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  • キャデラックF1 ボッタスにマシン格差? ペレスのスポンサー力が影響か

    キャデラックF1 ボッタスにマシン格差? ペレスのスポンサー力が影響か

    キャデラックF1でバルテリ・ボッタスがセルジオ・ペレスと同等のマシンを与えられていない可能性があるという。

    ジャーナリストのジュリアン・セラソーリは、チームが2台を完全に同じ仕様、同じ品質に仕上げることに苦戦しており、商業面でより大きな価値をもたらすペレスが優先されるケースがあると伝えている。

    2026年にF1へ新規参戦したキャデラックは、ここまでポイントを獲得できていない。新チーム特有の課題に加え、サスペンションのトラブルやブレーキの火災など信頼性と品質管理を巡る問題も発生しており、その影響をより強く受けているのがボッタスだという。

    ボッタスとペレスで「まったく同じ2台」を用意できず
    経験豊富なボッタスとペレスを起用してF1参戦を開始したキャデラックだが、両者の置かれている状況には違いがあるとされる。

    ドライバーズランキングではボッタスがペレスを上回っているものの、実際のレースではペレスの方がマシンへの適応度が高く、中団勢により近い位置で戦う場面が目立っている。モナコGPではポイント獲得に迫ったが、ピットレーンでの速度違反によるペナルティによってトップ10入りを逃した。

    こうした差について、ブラジルのジャーナリストであるジュリアン・セラソーリは、単純なドライバーのパフォーマンスだけで説明できるものではないと指摘する。

    「キャデラックについて重要なのは、ペレスがボッタスを大きく上回ることが時々あって、それに驚いている人もいるということだ」

    「私が調べたところでは、キャデラックは両ドライバーにまったく同じ2台を用意することにかなり苦労している。だから多くの場合、持ち込む資金が少ないボッタスの方が苦しい立場になる」

    セラソーリによれば、キャデラックが意図的にボッタスを不利な状況に置いているわけではない。新規参戦チームとして組織を構築している段階であり、2台のマシンを常に同じ水準に仕上げること自体が難しいという。

    「彼らはこの問題に懸命に取り組んでいる。そうしたくてやっているわけではない。F1で2台をまったく同じレベルに仕上げることが難しいからだ」

    「レッドブルでさえ、それを実現するのに苦労することがある。当然、多くの新しいスタッフを抱えているキャデラックにも、この種の問題は起きる」

    ペレスの強力なスポンサー基盤が優先順位に影響か
    そこで注目されているのが、ペレスが持つ商業的な価値だ。

    ペレスは長年にわたりメキシコを中心とした強力なスポンサー基盤を持ち、キャデラックにとっても重要な商業的存在となっている。セラソーリの説明では、限られたリソースのなかで2台を同じ状態にできない場合、そのスポンサー力が結果的にパーツやマシンの優先順位へ影響している可能性がある。

    ただし、これはキャデラックが公式に「ペレスを優先している」と認めたものではない。あくまでセラソーリが取材で得た情報に基づく説明であり、チーム側の公式見解とは区別する必要がある。

    また、マシンの個体差は必ずしもアップデートの有無だけを意味するものではない。製造品質、スペアパーツ、部品の状態、セットアップの自由度など、新チームが直面する複数の要因によって2台のコンディションに差が生じる可能性がある。

    バルテリ・ボッタスとセルジオ・ペレス(キャデラックF1チーム)

    2027年の契約状況にも違い
    両ドライバーを巡っては、2027年の契約条件にも違いがあるという。

    セラソーリによれば、ペレスには本人が望めばキャデラックを離れられる余地がある一方、ボッタスとの契約を2027年まで継続しない場合には、キャデラック側が契約を買い取る必要があるとされる。

    「実際、ペレスは望めば離れることができる。そういう状況に近い」

    「ボッタスについて私が聞いているのは、2年目の契約を履行しなくていいようにするには、キャデラックが契約を買い取らなければならないということだ」

    「2人ともキャデラックとの契約を持っている。結局のところ、商業面も含め、あらゆる意味でより良い解決策を提示できるかどうかという問題になる」

    ペレスについては2027年に向けてウィリアムズとの関連も取り沙汰されており、ドライバー市場の動き次第ではキャデラックのラインアップにも変化が生じる可能性がある。

    ブコウスキー新体制で品質管理も課題
    キャデラックは参戦初年度から組織面でも大きな変化を迎えている。グレアム・ロウドンの退任後、新たにチーム代表となったマルチン・ブコウスキーには、競争力向上だけでなく組織と開発プロセスを整える役割も求められている。

    新規F1チームにとって、速いマシンを開発することと同時に重要なのが、2台分の部品を安定した品質で製造し、レースごとに同じ仕様を揃える能力だ。キャデラックで発生しているとされる問題は、単なるボッタス対ペレスというドライバー間の比較だけではなく、チームがF1の製造・運用体制を確立していく過程で直面している課題ともいえる。

    ペレスのスポンサー力が実際にどこまでマシンの優先順位へ影響しているのかは、現時点ではチームによって確認された事実ではない。それでも、2台を同じ水準に揃えられていないとの情報が事実なら、ボッタスの成績を評価するうえで無視できない要素となる。ブコウスキー新体制のキャデラックにとって、速さだけでなく2台を平等な競争環境に置ける品質と供給体制を構築することも、今後の重要な課題となりそうだ。

  • アストンマーティンF1 2026年前半戦総括 苦戦の末に見えた反撃の兆し

    アストンマーティンF1 2026年前半戦総括 苦戦の末に見えた反撃の兆し

    アストンマーティンにとって、2026年F1シーズン前半戦は期待とは大きく異なる厳しいものとなった。新レギュレーションとホンダとのワークス体制が始まった重要なシーズンだが、11戦を終えた段階でチーム選手権では下位に低迷している。

    それでも、サマーブレイク直前のハンガリーGPで投入した大規模アップデートには明確な前進が見られた。

    フェルナンド・アロンソとランス・ストロールが初めて純粋なペースで中団勢と争えるところまで接近し、後半戦に向けてようやく反撃への足掛かりをつかんでいる。

    ベストリザルト:アロンソのモナコGP 10位
    アストンマーティンのシーズンは、開幕前から厳しい状況にあった。AMR26はシャシーとホンダ製パワーユニット(PU)の双方に問題を抱え、プレシーズンテストでは全チーム中最少の走行距離に終わった。

    開幕戦オーストラリアGPでも慢性的な振動に悩まされ、アロンソとストロールは十分な周回を重ねることができなかった。その後、対策は段階的に進められたものの、ライバルとのパフォーマンス差は依然として大きかった。

    そのなかで結果を残したのがモナコGPだった。アストンマーティンは積極的な戦略を採用し、展開にも恵まれたことでアロンソが10位に入り、今季初ポイントを獲得した。

    アロンソはこの結果について、苦しい状況で作業を続けてきたチーム全体にとって「いいご褒美になった」と振り返っている。

    現時点で、この1ポイントがアストンマーティンの2026年前半戦における唯一の得点となっている。

    予選対決:アロンソがストロールに9勝2敗
    AMR26の競争力不足は予選でも顕著だった。アロンソとストロールはグリッド後方からスタートするレースが多く、Q1突破そのものが大きな目標となる状況が続いた。

    それでもチームメイト対決ではアロンソが明確に優位に立っている。前半11戦の予選対決はアロンソの9勝2敗だ。

    さらに、ハンガリーGPではアロンソがアストンマーティンにとって今季初となるQ2進出を果たした。単なるチーム内対決以上に、この結果はアップデートされたAMR26の進歩を示す材料となった。

    決勝対決:アロンソが6勝2敗
    決勝でもアロンソがストロールを上回っている。両者がともにリタイアしたオーストラリア、中国、バルセロナの3戦を除く直接対決では、アロンソが6勝2敗となっている。

    ただし、サマーブレイク前最後のハンガリーGPではストロールが13位でフィニッシュし、14位のアロンソを上回った。

    重要なのは順位そのものだけではない。大規模アップデートを投入したAMR26で、2台がそれまでより明確にライバルとのギャップを縮めたことだった。

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

    ベストモーメント:ハンガリーでAMR26の大規模アップデートが機能
    結果だけを見れば、アロンソがポイントを獲得したモナコGPが前半戦最大のハイライトとなる。しかし、チームの将来という観点では、ハンガリーGPの方が重要な週末だったと言える。

