マックス・フェルスタッペンは、2026年F1第12戦オランダGPで急きょマシンを乗り換えた角田裕毅とリアム・ローソンが予選でレギュラードライバーに迫ったことについて、現行マシンの特性を示すひとつの例だとの見方を示した。
なかでも角田裕毅は、2026年型F1マシンでの実走経験がない状態でレーシングブルズVCARB-03に乗り込み、予選Q2ではチームメイトのアービッド・リンドブラッドからわずか0.102秒差。
レッドブルRB22を初めてドライブしたローソンもQ3でフェルスタッペンから0.115秒差につけており、フェルスタッペンはこうした僅差が2026年F1マシンの特徴と無関係ではないと考えている。
角田裕毅は実走経験なしでリンドブラッドから0.102秒差
オランダGPでは、負傷したアイザック・ハジャーに代わってローソンがレッドブル・レーシングに昇格。そのローソンが空けたレーシングブルズのシートに角田裕毅が入るという異例のドライバー変更が行われた。
角田裕毅にとって条件は決して簡単なものではなかった。今季はレッドブルのリザーブを務めており、2026年型F1マシンを実際に走らせるのは今回が初めて。事前準備もVCARB-03を使ったシミュレーターでの1日だけだった。
それでも予選ではQ2まで進出。最終的に12番手となり、Q3に進んだリンドブラッドとの差を0.102秒に抑えた。
一方のローソンは、レッドブル・フォードのパワーユニット自体はレーシングブルズで使い慣れているものの、RB22を走らせるのはザントフォールトが初めてだった。それでもQ1ではフェルスタッペンから0.102秒差、Q3でも0.115秒差まで迫った。
ドライバーによる差が以前より小さくなっているのではないかと問われたフェルスタッペンは、特に予選ではそうした傾向があるとの考えを示した。
「特に予選では、今のマシンの方が限界を見つけるのはかなり簡単だと思う」
「バッテリーが少なくなっている場所もかなりあって、そうなるとすべてをまとめること自体が少し簡単になる。今週末は以前のマシンと比べて、それがかなりよく表れていたと思う。僕にとっては驚きではない」
2026年のF1では、パワーユニットにおける電動エネルギーの重要性が大幅に高まった。ドライバーは単純にコーナーを限界まで攻めるだけでなく、ラップ全体でエネルギーをどう使うかという制約の中で走る必要がある。
フェルスタッペンは、こうした特性によって予選でドライバーが生み出せるタイム差が以前より小さくなっている可能性を指摘する。
「シーズンを通してすでに見えている。みんないつも0.1秒とか0.2秒の中にいる」
「かなり悪い予選になっても0.3秒くらいだ。いつも差は小さい」
フェルスタッペンとの差も縮小した2026年
ローソンのザントフォールトでの予選セッションを見ると、フェルスタッペンとの差はSQ1で0.165秒速く、SQ2では0.374秒遅れ。通常予選ではQ1が0.102秒、Q2が0.427秒、Q3が0.115秒の遅れだった。
2回の予選セッションを平均すると、その差は約0.245秒。これは2026年シーズンにハジャーがフェルスタッペンにつけられている平均約0.232秒と近い数字だ。
さらにチームメイト間の予選タイム差を前年と比較すると、新規参戦のキャデラックを除く10チーム中6チームで差が縮小している。
2025年にはレッドブルでフェルスタッペンと角田裕毅の平均差が0.735秒に達していたのに対し、2026年に最も大きなチームメイト間の差はフェルナンド・アロンソとランス・ストロールの約0.303秒となっている。
ただし、これだけで2026年型マシンが「簡単」になったと断定することはできない。
ハジャー自身が今季高いパフォーマンスを見せていることに加え、ローソンもレーシングブルズで好調なシーズンを送っている。ドライバー自身の成長やマシンとの相性もあり、チームメイト間の差の縮小をレギュレーション変更だけに結びつけることはできない。

ステラは反論「今年の方がさらに難しい」
一方、マクラーレンのチーム代表アンドレア・ステラは、フェルスタッペンとは異なる見方を示している。
「このマシンは、少なくとも我々の2人のドライバーからは運転が難しいマシンだと分類されている。他のドライバーについては分からない」
2026年型マシンは前年までと比較してダウンフォースが少なく、タイヤも小型化された。さらにパワーユニットのエネルギーマネジメントが加わり、ドライバーが対処しなければならない要素が増えているとステラは説明する。
特にシーズン序盤には、ストレートでデプロイメントの状態が突然変化し、それによってブレーキングポイントまで狂うケースがあったという。
「高速コーナーで早くアクセルを踏んだことで、その後のデプロイメントを失うこともある。だから今年のマシンを難しくしている要素はいくつもあった」
パワーユニット関連についてはシーズンが進むにつれてドライバーとエンジニア双方の理解が深まり、対応できるようになってきた。それでも限界で走る際の一貫性には依然として影響が残っているという。
さらにステラが強調したのが、グリップの予測しにくさだ。
「以前の世代のマシンには、はるかに大きな空力荷重があり、タイヤからもずっと多くのグリップがあった」
「ドライバーにとっては、すべてがはるかに速く起きるという意味で難しかったが、通常は対処すべきことがひとつだったので、その意味では簡単だった」
「今はグリップの一貫性という点で、いつ何が起きてもおかしくない。風に対する感度もあり、ハンガリーでもここでも、それが予選で誰もクリーンなラップをまとめられなかった大きな理由になった」
フェルスタッペンが示した「ドライバーの技量による差が出にくくなった」という考えについても、ステラは慎重だ。
「僕には何とも言えない。他のチームについてコメントすれば不正確になる」
「ただ、マクラーレンで理解していることに限って言えば、今年の方がさらに難しいと思う」
「2025年まではスピードと、物事が起きる速さに慣れる必要があった。でも今年はマシンが大きくスライドするので、どんな問題が起きても適応できるようにしなければならない」
フェルスタッペンが指摘する「限界への到達しやすさ」と、ステラが語る「限界で安定して走らせる難しさ」は、必ずしも完全に矛盾するものではない。2026年F1では一発のタイム差を生み出す余地が小さくなる一方、その小さな差を安定して引き出すためにドライバーが対処すべき要素は増えている可能性がある。
その議論を象徴するのが、今回の角田裕毅とローソンだった。特に角田裕毅が2026年型マシンでの実走経験がないままリンドブラッドから0.102秒差まで迫ったことは、フェルスタッペンが唱える「予選で限界を見つけやすくなった」という見方を考えるうえで、興味深い実例となった。
