カテゴリー: FIA(国際自動車連盟)

  • BYDがF1参戦を否定も「技術面で意義があれば関心」新PU規則を注視

    BYDがF1参戦を否定も「技術面で意義があれば関心」新PU規則を注視

    中国の自動車大手BYDが、F1参戦の可能性について初めて一定の含みを持たせた。一方で、現時点では具体的なF1プロジェクトは存在せず、参戦する場合でも技術的な価値が前提になるとの考えを強調している。

    近年、BYDはF1の12番目のチーム候補として名前が挙がっており、元レッドブル代表のクリスチャン・ホーナーが関与する可能性も噂されている。しかし同社幹部は、現段階ではそうした計画を否定した。

    現時点でF1計画は存在せず
    グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでスペインメディア『Soy Motor』などの取材に応じたBYDのステラ・リー副会長兼エグゼクティブ・バイスプレジデントは、F1参戦計画について次のように語った。

    「いいえ、そのようなプロジェクトはありません」

    「計画はないと申し上げました。夢はいつもありますが、具体的な予定は何もありません」

    現時点ではF1への参戦プロジェクトは存在せず、あくまで将来的な可能性にとどまることを明確にした。

    「ステッカーを貼るだけでは参戦しない」
    一方、BYDの特別顧問を務めるアルフレド・アルタヴィッラは、F1への関心は技術面でのメリットがある場合に限られると説明した。

    「我々の技術がF1の目的に役立つ場合に限って、F1を検討します」

    「マシンの横にステッカーを貼るためだけにF1へ参戦することは決してありません」

    「その資金を投資する方法は他にもあります」

    BYDは単なるスポンサー活動ではなく、自社の技術力を生かせるプロジェクトでなければ参戦する考えはないという姿勢を示している。

    BYD

    2030年以降の新エンジン規則が判断材料に
    アルタヴィッラは、今後のF1エンジン規則次第では考え方が変わる可能性もあると明かした。

    「我々の技術がF1のテクノロジーパートナーとして生かせる方法が見つかれば、関心を持つかもしれません」

    「その場合は解決策を見つける必要があります。しかし、それが前提条件です」

    「ですから、新しい規則がどのように発展していくか見守りたいと思います」

    現在FIAは2030年以降の新たなパワーユニット規則として、ハイブリッド要素を縮小したV8エンジン中心の新フォーミュラを検討している。最終的なレギュレーションはまだ策定されていないが、その方向性がBYDの判断に影響を与える可能性がある。

    現時点でBYDはF1参戦計画を否定しているものの、技術パートナーとして価値を見いだせる環境が整えば参戦を検討する余地があることを認めた。2030年以降の新パワーユニット規則の議論が、同社の将来の判断を左右する重要な要素となりそうだ。

  • FIAがF1エンジン交換規定を維持 2027年と2028年もペナルティ免除枠を継続

    FIAがF1エンジン交換規定を維持 2027年と2028年もペナルティ免除枠を継続

    2026年から導入されたF1の新パワーユニット規則に合わせて緩和されたエンジン交換規定が、2027年と2028年も継続されることが明らかになった。FIA(国際自動車連盟)は『RacingNews365』に対し、各パワーユニット(PU)コンポーネントのペナルティ免除枠を現行のまま維持する方針を認めた。

    当初は2026年限定の措置とされていたが、新世代PUの開発スケジュールが短縮されたことを受け、信頼性への懸念を考慮して継続が決定された形だ。

    2027年と2028年も追加コンポーネントを維持
    2026年からF1は新しいパワーユニット規則へ移行した。これに伴い、FIAスポーティングレギュレーションの第B8.2.3条が追加され、各ドライバーがシーズン中に使用できるPUコンポーネント数が1基ずつ増加した。

    当初の規定では2027年から元の配分へ戻す予定だったが、FIAは『RacingNews365』に対し、この追加配分を2027年と2028年も維持すると認めた。

    ■ 2026~2028年 F1パワーユニット使用可能数(ペナルティ免除)

    ICE(内燃エンジン):4基
    ターボチャージャー:4基
    MGU-K:3基
    エナジーストア:3基
    PU-CE(コントロールエレクトロニクス):3基
    PU-ANC(補機類):6基
    エキゾースト:4基

    開発期間短縮による信頼性リスクを考慮
    2027年と2028年には、パワーユニットの出力配分が現行の電動50%・内燃50%から、内燃機関60%・電動40%へ変更される予定となっている。

    この方針は2026年5月になって決定されたため、各メーカーの開発期間が当初想定より短くなったとみられている。

    『RacingNews365』によると、開発期間の短縮によって信頼性問題が発生するリスクが高まり、もしコンポーネント使用枠を元に戻せば、メーカーへの負担が大きくなる可能性があることが今回の判断につながったという。

    そのためFIAは、2027年と2028年も2026年と同じコンポーネント配分を維持することを確認した。

    規定数を超えた場合はグリッド降格
    規定数を超えて新たなコンポーネントを投入した場合は、最初の超過コンポーネントにつき10グリッド降格、以降は追加するごとに5グリッド降格が科されるルールに変更はない。