    アストンマーティンはシーズン中に小規模なアップデートを繰り返すのではなく、変更をまとめて投入する方針を選択した。その結果、最初の10戦ではライバルが進歩する一方で、自分たちは「立ち止まっている」ように感じる期間を受け入れなければならなかった。

    チーム代表のエイドリアン・ニューウェイも、この方針を「苦しい決断だった」と認めている。

    しかし、その我慢はハンガロリンクで一定の成果につながった。アップデートを施されたAMR26は最も近いライバルとのギャップを縮め、決勝では複数のマシンを実力で上回った。

    2026年に入ってから、アストンマーティンが純粋なパフォーマンスで中団グループと戦える兆候を示したのは、このハンガリーGPが初めてだった。

    ワーストモーメント:開幕前に判明した想定以上の遅れ
    アストンマーティンの前半戦には厳しい場面がいくつもあったが、最大の打撃はシーズンが始まる前に、自分たちが置かれている状況の深刻さを認識したことだった。

    チームはバルセロナでのシェイクダウンへの参加が遅れ、続くバーレーンでのプレシーズンテストでも十分な準備を整えられなかった。

    テストのラップタイムだけから各チームの実力を判断することは難しいが、新規参戦のキャデラックに対しても明確なペース不足が見られたことは、AMR26に根本的な問題が存在する可能性を示していた。

    さらにホンダ製PUにも信頼性上のトラブルが発生した。結果としてアストンマーティンのテスト走行距離はメルセデスのおよそ3分の1にとどまり、シーズン開幕を前に大きな遅れを背負うことになった。

    新レギュレーション初年度に加え、ホンダとの新たなワークス体制をスタートさせるシーズンだけに、この走行不足はシャシーとPU双方の理解を深めるうえでも大きな痛手となった。

    後半戦:ザントフォールトでホンダのPUアップデート投入へ
    それでもハンガリーGPを終えた時点で、チーム内の空気には変化が生まれている。

    アロンソはブダペストでのレース後、新しいマシンについて「取り組んでいくためのいいベースができた」と評価。サマーブレイク後についても「チャンピオンシップが新しく始まるような感覚」にできる可能性があるとの期待を示した。

    もちろん、課題が解決したわけではない。わずか3年前には定期的に表彰台を争っていたチームが本来の位置へ戻るには、まだ大幅な改善が必要だ。ハンガリーGPの金曜日にもストロール車で信頼性問題が発生しており、安定してパフォーマンスを引き出せる段階には達していない。

    そして後半戦最初のザントフォールトでは、ホンダのPUアップデートが投入される予定となっている。

    チーフ・トラックサイド・オフィサーのマイク・クラックは、今後について「次の数レースで何を引き出せるのかを見ていく」と説明している。

    アストンマーティンにとって2026年前半戦は、モナコでの1ポイントよりも、なぜこれほど苦戦したのかを理解するための期間だったとも言える。開幕前から露呈したシャシーとPUの問題、少ない走行距離、そしてライバルに対する大幅な性能不足。その代償は大きかった。

    一方、ハンガリーでAMR26の大規模アップデートが一定の成果を示したことで、後半戦への方向性はようやく見え始めた。ザントフォールトから加わるホンダPUの進化と合わせて、この改善を継続できるか。アストンマーティンの2026年は、サマーブレイク明けから事実上の「再スタート」を迎える。

  • FIA ピエール・ガスリーのF1モナコGPペナルティ巡る控訴審を8月25日に開催

    FIA ピエール・ガスリーのF1モナコGPペナルティ巡る控訴審を8月25日に開催

    FIA(国際自動車連盟)は、2026年F1モナコGPでピエール・ガスリーに科されたペナルティが取り消された問題を巡り、マクラーレンとレッドブル・レーシングが申し立てた控訴について、8月25日(火)に審理を行うことを決定した。

    焦点となるのは、アルピーヌによる再審請求(Right of Review)が認められたことでガスリーの5秒ペナルティのひとつが取り消され、最終結果が変更された一件だ。

    ガスリーは7位から3位へ復帰し、その影響でアイザック・ハジャーやオスカー・ピアストリらの順位がひとつずつ繰り下がった。今回の控訴審は、その判断を維持するのか、それとも当初のペナルティを復活させるのかを決める重要な手続きとなる。

    FIAが8月25日にパリで控訴審
    審理は8月25日(火)の現地時間9時からパリで行われる。マクラーレンとレッドブル・レーシングは、2026年モナコGPのDocument 99に記された決定#1および#2を対象として控訴している。

    両チームが求めているのは、ガスリーに対するペナルティ取り消しの撤回、つまり当初科されていた5秒ペナルティの復活だ。

    控訴は6月16日に正式に提出されており、審理はオランダGP終了後の火曜日に設定された。FIAによれば、審理は一般およびメディアには公開されない。

    モナコGPで複数ドライバーにピットレーン速度違反
    問題の発端となったモナコGPでは、ガスリーを含む複数のドライバーがピットレーンの速度制限違反としてタイムペナルティを受けた。

    当時モナコのピットレーンでは60km/hの速度制限が設定されており、ガスリーのほか、ルイス・ハミルトン、ジョージ・ラッセル、フランコ・コラピント、ピアストリにも5秒ペナルティが科された。

    ガスリーには2件のペナルティが科されており、そのうちひとつについてはピットストップ時に5秒間停止することで消化していた。しかし、もうひとつの5秒がレースタイムに加算されたことで、当初の最終結果では7位となっていた。

    アルピーヌの再審請求で計測方法に問題が発覚
    その後、アルピーヌはガスリーに対する2件のペナルティについて再審請求を提出した。

    審理の過程で判明したのが、タイムキーパーによるピットレーンの距離の計測に問題があったことだった。

    速度違反の判断では、ピット入口や出口に設けられた単一の計測地点だけではなく、速度、距離、時間を用いた計算式によってピットレーン内の平均速度が算出されていた。しかし、その計算の基礎となるピットレーンの距離が正しく測定されていなかったことが明らかになった。

    この情報は、モナコGP当日にスチュワードが最初の裁定を下した時点では入手できなかった。そのためFIAは、再審請求を成立させるために必要となる「重要かつ新しい証拠」の条件を満たしていると判断した。

    結果としてガスリーに残されていた5秒ペナルティが取り消され、順位は7位から3位へと戻された。

    ガスリー3位復帰でハジャーとピアストリが降格
    この裁定によってモナコGPの最終順位は大きく変わった。

    ガスリーが3位に復帰したことで、レッドブル・レーシングのハジャーは3位から4位、マクラーレンのピアストリは4位から5位へ後退。さらにレーシングブルズのリアム・ローソンもひとつ順位を落として6位となった。

    つまり今回の控訴は、ガスリーだけでなく複数のドライバーとチームのF1選手権ポイントにも直接影響する案件となる。

    特にレッドブル・レーシングにとってはハジャーの表彰台、マクラーレンにとってはピアストリの4位がかかっており、両チームが控訴に踏み切った背景には明確な競技上の利害がある。

    メルセデスは控訴を見送る
    ガスリーのペナルティが取り消されたことで、同じモナコGPでピットレーン速度違反の裁定を受けた他のドライバーにも波紋が広がった。

    メルセデスのチーム代表トト・ヴォルフは、バルセロナGPでガスリーの裁定変更が発表された後、ラッセルのペナルティについても何らかの対応が可能か検討していることを示唆していた。

    ただし、ラッセルのケースには別の事情があった。

    ラッセルは5秒ペナルティを消化する際、ピットで5秒間待機する前に作業を開始してしまったため、ペナルティを正しく消化したとは認められなかった。その結果、自動的にドライブスルーペナルティへ変更され、終盤の赤旗後にこれを消化。最終的に12位まで順位を落としていた。

    メルセデスは最終的に正式な手続きを取らないことを選択した一方、マクラーレンとレッドブル・レーシングは控訴を継続した。

    モナコGPの最終結果が再び変わる可能性
    8月25日の審理で最大の焦点となるのは、アルピーヌの再審請求を受けて下されたペナルティ取り消しが法的・競技的に妥当だったのかという点だ。

    FIAが現在の裁定を維持すれば、ガスリーの3位はそのまま確定する。一方、マクラーレンとレッドブル・レーシングの主張が認められ、5秒ペナルティが復活すれば、モナコGPの最終順位が再び変更される可能性がある。

