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  • FIAがADUO制度の「弱点」認める 2026年F1パワーユニット開発救済策を見直しへ

    FIAがADUO制度の「弱点」認める 2026年F1パワーユニット開発救済策を見直しへ

    FIAは、2026年F1シーズンから導入されたパワーユニット(PU)の追加開発制度「ADUO(Additional Development and Upgrade Opportunities)」について、制度そのものに「弱点」が存在することを認め、今後に向けて改善を進める方針を示した。

    ADUOは、内燃エンジン(ICE)の性能が基準となるメーカーから2%以上遅れていると評価されたPUメーカーに、追加の開発・アップグレード機会を与える仕組みだ。

    メーカー間の性能差が固定化することを防ぐ目的で導入されたが、初年度から評価対象や測定方法を巡って議論が続いている。

    ICEだけを評価するADUOに浮上した問題
    ADUOの基本的な考え方は、2026年の新PU規則でメーカー間に大きな性能差が生じた場合、その差を縮める機会を与えることにある。

    一定期間ごとに各メーカーのICE性能を評価し、基準から2%以上遅れているメーカーには追加の開発機会が認められる。

    一方で、大きな論点となっているのが、評価対象がICEに限定されていることだ。

    2026年型PUでは電動側が総合的なパフォーマンスに大きな割合を占める。それにもかかわらず、ADUOの判定ではエネルギー回生システムを含む電動側の性能が直接的な評価対象とはなっていない。

    そのため、PU全体では競争力が高いメーカーでもICE単体の数値によって追加開発機会を得られる可能性があり、逆に総合性能を正確に反映できていないとの指摘が出ている。

    さらにライバルメーカーの間では、追加開発枠を獲得するため、シーズン序盤に本来の性能を意図的に低く見せることが可能なのではないかとの疑念も浮上している。

    ニコラス・トンバジス(FIA 国際自動車連盟)

    FIA「測定精度には自信がある」
    FIAシングルシーター部門ディレクターのニコラス・トンバジスは、F1において全チームとPUメーカーの合意を得ること自体が極めて難しいと語った。

    「F1では、ほとんどすべてのことが非常にデリケートな問題になるようだ。11チームと5社、あるいは6社のPUメーカーが『素晴らしい、全員一致だ』と言うことなんて、ほとんどない」

    そして、F1で数少ない“全員が同意するもの”として夏季休暇を挙げた。

    「全員が同意していると思える唯一のものは、8月のシャットダウンが良い制度だということくらいだ。それについては、僕のアイデアだったということを思い出してもらいたい」

    「でも、全員が同意しているのはそれくらいだと思う。それ以外はすべて難しい。しかも、それですら全員が同意するまでには時間がかかった。フランツ・トストがまだアルファタウリの代表だったころは、彼は反対していたからね」

    FIAによる最初の評価では、レッドブル・パワートレインズがICE性能の基準となった。この結果はパドックでも驚きをもって受け止められ、レッドブル側も事実関係の確認を求めた。

    しかし、トンバジスはFIAが使用している測定データそのものについては高い精度が確保されているとの考えを示す。

    「誰もが非常に競争的で、他との相対的な位置に集中しているから、すべてが非常にデリケートになる。だから、かなり難しい作業だった」

    「ただ、僕の考えでは、我々の測定は非常に正確であることが証明されている」

    制度は設計通りに機能も「すべて順調ではない」
    一方で、トンバジスは測定精度への自信と、ADUOという制度全体の完成度は別の問題だと認めている。

    「そうは言っても、すべてがうまくいっているのか? いや、そうではない。明らかに不満を持っている人たちがいるからね」

    「将来に向けて改善を考える必要があるのか? それはイエスだと思う」

    ADUOを巡っては、追加開発機会を与えられたメーカーが、その権利をすぐには使用せず、意図的に性能差を残すことも理論上は可能だとの指摘がある。

    例えば、現在の基準となっているレッドブル・パワートレインズを上回らない状態を維持すれば、基準側のメーカーには追加開発機会が与えられず、追う側だけが継続的に開発枠を確保できるという考え方だ。

    だが、トンバジスは、そのような戦略に実質的なメリットはないと考えている。

    「追加の機会を得続けるためだけに、常に自分たちの最大出力を下回って走ることが得策だとは思わない」

    「結局トップに立つために使わないのであれば、そもそも追加の機会を得ることに何の意味があるのか、という話になるからね」

    FIAが認めたADUOの「弱点」
    それでもFIAは、2026年に実際の運用を開始したことで、制度に改善すべき部分が見えてきたことを認めている。

    「このシステムは設計された通りに機能していると思う。ただ、将来に向けて対処しなければならない弱点がいくつかあるとも思っている」

    「また、より時間がかからず、より論争を招かないものにするためにも、将来的に改善するための措置を講じる必要がある」

    これは、FIAがADUOそのものを失敗と判断したことを意味するものではない。

    性能で後れを取ったPUメーカーに追加開発の機会を与え、長期的な性能格差の固定化を防ぐという基本理念については維持する姿勢だ。その一方で、ICEだけを基準とする評価方法、追加開発機会の運用、測定に伴う作業量、そしてメーカー間に生じる疑念や論争については改善の余地があると認識している。

    2026年に初めて実戦運用されたADUOは、F1のPUメーカー間の競争を維持するためのセーフティネットとして導入された。しかし、その救済制度自体が競争上の駆け引きの対象になり得ることも初年度から浮き彫りになった。FIAは制度の基本思想を残しながら、より公平で透明性が高く、論争を生みにくい仕組みへと修正していくことになる。

  • FIAがロシア・ベラルーシへの制裁を緩和 国旗・国歌の使用を再び許可

    FIAがロシア・ベラルーシへの制裁を緩和 国旗・国歌の使用を再び許可

    FIA(国際自動車連盟)は、ロシアとベラルーシのドライバー、チーム、競技役員に対して2022年から課してきた制限を一部解除した。今後、FIA管轄の国際モータースポーツ競技では、両国の国旗や国歌を含む国家シンボルの使用が再び認められる。

    今回の変更は、8月3日に開催されたFIA世界モータースポーツ評議会(WMSC)で決定されたもの。ウクライナ侵攻を受けて導入されていた政治的中立に関する誓約への署名義務も撤廃された。