    今回の決定により、新世代パワーユニット導入初期の3シーズンは、各メーカーが信頼性向上に取り組みやすい環境が整えられることになった。

  • クリスチャン・ホーナー F1復帰に逆風 BYD「具体的な参戦計画はない」

    クリスチャン・ホーナー F1復帰に逆風 BYD「具体的な参戦計画はない」

    クリスチャン・ホーナーのF1復帰を巡る新たな選択肢として噂されていた中国EV大手BYDへの加入説が否定された。BYD幹部は「現時点でプロジェクトは存在しない」と明言し、ホーナーのF1復帰シナリオは再び不透明となっている。

    レッドブル・レーシングを2025年に退任してから1年が経過したホーナーは、ガーデニング休暇も終了しているものの、いまだ新天地は決まっていない。アストンマーティンとの関係が取り沙汰される一方、BYDルートは現時点で消滅した格好だ。

    BYD幹部がF1参戦報道を否定
    クリスチャン・ホーナーは2025年イギリスGP直後にレッドブルの親会社から解任され、約20年間率いたチームを去った。当初は2030年まで契約を残していたが、最終的に2025年9月に正式退任となった。

    その後は複数のF1チームとの関連が報じられてきたが、中国EVメーカーのBYDで新規F1プロジェクトを率いる可能性も噂の一つだった。

    しかし、BYDの副会長ステラ・リーはスペインメディア『SoyMotor』に対し、この報道を否定した。

    「いいえ、そのようなプロジェクトはありません」

    「夢は常にありますが、具体的な計画はありません」

    これにより、BYDが近い将来F1へ参入し、そのトップとしてホーナーが復帰するという見方は大きく後退した。

    クリスチャン・ホーナーとBYDの副会長ステラ・リー

    技術パートナーでなければ参戦しない姿勢
    BYD側はF1への関心そのものを否定しているわけではない。

    同社の特別顧問アルフレード・アルタヴィッラは、参戦する場合でも最大の目的は技術開発であり、マーケティング目的だけでF1に参入する考えはないと説明した。

    「2030年以降の新レギュレーションの議論には参加していません。ステラも明確に説明していますが、私たちはBYDの技術がF1に貢献できる場合にのみ関心があります」

    「単にマシンにステッカーを貼るためだけにF1へ参入することは決してありません。そのようなお金の使い方より良い投資先があります」

    「F1と技術パートナーになれる道が見つかれば興味を持つでしょう。しかし、それが前提条件です」

    2030年以降のPU方針も不透明要素
    BYDは世界有数のEVメーカーであり、最大の強みはバッテリー技術にある。

    一方で、FIAのモハメド・ビン・スライエム会長は2030年または2031年からV8エンジンへの移行と電動化比率のさらなる縮小を目指す考えを示している。2027年には内燃機関と電動比率が58対42、2028年には60対40へ変更される予定だ。

    将来的に電動技術の比重がさらに低下すれば、BYDがF1参戦に魅力を感じ続けるかは未知数である。

    BYD側が「具体的なプロジェクトはない」と明言したことで、ホーナーのF1復帰候補は再び絞られた形となった。現時点では、以前から名前が挙がるアストンマーティンなどが現実的な選択肢として残されている。

  • FIAが目指す2031年F1とは V8化 給油復活 独立エンジン構想を読み解く

    FIAが目指す2031年F1とは V8化 給油復活 独立エンジン構想を読み解く

    FIA(国際自動車連盟)は2031年の次世代パワーユニット(PU)規則に向け、F1を大きく変える複数の改革案を検討している。

    話題となっているのは、V8エンジンへの回帰、レース中給油の復活、そして独立系エンジンサプライヤーの導入だ。一見すると別々のテーマに見えるが、これらはいずれも「より軽く、より安く、よりシンプルなF1」を実現するという共通のビジョンのもとで議論されている。

    FIA会長のモハメド・ビン・スライエムがイギリスGP週末に語った内容をもとに、2031年以降のF1が目指す方向性を整理する。

    改革の出発点は「現在のF1は複雑すぎる」という問題意識
    ビン・スライエムは現在のV6ターボハイブリッドについて、性能そのものではなく、その複雑さとコストの高さを問題視している。

    現在のパワーユニットは、高度なハイブリッドシステムやエネルギーマネジメントを採用することで技術的には大きく進歩した。しかし、その一方で開発費は莫大となり、車両重量も増加。ドライバーはストレートでエネルギーを節約するためにアクセルを戻す「リフト・アンド・コースト」を強いられる場面も増えている。

    ビン・スライエムは、こうした状況から脱却する必要があるとの考えを示している。

    「V8は来なければならない。内燃機関で約760馬力、そこに10%程度の電動化を加える。そうすればサウンドも戻る」

    FIAが目指しているのは、現在よりもシンプルで軽量、そして観客にとっても魅力的なF1だ。

    V8化と軽量化はセットで進められる
    次期規則では自然吸気V8エンジンが有力視されている。

    ハイブリッド機構は完全には廃止せず、小規模な電動システムを組み合わせる方向だが、現在のような電動出力比率は維持しない見込みだ。

    ビン・スライエムは電動化について、

    「10%かもしれないし、15%かもしれない。しかし現在のような比率にはならない」

    と説明している。

    また、FIAは次世代マシンで最大100kgの軽量化を目標としており、理想として車両重量630kgを掲げている。

    軽量化によって運動性能だけでなく、安全性の向上も期待している。

    F1 給油

    だから給油復活が議論される
    V8化によって浮上した課題が燃料である。

    自然吸気V8は現在のV6ターボハイブリッドより燃料消費量が増えると考えられている。そのため、給油なしでレースを完走するには大型燃料タンクが必要になり、軽量化の効果が失われてしまう。