    モナコGPから約3カ月を経てもなお確定を巡る争いが続く異例の展開となっており、ガスリーの表彰台だけでなく、ハジャー、ピアストリ、ローソンの順位と各チームの獲得ポイントにも関わるFIAの判断が注目される。

  • F1アフリカGP復活へ前進 ドメニカリCEO「交渉は非常に順調」

    F1アフリカGP復活へ前進 ドメニカリCEO「交渉は非常に順調」

    F1が30年以上途絶えているアフリカでのグランプリ復活に向け、開催候補地との交渉を進めている。F1のステファノ・ドメニカリCEOは、アフリカでのレース開催について「交渉は非常に順調に進んでいる」と明かした。

    アフリカ大陸で最後にF1が開催されたのは、キャラミで行われた1993年南アフリカGPまでさかのぼる。

    現在、南極大陸を除けばF1グランプリが開催されていない唯一の大陸であり、世界選手権としてのさらなる市場拡大を進めるF1にとって、アフリカ復帰は長年の重要課題となっている。

    アフリカGP復活へ「交渉は非常に順調」
    RacingNews365を含むメディアの取材に対し、ステファノ・ドメニカリはアフリカでの開催交渉について前向きな状況を説明した。

    「言えることは、アフリカでの交渉が非常に順調に進んでいるということだ」

    具体的な開催国やサーキットについては明言しなかったものの、F1がアフリカ復帰に向けた協議を継続し、一定の進展を得ていることを認めた形だ。

    最も有力な候補として長年名前が挙がってきたのが、南アフリカのヨハネスブルグ北部に位置するキャラミ・グランプリ・サーキットである。キャラミは1967年から1993年まで断続的に南アフリカGPを開催しており、アフリカにおけるF1の象徴的な舞台でもある。

    一方、近年は南アフリカでの復活計画に加えて、モロッコやルワンダもF1開催候補として取り沙汰されてきた。現時点でドメニカリは交渉相手を特定しておらず、どの計画が最も実現に近いのかは明らかになっていない。

    ハミルトンも強く求めてきたアフリカ開催
    アフリカでのF1開催を強く支持してきたドライバーのひとりがルイス・ハミルトンだ。ハミルトンはこれまで繰り返し、F1がアフリカ大陸に戻ることの重要性を訴えてきた。

    アフリカGPの復活は単なる開催地域の追加というだけではない。F1は北米、中東、アジアで積極的に市場を拡大してきた一方、アフリカでは1993年以来レースを開催していない。世界選手権として主要地域を網羅するという意味でも、その空白は際立っている。

    ただし、新規グランプリの追加には既存イベントとの調整という問題もある。年間レース数がすでに高水準に達しているため、新たな開催地を加える場合には、既存グランプリとのローテーションや契約終了を組み合わせる必要性が高まっている。

    2027年はトルコとポルトガルもF1カレンダー復帰
    F1の開催地域をめぐる動きはアフリカだけではない。ドメニカリは、南米や極東でも複数の協議を行っていることを明らかにした。

    「来年は再びポルトガルに戻り、トルコにも戻る。南米でもほかの国々と話し合っているし、極東でも協議している」

    2027年にはトルコGPが5年契約でF1カレンダーに復帰する。また、ポルティマオで行われるポルトガルGPも2年契約で復活する。

    ポルティマオは、新型コロナウイルスの世界的流行によって従来のレース開催が困難となった2020年と2021年にもF1を開催した実績を持つ。

    こうした復帰イベントが加わるなか、F1は単純に年間開催数を増やし続けるのではなく、複数のグランプリを交互に開催するローテーション方式も本格的に導入している。

    日本と中国には「2レース目」の開催要望
    ドメニカリはさらに、中国と日本について、現在の年1戦に加えて2つ目のF1グランプリを開催したいという要望が寄せられていることも明らかにした。

    「ひとつ言えるのは、中国と日本では2レース目を開催してほしいという要望がさらに多く寄せられているということだ」

    「ただ、現時点では中国での開催は1レースにとどめたい。ほかの選択肢を考える前に、まず市場をより強固なものにする必要があるからだ」

    F1にとってアジア市場への関心は依然として高く、日本についても追加開催を求める動きが存在している。ただし、ドメニカリの発言からは、開催希望があることと実際に2戦目を追加することは別問題であり、市場規模や既存カレンダーとのバランスを慎重に評価していることがうかがえる。

    ローテーション導入で新開催地を受け入れる余地
    今後のF1カレンダーを考えるうえで重要になるのが、既存グランプリのローテーションだ。

    バルセロナ・カタルーニャGPとベルギーGPは隔年開催を取り入れ、スパ・フランコルシャンでのベルギーGPは2027年、2029年、2031年に開催。バルセロナは2028年、2030年、2032年に開催される予定となっている。

    こうした方式を採用すれば、年間の総レース数を大幅に増やすことなく、新しい開催国や復活を希望するサーキットをカレンダーに組み込むことが可能になる。

    アフリカGPについても、実現する場合にはこうした新たなカレンダー戦略のなかに組み込まれる可能性がある。キャラミをはじめ、モロッコやルワンダなど複数の候補が取り沙汰されてきたなか、ドメニカリが「非常に順調」と表現したことは、F1がアフリカ復帰を具体的な選択肢として引き続き検討していることを示している。

    1993年の南アフリカGPから続く30年以上の空白が、近い将来ついに埋まるのか。トルコとポルトガルの復帰、既存グランプリのローテーション、さらに日本や中国を含む各地域からの開催要望が重なるなか、アフリカGPをめぐる交渉の行方は今後のF1カレンダーを左右する重要な焦点となりそうだ。

  • アレクサンダー・アルボン ウィリアムズF1と2027年まで契約延長

    アレクサンダー・アルボン ウィリアムズF1と2027年まで契約延長

    アレクサンダー・アルボンが、2027年もウィリアムズでF1を戦うことが決まった。ウィリアムズは2026年8月18日、アルボンとの契約を延長し、来季も継続して起用すると正式発表した。

    2022年にウィリアムズへ加入して以来、チーム再建の中心を担ってきたアルボン。2026年は厳しいシーズンを送っているものの、チームとドライバーの双方が長期的なプロジェクトへの信頼を改めて示す形となった。

    アルボンが2027年もウィリアムズ残留
    ウィリアムズは、アルボンが2027年もチームのF1ドライバーとして参戦すると発表した。

    30歳のアルボンは2022年にウィリアムズへ加入。当時グリッド後方に低迷していた名門チームが、人材、設備、技術、組織体制を全面的に見直す再建プロジェクトを進めるなか、コース上だけでなくファクトリーでも重要な役割を担ってきた。

    ウィリアムズは今回の契約延長について、2026年の成績だけで判断するのではなく、グローブで進められている長期的な改革に対する双方の信頼を示すものだとしている。

    アルボンも、今季の苦戦によってチームの進む方向に対する考えが変わることはないと強調した。

    「2022年にウィリアムズへ加入してから、このチームが遂げてきた変化を言葉で表現するのは難しい」

    「厳しい1年だけで全体を判断することはできないし、むしろファクトリーのみんなやファンと一緒に、素晴らしいことを成し遂げるためにもっと築き上げ、プッシュしていきたいというモチベーションが高まっている」

    「僕たちの物語はまだ終わっていない。だから今は、グリッドの前方へ戻るために必要なことを何でもやることに全力を注いでいる」

    2025年は自己最高のランキング8位
    アルボンはウィリアムズ再建の成果を象徴する存在でもある。

    2025年シーズンには複数回の5位入賞を記録し、年間73ポイントを獲得。ドライバーズ選手権8位でシーズンを終え、ウィリアムズも2016年以来となる好成績を残した。

    予選でマシン性能以上の結果を引き出す速さに加え、レースではタイヤマネジメントやディフェンス、戦略判断に強みを見せてきた。チームが競争力を取り戻す過程において、アルボンのフィードバック能力も重要な要素となっている。

    一方、2026年はウィリアムズにとって再び難しいシーズンとなっている。それでもチームは短期的な結果ではなく、中長期でF1の上位争いへ復帰することを目標に再建を継続している。

