マックス・フェルスタッペン レッドブルF1残留の舞台裏「移籍より引退に近かった」

マックス・フェルスタッペン レッドブルF1残留の舞台裏「移籍より引退に近かった」

マックス・フェルスタッペンは、レッドブル・レーシングとの契約を2030年末まで延長する以前、自身の将来について迷っていた最大の理由が他チームへの移籍ではなく、F1そのものを続けるかどうかだったことを明かした。

2026年F1第12戦オランダGPを前に、レッドブルはフェルスタッペンとの新たな4年契約を発表。長く続いてきた将来を巡る憶測に終止符が打たれたが、ザントフォールトで行われたFIA木曜記者会見では、その決断に至るまでのフェルスタッペンの考えが語られた。

将来への迷いは「F1を続けるかどうか」
フェルスタッペンはまず、レッドブルと新たな契約を結ぶことが難しい決断だったのかと質問された。

「いや、それほどストレスのあることではなかった。正しい決断だったと思っている」

「チームのなかでは本当に居心地がいいし、今後数年で再びトップに戻れるという強い信念を僕たちは持っている」

フェルスタッペンは2016年途中に当時のトロロッソからレッドブルへ昇格して以来、長年にわたって同チームの中心的存在として戦ってきた。今回の契約延長によって、その関係は少なくとも2030年末まで続くことになった。

一方、今季序盤には自身の将来について迷いがあることも示唆していた。そこで「シーズン序盤には将来について確信が持てていなかった。何が変わったのか」と質問されると、フェルスタッペンは重要な事実を明かした。

「主に、実際にF1を続けるかどうかということだった」

つまり、フェルスタッペンが検討していたのは単純にレッドブルを離れて別のF1チームへ移籍することではなく、F1でのキャリアそのものを今後も続けるのかという、より根本的な問題だったということだ。

F1のルール改善も継続決断の要因
フェルスタッペンはこれまで、F1のレギュレーションやスポーツの方向性について率直な意見を口にしてきた。

今回の会見でも、F1を続ける決断に至った背景として、ルールの方向性に変化が見えてきたことを挙げた。

「でも、ルールは少しずつ良くなってきている。そういう意味では、僕もそれを受け入れてやっていこうと思えるようになった」

F1で走ることそのものへの情熱を失ったわけではない。一方で、自身が望むレースのあり方とF1が進む方向との間にどの程度折り合いをつけられるかは、フェルスタッペンにとって重要な判断材料となっていたことがうかがえる。

そして、その先にある大きな節目としてフェルスタッペンが挙げたのが2030年だ。

「できれば2030年になったとき、V8エンジンが導入される可能性も含めて、もう一度考える機会が出てくると思う」

今回の新契約が2030年末までとなったなか、フェルスタッペンはその先のF1について、将来のエンジン規則を含めたスポーツの方向性を見ながら判断する考えを示した。

他チームからのオファーには「重要ではない」
近年、フェルスタッペンを巡っては他チームへの移籍が繰り返し取り沙汰されてきた。

しかし、今回の会見でフェルスタッペンが語った内容からは、本人にとって最大のテーマが「どのF1チームで走るか」ではなかったことが見えてくる。

フロアからは、マネジメント側が他チームから具体的なオファーをフェルスタッペンに提示する段階まで話が進んでいたのかという質問も出た。

これに対してフェルスタッペンは、レッドブル側との話し合いについて説明した。

「とてもオープンで、透明性のある話し合いだった」

「ローランやオリバー、株主のみんなとも非常にいい関係にある。僕にとっては大きなひとつの家族のように感じているし、その一員でいられることをとても幸せに思っている」

ここでフェルスタッペンが挙げたのは、レッドブル・レーシングCEO兼チーム代表のローラン・メキースや、レッドブルの経営陣らとの関係だ。

「もちろん、この数カ月はチームがこれからどう進んでいくのか、今後数年間の計画やアイデアについて話をしてきた。僕には常にとてもオープンな形で伝えられてきたし、僕はそういうところが好きなんだ」

「彼らが達成しようとしていることも気に入っている。だから僕も、その将来の一部でいたいと思った」

それでも「他チームについては?」と追及されると、フェルスタッペンは「それは重要ではない」と回答。「あなたにとっては重要ではない?」と重ねて聞かれても、「僕にとってはね」と答えた。

マックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)

「レッドブルで永遠に走る」が以前からの目標
フェルスタッペンとレッドブルの関係は、単なる長期契約だけでは説明できないものになっている。

2030年まで走れば、レッドブルのドライバープログラム時代も含めて非常に長い関係になることを指摘され、その「秘訣」を尋ねられたフェルスタッペンは、故ディートリッヒ・マテシッツとの過去の会話を明かした。

「ディートリッヒがまだ生きていたころから、僕は彼に『僕の目標は、もちろんレッドブルで永遠にレースをすることだ』と言っていた」

「だから、いい方向に進んでいると思う」

フェルスタッペンにとって、ひとつのチームでF1キャリアを全うするという考えは、今回の契約交渉で突然生まれたものではない。レッドブル創業者のマテシッツが存命だった時代から抱いていた目標だったという。

F1キャリア最後のチームもレッドブルか
その言葉を裏付けるように、フェルスタッペンはレッドブルが自身にとって最後のF1チームになる可能性についても明確な答えを示している。

2030年以降に期待するV8エンジンが実現しなかった場合でも、レッドブルがF1キャリアを終えるチームになるのかと質問されると、フェルスタッペンは答えた。

「そうだね」

ただし、2030年の契約満了時点で引退すると決めているわけではない。

「2031年に何が起きるのかはまったく分からない。でも、そうだね。おそらく重要なのは、その時点でこのスポーツがどこへ向かっているかということだと思う」

2030年以降について判断する際にも、別のF1チームへの移籍が中心的なテーマになるのではなく、F1自体が自分にとって走り続けたいカテゴリーであるかどうかが重要になるという姿勢を示している。

F1以外のレースへの挑戦も継続
一方で、フェルスタッペンはF1だけに活動を限定するつもりもない。

新契約でもF1以外のカテゴリーに挑戦する自由を維持したかったのかと問われると、「そうだ。それは間違いなく、これからも続けたいことだった」と答えた。

ただし、実際にどのレースへ出場できるかについてはF1カレンダー次第になると説明している。

具体的に出場したいレースを尋ねられると、「大きな耐久レースは全部だね。24時間レース全般。そういうレースを走れたらクールだと思う」と語った。

フェルスタッペンはF1を続けながら、耐久レースをはじめとする別カテゴリーへの挑戦にも強い意欲を持ち続けている。

2030年までレッドブルと歩むことを決めたフェルスタッペンだが、その決断の裏側にあったのは他チームとの比較ではなく、「F1を続けるかどうか」という選択だった。レッドブルへの信頼とチームの将来計画、そしてF1の今後の方向性を見極めたうえで継続を選んだ一方、2030年以降については依然として白紙だ。少なくとも現時点で、別のF1チームへ移ることよりも、レッドブルで走り続けるか、F1そのものから離れるかという考えの方がフェルスタッペンの将来像に近いようだ。