ホンダF1のトラックサイド・ゼネラルマネージャー兼チーフエンジニアを務める折原伸太郎は、FIAのモハメド・ビン・スライエム会長がアストンマーティン・ホンダの競争力向上に向けた追加支援を検討する姿勢を示していることについて、「魔法のような解決策はない」と冷静な見方を示した。
ビン・スライエム会長はF1スペインGPが行われたマドリンクで、フェルナンド・アロンソのF1残留を望む立場から本人に改善策を直接尋ねたことを明かした。
一方、ホンダ側は現時点でFIAとの具体的な協議を把握しておらず、あくまで自らの開発計画を進めることに集中している。
FIA会長がアロンソに直接「何をしてほしいか教えて」
ビン・スライエム会長はマドリードで、アロンソと直接交わした会話についてメディアに説明した。
「何を望んでいるのか教えてほしい。君はドライバーなのだから、結果を改善するために我々に何をしてほしいのか、私のところに来て話してほしい」
ビン・スライエム会長は、競争力不足を理由に2度のF1ワールドチャンピオンであるアロンソがグランプリレースを去ることを望んでおらず、ホンダの開発を後押しするためにFIAがさらに何をできるのかを模索している。
F1スペインGPの週末には、ホンダの2027年に向けた開発を加速させるため、新たな特別措置が検討される可能性も報じられた。ただし、現段階で具体的な規則変更や支援策が正式に決まっているわけではない。
メルセデスF1代表のトト・ヴォルフも、競争の公平性を維持する規則の枠内であれば、こうした議論そのものに問題はないとの考えを示している。
「ルールはスポーツにとって最善となるように存在しているし、ときには調整が必要になる」
「公平な話し合いだ。彼ら(ホンダ)にはもっと必要だと思う。会長とアロンソの話し合いは公平なものだった」
「我々はすべてのトップコンストラクターにこのスポーツに関わっていてほしい」
折原伸太郎「我々は開発計画に集中している」
しかし、ホンダF1のトラックサイド・ゼネラルマネージャー兼チーフエンジニアを務める折原伸太郎は、FIAからの追加措置によって一気に状況を変えられるとの見方には慎重だ。
ビン・スライエム会長が検討している具体策について問われた折原伸太郎は「分かりません。ただ、彼はいろいろと考えていると思います」としたうえで、ホンダの基本姿勢を説明した。
「彼が我々に魔法のような解決策を与えてくれるとは思っていません」
「我々は単純に自分たちの開発計画に集中し、製品を改善するために懸命に取り組んでいます。それが現時点での我々の計画です」
また、ホンダがビン・スライエム会長やFIAと追加支援について具体的な話し合いを行ったのかと問われると、折原伸太郎は「分かりません」と答えている。
ホンダはすでに2026年F1パワーユニット規則に設けられたADUO(Additional Development and Upgrade Opportunities)の対象となっている。この仕組みは競争力で後れを取ったメーカーに追加の開発機会を認めるものであり、ホンダには開発を進めるための機会が与えられている。
ただし、ADUOはパフォーマンスを直接与える仕組みではない。追加の開発機会やリソースを活用し、最終的にはメーカー自身が性能を引き出さなければならない。
ホンダはオランダGPでスペック2のパワーユニットを投入。その後の3戦ではドライバビリティの改善を進めており、折原伸太郎はF1スペインGP後、「今後はパフォーマンス向上により注力できる」と説明している。

アロンソ「この結果でスペインのファンに別れを告げたくない」
今回の議論の背景には、アロンソがF1での将来をまだ決めていないことがある。アロンソは引退の可能性を示唆する一方、続けるのであれば1年だけではなく、さらに長期間になる可能性にも言及している。
「あと1年、2年、3年、あるいは何年になるか分からないけど、もし続けるなら、それは彼らのためでもある」
アロンソは母国スペインのファンについてそう語った。
「なぜなら、人生をずっとステアリングの後ろで過ごしてきて、今年のような結果でスペインのファンに別れを告げるのは、チームの誰も望んでいないと思うし、特にファンはそんな形を受け入れるべきではないと思う」
アストンマーティンは「プランA=アロンソ続投」
アストンマーティンのアンバサダーを務めるペドロ・デ・ラ・ロサは、アロンソが離脱した場合に備えた代替案が存在することを認めながらも、現在の最優先事項はアロンソの残留だと説明した。
「当然、プランBはある。どのチームにも常に必要なものだからね」
「ただ、今はプランAに取り組んでいる。それはフェルナンドに続けてもらうことだ。決断を迫るようなプレッシャーはかけたくない。必要なだけ時間を与えている」
ビン・スライエム会長がアロンソのF1残留を念頭にホンダへの追加支援を模索し、ヴォルフも公平な規則の範囲内での調整を支持する一方、ホンダ自身は特別な救済措置を前提としていない。折原伸太郎は「魔法のような解決策」に期待するのではなく、自らの開発計画を着実に進めることが競争力向上への道だという姿勢を明確にしている。


