    一方、ロシアとベラルーシでFIA国際競技を開催することについては、引き続き禁止される。

    FIAが2022年導入の制限を一部解除
    FIAは2022年、ロシアによるウクライナ侵攻を受け、ロシアおよびベラルーシのドライバー、チーム、競技役員が国際大会に参加する際の条件を導入した。

    これまで両国の関係者は、FIA国際競技への参加自体は認められていたものの、自国を代表する形で出場することはできず、国旗や国歌などの国家シンボルも使用できなかった。また、政治的中立を約束する文書への署名も参加条件とされていた。

    しかし、8月3日のWMSCでこれらの措置が見直され、その後FIA法務部門から変更内容が正式に通知された。

    新たな方針では、ロシアとベラルーシのドライバー、チーム、競技役員は、政治的中立に関する誓約書へ署名することなくFIA国際競技に参加できる。

    さらに、これまで禁止されていた国旗や国歌をはじめとする国家シンボルの使用も認められる。

    ただし、参加については「適用されるすべての国際法、国内法、地域法を遵守すること」が条件になるとしている。

    ロシアでのF1開催禁止は継続
    今回の決定は、ロシアとベラルーシに対するFIAの制限を全面的に撤廃するものではない。

    両国でFIA国際競技を開催することについては、引き続き禁止措置が維持される。そのため、現時点でF1ロシアGPがカレンダーに復帰することはできない。

    F1ロシアGPは2014年からソチ・オートドロームで開催されていたが、最後のレースとなったのは2021年。終盤に雨が降る波乱の展開となったレースでは、ルイス・ハミルトンが優勝し、マックス・フェルスタッペンが2位、カルロス・サインツJr.が3位に入った。

    2022年大会は当初カレンダーに組み込まれていたものの、ウクライナ侵攻を受けて中止。その後、F1はロシアGPのプロモーターとの契約を解除した。

    したがって、今回のFIAによる規制緩和が直ちにF1ロシアGP復活につながるわけではない。

    ウクライナ情勢次第では再び制限導入も
    FIAは今回の決定を下す一方で、ウクライナで続く戦争の状況を引き続き注意深く見守るとしている。

    今後の情勢によって必要と判断した場合には、ロシアおよびベラルーシの関係者に対する措置や制限を再び導入する可能性も残している。

    今回の方針変更によってFIAは、ロシアとベラルーシの選手や関係者について、開催地としての制限を維持しながら、国際競技への参加条件を大幅に緩和する形となった。

    一方、二輪モータースポーツを統括するFIM(国際モーターサイクリズム連盟)は異なる対応を続けており、ロシアとベラルーシのライダーや関係者を国際競技から引き続き除外している。

    FIAの今回の決定により、2022年から続いてきたロシアとベラルーシに対するモータースポーツ上の制限は大きな転換点を迎えた。ただし、国際競技の開催禁止は維持されており、F1を含めたロシアでの国際モータースポーツ復活については、依然として別の問題として扱われる。

  • FIA会長の「独立系F1エンジン」構想 フェラーリ代表「現実的か分からない」

    FIA会長の「独立系F1エンジン」構想 フェラーリ代表「現実的か分からない」

    FIAのモハメド・ビン・スレイエム会長が、カスタマーチーム向けにFIAが選定した独立系エンジンサプライヤーを導入する構想を打ち出したことについて、フェラーリF1チーム代表のフレデリック・バスールが見解を示した。

    バスールは「何でも可能だ」としながらも、独立系メーカーがF1エンジンそのものを製造することより、限られた予算のなかで既存メーカーと競争できる性能を実現することの方が大きな問題になると指摘。「本当に現実的なのかは分からない」と慎重な姿勢を示している。

    FIAが検討するカスタマーチーム向け共通エンジン
    ビン・スレイエムは先月、ロイターのインタビューでF1への給油復活を検討していることを明らかにした。そのなかで、さらに注目を集めたのが、FIAが選定するエンジンをカスタマーチームに供給するという構想だった。

    ビン・スレイエムは、ワークスチームがエンジン供給を通じてカスタマーチームに政治的な影響力を行使する状況を防ぎたいとの考えを示している。

    「Aチームが、エンジンを供給しているBチームを支配するようなことはなくなる」

    「手頃な価格で実現できるのであれば、残りのBチーム向けにひとつのエンジンを用意する。そうすれば、誰かが『こちらに投票しなければ、いいエンジンを供給しない』などと言って影響力を行使することはできなくなる」

    現行レギュレーションでは、パワーユニットメーカーはカスタマーチームに対し、ワークスチームが使用するものと同等仕様のパワーユニットを供給することが義務付けられている。

    現在フェラーリは、自社のワークスチームに加えて、ハースとキャデラックにもパワーユニットを供給している。

    また、ビン・スレイエムは将来的なF1パワーユニットについて、持続可能燃料を使用し、電動要素を限定したV8エンジンへの回帰も推進している。

    バスール「何でも可能だが現実的かは分からない」
    ビン・スレイエムの独立系エンジン構想について質問されたバスールは、技術的に不可能なアイデアではないと語った。

    「何でも可能だ。誰かが今日エンジンを造りたいと思えば、造ることはできる」

    一方で、問題になるのは単純にエンジンを完成させることではなく、その性能だという。

    「問題はパフォーマンスだ。V8ならほかのものより簡単だと考えることもできる」

    「ただ、それがものすごく現実的なのかどうかは分からない」

    バスールは、独立系メーカーにとってF1エンジンを設計・製造する技術そのものが最大の障壁になるとは考えていない。むしろ、パワーユニットメーカーにも適用されているコストキャップが大きなハードルになるとの見方を示した。

    現在のF1ではシャシー側だけでなく、パワーユニットメーカーの開発費についても上限が設定されている。また、内燃エンジン(ICE)のアップグレード機会については、FIAのADUOシステムによって決定される。

    F1 エンジン

    コスワースのような独立系メーカーでも「造ること自体は複雑ではない」
    コスワースのような独立系エンジンメーカーにとって、このプロジェクトは複雑すぎるのではないかと問われると、バスールは技術的な製造能力と競争力を分けて考える必要があると説明した。

