

    しかし、3度のF1優勝経験を持つハーバートは、アストンマーティンの現状について疑問を投げかけた。

    「アストンマーティンが揃えたものを見てみれば、エイドリアン・ニューウェイがいて、新しいファクトリーがあって、さらにフェルナンドもいる。それなのに、なぜこれほどまでうまくいかなかったのか理解するのは難しい」

    「理由が何であれ、エイドリアンは彼らが目指しているものに対して、優れたマシン、あるいは少なくともある程度競争力のあるマシンを作れるチームをまとめ上げることができていない」

    そしてハーバートは、ニューウェイ自身のキャリアが転換点を迎えている可能性にまで言及した。

    「興味深いのは、これがエイドリアン・ニューウェイの終焉なのかということだ。彼が下降スパイラルに入り始めた最初の兆候なのだろうか?」

    「スポーツでは、最高の人間にだってそういうことは起こる。いつかは必ず起きることだった。まだその時ではないとしても、いずれそういう時点はやって来る」

    AMR26の開発方針が前半戦の低迷につながる
    ただし、アストンマーティンの2026年前半戦の低迷を、単純にニューウェイの能力低下と結びつけることには慎重になる必要がある。

    アストンマーティンとホンダは2026年の新レギュレーション導入に合わせてワークス体制をスタートさせたが、AMR26は開幕当初から期待された競争力を発揮できなかった。

    ニューウェイは小規模なアップデートを連続して投入するのではなく、マシンの根本的な問題に対応する大規模な改良パッケージに開発リソースを集中させる方針を選択。その結果、アップデートを待つ間にライバルとの差が広がり、シーズン前半にはグリッド後方へと沈んだ。

    その大規模改良の成果としてハンガリーGPに登場したのがAMR26Bだった。

    アロンソは予選でQ2に進出し、決勝ではストロールが13位、アロンソが14位。ポイント獲得には届かなかったものの、従来型AMR26と比較してマシンの挙動や競争力には改善が見られた。

    ハーバートの発言はアストンマーティンの期待値の高さを反映したものではあるが、AMR26Bの投入によってニューウェイが進めてきた開発の方向性がようやく形になり始めたタイミングでもある。

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

    ホンダの新スペックPUでオランダGPから次の段階へ
    さらにアストンマーティンは、オランダGPで復調に向けた次のステップを踏み出す予定だ。

    ホンダはハンガリーGP終了後、ハンガロリンクでAMR26を使用してアップグレード版パワーユニットの走行テストを実施。ホンダ側は新スペックが社内で設定していた目標を達成したことを確認しており、オランダGPでの正式投入を予定している。

    ニューウェイ自身も、シーズン序盤に課題を抱えていたホンダとの関係について、改善が進んでいることを強調している。

    「ホンダとの関係という点では、我々が進めている進歩に非常に満足している」

    さらに、オランダGP以降に向けてニューウェイはこう付け加えた。

    「通常、関係が改善すれば、パフォーマンスも改善するものだ」

    アストンマーティンとホンダが目指している最終的な目標は、F1世界選手権のタイトル獲得である。2026年のスタートが期待を大きく下回ったことは事実だが、AMR26Bとホンダの新スペックPUという2つの大きなアップデートが揃うのはこれからだ。

    ハーバートが指摘するニューウェイの「下降スパイラル」が本当に始まっているのか、それとも2026年前半の苦戦が新体制構築に伴う一時的なものだったのか。アストンマーティンの今後のパフォーマンスが、その評価を大きく左右することになりそうだ。

  • ジェレミー・クラークソン アルピーヌF1にビール贈呈「俺はフランス人じゃない」

    ジェレミー・クラークソン アルピーヌF1にビール贈呈「俺はフランス人じゃない」

    元アルピーヌF1チーム代表のオトマー・サフナウアーが、2023年F1モナコGPでエステバン・オコンが表彰台を獲得した際、英国の人気テレビ司会者ジェレミー・クラークソンがチームに大量のビールを贈った舞台裏を明かした。

