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  • ラッセルとピアストリが2026年F1マシンで苦戦 ドライビングスタイルに異変

    ラッセルとピアストリが2026年F1マシンで苦戦 ドライビングスタイルに異変

    2026年F1では、ジョージ・ラッセルやオスカー・ピアストリ、シャルル・ルクレールといったドライバーがチームメイトとの比較で苦戦する一方、キミ・アントネッリ、ルイス・ハミルトン、ランド・ノリスが高いパフォーマンスを発揮している。

    ラッセルは、その背景に2026年型マシンとタイヤが要求する特性と、自身の自然なドライビングスタイルとのミスマッチがあると考えている。

    しかし、それだけですべてを説明できるわけではない。各ドライバーの走らせ方を詳しく見ていくと、2026年F1で重要になっているのは特定のスタイルそのものよりも、新世代マシンへの適応力であることが見えてくる。

    マドリンクで浮き彫りになったラッセルの弱点
    F1スペインGPのマドリンクで行われた予選Q3最後のアタック。最初の2セクターを終えた時点で、ラッセルはメルセデスのチームメイトであるアントネッリから0.1秒以内につけていた。

    しかし、ラップを終えるまでにさらに0.2秒を失った。最初の2セクターでは平均して各セクター0.05秒程度の遅れだったものが、最終セクターだけでその約4倍を失ったことになる。

    原因はリアタイヤだった。ラッセルはそれまでの区間でリアタイヤを使いすぎ、連続する90度コーナーが特徴のセクター3に入った時点で温度が上がりすぎていた。

    それは週末全体を象徴するような出来事だった。決勝でラッセルは5位に終わり、異なる戦略だったとはいえ、優勝したアントネッリから約30秒遅れてフィニッシュした。

    タイトルを争えるだけのマシンを手にしたタイミングで、ラッセルにとって2026年はF1参戦8年目で最も苦しいシーズンのひとつとなっている。

    ラッセル自身は、その原因を自分本来のドライビングスタイルと2026年世代のマシン、そしてタイヤが要求するものとのミスマッチにあると考えている。

    「昨年のオスカー(ピアストリ)とランド(ノリス)の競争力、シャルル(ルクレール)とルイス(ハミルトン)の比較、さらには以前の時代にマックス(フェルスタッペン)がすべてのチームメイトを圧倒していたことを考えると、奇妙なシーズンになっている」

    「今年は僕自身、シャルル、オスカーがチームメイトと比較してかなり苦戦している。一方でマックスのチームメイトは、過去6年間の誰よりも大幅に彼との差を縮めている。そして、僕たちはかなり似たドライビングスタイルを持っていると思う」

    「今年とても好調なキミ、ルイス、ランドもかなり似たドライビングスタイルを持っている。だから僕にとっては、このマシン、このタイヤでは傾向がかなり明確だと思う」

    ラッセルとピアストリに共通する走らせ方
    少なくともラッセルとピアストリの苦戦については、2026年型マシンとタイヤとの間に因果関係がある可能性は高い。

    2人はともに、いわば幾何学的な理想ラインを追求する傾向がある。ターンインを遅らせ、ステアリングを最初に比較的大きく切り込み、荷重移動よりもステアリング操作によってマシンを旋回させる。

    また、ブレーキングとコーナリングを重ねる領域も非常に少ない。

    この方法は、グリップの高いサーキットで、大きなダウンフォースを持つマシンなら極めて効果的だ。しかし、グリップが低下すると同じようには機能しない。

    2026年型F1マシンではダウンフォースとタイヤグリップが低下したことで、このテクニックが問題になり始めるサーキットグリップの境界が以前より高くなった。

    つまり、これまでなら問題なく使えたサーキットでも、2026年型ではこの走らせ方が適さないケースが増えている。

    さらに、その不利を拡大しているのがエネルギーマネジメントだ。

    コーナー進入時に維持できる勢いが少なくなればなるほど、バッテリーによるパワー補完が増える。その結果、ストレートで電力を使える時間が短くなる。ラッセルとピアストリは、ともにこの問題に苦しむ場面があった。

    フェルスタッペンはラッセルとは異なる
    ただし、ラッセルが示した比較は、マックス・フェルスタッペンとルクレールにまで広げると成立しなくなる。

    2人はそれぞれ独自のドライビングスタイルを持っており、互いにも、ラッセルやピアストリとも異なっている。

    フェルスタッペンは、おそらく現在のF1グリッドで最も幅広いスキルを持つドライバーだ。ただし、彼が好むのは非常に強力なフロントエンドを持つマシンである。

    それによって、ステアリングを大きく切らなくてもマシンを旋回させることができる。

    フェルスタッペンはマシンの回転やヨーに対する非常に優れた感覚を持っており、ステアリング、ブレーキ、スロットルを調整することで、通常ならフロントの鋭いマシンに伴うコーナー出口でのオーバーステアを抑え込むことができる。

    現在のレッドブルRB22のように、低速および中速コーナーの進入でアンダーステアを示すマシンでは、その能力によって他のドライバーとの差を生み出せる余地が小さくなる。

    他チームのマシンを見る限り、2026年レギュレーション下でも鋭いフロントエンドを持つマシンを作ることは可能だ。単純にレッドブルがそれを実現できていないということだ。

    ルクレールの武器も2026年では効果が薄れる
    ルクレールは伝統的に、ブレーキ、スロットル、ステアリングを積極的に組み合わせることでマシンを旋回させてきた。

    それぞれの操作を重ねる領域が大きく、マシンのバランスを積極的に変化させながら向きを変えていく。

    このスタイルは短いコーナーでは絶大な威力を発揮する。素早くマシンを旋回させるメリットが、コーナー後半で発生するデメリットを上回るからだ。

    モナコ、バクー、レッドブル・リンクでは、ルクレールはF1でも屈指の速さを持つ。

    一方で、上海やハンガロリンクのように長いコーナーが多いサーキットでは難しさが出ることがある。コーナー進入時に本来以上にマシンを旋回させた代償を、コーナー後半で支払うことになるためだ。

    さらに2026年レギュレーションではエネルギーマネジメントが重要になったことで、これまでルクレールが使ってきた一部のテクニックは、以前ほど効果的ではなくなっている。

    それでも、ルクレールが非常に速いドライバーであることに変わりはない。

    ハミルトンが2026年型F1に適応
    アントネッリ、ノリス、ハミルトンも、それぞれ明確に異なるスタイルを持っている。そして3人に共通しているのが高い適応力だ。

    特に、グラウンドエフェクト時代に苦戦したハミルトンが、2026年世代のF1マシンが要求する走らせ方に適応したことは、今季のドライバー面における大きなトピックのひとつとなっている。

    一般化すれば、ハミルトンはコーナー進入時にルクレールよりもマシンをフラットで安定した状態に保つ。

    そのため、コーナーの種類によって両者の優劣が変わる。

    ハミルトンは必要であれば依然として非常に遅いブレーキングを行える一方、それをフロントタイヤに過度な負担をかけない滑らかな操作と組み合わせている。

    そしてフェラーリのダウンフォースバランスが、そのスタイルを非常にうまく機能させている。

    アントネッリはエネルギー回生まで走り方に組み込む
    アントネッリとノリスは、2026年型マシン特有の性質を理解するため、エンジニアリングチームと非常に多くの作業を行ってきたことがうかがえる。

    2人はエネルギーマネジメントに特化した要素をドライビングに取り入れている。

    例えば、アントネッリのスロットル操作は非常に特徴的だ。中途半端なスロットル開度でエネルギーを無駄にするのではなく、ブレーキング時のエネルギー回生を最大化することを意識した操作になっているように見える。

    操作そのものも非常に滑らかだ。

    コーナー進入時のグリップを高い精度と自信を持って判断しているため、コーナリング中に修正操作を行う必要がほとんどない。

    ここがラッセルとの最も分かりやすい違いのひとつだ。

    アントネッリはフロントタイヤのグリップをより正確に感じ取れているように見える。ただし、グリップが高ければ、ラッセルのような遅いターンインと大きなステアリング操作を使うことにも抵抗はない。

    単純に、それが最適ではない状況をより正確に把握できているようだ。

    ジョージ・ラッセル(メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ)