    今回の契約延長は、その計画の中核にアルボンを据え続けるという明確な意思表示でもある。

    ウィリアムズ最多出走記録を更新
    アルボンは今季、ウィリアムズの歴史にも新たな記録を刻んだ。

    スペインGPでウィリアムズから通算96戦目のスタートを切り、ナイジェル・マンセルが保持していたチーム最多出走記録を更新。さらにハンガリーGPでは、ウィリアムズでの通算100戦目を迎えた。

    1977年にF1参戦を開始したウィリアムズは、これまでアラン・ジョーンズ、ケケ・ロズベルグ、マンセル、アラン・プロスト、デイモン・ヒル、ジャック・ヴィルヌーヴら数多くの名手を擁してきた。

    その歴史のなかで最多出走ドライバーとなったアルボンは、2027年に創設50周年を迎えるチームとともに、その記録をさらに伸ばしていくことになる。

    アレクサンダー・アルボン(ウィリアムズ・レーシング)

    ジェイムス・ボウルズ「まだやり残したことがたくさんある」
    チーム代表のジェイムス・ボウルズも、アルボンとの契約延長を歓迎した。

    「アレックスとウィリアムズが、この特別な旅をこれからも一緒に続けられることを非常にうれしく思う」

    「アレックスは初日からこの改革プロジェクトのリーダーのひとりだった。そして我々には、まだやり残していることがたくさんある。それを成し遂げる決意だ」

    「アレックスはグリッドで最高のドライバーのひとりであり、ここ数年で我々がどれだけ大きな進歩を遂げてきたかを誰よりも理解している」

    「彼との再契約は、我々が向かっている方向に双方が確信を持っていることを示している」

    再建の象徴から勝利を目指す存在へ
    アルボンが加入した2022年当時と現在では、ウィリアムズを取り巻く状況は大きく変わった。

    ジェイムス・ボウルズの下で旧態依然としていた設備や製造プロセスの刷新が進められ、チームは短期的な順位を追うだけではなく、将来的にF1のトップグループへ復帰するための基盤づくりを優先してきた。

    その過程を最も長くドライバーとして経験してきたのがアルボンである。

    苦しい時期を支えた再建の象徴という立場から、次に求められるのは、そのプロジェクトを実際の表彰台や勝利へ結びつけることになる。

    2027年に創設50周年を迎えるウィリアムズと、チーム最多出走記録を更新し続けるアルボン。「僕たちの物語はまだ終わっていない」という言葉通り、両者の長期プロジェクトは新たな段階へ入る。

  • ホンダF1 新スペックPU投入のオランダGP「待ち望んでいた機会」

    ホンダF1 新スペックPU投入のオランダGP「待ち望んでいた機会」

    ホンダF1は、2026年F1第12戦オランダGPで新スペックのパワーユニット(PU)を投入する。アストンマーティンとのワークス体制で迎えた今季、苦しい序盤戦を経て開発を進めてきたホンダにとって、シーズン後半戦の巻き返しを左右する重要なアップデートとなる。

    舞台となるザントフォールトではスプリントフォーマットが採用され、実走による確認機会はFP1の1セッションのみ。

    ホンダF1のトラックサイド・ゼネラルマネージャー兼チーフエンジニアを務める折原伸太郎は、限られた時間で新PUを仕上げる難しさを認めながらも、「待ち望んでいた機会」と位置づけている。

    ホンダF1が新スペックPUを実戦投入
    2026年シーズン第12戦オランダGPは、8月21日(金)にザントフォールト・サーキットで開幕する。今大会はスプリント形式で行われ、金曜日にFP1とスプリント予選、22日(土)にスプリント決勝と公式予選、23日(日)に決勝レースが実施される。

    ホンダにとって最大の焦点となるのが、新スペックPUの実戦投入だ。

    新PUは、HRC Sakuraを中心にHRC UK、そしてアストンマーティンが連携して開発を進めてきたもの。ハンガリーGP後にはハンガロリンクで実走確認も行われており、ザントフォールトでいよいよレースウイークエンドに投入される。

    これまで明らかにされている新スペックでは、内燃エンジン(ICE)を中心に燃焼効率やフリクション低減、ターボ関連などに改良が施され、パフォーマンスだけでなくドライバビリティの改善も狙われている。

    スプリント週末でFP1だけの厳しい評価
    一方、新スペックを投入するタイミングとしてザントフォールトは簡単な舞台ではない。

    スプリント形式のため、通常のグランプリ週末とは異なりフリー走行は金曜日のFP1だけ。その後すぐにスプリント予選へと入るため、新PUの各種設定やエネルギーマネジメント、車体とのマッチングを確認できる時間は限られる。

    折原伸太郎は、この条件をホンダにとって大きなチャレンジと捉えている。

    「今週末のオランダGPは、ホンダにとって新スペックのパワーユニットを投入する重要な一戦です。これは、HRC SakuraがHRC UK、そしてアストンマーティン・アラムコ・フォーミュラワンチームと一体となって、集中的に取り組んできた成果です。

    ザントフォールトはスプリント形式で開催されるため、フリー走行は1回のみとなります。この限られた走行時間のなかで新パッケージの評価をやり切ることは大きなチャレンジですが、私たちにとっては待ち望んでいた機会でもあります」

    オランダグランプリ ホンダ

    アストンマーティンの車体アップデートと相乗効果へ
    アストンマーティン側にも前進の兆しが見え始めている。

    前戦ハンガリーGPでは車体アップデートを投入し、AMR26の挙動やドライバビリティに改善が確認された。そこにホンダの新スペックPUが加わることで、車体とPUの両面からパフォーマンスを引き上げることが期待される。

    折原伸太郎も、ハンガリーで得られた進歩をシーズン後半につなげたいと語った。

    「前戦ハンガリーGPでは、車体のアップデートによる前進を確認できました。ここに新スペックのパワーユニットが加わることで、シーズン後半に向けてチームとともにさらに前進できるようにしたいと考えています」

    2026年から始まったホンダとアストンマーティンのワークスプロジェクトは、序盤から複数の課題に直面してきた。その一方で、両者は日本と英国、そしてサーキットを結んだ密接な連携によって問題解決とパフォーマンス向上を進めてきた。

    ザントフォールトで投入される新スペックPUは、そうした共同作業がひとつの形となったものでもある。FP1だけという厳しい条件のなかでどこまで新パッケージを仕上げられるか。ホンダとアストンマーティンにとって、オランダGPはシーズン後半戦の方向性を占う重要な週末となる。

  • レッドブルF1 メキースが語る激動の1年「今では少し非現実的に感じる」

    レッドブルF1 メキースが語る激動の1年「今では少し非現実的に感じる」

    レッドブル・レーシングのチーム代表兼CEOを務めるローラン・メキースが、就任から約1年を振り返った。

    2025年シーズン後半の劇的な巻き返しから、レッドブル・フォード・パワートレインズによる自社製F1パワーユニットのデビュー、そして2026年序盤の苦戦からトップ争いへの復帰まで、目まぐるしく状況が変化した1年を「ジェットコースターのようだった」と表現している。

    49歳のメキースが特に強調するのは、2026年の新レギュレーションを控えながらも2025年型マシンの開発を諦めなかったチームの姿勢だ。その決断によってマックス・フェルスタッペンはタイトル争いに復帰し、同時に新時代に向けた巨大プロジェクトも進められていた。メキースは、この二つを並行して成し遂げた組織の粘り強さこそ、現在のレッドブルの競争力につながっていると評価している。

    2025年の逆襲「誰も諦めようとしなかった」
    メキースがクリスチャン・ホーナーの後任としてレッドブルを率いることになった当時、2025年のドライバーズタイトル獲得は厳しい状況にあるとみられていた。しかし、フェルスタッペンはシーズン後半に猛烈な追い上げを見せ、最終的にはランド・ノリスにわずかなポイント差まで迫った。

    「この1年はジェットコースターのようだった。率直に言って、何よりもまず、このチームの一員でいられることは大きな名誉だ。昨年加入した当初の数週間を振り返ると、今では少し非現実的に感じる」

    メキースはまず、シャシー部門とパワーユニット部門のスタッフをできるだけ早く理解することに努めたという。その一方で、チームは2025年序盤の低迷から立て直すための大規模な作業を続けていた。

    「シャシー側にもパワーユニット側にも素晴らしい人材がいる。そうした人たちをできるだけ早く理解しようとしていた。そして最初に取り組んだのが、2025年シーズン序盤の難しい状況から立て直すための大きなプッシュだった」