    アルピーヌの本拠地エンストンの近くに農場を所有するクラークソンは、同チームを自身の「地元チーム」と呼び、これまでにもグランプリを訪れている。

    2023年のモナコでは、アルピーヌが表彰台に上がった場合、チーム全員に自身のビールブランド「ホークストーン」をプレゼントすると約束していた。

    オコンの3位でクラークソンが約束を実行
    当時のアルピーヌにとって、表彰台は決して現実味の高い目標ではなかった。モナコGPを迎えるまでオコンはシーズン2度の入賞にとどまり、チームの最高位もオコンとピエール・ガスリーがそれぞれ記録した8位だった。

    しかしモナコでオコンは予選4番手を獲得。シャルル・ルクレールのグリッド降格によって3番グリッドからスタートすると、決勝でもそのポジションを守り切り、3位表彰台を獲得した。

    クラークソンも約束を忘れてはいなかった。

    「エステバンがモナコで表彰台に上がった。そのレース中、ジェレミー・クラークソンが『近所の連中が表彰台に上がったら、全員にホークストーンを6本ずつやる』と言っていたんだ」とサフナウアーは『High Performance Racing』ポッドキャストで振り返った。

    「すると本当にランボルギーニのトラクターでやって来た。後ろには巨大な農業用トレーラーを引いていて、干し草とビールが山ほど積まれていた。全員が6本パックのビールをもらったよ」

    クラークソンは自身が所有する農場「ディドリー・スクワット・ファーム」で農業を営んでおり、ホークストーンはそこで収穫された大麦などを使って展開されているブランドだ。大量のビールを農業用トラクターでアルピーヌへ届けるという、いかにもクラークソンらしい演出だった。

    エステバン・オコン(アルピーヌF1チーム) 2023年モナコGP

    「なぜなら俺はフランス人じゃないからな!」
    さらにサフナウアーによれば、ビールが届けられた際にはチームメンバーが屋外に集まり、オコンがマイクを手にクラークソンへの感謝を伝えたという。

    「僕はジェレミーの隣に立っていた。エステバンがマイクを持っていて、スピーカーも用意され、みんなが外に集まっていた。夏だったね」

    「エステバンが『ジェレミー・クラークソンには、僕たち全員に6本ずつビールをくれただけでなく、約束を守ってくれたことにも本当に感謝したい』と言ったんだ」

    その言葉を聞いたクラークソンは、隣にいたサフナウアーの前で即座にこう叫んだという。

    「なぜなら俺はフランス人じゃないからな!」

    英国人らしい皮肉を交えたクラークソンの一言により、アルピーヌにとって記念すべき表彰台祝いはさらに印象深いものとなった。

    アルピーヌとの関係は2026年も継続
    クラークソンとアルピーヌの関係は、その後も続いている。

    2026年F1イギリスGPでは、ディドリー・スクワット・ファームがアルピーヌのホスピタリティに食材を提供。モナコでのビールのプレゼントから3年が経過した現在も、クラークソンは「地元チーム」とのつながりを維持している。

    オコンがもたらした2023年モナコGPの表彰台はアルピーヌにとって貴重な成功だったが、その裏ではクラークソンがトラクターいっぱいのビールを届け、得意のジョークでチームを沸かせるという、F1パドックらしいユニークなエピソードが生まれていた。

  • レッドブルF1 オランダGPで特別スーツ フェルスタッペンとハジャーで異なる配色

    レッドブルF1 オランダGPで特別スーツ フェルスタッペンとハジャーで異なる配色

    レッドブル・レーシングは、2026年F1オランダGPに向けてマックス・フェルスタッペンとアイザック・ハジャーが着用する特別仕様のレーシングスーツを公開した。

    ザントフォールトで開催されるオランダGPは、少なくとも当面の間は今回が最後の開催となる。地元オランダ出身のフェルスタッペンにとってはもちろん、ハジャーにとっても特別な思い出を持つグランプリだ。

    フェルスタッペンはオレンジ ハジャーはシルバーの特別仕様
    レッドブル・レーシングが公開したオランダGP仕様のレーシングスーツでは、フェルスタッペンとハジャーで異なるカラーリングが採用された。

    フェルスタッペンはオレンジをアクセントとして取り入れ、ホームグランプリを意識したデザインとなっている。一方、ハジャーはシルバー系をアクセントに使用。基本となるネイビーのレッドブルカラーを共有しながら、肩やサイドなどの配色によって2人で異なる印象に仕上げられている。

