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  • アストンマーティンF1 AMR26開発4カ月遅れ ニューウェイが明かす風洞投入の誤算

    アストンマーティンF1 AMR26開発4カ月遅れ ニューウェイが明かす風洞投入の誤算

    アストンマーティンF1のチーム代表エイドリアン・ニューウェイが、2026年型マシン「AMR26」の風洞開発開始がライバルより大幅に遅れた理由を説明した。ニューウェイの加入時期が原因との見方を否定し、チームが新しい自社風洞の稼働を待つことを選択した結果だったと明かしている。

    2026年の新テクニカルレギュレーションに向け、各F1チームは2025年1月から新車の空力開発を開始することが認められていた。

    しかし、アストンマーティンがAMR26のモデルを風洞に投入したのは4月中旬。ニューウェイによれば、この出遅れによって研究・設計期間は極めて圧縮されたという。

    AMR26はライバルより約4カ月遅れて風洞へ
    アストンマーティンの2026年シーズンは、開幕前から厳しい状況に置かれていた。

    バルセロナで行われたプレシーズンのシェイクダウンでは序盤の大半を走ることができず、AMR26が初めてコースに姿を現したのは走行期間の終了間際だった。ランス・ストロールが最初にステアリングを握り、最終日にフェルナンド・アロンソが走行を引き継いだ。

    ニューウェイは以前、その背景としてAMR26の風洞開発開始が大幅に遅れていたことを明かしている。

    「実際のところ、2026年型マシンのモデルを風洞に入れられたのは4月中旬だった」

    「一方で、ほとんどすべてとは言わないまでも、大半のライバルは前年1月初めに2026年向けの空力テスト禁止期間が終了した瞬間から、風洞にモデルを入れていただろう」

    「そのため、我々は約4カ月遅れた状態になった。それによって研究と設計のサイクルが非常に、非常に圧縮されることになった」

    AMR26は完成後も複数の問題を抱えた。シャシーは重量超過となり、ダウンフォースも不足。さらにホンダ製パワーユニットから発生する振動の問題も重なり、アストンマーティンはシーズン序盤から苦戦を強いられた。

    ニューウェイ加入待ちではなかった
    風洞投入が遅れた理由については、ニューウェイがアストンマーティンで正式に仕事を始めたのが2025年3月だったことから、「ニューウェイの加入を待っていたのではないか」との見方もあった。

    しかし、ニューウェイはこれを否定した。自身がファクトリーに初出勤した時点でも、そもそも風洞に投入できるAMR26のモデルは完成していなかったという。

    「実際のタイムラインとしては、作業を始められるモデルがまだ準備できていなかった」

    そのうえでアストンマーティンは、従来使用していたメルセデスのブラックリーの風洞で短期間だけ開発を始めるのではなく、新設した自社風洞の稼働開始を待つという判断を下した。

    「同時に、正しかったか間違っていたかは別として、我々は自社の風洞が稼働するまで2週間ほど待つという決断をした」

    「ブラックリーで非常に短い期間だけ作業を始めて、その直後にまた移動するよりも、その方がいいと判断した。それが当時のタイムラインだった」

    つまり、AMR26の風洞開発の遅れはニューウェイの加入を待った結果ではなく、モデルそのものの準備の遅れに加え、新しい自社風洞への移行時期が重なったことによるものだった。

    ニューウェイは、特定のひとつの出来事だけが原因だったわけではないとも説明する。

    「ただ、大きな積み重ねだったと思う。そういう意味では、すべてが後手に回っていた。できることをやって、前に進むしかない」

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

    ハンガリーGPでAMR26Bを投入
    苦しいシーズン序盤を経て、アストンマーティンは第11戦ハンガリーGPで大規模アップデートを実施。ニューウェイの指揮のもと、16項目の新パーツを盛り込んだBスペック仕様のAMR26Bを投入した。

    フェルナンド・アロンソは予選で今季最高の16番手を獲得し、決勝では14位。チームメイトのランス・ストロールは13位でフィニッシュした。

    まだポイント獲得には届かなかったものの、ニューウェイは今回のアップデートが2026年シーズンの悪循環から抜け出すきっかけになることを期待している。

    「そう願っている」

    「最初の数戦は完全な悪夢だった。その通りだ。これから少なくとも1ポイントを獲得して、ある程度の体裁を取り戻せればと思っている。それが当面の目標だ」

    「そこから、さらに前進し続けられるようにしたい」

    オランダGPではホンダも新スペックPU投入
    サマーブレイク明けの第12戦オランダGPでは、アストンマーティンにもうひとつ重要なアップデートが加わる。ホンダが改良型パワーユニットを投入する予定となっている。

    新スペックについては一部で「50馬力向上」との情報も伝えられているが、ホンダのチーフエンジニアを務める折原慎太郎は、その数字について慎重な見方を示している。

    「その数字があればいいなとは思いますが、かなり大きな数字です」

    「パワーの詳細については説明できませんが、私の感覚では、いや、それが実際の数字ではないと思います」

    2026年型マシンの開発開始で大きく出遅れ、その影響をシーズン序盤まで引きずったアストンマーティン。AMR26Bによるシャシー側の改善に加え、オランダGPからはホンダの新スペックPUも投入される。まずは今季初ポイントを獲得して「体裁を取り戻す」というニューウェイの目標に向け、後半戦でどこまで巻き返せるかが焦点となる。

  • 角田裕毅 F1復帰の舞台裏「ビーチにいたら突然電話が」待ち望んだ実戦へ

    角田裕毅 F1復帰の舞台裏「ビーチにいたら突然電話が」待ち望んだ実戦へ

    角田裕毅が、2026年F1第12戦オランダGPで実現した突然のF1復帰について、その舞台裏を明かした。レーシングブルズから出場することになった角田裕毅は、ギリシャのビーチで休暇を過ごしていたところ、マネージャーから英国へ向かうよう突然連絡を受けたという。

    アイザック・ハジャーが夏休み中に手首を負傷してオランダGPを欠場することになり、レッドブル・レーシングはレーシングブルズのリアム・ローソンを代役として昇格させた。

    その結果、空いたレーシングブルズのシートに、レッドブルのリザーブドライバーを務めていた角田裕毅が起用された。

    2025年最終戦アブダビGP以来となるF1での実戦。角田裕毅にとって、それは長く待ち続けてきたチャンスだった。

    ギリシャ到着から24時間で突然の電話
    角田裕毅がオランダGP出場の可能性を知らされたのは火曜日だった。当時はマネージャーや友人たちとギリシャを訪れ、ビーチで過ごしていたという。

    「マネージャーとほかの友人たちと一緒にギリシャにいました。みんなで過ごしていて、僕はビーチにいました」

    ただし、角田裕毅は笑顔を見せながら、休暇中ずっと遊んでいたわけではないと強調した。

    「ずっとビーチで遊んでいたみたいな話にはしたくないです(笑)。ちゃんとトレーニングもしていました」

    「でも、そのときはビーチでリラックスして、きれいな海を眺めていたんです。そうしたら突然、マネージャーから『英国に行かないといけない』と言われました」

    ギリシャに到着してから、まだ24時間ほどしか経っていなかった。

    「『ギリシャに来てまだ24時間なのに、もう英国に行けっていうの?』と思って、『なぜ?』と聞きました。そうしたら『今週、レースに出ることになるかもしれない』と言われました」

    その後、ハジャーの欠場とローソンのレッドブル昇格が正式に決まり、角田裕毅のレーシングブルズからのオランダGP参戦も決定した。

    角田裕毅 ビザ・キャッシュアップ・RB・フォーミュラワン・チーム

    「ずっと待っていた瞬間」
    角田裕毅は2025年限りでレッドブル・レーシングのレギュラーシートを失い、2026年はリザーブおよび開発ドライバーとしてチームを支えてきた。

