セバスチャン・ベッテル F1のV8回帰論に警鐘「持続可能燃料も万能薬ではない」

セバスチャン・ベッテル F1のV8回帰論に警鐘「持続可能燃料も万能薬ではない」

セバスチャン・ベッテルは、F1が将来的にV8エンジンと持続可能燃料を組み合わせる方向へ進む可能性について、ひとつの技術だけですべての問題を解決できる「万能薬」は存在しないとの考えを示した。

FIA会長のモハメド・ビン・スライエムは、遅くとも2031年までに、電動出力を最小限に抑え、持続可能燃料を使用するV8エンジンへF1を移行させる構想を明らかにしている。

ベッテルは持続可能燃料の可能性を高く評価する一方、それだけを解決策として捉えるべきではないと強調した。

現代のF1マシンも「F1が体現すべきもの」
ベッテルは最近、モンツァでミハエル・シューマッハがタイトルを獲得したフェラーリF2002をドライブし、F1マシンのコックピットに復帰した。その経験も踏まえ、現在のF1について自身の考えを語った。

「僕はエキサイティングだと思う。レースもエキサイティングだ。質問の意図は分かっているし、だからこそ今のF1はすごく面白いんだと思う。F1を見ていると、分析できることが本当にたくさんあるからね」

「もちろん、ドライバーの立場なら最高のマシンを運転して、レースに勝ちたい。でも、じゃあ最高のマシンとは何なのか。2002年のマシンは当時の最先端であり、パイオニアだった。そして、F1というものを非常によく体現していた」

「今のマシンも同じことをしていると思う。F1はパフォーマンス、精密さ、規律、ハードワークを追求するものだけど、同時に責任を持って前進させていくことでもある。つまり未来についても考えるということで、今のマシンはそれを実現しようとしている」

一方でベッテルは、現在の技術規則のすべてに賛同しているわけではないと認める。

「ドライビングという観点では、今のレギュレーションのすべてに賛成しているわけではない。でも未来を考えれば、そこには人々を一緒に連れていく大きなチャンスがあると思う」

「そして、このスポーツがかつて何だったのか、今何なのか、これから何であるべきなのか、何になれるのかを改めて思い出してもらえるかもしれない。それを責任ある形でやることが大切だ。一方を選んだからといって、もう一方を排除する必要はない。僕たちが好きなものを組み合わせられる方法を見つけなければならないと思う」

V8と持続可能燃料だけでは問題は解決しない
ビン・スライエムは、F1が将来的にV8エンジンへ回帰し、持続可能燃料と最低限の電動化を組み合わせる方針を示している。

しかしベッテルは、持続可能燃料を導入すればF1が抱える課題が一気に解決するという考えには慎重だ。

「何かひとつを導入すれば、すべての問題が解決するというものではない。僕が知っているパドックの多くの人たち、そして僕自身もそのひとりだったけど、誰もが万能薬のようなものを探している。何かひとつで一気に前進して、アドバンテージを得られるものをね。でも、ひとつだけではないんだ」

「常にたくさんのものの組み合わせだ。F1やモーターレーシングを考えれば、持続可能燃料は進むべき方向だと思う。そこにはF1だけでなく、ほかのレースカテゴリーにも影響を与えられる非常に大きな可能性がある」

ベッテルは、次世代F1マシンの設計についても、技術的な先進性だけではなく、その技術が社会にどのようにつながるのかを考える必要があると指摘する。

「次世代のマシンを形作っていくなら、責任ある方法でそれを実現できる大きな可能性があると思う。技術的には素晴らしいものでも、公道車には応用できないものもあるかもしれない。その部分について考えることも、F1の責任だと思う」

「もしそうした可能性がなくなったのなら、もっとシンプルにすることを受け入れる段階に来るのかもしれない。責任を果たし、模範を示す方法はいろいろある。それはレーストラックの上だけではなく、サーキットのすぐ外側でもできることだ」

「僕はこれからの未来と、そこで何が待っているのかを楽しみにしている。F1には、僕の人生を形作り、刺激を与えてくれた素晴らしい価値がたくさんある。このスポーツは世界中の多くの人々に届いているし、その力を、本当に意味があって影響を与えられるさまざまなことにも使えると思う」

V型8気筒エンジンについて語ったセバスチャン・ベッテル

アントネッリの最年少王者更新も歓迎
ベッテルは、自身が保持するF1史上最年少ワールドチャンピオン記録が更新される可能性についても語った。

ベッテルは2010年に23歳で初のF1ワールドチャンピオンに輝いた。一方、2026年にタイトル争いをリードするキミ・アントネッリは20歳であり、今季タイトルを獲得すればベッテルの記録を大幅に更新することになる。

「彼が達成したら、僕はすごくうれしいよ。彼は素晴らしい一年を送っている。昔から『記録は破られるためにある』と言うからね。彼にはこれから、それを実現するための時間がたくさんある。僕はこのスポーツが好きだから、ひとりの観客として見てもすごくエキサイティングだ」

「ほかのドライバーたちにも巻き返して、もっと争いに加わってほしいとは思っている。僕は今では独立した立場だし、彼が成功するなら素直にうれしい。そこまで到達するために、どれだけ多くの努力が必要なのかを知っているからね。そして最終的に誰が勝ったとしても、それだけのものに値するはずだ」

V8エンジンへの回帰や持続可能燃料は、将来のF1をめぐる議論の重要な要素となっている。しかしベッテルは、過去の魅力を取り戻すことと未来への責任は相反するものではなく、単一の技術に答えを求めるのではなく、複数の要素を組み合わせながらF1の価値を維持していくことが重要だと訴えている。