    2021年にF1カレンダーへ復帰して以降、ザントフォールトでは5回のオランダGPが開催されている。フェルスタッペンはそのうち3勝を挙げ、残る2戦でも2位に入っており、すべてのレースで表彰台を獲得している。

    マックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング) オランダグランプリアイザック・ハジャー(レッドブル・レーシング) オランダグランプリ

    フェルスタッペンにとって特別なホームGP
    今回のオランダGPには、これまでとは異なる意味も加わる。ザントフォールトでのF1開催は2026年大会を最後に終了することが決まっており、現時点で将来の復活予定はない。

    フェルスタッペンにとっては、少なくとも当面の間、ザントフォールトで迎える最後のホームグランプリとなる。

    2021年の復活初年度から圧倒的な人気を集め、サーキットを埋め尽くす「オレンジ・アーミー」とともにオランダGPを象徴する存在となったフェルスタッペン。レッドブルにとっても、今回の週末はひとつの節目となる。

    ハジャーにとってもF1初表彰台の思い出の地
    一方、ハジャーにとってザントフォールトはF1キャリアの転機となった場所だ。

    レーシングブルズから参戦していた2025年のオランダGPで、ハジャーは見事な走りを披露してF1初表彰台を獲得。この結果はルーキーシーズンにおける大きなハイライトとなり、2026年にレッドブル・レーシングへ昇格する評価につながった出来事のひとつでもあった。

    その1年後、ハジャーはフェルスタッペンのチームメイトとしてザントフォールトに戻ってくる。

    フェルスタッペンにとっては母国で築いてきた歴史の一区切り、ハジャーにとってはF1キャリアを大きく前進させたサーキットへの凱旋となる。異なるカラーリングの特別なレーシングスーツをまとった2人が、節目となるオランダGPに臨む。

  • ガブリエル・ボルトレト アウディF1との長期契約を明言「僕のシートは確保」

    ガブリエル・ボルトレト アウディF1との長期契約を明言「僕のシートは確保」

    ガブリエル・ボルトレトは、自身のF1での将来がアウディと強く結びついていることを明言した。ブラジル出身の21歳は、ドイツメーカーが進める長期的なF1プロジェクトにコミットし、チームをトップ争いができる存在へと成長させることを目指している。

    2025年にF2タイトルを獲得してザウバーからF1デビューしたボルトレトは、ルーキーシーズンに19ポイントを獲得。

    アウディのワークス体制初年度となった2026年は、ここまでチームの12ポイント中10ポイントを挙げ、ドライバーズランキング14位につけている。

    「来年だけではない」ボルトレトがアウディとの長期契約を明言
    アウディにとって2026年は、新しいマシンとパワーユニットを同時に立ち上げる基盤構築のシーズンだ。短期的な結果よりも長期的な成長を重視するプロジェクトのなかで、ボルトレトも自身の将来をアウディに託している。

    Motorsport.comブラジル版のインタビューで、ボルトレトは契約の詳細についてすべてを明かすことはできないとしながらも、アウディとの関係が複数年にわたるものであることを認めた。

    「機密事項だから言える範囲になるけど、条項はないとだけ言っておこう。僕はアウディと長期契約を結んでいる。すでに言っているけど、僕は来年もアウディにいる。来年だけじゃなく、その先の数年間もだ」

    ボルトレトにとって重要なのは、単に現在の契約期間を全うすることではない。アウディが掲げる長期的なビジョンそのものを信じているという。

    「狙いは、最初からずっと言っているように、これが長期的なプロジェクトだということだ」

    「マッティア(ビノット)はいつも2030年について話している。そういうふうに考えてもらえばいい。僕たちはこのプロジェクトを本当に信じている。僕は加入したときから信じていたし、彼らも僕のポテンシャルを信じてくれている。僕から言えるのはそこまでだけど、長期的なものだ」

    「すごく楽しみにしている。今年は新しいマシンと新しいエンジンを作る最初のステップだった。来年はまた次のステップになる。そして、そこからいろいろなものを実際の結果につなげていけるようになる」

    ヒュルケンベルグとのコンビを評価「僕のシートは確保されている」
    一方、チームメイトのニコ・ヒュルケンベルグの将来について、ボルトレトは具体的な発言を避けた。

