カテゴリー: F1マシン

  • F1エネルギーマネジメントをFIAが説明「ドライバー任せにできない理由」

    F1エネルギーマネジメントをFIAが説明「ドライバー任せにできない理由」

    2026年のF1で導入された新世代パワーユニットでは、エネルギーの配分を制御する自動アルゴリズムがレース展開を大きく左右している。スパ・フランコルシャンでは、その影響の大きさが改めて浮き彫りとなり、オスカー・ピアストリをはじめとするドライバーからも「かなりひどい」と不満の声が上がった。

    こうした状況を受け、「なぜドライバー自身にエネルギー管理を任せられないのか」という疑問も広がっているが、FIA(国際自動車連盟)のシングルシーター部門責任者ニコラス・トンバジスは、その理由は技術的な制約にあると説明した。

    「100%ドライバー任せ」は現実的ではない
    トンバジスは、ドライバーの不満には理解を示しながらも、完全な手動制御は現実的ではないと語った。

    「ドライバーたちのコメントは理解できる。現在は使用できるエネルギー量が限られており、それをどう管理するかが極めて重要になっている。その結果として様々な戦略が必要になっている」

    そのうえで、ドライバーが自由にエネルギーを使えるようにした場合の問題点を指摘した。

    「100%ドライバー任せにはできない。もし好きなタイミングで好きなだけ使えるのであれば、ドライバーはコーナー立ち上がりですべてのエネルギーを一気に使い切るだろう。そうなれば、現在問題視されている現象はさらに顕著になる」

    さらに、バッテリー保護や性能均衡のための技術的制約も存在すると説明した。

    「エネルギーの放出量や回生量、SOC(State of Charge=充電状態)の変化量には制限が設けられている。これは技術開発競争の激化を防ぐためだ。もし制限がなければ、各メーカーはさらに巨大なバッテリーを搭載しようとし、再びマシンは重くなってしまう」

    「こうした多くのパラメータを人間が合理的に制御することは不可能だ」

    2028年の60対40ルールで改善を期待
    現在の2026年レギュレーションでは、内燃エンジンと電動システムの出力比率は50対50となっている。しかしF1は2028年からこれを60対40へ変更することを決定しており、トンバジスはこれによってドライバー主体の走りを取り戻せると考えている。

    「このバランスが少し見直されれば、この分野はよりシンプルになると思う。ドライバーたちが不満を抱いているのは、エネルギー管理そのものが原因だ」

    「確かに複雑すぎる。私も100%彼らに同意する。しかし、それは根本的な問題から生じている結果だ」

    アルゴリズムは以前から存在していた
    トンバジスは、自動制御アルゴリズム自体は2026年規則以前から存在していたものの、新世代パワーユニットでは電動出力の比率が大幅に高まったことで、その重要性が飛躍的に増したと説明する。

    「オスカー(ピアストリ)は非常に賢いドライバーだが、彼が感じているのは現在もっとも支配的な要素だ。バランスが見直されれば状況は改善されるだろう。完全になくなるわけではないが、大きな前進になるはずだ」

    「こうしたアルゴリズムは以前から存在していた。しかし今年導入された新しい規則では、パワーユニットに占める電動出力の割合が大きくなったため、その重要性も大幅に高まった」

    さらに2028年には電動出力比率が47%から40%へ引き下げられることで、アルゴリズムの影響も小さくなると見通しを示した。

    「2028年には電動出力の比率が47%から40%へ下がるため、効率を左右するアルゴリズムの重要性は低下する。また、その頃には各メーカーも規則への理解を深めており、制御精度もさらに向上しているはずだ」

    今回のFIAの説明は、自動エネルギー管理が単なる利便性のためではなく、性能均衡やコスト抑制、安全性を維持するための不可欠な仕組みであることを改めて示すものとなった。一方で、2028年のルール改訂によってドライバーがより主体的にマシンを操れる方向へ向かうことも期待されている。

  • 2027年F1マシンは空力規則も大幅変更 リアウイングやフロアを見直し

    2027年F1マシンは空力規則も大幅変更 リアウイングやフロアを見直し

    2027年のF1マシンでは、すでに決定しているパワーユニット(PU)規則の見直しに加え、空力レギュレーションも大幅に変更されることが明らかになった。変更はリアウイングやフロアなど複数の重要な空力パーツに及び、2026年型マシンからの設計流用は想定以上に難しくなるという。

    この情報を明かしたのは、ウィリアムズのチーム代表ジェームズ・ボウルズ。F1は新世代マシンで浮上した課題を改善するため、2027年に向けてPUと空力の両面からレギュレーションを見直す方針だ。

    リアウイングやフロアなどが変更対象
    ベルギーGP金曜フリー走行中にSky Sports F1の中継へ出演したボウルズは、2027年に向けた空力規則について次のように説明した。

    「来年は空力レギュレーションが変更される。しかも、その内容はかなり大きい」

    「ビブ(フロントフロア先端部)、リアウイング、フロアの一部などが変更される。その結果、多くの人が期待しているほど今年のマシンをそのまま引き継げるわけではない。ただ、それには正当な理由がある」

    変更は全面的なレギュレーション刷新ではないものの、空力性能に大きく関わる主要パーツが対象となるため、各チームの2027年型マシン開発への影響は小さくない。

    ボウルズは、ウィリアムズがすでに2027年用の新シャシー開発を計画していることも明かし、今回の規則変更によって設計作業はさらに複雑になるとの見方を示した。

    PU規則変更と合わせて競争力向上を目指す
    今回の空力規則見直しは、2027年から導入されるPUレギュレーションの変更とセットで進められる。

    2026年から採用された電動出力と内燃エンジン出力を50対50とする配分については、ドライバーやチームからエネルギーマネジメントの負担が大きいとの指摘が相次いだ。そのためF1は2027年から内燃エンジン側の比率を高める方向へ規則を変更することを決定している。

