カテゴリー: FIA(国際自動車連盟)

  • FIAが中東情勢でWRCサウジアラビア戦を中止 F1終盤戦にも波紋

    FIAが中東情勢でWRCサウジアラビア戦を中止 F1終盤戦にも波紋

    FIAとWRCプロモーターは、2026年世界ラリー選手権(WRC)の最終戦として予定されていたラリー・サウジアラビアを、WRCのカレンダーから外すことを発表した。中東地域を巡る不確実性が物流面に影響を及ぼしていることが理由とされている。

    この決定は、F1が11月末から12月にかけて中東でシーズン終盤戦を迎える約2カ月前に下された。現時点でF1のカレンダーに変更は発表されていないものの、WRCの判断によってF1のカタールGPとアブダビGPの開催にも改めて注目が集まることになる。

    WRCサウジアラビア戦をカレンダーから除外
    ラリー・サウジアラビアは11月12~15日に開催される予定だった。FIAとWRCプロモーターは、サウジアラビア自動車・モーターサイクル連盟(SAMF)、現地オーガナイザー、選手権関係者とともに、WRCイベントを予定通り実施するためのあらゆる可能性を検討してきたという。

    しかしFIA(国際自動車連盟)は、「地域における継続的な不確実性と、それが物流手配に及ぼす影響」を理由に、2026年についてはWRCとしての開催を断念すると説明した。

    ただし、ラリー・サウジアラビアそのものが中止されるわけではない。同イベントは11月12~15日に予定通り開催され、FIA中東ラリー選手権(MERC)の一戦として実施される。

    サウジアラビア側も、開催能力や安全面に問題があったとの見方を否定している。

    SAMFおよびサウジ・モータースポーツ・カンパニー(SMC)の会長を務めるハリド・ビン・スルタン・アル・アブドゥッラー・アル・ファイサル王子は、サウジアラビアはイベント開催の準備を整えていたと強調した。

    「FIAとWRCプロモーターが下した決定を尊重している」

    「サウジアラビアの準備状況や自信には何の変化もない。王国は開催する準備ができており、準備作業も進んでいた。安全かつ成功裏に国際モータースポーツを開催できる我々の能力は明確だ」

    WRCはサルディニアでシーズン終了
    サウジアラビア戦がWRCから外れたことで、2026年シーズンは10月1~4日に開催されるラリー・イタリア・サルディニアが第13戦かつ最終戦となる。カレンダー変更についてはFIA世界モータースポーツ評議会(WMSC)の承認が必要となる。

    FIA会長のモハメド・ビン・スライエムは、サウジアラビア戦を維持するために関係者とさまざまな選択肢を検討したと説明した。

    「ここ数カ月、サウジアラビアのパートナー、加盟クラブであるSAMF、WRCプロモーター、そして選手権関係者と緊密に協力し、ラリー・サウジアラビアを予定通り開催するためのあらゆる可能性を検討してきた」

    「しかし、地域情勢が継続的に変化していることから、今年はラリー・サウジアラビアのWRC部門を開催しないことになった。特にイベントの準備に携わったすべての人々が多大な努力をしてきただけに、決して簡単な決断ではない」

    一方でビン・スライエムは、サウジアラビアでのWRC開催そのものに対するFIAの姿勢は変わっていないと強調している。

    「今年はWRC部門が開催されないものの、オーガナイザー、そしてこのラリーの長期的な将来に対する我々の信頼は変わっていない」

    「FIA中東ラリー選手権のイベントは11月に予定通り開催される。我々はSAMF、SMC、オーガナイザーと引き続き緊密に協力し、イベントの成功を支援していく」

    「今後は将来に焦点を移す。2027年にFIA世界ラリー選手権をサウジアラビアへ戻すことを目指し、サウジアラビアのパートナーおよびWRCプロモーターと引き続き協力していく」

    国際自動車連盟

    F1のカタールGPとアブダビGPは現時点で変更なし
    今回の決定が注目される理由のひとつが、F1も2026年シーズン終盤に中東でのレースを予定していることだ。

    F1は11月29日にカタールGP、12月6日にアブダビGPを予定しており、いずれも現時点ではカレンダーに変更は発表されていない。WRCのサウジアラビア戦とは開催国も競技の物流条件も異なるため、今回の決定がそのままF1の開催可否を意味するものではない。

    ただしFIAは7月にも、中東情勢と貨物輸送および渡航への影響を理由として、2026年FIA世界耐久選手権(WEC)のカタール戦とバーレーン戦を取りやめ、バルセロナとモンツァで代替開催することを決めている。

    WRCでも同様に物流上の不確実性を理由としたカレンダー変更が決まったことで、年末に中東へ向かうF1についても今後の地域情勢と物流環境が焦点となる。

    現段階でF1のカタールGPとアブダビGPは予定通り開催されるスケジュールだが、FIAが別カテゴリーで相次いで中東開催の見直しを行っているだけに、シーズン終盤に向けて状況が注視されることになりそうだ。

  • ホンダF1 FIA会長の特別救済案に冷静「魔法のような解決策はない」

    ホンダF1 FIA会長の特別救済案に冷静「魔法のような解決策はない」

    ホンダF1のトラックサイド・ゼネラルマネージャー兼チーフエンジニアを務める折原伸太郎は、FIAのモハメド・ビン・スライエム会長がアストンマーティン・ホンダの競争力向上に向けた追加支援を検討する姿勢を示していることについて、「魔法のような解決策はない」と冷静な見方を示した。

    ビン・スライエム会長はF1スペインGPが行われたマドリンクで、フェルナンド・アロンソのF1残留を望む立場から本人に改善策を直接尋ねたことを明かした。

    一方、ホンダ側は現時点でFIAとの具体的な協議を把握しておらず、あくまで自らの開発計画を進めることに集中している。

    FIA会長がアロンソに直接「何をしてほしいか教えて」
    ビン・スライエム会長はマドリードで、アロンソと直接交わした会話についてメディアに説明した。

    「何を望んでいるのか教えてほしい。君はドライバーなのだから、結果を改善するために我々に何をしてほしいのか、私のところに来て話してほしい」

    ビン・スライエム会長は、競争力不足を理由に2度のF1ワールドチャンピオンであるアロンソがグランプリレースを去ることを望んでおらず、ホンダの開発を後押しするためにFIAがさらに何をできるのかを模索している。

    F1スペインGPの週末には、ホンダの2027年に向けた開発を加速させるため、新たな特別措置が検討される可能性も報じられた。ただし、現段階で具体的な規則変更や支援策が正式に決まっているわけではない。