    ヒュルケンベルグの豊富なF1経験は、ザウバーからアウディへと移行するチームにとって重要な財産となっている。ボルトレトも、その存在を高く評価している。

    「僕自身のシートが確保されていることは言える。他の人の契約について話すつもりはないけど、僕はニコと一緒に仕事をするのが本当に好きだ」

    「そこは言っておきたいし、はっきりさせておきたい。僕は彼のことが本当に好きだ。速くて経験豊富だし、チームに多くのポジティブなものをもたらしてくれている。将来がどうなるかは、これから分かるだろう」

    「でも、僕は満足している。自分自身を信じているし、自分のポテンシャルも信じている」

    ガブリエル・ボルトレト(アウディF1)

    F1デビュー時は「かなり未完成だった」18カ月で大きく成長
    ボルトレトは、現在の自信がF1参戦後の急速な成長によって築かれたものだと振り返った。

    F1昇格前に現行世代に近いマシンを走らせた経験は非常に限られており、2024年にオーストリアで旧型車テスト(TPC)を経験した程度だった。その年末にはアブダビでのテストにも参加したが、本格的な走行経験は乏しいままF1の実戦へと飛び込むことになった。

    また、マクラーレンのドライバー育成プログラムに所属していた期間もわずか1年だった。F2タイトル獲得後、ザウバーとアウディが獲得に動き、マクラーレンはボルトレトを契約から解放した。

    F1デビュー当時と現在の自分を比較し、ボルトレトは「まったく違う」と語る。

    「まったく違う。F1に来たときの僕はかなり未完成だった。すべてが本当に速いスピードで進んだ。F1のチャンスも突然やってきたし、テストもほとんど経験していなかった。TPCすらほとんどやっていなかった」

    「基本的には、そのままF1シーズンに入って、バーレーンでプレシーズンテストをやって、それだけだった。だから、その1年間で学んだことはものすごく多かった。今もまだたくさんのことを学んでいる。チームはずっと僕を支えてくれている」

    「昨年はいくつか素晴らしい瞬間があった。今年もここまで自分のシーズンにはとても満足している。一緒に多くのことを成し遂げてきたし、マシンもどんどん競争力を高めている」

    2030年を見据えるアウディのF1計画で中核を担うボルトレト
    アウディはF1参戦初年度から即座にトップ争いをすることではなく、複数年をかけてワークスチームとしての競争力を構築する方針を明確にしている。ビノットが繰り返し「2030年」をひとつの長期的な目標として挙げていることも、その姿勢を示している。

    そのなかで、ボルトレトが「来年だけでなく、その先の数年間も」と明言した意味は大きい。若手ドライバーを短期的な結果だけで評価するのではなく、チームとともに成長させるというアウディの方針が契約にも反映されていることになる。

    2025年のF1デビューから急速に経験を積み、2026年にはアウディの獲得ポイントの大半を担っているボルトレト。現在のポイント数はまだ大きくないが、アウディが長期的にトップチームを目指すうえで、21歳のブラジル人ドライバーはその計画の中核を担う存在となっている。

  • ホンダF1 2027年の燃料流量増加を警戒「信頼性への要求はかなり大きい」

    ホンダF1 2027年の燃料流量増加を警戒「信頼性への要求はかなり大きい」

    ホンダは、2027年のF1パワーユニット開発において信頼性の確保が大きな課題になると見ている。HRC(ホンダ・レーシング)の折原慎太郎チーフエンジニアは、燃料流量の変更と内燃エンジンの性能向上を同時に進めることで、パワーユニットに対する要求がさらに厳しくなると説明した。

    2026年からアストンマーティンのワークスパートナーとしてF1に復帰したホンダは、シーズン序盤にパワーユニットの性能と信頼性で苦戦した。

    一方で、夏休み明けのF1オランダGPでは改良型の「スペック2」を投入する予定であり、2027年に向けてはさらに大きな性能向上を目指している。

    2027年F1で燃料流量変更 信頼性への負荷が増大
    2027年にはF1のパワーユニット規則が変更され、内燃エンジン側の比重が高まる。ホンダにとって重要になるのが、燃焼効率をさらに向上させながら信頼性を確保することだ。