    F1の実戦からは離れていたものの、復帰の機会に備えて準備を続けてきたという。

    「フィジカル面でもメンタル面でも、十分にシャープな状態だと思います。ほぼ毎日、長い時間トレーニングしてきました」

    「トレーニングする時間はたくさんありました。ほかにやることもあまりなかったですから(笑)」

    実車での走行機会も確保してきた。角田裕毅によれば、旧型車を使用するTPC(Testing of Previous Cars)を4回経験し、合計でおよそ5レース分の距離を走り込んでいる。

    「TPCでは4回走って、レース距離にすると5レース分くらい走っています。なので、感覚としてはかなりシャープですし、TPCでも多くの周回を経験できました」

    そして今回の復帰について、角田裕毅は率直な思いを口にした。

    「これは僕がずっと待っていた瞬間です。こういう瞬間が本当に欲しくて仕方がなかったです」

    最大の課題は2026年型マシンへの適応
    一方で、実戦復帰には大きなハードルもある。

    角田裕毅が最後にF1決勝を戦ったのは2025年アブダビGPであり、その後F1は2026年から新しい技術レギュレーションへ移行した。今回ドライブするレーシングブルズのマシンについても、事前準備の時間は限られている。

    角田裕毅がレーシングブルズのシミュレーターに乗ったのは水曜日が初めてだった。

    「僕がやらなければならないのは、このクルマに慣れることです。これまでとはかなり違う感覚になると思いますし、手順やスタートの方法なども覚える必要があります」

    さらに、オランダGPで実際のマシンに慣れるために使えるフリー走行は限られており、短時間で適応する必要がある。

    「フリー走行が1回しかないのは少し難しいと思います。でも、だからこそ今のところ期待値は設定していません」

    それでも、突然巡ってきたチャンスを前にした角田裕毅に気負いはない。

    「今はただ楽しみたいです。レースを楽しんで、思い切り走りたいです。それは僕が長い間やりたかったことです」

    ギリシャのビーチで受けた一本の電話から、わずか数日でF1のグリッドへ戻ることになった角田裕毅。結果への具体的な目標は掲げず、まずは待ち望んでいたF1での実戦そのものを楽しむ姿勢でザントフォールトでの週末に臨む。

  • 2026年F1オランダGP テレビ放送時間・配信日程(フジテレビNEXT・FOD)

    2026年F1オランダGP テレビ放送時間・配信日程(フジテレビNEXT・FOD)

    2026年F1第12戦オランダGPは、8月21日(金)からザントフォールト・サーキットで開催される。約4週間のサマーブレイクを終えてシーズンが再開される一戦で、2026年はスプリントフォーマットが採用される。

    初日の8月21日(金)はフリー走行1回目(FP1)に続いてスプリント予選を実施。22日(土)はスプリントと決勝レースのスターティンググリッドを決める予選が行われ、23日(日)に72周の決勝レースが開催される。

    舞台となるザントフォールト・サーキットは、オランダ北海沿岸の砂丘地帯に位置する全長4.259kmのテクニカルコースである。起伏に富んだ高速コーナーが連続し、コース幅も比較的狭いため、ドライバーに高い精度が要求される。

    最大の特徴はバンク角を持つコーナーだ。ターン3のフーゲンホルツボフトと最終ターンのアリー・ルイエンダイクボフトには大きなバンクが設けられており、特に最終コーナーでは高い速度を維持したままホームストレートへと加速していくことができる。

    一方で、コース幅の狭さからオーバーテイクは容易ではない。ホームストレートからターン1への進入が最大のチャンスとなり、予選順位とトラックポジションがレース展開を大きく左右する。北海に近い立地から天候が変化しやすく、強い風によってマシンバランスが変わることもザントフォールト特有の難しさとなる。

    2026年オランダGPでピレリは、C2をハード、C3をミディアム、C4をソフトとして選択した。高速の右コーナーや大きなバンクではタイヤに高い負荷がかかるため、デグラデーションを管理しながらペースを維持することが重要になる。

    さらに今回はスプリント開催のため、通常のグランプリとは異なり、チームがマシンを調整できるフリー走行は金曜日の1時間のみとなる。サマーブレイク明け最初の走行でセットアップを仕上げ、そのままスプリント予選に臨む必要があり、FP1での作業効率が週末全体を左右する。

    2026年大会はザントフォールトで開催される最後のF1オランダGPとなる予定であり、2021年の復活以来続いてきたイベントにひと区切りがつく。地元マックス・フェルスタッペンにとっても特別な意味を持つ週末となる。

    2026年F1オランダGP スケジュール
    ■ 8月21日(金)
    フリー走行1:19:30~20:30(現地時間:12:30~13:30)
    スプリント予選:23:30~24:14(現地時間:16:30~17:14)

    ■ 8月22日(土)
    スプリント:19:00~(現地時間:12:00~)
    予選:23:00~24:00(現地時間:16:00~17:00)

    ■ 8月23日(日)
    決勝:22:00~(現地時間:15:00~)

    フジテレビNEXT 放送スケジュール(生放送)
    フジテレビNEXTでは、2026年F1第12戦オランダGPの全セッションを生中継する。

    ■ 8月21日(金)
    フリー走行1:19:20~21:40
    解説:山本雅史、白幡勝広
    実況:堀池亮介

    スプリント予選:23:20~26:00
    解説:山本雅史、白幡勝広
    実況:堀池亮介

    ■ 8月22日(土)
    スプリント:18:30~22:30
    解説:川井一仁、白幡勝広
    実況:堀池亮介

    予選:22:50~27:00
    解説:川井一仁、白幡勝広
    実況:堀池亮介

    ■ 8月23日(日)
    決勝:21:20~27:00
    解説:川井一仁、白幡勝広
    実況:堀池亮介

    FOD 配信スケジュール
    FODでは2026年F1第12戦オランダGPの全セッションをライブ配信する。また、フジテレビが8月19日に発表した2026年シーズン後半戦の無料配信拡大により、オランダGPではフリー走行1回目(FP1)とスプリント予選が登録不要で無料配信される。

    無料配信ではFOD限定のコメンタリーが使用される。

    ■ 8月21日(金)
    フリー走行1:19:20~(無料配信)
    スプリント予選:23:20~(無料配信)

    ■ 8月22日(土)
    スプリント:18:30~
    予選:22:50~

    ■ 8月23日(日)
    決勝:21:20~

    なお、FODでは第12戦オランダGPから最終戦アブダビGPまで、2026年F1シーズン後半戦のフリー走行とスプリント予選を全戦無料配信する。FODへの登録は不要で、スプリントが実施されないグランプリでは基本的にフリー走行が無料配信の対象となる。

    オランダGP決勝は地上波でハイライト放送
    第12戦オランダGPでは、決勝終了後に地上波でハイライト番組が放送されることも決定している。

    番組タイトルは『2026 F1 オランダグランプリ 決勝ハイライト(Formula 1 Heineken Dutch Grand Prix 2026)』で、8月23日(日)24時15分から24時55分までフジテレビほかで放送予定。ライブ中継ではないものの、オランダGP決勝を地上波で楽しめる機会が設けられる。

    ■ 8月23日(日)
    2026 F1 オランダグランプリ 決勝ハイライト:24:15~24:55
    放送:フジテレビほか

    サマーブレイクを経て再開される2026年F1シーズン。スプリント開催に加え、ザントフォールトで最後となるオランダGPは、フジテレビNEXTとFODで全セッションをライブ視聴できるほか、FP1とスプリント予選はFODで無料配信され、決勝後には地上波でハイライト番組も放送される。