    メルセデスF1代表のトト・ヴォルフも、競争の公平性を維持する規則の枠内であれば、こうした議論そのものに問題はないとの考えを示している。

    「ルールはスポーツにとって最善となるように存在しているし、ときには調整が必要になる」

    「公平な話し合いだ。彼ら(ホンダ)にはもっと必要だと思う。会長とアロンソの話し合いは公平なものだった」

    「我々はすべてのトップコンストラクターにこのスポーツに関わっていてほしい」

    折原伸太郎「我々は開発計画に集中している」
    しかし、ホンダF1のトラックサイド・ゼネラルマネージャー兼チーフエンジニアを務める折原伸太郎は、FIAからの追加措置によって一気に状況を変えられるとの見方には慎重だ。

    ビン・スライエム会長が検討している具体策について問われた折原伸太郎は「分かりません。ただ、彼はいろいろと考えていると思います」としたうえで、ホンダの基本姿勢を説明した。

    「彼が我々に魔法のような解決策を与えてくれるとは思っていません」

    「我々は単純に自分たちの開発計画に集中し、製品を改善するために懸命に取り組んでいます。それが現時点での我々の計画です」

    また、ホンダがビン・スライエム会長やFIAと追加支援について具体的な話し合いを行ったのかと問われると、折原伸太郎は「分かりません」と答えている。

    ホンダはすでに2026年F1パワーユニット規則に設けられたADUO(Additional Development and Upgrade Opportunities)の対象となっている。この仕組みは競争力で後れを取ったメーカーに追加の開発機会を認めるものであり、ホンダには開発を進めるための機会が与えられている。

    ただし、ADUOはパフォーマンスを直接与える仕組みではない。追加の開発機会やリソースを活用し、最終的にはメーカー自身が性能を引き出さなければならない。

    ホンダはオランダGPでスペック2のパワーユニットを投入。その後の3戦ではドライバビリティの改善を進めており、折原伸太郎はF1スペインGP後、「今後はパフォーマンス向上により注力できる」と説明している。

    ホンダF1 アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

    アロンソ「この結果でスペインのファンに別れを告げたくない」
    今回の議論の背景には、アロンソがF1での将来をまだ決めていないことがある。アロンソは引退の可能性を示唆する一方、続けるのであれば1年だけではなく、さらに長期間になる可能性にも言及している。

    「あと1年、2年、3年、あるいは何年になるか分からないけど、もし続けるなら、それは彼らのためでもある」

    アロンソは母国スペインのファンについてそう語った。

    「なぜなら、人生をずっとステアリングの後ろで過ごしてきて、今年のような結果でスペインのファンに別れを告げるのは、チームの誰も望んでいないと思うし、特にファンはそんな形を受け入れるべきではないと思う」

    アストンマーティンは「プランA=アロンソ続投」
    アストンマーティンのアンバサダーを務めるペドロ・デ・ラ・ロサは、アロンソが離脱した場合に備えた代替案が存在することを認めながらも、現在の最優先事項はアロンソの残留だと説明した。

    「当然、プランBはある。どのチームにも常に必要なものだからね」

    「ただ、今はプランAに取り組んでいる。それはフェルナンドに続けてもらうことだ。決断を迫るようなプレッシャーはかけたくない。必要なだけ時間を与えている」

    ビン・スライエム会長がアロンソのF1残留を念頭にホンダへの追加支援を模索し、ヴォルフも公平な規則の範囲内での調整を支持する一方、ホンダ自身は特別な救済措置を前提としていない。折原伸太郎は「魔法のような解決策」に期待するのではなく、自らの開発計画を着実に進めることが競争力向上への道だという姿勢を明確にしている。

  • セバスチャン・ベッテル F1のV8回帰論に警鐘「持続可能燃料も万能薬ではない」

    セバスチャン・ベッテル F1のV8回帰論に警鐘「持続可能燃料も万能薬ではない」

    セバスチャン・ベッテルは、F1が将来的にV8エンジンと持続可能燃料を組み合わせる方向へ進む可能性について、ひとつの技術だけですべての問題を解決できる「万能薬」は存在しないとの考えを示した。

    FIA会長のモハメド・ビン・スライエムは、遅くとも2031年までに、電動出力を最小限に抑え、持続可能燃料を使用するV8エンジンへF1を移行させる構想を明らかにしている。

    ベッテルは持続可能燃料の可能性を高く評価する一方、それだけを解決策として捉えるべきではないと強調した。

    現代のF1マシンも「F1が体現すべきもの」
    ベッテルは最近、モンツァでミハエル・シューマッハがタイトルを獲得したフェラーリF2002をドライブし、F1マシンのコックピットに復帰した。その経験も踏まえ、現在のF1について自身の考えを語った。

    「僕はエキサイティングだと思う。レースもエキサイティングだ。質問の意図は分かっているし、だからこそ今のF1はすごく面白いんだと思う。F1を見ていると、分析できることが本当にたくさんあるからね」

    「もちろん、ドライバーの立場なら最高のマシンを運転して、レースに勝ちたい。でも、じゃあ最高のマシンとは何なのか。2002年のマシンは当時の最先端であり、パイオニアだった。そして、F1というものを非常によく体現していた」

    「今のマシンも同じことをしていると思う。F1はパフォーマンス、精密さ、規律、ハードワークを追求するものだけど、同時に責任を持って前進させていくことでもある。つまり未来についても考えるということで、今のマシンはそれを実現しようとしている」

    一方でベッテルは、現在の技術規則のすべてに賛同しているわけではないと認める。

    「ドライビングという観点では、今のレギュレーションのすべてに賛成しているわけではない。でも未来を考えれば、そこには人々を一緒に連れていく大きなチャンスがあると思う」

    「そして、このスポーツがかつて何だったのか、今何なのか、これから何であるべきなのか、何になれるのかを改めて思い出してもらえるかもしれない。それを責任ある形でやることが大切だ。一方を選んだからといって、もう一方を排除する必要はない。僕たちが好きなものを組み合わせられる方法を見つけなければならないと思う」

    V8と持続可能燃料だけでは問題は解決しない
    ビン・スライエムは、F1が将来的にV8エンジンへ回帰し、持続可能燃料と最低限の電動化を組み合わせる方針を示している。

    しかしベッテルは、持続可能燃料を導入すればF1が抱える課題が一気に解決するという考えには慎重だ。

    「何かひとつを導入すれば、すべての問題が解決するというものではない。僕が知っているパドックの多くの人たち、そして僕自身もそのひとりだったけど、誰もが万能薬のようなものを探している。何かひとつで一気に前進して、アドバンテージを得られるものをね。でも、ひとつだけではないんだ」

    「常にたくさんのものの組み合わせだ。F1やモーターレーシングを考えれば、持続可能燃料は進むべき方向だと思う。そこにはF1だけでなく、ほかのレースカテゴリーにも影響を与えられる非常に大きな可能性がある」

