2026年F1第12戦オランダGPのスプリントが8月22日(土)、ザントフォールト・サーキットで行われ、ジョージ・ラッセル(メルセデス)がポールポジションから逃げ切って優勝。今季3度目のスプリント勝利を挙げた。
2位にはソフトタイヤを選択したシャルル・ルクレール(フェラーリ)、3位にはランド・ノリス(マクラーレン)が入り、選手権リーダーのアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)は4位。
アストンマーティンは前日のフェルナンド・アロンソ車で発生していたStraight Line Mode(SLM)の問題を修正し、アロンソはピットレーンからスプリントに臨んだ。
ラッセルがポールから好スタート
全24周で争われるスプリントは曇り空のドライコンディションでスタート。路面温度は24度と、前日のスプリント予選より低いコンディションとなった。
上位勢の大半がユーズドのミディアムタイヤを選択するなか、3番グリッドのルクレールはソフトを投入。17番グリッドのオリバー・ベアマン(ハース)もソフトを選び、それ以外はミディアムを履いた。
一方、カルロス・サインツJr.(ウィリアムズ)とアロンソはパルクフェルメ下でセットアップを変更したため、ピットレーンスタートとなった。両チームは午後の予選と日曜日の決勝を見据え、データ収集を目的に変更を加えた。
フォーメーションラップではセルジオ・ペレス(キャデラック)がグリッドから発進できず、ピットレーンへ運ばれるトラブルが発生。ペレスは大きく遅れてレースに加わることになった。
スタートではラッセルが首位をキープ。2番手ノリス、3番手ルクレールもポジションを守ったが、5番手スタートのアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)がターン2でオスカー・ピアストリ(マクラーレン)を抜いて4番手に浮上した。
ソフトタイヤのルクレールは序盤からノリスにプレッシャーをかけ、その後方にはアントネッリが接近。トップ4が比較的近い間隔でレースを進めた。
角田裕毅はスタートで13番手に後退
12番グリッドからスタートした角田裕毅にとって、今回のスプリントは8カ月ぶりのF1実戦となった。
角田裕毅はアイザック・ハジャーの負傷によってドライバーラインアップが変更されたことを受け、レッドブル・レーシングでハジャーの代役を務めるリアム・ローソンに代わってレーシングブルズから出場。前日のフリー走行で2026年型マシンを初めて実走させ、スプリント予選では12番手につけていた。
スプリントではスタートもひとつの課題だった。2026年型F1マシンはスタート手順が従来とは異なり、さらに各マシンによって手順にも違いがある。角田裕毅は事前にピットレーン出口でスタート練習を行っていたものの、実戦でこの手順を経験するのは今回が初めてだった。
スタート直後、角田裕毅はフランコ・コラピント(アルピーヌ)の先行を許して13番手に後退。その後はコラピントの背後を走ったが、オーバーテイクが難しいザントフォールトということもあり、ポジションを取り戻すまでには至らなかった。

ラッセルとノリスの差は1秒前後
トップでは序盤、ラッセルがノリスに対して1秒強のリードを築いたものの、大きく引き離すまでには至らなかった。ノリスも徐々に差を縮め、5周目には1秒以内に入り、オーバーテイクモードを使用できる位置まで接近した。
一方、ルクレールとアントネッリも前車との間隔を1秒以内に保ち、トップ4は緊張感のある展開となった。
6番手のマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)はピアストリから徐々に離され、その後方ではルイス・ハミルトン(フェラーリ)が約0.5秒差まで接近。しかし、抜きにくいザントフォールトでは決定的なチャンスを作ることができなかった。
8番手ではピエール・ガスリー(アルピーヌ)が最後のポイント圏内を走行し、ガブリエル・ボルトレト(アウディ)がその背後につけた。