    ザントフォールト・サーキット
    FORMULA 1 HEINEKEN DUTCH GRAND PRIX 2026
    オランダグランプリ
    サーキット名: ザントフォールト・サーキット
    コース全長: 4.259km
    周回数:72
    レースディスタンス:306.587km
    ラップレコード:1分11秒097(ルイス・ハミルトン / 2021年)

  • 角田裕毅のF1復帰に海外識者注目「キャリアを左右する重要な一戦」

    角田裕毅のF1復帰に海外識者注目「キャリアを左右する重要な一戦」

    角田裕毅が2026年F1オランダGPでレーシングブルズからグランプリ復帰を果たす。海外メディア『The Race』は、今回の参戦について「キャリアを左右する重要な一戦」になる可能性があると指摘。将来のF1レギュラーシート獲得に向けて、自らの価値を改めて証明する大きなチャンスになると分析している。

    角田裕毅のF1復帰は、レッドブル・レーシングのアイザック・ハジャーが手首の負傷によってオランダGPを欠場することから実現した。

    ハジャーの代役にはレーシングブルズのリアム・ローソンが起用され、その空いたシートにレッドブルのリザーブドライバーを務める角田裕毅が入る。

    レッドブル・レーシングの正式なリザーブドライバーである角田裕毅ではなく、今季レーシングブルズでレースを続けているローソンをハジャーの代役に選んだ判断には、おおむね理解を示す声がある。一方で、19歳のアービッド・リンドブラッドを抜擢すべきだったとの意見もあり、『The Race』の識者たちは、今回の人事がローソンだけでなく、角田裕毅の今後のキャリアにとっても重要な意味を持つと分析している。

    角田裕毅にはレーシングブルズ参戦がむしろ好機
    エド・ストローは、ハジャーの代役として角田裕毅ではなくローソンをレッドブル・レーシングに起用した判断を妥当だと評価した。

    代役ドライバーが必要になった場合、チームとしては短期間でマシンに適応し、確実に仕事をこなせる人物を選ぶのが現実的だ。現在のレッドブル陣営では、ローソンがその条件を最も満たしているという。

    特に2026年のF1パワーユニットでは、エネルギー回生とデプロイメントへの対応が重要となっている。ローソンはレーシングブルズで今季のレースを戦い続けており、タイヤへの習熟度やレース勘に加え、新世代パワーユニットを実戦で扱ってきた経験がある。

    そのため、正式なレッドブル・レーシングのリザーブドライバーである角田裕毅ではなく、ローソンを昇格させる判断は理にかなっているとストローは分析する。

    一方、角田裕毅にとっても、レーシングブルズから参戦することはむしろプラスになる可能性があるという。

    レーシングブルズはオランダGPを迎える時点でミッドフィールド屈指の競争力を持っており、角田裕毅にとっても過去にF1で自身の力を最も発揮してきた環境だ。今後のF1レギュラーシートを求めて他チームにも目を向けなければならない状況を考えれば、レッドブルで厳しい戦いを強いられるよりも、レーシングブルズでミッドフィールド上位を争って存在感を示す方が、自身の将来にとって有利になる可能性がある。

    角田裕毅にとって「キャリアを左右する重要な一戦」
    ジャック・ベニオンはさらに踏み込み、今回のF1復帰が角田裕毅のキャリアにおける極めて重要な局面になると指摘した。

    角田裕毅は2025年にレッドブルのレギュラーシートを失った後、2026年のインディカー参戦候補として名前が挙がったものの、実現には至らなかった。しかし現在も、将来的なインディカー転向の可能性が取り沙汰されている。

    インディ500ウイナーのフェリックス・ローゼンクヴィストがマクラーレンへ移籍することで、メイヤー・シャンク・レーシングには空席が生まれることになり、その候補として角田裕毅が浮上しているという。

    メイヤー・シャンク・レーシングはホンダエンジンを使用しており、幅広いバックグラウンドからドライバーを起用してきたチームでもある。ベニオンは角田裕毅のドライビングスタイルもインディカーに適していると評価する。

    ただし、今回のオランダGPで角田裕毅が強いパフォーマンスを披露すれば、状況が変わる可能性がある。

    現時点でハジャーがオランダGP以降も欠場することを示す材料はない。それでも、たとえ今回限りのF1復帰だったとしても、角田裕毅が十分なインパクトを残せれば、将来のF1レギュラーシート獲得への道を再び開くことも考えられる。

    ベニオンは、角田裕毅がインディカーへ転向した場合、その後F1で再びレースをする可能性は極めて低くなると指摘。今回のオランダGPは、角田裕毅の今後のキャリアを左右しかねない重要な一戦だと位置づけている。

    角田裕毅 F1 オランダGP

    ローソンにはレッドブルで「2度目のチャンス」
    元F1テクニカルディレクターのゲイリー・アンダーソンも、今回のローソン起用を支持している。

    ローソンは以前レッドブル・レーシングに昇格した際、十分な時間を与えられないままシートを失った。そのため今回のオランダGPは、自身の本当の実力を示す2度目のチャンスになる。

    こうした機会を再び得られるドライバーは多くないだけに、ローソンにとっては結果につなげる必要のある重要な週末となる。

    一方、レーシングブルズでローソンとコンビを組む19歳のリンドブラッドをレッドブルに昇格させる案について、アンダーソンは時期尚早との見方を示した。

    ルーキーイヤーに好パフォーマンスを見せているリンドブラッドには、まだ細かなミスを修正しながら経験を積む時間を与えるべきであり、チャンスはいずれ訪れるという考えだ。

    「リンドブラッドを起用すべきだった」との異論
    これに対し、ジョシュ・サティルは今回こそリンドブラッドをレッドブルで試すべきだったと主張している。

    リンドブラッドはF1ルーキーながら開幕から速さを示しており、予選では平均してローソンから約0.1秒遅れる程度のパフォーマンスを発揮。スパのようにローソンを明確に上回った週末もあった。

    サティルは、ローソンが将来的にレッドブル・レーシングのレギュラーシートへ戻る可能性について懐疑的だ。最初の昇格がうまくいかなかったことが大きく、角田裕毅についても同様にレッドブルへの恒久的な復帰は難しいと見ている。

    それならば、将来的なレッドブル候補とみられるリンドブラッドをフェルスタッペンの隣で走らせ、その適性を早い段階で確認する方法もあったというわけだ。

    過去にはフェラーリが2024年サウジアラビアGPで、当時F1未経験だったオリバー・ベアマンをカルロス・サインツJr.の代役として抜擢した。また、メルセデスも2020年サヒールGPでルイス・ハミルトンの代役としてジョージ・ラッセルを起用し、レギュラー昇格より1年以上前にトップチームでその実力を試す機会を与えた。

    大胆なドライバー起用を特徴としてきたレッドブルだけに、経験を優先した今回の判断について、サティルは新体制のレッドブルが従来の方針から変化し始めた最初の兆候なのではないかとの疑問も投げかけている。

    ローソンも過去の評価を覆す絶好の機会
    マット・ビアーは、ローソンにとって今回のレッドブル復帰が過去の評価を覆す重要な機会になると分析した。

    ローソンの最初のレッドブル・レーシング在籍は短期間で終わり、その内容も厳しいものだった。その経験が、その後のローソンのF1キャリアを評価するうえでも大きな影を落としてきた。