    ベッテルは、次世代F1マシンの設計についても、技術的な先進性だけではなく、その技術が社会にどのようにつながるのかを考える必要があると指摘する。

    「次世代のマシンを形作っていくなら、責任ある方法でそれを実現できる大きな可能性があると思う。技術的には素晴らしいものでも、公道車には応用できないものもあるかもしれない。その部分について考えることも、F1の責任だと思う」

    「もしそうした可能性がなくなったのなら、もっとシンプルにすることを受け入れる段階に来るのかもしれない。責任を果たし、模範を示す方法はいろいろある。それはレーストラックの上だけではなく、サーキットのすぐ外側でもできることだ」

    「僕はこれからの未来と、そこで何が待っているのかを楽しみにしている。F1には、僕の人生を形作り、刺激を与えてくれた素晴らしい価値がたくさんある。このスポーツは世界中の多くの人々に届いているし、その力を、本当に意味があって影響を与えられるさまざまなことにも使えると思う」

    V型8気筒エンジンについて語ったセバスチャン・ベッテル

    アントネッリの最年少王者更新も歓迎
    ベッテルは、自身が保持するF1史上最年少ワールドチャンピオン記録が更新される可能性についても語った。

    ベッテルは2010年に23歳で初のF1ワールドチャンピオンに輝いた。一方、2026年にタイトル争いをリードするキミ・アントネッリは20歳であり、今季タイトルを獲得すればベッテルの記録を大幅に更新することになる。

    「彼が達成したら、僕はすごくうれしいよ。彼は素晴らしい一年を送っている。昔から『記録は破られるためにある』と言うからね。彼にはこれから、それを実現するための時間がたくさんある。僕はこのスポーツが好きだから、ひとりの観客として見てもすごくエキサイティングだ」

    「ほかのドライバーたちにも巻き返して、もっと争いに加わってほしいとは思っている。僕は今では独立した立場だし、彼が成功するなら素直にうれしい。そこまで到達するために、どれだけ多くの努力が必要なのかを知っているからね。そして最終的に誰が勝ったとしても、それだけのものに値するはずだ」

    V8エンジンへの回帰や持続可能燃料は、将来のF1をめぐる議論の重要な要素となっている。しかしベッテルは、過去の魅力を取り戻すことと未来への責任は相反するものではなく、単一の技術に答えを求めるのではなく、複数の要素を組み合わせながらF1の価値を維持していくことが重要だと訴えている。

  • FIA 12番目のF1チームに中国勢を歓迎 BYDと吉利が関心「中国から来るべき」

    FIA 12番目のF1チームに中国勢を歓迎 BYDと吉利が関心「中国から来るべき」

    FIA(国際自動車連盟)のモハメド・ビン・スライエム会長は、F1に12番目のチームを迎える可能性について、中国メーカーが参入するのであれば歓迎する姿勢を示した。すでにBYDと吉利汽車(Geely)の双方と話し合いを行っており、新規参入のための公募プロセスを再び開始する可能性にも言及している。

    一方で、ビン・スライエムは新規メーカーを呼び込むためにF1の技術規則を変更する考えはないと強調。中国メーカーであっても、FIAとF1が定めた既存の規則と条件を受け入れることが参入の前提になるとしている。

    FIA会長「必要なのはただのチームではない」
    FIAは2023年初頭、ビン・スライエムの主導で新規参入チームを募る意向表明プロセスを開始した。当時は既存F1チームの多くがグリッド拡大に慎重だったものの、アンドレッティを母体としたキャデラックの計画が最終的に認められ、2026年から11番目のチームとしてF1に参戦している。

    そして現在、さらなるグリッド拡大の候補として浮上しているのが中国メーカーだ。

    F1スペインGPに合わせてマドリードで開催されたNew Economy Forumで、12番目のチームを受け入れる可能性について質問されたビン・スライエムは、次のように語った。

    「FIAは12番目のチームに向けたプロセスを開くことができる。しかし、我々にチームが必要なのか?」

    そのうえで、自らこう続けた。

    「いや、我々に必要なのは単なる1チームではない。我々が必要としている“そのチーム”だ」

    ビン・スライエムは、F1が米国市場で3レースを開催し、ハースに加えて自動車メーカーであるキャデラックを迎えたことを例に挙げ、中国についても同じようにメーカーの参入が重要だと説明した。

    「今、我々は米国で3つのレースを開催している。そしてハースがあり、自動車メーカーも必要だった」

    「だから私は言った。そしてプロモーターであるFOMも同意している。我々にはそのチームが必要であり、そのチームは中国から来るべきだ」

    BYDと吉利がF1参入に関心
    具体的な候補として挙げられたのがBYDと吉利だ。

    ビン・スライエムによれば、両社の関係者とすでに直接会談しており、F1参入への関心を示されているという。

    「私は他のメーカーとも会談を行った。彼らは私のところへ来て『我々は参入する必要がある』と言った。そのひとつがBYDで、もうひとつが吉利だった」

    「我々は彼らに『分かった。あなたたちが来るのであれば、意向表明のプロセスを開こう』と伝えた」

    報道によると、BYDは既存チームを買収してF1へ進出するよりも、自社による完全な新規チームの立ち上げを検討している。

    アウディはザウバーを買収する形でF1参入の準備を進めたが、BYDが完全な新規参入を選択する場合には、FIAが改めて新チーム募集の手続きを実施する必要がある。

    ビン・スライエムはBYDとの話し合いについても明かした。

    「会談では非常に明確に伝えた。『まず既存チームを取得して始めてはどうか』と。これはBYDとの話だ。隠す必要はない」

    「彼らは『いや、我々は自分たちのチームが欲しい』と答えた」

    これに対し、ビン・スライエムは本格的な計画を提示するよう求めたという。

    「私は『分かった。それなら、本当に実現可能なのかを判断できるだけの真剣な提案を持って戻ってきてほしい。そしてこれが我々の規則だ』と伝えた」

    「規則については非常に明確に話した」

    中国メーカーのためにF1規則は変更しない
    F1は2026年から新しいパワーユニット規則を導入している。

    持続可能燃料の採用、電動出力比率の拡大、MGU-Hの廃止などは、新たな自動車メーカーのF1参入を促す重要な要素となった。アウディがワークスメーカーとして参戦を決めたほか、一度はF1撤退を表明したホンダも方針を転換し、パワーユニットメーカーとしてF1に復帰している。

    ただし、中国メーカーの技術的な要望に応じて規則を変更することはないとビン・スライエムは強調する。

    「規則が中国メーカーによって影響を受けることはない。我々にそんなことはできない」

    「規則は継続性を持ち、安定していなければならない」

    BYDをはじめとする中国メーカーは電気自動車分野で世界をリードする存在となっているが、ビン・スライエムはFIAが完全電動化だけを唯一の方向性としているわけではないとも説明した。