    「2027年は燃料流量について若干異なるレギュレーションになりますが、開発プログラムそのものは変わりません。燃焼性能をさらに改善する必要があります」

    「ですので、引き続き内燃エンジンの性能向上に重点を置き、2027年にはもう少し大きなステップを持ち込みたいと考えています。そこが私たちの主な重点項目です」

    折原慎太郎は、その性能向上に伴って最大の課題となるのが信頼性だと説明する。

    「最も難しいポイントは、おそらく信頼性になると思います。仮に燃料流量が変更されなかったとしても、性能を向上させれば、こちら側では信頼性の開発が必要になります。それ自体は当然想定していることです」

    「ただ、今回は燃料流量も増えるため、信頼性に対する要求はかなり大きくなります。私たちとしては燃焼を改善し、それに加えて燃料流量の増加にも対応しなければなりません」

    出力向上を狙えば、燃焼室をはじめとする内燃エンジンの各部にはより大きな負荷がかかる。そのため、単純に性能を追求するだけではなく、耐久性との両立が重要になる。

    ホンダF1 / ホンダ・レーシング

    FIAの段階的な規則変更をホンダは評価
    一方、折原慎太郎は、FIAが変更を一度に実施せず段階的なものとしたことを評価している。

    「信頼性にとって非常に大きな要求になりますし、開発期間もかなり短いです。ですので難しいポイントになると思います。ただ、FIAが妥当なステップにしてくれたことには感謝しています」

    「もし1年間で非常に大きな数値の変更を求められていたら、大きな問題になっていたと思います。しかし、今回は2段階に分けられています。ショーのことも考慮する必要がありますし、パワー向上という意味でも妥当な数字だと思います」

    「それでも信頼性については難しい挑戦になりますが、良い判断だったと思います」

    ホンダにとって2027年は、2026年型パワーユニットを単純に熟成させるシーズンではない。燃料流量に関する規則変更に対応しながら、内燃エンジンそのものについても大幅な性能向上を図る必要がある。

    ホンダは2027年か2028年のトップ争いを目標
    ホンダとアストンマーティンがトップレベルの競争力を手にする時期について、折原慎太郎は慎重な見通しを示している。

    「F1では自分たちのパフォーマンスが常にライバルとの相対比較になるので、正確なタイムスケールを示すのは難しいです」

    「夏休み明けにはレースの戦いに戻りたいと考えています。そしてファクトリーでは、2027年にさらに大きなステップを持ち込むために懸命に取り組んでいます。ただ、そこについても現実的に考える必要があります」

    そのため、2027年の開幕時点でホンダがただちに最強のパワーユニットを手にしているとは考えていない。

    「2027年の初めには、まだ最高のパワーユニットにはなっていないかもしれません。ただ、トップの競争相手にはもっと近づいていると思います」

    「そこからさらにプッシュを続けて、2027年か2028年にはトップの競争相手になりたいと思っています」

    2026年序盤に苦戦したホンダにとって、まず重要になるのはスペック2によって現在のパワーユニットがどこまで改善されるかだ。その先では2027年に向けて燃焼性能をさらに引き上げながら、増大する負荷に耐えられる信頼性を作り込む必要がある。

    アストンマーティンもエイドリアン・ニューウェイを中心にマシン開発を進めており、車体とパワーユニットの双方で競争力を高めることが求められる。ホンダは2027年をさらなるステップアップの年と位置づけ、その先の2028年までを視野にトップレベルへの復帰を目指している。

  • カルロス・サインツJr. ウィリアムズF1新契約にフェルスタッペン型の解除条項か

    カルロス・サインツJr. ウィリアムズF1新契約にフェルスタッペン型の解除条項か

    カルロス・サインツJr.は、2027年もウィリアムズに残留する方向で契約交渉を進めている。ただし、新契約はわずか1年となり、チームの競争力次第では離脱できる条項が盛り込まれる可能性があるという。

    スペイン紙『Marca』によると、サインツJr.とマネジメント陣は夏休み期間中、ウィリアムズとの交渉に集中している。

    当初は2026年限りでチームを離れる可能性も取り沙汰されていたが、現在は2027年末までの契約延長に近づいているとされる。

    一方で、サインツJr.側はウィリアムズの将来性を全面的に信頼しているわけではないようだ。長期契約ではなく1年延長を選び、さらにチームのパフォーマンスが改善しなかった場合に、より魅力的な移籍先へ動ける仕組みを契約に組み込もうとしているという。