    「ピエール(ワシェ)とチームが諦めようとしなかったことをよく覚えている。彼らは昨年のマシンにパフォーマンスが足りないという状況を受け入れようとはしなかった」

    2026年には全面的なレギュレーション変更と新パワーユニットの導入が控えていた。さらにチーム代表も交代しており、2025年型マシンを早期に見切る理由はいくらでもあったとメキースは振り返る。

    「2026年のレギュレーションがあり、新しいパワーユニットがあり、新しいチーム代表もいる。『このマシンはうまくいっていない。来年解決すればいい』と言う理由はいくらでもあった」

    「しかし、誰もそうしようとはしなかった。少しずつではあるが確実に、マシンの新しいバランスポイントを見つけ、新たな開発、新たな方向性を見いだしていった。そこにマックスの少しばかりの魔法が加わり、あの巻き返しにつながった」

    F1パワーユニット自社開発という「最もクレイジーなプロジェクト」
    2025年のタイトル争いが終わっても、レッドブルに休む時間はなかった。2026年には、フォードとの協力によって開発した自社製パワーユニットを初めてF1に投入するという、チーム史上最大級の挑戦が待っていたからだ。

    「アブダビでシーズンが本当に終わったと実感する時間さえなかった。目の前には大きなカウントダウンがあったからだ。正確に言えば、スタッフにとってそのカウントダウンは4年ほど前から始まっていた」

    「その先にあったのは、自分たちでパワーユニットを作るという、考え得る中でも最もクレイジーなプロジェクトだった」

    メキースは、既存メーカーに依存せずF1パワーユニットを構築するという決断そのものが、通常の企業論理では考えにくいものだったと語る。

    「世界中のどんな取締役会や株主でも、『これはいいアイデアだ。自分たちでF1パワーユニットを作り、90年にわたってそれをやってきた人たちと戦おう』とは、なかなか考えないだろう。普通なら選ばない道だ」

    「しかし、それこそがレッドブルのやり方だ。我々は、不可能だと思われることに挑戦する。当時、株主と経営陣がそう決断した。そしてベン(ホジキンソン)が率いる素晴らしいチームが集められ、彼らは4年間、舞台裏で仕事を続けてきた」

    失敗すれば「1年、2年、3年と競争力を失う」
    メキースは、新パワーユニットのデビューが近づくにつれて、チーム内の緊張感が高まっていったことも明かした。

    「ある時点から、カウントダウンの終わりが近づいてくる。そして冬の間、我々の頭上には黒い雲があったと言っていい」

    「パワーユニットのプロジェクトに失敗すれば、1年、2年、場合によっては3シーズンにわたって競争力を失うことになるからだ」

    その危険性を示す例として、メキースは2014年に始まった前回のパワーユニット規則時代を挙げた。

    「2014年に始まった前回のレギュレーションサイクルでもそれを見ている。新規参入だったかどうかに関係なく、最初につまずいたところは非常に長い期間にわたってトップから遅れることになった」

    バルセロナでハジャーが100周「それが普通に見えた」
    大きな不安を抱えたまま迎えた2026年1月、レッドブル・フォードの新パワーユニットはバルセロナで実走デビューを果たした。プレシーズンテスト初日にはアイザック・ハジャーが100周を走破した。

    「キャンパスにいる全員が何日も何晩も、週末まで働き続け、ようやく1月を迎えた。そしてバルセロナでのプレシーズンテスト初日、アイザック(ハジャー)がマシンを走らせて100周した」

    「我々はただ顔を見合わせた。それがあまりにも普通のことのように感じられた」

    「レッドブル・パワートレインズ・フォードのスタッフとシャシー側のスタッフが、同じシャツを着て一緒に働いている。それを見るのは素晴らしい感覚だった。そしてかなり早い段階で、自分たちは戦いの中にいると感じられるようになった。それが本当に短い時間で当たり前のことになった」

    もちろん、すべてが順調だったわけではない。

    「誤解してほしくない。普通に感じられたと言っても、望んだように機能していないものは数多くあったし、必要なレベルに達していない部分も数多くあった。それでも、戦えるだけの距離にはいると感じられた」

    開幕戦で突きつけられた「1.2秒」の現実
    プレシーズンで手応えを得たレッドブルだったが、開幕戦オーストラリアGPでは厳しい現実を突きつけられた。基準となったメルセデスに対し、約1.2秒もの差があったという。

    「メルボルンに着いた時点では、大きなポジティブ要素がいくつもあった。黒い雲はもうなくなっていたし、戦えると思っていた。しかし、そこで突きつけられた厳しい現実は、ペースから1.2秒遅れていたということだった」

    ただしメキースは、その差について、2025年型マシンの開発をシーズン終盤まで続けたことを考えれば、ある程度は合理的だったと分析する。

    「正直なところ、昨年どれだけ遅い時期まで開発をプッシュしたかを考えれば、おそらくかなり論理的な結果だった。今年のマクラーレンにも、ある意味で同じことが見えている。そして我々は昨年、彼ら以上に強く、より遅い時期までプッシュしていたと思う」

    「そこにパワーユニットの要素も加わる。1.2秒という差の一部はシャシー側、一部はパワーユニット側にあった。それでも我々には戦えるという感覚があった」

    当時のレッドブルは自らを「4番手チーム」と評価していた。

    「我々が『今は4番手チームだ。それでも現時点ではポジティブに受け止めている』と言ったことで、ファンやもっと広い層の人たちは驚いたかもしれない」

    「もちろんレース週末になり、実際に3チームが自分たちの前にいる現実を見るのは、決して気分のいいものではない」

    半年足らずで約1秒を挽回「残りは0.3秒」
    そこからレッドブルは急速に差を縮めた。メキースによれば、開幕時にあった1.2秒の大部分はすでに解消されており、現在トップとの差は約0.3秒まで縮まっている。

    「しかし、レッドブル・レーシングは再び、自分たちが非常に得意としていることをやった。それが開発のスピードだ」

    「まだ半シーズンほどしか経っていないが、あの1.2秒の大部分は消えた。究極のペースに対して、残っているのはおそらく0.3秒だ」

    一方で、最後の数コンマを埋めることこそ最も難しいとも認める。

    「最後の0.3秒が最も難しいことはよく分かっている。その最後の0.3秒を取りにいけるかどうかは、時間が教えてくれるだろう」

    「ただ、この4カ月、5カ月で成し遂げたことについて、ピエールのチームとベンのチームには敬意を表さなければならない。ある日は勝利を争い、次のレースでは表彰台を争う。そうした状態を普通だと思えるところまで我々を戻してくれた」

    レッドブル・フォードは「期待を上回った」
    新規開発したパワーユニットでここまで競争力を発揮できたことは、メキース自身にとっても予想以上だったという。

    「私にとっても、おそらく多くの人にとっても、期待を上回るものだった」

    「パワーユニットの専門家たちについて言えば、この12カ月で最も厳しかった時期には、グリッドに並び、しかも適切なレベルで戦うために解決しなければならない、かなり複雑で深刻な問題もあった」

    「しかし最も難しい時でさえ、彼らは正しい場所に到達するために必要な手段を自分たちは持っているという確信を失わなかった」

    「だから、確かに驚きではあった。彼らが期待を上回ったことに疑いはない」

    メキースは特に、ホジキンソン率いるパワーユニット部門が困難な局面でも強さを失わなかったことを評価した。

    「改めて、ベンと彼のチームを評価しなければならない。順調な日だけでなく、より重要なのは、うまくいかない日にも強さを保ち続けたことだ」

    2027年タイトル争いへ「不利だとは思わない」
    2025年後半から2026年前半にかけて、レッドブルは主要スタッフの離脱や独自パワーユニットへの移行という大きな変化を経験した。それでもメキースは、チームが将来の勝利とタイトルを争うための基盤をすでに築いたと考えている。

    「2025年のあの段階からシーズン終了まで、レッドブルの進歩は非常に大きなものだった。そして大物の離脱や新しいパワーユニットプロジェクトがありながら、今年前半の進歩もそれに匹敵するものだった」

    「将来の勝利とタイトルに向けた基盤は整っている。そして現実的なタイムラインは、当初考えられたものよりはるかに短くなっている」

    そのうえでメキースは、2027年に向けてレッドブルがメルセデス、マクラーレン、フェラーリに対して構造的な不利を抱えているとは考えていないと強調した。

    「来年に向けて、メルセデス、マクラーレン、フェラーリに対して我々が何らかの不利を抱えているとは思わない」

    「だからといって、我々が勝つとか、彼らが勝つとか、そういう意味ではない。来年のタイトル争いに向けてマシンを開発していくうえで、かなり平等なチャンスを持った4つの大きなチームがいるということだ」