    「中国が電動化の分野で先頭に立っていることは分かっている。しかし、電動化という目標を達成する方法はそれだけなのか?」

    「我々が達成したいことは何なのか。クリーンな環境とクリーンな空気だ。それを実現する方法はいくつもある」

    FIAは今後、世界ラリー選手権(WRC)を含む各カテゴリーで、水素、ハイブリッド、電動化、持続可能燃料など複数の技術を検討していくとしている。

    中国にはF1参入の条件がそろっている
    ビン・スライエムは、中国メーカーがF1に参入する合理性は十分にあると考えている。

    中国ではすでにF1中国GPが開催され、大きな市場を形成している。中国メーカーの存在感も拡大しており、2022年から2024年までザウバーで周冠宇がF1に参戦した実績もある。

    「中国ではすでにレースを開催している。それは非常に大きなイベントだ。メーカーも存在しているし、中国人ドライバーもいた。そして中国の技術も存在している」

    ただし、参入条件について特例を設ける考えはない。

    「だが、それは我々の条件と規則のもとで行われなければならない。それがすべての人にとって公平だからだ」

    「それを守ることもFIAの責任だ」

    キャデラックの参入によって2026年から11チーム体制となったF1だが、FIAは早くも次の拡大を視野に入れている。その対象がBYDあるいは吉利をはじめとする中国メーカーとなれば、F1のグローバル戦略にとっても大きな意味を持つ。

    ただし、ビン・スライエムの発言からも明らかなように、FIAが求めているのは単なるグリッド拡大ではない。中国を代表するメーカーが、既存チームと同じ規則と条件のもとで持続可能なF1プロジェクトを提示できるかが、12番目のチーム誕生に向けた最大の条件となりそうだ。

  • 2027年F1カレンダー発表 全24戦でスプリント10戦に拡大 日本GPで初開催

    2027年F1カレンダー発表 全24戦でスプリント10戦に拡大 日本GPで初開催

    F1とFIA(国際自動車連盟)は9月16日、世界モータースポーツ評議会(WMSC)の承認を受け、2027年F1世界選手権のカレンダーを正式発表した。2027年シーズンは22カ国を舞台に全24戦で争われる。

    最大の変更点のひとつがスプリントの拡大だ。2026年までの年間6戦から10戦へと増加し、日本GPでは初めてスプリントが開催される。バーレーン、オーストラリア、モナコ、アブダビも初のスプリント開催地となるほか、ポルトガルGPとトルコGPがF1カレンダーに復帰する。

    2027年F1は全24戦 ポルトガルとトルコが復帰
    2027年のプレシーズンテストは2月24日から27日までバーレーンで行われ、そのままバーレーンGPでシーズンが開幕する。第2戦サウジアラビアGPを経て、オーストラリア、日本、中国と転戦し、その後はマイアミGP、カナダGPへと続く。

    ヨーロッパラウンドでは、モナコGPの後となる6月にポルトガルGPがF1カレンダーへ復帰する。

    さらに10月にはトルコGPも復活。アゼルバイジャンGPとシンガポールGPの間に組み込まれる。

    シーズン終盤はアメリカGP、メキシコシティGP、サンパウロGP、ラスベガスGPと続き、カタールGP、アブダビGPの中東2連戦で2027年シーズンを締めくくる。

    F1は、5大陸に歴史あるサーキットと世界的な都市を組み合わせる一方、各大会をより効率的な地理的順序で配置することで、長期的なサステナビリティ目標にも配慮したカレンダーになっていると説明している。

    日本GPで初スプリント 2027年は全10戦に拡大
    2027年にはスプリントの開催数が従来の6戦から10戦へと大幅に増加する。

    初めてスプリントを開催するのはバーレーンGP、オーストラリアGP、日本GP、モナコGP、アブダビGPの5大会。日本GPでもスプリントが初導入され、金曜日にスプリント予選、土曜日にスプリントとグランプリ予選が行われる週末フォーマットとなる。

    また、カナダGP、イギリスGP、イタリアGP、サンパウロGP、カタールGPでもスプリントが開催され、合計10大会となる。

    特にモナコGPでは、狭いモンテカルロ市街地コースでスプリント予選とグランプリ予選という2度の予選セッションが行われることになり、ドライバーにはより多くの緊張感と精度が要求される週末となる。

    2027年F1 スプリント開催10大会
    バーレーンGP ※初開催
    オーストラリアGP ※初開催
    日本GP ※初開催
    モナコGP ※初開催
    カナダGP
    イギリスGP
    イタリアGP
    サンパウロGP
    カタールGP
    アブダビGP ※初開催

    F1はスプリント拡大の背景として、2021年の導入以降、スプリント開催週末がファンから高い支持を得ていることを挙げている。

    F1が示したデータによれば、スプリント開催週末の総視聴者数は通常のグランプリ週末と比較して12%多く、スプリント予選はフリー走行と比べて最大3倍の人気を集めているという。

    さらに、スプリント開催大会を訪れた観客の82%がスプリントによってチケットの価値が高まると回答し、F1ファンの75%がスプリントはシーズンカレンダーにより大きな価値をもたらすと考えているとしている。

    2027年のF1世界選手権 日本グランプリ

    ステファノ・ドメニカリ「ファンにさらに多くのアクションを届ける」
    F1のステファノ・ドメニカリCEOは、2027年カレンダーについて次のようにコメントした。

    「2027年のカレンダーには、世界で最も象徴的なサーキットと活気あふれる都市が集まり、F1の忘れられない新たなシーズンに向けて素晴らしい舞台が整った」

    「ポルトガルとトルコを選手権に迎えられること、そしてスプリントを10大会に拡大し、ファンの皆さんにさらに多くの緊張感、ドラマ、そして我々のスポーツを特別なものにしているホイール・トゥ・ホイールの戦いを届けられることを大変うれしく思う」

    「F1は世界中で新たなファンを獲得しながら、成長を続けている。世界最高のドライバーたちが毎週、モータースポーツで最もチャレンジングなコースを舞台に戦い、それをF1の素晴らしいチーム、世界トップクラスのメーカー、グローバルパートナーが支えている」

    「彼らが一体となることで、スポーツ界のどこにもないスペクタクルが生まれる。この素晴らしい成長の旅を続けるなか、世界中のファンの皆さんに感謝したい。その情熱こそが、我々のすべてを動かしている」

    「FIAのモハメド・ビン・スライエム会長とFIA、チームとドライバー、プロモーター、パートナー、スポンサー、開催都市の継続的なコミットメントとサポートに感謝したい。そして、各グランプリの開催を可能にしているボランティア、マーシャル、オフィシャルの並外れた献身にも敬意を表したい」

    「このカレンダーが実際に動き出すことを非常に楽しみにしている。世界中のファンに、忘れられない瞬間、激しい競争、そして世界最高レベルのエンターテインメントに満ちたシーズンを届けたい」