    空力規則もこれに合わせて見直され、ダウンフォースやコーナリング速度を適正化することで、ストレートで使用できる電力エネルギーとのバランス改善を図る狙いだ。

    ボウルズは今回の決定について、シーズン開幕時には予想していなかったと認めながらも、その方向性を支持した。

    「シーズン開幕時には予想していなかった。しかし、スポーツとして正しい方向性だと思う」

    「より良いフォーマット、率直に言えば、より良いショーを作る助けになる。これはパワーユニット規則の変更とも一体となって進められているものだ」

    より完成度の高いF1を目指して改良継続
    ボウルズの発言は、Sky Sports F1のデビッド・クロフトとカルン・チャンドックも驚く内容だった。これまで2027年規則といえばPU変更ばかりが注目されており、空力規則の大幅な見直しは広く知られていなかったためだ。

    しかしボウルズは「公表してはいけないことを話したとは思っていない」と述べ、F1が現在もレギュレーションの改善を続けていることを示唆した。

    「予選でも決勝でも最高のプロダクトを実現したいという思いがある」

    「レース自体は非常に良くなっていることは誰もが認めるだろう。しかし、まだ理想的な状態ではなく、このマシンからすべてを引き出せているわけではない」

    「パワーユニット規則と空力規則、その両方を改善することで、F1はさらに良い方向へ進んでいけるはずだ」

    2027年のF1はPU規則だけでなく空力規則にもメスが入ることになり、各チームは限られた設計流用の中で、新たなマシンコンセプトの開発を迫られることになりそうだ。

  • 元F1ドライバーが2031年V8エンジン構想に懐疑論「実現は難しい」

    元F1ドライバーが2031年V8エンジン構想に懐疑論「実現は難しい」

    元F1ドライバーのジャン=ルイ・シュレッサーは、FIAが2031年以降の新パワーユニットとして検討を進めるV8エンジン構想について、「夢ではあるが実現するとは思えない」と懐疑的な見方を示した。

    また、2026年から導入される電動化を強めた新レギュレーションについても厳しく批判し、「F1が環境に優しいという考えはナンセンスだ」と切り捨てた。

    1983年と1988年にF1へ参戦した77歳のシュレッサーは、スペイン紙『Mundo Deportivo』のインタビューで、現在のF1が電動技術へ傾倒しすぎていると指摘。若手育成にかかる莫大なコストについても問題視し、マックス・フェルスタッペンの主張に理解を示している。

    「エンジンの40%以上が電動なのは問題」
    2026年からF1は、内燃機関と電動出力の比率をほぼ半々に近づけた新世代パワーユニットへ移行する。しかしシュレッサーは、その方向性そのものに強い違和感を抱いている。

    「電子制御がレースを支配しているのは残念だ」

    「心配なのは、エンジンの40%以上を電気系統が占めるべきではないということだ」

    さらに、F1が持続可能性をアピールしていることにも疑問を呈した。

    「F1が環境に優しいと言うのはナンセンスだ」

    「環境問題を気にするなら、レースそのものをやめればいい。半分電気で走るクルマだとか、そんなものは間違った方向へ進んでいる」

    2031年V8構想には「夢だが実現しない」
    FIAのモハメド・ビン・スライエム会長は、2031年以降に向けて、より軽量でシンプルかつ低コストなパワーユニットへの移行を提唱しており、V8エンジンに小型ハイブリッドシステムを組み合わせる案が有力候補の一つとなっている。

    しかしシュレッサーは、大手メーカーがその方針転換を受け入れる可能性は低いとみている。

    「私はあまり信じていない」

    「多くのメーカーは取締役会の支持を得るために、自社のクルマが環境に優しいというイメージを売りにしている。例えばアウディがF1に参戦した理由もそこにある」

    「BYDのようなメーカーを呼び込もうとするかもしれないが、V8は夢だし、V10ならなおさら素晴らしい。でも実現するとは思えない」

    1988年モンツァでセナと接触した真相も回顧
    シュレッサーはF1でわずか2戦の出場に終わったが、1988年イタリアGPで周回遅れとなりながらアイルトン・セナと接触し、マクラーレンのシーズン全勝を阻止した出来事で広く知られている。

    当時の場面について、シュレッサーは避けようがなかった事故だったと振り返った。

    「セナは僕のギアボックスのすぐ後ろにいて、選択肢はなかった」

    「もしアクセルを緩めていたら追突されていたかもしれない。だから単なる不運だった」

    また、そのレースへの参戦は急きょ決まったものだったという。

    「フランク・ウィリアムズから電話があり、『金曜日にイタリアへ来て運転できるか』と聞かれた」

    「『このシートを望んでいるドライバーは10人いる。でもパトリック・ヘッドが君を希望している。来なくても構わない』と言われた」

    シュレッサーはフランク・ウィリアムズについて、「いい人だったが、ぶっきらぼうだった」と振り返っている。

    なお、1983年のフランスGPではRAMからF1デビューを果たしたが、そのマシン性能については笑いながらこう語った。

    「あのクルマの最高速は、僕のツーリングカーと同じくらいだった」

    V型8気筒 F1

    若手育成費用は「異常」 フェルスタッペンにも賛同
    シュレッサーは、F1へ到達するまでに必要な資金が年々膨れ上がっている現状についても厳しく批判した。

    「今の若手カテゴリーへ進むための費用は異常だ」

    「公平ではない。F1に到達するまでの費用が高すぎるというマックス・フェルスタッペンの意見には全面的に賛成だ」

    自身の息子ルイ・シュレッサーもレーシングドライバーとして活動しているが、現状には満足していないという。

    「もっと勝たなければならない」

    「レースで十分に勝てていない。それに今のフォーミュラ・リージョナル・ヨーロッパは参戦費用が高すぎる」

    シュレッサーは、2031年以降のV8エンジン構想には魅力を感じながらも、自動車メーカーの戦略や環境イメージを重視する流れを踏まえれば実現は難しいと予想している。一方で、電動化が進みすぎた現在のF1や若手育成にかかるコストの高騰には強い危機感を示し、現代のF1が抱える構造的な課題に警鐘を鳴らした。

  • F1の独立系カスタマーエンジン構想にゲイリー・アンダーソンが警鐘「失敗する」

    F1の独立系カスタマーエンジン構想にゲイリー・アンダーソンが警鐘「失敗する」

    FIAが2031年以降の次世代F1エンジン規則として検討を進める「独立系メーカーによるカスタマーエンジン」構想について、元F1テクニカルディレクターのゲイリー・アンダーソンが「過去にも失敗したアイデアであり、今回もうまくいかない」と厳しく批判した。