    そこでFIAが検討しているのが、2009年以来となるレース中給油の復活だ。

    ビン・スライエムは現在も調査を続けていることを明かした。

    「給油については、まさに今検討しているところだ」

    「正しい方法で行えば懸念にはならない。だから検討している。まだ何も決まっていない」

    さらに、

    「スタート時にどれだけ積むべきか、途中でどれだけ補給するべきか、現在検討している」

    とも説明しており、給油そのものだけでなく燃料搭載量まで含めて検証が進められている。

    つまり、給油復活は戦略性を高めるためではなく、軽量化を実現するための技術的な選択肢という位置付けなのである。

    独立エンジン導入はメーカー依存を減らす狙い
    もう一つの大きな改革案が、独立系エンジンサプライヤーの導入だ。

    現在のF1では、カスタマーチームはライバルメーカーからパワーユニットを購入している。

    メルセデスはマクラーレン、ウィリアムズ、アルピーヌへ供給し、フェラーリはハースとキャデラックへ供給。レッドブル・フォード・パワートレインズはレッドブル・レーシングとレーシングブルズへ供給する体制となっている。

    ビン・スライエムは、この仕組みがメーカーに大きな影響力を与えていると考えている。

    「AチームがBチームをエンジン供給によって支配するようなことはなくなる」

    「もし十分に手頃な価格で実現できるなら、Bチーム向けには共通エンジンを用意する。そうすれば『こちらに投票しなければ良いエンジンは供給しない』というような影響力はなくなる」

    FIAは、コスワースのような独立メーカーが供給する低コストV8エンジンを認可し、その価格や性能、中立性を管理する構想を描いている。

    目指すのは「メーカー中心」からの転換
    この構想は、単なるエンジン変更ではない。

    現在のF1は、自動車メーカーの技術投資によって支えられている一方で、メーカーが撤退すれば供給先チームにも大きな影響が及ぶ構造となっている。

    独立エンジンが実現すれば、チームはメーカーに依存しない選択肢を持つことになり、新規参入のハードルも下がる可能性がある。

    F1 CEOのステファノ・ドメニカリも、以前から「ホワイトラベルエンジン」の必要性に言及しており、メーカーへの過度な依存を避ける考えを示している。

    一方で、すべてのメーカーが同じ方向を向いているわけではない。

    アウディは将来規則でもターボを維持したい考えを示しており、ルノーもアルピーヌ向けの独自エンジン開発へ復帰する予定はないと説明している。

    2031年F1は「より軽く より安く よりシンプル」へ
    V8化、電動化縮小、給油復活、独立エンジン導入──。

    これらは個別のアイデアではなく、すべてが2031年以降のF1を再設計するための一つの構想である。

    FIAが目指すのは、開発コストを抑え、車両を軽量化し、ドライバーがより積極的に攻められ、メーカーへの依存も小さい新しいF1だ。

    もちろん、現時点ではいずれも正式決定ではなく、各PUメーカーとの協議や技術的な検証が今後も続く。

    しかし、ビン・スライエムが示した一連の改革案を俯瞰すると、2031年のF1は単なるエンジン変更ではなく、カテゴリー全体の思想そのものを見直す大きな転換点になろうとしていることが見えてくる。

  • FIA会長が示唆 クリスチャン・ホーナーのF1復帰先は「すでに知っている」

    FIA会長が示唆 クリスチャン・ホーナーのF1復帰先は「すでに知っている」

    クリスチャン・ホーナーのF1復帰を巡る憶測が続くなか、FIA(国際自動車連盟)のモハメド・ビン・スライエム会長が、復帰は確実との見方を示すとともに、その行き先についても「私は知っている」と意味深な発言を行った。

    レッドブル退団後にガーデニング休暇を終えたホーナー本人も、すでに複数のプロジェクトと協議を進めていることを認めており、BYDが支援する新規F1チームへの関与を含め、さまざまな憶測が飛び交っている。

    FIA会長「彼は戻ってくる」 復帰先も把握と明かす
    モハメド・ビン・スライエム会長は、英『Oxford Mail』の取材でクリスチャン・ホーナーのF1復帰について問われると、迷うことなく「はい」と回答した。

    さらに、復帰の可能性について重ねて質問されると、次のように語っている。

    「彼は戻ってくる。どこになるかは私が言うことではない。たとえ私が知っていたとしても、それを話すのは彼自身だ」

    この発言は、ホーナーの復帰先についてFIAトップが何らかの情報を把握していることを示唆したものとして注目を集めている。

    実績を高く評価「勝ちたいなら彼のような人物が必要」
    ビン・スライエム会長は、レッドブル退団を巡る一連の騒動よりも、ホーナーが残してきた実績を重視すべきだとの考えも示した。