    FIA会長「F1の世界的な魅力と成長を反映」
    FIAのモハメド・ビン・スライエム会長は、24戦で構成される2027年カレンダーについて次のように述べた。

    「2027年FIA F1世界選手権のカレンダーは、我々のスポーツが持つ世界的な魅力と継続的な成長を強く反映している」

    「5大陸で24のグランプリを開催し、ポルトガルとトルコが復帰し、さらにスプリントプログラムを拡大する機会を得たことで、このカレンダーは伝統、革新、ファンとのエンゲージメントを融合しながら、最高水準のスポーティング基準を維持するものになっている」

    「Formula One Management、プロモーター、各国のモータースポーツ統括団体、FIAのオフィシャルとボランティア、そしてすべてのステークホルダーの協力とコミットメントに感謝したい」

    「我々は力を合わせ、FIA F1世界選手権をさらに強化し、競技者と世界中のファンに素晴らしいシーズンを届けていく」

    2027年F1は全24戦という開催規模を維持しながら、ポルトガルとトルコが復帰し、スプリントは史上最多の10大会へと拡大する。日本GPも初めてスプリント開催地に加わり、2027年はF1の週末フォーマットがこれまで以上に大きく変化するシーズンとなる。

  • トト・ヴォルフ ホンダF1への特別救済措置を支持「彼らにはもっと必要」

    トト・ヴォルフ ホンダF1への特別救済措置を支持「彼らにはもっと必要」

    メルセデスF1のチーム代表トト・ヴォルフは、2026年F1パワーユニット(PU)でライバルに後れを取っているホンダについて、既存のキャッチアップ制度だけでは十分でない場合、規則をさらに調整することに理解を示した。

    FIAはすでにADUO(Additional Development and Upgrade Opportunities/追加開発・アップグレード機会)を導入しており、一定以上の性能差が確認されたPUメーカーには追加開発を認めている。

    ホンダも対象となっているが、ヴォルフはF1に参戦する主要メーカーが競争力を持つことはスポーツ全体にとって重要だとの考えを示した。

    ライバルのメルセデスもホンダへの追加措置に理解
    発端となったのは、FIA会長モハメド・ビン・スライエムがF1スペインGPを前にマドリードで行われたビジネスフォーラムで語った発言だった。

    ビン・スライエムは、アストンマーティンとホンダの現在の競争力を背景にフェルナンド・アロンソがF1引退を選択する可能性について言及し、ホンダの改善を支援するための話し合いを行っていることを明かした。

    「我々は5月にも、規則に沿った形でチームとエンジンを改善するためのことを行った」とビン・スライエムは説明した。

    さらにアロンソとの会話について「彼に『我々が何をするつもりなのかは言わない。あなたはドライバーなのだから、結果を改善するために我々に何をしてほしいのか教えてほしい』と伝えた」と明かし、「我々は支援するためにもここにいる」と語った。

    この発言は、FIA会長が特定メーカーやドライバーの競争力向上にどこまで関与すべきなのかという議論を呼んだ。

    しかし、ヴォルフはビン・スライエムとアロンソの話し合い自体には問題はないとの見方を示している。

    「この場合、ADUOはキャッチアップのための仕組みとして設計されたものだと思う。そして、その制度はホンダに適用された」

    ヴォルフはF1スペインGPのマドリードでそう語った。

    「そして、彼らにはもっと必要だ。会長がアロンソと行った話し合いについても、妥当なものだと思う」

    「我々は、こうしたトップコンストラクターすべてにこのスポーツにいてほしい」

    「彼らには競争力を持ち、成功してほしいと思っている」

    「規則というものは、スポーツにとって最善となるように作られている。そして、ときには調整が必要になることもある。だから、妥当な話し合いだと思う」

    ホンダF1

    ホンダはすでにADUOの最大枠を獲得
    2026年から導入されたADUOは、PUメーカー間に大きな性能差が生じた場合に、それを縮小するためのキャッチアップ制度である。FIAはシーズン中の定められた評価期間ごとにICE(内燃エンジン)のパフォーマンスを分析し、トップメーカーとの差に応じて追加のホモロゲーションやダイノテスト、コストキャップ上の措置を認める。

    FIAが8月26日に公表した2026年の評価結果では、第1評価期間にメルセデスがトップICEから2~4%の範囲、フェラーリ、アウディ、ホンダが4%を超える差と判定された。

    これによりメルセデスには2026年と2027年にそれぞれ1回、フェラーリ、アウディ、ホンダにはそれぞれ2回の追加ホモロゲーション機会が認められた。ホンダは現行ADUOで設定されている最大のキャッチアップ枠をすでに得ていることになる。

    一方、第2評価期間では、いずれのPUメーカーにも新たな追加ホモロゲーションは付与されなかった。FIAは具体的な性能指数については、メーカーの機密情報や知的財産を理由に公開していない。

    つまり、ヴォルフが「彼らにはもっと必要だ」と語った背景には、ホンダが現行制度で最大限の追加開発機会を与えられているにもかかわらず、アストンマーティン・ホンダが依然として競争力の向上を必要としているという状況がある。

    FIAシングルシーター部門ディレクターのニコラス・トンバジスも、ADUOについて「今年が初年度であり、PUメーカーとの協議を通じて今後発展させていく可能性のある領域が当然存在する」と説明しており、制度そのものが将来的な見直しを前提としている。

    2026年規則はすでにシーズン中に修正
    2026年のF1規則は固定されたものではなく、シーズン開幕後も実際の走行データを基に複数の調整が行われている。

    FIAは4月、開幕3戦で収集したデータを基に、F1、各チーム、PUメーカーとの協議を経て規則の改良案に合意。さらに5月にはチーム代表、F1、5つのPUメーカーが参加する会議で、2026年規則をさらに進化させるための変更案について原則合意した。

    そのため、ヴォルフが示した「必要なら規則を調整する」という考え方自体は、2026年シーズンにすでに採られている規則運用の延長線上にある。

    ただし、今後ホンダにさらなる開発機会が認められるとしても、それが特定メーカーだけを対象とした措置になるのか、ADUOの基準や許容範囲そのものを変更する形になるのかは現時点では明らかになっていない。

    ホンダはF1オランダGPで大規模なPUアップグレードを投入したが、アストンマーティンは依然として上位争いへの浮上に苦戦している。そんななか、直接のライバルであるメルセデスを率いるヴォルフが、ホンダの競争力向上を目的とした制度のさらなる調整に理解を示したことは、今後のADUOを巡る議論を考えるうえで注目される発言となった。

  • フェルナンド・アロンソ F1とFIA首脳に改革直訴「2031年まで待てない」

    フェルナンド・アロンソ F1とFIA首脳に改革直訴「2031年まで待てない」

    フェルナンド・アロンソは、現在のF1が抱える問題について、F1のステファノ・ドメニカリCEO、FIAのモハメド・ビン・スライエム会長の双方と直接話し合っていることを明かした。