    ノリスが強調するのは「スタイル」ではなく適応力
    ノリスは以前から、徐々にフロントタイヤへ荷重をかけていく非常に滑らかな走らせ方を特徴としてきた。

    利用できるグリップ量に応じて、必要なラインを選ぶこともできる。

    フェルスタッペンと同様、このスタイルもマシンが強いアンダーステアを持つ場合には機能しにくくなる。

    しかし、ノリスは徐々にフロントへ荷重をかけることで、場合によっては通常より早い位置から浅い角度でターンインすることができる。

    ハンガロリンクのFP1でグリップが非常に低かった際、最終コーナーで見せた走りがその好例だった。

    この方法なら、フロントタイヤが最終的にグリップした瞬間にもステアリング舵角がそれほど大きくないため、コーナー出口で突然マシンがスナップするリスクも小さくなる。

    ただし、ノリス自身は自分の特定のドライビングスタイルが2026年型マシンに適しているとは考えていない。

    「僕のドライビングスタイルがこのマシンに合っているとは、あまり言わないかな」

    「僕のドライビングがうまくいっているのは、よりうまく適応できているからだと思う。ひとつのスタイルだけが機能しているとは思わないし、僕はキミと同じ走り方をしているわけでもない」

    「僕が持っているマシンを走らせることができているのは、適応力があるからだ。異なるドライビングスタイルに適応できることが僕の強みだと思う」

    「昨年の序盤は、マシンがオスカーに少し合っていた。僕の強みは、そこからよりうまく適応して、最終的にどう走らせればいいのか理解できたことだった。だからシーズン後半は僕の方が良くなった」

    「今年について? このマシンは昨年とはまったく違う走らせ方をする。1%すら同じところがないと感じるくらいだ。だから重要なのは適応することだ」

    2026年F1で問われるドライバーの適応力
    2026年F1で起きているドライバー間の勢力変化を、単純にひとつのドライビングスタイルだけで説明することはできない。

    ラッセルとピアストリについては、これまで得意としてきた遅いターンインと明確なステアリング入力が、ダウンフォースとタイヤグリップが低下し、さらにエネルギーマネジメントの重要性が増した2026年型マシンでは不利に働く場面が増えている。

    一方で、フェルスタッペンやルクレールの状況には、それぞれ異なる技術的背景がある。そしてアントネッリ、ハミルトン、ノリスの好調も、3人が同じスタイルだからというより、新しいマシンが要求する走らせ方を理解し、それに合わせて自身のテクニックを変化させていることが大きい。

    ノリスの言葉を借りれば、2026年に重要なのは特定のスタイルではなく「適応」である。そしてラッセルとピアストリにとっても、マシン側が自分たちの得意な方向へ近づいてくるのを待つのではなく、自ら走らせ方を変えることが求められている。

  • F1史上最多勝のPUメーカーランキング メルセデスがフェラーリに並ぶ251勝

    F1史上最多勝のPUメーカーランキング メルセデスがフェラーリに並ぶ251勝

    2026年F1スペインGPでアンドレア・キミ・アントネッリが勝利を飾ったことで、メルセデスはエンジン/パワーユニットメーカーとして通算251勝に到達。フェラーリと並び、F1史上最多勝の座に立った。

    1950年に始まったF1世界選手権では、数多くのエンジンメーカーが勝利を記録してきた。現在も参戦を続けるフェラーリやメルセデス、ホンダから、コスワース、コベントリー・クライマックス、BRMといった歴史的メーカーまで、通算勝利数トップ10を振り返る。

    1位タイ:フェラーリ 251勝
    フェラーリは1950年のF1世界選手権創設初年度から参戦し、現在まで一度もシーズンを欠場していない唯一のチームである。アルベルト・アスカリ、ニキ・ラウダ、ミハエル・シューマッハなど、数々の伝説的ドライバーとともに成功を築いてきた。

    フェラーリ製エンジンはこれまでに251勝を記録している。2026年F1イギリスGPではシャルル・ルクレールがフェラーリに通算250勝目をもたらした。

    ただし、エンジンメーカーとしての251勝にはフェラーリのワークスチーム以外で挙げた1勝も含まれる。2008年F1イタリアGPで、フェラーリエンジンを搭載していたトロロッソのセバスチャン・ベッテルが記録した初優勝である。

    フェラーリ自身のF1初勝利は1951年F1イギリスGPだった。「パンパスの雄牛」の異名を持つホセ・フロイラン・ゴンザレスがシルバーストンで勝利し、フェラーリの長大な成功の歴史をスタートさせた。

    1位タイ:メルセデス 251勝
    メルセデスがワークスチームとしてF1に参戦したのは当初1954年と1955年のわずか2シーズンだった。その後は長期間F1から離れたが、1990年代半ばにザウバーやマクラーレンへのエンジン供給という形で復帰。後にはブラウンGPやレーシングポイントなどもカスタマーとなった。

    最初のワークス活動ではファン・マヌエル・ファンジオが2度のドライバーズタイトルを獲得したが、現代におけるメルセデスの成功には、1998年と1999年に王者となったマクラーレンのミカ・ハッキネン、2009年王者となったブラウンGPのジェンソン・バトン、そして2010年から始まったメルセデスのワークス参戦が大きく貢献している。

    2010年にミハエル・シューマッハとニコ・ロズベルグを擁してコンストラクターとして復帰したメルセデスは、勝利まで2年を要し、最初のタイトル獲得まではさらに2年を必要とした。

    その頃にはルイス・ハミルトンが加入しており、ハミルトンだけでメルセデス製パワーユニットによる85勝を記録。そのほかロズベルグ、アントネッリ、バルテリ・ボッタス、ジョージ・ラッセルらも勝利数を積み重ねた。

    そして2026年F1スペインGPでアントネッリが優勝したことで、メルセデスは通算251勝に到達。フェラーリとF1史上最多勝で並んだ。

    3位:フォード・コスワース 176勝
    コスワースDFVは、F1史上最も成功したエンジンのひとつである。チーム・ロータス、ブラバム、ティレル、ウィリアムズなど数多くのチームに搭載され、DFVだけで155勝を記録した。

    1960年代から1980年代にかけて独自エンジンを持たないチームにとって、DFVは最も魅力的な選択肢だった。

    最初の勝利は1967年F1オランダGP。ジム・クラークがロータス49を駆り、8番グリッドから逆転優勝を飾った。その圧倒的な存在感を象徴するのが1969年と1973年で、両シーズンでは全レースをDFV搭載車が制している。

    ターボ時代への移行に伴ってフォード・コスワースも進化し、その後のエンジンでさらに21勝を追加。その大半をベネトンとマクラーレンが記録した。

    最後の勝利は2003年F1ブラジルGPで、ジョーダンを駆ったジャンカルロ・フィジケラが挙げたものだった。

    4位:ルノー 169勝
    F1におけるターボエンジンの歴史を語るうえでルノーは欠かせない。ターボを本格的に導入した先駆者であり、初期には信頼性不足に苦しんだ。最初の完走まで14レースを必要としたほどだった。

    転機となったのは1979年F1フランスGP。ジャン=ピエール・ジャブイーユがルノーに初勝利をもたらした。

    1981年にアラン・プロストが加入すると潜在能力がさらに引き出され、3年間で9勝を記録した。しかしプロストの離脱後はワークスチームとして勢いを失い、1986年に一度F1から撤退した。

    皮肉にも、ルノーがさらに大きな成功を収めたのはターボエンジンが禁止された1989年以降だった。ウィリアムズへのエンジン供給を開始し、その後はベネトンやレッドブル・レーシングとの提携によって勝利を積み重ね、最終的に169勝に到達した。

    ルノー製パワーユニットによる最後の勝利は、エステバン・オコンが制した2021年F1ハンガリーGPである。

    ルノーは2025年末で再びF1エンジン供給から撤退。アルピーヌは2026年の新レギュレーション導入に合わせてメルセデス製パワーユニットへ切り替えた。

    5位:ホンダ 89勝
    ホンダもルノーと同様、F1への参戦と撤退を繰り返してきたメーカーである。最初の参戦は1964年で、自社製シャシーとエンジンによるフルワークス体制を構築した。

    1965年F1メキシコGPではリッチー・ギンサーがホンダにF1初勝利をもたらした。

    その後、ホンダは市販車事業に集中するためF1から撤退したが、1983年にエンジンサプライヤーとして復帰。スピリット、ウィリアムズ、ロータス、マクラーレン、ティレルなどにエンジンを供給した。

    すべてのチームが同じレベルのワークス支援を受けたわけではなかったものの、ナイジェル・マンセル、ネルソン・ピケ、アイルトン・セナ、アラン・プロストらの活躍によって、ホンダエンジンはF1を代表する存在となった。

    その後、ホンダは再びF1から撤退。後にBARを買収してワークスチームとして復帰したものの、2008年の世界金融危機を背景に再度撤退し、チームはブラウンGPへと引き継がれた。

    そして2019年からはレッドブルとのパートナーシップで成功を収め、マックス・フェルスタッペンがV6ターボハイブリッド時代におけるホンダの初勝利を記録した。

    ホンダ名義での勝利数は最終的に89勝に到達。2021年F1アブダビGPが、この区分における最後の勝利となった。ただし、ホンダとF1の関係はそこで完全に終わったわけではなかった。