    アンダーソンはV8エンジンへの回帰や車両軽量化には賛成の立場を示す一方で、メーカー製パワーユニットと独立系カスタマーエンジンを共存させる構想はF1を「持つ者」と「持たざる者」に二分しかねないと警告。

    独立系メーカーを活用するのであれば、別の形で制度設計すべきだと提案している。

    カスタマーエンジン構想は「過去にも失敗した」
    アンダーソンは、FIA会長モハメド・ビン・スライエムが提唱したカスタマーエンジン構想について、「一見すると理にかなっているように思えるが、実際には数多くの問題を抱えている」と指摘した。

    「権限を持つ人物が思いつきのような発言をすると、『口を開く前によく考えろ』という言葉を思い出す」

    そう切り出したアンダーソンは、将来的なV8エンジン導入には賛成の立場を示した。

    「将来のV8エンジン規則には全面的に賛成だ。追い抜き補助程度のシンプルな電動回生システムを組み合わせれば、F1が失った迫力あるサウンドも戻ってくる。DRSやアクティブエアロに頼る必要もなくなるだろう」

    さらに100kg近い軽量化という目標にも前向きな見解を示した。

    「100kg減は少し野心的かもしれないが、各チームの設計陣なら十分に挑戦できるはずだ」

    しかし、その一方でメーカー製PUと並行して独立系カスタマーエンジンを導入する構想については、「極めて大きな方向転換」であり、慎重な議論なしに進めるべきではないと主張した。

    2010年にも似た構想は頓挫
    アンダーソンは過去のF1でも同様の試みが存在したと振り返る。

    2010~2012年に向けて、全チーム共通の標準エンジンとギアボックスを導入するための入札が実施されたが、最終的には実現しなかった。

    「私は十分長くF1に関わってきた。この話は以前にも見てきた。そしてその時もうまくいかなかった。今回もうまくいかないだろう」

    さらに1970年代のF1を例に挙げ、当時はフェラーリやBRM以外の大半がコスワースDFVエンジンを使用していたことを紹介。しかし、その後メーカー参入が進むにつれてプライベーターは姿を消し、コスワースも2013年のマルシャを最後にF1から撤退したと説明した。

    一方で、BMWやトヨタ、プジョー、ホンダなど多くのメーカーが経営判断ひとつでF1から撤退してきた歴史も忘れてはならないと指摘している。

    現在のPU問題は「99%がFIAの責任」
    アンダーソンは現在の複雑なハイブリッドPUそのものについても厳しい見方を示した。

    「現在抱えているパワーユニットの問題は99%がFIAによって生み出されたものだ。規則を書いたのはFIAであり、残り1%はメーカー側の要望だろう」

    2014年のハイブリッド導入時にも反対意見は多く、2026年規則についてもエネルギー回生と放出バランスに問題があるという指摘が繰り返されてきたが、それらは聞き入れられなかったという。

    F1 エンジン

    「持つ者」と「持たざる者」に分かれる危険性
    アンダーソンは、安価な独立系エンジンが導入されればチーム間格差を固定化する危険があると警告した。

    「低価格で独立メーカー製エンジンを認めれば、F1はすぐに『持つ者』と『持たざる者』の選手権になる」

    メーカー系チームが顧客チームを支配しているという懸念についても否定的だ。

    「メーカーの言うことを聞かなければ不利な扱いを受けると考えるチームもあるが、それは被害妄想だ。まず自分たちのパッケージを最大限活用すべきであり、他人のせいにするべきではない」

    一方で、メーカー側がカスタマーエンジンの性能を意図的に低く抑えるよう圧力をかけることは避けられないとも予想する。

    「メーカーは莫大な資金を投じている。安価なエンジンに負けることを望むはずがない」

    結果として、コストキャップや空力テスト制限など近年進められてきた戦力均衡策とも矛盾すると指摘した。

    独立系メーカーは参入可能にすべき
    アンダーソンは、独立系メーカーの参入自体には反対していない。

    その代わり、FIAとリバティ・メディア、既存PUメーカー、独立系エンジンメーカーが共同で、よりシンプルな次世代エンジン規則を策定すべきだと提案する。

    また、シーズン供給価格には上限を設け、独立系メーカーが自由にエンジンを開発・販売できる環境を整えるべきだと述べた。

    さらに各メーカーには最低2チーム、最大3チームへの供給を義務付ければ、現在のメーカー数だけでも10~15チーム分の供給能力を確保できると試算している。

    現状では、

    メルセデス:4チーム
    フェラーリ:3チーム
    レッドブル:2チーム
    ホンダ:1チーム
    アウディ:1チーム

    という供給体制になっており、このバランスを見直すだけでも外部サプライヤーを必要としない体制が構築できるという考えだ。

    V6自然吸気という代替案も提示
    アンダーソンはV8だけが選択肢ではないとも主張する。

    「FIAはV8だけでなく、大排気量の自然吸気V6も検討すべきだ」

    2.4リッター自然吸気V6なら、ファンが求める出力とサウンドを十分実現できると説明した。

    また、ターボチャージャーは排気音を大きく抑えてしまうため、FIA会長が「ターボはサイレンサーのようなもの」と語った点にも同意している。

    ハイブリッドは追い抜き専用に
    最後にアンダーソンは、ハイブリッドシステムを完全に廃止するのではなく、役割を限定する案も提示した。

    回生は現行同様にブレーキング時のみ行い、蓄えた電力は前車の1秒以内でホームストレートを通過した場合のみ使用可能とする。

    例えば4MJの電力を1周の中で自由に使い切り、使用しなければリセットされる方式なら、現在のDRSより自然な追い抜き支援になるという。

    「人工的ではある。しかし、これまで導入された追い抜きシステムの中では最も人工的ではない方法だ」

    アンダーソンは、F1にはさまざまな改善案が存在するものの、それらが十分に耳を傾けられてこなかったことを最後に嘆いた。

    今回の提言では、独立系エンジンメーカーの存在そのものを否定するのではなく、FIAが検討する「安価なカスタマーエンジン」という構想ではチーム間格差を助長すると警鐘を鳴らした。V8あるいは自然吸気V6を軸としたシンプルな規則と、公平な供給体制の構築こそが、F1の将来に必要だと訴えている。