    サインツJr.側が求める「出口」 フェルスタッペン型の契約を参考か
    サインツJr.の新契約で注目されるのが、パフォーマンスに関連した解除条項である。

    報道では、その内容がマックス・フェルスタッペンとレッドブル・レーシングの契約に存在するとされる解除条項と完全に同じものになるとはされていない。ただ、一定の条件を満たした場合にドライバー側が契約を終了できるという考え方は共通している。

    フェルスタッペンの契約では、レッドブルの競争力やドライバーズランキングの順位などが将来の離脱を可能にする条件として取り沙汰されてきた。サインツJr.のマネジメント陣も、ウィリアムズが期待した水準まで浮上できなかった場合に備え、同様に選択肢を残しておきたい考えとみられる。

    これはサインツJr.にとって重要な意味を持つ。2027年にウィリアムズが上位争いへ近づけば、そのままチームに残る理由になる。一方、期待された進歩が見られず、他のトップチームや有力チームにシートが空けば、契約に縛られることなく移籍できる可能性が生まれるからだ。

    つまり、ウィリアムズ残留を選びながらも、自身のF1キャリアにおける次の選択肢を閉ざさない契約を目指していることになる。

    2027年までの1年契約が有力 長期残留には慎重
    サインツJr.は2026年前半、ウィリアムズのパフォーマンスに不満を抱いていると報じられ、シーズン終了後の移籍説が浮上していた。

    しかし、その姿勢には変化が生じているという。現在は2026年後半にチームの状況を立て直すことに加え、ウィリアムズが重点を置く2027年のプロジェクトを見届ける方向へ傾いている。

    それでも長期契約には慎重だ。

    『Marca』によれば、サインツJr.側が想定しているのは2027年末までの1年間の延長であり、複数年にわたって将来をウィリアムズに委ねる契約ではない。

    ウィリアムズにとっては、実績のあるサインツJr.を長期間確保したいところだが、ドライバー側はチームが実際に競争力を高められるかを確認してから、その先を判断したいと考えているようだ。

    年俸3000万ユーロ説には疑問 実際は増額にとどまる見通し
    契約期間と解除条項をめぐるサインツJr.側の要求は、年俸交渉にも影響している。

    最近では、新契約でサインツJr.が年間3000万ユーロ(約52億円)を要求しているとの情報が伝えられていた。しかし『Marca』は、この数字が実際に成立する可能性は低いと報じている。

    現在のサインツJr.の年俸は約1300万ユーロとされる。3000万ユーロという数字については、より有利な条件を引き出すため、サインツJr.陣営から交渉材料として外部に伝えられた可能性もあるという。

    ウィリアムズはサインツJr.に対し、フェラーリ在籍時に匹敵する条件を提示する用意があるとされる。しかし、1年契約に加えて途中離脱を可能にする条項まで認めるのであれば、チーム側が巨額の年俸を保証するメリットは小さくなる。

    さらに、ウィリアムズの財務状況も3000万ユーロ規模の契約を難しくする要因として挙げられている。

    そのため、契約延長が成立すれば現在より年俸が引き上げられる可能性は高いものの、報じられている3000万ユーロには届かないとの見方が強い。

    ウィリアムズ残留と将来の選択肢を両立
    今回の交渉から見えてくるのは、サインツJr.がウィリアムズとの関係を継続しながらも、自身の将来を完全には縛らない契約を求めているということだ。

    2027年までの1年延長とパフォーマンスに連動した解除条項が実現すれば、ウィリアムズには経験豊富なドライバーを少なくとももう1シーズン確保できるメリットがある。一方、サインツJr.はチームの成長を見極めつつ、より競争力のあるF1シートが浮上した場合に動ける余地を残せる。

    ただし、その柔軟性を得る代わりに、年俸面では当初求めていたとされる条件から譲歩することになりそうだ。

    サインツJr.にとって2027年のウィリアムズ残留は単なる契約延長ではなく、チームの将来性をもう1年見極めるための選択となる可能性が高い。契約期間、解除条項、そして年俸という3つの条件をどこで折り合わせるかが、正式合意に向けた焦点となる。