    「彼の経歴を見れば分かる。誰だって間違いは犯す。しかし、彼は結果を出したのか?」

    そして、こう続けた。

    「何を求める? 勝ちたいのか、それとも勝ちたくないのか。挑戦したいのか、それともしたくないのか」

    長年にわたりレッドブルをF1屈指の強豪へと育て上げた手腕を高く評価していることがうかがえるコメントだった。

    ホーナー「今は自由の身」 復帰へ向け協議を認める
    一方のホーナー本人も、英『The Times』の取材で将来についての話し合いが始まっていることを認めた。

    「もちろん話し合いはある。しかし最近まではガーデニング休暇中だったので、何もできなかった」

    「今は技術的に言えば自由の身だ」

    52歳のホーナーは、復帰するのであれば条件が重要だとも強調している。

    「戻るとすれば、違いを生み出し、勝利を目指せる立場でなければならない」

    「勝つためでないなら、なぜやる必要があるんだ?」

    最有力候補はBYD新チーム説も 本人は慎重姿勢
    パドックでは、中国の自動車メーカーBYDが支援するとされるF1第12チームへの参画が最有力候補との見方が広がっている。

    しかしホーナーは、この噂について明言を避けた。

    「巨大な組織だ。本当に巨大な会社だ」

    その一方で、次のように笑顔で語っている。

    「これまで本当に多くの憶測が飛び交ってきた。今ではグリッド上のほぼすべてのチームと結び付けられていると思うよ」

    さらに「私は急いでいない」と付け加え、焦らず最適なプロジェクトを見極める姿勢を示した。

    今回のビン・スライエム会長の発言によって、ホーナーのF1復帰は既定路線との見方がさらに強まった。一方で、その復帰先については依然として明かされておらず、BYD支援の新規参戦プロジェクトを含め、今後の動向に注目が集まりそうだ。

  • フェラーリとレッドブルの“マカレナ”F1ウイングに安全性懸念 FIAが調査開始

    フェラーリとレッドブルの“マカレナ”F1ウイングに安全性懸念 FIAが調査開始

    FIA(国際自動車連盟)が、フェラーリとレッドブル・レーシングが採用する革新的なリヤウイング「マカレナ・ウイング」の安全性について調査を開始した。

    きっかけとなったのは、F1イギリスGP決勝でマックス・フェルスタッペンがリヤウイングのトラブルによってクラッシュした一件だ。FIAは両チームの技術責任者と協議を進めており、必要と判断すれば追加の安全対策や設計変更、さらには将来的な禁止措置も視野に入れている。

    フェルスタッペンのクラッシュがFIAを動かす
    今回の調査の発端となったのは、シルバーストンでのフェルスタッペンのクラッシュだった。

    レース終盤、ストウ・コーナーで突然マシンの挙動を乱したフェルスタッペンはグラベルに飛び出してリタイア。原因の詳細は公表されていないが、リヤウイングの不具合が関係していることが判明している。

    フェルスタッペンは、そのわずか1週間前のオーストリアGP予選でも、空力の気流再付着(エアフロー・リアタッチメント)の問題によって最終コーナーでコースアウトしており、短期間で2度続いたトラブルに強い危機感を示した。

    「本当に危険だった。ケガをしていてもおかしくなかった。オーストリアでも今回も運が良かっただけだ。だから腹が立つんだ」

    この発言を受け、FIAは安全面から状況を精査する必要があると判断した。

    「マカレナ・ウイング」とは何か
    問題となっているのは、パドックで「マカレナ・ウイング」と呼ばれる新世代リヤウイングだ。

    従来型DRSとは異なり、上部フラップが大きく回転する構造となっており、フェラーリでは直線モードに入る際に約225度も時計回りに回転するとみられている。

    この大胆な動きによって空気抵抗を大幅に低減し、さらにごくわずかな揚力を発生させることで転がり抵抗まで減らすことを狙っている。

    現在このコンセプトを実戦投入しているのはフェラーリとレッドブルのみで、他チームよりも積極的な可動機構を採用している。

    レッドブルは従来型への回帰も検討
    レッドブル代表ローラン・メキースは、ベルギーGPまでに原因究明を進め、安全性を最優先すると説明した。

    「安全面についてはあらゆる可能性を検証する。必要であれば、どんな対応でも行う」

    レッドブルはこの可動式リヤウイングをマイアミGPから使用している。

    そのため、今回の問題がウイング設計そのものによるものなのか、それとも別要因なのかを慎重に分析している段階だという。

    原因を完全に特定できなければ、シーズン序盤まで使用していた従来型リヤウイングへ戻す可能性も排除していない。

    FIAはフェラーリにも説明を求める
    今回の調査はレッドブルだけが対象ではない。

    FIAは同じコンセプトを採用するフェラーリとも技術協議を進めており、可動式リヤウイング全体の安全性を再評価している。

    両チームの設計は事前にFIAの承認を受けており、導入時点で安全性の確認も行われている。

    現在の技術規則では、リヤウイングはストレートモードからコーナーモードへ400ミリ秒以内に切り替わらなければならず、さらにシステムに異常が発生した場合は、自動的にコーナーモードへ戻る「フェイルセーフ設計」が義務付けられている。