  • FIAがF1エンジン交換規定を維持 2027年と2028年もペナルティ免除枠を継続

    FIAがF1エンジン交換規定を維持 2027年と2028年もペナルティ免除枠を継続

    2026年から導入されたF1の新パワーユニット規則に合わせて緩和されたエンジン交換規定が、2027年と2028年も継続されることが明らかになった。FIA(国際自動車連盟)は『RacingNews365』に対し、各パワーユニット(PU)コンポーネントのペナルティ免除枠を現行のまま維持する方針を認めた。

    当初は2026年限定の措置とされていたが、新世代PUの開発スケジュールが短縮されたことを受け、信頼性への懸念を考慮して継続が決定された形だ。

    2027年と2028年も追加コンポーネントを維持
    2026年からF1は新しいパワーユニット規則へ移行した。これに伴い、FIAスポーティングレギュレーションの第B8.2.3条が追加され、各ドライバーがシーズン中に使用できるPUコンポーネント数が1基ずつ増加した。

    当初の規定では2027年から元の配分へ戻す予定だったが、FIAは『RacingNews365』に対し、この追加配分を2027年と2028年も維持すると認めた。

    ■ 2026~2028年 F1パワーユニット使用可能数(ペナルティ免除)

    ICE(内燃エンジン):4基
    ターボチャージャー:4基
    MGU-K:3基
    エナジーストア:3基
    PU-CE(コントロールエレクトロニクス):3基
    PU-ANC(補機類):6基
    エキゾースト:4基

    開発期間短縮による信頼性リスクを考慮
    2027年と2028年には、パワーユニットの出力配分が現行の電動50%・内燃50%から、内燃機関60%・電動40%へ変更される予定となっている。

    この方針は2026年5月になって決定されたため、各メーカーの開発期間が当初想定より短くなったとみられている。

    『RacingNews365』によると、開発期間の短縮によって信頼性問題が発生するリスクが高まり、もしコンポーネント使用枠を元に戻せば、メーカーへの負担が大きくなる可能性があることが今回の判断につながったという。

    そのためFIAは、2027年と2028年も2026年と同じコンポーネント配分を維持することを確認した。

    規定数を超えた場合はグリッド降格
    規定数を超えて新たなコンポーネントを投入した場合は、最初の超過コンポーネントにつき10グリッド降格、以降は追加するごとに5グリッド降格が科されるルールに変更はない。

    今回の決定により、新世代パワーユニット導入初期の3シーズンは、各メーカーが信頼性向上に取り組みやすい環境が整えられることになった。

  • F1空力開発最前線 2026年トレンドと2027年規則変更を徹底解説

    F1空力開発最前線 2026年トレンドと2027年規則変更を徹底解説

    2026年のF1は、パワーユニット(PU)のエネルギーマネジメントを巡る議論が注目を集めている一方で、シャシーと空力開発でも激しい競争が続いている。

    現行マシンは2022~2025年のグラウンドエフェクト時代とは大きく異なるコンセプトを採用しており、各チームは新たな最適解を探し続けている。さらに2027年には空力レギュレーションの一部改訂も予定されており、現在の開発競争は来季以降にも大きな影響を及ぼす可能性がある。

    2026年シーズン中盤を迎えた今、各チームがどこで性能差を生み出しているのか、そして2027年へ向けて何が変わろうとしているのかを整理する。

    2022~2025年型との最大の違いは「車高依存」の減少
    2022年から2025年までのグラウンドエフェクトカーは、可能な限り低い車高で走行することで大きなダウンフォースを得る設計だった。

    しかし車高がわずかに変化するだけで空力特性が大きく変化し、フロア下面の気流が失速すると急激な性能低下を招いた。これがポーパシングや激しいバウンシングを引き起こす要因となり、多くのチームは高めの車高でもダウンフォースを維持できる方向へ開発を進めてきた。

    一方、2026年型マシンではフロア依存が弱まり、ボディ上面の空力性能がより重要になった。もちろんフロアは依然として重要なダウンフォース源だが、フロア単体ではなく車両全体を一体として設計する必要が生じている。

    車高ではなく空力コンセプトが勝敗を左右する時代へ
    マクラーレン代表アンドレア・ステラは、2026年型マシンはセットアップだけで大きな性能向上を得ることが難しくなったと説明する。

    昨年までは車高を限界まで下げ、ポーパシングを抑え込めれば一気に競争力を高めることができた。しかし現在は車高変化への感度が低くなり、サスペンション設定だけではライバルとの差を縮められないという。

    そのため各チームは空力コンセプトそのものを見直す方向へシフトしており、大規模アップデートによって一度に0.2~0.3秒を改善するケースも珍しくない。

    ステラは、マクラーレンも当初の設計思想を一部見直し、新しいコンセプトを取り入れ始めていることを明かしている。

    現在の空力開発で最大の激戦区となっている部分
    2026年マシンではフロア外縁部の開発競争が激化している。

    2021年以前によく見られたスロットや切り欠き、細かなフィンなどが復活し、特にリアタイヤ直前では気流を整えるための複雑な造形が各チームで採用されている。

    これはリアタイヤ周辺で発生する乱流がフロア下面へ入り込むことを防ぎ、ディフューザー内部の気流エネルギーを維持することが目的だ。

    またリアディフューザー周辺だけでなく、フロア全体の気流管理も各チームごとに特徴が現れ始めている。

    マクラーレン フォーミュラ1カー

    マクラーレン・フェラーリ・メルセデス・レッドブルの思想の違い
    各トップチームは現在も異なる空力哲学を採用している。

    マクラーレンは従来から続くダウンウォッシュ型サイドポッドを維持している一方、フェラーリとメルセデスはアンダーカットをより積極的に活用し、車体後方へ短い経路で気流を送り込む設計を採用している。