    6位:コベントリー・クライマックス 40勝
    コベントリー・クライマックスは20世紀初頭からエンジンを製造していたが、レーシングカーへの本格進出は1950年代だった。

    スターリング・モスが1958年F1アルゼンチンGPで初勝利を挙げたものの、当初の2リッターエンジンではライバルと継続的に戦うにはパワーが不足していた。

    状況が変わったのは1959年。2.5リッター仕様がジャック・ブラバムをワールドチャンピオンへ導いた。

    その後もロータス、クーパー、ブラバム、ローラなどで使用され、1958年から1965年までに40勝を記録した。

    最後の時期にも成功を収め、ジム・クラークは1965年F1ドイツGPでキャリア3度目にして最後のグランドスラムを達成し、そのシーズンのタイトルを獲得。3リッター規定の導入に伴ってコベントリー・クライマックスはモータースポーツの第一線から退いた。

    F1パワーユニット

    7位:ホンダRBPT 38勝
    フェルスタッペンが激闘の末に2021年のドライバーズタイトルを獲得したシーズンを最後に、ホンダはF1活動を終了した。しかし、レッドブルが独自のエンジン部門「レッドブル・パワートレインズ(RBPT)」へ移行するための支援は継続された。

    新たな契約のもと、レッドブル側がホンダのエンジンIPを引き継ぎ、2025年末までホンダが必要なサポートを提供する体制が構築された。

    この時期には近年のF1でも屈指の支配的シーズンとなった2023年が含まれる。レッドブルはこの年、わずか1戦を除いてすべてのグランプリで勝利し、860ポイントを獲得した。

    2024年と2025年は2023年ほど圧倒的ではなかったものの、「ホンダRBPT」名義では最終的に38勝を記録し、歴代7位となっている。

    8位:TAGポルシェ 25勝
    活動期間こそ短かったものの、TAGポルシェは極めて高い成功率を残した。1983年から1987年までマクラーレンが使用したこのエンジンは、ポルシェが開発し、TAGが資金を提供したものだった。

    当初は1984年のデビューが予定されていたが、ニキ・ラウダが事前テストの必要性を訴えたことで計画が前倒しされ、1983年F1オランダGPから実戦投入された。

    1984年の開幕戦ブラジルGPではプロストが勝利し、その年のドライバーズタイトルはチームメイトのラウダが獲得した。

    プロストとラウダを中心にTAGポルシェは合計25勝を記録。ウィリアムズと組んだホンダの高い競争力を受け、マクラーレンが1988年からホンダエンジンへ切り替えたことで、その役割を終えた。

    9位:BMW 20勝
    F1初期にもBMWの支援を受けたプライベート参戦は存在したが、メーカーとして本格的にF1へ参入したのは1980年代だった。ルノーのターボエンジンに対抗するため、BMWも独自のターボエンジンを投入した。

    当初はブラバムとの独占契約を巡って関係が不安定になったが、チーム代表のバーニー・エクレストンがBMWにチャンスを与えることを決断。その成果が1982年F1カナダGPで表れ、ネルソン・ピケがBMWエンジンに初勝利をもたらした。

    その後も勝利を重ねたが、1989年からのターボ禁止によってBMWの活動はいったん終了した。

    BMWは後にウィリアムズと提携してF1へ復帰。2000年からエンジンを供給し、より攻撃的に進化したパワーユニットによって2001年F1サンマリノGPで復帰後初勝利を記録した。

    2003年にはウィリアムズが継続的に勝利を争えるまでになったものの、シューマッハとフェラーリの強さを打ち破るには至らず、両者のパートナーシップは2005年を最後に終了した。

    その後、BMWはザウバーを買収してワークス参戦したが、この体制での勝利は2008年F1カナダGPにおけるロバート・クビサの1勝のみ。BMWは最終的にチームをペーター・ザウバーへ売却した。

    10位:BRM 18勝
    ブリティッシュ・レーシング・モータース(BRM)のF1参戦は、決して順調なスタートではなかった。野心的すぎるエンジン開発は期待された成果につながらず、長期間にわたって苦戦した。

    しかし開発が進むと、1959年F1オランダGPでヨアキム・ボニエがBRMに初勝利をもたらした。

    会社のパートナーだったアルフレッド・オーウェンは、結果が改善しなければプロジェクトそのものを中止すると警告し、元ロールス・ロイスのトニー・ラッドを主任開発エンジニアに昇格させた。

    この人事が転機となり、ラッドは長年チームを苦しめていた基本的な問題を解決。1962年にはグラハム・ヒルがドライバーズチャンピオンに輝いた。

    BRMはプライベーターへのエンジン販売も開始したが、その後は競争力が低下。1977年にF1から撤退するまでに18勝を記録した。その内訳はBRMワークスチームによる17勝と、チーム・ロータスによる1勝だった。

    F1エンジン/パワーユニットメーカー歴代勝利数トップ10
    1位タイ フェラーリ:251勝
    1位タイ メルセデス:251勝
    3位 フォード・コスワース:176勝
    4位 ルノー:169勝
    5位 ホンダ:89勝
    6位 コベントリー・クライマックス:40勝
    7位 ホンダRBPT:38勝
    8位 TAGポルシェ:25勝
    9位 BMW:20勝
    10位 BRM:18勝

    2026年F1スペインGPでメルセデスがフェラーリに追いついたことで、F1史上最多勝エンジン/パワーユニットメーカーの座は251勝で2社が並ぶ形となった。一方、日本メーカーではホンダが89勝で歴代5位に位置し、ホンダRBPTとして記録された38勝を含めれば、その技術がF1の勝利に関わってきた歴史はさらに大きなものとなる。

  • ナイジェル・マンセル 最も愛したF1マシンはFW14Bではなく「1500馬力」のFW11B

    ナイジェル・マンセル 最も愛したF1マシンはFW14Bではなく「1500馬力」のFW11B

    F1世界チャンピオンのナイジェル・マンセルが、自身のキャリアで最も愛したマシンと、最も嫌ったマシンを明かした。

    数々の個性的なF1マシンを経験したマンセルが最高の1台に挙げたのは、タイトルを獲得したウィリアムズFW14Bではなく、ホンダ製ターボエンジンを搭載した1987年のウィリアムズFW11Bだった。

    一方、マンセルが「嫌いだった」と振り返ったのはロータス時代のマシンだ。特にF1史上初のアクティブサスペンションを搭載したロータス92は、直線を走っているだけでも事故につながりかねないほど予測不能だったという。F1.comの企画でマンセルが自身の記憶を振り返り、テクニカルエキスパートのマーク・ヒューズが各マシンの背景を解説した。

    マンセルが最も愛したF1マシン ウィリアムズFW11B
    マンセルが真っ先に名前を挙げたのが、1987年にドライブしたウィリアムズFW11Bだ。

    「何よりも本当に愛していたマシンはFW11Bだった。あれはF1史上最速、あるいは史上最もパワフルなマシンだったと思う。予選用タイヤを履いて1500馬力もあった。頭がおかしくなるようなマシンだったよ」

    FW11Bは、ホンダの1.5リッターV6ターボ「RA167E」を搭載していた。ターボ全盛期を象徴する1台であり、マンセルはその強烈なパワーを「モンスター」と表現する。

    「マーティン・ブランドルが言っていたことはまさにその通りだった。あのマシンは、すべてのコーナーで僕を殺そうとしていた。だから僕はあのマシンを愛していたし、同時に嫌いでもあった。僕を殺そうとしていたからね!」

    「でも、あれをドライブすると本当にモンスターだった。モンスターだよ。マシンから降りて、自分の身体が無事だったときには、それなりにいい仕事をしたんだと分かった」

    FW11Bでマンセルは1987年シーズンに6勝を挙げた。チームメイトのネルソン・ピケを上回る勝利数を記録しながらも、サンマリノGPや日本GPでの事故などもあり、ドライバーズタイトルはピケが獲得した。

    マンセル自身がF1世界王者となるのは5年後の1992年。アクティブサスペンションを備えたウィリアムズFW14Bで圧倒的なシーズンを送り、念願のタイトルを手にした。しかし、純粋に「最も愛したマシン」として選んだのはFW14BではなくFW11Bだった。

    ホンダRA167Eが生み出した圧倒的なパワー
    F1テクニカルエキスパートのマーク・ヒューズによれば、FW11Bは1986年型FW11をベースに低くパッケージングした1987年仕様だった。

    1987年のレギュレーションでは燃料搭載量の上限が220リットルから195リットルへ削減された。そのため燃料タンクを小型化でき、FW11Bではそれに合わせた車体パッケージが採用された。サスペンションにも変更が加えられたが、基本的なコンセプトはFW11を受け継いでいた。