    「エンジンを造ること自体は複雑ではない」

    「複雑なのは、求められるパフォーマンスレベルだ」

    「コストキャップのことを考えれば、この条件のなかで競争力を発揮するのは非常に難しいと思う」

    つまりバスールが疑問視しているのは、独立系メーカーがF1エンジンを「造れるか」ではなく、限られた予算でフェラーリやメルセデスといった既存メーカーに匹敵する性能のエンジンを「造れるか」という点だ。

    現在F1に参戦するパワーユニットメーカーは、フェラーリ、メルセデス、レッドブル・フォード、ホンダ、アウディの5社。FIAが構想する独立系サプライヤーが実現すれば、ワークスメーカーとの関係を持たない新たなエンジン供給ルートが生まれることになる。

    ただしバスールの発言が示すように、その実現には技術的な参入障壁以上に、コストと競争力をどのように両立させるかという難題が残されている。

  • FIAが次世代F1マシンで「80kg軽量化」目標 2031年レギュレーションで大幅刷新へ

    FIAが次世代F1マシンで「80kg軽量化」目標 2031年レギュレーションで大幅刷新へ

    2026年に導入されたF1の新テクニカルレギュレーションでは、マシンの小型・軽量化を掲げた「ニンブルカー・コンセプト」が大きな柱となった。最低重量は前年から32kg減の768kgとなり、ホイールベースも20cm短縮、全幅も10cm狭められている。

    一方、FIAはこれを最終到達点とは考えていない。FIAシングルシーター部門ディレクターのニコラス・トンバジスは、2031年を軸に検討されている次世代レギュレーションで、現在よりさらに約80kg軽いF1マシンを実現することを目標に掲げた。

    2026年F1は「ニンブルカー」への第一歩
    2026年F1では、パワーユニットとエネルギーマネジメントをめぐる議論がシーズン序盤から大きな注目を集めてきた。そのためシャシー規則の変化は比較的目立たなかったが、FIAは新世代マシンについて一定の成果が得られていると評価している。

    最低重量は2025年の800kgから768kgへ32kg軽量化。ホイールベースは20cm短くなり、車幅も10cm縮小された。さらにダウンフォースも大幅に削減され、ドライバーがステアリング操作でマシンと格闘する場面が増えている。

    トンバジスは、Autosportを含む一部メディアに対し、2026年規則が前進だったかと問われ、次のように語った。

    「おそらくそうだと思う。ただし、仕事が終わったと考えるべきではない。マシン同士は以前より接近して走れるようになったと思う」

    FIAの分析では、先行車が生み出す乱気流、いわゆるダーティエアによる影響は、前世代規則が導入された2022年シーズン序盤と同程度まで抑えられているという。

    2022年規則の失敗から学んだFIA
    2022年に導入されたグラウンドエフェクト規則も、当初はマシン同士が接近して走りやすくすることを目的としていた。しかし開発競争が進むにつれ、各チームが生み出した空力ソリューションによって後方への乱気流が悪化し、その効果は徐々に失われていった。

    FIAはその経験を2026年規則に反映したとトンバジスは説明する。

    「2022年選手権の開幕時と似たレベルにあると思うが、今年の方が少し堅牢だと思っている」

    「各チームがさまざまな空力ソリューションを導入しているが、今のところコンセプトそのものを壊すようなものは見つかっていない。以前の規則では、コンセプトを大きく損なうものがいくつか存在していた」

    具体的には、前世代マシンのフロントウイング・エンドプレート、フロアエッジ、フロントタイヤ周辺に配置された空力パーツが問題だったという。

    「そうしたものによってウェイクの特性が大幅に悪化した。我々はそこから学んだ。今回は同じような問題が存在しないことを願っている」

    「祖母でも運転できるマシン」にはしたくない
    トンバジスが2026年規則のもうひとつの成果として挙げるのが、マシンを操る難しさだ。

    ダウンフォースが減少したことで、ドライバーは以前よりマシンを積極的にコントロールする必要がある。FIAは、それを世界最高峰のカテゴリーにふさわしい特徴だと捉えている。

    「ドライバーにとって依然としてかなり難しいマシンだ。それは良いことだと思う。誰でも運転できるようなマシンではない」

    「空力規則の一部は、コーナーを通じてマシンのあらゆる部分をチームが完璧に対処できない方向にしている。そのため、ドライバーにはいくつかの課題が残されている」

    そしてトンバジスは、F1マシンに求める難易度についてユーモアを交えて表現した。

    「世界最高の22人のドライバーがいるのだから、僕の祖母でも簡単に運転できるようなマシンであるべきではないと思う」

    一方で、ドライバーの身体にかかる負担については改善されている。

    前世代のグラウンドエフェクトカーは、大きなダウンフォースを得るために極端に低い車高と硬いサスペンション設定を必要とした。2026年マシンではライドハイトがやや高くなり、その問題が緩和されている。

    「ライドハイトも少し上げているので、昨年ほど身体的に過酷ではなくなった」

    国際自動車連盟 フォーミュラ1カー

    2031年F1で「さらに80kg軽く」
    それでもFIAが目指すマシン像は、現在よりはるかに軽く、コンパクトなものだ。

    現行レギュレーションのサイクル中に大幅な変更を行うことは難しいため、焦点となるのは次世代規則だ。現在は2031年の導入が基本線となっているが、関係者の十分な合意が得られれば2030年への前倒しも検討されている。

    トンバジスは次世代F1マシンについて具体的な数値目標を示した。

    「マシンは少し軽く、少し小さくなり、ドライバーからも評価されている。ただ、これが僕の望んでいる最終地点かと言えば、違う」

    「将来的には、さらに80kg軽くしたい。そして、もう少し短く、もう少し小さくしたい」

    現在の最低重量768kgから単純に80kgを削減すれば、688kgという水準になる。実際の次世代最低重量がその数字になると決まったわけではないが、FIAが目指している軽量化の規模が非常に大きいことを示している。

    「今回可能だったことから、さらに大きな一歩を踏み出す。それが目標だ。今回の変更も悪いステップではないが、『これで仕事は終わった。目標を達成した』と言っているわけではない」