ノリスにリアグリップの問題
レースが動き始めたのは10周目前後だった。
ノリスが「リアがない」と無線で訴え、コーナー立ち上がりでマシンを安定させることに苦戦。9周目から10周目にかけてラッセルとの差が一気に広がり、11周目には1.7秒まで開いた。
これによってラッセルは首位で余裕を得る一方、ノリスにはルクレールが接近。ソフトタイヤでスタートしたルクレールは懸念されていた大幅なデグラデーションを見せず、ノリスの背後でチャンスをうかがった。
アントネッリもルクレールの後方につけていたが、ザントフォールトでは前車に近づいても追い抜くことが難しく、順位を上げられない状態が続いた。
ルクレールが18周目にノリスを攻略
13周目以降、ルクレールはノリスとの差をさらに縮めた。リアウイングを開きながらメインストレートで何度も仕掛けるが、ノリスもミスなく守り続ける。
17周目にはその差が0.4秒まで縮まり、迎えた18周目、ついにルクレールが仕掛けた。
メインストレートでオーバーテイクモードを使用してノリスに迫り、ターン1のイン側へ飛び込んで2番手を奪取。レース中に上位勢で起きた数少ない本格的なオーバーテイクとなった。
ルクレールはその後すぐにノリスを引き離したが、首位ラッセルは約1.3秒前方を走っており、残り周回も少なかった。
アントネッリがノリスを猛追
ルクレールに抜かれたノリスには、今度はアントネッリが迫った。
19周目には0.5秒程度まで接近。アントネッリはバッテリーを充電しながらタイヤを整え、終盤のアタックに備えた。
一時は約0.9秒まで離れたものの、22周目には再び0.5秒差。ノリスは前方のルクレールから2秒以上離れたことでオーバーテイクモードを使えず、厳しい状況で3位を守ることになった。
最終24周目、アントネッリはターン1で一瞬イン側をうかがったものの、仕掛けられる距離には届かない。ノリスが0.385秒差で3位を守り切った。
ラッセルが今季3度目のスプリント勝利
トップではラッセルが最後までレースをコントロール。ルクレールに1.360秒差をつけてチェッカーを受け、ポールポジションから今季3度目となるスプリント勝利を飾った。
「週末のいいスタートになった。あと1周あったら、レースの終わり方はかなり違っていただろうね」
ラッセルはレース後にそう振り返った。
「オーバーテイクがあるとすれば終盤だと思っていたから、最後にタイヤを残しておく必要があると分かっていた。シャルルが速いことも分かっていたけど、なんとか前に居続けることができた」
実際、ラッセルがフィニッシュラインを通過した直後には雨が降り始めた。もし数分早ければ、レース結果を大きく左右する可能性もあった。
「もう少し早く雨が来ていたら、最終ラップはかなり危なかっただろうね!」
ルクレールはソフトタイヤを生かして2位
ルクレールは上位勢で唯一ソフトタイヤを選択するギャンブルに出たが、その判断が奏功した。
「何かをやっているのが自分だけというときは、大正解か大間違いのどちらかだ。でも今回はうまくいった。それだけFP1でしっかり宿題をできていたということだ」
ノリスを抜いた場面については「ランドはメインストレートであまりデプロイメントが残っていないと分かっていたから、そこを最大限に生かす必要があった。それでもブレーキングポイントにはほぼ同時に到達したから、簡単ではなかった」と説明した。
「マシンの感触はいい。シーズン後半をこういう形で始められたのはいいことだ」
ノリスは3位「低速域でもっと必要」
ノリスは序盤こそラッセルにプレッシャーをかけたが、中盤からリアグリップに苦しみ、最終的にはルクレールに2位を明け渡した。
「悪い結果ではないけど、最高でもない。今日はもう少し速ければよかった。でもシャルルが速すぎた。タイヤの問題だったとは思わない。今日は彼らの方が少し速かった」
マクラーレンの弱点については「高速ではすごくいい。でも低速ではマシンが必要なレベルのパフォーマンスを発揮できていない。進歩には満足できるけど、まだもっと必要だ」と語った。
アントネッリは4位でも選手権リード拡大