    2025年型マシンを最後まで開発しながら、並行して自社製パワーユニットという巨大プロジェクトを進め、2026年開幕時の約1.2秒差を半年足らずで約0.3秒まで縮めたというのが、メキースが振り返るこの1年だ。残された最後の数コンマを埋められるかが、レッドブル・レーシングとレッドブル・フォード・パワートレインズが再びF1タイトル争いの中心に立てるかを左右することになる。

  • マクラーレンF1 同じメルセデスPUでなぜ遅い? ワークスとの差は「投資」

    マクラーレンF1 同じメルセデスPUでなぜ遅い? ワークスとの差は「投資」

    マクラーレンは2026年F1シーズン、メルセデスと同じパワーユニット(PU)を搭載しながら、その性能をワークスチームほど引き出せていない。この差をめぐり、メルセデスとマクラーレン双方の技術陣が、その背景にある複雑な事情を明らかにしている。

    問題の核心にあるのは、単純なPUの仕様差ではない。新世代PUを車体と組み合わせて最適に運用するためのシミュレーションツールやソフトウェア、そしてそれらを開発・運用するためのリソースだ。

    メルセデス側は、マクラーレンがさらに自ら投資する必要があるとの見方を示している。

    同じメルセデスPUでも生まれた性能差
    2025年にドライバーズ、コンストラクターズの両タイトルを獲得したマクラーレンだが、新しいテクニカルレギュレーションが導入された2026年は苦戦を強いられている。

    夏休み前のハンガリーGPではランド・ノリスが今季初のポールポジションから勝利を挙げたものの、それまでの10戦で表彰台は4回。コンストラクターズランキングでは、前年に364ポイント差をつけて破ったメルセデスに対し、現在は159ポイントのビハインドを抱えている。

    その要因のひとつとして注目されてきたのがPUの使い方だ。

    2026年のF1では、内燃エンジンと電動部分の出力比率が53対47となり、従来以上にエネルギーマネジメントが重要になった。同じメルセデス製PUを使用していても、車体特性に合わせた制御やエネルギー配分によって実際のパフォーマンスには差が生じる。

    マクラーレンのチーム代表アンドレア・ステラは6月末、ストレートでメルセデスに最大約0.15秒/周を失っていると説明していた。

    さらに7月のイギリスGPでは、メルセデスのワークス車両が予選で使用していたPUのパフォーマンスを引き出す手法について、マクラーレン側が驚きを示す場面もあった。

    「HPP(メルセデス・ハイパフォーマンス・パワートレインズ)とは技術レベルで継続的に話し合っている。この素晴らしいPUで利用可能なものを確実に使えるようにするためだ」とステラは語った。

    「これは本当に素晴らしい技術で、多くのパフォーマンスがある。ただ、その性能は細かな使い方の部分にも存在している」

    「ストレートでのパフォーマンスを見ると、彼らの方がドラッグが少ない可能性を考慮しても、まだいくつか疑問が残っている」

    メルセデス「意図的に差をつけているわけではない」
    この問題について、メルセデスの副チーム代表ブラッドリー・ロードは、ワークスチームが意図的にカスタマーチームへ情報を与えていないという見方を否定している。

    「すべてはレギュレーションと契約に従っている。マクラーレンだけでなく、アルピーヌやウィリアムズも素晴らしいパートナーだ。彼らが要求の高い存在なのは当然だし、優れたサポートと製品を提供する会社としてメルセデスを選んでいる」

    ロードによれば、ブリックスワースのHPPは長年にわたりカスタマー供給において公平な対応を続けてきた。

    それでもワークスとカスタマーの間で差が生まれる理由として、ロードが挙げたのがシミュレーションツールだ。

    「違いがあると認識されたり、カスタマー側が一歩遅れていると感じたりする部分があるとすれば、多くの場合、それはシミュレーションツールやPUとシャシーの挙動を予測する能力といったところにある」

    ここで重要なのは、メルセデスが使用するツールのすべてがHPPだけで開発されたものではないという点だ。

    ワークス専用の技術はそのまま渡せない
    メルセデスのPU運用ツールには、ブリックスワースのHPPだけでなく、F1ワークスチームであるメルセデスのシャシー部門と共同開発したものも含まれている。

    F1の技術規則では、チーム間で共有できる知的財産(IP)について厳格な制限が設けられている。そのため、メルセデスが持っているツールをそのままマクラーレンへ渡せるわけではない。

    「そうしたツールの多くはブリックスワースだけでなく、MGP(メルセデスF1チーム)のシャシー部門とHPPが共同で開発したものだ」とロードは説明する。

    「当然ながら技術規則では、シャシーチームのIPについて、チーム間で何を共有できて何を共有できないのかが非常に明確に定められている」

    このため、カスタマーへ提供する前にワークス側のIPを切り離す作業が必要になるケースがある。

    そして、ここからマクラーレン自身の「投資」という問題が浮上する。

    「場合によっては、カスタマーチーム自身が作業を行い、自分たちのコストキャップのリソースを使って、PUから最大限の性能を引き出すためのツールを開発する必要がある」

    「おそらく、これが我々が直面している複雑さのひとつだ。ただ、新しいレギュレーションであり、しかも以前より複雑な規則になっていることを考えれば理解できることでもある」

    つまり、同じPUを購入すれば同じ性能が自動的に手に入るわけではない。PUそのものに加えて、それを最大限に活用するための解析環境にもマクラーレン自身がリソースを投入しなければならない。

    マクラーレンも「リソース不足」を認める
    この点については、マクラーレン側の説明とも一致する。

    マクラーレンのエンジニアリング担当テクニカルディレクター、ニール・ホールディは、2026年シーズン開幕前の準備について、自分たちとHPPの双方で十分なリソースを投入できていなかったと認めている。

    「PUという観点では、その運用方法や複雑さについて、まだ学ばなければならないことが多いのは明らかだった。僕たちとHPPの間で、そこに十分なリソースを投入できていなかった」

    「このレギュレーションではエネルギーマネジメントが難しくなることは分かっていたし、スタートするために良いと思えるものは準備していた」

    しかし、特にソフトウェア面ではさらに準備できる余地があったという。

    「テストや最初の数戦までに、僕たちもHPPもソフトウェア面でもっと作業できたと思う。そうしていれば、エネルギーマネジメントについて、もっと能力の高い状態でシーズンを始められたはずだ」

    マクラーレンとメルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ

    MCL40専用のキャリブレーションが必要
    問題をさらに複雑にしているのが、マクラーレンMCL40とメルセデスのマシンでは車体特性が異なることだ。

    PUが同じでも、空力特性やドラッグ、車速、燃料搭載量などが違えば、最適なエネルギーの使い方も変わる。そのためマクラーレンにはMCL40専用のキャリブレーションが必要になる。

    「僕たちのマシンはワークスチームとは違う。だから僕たちのマシン専用のキャリブレーションが必要になるが、現時点ではそれを素早く承認できるだけの能力がない」とホールディは説明する。

    開幕から3〜4戦では大きな進歩を遂げたものの、まだPUから引き出せていない性能が残されているという。

    「今後数戦、そして2027年に向けても、さらにステップを踏む必要がある。PUから得られる可能性がある最後の0.1秒を、現時点では完全には引き出せていない」

    マクラーレンは「メインループ」の外側
    マクラーレンのパフォーマンス担当テクニカルディレクター、マーク・テンプルも、カスタマーチーム特有の難しさを説明している。

    マクラーレンもPUの設計や搭載方法について相当な意見を出すことはできる。しかし最終的な決定権は、HPPとメルセデスのワークスチーム側にある。

    「僕たちにもかなりのインプットはあるが、最終的にHPPと何をするのかについて最終決定権を持つのはMGPだ。だからといって僕たちが無視されているという意味ではない。ただ、完全にコントロールしているのは僕たちではない」

    レース週末にHPPはワークス側の「メインチーム」と各カスタマー向けのサポートチームという形で活動する。

    「僕たちは少しメインループの外側にいて、プログラムへ情報を送り込むサイドループで仕事をしている。そのため、僕たちが望む設定や、自分たちに適した設定を必ずしも得られるとは限らない」