    「将来は軽量化でもう一段階進みたい。重量についても大幅なステップを踏みたい」

    F1マシンの重量増加にようやく歯止め
    近年のF1では、安全装備の強化やハイブリッドシステムの大型化などによってマシン重量が増加を続けてきた。

    2000年代初頭のF1マシンはドライバー込みでも600kg前後だったが、その後はハイブリッド化や大型化に伴って重量が増加。2025年には最低重量が800kgに達していた。

    2026年規則による768kgへの削減は、その長期的な流れを反転させたという意味でも重要だとトンバジスは考えている。

    「F1マシンが軽くなったのは、おそらく2000年以来初めてだと思う。少なくともそれくらい前、もしかするともっと前かもしれない」

    2026年規則はFIAが理想とするF1マシンへの完成形ではなく、あくまで第一段階という位置付けだ。次世代規則では約80kgという大幅な軽量化に加え、さらなる全長短縮と小型化も視野に入る。パワーユニット規則とともに、2030年代のF1ではマシンそのものの姿が再び大きく変わる可能性がある。

  • F1が2027年に空力開発を相次ぎ禁止 FIAが警戒する「2022年の失敗」

    F1が2027年に空力開発を相次ぎ禁止 FIAが警戒する「2022年の失敗」

    F1では2027年に向け、2026年シーズンに各チームが開拓した複数の空力デバイスが禁止される。対象にはエキゾースト周辺のウイング、リアウイングのハンガー延長、そしてモナコGP以降に広がったアクチュエーターフェアリングのウイングレットなどが含まれる。

    FIAは、これらの規制強化について単なる開発競争の抑制だけが目的ではないと説明する。最大の狙いは、マシン同士が接近して走れるという現行レギュレーションの基本コンセプトを守ることだ。

    2022年に導入したグラウンドエフェクト規則では、当初は改善された後続車の空力性能が数年間の開発によって大幅に悪化した。

    その失敗を繰り返さないため、FIAは早い段階で手を打つ。

    2027年F1で禁止される主な空力開発
    2026年の新レギュレーションでは、チームが想定以上のスピードで細かな空力上の余地を発見した。その代表例が、排気流周辺を利用する「エキゾーストウイング」だ。

    さらにリアウイングでは、支持構造であるハンガーを延長して空力的に利用するアイデアも登場。モナコGP以降には、リアウイングのアクチュエーター周辺に設けられたフェアリングを利用し、小型ウイングレットを形成する開発も各チームに広がった。

    FIAはこうした領域を2027年規則で規制する。目的のひとつはダウンフォースを抑えることであり、もうひとつは限られた小さな領域を巡って巨額の開発費が投入される「開発戦争」を防ぐことにある。

    ただし、FIAは空力設計を完全に画一化する考えではない。チームが独自のアイデアを生み出せる余地を残しながら、レギュレーションの根幹を損なう方向への開発だけを封じる方針だ。

    2022年F1で起きた「追い抜きやすさ」の後退
    FIAシングルシーター部門ディレクターのニコラス・トンバジスは、現在の2026年型F1マシンについて、後続車が受けるダウンフォース低下は2022年シーズン開幕時と同程度の水準にあると説明する。

    2022年の規則は、前を走るマシンが発生させる乱流の影響を抑え、後続車が接近しやすくすることを大きな目的として導入された。

    当初、前走車から10メートル後方でのダウンフォース低下は約15%、20メートルでは約5%だった。しかし各チームが規則の自由度を利用して空力開発を進めた結果、数年後には10メートルで約35%、20メートルでも約15%まで悪化した。

    つまり、マシンそのものは速くなった一方で、後続車にとっては再び走りにくい環境になっていった。

    「2022年選手権のスタート時と似たところにいると思う。ただ、今年の方が少し堅牢だと思っている」

    トンバジスは2026年規則についてそう評価する。

    「チームはいろいろな空力ソリューションを導入してきたが、コンセプトそのものを壊すようなものはまだ見つけていない」

    FIAが学んだフロントウイングとフロアの教訓
    前世代のレギュレーションで問題となったのは、規則上残されていた設計自由度だった。

    「以前のレギュレーションでは、コンセプトを大きく損なったものがいくつかあった。主にフロントウイングのエンドプレート、フロアエッジ、そしてフロントホイール周辺に付けられたさまざまな空力パーツだ」

    「それらすべてが後流の特性をかなり悪化させた。我々はそこから学んだ。今回は同じような問題が存在しないことを願っている」

    フロントウイングやフロアの開発によって前輪周辺の乱流を外側へ押し出す「アウトウォッシュ」が強まり、それが後続車に届くウェイクを悪化させたことが、2022年規則の狙いを徐々に損なう要因となった。

    2026年規則では、この経験を踏まえて空力的な自由度の与え方そのものが見直されている。

    国際自動車連盟 フォーミュラ1カー

    エキゾーストウイングはFIAにも想定外
    もっとも、FIAが2026年の空力開発をすべて予測できていたわけではない。

    トンバジスは、エキゾースト周辺の開発など一部のアイデアについては想定外だったことを認める。

    「例えば、エキゾーストを使ったソリューションが出てくるとは予想していなかった。ボディワークについてもいくつかのソリューションがあり、それについてはすでに来年に向けて修正している」

    一方、リアウイングのアクチュエーター周辺については、2027年から合法領域を狭めるものの、完全に設計の余地をなくすわけではない。残されたスペースを利用して、各チームが新たなアイデアを考案する可能性は残る。

    「全体として、チームにとってマシン開発が興味深いチャレンジであり続けるようにしたかった」

    「完全に制限する方向には進まなかった。設計自由度を残しながら、パフォーマンスが徐々に収束していくという意味では、それほど悪い位置にはいないと思う」

    トンバジスは、現在もチーム間には「妥当な性能差」が存在するとしながら、今後6カ月ほどで徐々に収束していくとの見通しを示した。

    2026年F1マシンは「簡単に運転できない」ことも狙い
    2026年の新パワーユニット規則についてはドライバーから不満も出ている一方、シャシーについては比較的好意的な評価が聞かれている。

    前世代のグラウンドエフェクトカーで問題となった極端に硬いサスペンションや低い車高が緩和され、ダウンフォースも減少。コーナーではドライバーがより積極的にマシンを操る必要がある。