    最大の特徴はホンダRA167Eだった。

    1987年にはターボの過給圧が最大4バールに制限されたが、ホンダはその条件下でも強大な出力を引き出した。ヒューズによれば、RA167Eは過給圧が無制限だった1986年型エンジンを上回るほどのパワーを発揮していたという。

    マンセルが語った「1500馬力」という数字は、当時の予選仕様がいかに極端な領域にあったかを物語っている。耐久性や燃費を重視する決勝仕様とは異なり、予選では短時間の性能を最大限に引き出すセッティングが用いられていた。

    ナイジェル・マンセル ロータス92

    マンセルが嫌ったロータス92「直線でも事故を起こした」
    対照的に、マンセルが最も嫌ったマシンのひとつとして挙げたのが1983年のロータス92だった。

    「ある時期、本当にまったく楽しめず、嫌いだったマシンは、僕たちが開発していた最初のアクティブサスペンションのロータス、92だったと思う」

    ロータス92は、F1で初めてアクティブサスペンションを実戦投入したマシンとして知られる。しかし、その革新的な技術は当初、ドライバーに大きな負担を強いるものでもあった。

    「マシンが僕をコースの外へ放り出して、直線を走っているときでさえ事故を起こす原因になっていた。あれは本当にひどい経験だった」

    ロータス92のアクティブサスペンションは、油圧によって車高や姿勢を制御する先進的なシステムだった。しかし信頼性が十分ではなく、重量増加という問題も抱えていた。

    ヒューズによれば、ロータスはわずか2戦でアクティブサスペンションの使用を断念した。

    ロータス92は過渡期に生まれたつなぎのマシン
    ロータス92が特殊な存在となった背景には、1983年にチームが迎えていたエンジン移行期がある。

    ロータスはこの年からルノー製ターボエンジンの使用を開始し、そのために専用設計された93Tを用意していた。しかし当初、ルノーから2台分のエンジンを十分に供給してもらうことができなかった。

    そこで従来の自然吸気コスワースDFVを搭載するために製作されたのが92だった。

    マンセルはシーズン前半をこのマシンで戦ったが、特にアクティブサスペンション仕様を嫌っていたという。一方、ターボエンジンを搭載した93Tも競争力を発揮できず、両車はイギリスGP以降、ルノーターボを搭載する94Tへと置き換えられた。

    F1デビューを飾ったロータス81Bも「曲がらなかった」
    マンセルがもう1台、嫌いだったマシンとして名前を挙げたのがロータス81Bだ。

    これはマンセルが1980年にF1デビューを果たしたマシンでもある。

    「もう1台は、僕が初めてドライブして、グランプリの予選通過を目指したロータス、81Bだったと思う」

    「僕たちが開発していた通常のロータスより7インチ長くて、長すぎたから素早く曲がらなかった。僕たちが試していたもののひとつだったけど、あれも楽しめなかったね!」

    ロータス81Bは、標準型81のホイールベースを延長した仕様だった。

    当時のロータスはグラウンドエフェクト技術でF1をリードした79の成功を再現しようとしていたが、81は期待された競争力を発揮できず、中団で苦戦していた。

    ヒューズによれば、81が抱えていた空力上の問題のひとつとして、エンジン後端とディフューザーの間隔が小さすぎることが疑われた。そのためホイールベースを延長した81Bが製作された。

    しかし、その変更は別の問題を生んだ。

    車体を長くしたことでマシンはターンインを極端に嫌うようになり、標準型81以上に競争力を欠く結果となった。マンセルが感じた「長すぎて曲がらない」という印象は、マシンの設計上の特徴そのものだった。

    危険さも含めて愛したFW11B
    マンセルの選択は興味深い。最も成功したマシンではなく、最も強烈な体験を与えたマシンを「愛した1台」として選んだからだ。

    1992年のFW14BはマンセルにF1世界タイトルをもたらした歴史的なマシンだった。一方のFW11Bではタイトルを逃している。それでも、1500馬力級のホンダターボを操り、マシンから無事に降りること自体に達成感を覚えた1987年の経験が、マンセルにとって特別な記憶として残っている。

    そして皮肉にも、マンセルが嫌ったロータス92のアクティブサスペンションは、その後F1で急速に進化することになる。マンセル自身も約10年後、完成度を大幅に高めたアクティブサスペンションを備えるFW14Bを駆り、1992年のF1世界チャンピオンに輝いた。

  • F1 2027年シーズン開幕イベントをミラノで開催 11チーム集結「F1 The Show」

    F1 2027年シーズン開幕イベントをミラノで開催 11チーム集結「F1 The Show」

    F1は、2027年シーズンの開幕を前に、イタリア・ミラノで大規模イベント「F1 Live Milan」を開催することを発表した。2027年2月18日から20日までの3日間にわたってファンフェスティバルを展開し、初日には全11チームのドライバーとチーム代表が集結する「F1 The Show」が行われる。

    2025年にロンドンのO2アリーナで開催された「F1 75 Live」の成功を受けたもので、2026年は新レギュレーション導入や複数回のプレシーズンテストによる過密日程もあり同様のイベントは実施されなかった。

    2027年は開催地をロンドンからミラノへ移し、1夜限りだった従来の形式から3日間へと規模を拡大する。

    全11チームが2月18日の「F1 The Show」に集結
    「F1 Live Milan」の中心となるのが、2月18日に一夜限りで開催される「F1 The Show」だ。会場はミラノ市内の「象徴的な会場」とされているが、具体的な場所は今後発表される。

    当日は2027年F1世界選手権に参戦する全11チームからドライバーとチーム代表が出演。音楽やエンターテインメントを組み合わせ、シーズン開幕前にF1の主要メンバーが一堂に会するイベントとなる。

    2025年のF1 75 Liveでは、当時参戦していた全10チームと20人のドライバーがロンドンに集まり、各チームの2025年リバリーを一斉に披露した。コメディアンのジャック・ホワイトホールが司会を務め、音楽ライブなども組み込まれたF1初の合同シーズンローンチとして開催された。

    F1によれば、このイベントは世界37地域で配信され、ライブ放送の視聴者数は750万人に達した。2027年のミラノ開催は、その成功をさらに発展させる位置付けとなる。

    ミラノ全体で3日間のF1ファンフェスティバル
    今回は一夜限りのショーだけではない。2月18日から20日までの3日間、「Milan Fan Festival」が開催され、F1はミラノをシーズン開幕前のファンイベントの舞台へと変える。

    具体的なプログラムはまだ明らかにされていないが、F1は世界各地のグランプリ開催都市で展開してきたファンフェスティバルの雰囲気と、より深くF1の世界を体験できる企画を組み合わせるとしている。

    F1会長兼CEOのステファノ・ドメニカリは「我々は常に大きく考え、限界を押し広げようとしている。F1 Live Milanは、ファンを中心に据えて作り上げる素晴らしい体験になる」と説明する。

    「ファンには、単にスポーツを見ているのではなく、その中に本当に入り込んでいると感じてもらいたい。F1をこれまで以上にファンへ近づけ、ヒーローたちを間近で見てもらい、F1を特別なものにしているエネルギー、革新性、感動を体験してもらうという我々の継続的な目標の重要な一部だ」

    さらにドメニカリは、ロンドンでのF1 75 Liveを土台として、ミラノでは街を3日間にわたるF1フェスティバルへ変えていく考えを示した。

    F1 The Show

    ロンドンからミラノへ F1が選んだ新たな舞台
    開催地となるミラノは、F1イタリアGPの舞台であるモンツァから近く、フェラーリを中心にF1への強い情熱を持つ地域でもある。文化、ファッション、デザインの世界的中心地という性格も、F1がシーズン開幕イベントの新たな舞台として選んだ理由のひとつだ。

    実際、2026年F1イタリアGPを前にした今週もミラノでは複数のフェラーリ関連イベントが行われ、ルイス・ハミルトンとシャルル・ルクレールの登場には多くのファンが集まった。

    F1は2027年について、ロンドンからミラノへ「バトンを渡す」と表現しており、F1 75 Liveの単純な再演ではなく、都市を巻き込んだイベントへ発展させる構想を打ち出している。

    チケットは2026年後半に発売へ
    F1 Live Milanのチケットは2026年後半に発売される予定で、ファン向けの事前登録も行われる。「F1 The Show」の出演者や音楽アーティスト、Milan Fan Festivalの各日のプログラムなど、詳細は今後数カ月をかけて順次発表される。

    現地を訪れることができないファン向けにも幅広いチャンネルを通じてイベントを届ける予定で、2025年のF1 75 Liveと同様、世界中から視聴できる形になる。

    2025年に初めて全チームを一堂に集めたシーズンローンチを実現したF1は、2027年にはその枠組みを3日間の都市型イベントへ拡大する。11チーム体制となったF1の新シーズンは、ミラノを舞台とする「F1 Live Milan」から本格的に動き出すことになる。