    今季レーシングブルズに戻ってからは安定したパフォーマンスを披露しており、ドライバーズランキングでは9位。トップ4チーム以外のドライバーとして最上位につけ、レッドブルで自身の後任となったハジャーにも迫る位置にいる。チーム側も今季のローソンの成長を高く評価している。

    しかし、リンドブラッドがF1参戦直後から存在感を示し、さらにレッドブル育成のニコラ・ツォロフが初のFIA F2フルシーズンで選手権をリードしている状況を考えれば、ローソンの将来が安泰とは言えない。

    だからこそ、今回のレッドブル復帰には大きな意味がある。フェルスタッペンとの差を一定範囲に抑える、あるいは慣れていないマシンながらハジャーがこれまで見せてきた水準に近いパフォーマンスを披露できれば、ローソンは自身を取り巻く評価を大きく変える可能性がある。

    ハジャーの負傷によって突然巡ってきたF1オランダGPは、角田裕毅とローソンの双方にとって今後のキャリアを左右する可能性を秘めた週末となる。ローソンにはレッドブルで失った評価を取り戻す機会が与えられ、角田裕毅には慣れ親しんだレーシングブルズで自らの速さと存在価値を改めて示し、F1での未来を切り開くチャンスが巡ってきた。

  • マクラーレンF1 2027年型でショートホイールベース廃止 ピアストリ苦戦で方針転換

    マクラーレンF1 2027年型でショートホイールベース廃止 ピアストリ苦戦で方針転換

    マクラーレンは、2027年F1マシンでホイールベースを延長する方針を明らかにした。2026年型MCL40では軽量化を狙って規則上限より短いホイールベースを採用したが、来季はより上限に近い車体寸法へと設計思想を転換する。

    エンジニアリングディレクターのニール・ホールディによれば、短いホイールベースは最低重量への対応という明確な目的を持って採用されたものだった。

    一方、今季のMCL40ではグリップ面が課題となり、特にオスカー・ピアストリはチームメイトのランド・ノリスほどマシンの特性を引き出せずにいる。マクラーレンは開発を通じて軽量化を進めたことで、2027年には車体を長くし、フロア下面の空力開発により大きな自由度を持たせる方向へ進む。

    MCL40で採用した短いホイールベース
    2026年のF1技術規則では、従来のグラウンドエフェクト時代と比較してマシンの機敏さが重視され、車体寸法も変更された。マクラーレンはその新しい規則に対し、許容される最大寸法までホイールベースを伸ばすのではなく、よりコンパクトなMCL40を設計した。

    ホールディは、この判断の大きな理由が重量だったと説明する。

    「マシンを短くしたのは、その方が軽くなるからだ。重量規則への対応が非常に、非常に大きなチャレンジになることは分かっていた」

    「それによって良いスタートを切ることができ、ほかの領域にパフォーマンスを投資することができた」

    F1マシンでは、わずかな性能向上を追求するための新しい部品や構造が重量増につながることがある。そのため設計段階で重量に余裕を作ることは、その後の開発自由度を確保するうえで重要となる。

    「ほんのわずかなパフォーマンス向上を狙う場合でも、あちこちで少しずつ重量が増えることがよくある。だから早い段階でその重量を節約できたことで、その一部をパフォーマンスのために使うことができた」

    「そしてマシンを開発していくなかで、さらに重量を削ることもできた」

    つまり短いホイールベースは単純な失敗ではなく、2026年規則への対応においてマクラーレンが意図的に選択したトレードオフだった。

    ピアストリが苦戦したMCL40のグリップ特性
    一方、MCL40はシーズン前半を通じてグリップ面に課題を抱えてきた。

    2025年には最終戦アブダビGPまでF1ワールドチャンピオン争いを繰り広げたピアストリだが、2026年は前年ほど安定してパフォーマンスを発揮できていない。

    メルセデスがシーズン序盤から高い競争力を発揮していることも成績に影響しているが、同じMCL40をドライブするノリスと比較しても、ピアストリがマシンの特性への適応に苦しんでいることは今季の課題のひとつとなっている。

    短いホイールベースは車体の軽量化や機敏さというメリットをもたらす一方、空力開発に使用できる車体下面の面積は小さくなる。マクラーレンは開発を進めるなかで、この部分にさらなるパフォーマンスを引き出せる可能性を見いだした。

    2027年はホイールベースを延長
    ホールディは、2027年型マシンではMCL40よりもホイールベースを長くすることを明言した。

    「来年については、最終的にもっと長いマシンになる。空力的に見れば、そうすることでアンダーボディに使える面積をわずかに大きくできるからだ」

    「アンダーボディの開発をさらに進めていくなかで、それをうまく扱えるようになってきている」

    マシンを長くすれば単純に性能が向上するわけではなく、重量や機敏性とのトレードオフが発生する。しかしMCL40の開発によってさらなる軽量化を実現したことで、マクラーレンは2027年型では車体寸法を拡大する余地を得たことになる。

    ホールディは、2026年型を設計した当初の判断についても説明している。

    「当初は、マシンを短くしてもラップタイムという点で大きなペナルティにはならないように見えていた」

    この発言からも、マクラーレンが2026年のコンセプトを全面的な失敗と捉えているわけではないことが分かる。当初は重量面のメリットを優先したものの、実際の開発を通じて空力面でより大きな可能性を見いだし、2027年に向けてバランスを変えるという判断だ。

    「短さ」からフロア開発の余地を重視する方向へ
    2026年型MCL40の短いホイールベースは、最低重量への対応という明確な狙いから生まれた。しかしシーズンを通じた開発で軽量化が進んだことで、マクラーレンはそのメリットを維持する必要性が薄れつつある。

    その一方で、より長いホイールベースによってアンダーボディの利用可能面積を拡大すれば、フロアを中心とした空力開発の可能性を広げられる。

    ピアストリとノリスがMCL40で経験しているグリップ面の課題を踏まえながら、マクラーレンは2027年型で重量を優先したコンパクトな設計から、より大きな空力開発の余地を持つパッケージへと軸足を移すことになる。

  • ジョージ・ラッセル F1王座争いで59点差 クルサード「考えすぎ」に警告

    ジョージ・ラッセル F1王座争いで59点差 クルサード「考えすぎ」に警告

    ジョージ・ラッセルは、2026年F1シーズン前半戦を終え、メルセデスのチームメイトであるアンドレア・キミ・アントネッリに59ポイント差をつけられている。開幕戦オーストラリアGPを制した好スタートから一転、タイトル争いでは追う立場となった。

    元F1ドライバーのデビッド・クルサードは、ラッセルが不運やトラブルを重ねるなかで「考えすぎ」に陥る危険性を指摘。

    一方、経験の浅いアントネッリについては、若さゆえに余計なことを考えず、本能的にドライブできていることが強みになっているとの見方を示した。

    開幕戦勝利から一転 ラッセルを襲った不運
    ラッセルはメルボルンで行われた開幕戦を制し、2026年シーズンを最高の形でスタートさせた。しかし、その後の勝利は1回にとどまっている。

    対照的にアントネッリは6勝を挙げ、ドライバーズランキング首位を確立。シーズン折り返し時点でラッセルとの差は59ポイントまで広がった。

    純粋な速さでアントネッリが上回る場面もあった一方、ラッセルは信頼性トラブルやコース上でのアクシデントにも見舞われてきた。クルサードは『Up To Speed』ポッドキャストで、ラッセルの前半戦について厳しい状況だったと振り返った。

    「ひどいシーズンになっている。ひとりの人間に、いったいどれだけ不運が続くんだというくらいだ」

    「その不運については、チームが解決しなければならない部分もある。一方で、ジョージは今、勢いに乗れていない」

    クルサードが警告「考えすぎ」の悪循環
    クルサードが懸念しているのは、不運そのものだけではない。結果が出ない状況が続くことで、ラッセルがドライビングについて必要以上に考え始める可能性があると指摘した。