    一方のレッドブルはその中間的なアプローチを選択しており、サイドポッド上面の「スライダー」状チャンネルによって、いわゆるコカ・コーラボトル形状周辺へ効率よく気流を導いている。

    さらにマクラーレンはノーズ形状やフロントウイング、フロアボードなどでも独自路線を維持しているが、ステラは他チームの設計思想から学ぶ必要性も認めている。

    F1では優れたアイデアが最終的にグリッド全体へ広がることは珍しくなく、今回も同様の流れになる可能性がある。

    キャデラック フォーミュラ1カー

    キャデラックが示した最新トレンド
    今シーズン途中に大型アップデートを投入したキャデラックは、現在の空力開発トレンドを象徴する存在となっている。

    サイドポッドは従来のランプ型デザインを捨て、フェラーリやメルセデスに近い深いアンダーカットを採用。さらにエンジンカバーには段付きフィンを追加し、リアウイングへ向かう気流を改善している。

    リアエンドプレートにも折り返し形状を導入し、アップウォッシュ効果によって後方の気流拡散を促進するなど、多くの最新トレンドが盛り込まれた。

    シーズン開幕仕様と現在のMAC-26を比較すると、開発の方向性が非常に分かりやすく表れている。

    2027年レギュレーション変更で何が変わるのか
    2027年にはFIAがダウンフォースを抑制するため、空力規則をさらに変更する予定だ。

    最大の変更点はフロア前端部、いわゆる「ティートレー(バイブレード)」周辺で、先端位置が約300mm後退する。これによりマシン前方をより低く走らせられるようになり、空力特性も大きく変化するとみられる。

    またリアウイングは浅い形状となり、フロア前端の「ベアクロー(フィン)」も5枚から3枚へ削減される。

    さらに近年各チームが採用してきた排気口周辺の小型ウイングレットも禁止される予定で、リアダウンフォースの一部が失われることになる。

    アストンマーティン フォーミュラ1カー

    エイドリアン・ニューウェイが示唆する「レーキ復活」の可能性
    エイドリアン・ニューウェイは、2027年規則変更によって再びレーキ角が重要になる可能性を示唆している。

    アストンマーティンは現在でも他チームよりやや大きなレーキを採用しているが、新規則ではリアを高くすることでディフューザー後方の低圧領域を拡大し、より大きなダウンフォースを得られる可能性がある。

    一方で、レーキを増やせばリア空力は敏感になりやすく、気流制御も難しくなる。そのため各チームは新たな空力バランスを模索することになるだろう。

    2026年の開発競争は2027年への布石
    2026年のF1は、車高やセットアップよりも空力コンセプトそのものが勝敗を左右する時代へ移行している。各チームはフロア外縁部やサイドポッド、リア周辺を中心に独自の思想を磨きながら開発競争を繰り広げており、その成果はシーズン中の勢力図にも大きく反映されている。

    さらに2027年には空力規則が再び変更されるため、現在積み重ねられている開発成果は来季以降のマシン設計にも直結する。今後は各チームの空力コンセプトがどのように収束していくのか、そして新たなレギュレーション下でどのチームが最適解を見いだすのかが、大きな見どころとなりそうだ。

  • F1ブレーキ徹底解説 ブレンボとカーボン・インダストリーの違いとは?

    F1ブレーキ徹底解説 ブレンボとカーボン・インダストリーの違いとは?

    シャルル・ルクレールが2026年モナコGPで経験したブレーキトラブルをきっかけに、F1で使用されるブレーキシステムへの関心が高まっている。

    ルクレールはこのトラブル後、それまで使用していたブレンボ製から、チームメイトのルイス・ハミルトンと同じカーボン・インダストリー(CI)製へ変更した。しかし、両社の違いは単なるメーカーの違いではなく、設計思想やフィーリング、熱特性にまで及ぶ。

    本記事ではF1のブレーキシステムの仕組みと、ブレンボとCIそれぞれの特徴を技術的な視点から解説する。

    F1ブレーキは市販車とは別次元の技術
    F1マシンのブレーキは世界最高峰の制動システムのひとつである。

    最高速約335km/hから約100km/hまで一気に減速し、その際には最大5Gもの減速度が発生する。ドライバーが「動く壁に衝突するような感覚」と表現するほど強烈な負荷が身体にかかる。

    この性能を支えているのは、複数の高度な技術である。

    ■ カーボン製ブレーキディスク(炭素繊維と炭素を組み合わせたカーボン・カーボン複合材)
    ■ カーボン製ブレーキパッド
    ■ ブレーキ・バイ・ワイヤ(BBW)
    ■ ERS-Kによる回生ブレーキ
    ■ 最適化されたブレーキダクトと冷却システム

    これらのシステムは400~1000℃という極めて高温の領域で最も性能を発揮する。そのため冷えた状態では十分な制動力を得られず、レース序盤から適正温度へ素早く到達させることが重要となる。

    ブレンボとCIは何が違うのか
    現在F1ではイタリアのブレンボとフランスのカーボン・インダストリー(CI)が主要サプライヤーとなっている。

    両社ともカーボン製ディスクとパッドを供給しているが、その設計思想には明確な違いがある。

    ブレンボは軽量化と高い制動レスポンスを重視しており、強力な初期制動が特徴である。一方のCIは熱安定性と扱いやすさを重視し、滑らかで一貫したブレーキフィールを提供する。