  • 2030年以降のF1マシン軽量化で「給油復活」案 チーム首脳は揃って反対

    2030年以降のF1マシン軽量化で「給油復活」案 チーム首脳は揃って反対

    F1では2030年以降を見据えた将来のレギュレーションを巡り、マシンのさらなる軽量化が重要なテーマとなっている。その手段のひとつとして、2010年から禁止されているレース中の給油を復活させる案も浮上している。

    しかし、ウィリアムズF1代表のジェームス・ボウルズ、レーシングブルズCEOのピーター・バイエル、ハースF1代表の小松礼雄はいずれも給油復活に否定的な見解を示した。

    3人ともマシンを軽くするという目的そのものには賛成しているが、給油をその解決策とすることにはスポーツ面やコスト、安全性などの観点から疑問を呈している。

    F1軽量化の手段として浮上する「給油復活」
    F1では将来的なV8エンジンへの回帰が議論される一方、マシン重量をいかに削減するかも次世代レギュレーションにおける大きな課題となっている。

    その選択肢のひとつがレース中の給油だ。現在のF1では決勝を走り切るために必要な燃料をスタート時から搭載する必要があるが、給油が認められれば、搭載燃料を減らした軽い状態でレースをスタートできる。

    理論上はマシン重量を削減できるだけでなく、給油量やタイミングによって戦略の幅が広がる可能性もある。しかし、過去に給油時代を経験してきたチーム関係者からは、そのスポーツ的なメリットを疑問視する声が相次いでいる。

    小松礼雄「給油はまったく好きではありません」
    ハースF1代表の小松礼雄は、給油復活について明確に反対の立場を示している。

    「個人的には、給油は本当にあまり好きではありません。というか、まったく好きではないですね。私が好きだと言いましたか? 好きではありません」

    小松礼雄は、かつてF1を外から観戦していた立場からも、給油がレース展開を分かりにくくしていたと振り返る。

    「私が外からF1を見ていたときでさえ、給油があると、スタンドで観戦している人にとってレースが非常に分かりにくくなっていました」

    一方で、小松礼雄は予選については、ドライバーが可能な限り軽いマシンで限界まで攻められる状態が望ましいと考えている。

    「ただ、予選ではマシンをできるだけ軽くして、ドライバーが全力で攻められるという考え方は好きです。それについては賛成です」

    「ですから、まとめると、レース中の給油には賛成ではありません。重量やコスト、それに伴うあらゆることを考えてもそうです。本当に給油はあまり好きではありません」

    ピーター・バイエル「ショーにはほとんど何も加えない」
    レーシングブルズCEOのピーター・バイエルも、小松礼雄と同様に給油復活には否定的だ。

    バイエルはFIAで働いていた時代、F1のエンターテインメント性を向上させるためのワーキンググループに参加しており、その際にも給油復活について詳細な検証が行われたという。

    「まだFIAで働いていたころ、ロス・ブラウンと彼のチームを含むF1とのワーキンググループがあり、エンターテインメントやショーをどう改善するかについて検討していた」

    「そのとき、一部の人たちから出てきた大きなアイデアのひとつが給油だった。そこで、過去の映像や手元にあったデータを非常に詳しく調べた」

    その検証から得られた結論は、給油が必ずしもレースを面白くするわけではないというものだった。

    「その結果、非常に派手で危険な映像がいくつかあったことを除けば、給油はスポーツにそれほど何かをもたらしてはいなかったことが分かった。なぜなら、オーバーテイクの多くが突然ピットレーンで起きるようになったからだ」

    つまり、コース上で行われていた順位争いの一部が、給油時間やピットストップのタイミングによるポジション変動へと置き換わってしまう。

    「だから、私はこのアイデアにはあまり賛成ではない。実際のところ、ショーにそれほど多くのものを加えないことが分かっているからだ」

    ジェームス・ボウルズ「レースが予測しやすくなる」
    ウィリアムズF1代表のジェームス・ボウルズも、基本的には2人と同じ考えだ。

    まず、給油が行われていた時代ならではの個人的な経験を交えて冗談を飛ばした。

    「私も似たような意見だ。非常に個人的な話をすると、ピットウォールでレーシングスーツを着ているとかなり暑い。だから、できればもう一度あれを経験したくはない」

    給油時代には火災の危険があることから、ピット作業に関わるスタッフだけでなく、ピットウォールのチームメンバーにも防火装備が求められていた。

    だが、ボウルズがより大きな問題として挙げたのは、給油によって各マシンのピットストップ時期を予測しやすくなることだ。

    「もうひとつ起きるのは、基本的にマシンがいつピットストップするのかを正確に予測できるようになることだ」

    「燃料を使い切るところまで走らせることになる。なぜなら、そのときにマシンが最も速くなるからだ」

    給油量が分かれば、各ドライバーが何周目付近でピットに入るのかも計算しやすくなる。ボウルズは、それによって戦略的な意外性が失われる可能性を指摘する。

    「つまり、何が起こるのかを予測できる。誰かが1ストップなのか、2ストップなのか、3ストップなのかが分かるようになり、最終的にはそれほど大きな違いを生まない」

    さらに現在は、テレビ中継や公式データなどを通じて、ファンがリアルタイムで膨大な情報を入手できる。

    「今は外の世界に対して非常に多くの情報が公開されているので、誰もがそうした情報にアクセスできるようになるだろう。それによって、私にとってはレースの駆け引きのかなりの部分が失われてしまう」

    フォーミュラ1カー 給油

    軽量化には賛成 ただし「給油は正しい解決策ではない」
    3人の意見に共通しているのは、F1マシンを軽量化するという目標そのものを否定しているわけではないという点だ。

    むしろボウルズは、将来のF1にとってマシン重量を抑えることは重要だと強調する。そのうえで、給油復活を軽量化のための手段とすることには反対している。

    「このアイデアの背景にある考え方は、『マシン重量を低く保とう』ということだと思う。それについては完全に賛成だ」

    「ただ、それを実現するために給油へ戻ることが正しい解決策だとは思わない」

    F1では2030年以降に向けたパワーユニットやシャシー規則について議論が続いており、軽量化は今後の重要なテーマのひとつとなる。ただし、かつてF1のレース戦略を大きく左右した給油を復活させることについては、少なくとも現場のチーム首脳から強い支持は得られていない。

    マシンを軽くし、ドライバーがより限界まで攻められるF1を目指すという方向性では一致している。一方、そのためにレース中の給油を復活させるべきかという問いに対して、ボウルズ、バイエル、小松礼雄の答えはいずれも「ノー」だった。

  • マクラーレンF1代表 フェルスタッペンの「2026年マシンは簡単」説に反論

    マクラーレンF1代表 フェルスタッペンの「2026年マシンは簡単」説に反論

    2026年F1ではチームメイト間のタイム差が従来以上に小さくなっている。

    マックス・フェルスタッペンは、新世代マシンではドライバーが限界を見つけやすくなったことが理由だと分析する一方、マクラーレンのチーム代表アンドレア・ステラは「むしろ運転は難しくなっている」と異なる見方を示した。

    第12戦オランダGPでは、負傷したアイザック・ハジャーに代わってレッドブル・レーシングをドライブしたリアム・ローソンが、予選でフェルスタッペンからわずか0.115秒差につけた。レーシングブルズから今季初出場を果たした角田裕毅も、レギュラーのアービッド・リンドブラッドに接近。この結果が、2026年F1マシンにおけるドライバー間の差について新たな議論を呼んでいる。

    フェルスタッペン「今のマシンは限界を見つけるのがずっと簡単」
    フェルスタッペンは、特に予選では2026年型マシンの特性によってドライバーがパフォーマンスの上限に到達しやすくなっていると考えている。

    「特に予選ではそうだと思う。今のマシンでは限界を見つけるのがずっと簡単になっている。かなり多くの場所でバッテリーも不足するから、すべてをまとめることも少し簡単になる」

    「以前のマシンと比較して、今週末はそれがかなりよく表れていたと思う。僕にとっては驚きではない」

    フェルスタッペンは、これによってチームメイトのパフォーマンスそのものを過小評価すべきではないとも強調している。オランダGPで代役を務めたローソンについて「今週末は非常に堅実な仕事をした」と評価した。

    一方で、2026年シーズンを通じてドライバー間のタイム差そのものが縮小していることは明確だと指摘する。

    「今季ずっとそうなっていると思う。誰もが常に0.1秒、0.2秒以内にいる。本当に悪い予選だったとしても0.3秒くらいだ。差はいつもものすごく小さい」

    「裕毅を見ても分かる。乗ってすぐにそこにいる」

    角田裕毅はオランダGPで今季初めてレーシングブルズのVCARB-03をドライブし、予選Q2ではリンドブラッドとの差を0.102秒まで縮めた。異なるマシンへの即時適応という点でも、フェルスタッペンにとっては自身の見方を裏付ける例となった。