    情報が届くタイミングにも違いがある。

    「レースに向けてHPPから情報を受け取るが、その前には僕たちが参加していない意思決定や開発がある。何が使えるのか分かった時点では、それに反応して対応する時間があまり残されていないことも多い」

    マクラーレンは、この弱点を解消するために従来存在しなかった「PUパフォーマンスチーム」を新たに構築している。

    短いギア比もマクラーレンの足かせに
    もうひとつの違いがギア比だ。

    マクラーレンはシーズン開幕前に得られたメルセデス側の情報を基に、比較的短いギア比を選択した。短いギア比には加速性能やスタートなどでメリットがある一方、高速域では不利になる可能性がある。

    現在の知識を持ってもう一度選択できるならどうするかと問われたホールディは、「メルセデスにもっと近づける」と認めた。

    「もう一度やり直せるなら、メルセデスに近いギア比にすると思う」

    「短いギア比だからこそ得られるパフォーマンス上の機会もある。コーナーでより低いギアまで落とさずに済む場合もあるし、リスタートやスタートでもメリットがある」

    「ただ、高速側を考えれば、おそらく他のチームが持っているものを選ぶだろう」

    もっとも、ホールディはギア比だけで大きな差が生じているわけではないことも強調する。

    「小さなラップタイムの違いだ。ただ、そういう小さなものが積み重なると、それなりのラップタイムになる」

    「とはいえ、ここで話しているのは10分の1秒ではなく、数ミリ秒だ」

    2027年に向けて問われるマクラーレンのPU運用能力
    メルセデスとマクラーレンの説明を合わせると、2026年に生じている差を単純な「ワークス対カスタマー」という構図だけで説明することはできない。

    PUそのものは同じでも、メルセデスにはHPPとシャシー部門が共同で蓄積したシミュレーション環境があり、PUとマシンを一体として最適化できる。一方、その中には規則上マクラーレンへそのまま提供できないIPも含まれる。

    マクラーレンは独自のツールやソフトウェア、人員にコストキャップ内のリソースを投入し、MCL40に合わせたエネルギーマネジメントやキャリブレーションを構築しなければならない。

    さらに、情報を受け取るタイミング、設定に対する最終決定権、ギア比といった小さな違いも積み重なっている。

    2025年にメルセデスを364ポイント上回った王者マクラーレンが、2026年には同じPUを搭載するワークスチームを追う立場となった背景には、新世代F1で「エンジンを持っていること」と「エンジンを完全に使いこなすこと」が別の問題になったという現実がある。

    ハンガリーGPでノリスが示した速さはMCL40そのものに競争力があることを証明した。だからこそ、PUから取りこぼしている最後のパフォーマンスをどこまで回収できるか。そのための投資と技術基盤の構築が、残る2026年シーズンだけでなく2027年に向けてもマクラーレンの重要な課題となる。

  • ホンダF1 苦境でもアストンマーティンは「一度も不満を言わなかった」

    ホンダF1 苦境でもアストンマーティンは「一度も不満を言わなかった」

    ホンダF1とアストンマーティンは、2026年シーズン序盤に深刻なトラブルに直面しながらも、互いを非難することなく問題解決に取り組んできた。

    HRC(ホンダ・レーシング)のトラックサイドマネージャー兼チーフエンジニアを務める折原慎太郎は、厳しい状況でもアストンマーティンから「一度も不満を言われなかった」と明かしている。

    ホンダとアストンマーティンによる新たなワークス体制の船出は決して順調ではなかった。信頼性不足やパフォーマンス不足に加え、バッテリーに関連した激しい振動が発生。プレシーズンテストから問題が相次ぎ、シーズン開幕後もしばらくは性能向上より信頼性の確立を優先せざるを得ない状況が続いた。

    「アストンマーティンはホンダに一度も不満を言わなかった」
    アストンマーティンは2026年からホンダのワークスパートナーとなったが、その関係はスタート直後から大きな試練にさらされた。

    特にプレシーズンテストではホンダの新パワーユニット(PU)にバッテリー関連の問題が発生。アストンマーティンは全チームで最も少ない走行距離にとどまり、マシンを伝わる振動も信頼性とドライバーの身体の両面で深刻な懸念となった。

    それでも折原慎太郎によれば、アストンマーティンがその不満をホンダにぶつけることはなかったという。『RacingNews365』の独占インタビューで、両者がシーズン序盤から築いてきた関係について語った。

    「ウインターテストでは、ご存じの通り厳しい状況がありました。ただ、トラックサイドではシーズン序盤からすでに良い関係を築けていました。マイク(クラック/アストンマーティンのチーフ・トラックサイド・オフィサー)のおかげでもあります」

    「アストンマーティンからホンダに不満を言われたことは一度もありませんでした。もちろん、私たちはプロフェッショナルですから、何が問題なのか、どう対応すべきなのかについて議論します。ただ、彼らは常にホンダをリスペクトしてくれていました。そのため、今年の初めから関係は良好でした」

    工場レベルでも同様だった。

    「ファクトリー側でも今年の初めから良いコミュニケーションが取れていましたし、そのコミュニケーションはさらに改善されています。バッテリーの振動問題が発生したときには、より密接に協力して取り組むようになりました」

    「ですから、シーズンを通してコミュニケーションのレベルも関係性も、どんどん良くなっていると思います」

    HRC Sakuraとアストンマーティンが「毎日」対策会議
    その協力関係を象徴するのが、プレシーズンテスト後に行われた集中的な対策だ。

    バッテリー問題は単なる性能不足ではなく、開幕戦から実戦を戦えるかどうかにかかわる重大な問題だった。折原慎太郎は、日本のHRC Sakuraとアストンマーティンが毎日会議を行っていたことを明かした。

    「問題が起きていたときは、日本のHRC Sakuraとアストンマーティンの間で毎日ミーティングを行っていました。本当に毎日、何をすべきなのかについて話し合っていました」

    「ウインターテストではバッテリーの問題があり、それが非常に重大なものでした。何も対策をしなければ、第1戦、第2戦、第3戦を乗り切ることはできなかったと思います」

    開幕までに残された時間はわずかだった。そのなかで両者は原因の分析と対策を並行して進めた。

    「ウインターテストから開幕戦までの間、毎日何をすべきなのかを議論しました。そして一緒に対策を準備して開幕戦に持ち込み、そこで乗り切ることができました。そうしたことが舞台裏で行われていました」

    この対策によって、少なくともバッテリーの振動がさらなる故障につながる事態は抑えられた。一方、車体そのものに発生する振動は引き続き課題として残った。

    シーズン序盤にはエイドリアン・ニューウェイも問題の深刻さに言及。ミラーをはじめとするパーツが振動によって緩み、フェルナンド・アロンソは手足のしびれを訴えるほどだった。長期的には神経への影響も懸念されるレベルだったという。

    英国チームとの文化の違いは「問題ではない」
    日本のメーカーであるホンダと英国を拠点とするアストンマーティン。技術的な問題が続けば、文化や仕事の進め方の違いが関係悪化につながる可能性もある。

    しかし折原慎太郎は、そこに大きな障壁はないと考えている。

    「ホンダが英国のチームと仕事をするのは今回が初めてではありません。マクラーレンとも仕事をしてきましたし、レッドブルとも仕事をしてきました。イタリアのチームと仕事をした経験もあります」

    「英国の組織と仕事をする経験は十分にあります。そのため、文化の違いや言葉の壁は問題ではないと思っています」

    むしろ、今回の苦境が両者の結束を強めたという。

    「厳しい時期を一緒に経験したからこそ、関係をかなり強くすることができたと思います。現在、ホンダとアストンマーティンの関係という意味では、良い状態にあると思っています」

    ホンダF1とアストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

    10戦リタイアの苦境からハンガリーで見えた変化
    良好な関係とは対照的に、コース上の結果は厳しいものだった。

    アストンマーティンは開幕11戦で計10件のリタイアを経験し、コンストラクターズ選手権では1ポイントで10位。新規参戦のキャデラックと争う位置まで後退した。

    しかし、第11戦ハンガリーGPではひとつの転機が訪れた。

    アストンマーティンはAMR26に軽量化や空力変更を含む16項目のアップデートを投入。アロンソは改良型マシンを「かなり良くなった」と評価し、ランス・ストロールも近年で最も手応えのあるアップデートだったとの認識を示した。