    その状況をクルサードはテニスに例えている。

    「テニス選手が高く上がったボールを迎えて、簡単なスマッシュを決めればポイントを取れるという場面があるだろう。それなのに、考えすぎてネットにかけてしまうことがある」

    「ジョージは今、そういうシーズンの段階にいる。キミは本能的にドライブしていて、バルセロナを除けば信頼性にもかなり恵まれている。一方でジョージは、ずっとパンチを受け続けている」

    ラッセルにとって経験は本来、大きな武器になる。だが、クルサードはタイトル争いという極度のプレッシャーのなかでは、その経験が逆に思考を複雑にする可能性もあると考えている。

    アントネッリは「知らないことを知らない」若さが武器
    2026年のタイトル争いでアントネッリが持つ強みについて、クルサードはF1経験の少なさそのものがプラスに働いている可能性を挙げた。

    「彼(ラッセル)は少し年上で、経験がある。経験はもちろん良いことだ。ただ、若さの利点というのは、自分が何を知らないのかさえ知らないことにある」

    「経験のマイナス面は、どれほど難しいのか、どんな課題があるのか、勢いがどれほど重要なのか、そういうことを全部知っていることだ」

    アントネッリにとって、F1でタイトルを争うこと自体が初めての経験だ。そのため、過去の失敗やタイトル争いの難しさを必要以上に意識せず、目の前のレースに集中できる。

    対するラッセルは、F1で積み重ねてきた経験があるからこそ、59ポイントという数字やシーズンの流れ、失ったポイントの意味まで理解できる。その違いが心理面に影響する可能性をクルサードは指摘している。

    59点差から逆転は可能も「ロッキーでも書かない」
    もちろん、59ポイント差は数学的に逆転不可能な数字ではない。クルサードも、過去のF1タイトル争いを振り返れば、大きなポイント差から流れが変わる可能性があることは認めている。

    「昨年のマックス・フェルスタッペンを見ても分かるように、このポイント差からでも挽回することはまだ可能だ」

    しかし、ラッセルが今季経験してきたトラブルや不運まで考慮すれば、実際に逆転タイトルを実現するハードルは極めて高いという。

    クルサードは映画『ロッキー』シリーズを引き合いに出し、ラッセルの置かれた状況を表現した。

    「でも、これだけパンチを受け続けたところから逆転するような『ロッキー』の映画は、シルベスター・スタローンだって書かないだろう」

    「だから、ジョージにとっては人間的な強さを築く一年になるだろう」

    メルセデス内のタイトル争いで問われるラッセルの立て直し
    メルセデスが2026年F1で高い競争力を示すなか、ラッセルにとって最大の比較対象は同じマシンを駆るアントネッリだ。

    59ポイント差という状況では、ラッセル自身が速さを取り戻すだけでは十分ではない。信頼性問題を減らし、取りこぼしを防ぎながら、アントネッリより多くのポイントを継続的に獲得していく必要がある。

    クルサードの指摘は、ラッセルの能力そのものを疑問視するものではなく、不運が続いたことで生じる心理的な悪循環への警告と言える。タイトル争いの経験を持たないアントネッリが本能的に結果を積み重ねる一方、ラッセルには経験を「考えすぎ」ではなく立て直しの武器に変えられるかが問われる。

    シーズン後半戦、ラッセルが59ポイント差をどこまで縮められるのか。逆転タイトルへの道のりは厳しいが、クルサードが語るように、この苦境をどう乗り越えるかはラッセルのF1キャリアにとって重要な意味を持つことになりそうだ。

  • フェルスタッペンのレッドブルF1契約延長で明暗 ドライバー市場の勝者と敗者

    フェルスタッペンのレッドブルF1契約延長で明暗 ドライバー市場の勝者と敗者

    マックス・フェルスタッペンがレッドブル・レーシングとの契約を2030年まで延長したことで、F1のドライバー市場をめぐる構図は大きく変化した。表面的には「残留」という現状維持だが、1年以上にわたって続いてきた移籍の可能性が事実上消えた影響は、ライバルチームや複数のドライバーにまで及ぶ。

    フェルスタッペンの去就は、メルセデスやアストンマーティンをはじめとするトップチームの将来計画と密接に結びついてきた。

    それだけに今回の長期契約は、レッドブルにとって最大の戦力を確保したというだけではなく、F1全体のドライバー市場を中期的に固定化させる可能性を持つ決定でもある。

    The Raceは、今回の大型契約によって恩恵を受ける「勝者」と、選択肢を失うことになった「敗者」を分析している。

    勝者:レッドブル・レーシング
    最大の勝者がレッドブル・レーシングであることに疑いの余地はない。

    契約の金銭的な条件は公表されていないものの、フェルスタッペンを2030年まで引き留めるためには巨額の報酬が必要になったとみられる。また、フェルスタッペンが強い関心を持つF1以外のレース活動についても、これまで以上に自由度が認められている可能性がある。

    それでも、レッドブルにとってその代償を支払う価値は十分にある。

    近年は主要スタッフの流出が続き、かつての圧倒的な強さにも陰りが見えている。しかし、チーム最大の資産であり、現在のF1で最も価値の高いドライバーのひとりであるフェルスタッペンを失うという最大のリスクを取り除くことに成功した。

    2027年型マシンの競争力が著しく低ければ再び将来をめぐる憶測が生まれる可能性はある。それでも今回の契約延長は、レッドブルが今後もF1のトップチームとして戦い続ける意思を示す大きな成果となった。

    敗者:カルロス・サインツJr.やオスカー・ピアストリら
    フェルスタッペンの残留によって選択肢を狭められたのが、将来的なトップチーム移籍を視野に入れるドライバーたちだ。

    カルロス・サインツJr.がウィリアムズとの新たな複数年契約を発表したのは、フェルスタッペンの契約延長発表の前日だった。

    仮にフェルスタッペンがレッドブルを離れたとしても、サインツJr.がその後任候補の筆頭だったとは限らない。しかし、トップチームでひとつシートが空けば、そこから連鎖的な移籍が発生する可能性がある。サインツJr.にとっては、その動きが再び上位チームへ戻るチャンスにつながる可能性があった。

    同じことはオスカー・ピアストリにも当てはまる。仮にマクラーレンでの立場に不満を抱き、自らを中心とするチームへの移籍を検討することになった場合、レッドブルは有力な選択肢になり得た。しかしフェルスタッペンが2030年まで残留することで、その可能性は大幅に低下した。

    さらに今後レッドブル入りを狙うドライバーは、移籍できたとしてもフェルスタッペンと直接対決しなければならない。

    勝者:ローラン・メキース
    チーム代表ローラン・メキースにとっても、今回の契約延長は大きな成果である。

    メキース体制となったレッドブルは2025年後半に好成績を残し、2026年も一定の競争力を維持している。一方で、チームを長年支えてきた重要人物の流出は続いている。

    レースエンジニアのジャンピエロ・ランビアーゼはマクラーレンへの移籍が決まり、チーフエンジニアのポール・モナハンについてもキャデラックへの移籍が報じられている。

    そうした状況でも、メキースはフェルスタッペンをチームに残すことに成功した。

    The Raceは、クリスチャン・ホーナー体制が続いていた場合に今回の契約延長が実現していたかについて疑問を呈しており、フェルスタッペンの長期残留はメキース体制への信任を示す材料にもなると評価している。

    マックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)