    アンドレア・ステラ(マクラーレン)

    ステラは反論「2026年F1マシンは運転が難しい」
    しかし、ステラはチームメイト間の差が縮まっていることを、マシンが運転しやすくなった証拠とは捉えていない。

    マクラーレンではランド・ノリスとオスカー・ピアストリの両ドライバーから、2026年型マシンは扱いが難しいというフィードバックを受けているという。

    「他のチームについては分からないが、我々の2人のドライバーは、このマシンを運転が難しいマシンだと分類している」

    「昨年は2人のドライバー間のばらつきがはるかに小さかった。今年はドライバーが少し後手に回るだけで、その差が大きくなることがある」

    ステラが難しさの理由として挙げたのは、2026年に導入されたシャシーとパワーユニット双方の新レギュレーションだ。

    「いくつかの理由から運転が難しい。シーズン序盤はコーナーで、それからストレートでも難しさがあった」

    「コーナーではグリップが低く、ダウンフォースも大幅に少なく、タイヤも小さい。ストレートではエネルギーデプロイメントの一貫性がなかったり、ブレーキング直前に突然スーパークリップが発生したりする。それによってブレーキングの基準を失ってしまう」

    ここでいう「スーパークリップ」は、電気エネルギーの供給が急激に制限され、ストレートで突然加速力が落ちる状態を指す。2026年のF1では電動側の出力とエネルギー管理の重要性が大幅に増しており、その挙動がドライバーのブレーキングポイントにも影響する。

    「あるいは、もっと早くアクセルを踏んだのに、その結果として後でデプロイメントを失うこともある。そうしたさまざまな側面から、今年のマシンは運転がより難しくなっている」

    「以前のF1マシンの方が簡単だった」
    ステラは、シーズンが進むにつれてドライバーとエンジニアが2026年型パワーユニットのエネルギーマネジメントを理解し、扱い方を改善してきたことは認めている。

    ただし、それはマシンそのものが簡単になったことを意味しないという。

    「すべてのチームがダウンフォースを追加してきたとしても、ブレーキングでどんな問題が起きるのか、あるいはトラクションをかけたときにマシンが突然スナップするのかをドライバーが予測するのは非常に難しい」

    「前世代のマシンには空力的にはるかに大きな荷重があり、タイヤから得られるグリップもはるかに大きかった。以前の方が簡単だった」

    同じ「僅差」でもフェルスタッペンとステラで異なる解釈
    両者が共通して認めているのは、2026年F1ではドライバー間のタイム差が極めて小さいという点だ。ただし、その理由についての解釈は正反対に近い。

    フェルスタッペンは、2026年型マシンでは限界を把握してラップをまとめやすくなり、ドライバーがパフォーマンスの上限に到達しやすくなった結果として差が縮まったとみている。

    一方のステラは、低ダウンフォース、小型タイヤ、エネルギーデプロイメントなど複数の要素によってマシンはむしろ予測しにくくなっており、シーズンを重ねるなかでドライバー側がその複雑さへの対処を習得してきたと分析する。

    ローソンが初週末からフェルスタッペンに0.115秒まで迫り、角田裕毅もリンドブラッドから0.102秒差につけたオランダGPは、その議論を象徴する週末となった。2026年F1でチームメイト間の差が縮まっている背景が「マシンの限界を引き出しやすくなったから」なのか、それとも「複雑なマシンへの適応が進んだから」なのか。フェルスタッペンとステラは、同じタイム差から異なる結論を導き出している。

  • ルイス・ハミルトン F1グラウンドエフェクト時代の苦戦説に反論「大半より勝った」

    ルイス・ハミルトン F1グラウンドエフェクト時代の苦戦説に反論「大半より勝った」

    ルイス・ハミルトンは、F1のグラウンドエフェクト時代のマシンに適応できなかったとの見方に反論した。2026年に復調を遂げている7度のF1ワールドチャンピオンは、2022年から2025年までの成績について「それでも大半のドライバーより多く勝っていた」と強調している。

    2014年からF1を席巻したハミルトンは、7年間で6度のドライバーズタイトルを獲得。その圧倒的な時代は、2021年にレッドブル・レーシングのマックス・フェルスタッペンにタイトルを奪われたことで終わりを迎えた。

    2021年の激しいタイトル争いを経て、ハミルトンが2022年にF1へ戻るかどうかは一時不透明だった。そして実際にコックピットへ戻ると、それまでと比べて成績は明らかに低下した。

    その一因として前年のタイトル争いによる影響も考えられたが、最大の問題はメルセデス側にあった。チームが採用した独特なゼロサイドポッド・コンセプトは、風洞で示されていたレベルのダウンフォースを実際のコース上で生み出すことができなかった。

    グラウンドエフェクト時代の4年間で2勝
    その後、メルセデスがマシンを改善していっても、ハミルトンは安定したパフォーマンスを取り戻すことができなかった。

    2025年にフェラーリへ移籍すると、新たなチームメイトとなったシャルル・ルクレールに大きく後れを取った。ルクレールが7度の表彰台を獲得した一方、ハミルトンは一度も表彰台に立つことができなかった。

    2022年から2025年までのグラウンドエフェクト時代を通じても、ハミルトンが挙げた勝利は2勝にとどまった。

    しかし、2026年にF1マシンのレギュレーションが一新されると状況は変化した。より軽量で機敏になった新世代マシンでハミルトンは復調し、現在はフェラーリ勢をリードするパフォーマンスを見せている。

    「以前の世代のマシンに少し近い感覚でドライブできる」とハミルトンは語った。

    「前の世代のマシンで勝ったレースでも、僕は今とまったく同じようにドライブしていた。だから、あの世代のマシンは僕に合っていなかったという話がいろいろあるけど、それでもあの期間に、おそらく大半のドライバーより多くのレースで勝っている」

    ルイス・ハミルトン(スクーデリア・フェラーリ)

    「今のマシンは少し扱いやすく寛容」
    ハミルトンは、2026年型マシンでは軽量化やバウンシングの解消によって扱いやすさが増した一方、パワーユニットのエネルギー展開という新たな難しさが加わったと説明する。

    「今のマシンは少し扱いやすくて、より寛容だし、軽くなっている。それにバウンシングもない」

    「ただ、スロットルやパワーの使い方にはかなり取り組む必要がある。それをエンジニアと一緒に調整していく必要があって、またひとつ別の要素が加わっている」

    2026年のF1では、ドライバーのスロットル操作がエネルギー展開にも大きな影響を与える。ハミルトンは、これまで以上に細かなスロットル操作とエネルギーマネジメントへの理解が重要になっていると語った。

    「以前は純粋にドライバビリティの問題だった。でも今は、ドライバビリティがエネルギーをどこで展開するかにも関係していて、それを常に変えている」

    「実際、ハーフスロットルにしたり、スロットルを戻したり、踏み直したり、10%だけ戻したりすることで、ラップを通じたエネルギー展開が変わる。だから、それを理解することは以前よりさらに重要になっている」

    グラウンドエフェクト時代にメルセデスとフェラーリで苦戦したことで、その特性がハミルトンのドライビングスタイルに合わなかったとの評価も根強い。しかし本人は、その見方を否定。2026年の復調についても自身のドライビングを大きく変えた結果ではなく、軽量で寛容になった新世代F1マシンの特性が影響しているとの考えを示した。

  • 2026年F1は人工的? ル・マン9勝 クリステンセン「適応できなければ終わり」

    2026年F1は人工的? ル・マン9勝 クリステンセン「適応できなければ終わり」

    2026年に導入された新世代F1マシンをめぐる議論が続くなか、ル・マン24時間レースで歴代最多9勝を誇るトム・クリステンセンが、新レギュレーションへの評価を語った。

    マックス・フェルスタッペンやフェルナンド・アロンソらが、オーバーテイクにおけるエネルギーマネジメントの影響が大きすぎると批判する一方、クリステンセンは新世代マシンの方向性そのものを支持。

    「現代のドライバーは適応できなければ終わりだ」と述べ、複雑化したF1への対応力もトップドライバーに求められる能力のひとつだと主張した。

    軽量・コンパクト化は「F1にとって正しい方向」
    アウディのアンバサダーを務めるクリステンセンは、2026年の新レギュレーションを完全に第三者の立場から評価しているわけではない。アウディがF1参戦を決断した背景のひとつには、今季から導入された新しいパワーユニット規則がある。