アントネッリはスタートでピアストリを抜いたものの、その後はルクレールとノリスを攻略できず4位。それでも5ポイントを獲得し、7位に終わったハミルトンとの差を広げた。
レース前に50ポイントだった両者の差は53ポイントに拡大。ラッセルは優勝で8ポイントを加えたが、アントネッリとの差は59ポイントから56ポイントとなった。
メルセデスのチーム代表トト・ヴォルフはラッセルについて「彼には不運もかなりあったから、夏休み明けに戻ってきてポールを獲り、勝てたのはいいことだ。大量のポイントではないが、自信を取り戻すにはいい後押しになる」とコメントした。
アントネッリについても「昨日のようにヒヤッとする瞬間があって、もう少しでマシンを失いそうになれば、そのことはスプリント予選の残りの間も頭に残る。今日は1ポイントのためにリスクを冒さず、本当に賢いレースをした。2人の今日の仕事にはとても満足している」と評価した。
フェルスタッペン6位 ハミルトン7位
5位ピアストリはトップ4から大きく離れたものの、フェルスタッペンを抑えてフィニッシュ。フェルスタッペンは母国レースで6位となった。
その背後ではハミルトンがレース序盤からフェルスタッペンを追った。一時は2秒ほど離されたが、終盤には再び1秒以内まで接近。それでも追い抜くには至らず7位に終わった。
最後の1ポイントはガスリーが獲得。アップデートが投入されたアルピーヌで8位を守り、ボルトレトを9位に抑えた。
10位はアービッド・リンドブラッド(レーシングブルズ)。ハジャーの代役としてレッドブル・レーシングをドライブしたローソンは11位となった。
角田裕毅は13位で復帰後初レースを完走
中団ではコラピントが12位、角田裕毅が13位でフィニッシュ。角田裕毅はスタートで失ったポジションを取り戻すことはできなかった。
それでも、今回のオランダGPでは金曜日のFP1が角田裕毅にとって2026年型F1マシンでの初走行だった。そこからスプリント予選を経て24周のスプリントを完走し、午後の予選を前に実戦での走行距離を積み重ねた。
角田裕毅の後方ではエステバン・オコンとベアマンのハース勢が14位、15位。アレクサンダー・アルボン(ウィリアムズ)が16位となった。
アストンマーティンはアロンソのSLM問題を修正
アストンマーティン勢はランス・ストロールが17位、ピットレーンスタートのアロンソが18位と、ポイント圏外でスプリントを終えた。
アロンソは前日のスプリント予選で最下位に終わっていたが、アストンマーティンはその後、アロンソ車でStraight Line Mode(SLM)が正常に機能していなかったことを確認。チームによれば、この問題はスプリントまでに修正された。
アストンマーティンは今週末、ホンダが投入した新仕様のF1パワーユニットを使用している。ただし、アロンソのピットレーンスタートはパルクフェルメ下でセットアップを変更したことによるもので、チームは午後の予選と日曜日の決勝を見据えてデータを収集するための変更だったと説明している。
そのため、スプリントでの17位と18位という結果だけで新PUのパフォーマンスを判断することは難しい。少なくともアロンソ車では前日のSLMの不具合が解消され、24周のレース距離を走り切った。
チェッカー直後に雨
レース中に大きな波乱を生むことはなかったものの、終盤にはザントフォールト上空に黒い雲が接近。最終ラップには軽い雨の可能性も伝えられていた。
雨が本格的に落ち始めたのはチェッカーフラッグ直後で、各車は濡れ始めた路面を慎重に走りながらピットへ戻った。
これによって路面に形成されたラバーの一部が洗い流される可能性があり、このあと行われるF1オランダGP予選では再びコンディションが変化することも予想される。
スプリントではメルセデスとフェラーリが強いレースペースを示し、マクラーレンは低速域で課題を抱えた。レッドブル・レーシングもトップ争いには届かなかった。抜きにくいザントフォールトだけに、決勝のグリッドを決める予選はこれまで以上に重要なセッションとなりそうだ。