    以前から2026年F1レギュレーションを厳しく批判してきたアロンソは、初開催となったF1スペインGPのマドリンクでも、エネルギーマネジメントによってドライバーの技量が結果に反映されにくくなっていると指摘。「2031年まで待つことはできない」と訴え、自身の経験をF1の改善に役立てることも「責任」だと語った。

    アロンソがF1とFIAトップと直接協議
    アロンソの将来をめぐっては、ビン・スライエムが2度のF1ワールドチャンピオンを引退させないために働きかける意向を示したことが注目を集めた。

    その発言は、アロンソやホンダをF1にとどめるため、FIAが規則変更まで検討する可能性を示唆したものとして受け止められ、一部で物議を醸した。その後、特定のドライバーやメーカーを優遇する意図は否定されている。

    アロンソ自身は2027年もF1を続けるかどうかについて、依然として明言していない。

    「分からない。来年について自分の考えを決めるために、まだ検討しなければならないことがたくさんある」

    一方、ビン・スライエムと話したことについては認めた。

    「彼とは話した。でも、ステファノとは毎週のように定期的に話している。F1はこのままでは続けられないからだ」

    ここでアロンソが問題視しているのは、自身の去就だけではない。2026年から導入された新世代F1マシンそのものが、ドライバーの能力を十分に引き出せていないという点だ。

    「2031年まで待つことはできない」
    アロンソは、現行レギュレーションの問題を修正するために次の大規模な規則変更まで待つべきではないと主張する。

    「僕たちは……適切なスポーツになるまで2031年まで待つことはできない」

    「だから、自分の経験を生かして、できる限り改善するために彼らを助けることも僕の責任だと思っている」

    その問題を象徴する例としてアロンソが挙げたのが、マドリンクのラ・モニュメンタル(La Monumental)を含むターン10から12の区間だった。

    24%のバンク角を持つラ・モニュメンタルは、マドリンクを象徴する高速セクションとして設計された。しかし、アロンソによれば、現在のF1マシンではドライバーが限界を探りながらタイムを削る場所ではなく、MGU-Kからどれだけエネルギーを使えるかによって速さが左右されてしまうという。

    「ある意味、悲しいことだ。この世代のマシンで、ここみたいな素晴らしいサーキットに来て、ラ・モニュメンタルを含むターン10から12のようなチャレンジングな場所があるのに、ドライバーの入力はほとんど何の意味も持たない」

    フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム)

    「勇気がある方が速い。それがモータースポーツ」
    アロンソは近くにいたアストンマーティンのシニア・コミュニケーション&メディアマネージャー、マイケル・クレイトンを例に挙げ、現在の状況を皮肉った。

    「マイケルだってターン10から12を走れる。MGU-Kのデプロイなしで全開で行って、あるところで“K”が入れば、出口で速くなる」

    「でも、F1、そしてモータースポーツというものは、ターン10から12で、もしマイケルの方が僕より勇気があれば彼の方が速い、僕にもっと能力があれば僕の方が速い、そういうものであるべきだ」

    「予選というのはそうあるべきだ。でも今は、どれだけSOCが残っているかによって速くなったり遅くなったりするだけだ」

    ここでいうSOC(State of Charge)は、バッテリーに残されているエネルギー量を意味する。2026年F1では電動側の出力が大幅に高められており、エネルギーの回生と使用がラップタイムを左右する重要な要素となっている。

    「マックスよりマイケルが速くなってはいけない」
    アロンソはさらに、マックス・フェルスタッペンを引き合いに出し、ドライバーの技量よりエネルギーの状態が速さを決める状況への違和感を強調した。

    「ターン10から12では、誰が速くても構わない。でも、名前を出したくはないけど、バッテリーが多いというだけでマイケルがマックス・フェルスタッペンより速くなってはいけない」

    「ターン10から12は、それほど素晴らしいコーナーなんだ。そこでマイケルとの差を生み出すのは、マックス・フェルスタッペンでなければならない」

    「でも今は、それができない」

    アロンソがドメニカリやビン・スライエムと話している背景には、自身のF1引退をめぐる問題だけでなく、現行レギュレーションに対する根本的な危機感がある。

    45歳のアロンソはまだ2027年の去就を決めていないが、その一方で、20年以上にわたるF1経験を生かしてスポーツの方向性に意見することを自らの役割と位置づけている。マドリンクでの批判も単なるコースへの不満ではなく、「ドライバーが違いを生み出すF1」を取り戻すべきだという、2026年規則そのものへの問題提起となっている。

  • FIA会長 アロンソF1残留へホンダ追加救済に動く「引退させるわけにはいかない」

    FIA会長 アロンソF1残留へホンダ追加救済に動く「引退させるわけにはいかない」

    FIAのモハメド・ビン・スライエム会長が、フェルナンド・アロンソのF1残留を後押しするため、アストンマーティンのパワーユニット(PU)パートナーであるホンダに対する新たな支援策を模索していることが明らかになった。

    アロンソは2027年もF1に参戦するかどうかをまだ決めていない。現在のF1レギュレーションに魅力を感じられないことに加え、アストンマーティンとホンダの競争力にも不透明感がある。

    そこでビン・スライエムは、ホンダの開発を加速させることでアストンマーティンの競争力向上を促し、アロンソがF1に残る理由を作ろうとしている。

    ビン・スライエムがローレンス・ストロールと会談
    The Raceによると、ビン・スライエムはF1スペインGPを前にした木曜日、アストンマーティンのオーナーであるローレンス・ストロールと会談。ホンダのPU開発を支援し、チームの競争力向上とアロンソとの新契約につなげるための行動計画について話し合ったという。

    ビン・スライエムは前戦F1イタリアGPでもアロンソ本人と話しており、マドリードでもさらに協議する予定だ。

    その発端となったのが、モンツァでのアロンソの様子だった。

    「彼がとても悲しそうにしているのを見た」とビン・スライエムは語った。

    「僕は彼に『フェルナンド、自分の国に来るというのに、2度のワールドチャンピオンでありながら今は最後尾にいる。それが受け入れられないということは理解している』と話した」

    さらにビン・スライエムは、すでにFIAがホンダを支援するために動いてきたことにも言及した。

    「我々は5月に、合法的な形でチームとエンジンが改善できるように何かを行った」

    「そして彼にはこう言った。『我々が何をするつもりなのかを僕から言うつもりはない。君が何を望んでいるのか教えてほしい。ドライバーなのだから、結果を改善するために我々に何をしてほしいのかを教えてくれ』とね」

    ADUOとは別の追加支援策を検討
    ビン・スライエムが言及した5月の措置とは、ホンダに認められたADUO(Additional Development and Upgrade Opportunities/追加開発・アップグレード機会)の救済措置を指している。

