角田裕毅が2026年F1イタリアGP決勝の再スタート時にグリッド上で取った行動について、FIA(国際自動車連盟)のスチュワードは審議の結果、「これ以上の措置なし(No further action)」とする裁定を下した。
シャルル・ルクレールのクラッシュによる赤旗中断後、スタンディングスタートに向けて各車がグリッドに戻った際、角田裕毅は当初グリッドの左側へ向かっていたが、自身が間違ったグリッド位置に向かっていることに気づき、方向を変えて正しいグリッドボックスにマシンを停止させた。
その後、レースコントロールの判断でスタート手順が中止され、エクストラフォーメーションラップが実施された。
この一件について角田裕毅にはFIA F1レギュレーション第B5.9.4条違反の疑いがかけられたが、スチュワードは映像やオンボード映像、関係者の証言を検証。角田裕毅がエクストラフォーメーションラップの「原因」だったとは認められないと結論づけた。
角田裕毅は正しいグリッドボックス内に停止
FIAの裁定文によると、22号車の角田裕毅はグリッドへ向かう際、当初はグリッドの左側へ進んでいた。しかし、自分が間違ったグリッド位置へ向かっていることに気づき、進行方向を変更。正しいグリッドボックスへマシンを移動させ、ボックス内の正しい位置に停止した。
スチュワードは複数のカメラ映像によって、この事実を確認したとしている。
その一方で、レースディレクターは角田裕毅のマシンがグリッドボックスへ接近する際の動きを見て、安全上の判断からエクストラフォーメーションラップを実施することを決定した。
レースディレクターは証言の中で、グリッドへ向かう22号車の挙動を踏まえ、「その位置にマシンがいる状態でレースをスタートさせることに不安があった」と説明した。
レーシングブルズ「角田裕毅はフォルススタートの位置ではなかった」
これに対してレーシングブルズ側は、角田裕毅のマシンは規則上、フォルススタート(false start)に該当する位置にはなかったと主張した。
チームは第B5.1.1c条を根拠として、フロントタイヤの接地面がグリッドボックスの前方および側方のラインから外れていなかったことを指摘した。
また、ドライバーズミーティングでは、スタート時のトラックリミットはピットウォールであるとレースディレクターから説明されていたという。角田裕毅のマシンは右を向いていたものの、スタート位置から動き出すためには少なくとも4メートルのスペースがあり、他のドライバーが22号車の位置によって影響を受ける状況でもなかったとチームは説明した。
さらにレーシングブルズは、角田裕毅自身がエクストラフォーメーションラップの「原因」ではなく、レースコントロールからチームまたはドライバーに対し、22号車がその原因と判断されているとの連絡も一切なかったと主張した。
スチュワードは、これらの主張をすべて認めた。
「スチュワードは上記の点に同意し、エクストラフォーメーションラップは22号車のドライバーによって直接引き起こされたものではなく、レースディレクターによる状況判断の結果だったと考える」

本来はピットレーンスタートと10秒ストップ&ゴーの可能性
今回の審議が複雑になった理由は、第B5.9.4条の規定にある。
同条では、エクストラフォーメーションラップの原因となったドライバーが、そのラップ終了時にピットレーンへ入り、そこからスタートしなければならないと定められている。そして、それを行わなかった場合に初めて、10秒ストップ&ゴーペナルティが義務的に科される。
つまり、ペナルティそのものは「エクストラフォーメーションラップを発生させたこと」に対して科されるものではなく、「その原因となったドライバーがピットレーンへ入らず、そこからスタートしなかったこと」に対して科される。
しかし今回、レーシングブルズにも角田裕毅にも、自分たちがエクストラフォーメーションラップの原因とみなされているという通知はなかった。
スチュワードはここを重要な問題として指摘した。
「ピットレーンへ入り、そこからスタートするという要件を遵守するためには、ドライバーは自分がエクストラフォーメーションラップの原因であることを知る必要がある」
過去には、フォトグラファーの位置など外的要因によってエクストラフォーメーションラップが実施されたケースもあり、単に追加のフォーメーションラップが指示されたからといって、ドライバー側が自分を原因だと判断することはできないという考えだ。
FIAの連絡手順にも問題を指摘
スチュワードは、角田裕毅が規則に従って自身のグリッドボックス内に停止していたことから、レーシングブルズには角田裕毅へピットレーンに入るよう指示する理由がなかったと判断した。
「エクストラフォーメーションラップをドライバーが直接引き起こしたかどうかにかかわらず、チームとドライバーは自分たちがその原因とみなされていることを認識していなかった」
「したがって、このケースでストップ&ゴーペナルティを科すことはできないと判断し、これ以上の措置を取らないことを決定した」
一方、スチュワードはレースディレクターについて、安全を優先して誠実に判断したことも明記。エクストラフォーメーションラップを命じたこと自体を問題視してはいない。
そのうえでFIAに対し、今後はエクストラフォーメーションラップの原因と判断されたチームとドライバーへ、その事実を伝える手続きを導入することを検討すべきだと提言した。これによって、対象となったドライバーが第B5.9.4条に従い、ピットレーンからスタートできるようにする必要があるとしている。
結果として角田裕毅にペナルティは科されず、今回のエクストラフォーメーションラップは角田裕毅の直接的な行為によって発生したものではなく、レースディレクターが安全上の観点から状況を評価した結果だった、というのがFIAスチュワードの最終判断となった。