    今回の協議では、これらの安全機能が実戦環境でも十分に機能しているかが重点的に確認されている。

    禁止措置に発展する可能性も
    FIAが安全性に十分な保証を得られない場合、チームに追加の安全対策を義務付ける可能性がある。

    例えば、機械的なバックアップ機構の追加や、コーナー進入時の作動ロジック変更などが選択肢として考えられる。

    さらに踏み込めば、このタイプのリヤウイング自体を安全上の理由から禁止する可能性もある。

    マクラーレンを含む他チームも低ドラッグ型リヤウイングの開発を進めており、このコンセプトは今後さらに普及するとみられる。そのため、FIAが早い段階で一定の方向性を示す可能性もある。

    技術規則第C1.2条では、危険と判断された部品を装着したマシンについて、スチュワードは即時に参戦を禁止できる権限を持つことも定められている。

    フェラーリでは大きな問題は発生せず
    一方、フェラーリでは同様のトラブルは発生していない。

    このリヤウイングはプレシーズンテストで初登場し、中国GPではフリー走行で使用されたものの、万全を期してレース投入は見送られた。

    その後、マイアミGPから本格投入されて以降は継続使用されているが、これまで重大な不具合は報告されていない。

    今回のFIAの調査は、レッドブルの連続トラブルをきっかけとしながらも、今後普及が見込まれる可動式リヤウイング全体の安全基準を見直す重要なケースとなりそうだ。

    Source: The Race

  • F1 2031年に給油復活を検討 V8エンジン時代へ向けFIAが本格調査

    F1 2031年に給油復活を検討 V8エンジン時代へ向けFIAが本格調査

    FIA(国際自動車連盟)は、2031年に予定される次世代パワーユニット規則の一環として、F1で2009年を最後に廃止されたレース中の給油(リフューエリング)の復活を本格的に検討している。

    この構想は、2031年(合意がまとまれば2030年への前倒しも視野)から、現在の複雑で高コストなV6ターボハイブリッドに代わり、よりシンプルで軽量、低コストなV8エンジンへ移行する計画と密接に結び付いている。

    FIA「給油を検討している」
    FIA会長のモハメド・ビン・スライエムはイギリスGP週末、英国メディアに対し、給油復活について現在も調査を進めていることを明らかにした。

    「給油については、まさに今、検討しているところだ」

    「正しい方法で実施するのであれば、安全面は大きな懸念ではない。そのため現在調査を進めている。まだ何も決定したわけではない」

    さらに将来のパワーユニット像については、持続可能燃料と電動化を組み合わせる方向性を維持しつつも、現行より電動化比率を大きく引き下げる可能性を示した。

    「持続可能燃料と電動化を組み合わせる。電動化比率を10%以上にすることもあるかもしれない。まだあらゆる可能性を検討している段階だ」

    V8復活が給油議論を後押し
    給油復活が再び議論される最大の理由は、FIAが推進するV8エンジンへの回帰にある。

    自然吸気V8は、現在のV6ターボハイブリッドより燃費性能で劣るため、レース距離を走り切るにはより多くの燃料を搭載する必要がある。

    その結果、大型燃料タンクが必要となり、FIAが目標とするマシン軽量化の効果を打ち消してしまう可能性がある。

    ビン・スライエム会長は2031年のマシンで最大100kgもの軽量化を目標に掲げている。

    しかし、大容量燃料タンクを搭載すれば、その恩恵は大きく失われる。

    そのため、燃料タンクを小型化し、レース中に給油することで車重を抑える案が有力な選択肢として浮上している。

    FIAは燃料搭載量も調査
    FIAは現在、給油の有無だけでなく、スタート時の燃料搭載量やレース中の給油量なども含めて検証を進めている。

    ビン・スライエム会長は次のように説明した。

    「スタート時にどれだけ積むべきか、途中でどれだけ補給するべきか、現在検討している」

    「当然ながら、レース全体を給油なしで走るなら大型タンクが必要になる。そうでなければ途中でピットストップを行うことになる。まさにそこを調査している」

    給油時代は戦略の中心だった
    F1では1994年から2009年までレース中の給油が認められており、レース戦略の重要な要素となっていた。

    各チームは燃料搭載量を細かく調整し、軽いマシンでスタートして序盤にタイムを稼ぐ「軽タン戦略」や、給油回数を減らす代わりに重い燃料を積んでロングスティントを走るなど、多彩な戦略を展開していた。

    予選順位だけではなく、最初の給油タイミングが勝敗を左右するケースも少なくなく、オーバーテイクが難しいサーキットではピット戦略によって順位が入れ替わる場面が頻繁に見られた。

    一方で、給油中の火災事故など安全面のリスクや、設備・輸送コストの増大、さらにはサーキット内で大量の燃料を取り扱うことへの懸念もあり、F1は2010年からレース中の給油を禁止。以降はスタート時にレース全距離分の燃料を搭載する現在の方式へ移行した。

    しかし2031年以降に自然吸気V8への回帰が実現すれば、燃料消費量の増加によって再び大型燃料タンクが必要となるため、FIAは給油復活を有力な選択肢の一つとして検討している。