    それでも、ル・マン24時間で9度の総合優勝を飾ったクリステンセンは、2026年型マシンに導入された変更はF1にとって前向きな進化だと考えている。

    特に評価しているのが、マシンの小型化と軽量化だ。

    「マシンはよりコンパクトで軽くなった。それは見ていても分かる。マシンはより俊敏になったし、これはF1にとって正しい方向だ」

    FIAは2026年規則でマシンのサイズと重量を削減し、従来よりも扱いやすく、ドライバーがマシンの挙動により大きな影響を与えられる方向を目指した。クリステンセンは、その狙いについて一定の成果が表れていると評価している。

    エネルギーマネジメントには「人工的」に映る場面も
    一方で、クリステンセンも2026年規則が完成形だとは考えていない。特に課題として挙げたのが、新世代ハイブリッドパワーユニットにおける電気エネルギーの使い方だ。

    シーズン序盤からエネルギーマネジメントをめぐってはドライバーから不満が相次ぎ、スパ・フランコルシャンやシルバーストンといった高速サーキットでも、その特徴が顕著に表れた。

    「ドライバーたちの批判にも確かに根拠はある。特にシーズン前半や一部のサーキットではそうだった。時にはすべてが少し人工的に見えることもあった。ただ、ドライビングという面では、それ以降かなり改善されている」

    フェルスタッペンやアロンソを含む複数のF1王者は、2026年型マシンではオーバーテイクの成否が電気エネルギーをどれだけ利用できるかに左右されすぎており、純粋なドライビング能力の比重が小さくなっているとの考えを示してきた。

    クリステンセンもそうした違和感そのものは理解している。しかし、それを新世代F1が抱える根本的な欠陥だとは捉えていない。

    「アクセルとブレーキとステアリングだけ」は過去のもの
    クリステンセンが強調するのは、時代とともに変化するマシンへ適応することもドライバーの能力だという点だ。

    「現代のドライバーである以上、状況に適応できなければならない」

    F1が純粋にアクセル、ブレーキ、ステアリングだけで競うべきだという考えにも否定的だ。

    「理想的な世界ならアクセルとブレーキとステアリングだけでいい、という考え方は間違っていると思う。以前より少し複雑になっただけで、今ではドライバーがそれに適応できることが不可欠なんだ」

    そして、現代F1で生き残るための条件を端的に表現した。

    「それができなければ、終わりだ」

    クリステンセンの主張は、2026年型マシンをめぐる議論に別の視点を提示している。エネルギー管理によってレースが人工的に見えるという批判を認めつつ、そのシステムを最大限に使いこなす能力まで含めて現代のドライビングスキルだという考えだ。

    クリステンセンが最も評価するアントネッリ
    技術面だけでなく、クリステンセンは2026年シーズン前半のドライバーについても評価を語った。そのなかで最も強い印象を受けた存在として挙げたのが、メルセデスF1のキミ・アントネッリだ。

    19歳のアントネッリは現在、ルイス・ハミルトンとチームメイトのジョージ・ラッセルを上回ってF1ドライバーズ選手権をリードしている。シーズン開幕前にはラッセルが有力候補のひとりと見られていたが、アントネッリは新世代マシンへの高い適応力を示している。

    「2026年シーズンにはいくつかポジティブな点がある。でも僕にとって、キミ・アントネッリはそのなかでも圧倒的に輝いている存在だ」

    「今の彼には自信があふれている」

    クリステンセンは、その自信こそが複雑な2026年型マシンを速く走らせるうえで重要な要素になっていると分析する。

    自信がエネルギー管理と速さにつながる
    2026年のF1では、単純にマシンを限界まで走らせるだけでは十分ではない。電気エネルギーの配分やパワーユニットの各種モード、車載システムなどを把握しながら、レース全体を組み立てる能力がこれまで以上に要求されている。

    クリステンセンは、そうした状況だからこそドライバーの精神状態がパフォーマンスを大きく左右すると考えている。

    「精神的にいい状態にいれば、自然とドライビングも良くなると確信している。特にエネルギーマネジメントではそうだ」

    「こういうマシンでは、自分自身を強く信じているドライバーの確かな操作が必要になる」

    「大きな自信があれば、プレッシャーをよりうまく管理できるし、ドライビングも良くなる」

    2026年F1は、軽量化と小型化によってマシン本来の俊敏性を取り戻す一方、エネルギーマネジメントという新たな複雑さをドライバーに課した。クリステンセンは、その部分に改善の余地があることを認めながらも、変化した技術を理解し、使いこなす能力まで含めて現代のF1ドライバーに必要な資質だと評価している。

  • FIAが次世代F1マシンで「80kg軽量化」目標 2031年レギュレーションで大幅刷新へ

    FIAが次世代F1マシンで「80kg軽量化」目標 2031年レギュレーションで大幅刷新へ

    2026年に導入されたF1の新テクニカルレギュレーションでは、マシンの小型・軽量化を掲げた「ニンブルカー・コンセプト」が大きな柱となった。最低重量は前年から32kg減の768kgとなり、ホイールベースも20cm短縮、全幅も10cm狭められている。

    一方、FIAはこれを最終到達点とは考えていない。FIAシングルシーター部門ディレクターのニコラス・トンバジスは、2031年を軸に検討されている次世代レギュレーションで、現在よりさらに約80kg軽いF1マシンを実現することを目標に掲げた。

    2026年F1は「ニンブルカー」への第一歩
    2026年F1では、パワーユニットとエネルギーマネジメントをめぐる議論がシーズン序盤から大きな注目を集めてきた。そのためシャシー規則の変化は比較的目立たなかったが、FIAは新世代マシンについて一定の成果が得られていると評価している。

    最低重量は2025年の800kgから768kgへ32kg軽量化。ホイールベースは20cm短くなり、車幅も10cm縮小された。さらにダウンフォースも大幅に削減され、ドライバーがステアリング操作でマシンと格闘する場面が増えている。

    トンバジスは、Autosportを含む一部メディアに対し、2026年規則が前進だったかと問われ、次のように語った。

    「おそらくそうだと思う。ただし、仕事が終わったと考えるべきではない。マシン同士は以前より接近して走れるようになったと思う」

    FIAの分析では、先行車が生み出す乱気流、いわゆるダーティエアによる影響は、前世代規則が導入された2022年シーズン序盤と同程度まで抑えられているという。

    2022年規則の失敗から学んだFIA
    2022年に導入されたグラウンドエフェクト規則も、当初はマシン同士が接近して走りやすくすることを目的としていた。しかし開発競争が進むにつれ、各チームが生み出した空力ソリューションによって後方への乱気流が悪化し、その効果は徐々に失われていった。

    FIAはその経験を2026年規則に反映したとトンバジスは説明する。

    「2022年選手権の開幕時と似たレベルにあると思うが、今年の方が少し堅牢だと思っている」

    「各チームがさまざまな空力ソリューションを導入しているが、今のところコンセプトそのものを壊すようなものは見つかっていない。以前の規則では、コンセプトを大きく損なうものがいくつか存在していた」

    具体的には、前世代マシンのフロントウイング・エンドプレート、フロアエッジ、フロントタイヤ周辺に配置された空力パーツが問題だったという。

    「そうしたものによってウェイクの特性が大幅に悪化した。我々はそこから学んだ。今回は同じような問題が存在しないことを願っている」

    「祖母でも運転できるマシン」にはしたくない
    トンバジスが2026年規則のもうひとつの成果として挙げるのが、マシンを操る難しさだ。

    ダウンフォースが減少したことで、ドライバーは以前よりマシンを積極的にコントロールする必要がある。FIAは、それを世界最高峰のカテゴリーにふさわしい特徴だと捉えている。

    「ドライバーにとって依然としてかなり難しいマシンだ。それは良いことだと思う。誰でも運転できるようなマシンではない」

    「空力規則の一部は、コーナーを通じてマシンのあらゆる部分をチームが完璧に対処できない方向にしている。そのため、ドライバーにはいくつかの課題が残されている」

    そしてトンバジスは、F1マシンに求める難易度についてユーモアを交えて表現した。

    「世界最高の22人のドライバーがいるのだから、僕の祖母でも簡単に運転できるようなマシンであるべきではないと思う」

    一方で、ドライバーの身体にかかる負担については改善されている。

    前世代のグラウンドエフェクトカーは、大きなダウンフォースを得るために極端に低い車高と硬いサスペンション設定を必要とした。2026年マシンではライドハイトがやや高くなり、その問題が緩和されている。

    「ライドハイトも少し上げているので、昨年ほど身体的に過酷ではなくなった」

    国際自動車連盟 フォーミュラ1カー

    2031年F1で「さらに80kg軽く」
    それでもFIAが目指すマシン像は、現在よりはるかに軽く、コンパクトなものだ。

    現行レギュレーションのサイクル中に大幅な変更を行うことは難しいため、焦点となるのは次世代規則だ。現在は2031年の導入が基本線となっているが、関係者の十分な合意が得られれば2030年への前倒しも検討されている。