    ディスク設計の違い
    ブレンボ製ディスクは1枚あたり最大約1500個の冷却穴を備え、高密度なベンチレーション構造を採用している。

    メリットは冷却性能が高く、初期制動が非常に鋭いことだ。一方で温度変化を受けやすく、熱条件によってフィーリングが変化しやすい傾向がある。

    CIはより大きな冷却チャネルを採用し、温度分布が安定している。

    酸化や層間剥離(デラミネーション)への耐性が高く、摩擦係数の変化も穏やかなため、長時間にわたり安定した制動性能を維持できる。

    そのため、

    ■ ブレンボ:鋭い初期制動と高いレスポンス
    ■ CI:滑らかで安定したブレーキング

    という違いが生まれる。

    ブレーキパッドの性格も対照的
    ブレンボのパッドは高摩擦材を採用し、踏み始めから非常に強い制動力を発生する。

    その反面、高温状態が続くと摩耗が進みやすく、限界付近では温度管理が重要になる。

    レイトブレーキングを武器とするドライバーから高い評価を受けている理由でもある。

    CIのパッドはより緩やかな摩擦特性を持ち、1000℃近い高温でも性能低下が少ない。

    摩耗も少なく、ロングブレーキングが続くサーキットでも安定したペダルフィールを維持できる。

    キャリパーはブレンボが圧倒的シェア
    キャリパーについてはブレンボが圧倒的な存在感を持つ。

    高剛性かつ軽量な設計により、ペダル操作に対して素早く反応し、空力パッケージ面でもメリットが大きい。

    そのためCI製ディスク・パッドを採用するチームでも、キャリパーはブレンボ製という組み合わせが一般的となっている。

    ドライバーごとの好みに合わせたハイブリッド構成がF1では珍しくない。

    冷却性能にも明確な違い
    ブレンボは冷却速度が速く、短時間で適正温度まで戻せる。

    しかし過熱状態になると酸化が進みやすく、熱限界を超えた際の性能変化は比較的大きい。

    CIは冷却速度こそ遅いものの、熱容量が大きく温度変化が緩やかである。

    その結果、長時間にわたり安定した制動力を維持しやすい特徴を持つ。

    モナコでルクレールに起きたこと
    モナコ市街地コースはF1カレンダーの中でも最もブレーキへの負担が大きいサーキットのひとつである。

    低速コーナーが連続し、ストップ&ゴーを繰り返す一方で、市街地ゆえに十分な走行風を得られず、ブレーキを冷却する機会も限られる。

    ルクレールは2026年モナコGPでフロント左ブレーキに突然の異常が発生し、コントロールを失ってバリアへクラッシュした。

    このトラブルは特定のブレンボ製品の欠陥が原因とされたわけではないが、モナコではブレーキシステム全体が極めてシビアな条件で運用されていることを改めて示す出来事となった。

    CIへの変更後も適応には時間が必要だった
    モナコGP後、ルクレールはブレンボからCIへ変更した。

    しかし、ブレーキペダルのフィーリングは大きく変化し、スペインGP予選ではその違いへの適応に苦戦。ブレーキングでコースアウトし、ウォールに接触する場面もあった。

    ブレーキ性能そのものだけでなく、ドライバーが長年培ってきた感覚との相性も重要であることを示す事例となった。

    F1では同じ「止まる」という役割を担うブレーキであっても、ブレンボとカーボン・インダストリーでは設計思想が大きく異なる。鋭いレスポンスを重視するブレンボと、熱安定性とコントロール性を重視するCI。それぞれに明確な長所があり、ドライバーの好みやサーキット特性に応じて最適な選択が行われている。ルクレールのスイッチは、ブレーキがF1マシンの性能だけでなく、ドライバーの走り方そのものにも大きな影響を与えることを改めて示した。

  • F1 2031年に給油復活を検討 V8エンジン時代へ向けFIAが本格調査

    F1 2031年に給油復活を検討 V8エンジン時代へ向けFIAが本格調査

    FIA(国際自動車連盟)は、2031年に予定される次世代パワーユニット規則の一環として、F1で2009年を最後に廃止されたレース中の給油(リフューエリング)の復活を本格的に検討している。

    この構想は、2031年(合意がまとまれば2030年への前倒しも視野)から、現在の複雑で高コストなV6ターボハイブリッドに代わり、よりシンプルで軽量、低コストなV8エンジンへ移行する計画と密接に結び付いている。

    FIA「給油を検討している」
    FIA会長のモハメド・ビン・スライエムはイギリスGP週末、英国メディアに対し、給油復活について現在も調査を進めていることを明らかにした。

    「給油については、まさに今、検討しているところだ」

    「正しい方法で実施するのであれば、安全面は大きな懸念ではない。そのため現在調査を進めている。まだ何も決定したわけではない」

    さらに将来のパワーユニット像については、持続可能燃料と電動化を組み合わせる方向性を維持しつつも、現行より電動化比率を大きく引き下げる可能性を示した。

    「持続可能燃料と電動化を組み合わせる。電動化比率を10%以上にすることもあるかもしれない。まだあらゆる可能性を検討している段階だ」

    V8復活が給油議論を後押し
    給油復活が再び議論される最大の理由は、FIAが推進するV8エンジンへの回帰にある。

    自然吸気V8は、現在のV6ターボハイブリッドより燃費性能で劣るため、レース距離を走り切るにはより多くの燃料を搭載する必要がある。

    その結果、大型燃料タンクが必要となり、FIAが目標とするマシン軽量化の効果を打ち消してしまう可能性がある。

    ビン・スライエム会長は2031年のマシンで最大100kgもの軽量化を目標に掲げている。

    しかし、大容量燃料タンクを搭載すれば、その恩恵は大きく失われる。

    そのため、燃料タンクを小型化し、レース中に給油することで車重を抑える案が有力な選択肢として浮上している。

    FIAは燃料搭載量も調査
    FIAは現在、給油の有無だけでなく、スタート時の燃料搭載量やレース中の給油量なども含めて検証を進めている。

    ビン・スライエム会長は次のように説明した。

    「スタート時にどれだけ積むべきか、途中でどれだけ補給するべきか、現在検討している」

    「当然ながら、レース全体を給油なしで走るなら大型タンクが必要になる。そうでなければ途中でピットストップを行うことになる。まさにそこを調査している」

    給油時代は戦略の中心だった
    F1では1994年から2009年までレース中の給油が認められており、レース戦略の重要な要素となっていた。

    各チームは燃料搭載量を細かく調整し、軽いマシンでスタートして序盤にタイムを稼ぐ「軽タン戦略」や、給油回数を減らす代わりに重い燃料を積んでロングスティントを走るなど、多彩な戦略を展開していた。

    予選順位だけではなく、最初の給油タイミングが勝敗を左右するケースも少なくなく、オーバーテイクが難しいサーキットではピット戦略によって順位が入れ替わる場面が頻繁に見られた。