    2009年以来となる給油復活
    2009年までのV8エンジン時代は、レース中の給油を前提としていたため、燃料タンク容量は約90~100リットル(約70kg)で済んでいた。

    しかし2010年から給油が禁止されると、レース全距離を走るために燃料タンクは約200リットル(約150kg)まで大型化された。

    2014年にV6ターボハイブリッドが導入されると燃費性能が大幅に向上し、燃料搭載量は100kg前後まで削減。2026年規則でも約105kgに設定される予定となっている。

    一方、自然吸気V8へ戻れば燃料消費量は再び増加すると見られており、給油復活の必要性が現実味を帯び始めている。

    安全性やコストも検証対象
    給油復活には課題も少なくない。

    かつてF1では給油中の火災事故が何度か発生しており、安全面への懸念は依然として存在する。

    また、給油設備や輸送コストなどにより、各チームは年間約400万ドル(約6億円)の追加負担が発生するとの試算もある。

    FIAはこうしたコストや安全性に加え、レース内容への影響についても総合的な評価を進めている。

    FIA(国際自動車連盟) V型8気筒エンジン

    電動化は10~15%程度へ縮小か
    2031年の新エンジンでは、ハイブリッド機構自体は維持される見通しだ。

    ただし、現在のような大きな電動出力は採用しない方向で議論されている。

    ビン・スライエム会長は、電動化比率について次のように語った。

    「10%かもしれないし、15%かもしれない。しかし現在のように46%前後ということはない」

    「ドライバーがストレートでアクセルを戻さなければならない現状は望んでいない。そこから学ぶべき教訓があった」

    また、ターボチャージャーについても重量やコスト、サウンド面で課題があるとして否定的な見方を示した。

    「ターボは重量もコストも増える。そして音も失われる」

    「私としては、ターボかバッテリーか、そのどちらか一方で十分だと考えている」

    独立系エンジン導入とも連動
    今回の給油復活構想は、2031年に向けて検討されている「独立系エンジンサプライヤー」の導入とも並行して議論されている。

    FIAは、コスワースのような独立系メーカーが低コストV8エンジンを供給することで、カスタマーチームがメーカー系チームに依存しない体制を構築する案を検討している。

    V8化、電動化縮小、給油復活、独立系エンジン導入はいずれも、2031年以降のF1を「より軽く、より安く、よりシンプルなカテゴリー」に再構築するというFIAの大きなビジョンの一部となっている。

    最終的なレギュレーション策定にはメーカーとの協議が必要だが、給油復活は16年ぶりに現実的な選択肢として本格的な議論の段階へ入った。

    【関連】
    ・F1 2031年からカスタマーPU廃止を検討 独立エンジン導入も視野

  • F1 2031年からカスタマーPU廃止を検討 独立エンジン導入も視野

    F1 2031年からカスタマーPU廃止を検討 独立エンジン導入も視野

    FIA(国際自動車連盟)は、2031年に予定される次世代パワーユニット(PU)規則に向けて、F1のカスタマーエンジン体制を見直す構想を検討している。より低コストなV8エンジンへの移行を機に、独立系サプライヤーによる「共通エンジン」を導入し、チーム間の依存関係を解消する狙いだ。

    現在のF1では、多くのチームが自社製PUではなくメーカー製のカスタマーPUを使用している。しかしFIAは、この体制がメーカーとカスタマーチームの力関係を生み、競技面や政治面で公平性を損なう可能性があると懸念している。

    2031年からV8導入と独立エンジン供給を構想
    FIA会長モハメド・ビン・スライエムとF1 CEOのステファノ・ドメニカリは以前から、2031年以降のF1で「より軽く、より安く、より大きなサウンド」を持つパワーユニットへの移行を支持してきた。

    現在有力視されている案は、自然吸気V8エンジンに小型の電動システムを組み合わせる構成だ。これにより現在のハイブリッドPUより大幅なコスト削減と軽量化が期待されている。

    さらにFIAは、メーカー製PUをカスタマーチームへ供給する現在の仕組みを見直し、独立した第三者メーカーが供給する「ホワイトラベルエンジン(共通エンジン)」を用意する案も検討している。

    メーカーとカスタマーチームの関係性を問題視
    この構想の背景には、近年議論となっているチーム間の提携関係がある。

    マクラーレンCEOのザク・ブラウンは以前から、レッドブル・レーシングとレーシングブルズの関係について懸念を表明。ローラン・メキースがガーデニング休暇なしでレーシングブルズからレッドブル代表へ就任した件などを例に挙げ、系列チームの在り方に疑問を呈してきた。

    また、メルセデスがアルピーヌ株式24%の取得を検討したものの、価格面で交渉が決裂したことも、メーカーとチームの関係性が注目される一例となっている。

    ビン・スライエム会長は、シルバーストンでロイター通信に対し、次のように語った。

    「AチームがBチームをエンジン供給によって支配するようなことはなくなる」

    さらに、

    「もし十分に手頃な価格で実現できるなら、Bチーム向けには共通エンジンを用意する。そうすれば『こちらに投票しなければ良いエンジンは供給しない』というような影響力はなくなる」