    敗者:アストンマーティン
    アストンマーティンにとって、フェルスタッペン獲得は現時点で最優先事項ではない。2026年はマシンとホンダ製パワーユニットの競争力向上という、より差し迫った課題を抱えている。

    それでもフェルスタッペンが市場から消えたことは、長期的なドライバー戦略に影響する。

    エイドリアン・ニューウェイの下でシャシーが大幅に改善し、ホンダF1パワーユニットもトップレベルに近づいたとしても、アストンマーティンがトップクラスのドライバーを簡単に獲得できる状況ではなくなった。

    フェルスタッペン本人を獲得できなかったとしても、彼の移籍によって他チームから押し出されたトップドライバーを狙うという選択肢は存在した。

    しかし主要ドライバーの多くが長期契約を結んでいる現在、その連鎖も期待しにくい。将来的にフェルナンド・アロンソが引退した際、アストンマーティンはトップクラスではなく、中団勢から後任を探さなければならない可能性がある。

    もちろん、それが大きな問題になるのはアストンマーティンが実際にタイトルを争えるマシンを作れるようになった場合だ。

    勝者:ジョージ・ラッセル
    ジョージ・ラッセルにとっても、フェルスタッペンのレッドブル残留は朗報と言える。

    これまでメルセデスにはフェルスタッペン獲得の可能性がたびたび取り沙汰されてきた。もし実現する場合、2026年に好調なアンドレア・キミ・アントネッリではなく、ラッセルのシートが対象になる可能性が高いとみられていた。

    その脅威が今回の契約によって消えた。

    2026年のラッセルは必ずしも順調なシーズンを送っているわけではないが、中期的に見ればメルセデスは依然として最適な環境のひとつだ。

    自身初のF1ワールドチャンピオンを目指すのであれば、アントネッリとのチーム内争いで主導権を取り戻しながら、メルセデスの競争力が維持されることに期待するのが最も現実的な道となる。

    2026年中の逆転は難しいとしても、2027年には再びチャンスが訪れる可能性がある。そしてメルセデスがラッセルに代えて獲得する合理的な理由を持つ最大の候補だったフェルスタッペンは、少なくとも当面市場から姿を消した。

    敗者:レッドブル系ドライバー
    フェルスタッペンの残留は、レッドブルの育成システムに所属するドライバーたちにも大きな意味を持つ。

    現在レッドブル・レーシングで走るアイザック・ハジャーをはじめ、アービッド・リンドブラッド、リアム・ローソン、F2で戦うニコラ・ツォロフらにとって、将来的に狙えるレッドブルのシートがひとつ減ったことになる。

    もちろんフェルスタッペンが離脱していた場合、レッドブルが外部からトップドライバーを獲得した可能性も高い。それでも、少なくとも昇格の可能性が広がる余地はあった。

    もうひとつの問題は、彼らがレッドブル・レーシングへ昇格した場合、フェルスタッペンと同じチームで戦わなければならないことだ。

    過去の例が示してきたように、フェルスタッペンとの直接比較は若手ドライバーにとって極めて厳しい試練となる。トップチームへの昇格がキャリア最大のチャンスである一方、それがキャリアを大きく左右するリスクにもなり得る。

    勝者:F1
    F1そのものにとっても、フェルスタッペンの残留には大きな意味がある。

    フェルスタッペンは2026年シーズンを通じて、現在のF1レギュレーションやレースのあり方に対する不満を繰り返し口にしてきた。そのため、現行レギュレーションのサイクルが終了する前にF1から離れる可能性も現実味を持って語られていた。

    しかし今回、2030年までレッドブルと契約した。

    今後もF1の方向性について厳しい発言を続ける可能性はあるものの、現役最強クラスのドライバーが競技そのものへの不満を理由に離脱するという、F1にとって大きなダメージになり得る事態はひとまず回避された。

    その意味でフェルスタッペンの長期残留は、現在のF1に対する一定の信任票とも解釈できる。

    敗者:それでもF1
    一方で、同じF1が「敗者」でもあるという皮肉な側面もある。

    かつてF1のドライバー市場では、トップドライバーの移籍によって大きな連鎖が起きることが珍しくなかった。しかし近年は、ドライバーが長期契約による経済的・競技的な安定を優先し、チーム側もそれを提供する傾向が強まっている。

    ルイス・ハミルトンのフェラーリ移籍は市場を大きく動かしたが、むしろ近年では例外的なケースになりつつある。

    特にトップチームでは、年齢的に将来が注目されるハミルトンのシートと、頻繁に交代が起きてきたレッドブルのセカンドシートを除けば、中期的にラインアップがほぼ固定されている。

    新しいチームへの適応の難しさや長期契約がもたらすメリットもあり、現在のF1ドライバー市場は、かつてのような「椅子取りゲーム」から遠ざかりつつある。

    フェルスタッペンの2030年までの契約延長は、レッドブルにとって絶対的エースを確保する大きな勝利となった。その一方で、彼の移籍を起点として起こり得たトップチーム間の大規模な人材移動も封じることになった。

    ひとりのドライバーが同じチームに残るという一見シンプルな決断だが、その影響はレッドブルだけにとどまらない。フェルスタッペンの長期残留によって、F1のドライバー市場は今後数年間、これまで以上に動きにくい状況へと向かうことになりそうだ。

    【関連】
    ・マックス・フェルスタッペン レッドブルF1と2030年まで契約延長 移籍説に終止符

  • ホンダF1新スペックPU 30馬力増に届かず? 初テストで期待下回ったとの報道

    ホンダF1新スペックPU 30馬力増に届かず? 初テストで期待下回ったとの報道

    アストンマーティンとホンダが2026年F1シーズン後半戦の巻き返しに向けて投入する新スペック・パワーユニット(PU)は、ハンガロリンクで行われた初テストで明確な前進を確認した一方、当初期待されていた性能向上には届かなかったと報じられている。

    新PUは今週末のF1オランダGPで実戦投入される予定だ。アストンマーティンはハンガリーGPで大幅改良型シャシー「AMR26B」を投入し、マシン側では大きな改善を果たした。

    次に焦点となるのは、シーズン前半から大きな課題となってきたホンダPUがどこまで差を縮められるかだ。

    ホンダが狙った「30馬力増」 初期テストでは届かず
    イタリア版『Motorsport.com』の情報として伝えられたところによれば、ホンダは新スペックPUによって約30馬力の出力向上を目標としていた。

    しかし、7月にハンガロリンクで非公開に行われたテストでは、得られた数値がその目標を「大幅に下回った」という。

    それでも、従来仕様と比較すれば明確な「ステップアップ」は確認されているとされる。問題は、その改善幅がアストンマーティン側が期待するラップタイム約0.5秒の短縮につながる水準に達しているかどうかだ。

    今回のアップデートは内燃機関(ICE)が中心となる。燃焼効率やフリクション、ターボ周辺などの改善に重点が置かれる一方、電気系についても改良が盛り込まれる。

    ハンガリーでのテストは実戦投入前にデータを収集する重要な機会となったが、新PUの能力を最大限に引き出すには、複数のグランプリを通じたセッティングと制御の最適化が必要になる可能性がある。

    AMR26Bとは異なり「即効性」は限定的か
    アストンマーティンはハンガリーGPでAMR26Bを投入し、従来型から推定約1.8秒という大幅なラップタイム改善を果たした。

    シャシー側のアップデートが投入直後から効果を示したのに対し、PUについては事情が異なる。ICEそのものの性能だけでなく、エネルギーマネジメントやドライバビリティ、冷却、車体との統合などを最適化する必要があり、性能を完全に引き出すまでには時間を要する。