    一方で、給油中の火災事故など安全面のリスクや、設備・輸送コストの増大、さらにはサーキット内で大量の燃料を取り扱うことへの懸念もあり、F1は2010年からレース中の給油を禁止。以降はスタート時にレース全距離分の燃料を搭載する現在の方式へ移行した。

    しかし2031年以降に自然吸気V8への回帰が実現すれば、燃料消費量の増加によって再び大型燃料タンクが必要となるため、FIAは給油復活を有力な選択肢の一つとして検討している。

    2009年以来となる給油復活
    2009年までのV8エンジン時代は、レース中の給油を前提としていたため、燃料タンク容量は約90~100リットル(約70kg)で済んでいた。

    しかし2010年から給油が禁止されると、レース全距離を走るために燃料タンクは約200リットル(約150kg)まで大型化された。

    2014年にV6ターボハイブリッドが導入されると燃費性能が大幅に向上し、燃料搭載量は100kg前後まで削減。2026年規則でも約105kgに設定される予定となっている。

    一方、自然吸気V8へ戻れば燃料消費量は再び増加すると見られており、給油復活の必要性が現実味を帯び始めている。

    安全性やコストも検証対象
    給油復活には課題も少なくない。

    かつてF1では給油中の火災事故が何度か発生しており、安全面への懸念は依然として存在する。

    また、給油設備や輸送コストなどにより、各チームは年間約400万ドル(約6億円)の追加負担が発生するとの試算もある。

    FIAはこうしたコストや安全性に加え、レース内容への影響についても総合的な評価を進めている。

    FIA(国際自動車連盟) V型8気筒エンジン

    電動化は10~15%程度へ縮小か
    2031年の新エンジンでは、ハイブリッド機構自体は維持される見通しだ。

    ただし、現在のような大きな電動出力は採用しない方向で議論されている。

    ビン・スライエム会長は、電動化比率について次のように語った。

    「10%かもしれないし、15%かもしれない。しかし現在のように46%前後ということはない」

    「ドライバーがストレートでアクセルを戻さなければならない現状は望んでいない。そこから学ぶべき教訓があった」

    また、ターボチャージャーについても重量やコスト、サウンド面で課題があるとして否定的な見方を示した。

    「ターボは重量もコストも増える。そして音も失われる」

    「私としては、ターボかバッテリーか、そのどちらか一方で十分だと考えている」

    独立系エンジン導入とも連動
    今回の給油復活構想は、2031年に向けて検討されている「独立系エンジンサプライヤー」の導入とも並行して議論されている。

    FIAは、コスワースのような独立系メーカーが低コストV8エンジンを供給することで、カスタマーチームがメーカー系チームに依存しない体制を構築する案を検討している。

    V8化、電動化縮小、給油復活、独立系エンジン導入はいずれも、2031年以降のF1を「より軽く、より安く、よりシンプルなカテゴリー」に再構築するというFIAの大きなビジョンの一部となっている。

    最終的なレギュレーション策定にはメーカーとの協議が必要だが、給油復活は16年ぶりに現実的な選択肢として本格的な議論の段階へ入った。

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    ・F1 2031年からカスタマーPU廃止を検討 独立エンジン導入も視野

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    F1 2031年からカスタマーPU廃止を検討 独立エンジン導入も視野

    FIA(国際自動車連盟)は、2031年に予定される次世代パワーユニット(PU)規則に向けて、F1のカスタマーエンジン体制を見直す構想を検討している。より低コストなV8エンジンへの移行を機に、独立系サプライヤーによる「共通エンジン」を導入し、チーム間の依存関係を解消する狙いだ。

    現在のF1では、多くのチームが自社製PUではなくメーカー製のカスタマーPUを使用している。しかしFIAは、この体制がメーカーとカスタマーチームの力関係を生み、競技面や政治面で公平性を損なう可能性があると懸念している。

    2031年からV8導入と独立エンジン供給を構想
    FIA会長モハメド・ビン・スライエムとF1 CEOのステファノ・ドメニカリは以前から、2031年以降のF1で「より軽く、より安く、より大きなサウンド」を持つパワーユニットへの移行を支持してきた。

    現在有力視されている案は、自然吸気V8エンジンに小型の電動システムを組み合わせる構成だ。これにより現在のハイブリッドPUより大幅なコスト削減と軽量化が期待されている。

    さらにFIAは、メーカー製PUをカスタマーチームへ供給する現在の仕組みを見直し、独立した第三者メーカーが供給する「ホワイトラベルエンジン(共通エンジン)」を用意する案も検討している。

    メーカーとカスタマーチームの関係性を問題視
    この構想の背景には、近年議論となっているチーム間の提携関係がある。

    マクラーレンCEOのザク・ブラウンは以前から、レッドブル・レーシングとレーシングブルズの関係について懸念を表明。ローラン・メキースがガーデニング休暇なしでレーシングブルズからレッドブル代表へ就任した件などを例に挙げ、系列チームの在り方に疑問を呈してきた。

    また、メルセデスがアルピーヌ株式24%の取得を検討したものの、価格面で交渉が決裂したことも、メーカーとチームの関係性が注目される一例となっている。

    ビン・スライエム会長は、シルバーストンでロイター通信に対し、次のように語った。

    「AチームがBチームをエンジン供給によって支配するようなことはなくなる」

    さらに、

    「もし十分に手頃な価格で実現できるなら、Bチーム向けには共通エンジンを用意する。そうすれば『こちらに投票しなければ良いエンジンは供給しない』というような影響力はなくなる」

    と語り、政治的な影響力を排除する狙いを明かした。

    F1 エンジン

    ドメニカリ「メーカー主導になり過ぎてはならない」
    ステファノ・ドメニカリCEOも今年4月、独立エンジンの必要性について言及していた。

    ドメニカリは、かつてのコスワースのような独立メーカーが存在していれば、メーカーの動向に左右されない柔軟な運営が可能だったと説明する。

    「もし独立メーカーが存在していれば、『F1/FIA公認エンジンを用意し、希望するチームに供給しよう』という選択肢があった」

    一方で、

    「自動車メーカーはF1に不可欠な存在であり、その貢献には毎日感謝しなければならない。しかしメーカーがスポーツ全体の方向性を決める状況には戻るべきではない。それは我々が学んだ教訓だ」