    FIAは2026年型PUの性能差を縮小するため、基準を下回ったメーカーに追加の開発機会を与えるADUOを導入。ホンダは追加のベンチテスト時間に加え、開発費として最大1900万ドルの追加枠を利用できるようになった。ただし、その一部は将来の開発予算を前倒しする形となっている。

    しかし、今回検討されているのは、このADUOとは別の新たな支援策だという。

    現時点でホンダとの間で具体的な規則変更について詳細な協議が始まっているわけではなく、内容も決まっていない。

    選択肢としては、PUのホモロゲーションに関する自由度の拡大、追加の開発費枠、あるいはホンダが開発上の制約になっていると考えている特定分野のレギュレーション変更などが考えられている。

    ただし、こうした変更を実現するには他のPUメーカーからの支持も必要になる。

    各メーカーは以前のADUOを巡る協議では、自社の競争上の利益だけを優先せず、ホンダへの追加支援を認めることで合意している。今回も同様の合意を形成できるかが焦点になる。

    アロンソ「来年のルールはまだ変更されると思っている」
    アロンソ自身もF1スペインGPを前に、2027年に向けて現在の規則が最終形ではない可能性を示唆していた。

    「来年のルールについては、まだ再び調整される必要があると思っている。これが最終版ではないという希望はまだ持っている」

    この発言はパドックで注目を集めたが、ビン・スライエムとの一連の話し合いを踏まえたものだった可能性がある。

    アストンマーティンのチーフ・トラックサイド・オフィサーを務めるマイク・クラックも、アロンソの将来は単一の要素だけで決まるものではないと説明している。

    「彼自身、変えてほしいものがひとつだけではないことを明確にしていると思う」

    「このスポーツには彼のような人物が必要だ。フェルナンドが続けるところを、我々全員が見たいと思っているはずだ」

    「それを実現するために何ができるのか。それは実行されると思う。そして良い解決策にたどり着き、彼が続けてくれることを願っている」

    フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム)

    「フェルナンドを引退させるわけにはいかない」
    ビン・スライエムは、アロンソが競争力不足を理由にF1を去ることだけは避けたいとの考えを強く示している。

    「フェルナンドを去らせるわけにはいかない」

    「彼は成功しなければならない。そして、自分が望むときに去ればいい。パフォーマンスのせいで去ることを強いられるような形であってはいけない」

    ビン・スライエムはさらに「彼の考えを変えられるように話をする」と述べ、アロンソの2027年F1残留に向けて自ら働きかける意向を明言している。

    ホンダは2026年にアストンマーティンのワークスPUパートナーとしてF1に復帰したものの、ここまで競争力の面で苦戦している。イタリアGPではアップグレードされたPUを投入したが、期待されたほどの前進にはつながらなかった。

    FIA側が懸念しているのは、現在の状況が長引けばアロンソの引退だけでなく、ホンダ自身が将来的なF1活動について疑問を抱く可能性まであることだという。

    アロンソをF1に残したいというビン・スライエムの意向は、単なる一人のドライバーの去就問題にとどまらない。ホンダの競争力回復とアストンマーティンの浮上、そしてF1全体の競争環境をどう改善するかという問題と結びつき始めている。

  • 角田裕毅 F1イタリアGPは処分なしで10位確定「再スタートやり直しの原因ではない」

    角田裕毅 F1イタリアGPは処分なしで10位確定「再スタートやり直しの原因ではない」

    角田裕毅が2026年F1イタリアGP決勝の再スタート時にグリッド上で取った行動について、FIA(国際自動車連盟)のスチュワードは審議の結果、「これ以上の措置なし(No further action)」とする裁定を下した。

    シャルル・ルクレールのクラッシュによる赤旗中断後、スタンディングスタートに向けて各車がグリッドに戻った際、角田裕毅は当初グリッドの左側へ向かっていたが、自身が間違ったグリッド位置に向かっていることに気づき、方向を変えて正しいグリッドボックスにマシンを停止させた。

    その後、レースコントロールの判断でスタート手順が中止され、エクストラフォーメーションラップが実施された。

    この一件について角田裕毅にはFIA F1レギュレーション第B5.9.4条違反の疑いがかけられたが、スチュワードは映像やオンボード映像、関係者の証言を検証。角田裕毅がエクストラフォーメーションラップの「原因」だったとは認められないと結論づけた。

    角田裕毅は正しいグリッドボックス内に停止
    FIAの裁定文によると、22号車の角田裕毅はグリッドへ向かう際、当初はグリッドの左側へ進んでいた。しかし、自分が間違ったグリッド位置へ向かっていることに気づき、進行方向を変更。正しいグリッドボックスへマシンを移動させ、ボックス内の正しい位置に停止した。

    スチュワードは複数のカメラ映像によって、この事実を確認したとしている。

    その一方で、レースディレクターは角田裕毅のマシンがグリッドボックスへ接近する際の動きを見て、安全上の判断からエクストラフォーメーションラップを実施することを決定した。

    レースディレクターは証言の中で、グリッドへ向かう22号車の挙動を踏まえ、「その位置にマシンがいる状態でレースをスタートさせることに不安があった」と説明した。

    レーシングブルズ「角田裕毅はフォルススタートの位置ではなかった」
    これに対してレーシングブルズ側は、角田裕毅のマシンは規則上、フォルススタート(false start)に該当する位置にはなかったと主張した。

    チームは第B5.1.1c条を根拠として、フロントタイヤの接地面がグリッドボックスの前方および側方のラインから外れていなかったことを指摘した。

    また、ドライバーズミーティングでは、スタート時のトラックリミットはピットウォールであるとレースディレクターから説明されていたという。角田裕毅のマシンは右を向いていたものの、スタート位置から動き出すためには少なくとも4メートルのスペースがあり、他のドライバーが22号車の位置によって影響を受ける状況でもなかったとチームは説明した。

    さらにレーシングブルズは、角田裕毅自身がエクストラフォーメーションラップの「原因」ではなく、レースコントロールからチームまたはドライバーに対し、22号車がその原因と判断されているとの連絡も一切なかったと主張した。

    スチュワードは、これらの主張をすべて認めた。

    「スチュワードは上記の点に同意し、エクストラフォーメーションラップは22号車のドライバーによって直接引き起こされたものではなく、レースディレクターによる状況判断の結果だったと考える」

    角田裕毅(ビザ・キャッシュアップ・RB・フォーミュラワン・チーム)

    本来はピットレーンスタートと10秒ストップ&ゴーの可能性
    今回の審議が複雑になった理由は、第B5.9.4条の規定にある。

    同条では、エクストラフォーメーションラップの原因となったドライバーが、そのラップ終了時にピットレーンへ入り、そこからスタートしなければならないと定められている。そして、それを行わなかった場合に初めて、10秒ストップ&ゴーペナルティが義務的に科される。

