ホンダは、2026年F1スペインGPで初開催を迎えるマドリンクにおいて、特徴的なバンクコーナー「モニュメンタル(La Monumental)」がパワーユニット(PU)の潤滑システムにとって大きなチャレンジになると警戒している。
ホンダ・レーシング(HRC)でトラックサイドオペレーションを統括する折原伸太郎は、現地で実際にコースを確認。
横方向だけでなく垂直方向にも大きなGが加わるモニュメンタルでは、まず安全マージンを確保した設定から走行を開始し、実走データを確認しながら予選に向けて段階的に限界を引き上げる方針を明らかにした。
モニュメンタルを現地確認「かなり厳しく興味深い」
マドリードに新設されたマドリンクは全長5.416km、22のコーナーで構成される。そのなかでも最大の特徴となるのが、約550mにわたって続くバンクコーナーのモニュメンタル(La Monumental)だ。
最大24%のバンクを持つこの区間では、通常のコーナリングによる横方向のGだけでなく、バンクによって垂直方向にも特殊な荷重が加わる。
折原伸太郎はスペインGPを前に実際にマドリンクを歩き、モニュメンタルを確認した。
「昨日、サーキットを下見して、このバンクコーナーも確認しました。かなり厳しく、興味深い区間です」
そしてホンダのPUという観点から、特に注意しなければならないポイントとして潤滑システムを挙げた。
「パワーユニットに関して最も興味深いポイントは、おそらく潤滑システムです」
「このコーナーでは横方向だけでなく垂直方向にもGを受けます。そのため、潤滑システムにとっては本当のチャレンジになります」
ホンダPUは安全マージンを確保して走行開始
F1のパワーユニットは、激しい加減速やコーナリングによって大きなGを受ける環境でも、各部へ安定してオイルを供給し続けなければならない。
特にマドリンクは今回がF1初開催であり、実際のF1マシンがモニュメンタルを走った際にどのような負荷が発生するのかについて、過去のグランプリから得られた実走データは存在しない。
そのためホンダは、金曜日の走行開始時点から限界を狙うのではなく、潤滑システムに一定の安全マージンを持たせる。
「そのため、最初は潤滑について慎重な設定から始めて、状況を評価することになると思います」
重要になるのは、FP1とFP2で実際にPUに加わる負荷を確認することだ。
シミュレーションによる事前準備は行われているものの、実際の路面状況やマシンの挙動を含めたデータを収集し、その結果を基に設定を最適化していく。
「そこから予選に向けて、段階的にそのマージンを減らしていきます」
つまりホンダは、安全側の設定からスタートし、実走によってモニュメンタルでの負荷を確認。そのデータに問題がないことを確かめながら、予選に向けてPUをより攻めた領域へ近づけていくことになる。

モンツァではホンダとのドライバビリティ改善に手応え
ホンダとアストンマーティンは、純粋な出力だけではなく、ドライバーがパワーを扱いやすくするためのドライバビリティについても改善を続けている。
アストンマーティンのマイク・クラックは、前戦F1イタリアGPのモンツァで、この領域に明確な進歩があったと評価した。
「モンツァで踏み出したステップには満足している。以前にも言ったが、ドライバビリティは非常に重要なテーマだ。エンジンだけではないし、シャシーだけでもない。本当に両方を組み合わせたものだ」
クラックによれば、ドライバビリティにはPUの特性だけでなく、シフトダウンやブレーキング、タイヤの状態、コーナーへの進入速度など、さまざまな要素が絡み合う。
「シフトダウン、ブレーキ、タイヤの状態、どのくらいの速度で進入するのかなど、多くの要素が関係している。ただ、モンツァで我々が一緒に踏み出したステップには本当に満足している」
モンツァでアストンマーティンの絶対的な競争力が高かったわけではないこともクラックは認めている。それでも、壁が近く、ドライバーが自信を持って限界へ近づかなければならないマドリンクでは、扱いやすさの改善には大きな意味があるという。
「モンツァでのパフォーマンスが素晴らしかったわけではない。それは明らかだ。ただ、このようなサーキットでは、それを手にしていることはいいことだ。自信につながるからだ」
「壁がこれほど近いところでプッシュするには自信が必要だ。だから、これはいいステップだった」
ドライバビリティ改善に終わりはない
一方でクラックは、ホンダとのドライバビリティ改善が完成したわけではないことも強調する。
折原伸太郎にも同意を求めながら、シーズンを通して継続してきた改善作業を今後も進めていく考えを示した。
「伸太郎も私に同意すると思うが、ドライバビリティが十分に良くなるということは決してない。常に改善できる」
「我々はシーズンを通してやってきたように、これからもそこに取り組んでいく。ただ、我々がこのステップを踏み出せたことには満足している」
初開催のマドリンクでは、シミュレーションだけでは完全に把握できない要素が数多く残されている。なかでもモニュメンタル(La Monumental)は、最大24%のバンクと長い旋回時間によって、ホンダPUにこれまでとは異なる負荷を与える可能性がある。
ホンダはまず安全マージンを確保してFP1をスタートし、実際に発生する横方向と垂直方向のG、それによる潤滑システムへの影響を確認する。そのデータを基に一歩ずつマージンを削り、予選で最大限のパフォーマンスを引き出すことを目指す。
モンツァで手応えを得たドライバビリティの改善とともに、未知のモニュメンタルへの対応は、ホンダとアストンマーティンにとって初開催F1スペインGPの重要な技術テーマとなる。