    その意味で、オランダGPは新スペックPUの完成形を評価する場というより、ホンダにとって実戦環境での「回復フェーズ」を本格的に開始する週末になる。

    さらにフェルナンド・アロンソとランス・ストロールにはPU交換によるグリッド降格ペナルティを受ける可能性もあり、その場合、ザントフォールトでの週末は結果以上に新PUのデータ収集を優先する意味合いが強まる。

    後方グリッドからのスタートとなれば、雨などによる波乱がない限りポイント獲得のハードルは高くなる。

    ホンダにはライバル以上の開発機会
    ホンダが抱える課題の大きさは、FIAの追加開発機会にも表れている。

    2026年F1パワーユニット規則では、基準となるICE性能から一定以上遅れているメーカーに対して、追加の開発機会を認めるADUO(Additional Development and Upgrade Opportunities)が設けられている。

    ホンダはベンチマークとされるレッドブル・フォードのICEに対して10%以上の差があると評価され、追加で約1100万ドルの開発費と230時間のベンチテストが認められているとされる。

    これはホンダにとって大きなアドバンテージである一方、ライバルが開発を停止するわけではない。

    フェラーリとアウディにも2026年と2027年にそれぞれ複数回のアップデート機会があり、メルセデスにもシーズンごとの開発枠が与えられている。そのため、ホンダが追いかけている目標そのものも動き続けることになる。

    ただし、現在の性能差が大きいからこそ、ホンダにはライバルよりも大きな改善余地が残されているとも言える。

    ホンダF1

    ニューウェイの指摘と重なるホンダの出遅れ
    ホンダが2026年シーズン序盤から苦戦している背景には、新レギュレーションへの準備期間の不足もある。

    ホンダは一度F1から撤退する方針を決め、その後に2026年からアストンマーティンと組んで正式復帰することを決断した。そのため、新規則PUの開発開始時点でメルセデスやフェラーリなどに対して遅れを取った。

    さらに、アストンマーティンのチーム代表兼マネージングテクニカルパートナーを務めるエイドリアン・ニューウェイはシーズン序盤、ホンダ側にF1経験の少ない人材が配置されていたことも課題のひとつだったと指摘していた。

    ホンダ側もその後、F1プロジェクトに十分な経験を持たないスタッフがいたことを認めており、現在は開発体制そのものを含めて立て直しを進めている。

    過去を振り返れば、ホンダが2015年にマクラーレンとF1へ復帰してから、レッドブルとともに勝利を争えるPUを完成させるまでには数年を要した。

    ただし今回は追加開発制度が存在し、アストンマーティンとのワークス体制も構築されている。前回と条件は大きく異なる。

    ハンガリーで確認された数値が当初の30馬力という目標を大幅に下回ったとしても、重要なのは新スペックが従来型から明確な前進を果たしている点だ。

    ザントフォールトで投入される新PUがどこまで実戦で性能を発揮できるのか。そしてホンダが追加開発枠を生かし、シーズン後半にどこまでトップメーカーとの差を縮められるのか。AMR26Bで改善の兆しを見せたアストンマーティンにとって、次の焦点はホンダ側の開発スピードとなる。

    【関連】
    ・ホンダF1 新スペックPUをオランダGP投入「最大の弱点はパワー性能」

  • マックス・フェルスタッペン レッドブルF1と2030年まで契約延長 移籍説に終止符

    マックス・フェルスタッペン レッドブルF1と2030年まで契約延長 移籍説に終止符

    マックス・フェルスタッペンがレッドブル・レーシングとの契約を2030年末まで延長した。チームが8月20日に正式発表し、これまで取り沙汰されてきた他チームへの移籍説に事実上の終止符が打たれた。

    従来の契約は2028年末までだったが、今回の新契約によってフェルスタッペンはさらに2年間レッドブル・レーシングに残留する。2026年の新レギュレーション下でチームが苦戦するなかでも長期的な将来を託す決断を下し、ローラン・メキース率いる新体制への信頼を明確に示した形だ。

    フェルスタッペンとレッドブルの成功物語は2030年まで継続
    フェルスタッペンは2014年にレッドブル・ジュニアチームに加入し、2016年シーズン途中に当時のトロロッソからレッドブル・レーシングへ昇格。チームでの初戦となったスペインGPでいきなり優勝を飾った。

    それ以降、フェルスタッペンとレッドブル・レーシングはF1を代表するパートナーシップを築いてきた。これまでにフェルスタッペンは4度のドライバーズタイトルを獲得し、チームとともに2度のコンストラクターズタイトルを達成。レッドブルでの通算勝利数は71勝に達している。

    2024年に4年連続となるドライバーズタイトルを獲得したフェルスタッペンだが、2025年は終盤に猛追したものの、ランド・ノリスにわずか2ポイント届かず、5連覇を逃した。

    さらに2026年は新たなF1レギュレーションの導入に伴い、レッドブル・レーシングが序列を落としたことで、フェルスタッペンの将来を巡る憶測が再燃。2028年まで契約を残していたものの、他チームへの移籍の可能性が繰り返し報じられてきた。

    今回の2030年までの契約延長によって、そうした移籍説には明確な回答が示されたことになる。

    フェルスタッペン「再びトップに戻ることが究極の目標」
    フェルスタッペンは契約延長について、レッドブル・レーシングにはトップへ返り咲くために必要な人材がそろっていると強調した。

    「契約を延長できて本当にうれしい。僕たちには最高の人材がいるし、再びトップに戻るために、みんなと一緒に仕事を続けていくことを楽しみにしている。それが僕たち全員が取り組んできた究極の目標だし、これからも追い続けていく」

    「僕を信頼してくれたレッドブル、ローラン、そしてレッドブル・レーシングのみんなに感謝したい」

    フェルスタッペンにとって、レッドブル・レーシングは単なる所属チーム以上の存在になっている。

    「僕はいつも言ってきたけど、このチームは僕にとって第二の家族のような存在だし、本当に居心地がいい」

    「僕はレースで勝てるようになりたいと思ってこのチームに加入した。その後、一緒に成し遂げてきたことは本当に素晴らしいものだった。たくさんの信じられないような瞬間を共有し、4度のワールドチャンピオンを獲得することができた」

    そして、自身のF1キャリアをともに歩んできたレッドブル・レーシングで今後も戦い続けることに特別な意味を感じていると語った。

    「僕のキャリアをずっと一緒に歩んできた同じチームで、この旅を続けられることは本当に特別だ。ずっとそうしたいと思っていた」

    メキース体制への信頼「明確なビジョンが見える」
    今回の契約延長では、2025年にチーム代表兼CEOに就任したローラン・メキースへの信頼も重要な要素となった。

    フェルスタッペンはメキースと1年以上仕事をしてきたなかで、チームの将来に向けた方向性が明確になっていると説明した。

    「ローランと1年以上一緒に仕事をしてきたけど、それも素晴らしいものだった。彼がチームに対して明確なビジョンを持っていることが分かる」

    「ミルトンキーンズのみんなが、僕たちが築こうとしているものを信じている。これからチームの未来を形作っていくなかで、さらに多くの勝利を目指し、チャンピオンシップを争う次の章を楽しみにしている」

    2026年からレッドブルはレッドブル・フォード・パワートレインズとして独自のF1パワーユニットプロジェクトを本格始動させた。チームは技術インフラや施設への投資も継続しており、フェルスタッペンを中心に次の成功時代を築くことを目指している。

    マックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)

    ローラン・メキース「まだ終わってはいない」
    ローラン・メキースは、フェルスタッペンとの長期契約をチームにとって極めて重要なニュースだと位置づけた。

    「マックスが我々とともに歩み続け、グリッドで最高のドライバーをチームに残せることは、レッドブル、レッドブル・レーシング、そしてF1とモータースポーツ全体にとって素晴らしいニュースだ」