    ニューウェイもこれを「心強い最初の一歩」と表現。実際のパフォーマンスが事前のシミュレーションや予測と一致したことは、今後の開発にとって重要な材料となった。

    ホンダはオランダGPで初のADUOアップグレード
    シャシー側に改善の兆しが見え始めたタイミングで、今度はホンダが大きな一歩を踏み出す。

    ザントフォールトで行われるF1オランダGPでは、ホンダが2026年シーズン初となるPUアップグレードを投入する予定だ。

    2026年から導入されたADUO(Additional Development and Upgrade Opportunities)は、競争力で遅れているPUメーカーに追加開発の機会を認める制度だ。

    ホンダは評価基準となるトップPUに対して4%以上の差があると判定され、2026年に2回の開発機会を得ている。ただし、ホンダはその機会を小規模なアップデートに分散させるのではなく、夏場の大規模アップグレードに開発リソースを集中させる方針を選んだ。

    アストンマーティンがハンガリーでシャシー開発の方向性に一定の手応えを得た直後だけに、ホンダのアップグレードが加わるオランダGPは今後を占う重要な週末となる。

    苦戦がホンダのモチベーションに
    ホンダにとって現在の状況が満足できるものでないことを、折原慎太郎も認めている。ただし、トップとの差は撤退理由ではなく、むしろ追いつくためのモチベーションになっているという。

    「もちろん、トップの競争相手になれているのがベストなシナリオです。ただ一方で、大きなチャレンジがあれば、それは私たちにとって大きなモチベーションになります」

    「ホンダには常に『never give up』という精神があります。難しい状況だからこそ、大きなモチベーションがあります」

    「ですから、現時点が決して満足できる状況ではないことは確かです。それでも、どうやってパフォーマンスを改善し、いつかトップの競争相手に追いつくのかということにワクワクしています。私たちはこのチャレンジを楽しんでいます」

    2026年のアストンマーティン・ホンダは、期待されたスタートとは程遠い苦境からシーズンを始めた。しかし、プレシーズンテストから続いたトラブルに対し、互いを責めるのではなく、HRC Sakuraとアストンマーティンが毎日協議して対策を積み重ねてきたことは、ワークス体制の土台という意味で重要だ。

    ハンガリーでシャシー側に改善の兆しが見え、続くオランダではホンダのPUアップグレードが投入される。序盤の危機によって強まった両者の関係を、ここから実際のF1での競争力へと結びつけられるかが次の焦点となる。

  • メルセデスF1のヴォルフがV8エンジン復活を支持「純粋主義者として好きだ」

    メルセデスF1のヴォルフがV8エンジン復活を支持「純粋主義者として好きだ」

    メルセデスF1のチーム代表トト・ヴォルフが、将来のF1パワーユニット(PU)規則で検討されているV8エンジン復活を支持した。「純粋主義者として好きだ」と語り、内燃エンジンの比重を再び高める方向性に賛同している。

    2014年に始まったターボハイブリッド時代で最大級の成功を収めてきたメルセデスを率いる人物の発言だけに興味深い。

    さらにヴォルフは、2027年と2028年に予定されている現行PUの出力配分変更についても説明し、2027年により大幅な内燃エンジン出力増加を目指した案をフェラーリが阻止したことを明かした。

    V8復活を支持するトト・ヴォルフ
    FIA会長モハメド・ビン・スレイエムは、次世代PUについてV8エンジンを軸としながら電動化を残す構想を推進している。導入時期として2030年または2031年が議論されている。

    RacingNews365の独占インタビューで、ヴォルフはFIAやF1、他のPUメーカーとの協議がすでに進んでいると説明した。

    「僕はFIA会長のモハメド・ビン・スレイエムと話しているし、F1のCEOであるステファノ・ドメニカリ、それから他のエンジンメーカーとも話している」

    「現在のエンジンはとても複雑だ。そして僕たちもようやく理解し始めているところだけど、それによってレースそのものが変わった。日曜日のレースを好きな人もいる。オーバーテイクが多いからね。一方で好きではない人もいる。でも、最も適応できるドライバーが勝つ」

    ヴォルフが特に不満を示したのが、現在のPUが生み出す音だった。

    「スタート前にグリッドでマシンが10秒間エンジンを回しているのは耐えられない。火災報知器みたいな音がする」

    さらに、新しいPU特性への適応がドライバーのパフォーマンスにも影響していると指摘する。

    「ルイス(ハミルトン)を見てみればいい。彼は変わったし、パフォーマンスも大きく変わった。キミ(アントネッリ)はとてもうまくやっている。他のドライバーたちも適応しなければならなかった」

    「80対20」で1000馬力 V8+小型バッテリー構想
    ヴォルフによれば、中長期的には現在よりも内燃エンジンへの依存度を大幅に高める方向へF1が進む可能性が高い。

    「中長期的に考えると、現時点では3〜4年先ということになるけど、僕たちは再び内燃エンジンがパフォーマンスの50%以上を占めるところへ戻っていく」

    その有力案が、ビン・スレイエムが推しているV8エンジンだ。

    「ビン・スレイエムは8気筒のV8を望んでいる。いい音がするエンジンだ。それに、より小さなバッテリーを組み合わせる」

    「出力配分は内燃エンジンとバッテリーで80対20くらいになると思う。そして出力は1000馬力だ」

    自然吸気になるか、ターボなどの過給システムを残すかについては決まっていないという。

    「自然吸気になるかどうかは分からない。でも、現時点ではF1はこの方向へ進んでいると思う。僕は純粋主義者だから、これは好きだ」

    2027年はICE出力20kW増 フェラーリが50kW案を阻止
    ただし、V8時代へ移行する前にも現在のPU規則には段階的な変更が予定されている。

    2026年規則では内燃エンジンと電動側の出力を大幅に接近させたことが大きな特徴だったが、2027年以降は燃料流量を増やすことで、再び内燃エンジン側の比重を高めていく方向となっている。

    ヴォルフは、その変更にはハードウェア側の対応も必要になると説明した。

    「来年もう1年やって、その次にさらに進める。でも、エンジンを再設計する必要がある」

    「燃料流量を増やせば、今まさに僕たちがやっているように馬力が増える。そうなると、それに対応するために変更しなければならないハードウェアも出てくる」

    そしてヴォルフは、2027年にメルセデス側がさらに大きな変更を望んでいたことを明かした。

    「僕たちは来年、エンジン出力を50kW増やしたかった。でもフェラーリがそれを阻止した」

    「だから20kW増というステップになり、その後2028年に50kW増というステップになる」

    つまりF1は、V8復活という次世代規則を待つだけではなく、2027年と2028年にも段階的に内燃エンジン側の比重を引き上げていくことになる。

    F1 V型8気筒エンジン

    ドメニカリCEOも「シンプルなF1」を要求
    F1のステファノ・ドメニカリCEOも、将来規則では複雑さを減らすことが重要だとの考えを示している。

    「技術規則について最終決定権を持っているのはFIAだ。ただ、メーカー、ファン、チーム、ドライバーも含めて行っている議論は正しい方向にあると思う」

    ドメニカリが掲げるキーワードは「シンプルさ」だ。

    「将来の規則における最大の目標は、可能な限り物事をシンプルにすることだと思う。より軽いマシンをF1に導入し、持続可能燃料を使用し、もちろん電動化も残す」

    「そして何よりも、特定のモードではドライバーが可能な限り全力でプッシュできるようにしたい。それはF1ドライバーたちが常に求めてきたことでもある」

    具体的な技術仕様についてはFIAに委ねながらも、2026年末までには将来の方向性をまとめたいとしている。

    「今年末までには、議論できるパッケージを用意できると思っている」

    「現在、多くの良い話し合いが進んでいる。当然ながら、それぞれが異なる理由から異なる方向性を求めている。でも年末までには、将来に向けた適切なパッケージを用意できると思う」

    2014年以来、メルセデスは複雑なターボハイブリッド技術を最大の武器としてF1を支配してきた。そのメルセデスを率いるヴォルフ自身が、よりシンプルで内燃エンジンを中心としたV8時代への回帰を歓迎している。

    2027年、2028年と段階的にICEの比重を高め、その先にV8と小型バッテリーを組み合わせた約1000馬力のPUを導入する――。F1の次世代エンジン構想は、具体的な出力配分まで含めた議論へと進み始めている。