    つまり、ペナルティそのものは「エクストラフォーメーションラップを発生させたこと」に対して科されるものではなく、「その原因となったドライバーがピットレーンへ入らず、そこからスタートしなかったこと」に対して科される。

    しかし今回、レーシングブルズにも角田裕毅にも、自分たちがエクストラフォーメーションラップの原因とみなされているという通知はなかった。

    スチュワードはここを重要な問題として指摘した。

    「ピットレーンへ入り、そこからスタートするという要件を遵守するためには、ドライバーは自分がエクストラフォーメーションラップの原因であることを知る必要がある」

    過去には、フォトグラファーの位置など外的要因によってエクストラフォーメーションラップが実施されたケースもあり、単に追加のフォーメーションラップが指示されたからといって、ドライバー側が自分を原因だと判断することはできないという考えだ。

    FIAの連絡手順にも問題を指摘
    スチュワードは、角田裕毅が規則に従って自身のグリッドボックス内に停止していたことから、レーシングブルズには角田裕毅へピットレーンに入るよう指示する理由がなかったと判断した。

    「エクストラフォーメーションラップをドライバーが直接引き起こしたかどうかにかかわらず、チームとドライバーは自分たちがその原因とみなされていることを認識していなかった」

    「したがって、このケースでストップ&ゴーペナルティを科すことはできないと判断し、これ以上の措置を取らないことを決定した」

    一方、スチュワードはレースディレクターについて、安全を優先して誠実に判断したことも明記。エクストラフォーメーションラップを命じたこと自体を問題視してはいない。

    そのうえでFIAに対し、今後はエクストラフォーメーションラップの原因と判断されたチームとドライバーへ、その事実を伝える手続きを導入することを検討すべきだと提言した。これによって、対象となったドライバーが第B5.9.4条に従い、ピットレーンからスタートできるようにする必要があるとしている。

    結果として角田裕毅にペナルティは科されず、今回のエクストラフォーメーションラップは角田裕毅の直接的な行為によって発生したものではなく、レースディレクターが安全上の観点から状況を評価した結果だった、というのがFIAスチュワードの最終判断となった。

  • FIA国際控訴裁判所 ブリアトーレの判事批判に反論「手続きと判事の公正性に自信」

    FIA国際控訴裁判所 ブリアトーレの判事批判に反論「手続きと判事の公正性に自信」

    FIA国際控訴裁判所(ICA)が、F1モナコGPの裁定を巡ってアルピーヌのフラビオ・ブリアトーレが判事の独立性に疑問を呈したことを受け、強い内容の声明を発表した。

    ICAは判事の選任と審理への参加がFIAの司法手続きに従って行われたと説明し、「手続きの健全性と判事の誠実性に自信を持っている」と反論した。

    ブリアトーレは、ピエール・ガスリーへの2件の5秒ペナルティを復活させた控訴審について、担当判事の1人がマクラーレンと「深いつながり」を持っていると主張。さらに審理中に「検察官のように振る舞っていた」と批判していた。

    これにマクラーレンF1代表のアンドレア・ステラが「侮辱的だ」と反発するなか、今度はICA自身が審理の独立性と公正性を擁護した。

    ICA「最高水準に基づいた司法手続き」
    ICAは声明で、今回の判事の選任と審理への参加について、通常のFIA司法手続きから外れたものではなかったと強調した。

    「FIA裁判所は、今回の件における判事の選任および参加について、他のあらゆる案件と同様、適用されるFIAの司法手続きおよび通常の慣行に従って行われたことを明確にしたい」

    「これらは、国際仲裁における利益相反に関するIBAガイドラインなど、最高水準の基準に基づいたものである」

    さらにICAは、FIAの裁判所で審理を担当する判事がどのように選任され、独立性を確保しているのかについて説明した。

    「すべての判事はFIA総会によって選出されており、その一部はFIA定款に従い、少なくとも5つのF1チームからなるグループの推薦を受けている」

    「すべての判事にはFIA司法・懲戒規則に定められた独立性および守秘義務が課されている。また、毎年FIAコンプライアンス・オフィサーに利益関係を開示し、それぞれの案件について、争点および関係当事者を考慮した個別の独立性宣言に署名している。この宣言は当事者にも提示される」

    「審理中に異議は一切出されなかった」
    ブリアトーレは、アルピーヌが判事とマクラーレンとの関係を把握したのは審理終了後だったと説明していた。

    これに対してICAは、審理の開始時と終了時の双方で、裁判所の構成や手続きについて異議を申し立てる機会が当事者に与えられていたと指摘した。

    「審理の開始時と終了時の双方で、当事者には手続きまたは裁判所の構成に関する問題があれば提起するよう求められた。しかし、いずれの当事者からもそのような指摘はなかった」

    「また、裁判所による証人への質問の方法や、審理の進め方についても、審理中に異議が申し立てられることはなかった」

    ブリアトーレは判事の1人が審理中に「非常に悪意のある」態度を取り、「検察官のように振る舞っていた」と批判していたが、ICAは当時、その質問方法や手続きに対する正式な異議はなかったとしている。

    異なる文化や地域の判事で構成する重要性も強調
    ICAはさらに、国際的な裁判機関として、異なる文化的、地理的背景を持つ判事によって審理パネルを構成することの重要性を強調した。

    「ICAは、異なる文化的および地理的背景を持つ判事によってパネルを構成することの重要性を強調する」

    「それによって審議や議論に多様な法的伝統、視点、アプローチが反映され、公正性、独立性、プロセスの信頼性、そして公正な裁判を受ける機会がさらに強化される」

    ICAとしては、判事の背景や経歴の違いは審理の公正性を損なうものではなく、むしろ多様な法的視点を確保するために重要な要素だとの立場を示した形だ。

    「判決への批評は認めるが判事の誠実性には自信」
    ICAは、判決そのものについて異なる解釈や法的な批判が生じることは当然だと認めている。一方で、判事の独立性や司法手続きそのものへの疑念については明確に一線を引いた。

    「裁判所の判断について、その法的妥当性を巡ってさまざまな解釈や意見が生じる余地がある。それは公正なことであり、すべての判事が受け入れている」

    「裁判所は、今回の手続きの健全性と判事の誠実性に自信を持っている」

    「FIA裁判所は今後も、判事の独立性と公平性、そして司法プロセスの健全性を守ることに尽力していく」

    今回の声明は、ブリアトーレが提起した疑念に対し、ICAが判事の選任方法、利益関係の開示、案件ごとの独立性宣言、そして審理中に異議が出されなかった事実を挙げて正面から反論したものとなった。

    モナコGPの裁定を巡っては、ブリアトーレの発言にステラが「マクラーレンに対して侮辱的だ」と反発していたが、ICAも公式に独立性と公平性を強調したことで論争はさらに拡大した。ガスリーの順位を巡る法的判断から始まった問題は、今やFIAの司法制度と判事の独立性を巡る議論へと発展している。