    トンバジスは、それも意図したものだと語る。

    「ドライバーにとって、今でもかなり難しいマシンだと思う。誰にでも運転できるようなクルマではないというのは良いことだ」

    「空力規則の一部によって、チームはコーナーのあらゆる局面を完璧に解決することができなくなっている。だからこそドライバーには課題が残る」

    そして、その考えをユーモアを交えて表現した。

    「世界最高の22人のドライバーがいるのだから、僕のおばあちゃんでも簡単に運転できるようなマシンであるべきではない」

    また、車高を以前より高くしたことで身体的な厳しさも軽減された。

    「車高も少し上げたので、昨年ほど過酷ではない。それに少し軽く、小さくなった。そこはドライバーたちにも評価されている」

    次世代F1では「さらに80kg軽量化」が目標
    FIAは2026年規則の方向性には一定の手応えを得ているものの、現在のマシンを最終形とは考えていない。

    トンバジスが次世代F1マシンで特に重視しているのが、さらなる軽量化と小型化だ。

    「我々が望んでいるところまで来ているかと言えば、ノーだ」

    「さらに80kgほど軽くしたいし、もう少し短く、もう少し小さくしたい」

    「それが目標だ。今回可能だったところから、さらに大きな一歩を踏み出したい」

    2027年の空力規制は、単純に革新的なアイデアを禁止するためのものではない。FIAが重視しているのは、2022年に経験したように、開発競争によって「接近して戦えるF1」という規則の根本思想が数年で失われることを防ぐことだ。

    エキゾーストウイングなど想定外のアイデアには早期に規制を加える一方、技術競争そのものは残す。2027年の変更は、開発の自由とレースの質を両立させるための調整という位置づけになる。

  • F1:セーフティカー先導での決着に議論 赤旗によるレース再開は解決策か

    F1:セーフティカー先導での決着に議論 赤旗によるレース再開は解決策か

    F1では、セーフティカー先導のままレースが終了することを避けるため、終盤に赤旗を提示して再スタートを行うべきかを巡る議論が続いている。

    発端となったのは、物議を醸した2026年F1イギリスGPの結末だ。シルバーストンではレース終盤がセーフティカーによってニュートラライズされ、そのままチェッカーを迎えた。

    ドライバーの間ではスパ・フランコルシャンでも対応策が話し合われたが、「終盤なら原則として赤旗を出すべき」とする意見がある一方、「ショーのためだけに、それまで築いたレースを台無しにすべきではない」との声もあり、意見はまとまっていない。

    そうしたなか、チーム首脳陣は一律のルールを設けることには慎重な姿勢を示している。レーシングブルズのアラン・パーメイン、アウディF1のアラン・マクニッシュ、キャデラックのグレアム・ロードンはいずれも、最終的な判断はレースディレクターとFIAに委ねるべきとの考えを示した。

    「レースディレクターにはすでに権限がある」パーメイン
    議論のひとつとなっているのが、残り3〜4周という終盤でセーフティカーが導入された場合、レースディレクターがより柔軟に赤旗を提示し、スタンディングあるいはローリングスタートによってレースを再開できるようにする案だ。

    過去にチーム側がこうした考えを阻止したのではないかと問われたパーメインは、その認識に疑問を呈した。

    「それが本当なのかは分からない。レースディレクターは、そうしたいのであれば、すでにその権限を持っていると思う」

    「僕としては、レース運営はレースディレクターとFIAに任せる。彼らは通常、信じられないほど良い仕事をしている」

    パーメインは、イギリスGPがセーフティカー先導のまま終了したことで、結果的にレーシングブルズが恩恵を受けたことも認めている。

    「我々にとっては、シルバーストンの展開は実際に都合が良かった。自分たちのポジションを確定させることができたからだ」

    「もちろん、それが我々がここにいる理由ではない。我々はショーを提供するためにここにいるし、再スタートがあれば、もっと良いショーになっていた可能性はある」

    「ただ、彼らにはすでに、そうしたい場合にそれを行う権限があると思う。だから、それを決めるのは彼らだ」

    つまりパーメインは、終盤の赤旗を新たな規則として義務化する必要はなく、現在の枠組みのなかでFIAとレースディレクターが状況に応じて判断すればいいとの立場だ。

    マクニッシュ「誰もセーフティカーの後ろで終わることを望んでいない」
    アウディF1のスポーティングディレクターを務める元F1ドライバーのアラン・マクニッシュも、パーメインとほぼ同じ考えを示した。

    マクニッシュは、F1に関わる誰もがセーフティカー先導でのフィニッシュを避けたいと考えている一方、事故やコース状況はケースごとに異なるため、単純なルールを設定することは難しいと指摘する。

    「付け加えるなら、理想的には、理由が何であれ、誰もセーフティカーの後ろでレースが終わるところを見たいとは思っていない」

    「それぞれのケースは、そのレースの状況に大きく左右される。だから、一律のルールを設けることはできない。安全性に関わる状況もあれば、それ以外の要素が関係する場合もあるからだ」

    赤旗を義務化すれば、ファンにグリーンフラッグ下でのフィニッシュを提供しやすくなる。その一方で、赤旗によるタイヤ交換や隊列のリセットなどによって、それまでの戦略や築き上げたアドバンテージが大きく変化する可能性もある。

    だからこそマクニッシュは、残り周回数だけを基準に機械的に赤旗を提示するのではなく、その時々の状況を踏まえて判断する必要があると考えている。

    イギリスGPの結末は残念でも「イベント全体は素晴らしかった」
    マクニッシュはまた、セーフティカー先導での決着だけを理由に、イギリスGPそのものを否定的に評価すべきではないと強調した。

    「シルバーストンについて言えば、イベント全体は素晴らしかったと思う。レースも本当に素晴らしかった」

    「残念ながら最後はイエローフラッグの状況で終わった。それは当然、我々が望んでいることではない。そして、この『我々』にはFIAも含まれている。F1に関わる全員が避けたいと思っていることだ。でも、時にはそういうことも起こる」

