エステバン・オコンの2027年F1シーズンに向けたハース残留をめぐり、ドライバーとしての評価だけでなく、チームの財政事情が重要な要素になっているとの見方が浮上している。
オコンはF1スペインGPを前に、ハースと2027年について「今まさに話している」と交渉開始を明らかにしたばかりだ。
しかし、ブラジル人F1ジャーナリストのジュリアン・セラソーリは、ハースがコストキャップ上限まで支出できていない状況にあり、オコンの高額な報酬が残留に向けて不利な材料になる可能性があると指摘している。
ハースの2027年シートを左右する財政事情
オコンは2025年にアルピーヌからハースへ加入。2027年のシートをめぐっては、ラファエル・カマラやレオナルド・フォルナローリら若手ドライバーの名前も候補として取り沙汰されている。
セラソーリはUOL EsporteのYouTubeチャンネルで、ハースの状況について次のように説明している。
「ハースのシートは、まさにベアマンがいることで少し複雑になっている」
「ベアマンはフェラーリとのつながりを持つドライバーで、そのシートを確保している。そして、フェラーリと関係するドライバーを2人同時に起用した前例はない」
さらに、2027年のドライバー選択を読みづらくしている大きな理由として、ハースの財政状況を挙げた。
「現時点で彼らの状況を読むのは非常に難しい。なぜなら、大きな予算上の問題を抱えているチームだからだ」
「キャデラックでさえ、すでにコストキャップの範囲内で運営できている。つまり、マシン開発に使える最大額であるコストキャップまで支出しても、それを賄えるだけの収入があるということだ」
「オコンは高額なドライバー」
一方、ハースについては事情が異なるという。
「ハースは依然としてコストキャップを下回る規模で運営している唯一のチームで、小松礼雄にはこの状況を変えるよう大きなプレッシャーがかかっている」
ここでドライバー選択も財政面での解決策のひとつになり得るとセラソーリは指摘する。
「だから、ドライバーも可能な解決策の組み合わせに巻き込まれることになる。そしてオコンについて言えば、彼は高額なドライバーだ。それがフランス人ドライバーにとって不利に働くポイントのひとつになっている」
実際、2026年のオコンの推定年俸は約700万ドルで、チームメイトのオリバー・ベアマンの約100万ドルに対して7倍に達する。ベアマンはF1フル参戦初年度の2025年から約100万ドルと推定されており、ハースにとって両者の人件費には大きな開きがある。
この差は、2027年のドライバー選択にも影響する可能性がある。仮にラファエル・カマラがベアマンと同程度のルーキー水準の契約で加入するなら、オコンから若手への交代だけで年間数百万ドル規模の人件費差が生じ得る。
ただし、F1ではドライバーの報酬はチームのコストキャップ対象外となっている。そのため、オコンの年俸を削減した分をそのままマシン開発費に振り向けられるわけではない。それでも、コストキャップ上限まで支出できるだけの収入を確保できていないとされるハースにとって、チーム全体の支出を考えればドライバーの人件費も無視できない要素となる。
カマラら若手にはスポンサーという武器
ハースにはフェラーリとの技術的な関係があり、オリバー・ベアマンもフェラーリの育成プログラム出身だ。そのため、もうひとつのシートを誰に与えるかについては、ドライバー自身の実力だけでなく、フェラーリとの関係やチームにもたらす経済的メリットも絡んでくる。
「ただ、フェラーリがそのシートを確保するために、さらに何を提供できるのかという話にもなる。もちろんドライバーの実力も重要だ。しかし、F1がチームスポーツであることは分かっているし、そのチームの中でオリー・ベアマンの隣に座るドライバーの存在には合理性が必要になる」
「財政的にも意味のある選択でなければならない。当然、ラファにはビジネスパートナーやスポンサーがいて、それが助けになる。ただ、別の形でシートに資金をもたらせるドライバーもいる」
ここで言及された「ラファ」は、フェラーリ・ドライバー・アカデミーに所属するラファエル・カマラを指す。若手の場合、オコンより低い年俸で起用できる可能性に加え、スポンサーなどの支援をチームにもたらすことができれば、財政面でさらに魅力的な選択肢となる。
一方で、すでにベアマンというフェラーリ系ドライバーがいることは、カマラを起用する場合の複雑な要素となる。セラソーリが指摘するように、ハースにはフェラーリとのつながりを持つドライバーを2人同時に起用した前例がなく、速さ、給与、スポンサー、フェラーリとの関係まで含めた総合的な判断が必要になる。

オコンは「ドライバーが問題ではない」と主張
今回の財政面からの指摘は、オコン自身がF1スペインGPを前に語った内容とも対照的だ。
オコンは2027年について「もちろん、ここ数週間は将来について話し合っている。僕は2025年から小松さんとこのプロジェクトに加わることを決めた。当然、最初に話をするべきなのはこのチームだし、今まさにその話し合いをしている」と説明している。
また、ハースがTPC(旧型車テスト)で他のドライバーを走らせていることについても、自身のシートへの直接的な脅威とは捉えていない。
「チームは望むのであれば、どんなドライバーでもテストすることができる。僕たちにはTPCプログラムがあり、それはチームにとって非常に重要だ。ある意味では収入源にもなっている」
TPCを「収入源」と表現した点は、今回伝えられたハースの財政事情を考えるうえでも興味深い。チームが旧型車テストを収益機会として活用していることを、現役ドライバーであるオコン自身も認めていることになる。
一方、オコンはチームが現在直面している競争力の問題について「ドライバーが問題ではない」と強調している。
「チームの中ではドライバーが問題ではないことは明らかだ。僕たちは全員で同じ方向に向かって、マシンからもっと引き出そうとしている。僕もオリーも、パフォーマンスを発揮できるマシンがあれば、それを結果につなげている」
オコンが競技面ではドライバー変更の必要性を否定する一方、セラソーリの情報では、2027年の選択には純粋なパフォーマンスとは別に金銭面が絡んでいることになる。
オコンはハースとの残留交渉をすでに開始しているが、推定年俸約700万ドルという現在の待遇が交渉材料のひとつになる可能性がある。実績と経験ではオコンが優位に立つ一方、若手には低い起用コストやスポンサーによる資金面のメリットがある。「高額なドライバー」という評価が、オコンの2027年F1シートをめぐる思わぬ障壁となる可能性がある。
