    メキースは、フェルスタッペンとレッドブル・レーシングが築いてきた関係はスポーツ界でも特別なものだと強調する。

    「スポーツの世界で、マックスとこのチームほどの成果を達成するパートナーシップはほとんどない」

    「最初からマックスは、妥協のない競争心、絶え間ない決意、そして常識に挑戦する勇気という、レッドブル・レーシングを特別な存在にしているすべてを体現してきた。彼がチームとレッドブルのモータースポーツの歴史に与えた影響は非常に大きく、我々が成し遂げてきたすべてにおいて中心的な存在だった」

    契約延長の背景には、長年にわたって築かれた双方の信頼関係と、フェルスタッペンがチームの将来像を信じていることがあるとメキースは説明した。

    「ともに歩み続けるという決断の根底にあるのは、マックスとチームが長年かけて築いてきた信頼、そして我々の人材、文化、将来へのビジョンに対するマックスの信頼だ」

    「だが、我々はまだ終わってはいない。まだ勝つべきレースがあり、達成すべき節目があり、書き加えるべき歴史がある」

    「これから多くのことが変化していくだろうが、我々の野心は変わらない。同じ方向、同じビジョン、ひとつのチームとして進んでいく」

    最後のF1オランダGPで長期残留を発表
    今回の発表は、フェルスタッペンの母国レースである2026年F1オランダGPを前に行われた。ザントフォールトでのオランダGPは2026年を最後にF1カレンダーから姿を消すことが決まっており、フェルスタッペンにとって特別な週末での大型発表となった。

    「ザントフォールトで行われる最後のグランプリで、この発表ができることも僕にとって素晴らしい瞬間だ。最後のレースでファンのみんなに特別な締めくくりを届けられたらと思っている」

    2028年までだった契約を2030年まで延長したことで、フェルスタッペンはレッドブル・レーシングの次なる時代にも中心人物として残ることになった。

    新レギュレーション導入後の苦戦によって浮上していた移籍の可能性ではなく、フェルスタッペンが選んだのはレッドブル・レーシングとともに再びF1の頂点を目指す道だった。長年にわたって続いてきた両者のパートナーシップは、少なくとも2030年末まで継続する。

  • ウィリアムズF1にボウルズ解任予想「アストンマーティンに逆転される」

    ウィリアムズF1にボウルズ解任予想「アストンマーティンに逆転される」

    ギュンター・シュタイナーが、2026年シーズンに苦戦するウィリアムズF1とチーム代表ジェイムス・ボウルズに厳しい評価を下した。現在の状況が改善されなければ、2027年シーズン序盤にもチーム首脳の交代が起こる可能性があるとの見方を示している。

    さらにシュタイナーは、ウィリアムズが今季残りのレースでポイントを獲得できない可能性にまで言及。

    対照的にアップデートで改善の兆しを見せるアストンマーティンがポイントを積み重ね、コンストラクターズ選手権でウィリアムズを逆転すると予想した。

    シュタイナーがボウルズを痛烈批判「メールを読む時間が必要」
    2024年末にハースF1のチーム代表を退任し、現在はMotoGPのKTMテック3を率いるシュタイナーは、『The Red Flags』ポッドキャストでウィリアムズの現状について語った。

    「ジェイムスが良い仕事をしているとは思わない。ただ、少なくとも彼にはすべてのメールを読む時間を与えるべきだと思う」

    シュタイナーはそう冗談交じりに語り、FW48が抱える問題への対応の遅さを皮肉った。

    「彼は年初にメールを受け取っていて、何をしなければならないかは分かっている。ただ、全部読む時間がなかっただけなんだ」

    ここでいう「メール」はもちろん比喩であり、シーズン序盤から明らかになっていたマシンの問題を把握しながら、十分な解決策を示せていないというボウルズへの批判である。

    「だから、まずメールを処理して、年末までに解決策を見つけるべきだ。年末になってもすべてのメールを読み終えていなければ、そのときは解任してもいい」

    「2027年の5〜6戦後に変化が起きる」
    シュタイナーはさらに、ウィリアムズの低迷が2027年まで続いた場合、ボウルズの立場が危うくなるとの見方を示した。

    「このままの状態が続けば、来シーズンの5戦か6戦を終えたところでチームに変化が起きるだろう」

    「メールを読んで状況を修正するには十分な時間があった。それでもできていないのであれば、去る時だ」

    ボウルズは2023年にウィリアムズのチーム代表に就任して以来、短期的な成績だけではなく、グローブの施設や組織、開発プロセスを含めた長期的な再建を進めてきた。

    一方で、その再建計画が進むなかでもF1チームには結果が求められる。特に2026年は新しいテクニカルレギュレーションが導入された重要なシーズンであり、そこで期待された前進を実現できていないことがシュタイナーの批判の根底にある。

    新型ノーズも期待された効果を発揮できず
    シュタイナーが問題視しているのは、単純な成績だけではない。ウィリアムズがシーズン中に投入してきたアップデートが、期待されたほどFW48の競争力向上につながっていない点だ。

    「シーズン開幕時、ウィリアムズは『戻ってくる。何をすべきか正確に分かっている』と言っていた。それで結局どうなった? 今では前進するどころか、逆に後退している」

    象徴的なのが、イギリスGPで投入された新型ノーズだった。パフォーマンス改善を狙った重要なアップデートだったものの、期待された効果を十分に引き出すことはできなかった。

    F1ではアップデートそのものの性能だけでなく、シミュレーションや風洞で得られた数値と実車での挙動を一致させる「相関」が開発速度を大きく左右する。新パーツを投入しても期待通りの成果が得られない状況が続けば、その後の開発計画にも影響が及ぶ。

    シュタイナーは、そうした問題への対応速度そのものをウィリアムズの弱点として捉えている。

    アストンマーティンがウィリアムズを逆転すると予想
    シュタイナーはさらに、コンストラクターズ選手権においてウィリアムズがアストンマーティンに逆転される可能性があると予想した。

    アストンマーティンは2026年序盤から厳しい戦いを強いられてきたが、シーズン中盤に大規模なアップデートを投入。AMR26Bでは改善の兆しが現れており、後半戦でポイント獲得の機会が増える可能性がある。

    シュタイナーは、その小さな積み重ねが最終的に順位を左右するとみている。

    「アストンマーティンには、あるレースで2ポイント、別のレースでも2ポイントというように獲得していく十分な可能性があると思う」

    「そして最終的にはウィリアムズに追いつくだろう。ウィリアムズがこれ以上1ポイントでも獲得するとは思わないからね」

    ボウルズの長期再建に結果が求められる局面
    シュタイナーの発言は極めて辛辣だが、ウィリアムズが直面している課題を端的に表している部分もある。

    ボウルズが進めてきたのは、数カ月で完了するような改革ではない。長年にわたって不足していた設備への投資、開発プロセスの近代化、人材の強化など、チームを根本から立て直すための長期プロジェクトである。

    その一方、再建計画がどれほど合理的でも、F1では最終的にコース上の結果によって評価される。カルロス・サインツJr.とアレクサンダー・アルボンという実績あるドライバーを擁する現在の体制で競争力を示せなければ、ボウルズへのプレッシャーが強まるのは避けられない。

    シュタイナーが予想するように2027年序盤が実際にボウルズの進退を左右する期限になるかは分からない。ただし、2026年後半から2027年序盤にかけてFW48とその後継車で明確な前進を示せるかどうかは、ウィリアムズの長期再建計画を評価するうえで重要な材料になりそうだ。