    キャデラックのグレアム・ロードンも、この問題について新たな主張を加えることはせず、マクニッシュの評価に同意した。

    「これ以上付け加えることはない。シルバーストンについてのアランのコメントには全面的に同意する」

    「ファンにとって素晴らしいイベントだったと思うし、あれだけ多くの人々が現地で週末を楽しんでいる姿を見ることができたのは素晴らしかった」

    赤旗の「義務化」よりFIAの裁量を支持
    セーフティカー先導によるフィニッシュは、競技として正当な結果である一方、ファンにとっては消化不良の結末になりやすい。特に残り数周でセーフティカーが導入された場合、「赤旗で一度止めてでもレースを再開すべき」という議論が起こるのは避けにくい。

    しかし、チーム首脳たちが警戒しているのは、エンターテインメントを優先するあまり、赤旗そのものがレース結果を演出する手段になってしまうことだ。事故処理や安全確保に必要な時間、コースコンディション、残り周回数などは毎回異なり、一律に「残り○周なら赤旗」と決めれば別の不公平を生む可能性がある。

    現状では、赤旗をより積極的に利用する新ルールを導入するよりも、既存の権限のなかでレースディレクターとFIAが個々の状況を判断するという考えがチーム側では支持されている。

    イギリスGPをきっかけに再燃した「セーフティカー先導でのフィニッシュ」を巡る議論。グリーンフラッグ下で決着させることと、それまで積み上げられた競技の公平性をどう両立させるのか。F1にとって重要なのは、単に劇的な最終周を作ることではなく、安全性とスポーツとしての一貫性を保った判断基準を築くことになりそうだ。

  • F1エネルギーマネジメントをFIAが説明「ドライバー任せにできない理由」

    F1エネルギーマネジメントをFIAが説明「ドライバー任せにできない理由」

    2026年のF1で導入された新世代パワーユニットでは、エネルギーの配分を制御する自動アルゴリズムがレース展開を大きく左右している。スパ・フランコルシャンでは、その影響の大きさが改めて浮き彫りとなり、オスカー・ピアストリをはじめとするドライバーからも「かなりひどい」と不満の声が上がった。

    こうした状況を受け、「なぜドライバー自身にエネルギー管理を任せられないのか」という疑問も広がっているが、FIA(国際自動車連盟)のシングルシーター部門責任者ニコラス・トンバジスは、その理由は技術的な制約にあると説明した。

    「100%ドライバー任せ」は現実的ではない
    トンバジスは、ドライバーの不満には理解を示しながらも、完全な手動制御は現実的ではないと語った。

    「ドライバーたちのコメントは理解できる。現在は使用できるエネルギー量が限られており、それをどう管理するかが極めて重要になっている。その結果として様々な戦略が必要になっている」

    そのうえで、ドライバーが自由にエネルギーを使えるようにした場合の問題点を指摘した。

    「100%ドライバー任せにはできない。もし好きなタイミングで好きなだけ使えるのであれば、ドライバーはコーナー立ち上がりですべてのエネルギーを一気に使い切るだろう。そうなれば、現在問題視されている現象はさらに顕著になる」

    さらに、バッテリー保護や性能均衡のための技術的制約も存在すると説明した。

    「エネルギーの放出量や回生量、SOC(State of Charge=充電状態)の変化量には制限が設けられている。これは技術開発競争の激化を防ぐためだ。もし制限がなければ、各メーカーはさらに巨大なバッテリーを搭載しようとし、再びマシンは重くなってしまう」

    「こうした多くのパラメータを人間が合理的に制御することは不可能だ」

    2028年の60対40ルールで改善を期待
    現在の2026年レギュレーションでは、内燃エンジンと電動システムの出力比率は50対50となっている。しかしF1は2028年からこれを60対40へ変更することを決定しており、トンバジスはこれによってドライバー主体の走りを取り戻せると考えている。

    「このバランスが少し見直されれば、この分野はよりシンプルになると思う。ドライバーたちが不満を抱いているのは、エネルギー管理そのものが原因だ」

    「確かに複雑すぎる。私も100%彼らに同意する。しかし、それは根本的な問題から生じている結果だ」

    アルゴリズムは以前から存在していた
    トンバジスは、自動制御アルゴリズム自体は2026年規則以前から存在していたものの、新世代パワーユニットでは電動出力の比率が大幅に高まったことで、その重要性が飛躍的に増したと説明する。

    「オスカー(ピアストリ)は非常に賢いドライバーだが、彼が感じているのは現在もっとも支配的な要素だ。バランスが見直されれば状況は改善されるだろう。完全になくなるわけではないが、大きな前進になるはずだ」

    「こうしたアルゴリズムは以前から存在していた。しかし今年導入された新しい規則では、パワーユニットに占める電動出力の割合が大きくなったため、その重要性も大幅に高まった」

    さらに2028年には電動出力比率が47%から40%へ引き下げられることで、アルゴリズムの影響も小さくなると見通しを示した。

    「2028年には電動出力の比率が47%から40%へ下がるため、効率を左右するアルゴリズムの重要性は低下する。また、その頃には各メーカーも規則への理解を深めており、制御精度もさらに向上しているはずだ」

    今回のFIAの説明は、自動エネルギー管理が単なる利便性のためではなく、性能均衡やコスト抑制、安全性を維持するための不可欠な仕組みであることを改めて示すものとなった。一方で、2028年のルール改訂によってドライバーがより主体的にマシンを操れる方向へ向かうことも期待されている。

  • F1スチュワード「マックス・フェルスタッペンは我々を試してくる」

    F1スチュワード「マックス・フェルスタッペンは我々を試してくる」

    FIAスチュワードのビタントニオ・リウッツィは、マックス・フェルスタッペンがレーススチュワードにとって「最も判断が難しいドライバー」だと語った。

    現在FIAのスチュワードを務める元F1ドライバーのリウッツィは、フェルスタッペンは常にレギュレーションの限界を突く走りをしており、その判断は他のドライバーよりもはるかに複雑になると明かした。また、マクラーレン勢にはフェルスタッペンの戦い方を徹底的に研究すべきだと助言している。

    「フェルスタッペンはスチュワードを試してくる」
    2026年シーズン、リウッツィはFIAのローテーション制スチュワードの一員として各グランプリで審議に携わっている。その立場から、4度のワールドチャンピオンであるマックス・フェルスタッペンの走りについて率直な印象を語った。