    と語り、政治的な影響力を排除する狙いを明かした。

    F1 エンジン

    ドメニカリ「メーカー主導になり過ぎてはならない」
    ステファノ・ドメニカリCEOも今年4月、独立エンジンの必要性について言及していた。

    ドメニカリは、かつてのコスワースのような独立メーカーが存在していれば、メーカーの動向に左右されない柔軟な運営が可能だったと説明する。

    「もし独立メーカーが存在していれば、『F1/FIA公認エンジンを用意し、希望するチームに供給しよう』という選択肢があった」

    一方で、

    「自動車メーカーはF1に不可欠な存在であり、その貢献には毎日感謝しなければならない。しかしメーカーがスポーツ全体の方向性を決める状況には戻るべきではない。それは我々が学んだ教訓だ」

    と述べ、メーカーへの依存を減らす必要性を強調した。

    かつて主流だった独立エンジン
    第三者製エンジンはかつてF1では一般的だった。

    コスワースは2013年までマルシャへエンジンを供給していたが、2014年に導入された複雑かつ高額なターボハイブリッドPUの時代になると、独立メーカーによる供給は事実上不可能となった。

    V8化によってPUが簡素化されれば、再び独立サプライヤーが参入できる可能性がある。

    現在のPU供給体制にも変化の兆し
    現在、メルセデスHPPはマクラーレン、ウィリアムズ、アルピーヌの3チームへPUを供給しているが、2031年には供給先を2チームへ減らしたい考えとされる。

    レッドブル・フォードはレッドブルとレーシングブルズへ供給し、フェラーリはハースとキャデラックへPUを供給している。

    一方、アウディはワークスチームとして参戦し、アストンマーティンはホンダとのワークス体制へ移行予定。さらにキャデラックは2029年から自社PU開発を開始する計画で、V8化にも前向きな姿勢を示している。

    2030年前倒し導入の可能性も
    現在のコンコルド協定およびPU協定は2030年末まで有効となっている。

    そのためFIAは2031年以降であれば各PUメーカーの承認なしでも新規則を導入できる権限を持つ。ただし、自動車メーカーとの関係悪化を避けるため、可能な限り合意形成を目指す方針だ。

    現在の6つのPUメーカー(メルセデス、フェラーリ、レッドブル・フォード、ホンダ、アウディ、ゼネラルモーターズ)の大多数が賛成すれば、V8規則は2030年へ1年前倒しされる可能性もある。

    ビン・スライエム会長は5月に、「2031年ならFIAはメーカー投票なしでV8を導入できる権限を持つ。しかし我々は2030年への前倒しを望んでいる。メーカーも実現を望んでいると前向きに考えている」と語っている。

    なお、多くのメーカーはV8への移行自体には概ね賛成している一方で、アウディは将来規則でもターボチャージャーを維持すべきとの立場を取っており、この点では少数派とみられている。

    今回の構想はまだ正式決定ではないものの、2031年以降のF1はV8化だけでなく、チームとPUメーカーの関係そのものを見直す大きな転換点となる可能性がある。FIAは競争の公平性とチームの独立性を高める新たな枠組みづくりを目指し、今後もメーカー各社との協議を進めていく見通しだ。

    【関連】
    ・F1 2031年に給油復活を検討 V8エンジン時代へ向けFIAが本格調査

  • マーティン・ブランドル FIA説明に反論「F1セーフティカー規則は見直すべき」

    マーティン・ブランドル FIA説明に反論「F1セーフティカー規則は見直すべき」

    マーティン・ブランドルは、F1イギリスGPがセーフティカー先導のまま終了したことについて、現行のセーフティカー規則は見直されるべきだと強く主張した。

    FIAはレース後、「セーフティカー・イン・ディス・ラップ」の表示はソフトウェアエラーによる誤表示だったと説明したが、ブランドルは規則そのものにも問題があると指摘。周回遅れ車両の扱いを改善すれば、より良いレースフィニッシュが実現できるとの考えを示した。

    何が起きたのか
    終盤、マックス・フェルスタッペンのクラッシュによってセーフティカーが導入されると、タイミングモニターには「Safety Car In This Lap(この周でセーフティカー退去)」との表示が出され、最終ラップの再スタートが期待された。

    しかし実際にはセーフティカーはピットへ戻らず、そのままレース終了。シャルル・ルクレールが今季初優勝を飾った一方で、観客や関係者には大きな混乱が広がった。

    レース後、FIAは「周回遅れ車両の追い越し手順は規則どおり実施された」と説明。そのうえで、「Safety Car In This Lap」の表示はソフトウェアエラーによる誤表示だったと明らかにした。

    ブランドル「規則を変えるべきだ」
    FIAの説明を受けても、ブランドルは現行ルールそのものが改善されるべきだと主張した。

    「規則に何と書いてあろうと、これは正しくない。特にスパのような長いサーキットでは、周回遅れのマシンが隊列を追い付くまで待たなければならないのは時間がかかりすぎる」

    ブランドルは、本来このルールは周回遅れ車両を先頭争いの邪魔にならないよう排除するために導入されたものだと説明。その目的を果たす方法は、必ずしも現在の運用だけではないと訴えた。