    トンバジスは次世代F1マシンについて具体的な数値目標を示した。

    「マシンは少し軽く、少し小さくなり、ドライバーからも評価されている。ただ、これが僕の望んでいる最終地点かと言えば、違う」

    「将来的には、さらに80kg軽くしたい。そして、もう少し短く、もう少し小さくしたい」

    現在の最低重量768kgから単純に80kgを削減すれば、688kgという水準になる。実際の次世代最低重量がその数字になると決まったわけではないが、FIAが目指している軽量化の規模が非常に大きいことを示している。

    「今回可能だったことから、さらに大きな一歩を踏み出す。それが目標だ。今回の変更も悪いステップではないが、『これで仕事は終わった。目標を達成した』と言っているわけではない」

    「将来は軽量化でもう一段階進みたい。重量についても大幅なステップを踏みたい」

    F1マシンの重量増加にようやく歯止め
    近年のF1では、安全装備の強化やハイブリッドシステムの大型化などによってマシン重量が増加を続けてきた。

    2000年代初頭のF1マシンはドライバー込みでも600kg前後だったが、その後はハイブリッド化や大型化に伴って重量が増加。2025年には最低重量が800kgに達していた。

    2026年規則による768kgへの削減は、その長期的な流れを反転させたという意味でも重要だとトンバジスは考えている。

    「F1マシンが軽くなったのは、おそらく2000年以来初めてだと思う。少なくともそれくらい前、もしかするともっと前かもしれない」

    2026年規則はFIAが理想とするF1マシンへの完成形ではなく、あくまで第一段階という位置付けだ。次世代規則では約80kgという大幅な軽量化に加え、さらなる全長短縮と小型化も視野に入る。パワーユニット規則とともに、2030年代のF1ではマシンそのものの姿が再び大きく変わる可能性がある。

  • F1が2027年に空力開発を相次ぎ禁止 FIAが警戒する「2022年の失敗」

    F1が2027年に空力開発を相次ぎ禁止 FIAが警戒する「2022年の失敗」

    F1では2027年に向け、2026年シーズンに各チームが開拓した複数の空力デバイスが禁止される。対象にはエキゾースト周辺のウイング、リアウイングのハンガー延長、そしてモナコGP以降に広がったアクチュエーターフェアリングのウイングレットなどが含まれる。

    FIAは、これらの規制強化について単なる開発競争の抑制だけが目的ではないと説明する。最大の狙いは、マシン同士が接近して走れるという現行レギュレーションの基本コンセプトを守ることだ。

    2022年に導入したグラウンドエフェクト規則では、当初は改善された後続車の空力性能が数年間の開発によって大幅に悪化した。

    その失敗を繰り返さないため、FIAは早い段階で手を打つ。

    2027年F1で禁止される主な空力開発
    2026年の新レギュレーションでは、チームが想定以上のスピードで細かな空力上の余地を発見した。その代表例が、排気流周辺を利用する「エキゾーストウイング」だ。

    さらにリアウイングでは、支持構造であるハンガーを延長して空力的に利用するアイデアも登場。モナコGP以降には、リアウイングのアクチュエーター周辺に設けられたフェアリングを利用し、小型ウイングレットを形成する開発も各チームに広がった。

    FIAはこうした領域を2027年規則で規制する。目的のひとつはダウンフォースを抑えることであり、もうひとつは限られた小さな領域を巡って巨額の開発費が投入される「開発戦争」を防ぐことにある。

    ただし、FIAは空力設計を完全に画一化する考えではない。チームが独自のアイデアを生み出せる余地を残しながら、レギュレーションの根幹を損なう方向への開発だけを封じる方針だ。

    2022年F1で起きた「追い抜きやすさ」の後退
    FIAシングルシーター部門ディレクターのニコラス・トンバジスは、現在の2026年型F1マシンについて、後続車が受けるダウンフォース低下は2022年シーズン開幕時と同程度の水準にあると説明する。

    2022年の規則は、前を走るマシンが発生させる乱流の影響を抑え、後続車が接近しやすくすることを大きな目的として導入された。

    当初、前走車から10メートル後方でのダウンフォース低下は約15%、20メートルでは約5%だった。しかし各チームが規則の自由度を利用して空力開発を進めた結果、数年後には10メートルで約35%、20メートルでも約15%まで悪化した。

    つまり、マシンそのものは速くなった一方で、後続車にとっては再び走りにくい環境になっていった。

    「2022年選手権のスタート時と似たところにいると思う。ただ、今年の方が少し堅牢だと思っている」

    トンバジスは2026年規則についてそう評価する。

    「チームはいろいろな空力ソリューションを導入してきたが、コンセプトそのものを壊すようなものはまだ見つけていない」

    FIAが学んだフロントウイングとフロアの教訓
    前世代のレギュレーションで問題となったのは、規則上残されていた設計自由度だった。

    「以前のレギュレーションでは、コンセプトを大きく損なったものがいくつかあった。主にフロントウイングのエンドプレート、フロアエッジ、そしてフロントホイール周辺に付けられたさまざまな空力パーツだ」

    「それらすべてが後流の特性をかなり悪化させた。我々はそこから学んだ。今回は同じような問題が存在しないことを願っている」

    フロントウイングやフロアの開発によって前輪周辺の乱流を外側へ押し出す「アウトウォッシュ」が強まり、それが後続車に届くウェイクを悪化させたことが、2022年規則の狙いを徐々に損なう要因となった。

    2026年規則では、この経験を踏まえて空力的な自由度の与え方そのものが見直されている。

    国際自動車連盟 フォーミュラ1カー

    エキゾーストウイングはFIAにも想定外
    もっとも、FIAが2026年の空力開発をすべて予測できていたわけではない。

    トンバジスは、エキゾースト周辺の開発など一部のアイデアについては想定外だったことを認める。

    「例えば、エキゾーストを使ったソリューションが出てくるとは予想していなかった。ボディワークについてもいくつかのソリューションがあり、それについてはすでに来年に向けて修正している」

    一方、リアウイングのアクチュエーター周辺については、2027年から合法領域を狭めるものの、完全に設計の余地をなくすわけではない。残されたスペースを利用して、各チームが新たなアイデアを考案する可能性は残る。

    「全体として、チームにとってマシン開発が興味深いチャレンジであり続けるようにしたかった」

    「完全に制限する方向には進まなかった。設計自由度を残しながら、パフォーマンスが徐々に収束していくという意味では、それほど悪い位置にはいないと思う」

    トンバジスは、現在もチーム間には「妥当な性能差」が存在するとしながら、今後6カ月ほどで徐々に収束していくとの見通しを示した。

    2026年F1マシンは「簡単に運転できない」ことも狙い
    2026年の新パワーユニット規則についてはドライバーから不満も出ている一方、シャシーについては比較的好意的な評価が聞かれている。

    前世代のグラウンドエフェクトカーで問題となった極端に硬いサスペンションや低い車高が緩和され、ダウンフォースも減少。コーナーではドライバーがより積極的にマシンを操る必要がある。

    トンバジスは、それも意図したものだと語る。

    「ドライバーにとって、今でもかなり難しいマシンだと思う。誰にでも運転できるようなクルマではないというのは良いことだ」

    「空力規則の一部によって、チームはコーナーのあらゆる局面を完璧に解決することができなくなっている。だからこそドライバーには課題が残る」

    そして、その考えをユーモアを交えて表現した。

    「世界最高の22人のドライバーがいるのだから、僕のおばあちゃんでも簡単に運転できるようなマシンであるべきではない」

    また、車高を以前より高くしたことで身体的な厳しさも軽減された。

    「車高も少し上げたので、昨年ほど過酷ではない。それに少し軽く、小さくなった。そこはドライバーたちにも評価されている」

    次世代F1では「さらに80kg軽量化」が目標
    FIAは2026年規則の方向性には一定の手応えを得ているものの、現在のマシンを最終形とは考えていない。

    トンバジスが次世代F1マシンで特に重視しているのが、さらなる軽量化と小型化だ。

    「我々が望んでいるところまで来ているかと言えば、ノーだ」

    「さらに80kgほど軽くしたいし、もう少し短く、もう少し小さくしたい」

    「それが目標だ。今回可能だったところから、さらに大きな一歩を踏み出したい」

    2027年の空力規制は、単純に革新的なアイデアを禁止するためのものではない。FIAが重視しているのは、2022年に経験したように、開発競争によって「接近して戦えるF1」という規則の根本思想が数年で失われることを防ぐことだ。

    エキゾーストウイングなど想定外のアイデアには早期に規制を加える一方、技術競争そのものは残す。2027年の変更は、開発の自由とレースの質を両立させるための調整という位置づけになる。