    ハンガリーGPではレッドブル・レーシングのマシンに不満を訴えながらも2位でフィニッシュしたフェルスタッペンだが、そのレース運びはスチュワードにとって常に難題だという。

    リウッツィは、フェルスタッペンが他のドライバーよりも正確にレギュレーションを理解しているかと問われると、迷わずこう答えた。

    「誰よりもそうだ。その意味でマックスは戦闘マシンだ」

    「スチュワードとして見ると、彼は本当に我々を試してくる。インシデントを裁定しなければならない場面では、彼はいつもレギュレーションの境界線ぎりぎりに自分を置いている」

    さらに、その走りは審議を非常に難しくすると説明した。

    「彼の動きを分析するのは本当に難しい。いつも我々を非常に難しい立場に置く。一方で、他のインシデントはもっと明確で判断しやすいことが多い」

    マクラーレン勢へ「フェルスタッペンを研究すべき」
    リウッツィは、今季タイトル争いを演じるランド・ノリスとオスカー・ピアストリに対してもアドバイスを送った。

    「僕はあまり多くは言わないだろう。結局のところ、マックスはほとんど人の話を聞かない。周囲が何を言おうと気にしないからね」

    その一方で、ライバルにはフェルスタッペンの戦い方を学ぶよう勧めた。

    「ノリスとピアストリには、これまでのレースを注意深く見返して、マックスがどう戦っているかを研究するよう勧める。彼はあらゆるレースで彼らにプレッシャーをかけ、自分に有利な状況へ持ち込んできた」

    マックス・フェルスタッペン

    2026年の新オーバーテイク規則への理解が鍵
    2026年からFIAはオーバーテイク時のガイドラインを改訂し、とりわけコーナー頂点でのフロントアクスルの位置関係を重視する運用へ変更した。

    リウッツィは、この新しいルールを深く理解することがフェルスタッペンと戦ううえで不可欠だと強調する。

    「彼らにはオーバーテイクに関するレギュレーションをもう一度じっくり見直し、研究するよう伝えたい」

    そして、フェルスタッペンが最も優れているのは、そのルールを瞬時に利用する能力だと評価した。

    「彼は追い抜く時も、追い抜かれる時も、自分のポジショニングを常に考えている。もし正しい位置取りができなければ、責任は自分にあることを理解している」

    2026年の新ルールでは、ドライバーがコーナー進入時にどこまで並んでいるかが裁定の重要な判断材料となる。リウッツィは、フェルスタッペンはそのルールを誰よりも理解し、巧みに活用しているドライバーであり、それがスチュワードにとっても最も判断が難しい存在になっていると分析した。

  • FIA 2026年F1レギュレーション問題に反論「メーカーの反対で改善できなかった」

    FIA 2026年F1レギュレーション問題に反論「メーカーの反対で改善できなかった」

    2026年F1新レギュレーションを巡る混乱について、FIA(国際自動車連盟)がドライバーからの批判に対して反論した。

    ベルギーGPで顕在化したエネルギーマネジメントの問題を受け、カルロス・サインツやルイス・ハミルトンは「なぜ事前に問題を防げなかったのか」とFIAの責任を厳しく追及していた。

    しかしFIAは、問題自体は数年前から認識していたものの、パワーユニットメーカーの反対によって事前のルール修正が実現できなかったと説明している。

    FIA「問題は事前に把握していた」
    ベルギーGPでは、バッテリーエネルギー不足によってドライバーがストレートで十分なパワーを使えず、スパ・フランコルシャン本来の魅力が損なわれたとの批判が噴出した。

    GPDA(グランプリ・ドライバーズ・アソシエーション)の理事を務めるカルロス・サインツは次のように語っている。

    「2022年や2023年にシミュレーションを見た人が、『こんなものをどうして受け入れられるんだ』と言わなかったのなら、その経緯を見直すべきだ。こんな状況は決して起きるべきではなかった」

    さらにルイス・ハミルトンも、

    「誰がこの決定をしたのか分からない。でも、その人物はいまだにその職に就いている」

    と皮肉を込めて批判した。

    これに対し、FIAシングルシーター部門責任者ニコラス・トンバジスは、ドライバーの不満には理解を示しつつも、FIAは開幕前から問題を予測し、改善を試みていたと主張した。

    「ドライバーは率直に意見を言うものだ。それを期待しているし、遠慮する必要もない」

    「彼らが不満を述べている多くの問題について、私たちは開幕の2年前から把握しており、改善を試みていた」

    「しかし当時のガバナンスの仕組みでは、それを実現できなかった。それはある意味で予想された結果だった」

    メーカーの反対でルール変更は実現せず
    2026年レギュレーション策定では、既存メーカーと新規参入メーカー双方の利益を守るため、「パワーユニット・アドバイザリー委員会」が設置された。

    この枠組みでは、大幅な規則変更にはFIA、FOMに加え、当時5社存在したパワーユニットメーカーのうち4社の賛成が必要だった。

    FIAは2026年開幕前、レース中の最大電力展開を200kWへ引き下げる案などを提案したが、十分な支持を得られず否決されている。

    トンバジスは、この制度は新規参入メーカーを公平に扱うためには必要だったと説明した。

    「例えばアウディのような当時まだ参戦していないメーカーでも、規則には拘束される必要があった」

    「『まだ参戦していないから5倍のお金を使わせてほしい』とは言えない。それでは公平ではない」

    一方で、その代償としてFIA単独ではルールを変更できず、重要な改正にはメーカーの同意が不可欠だったという。

    「私たちが望んだ変更には少なくとも4社の賛成が必要だった」

    「しかし議論を重ねた数年間、その条件を満たすことはできなかった」

    F1レギュレーション

    ようやく実現したルール修正
    2026年シーズン開幕後、問題が現実のものとなったことでFIAはマイアミGPから緊急対策を導入し、エネルギーマネジメントを改善するための措置を実施した。