    「彼らを最後尾まで戻す必要はない。後方に下がらせるだけでも十分だ。ショーとしても、その方がいい」

    規則の解釈にも疑問
    ブランドルはFIA規則を読み上げながら、周回遅れ車両が実際に隊列最後尾へ到達するまで待つ必要があるとは条文に明記されていないと指摘した。

    「規則には、周回遅れ車両が先頭集団を追い越した後、セーフティカーはライトを消灯すると書かれている。彼らは安全な速度で走行しなければならないともある。しかし、隊列最後尾まで戻らなければならないとは書かれていない」

    「私が見る限り、1周待たなければならないという規定は見当たらない。もちろん他にも条文はあるが、いずれにしても、このルールは変更されるべきだ」

    ファンのためにも改善を求める
    ブランドルは、現地に集まった観客やテレビ観戦するファンの期待に応えるためにも、セーフティカー運用を見直す必要があると強調した。

    「素晴らしい観客がいて、世界中の人たちがテレビやオンラインで観戦している。彼らはレースらしいフィニッシュを見る権利がある」

    「赤旗にして再スタートする方法もあるが、手続きが多く時間もかかる。特に長いサーキットでは、周回遅れ車両の処理をもっと効率化し、セーフティカーの時間をこれ以上長引かせない方法を考えるべきだ」

    今回の混乱を受け、FIAはソフトウェアエラーが誤表示の原因だったと説明している。一方でブランドルは、それとは別に現行規則そのものにも改善の余地があると指摘しており、今後セーフティカー運用や周回遅れ車両の扱いが議論される可能性が高まりそうだ。

    【関連】
    ・FIA セーフティカー混乱の原因を説明「ソフトウェアエラーで誤表示」

  • FIA セーフティカー混乱の原因を説明「ソフトウェアエラーで誤表示」

    FIA セーフティカー混乱の原因を説明「ソフトウェアエラーで誤表示」

    FIAは、F1イギリスGP終盤に発生したセーフティカー運用を巡る混乱について、「ソフトウェアエラー」が原因だったと説明した。タイミングモニターには一度「Safety Car In This Lap(この周回でセーフティカー退去)」と表示されたものの、実際にはセーフティカーはそのままコース上に留まり、レースはセーフティカー先導のまま終了した。

    優勝争いが最終ラップのスプリント勝負になると期待していたファンや関係者の間では困惑が広がったが、FIAは今回の運用は規則どおりだったと強調している。

    終盤の誤表示が混乱を招く
    セーフティカーが導入されたのは、残り4周でマックス・フェルスタッペンがクラッシュしたことがきっかけだった。直ちにダブルイエローフラッグが提示され、その後セーフティカーが出動した。

    残り2周の時点では周回遅れのマシンに先頭集団の追い越し(アンラップ)が許可され、その直後、タイミングモニターには「Safety Car In This Lap」のメッセージが表示された。

    しかし、その直後に再びセーフティカー継続を示す表示へ切り替わり、最終ラップのリスタートが行われるとの期待は消滅。レースはセーフティカー先導のままチェッカーフラッグを迎えた。

    FIA「ソフトウェアエラーによる誤表示だった」
    この混乱についてFIAは声明を発表し、タイミングモニターの表示ミスであり、実際のレース運営は規則どおりだったと説明した。

    FIAは次のように述べている。

    「セーフティカー運用に関する規則(付則B5 第13.5条)では、アンラップ手続き終了後に1周を完了しなければならないと定められている。レースオペレーションはこの手順に従って運用を行った。『Safety Car In This Lap』という表示は、ソフトウェアエラーによって誤って表示されたものだった」

    つまり、周回遅れの車両が隊列を追い越したあと、さらに1周を消化する必要があるため、規則上は最終ラップでのリスタートは不可能だったということになる。

    2021年アブダビGPとの違い
    セーフティカー終了手順は、2021年のアブダビGPでタイトル争いを左右した裁定以来、特に注目されるルールとなっている。

    当時はレースディレクターだったマイケル・マシが、一部の周回遅れ車両だけにアンラップを認め、その周回の終わりにレースを再開したことで大きな論争を招いた。

    一方、今回のイギリスGPでは「なぜ周回遅れ車両をアンラップさせたのか」という疑問も浮上した。アンラップを行わなければ、より早くリスタートできた可能性があったためだ。

    しかしFIAの規則では、レースディレクターは条件を満たした場合、周回遅れ車両にアンラップを指示しなければならないと定められている。

    規則でもアンラップは義務付け
    FIA国際競技規則付則B5第13.5条aには、次のように記されている。

    「レースディレクターの指示を受けた場合、セーフティカーのグリーンライトが点灯し、セーフティカーと首位車両の間にいる車両は追い越すよう指示される。これらすべての車両がセーフティカーを追い越した後、グリーンライトは消灯され、B5第13.2条cに定める場合を除き、追い越しは禁止される」

    今回の混乱はタイミングシステムの誤表示によって混乱を招いたものの、FIAは実際のセーフティカー運用自体は競技規則に従って実施されており、手続きに問題はなかったとの立場を示している。

    【関連】
    ・F1イギリスGP 決勝展開:ルクレール今季初勝利 幻となった最終ラップ決戦