    さらに2028年までに、当初の50対50だった内燃機関と電力の出力配分を60対40へ見直すロードマップにも合意している。

    トンバジスは、この修正がもっと早く実施されるべきだったと認めた。

    「2027年と2028年に向けたパッケージについては今年5月に議論した」

    「本来であれば、こうした議論は2年前に済ませておくべきだった。そうすれば今回のような議論にはならなかっただろう」

    FIA「レース自体は面白い」
    一方でトンバジスは、新レギュレーションによってレース全体の魅力が大きく損なわれたとは考えていない。

    「ほとんどのレースは非常にエキサイティングだった」

    「確かにメルセデスが優位に立っているが、新規則初年度としては過去ほど一方的な展開ではない」

    「順位変動も多く、見応えのあるレースになっている」

    その上で、ドライバーの声を尊重しながらも、観客にとって魅力あるレースを実現することも重要だと強調した。

    「ドライバーは重要なステークホルダーであり、彼らの意見に耳を傾けて対策を講じることは正しかった」

    「しかし同時に、観客が求めているのは順位変動があり、エキサイティングなレースでもある。そのバランスを考えなければならない」

    2026年規則混乱の責任は誰にあるのか
    今回のトンバジスの発言は、「FIAが問題を見落としていた」というドライバー側の見方に対し、「問題は把握していたが、メーカー間の合意形成ができなかった」という事情を明らかにしたものだ。

    2027年以降はすでにルール見直しの方向性が決まっており、2028年にはICE比率を60%へ引き上げるなど抜本的な修正も予定されている。しかし、FIA自身が「2年前に実施できていれば」と認めたように、2026年シーズン開幕前に十分な合意を形成できなかったことは、新レギュレーション最大の教訓として残ることになりそうだ。

  • FIA黄旗ルールに波紋 アントネッリのペナルティでF1ドライバーも意見割れる

    FIA黄旗ルールに波紋 アントネッリのペナルティでF1ドライバーも意見割れる

    F1ハンガリーGP予選でアンドレア・キミ・アントネッリに科されたグリッド降格ペナルティをきっかけに、黄旗区間で「どこまで減速すれば十分なのか」というFIAの運用基準を巡る議論が再び活発化している。

    元F1ドライバーのアンソニー・デビッドソンは、現在のルールについて「ドライバーの間でも意見が一致していない」と明かし、今後も論争が続く可能性を示唆した。

    アントネッリの減速は「十分ではなかった」
    アントネッリはハンガリーGP予選Q3終盤、マックス・フェルスタッペンがスピンして黄旗が提示された区間を通過した際、十分に減速しなかったとして3グリッド降格処分を受けた。

    この裁定により、4番手タイムを記録していたアントネッリは降格となった。

    このケースは、数週間前のオーストリアGP予選でチームメイトのジョージ・ラッセルが似た状況で処分を免れた事例とも比較されている。

    オーストリアではフェルスタッペンがターン9でスピンした際、ラッセルは黄旗区間でアクセルを緩め、スチュワードは十分に減速したと判断してポールポジションを認めた。一方、アントネッリはその周回自体を中止していた。

    PlanetF1.comのデータ分析によれば、ラッセルは自己ベストと比較して約0.08秒タイムを失ったのに対し、アントネッリは約0.6秒遅くなっていたという。

    それでも今回のハンガリーでは、アントネッリの減速は十分ではないと判断された。

    「15メートル早くアクセルを戻した」
    メルセデスのポッドキャスト『Silver Arrows Radio Show』で、元F1ドライバーのアンソニー・デビッドソンは当時の状況を振り返った。

    「映像を見返したとき、どちらの判断になるか本当に分からなかった。非常に際どいケースだった」

    「キミは黄旗を確認すると通常より早くアクセルを戻し、コーナー進入も早い段階で減速に移っていた」

    これに対し、副チーム代表のブラッドリー・ロードは次のように説明した。

    「通常より約15メートル手前でアクセルを戻し、そのまま惰性でコーナーへ進入していた。しかしスチュワードは、その減速では規則を満たしていないと判断した」

    「オーストリアでは周回を完全に諦めていたが、今回は減速量が十分ではないと結論づけられた」

    比較対象となった基準ラップにも問題
    メルセデスの副テクニカルディレクターを務めるシモーネ・レスタは、今回の判定には別の要因もあったと説明する。

    「比較対象となった基準ラップ自体が理想的なラップではなかった。その区間ではキミ本来の速さを示すラップではなく、それが状況を複雑にした」

    「減速していても、比較対象が本来より遅いセクターだったため、十分なタイムロスとして認識されなかった」

    さらにアントネッリ自身も、FP3の燃料を多く積んだ状態のラップと比較しても、減速しながらなお速いタイムだったと指摘していたという。

    「さまざまな条件が重なった結果だった。キミは確かに反応したが、比較基準との関係で必要な減速量には達していないと判断された」

    アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ)

    明文化されない「十分な減速」が議論に
    現在のFIA規則では、黄旗区間で具体的に何km/h減速すればよいかは明文化されていない。

    スチュワードが各ケースごとに「十分に減速したかどうか」を判断する仕組みとなっており、この裁量の大きさが議論を呼んでいる。

    そのため、一部では黄旗ではなく常にダブルイエローを提示すべきだとの意見も出ているが、この案についても意見は割れている。

    デビッドソンは、GPDA(グランプリ・ドライバーズ・アソシエーション)の理事を務めるラッセルとの会話を紹介しながら次のように語った。

    「オーストリアの後にジョージとも話したが、予選中の黄旗運用についてパドック内でもまだ意見はまとまっていない」

    「マシンがコース上で停止したら常にダブルイエローにすべきだというドライバーもいる。それなら全員が何をすべきか明確になる」

    「一方で、自分とは関係ない場所で起きたインシデントのせいでラップを犠牲にするのは不公平だと考えるドライバーもいる」

    「ドライバー同士でも正しい運用について共通認識はできていない」

    メルセデス「一貫性を保つのは簡単ではない」
    2人のドライバーで異なる裁定を経験したロードは、レースコントロールとスチュワードの難しい立場にも理解を示した。

    「レースコントロールやスチュワードの立場は非常に難しい。すべてのインシデントは状況が異なり、コーナー速度やランオフエリア、発生した文脈も毎回違う」

    「我々も時には判断に不満を感じ、時には納得することもある。一貫性を維持するのは簡単ではない。まったく同じケースは存在しないからだ」

    アントネッリは決勝で3位表彰台を獲得し、ランキング首位を維持したものの、今回の一件はFIAの黄旗運用と裁定基準を巡る議論を再び浮き彫りにする結果となった。