    と述べ、メーカーへの依存を減らす必要性を強調した。

    かつて主流だった独立エンジン
    第三者製エンジンはかつてF1では一般的だった。

    コスワースは2013年までマルシャへエンジンを供給していたが、2014年に導入された複雑かつ高額なターボハイブリッドPUの時代になると、独立メーカーによる供給は事実上不可能となった。

    V8化によってPUが簡素化されれば、再び独立サプライヤーが参入できる可能性がある。

    現在のPU供給体制にも変化の兆し
    現在、メルセデスHPPはマクラーレン、ウィリアムズ、アルピーヌの3チームへPUを供給しているが、2031年には供給先を2チームへ減らしたい考えとされる。

    レッドブル・フォードはレッドブルとレーシングブルズへ供給し、フェラーリはハースとキャデラックへPUを供給している。

    一方、アウディはワークスチームとして参戦し、アストンマーティンはホンダとのワークス体制へ移行予定。さらにキャデラックは2029年から自社PU開発を開始する計画で、V8化にも前向きな姿勢を示している。

    2030年前倒し導入の可能性も
    現在のコンコルド協定およびPU協定は2030年末まで有効となっている。

    そのためFIAは2031年以降であれば各PUメーカーの承認なしでも新規則を導入できる権限を持つ。ただし、自動車メーカーとの関係悪化を避けるため、可能な限り合意形成を目指す方針だ。

    現在の6つのPUメーカー(メルセデス、フェラーリ、レッドブル・フォード、ホンダ、アウディ、ゼネラルモーターズ)の大多数が賛成すれば、V8規則は2030年へ1年前倒しされる可能性もある。

    ビン・スライエム会長は5月に、「2031年ならFIAはメーカー投票なしでV8を導入できる権限を持つ。しかし我々は2030年への前倒しを望んでいる。メーカーも実現を望んでいると前向きに考えている」と語っている。

    なお、多くのメーカーはV8への移行自体には概ね賛成している一方で、アウディは将来規則でもターボチャージャーを維持すべきとの立場を取っており、この点では少数派とみられている。

    今回の構想はまだ正式決定ではないものの、2031年以降のF1はV8化だけでなく、チームとPUメーカーの関係そのものを見直す大きな転換点となる可能性がある。FIAは競争の公平性とチームの独立性を高める新たな枠組みづくりを目指し、今後もメーカー各社との協議を進めていく見通しだ。

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  • FIA 2027年F1技術規則を正式公開 ドライバーは改善を評価も課題を指摘

    FIA 2027年F1技術規則を正式公開 ドライバーは改善を評価も課題を指摘

    FIA(国際自動車連盟)は2027年のF1技術規則の全文を公開し、新世代パワーユニット導入を巡る議論を経て、大幅なルール改訂の詳細が明らかになった。

    世界モータースポーツ評議会(WMSC)が先週正式承認した新規則は全278ページに及び、2026年規則への批判を受けて内燃エンジンとハイブリッドシステムの双方を強化する内容となっている。ドライバーからは改善を歓迎する声が上がる一方で、依然としてタイヤやエネルギーマネジメントへの課題も指摘された。

    2027年F1技術規則で何が変わるのか
    FIAが公開した2027年技術規則では、2026年に導入された新世代パワーユニットの方向性を維持しつつ、競技性やドライバビリティを改善するための見直しが実施された。

    ドイツの『Auto Motor und Sport』によると、主な変更点は以下の通り。

    ■ 最大燃料エネルギー流量の引き上げ

    ■ ERS最大出力の増加

    ■ 1周あたり使用可能なバッテリーエネルギーの増加

    ■ 車速に応じた新しいエネルギー展開制御を導入

    ■ 新たなオーバーテイクモードを採用

    ■ フロア下空力を簡素化

    ■ 空力パーツのたわみ試験を見直し

    ■ ドライバー+バラスト込み最低重量を82kgへ引き上げ

    ■ 安全規則の一部を簡素化

    これらはFIAとF1、各チーム、そしてドライバーが協議を重ねた結果、2027年および2028年のエンジン規則見直しとして合意された内容を反映したものとなる。

    ラッセル「クルマはかなり運転しやすくなった」
    オーストリアGPをポール・トゥ・ウィンで制したジョージ・ラッセルは、シーズン途中から進められてきた規則変更によってマシンは着実に改善していると評価した。

    「日本GP以降に行われたレギュレーション変更は非常に良かったと思う。クルマはかなり運転しやすくなった」

    その一方で、現在のF1マシン最大の課題としてタイヤを挙げた。

    「すべてのドライバーが不満を言っているのはタイヤ空気圧だ。でも、聞いている限りではピレリも改善に取り組んでいるようだ」

    「僕たちからすると、大きな風船の上を走っているような感覚なんだ」

    「そこが改善されれば、ドライバーにとってもレースにとってもずっと良くなる。タイヤのオーバーヒートも減るし、もっと接近戦ができるようになる。それが次の大きなステップだと思う」

    ルクレール「まだエネルギーマネジメントを考え過ぎている」
    シャルル・ルクレールもマシンの改善を認めながらも、依然としてエネルギーマネジメントへの依存が大きい点を課題として挙げた。

    「今年のクルマと昨年のクルマのどちらが好きかと聞かれれば、昨年のほうが好きだ。いくつかのサーキットでは限界までプッシュすることができたからね」

    「ジョージが言うように改善されてきているのは事実だ。でも、このようなサーキットでは今でもエネルギーマネジメントを常に考えながら走らなければならない」

    「バルセロナ・カタルーニャGPやモナコではそれほどではなかったけれど、まだそういうコースは残っている。それがドライビングの楽しさを少し減らしてしまっている」

    「ただ、現状はそういうものだし、今後さらに改善されていくと確信している」

    2027年へ向けてFIAは実用性と競技性の両立を目指す
    2027年技術規則は、2026年型パワーユニットに対する「エネルギーマネジメントが多すぎる」「オーバーテイクしにくい」といった懸念を受けて見直された内容となった。

    内燃エンジンとERSの双方を強化するとともに、オーバーテイク支援機能やエネルギー展開方式を刷新することで、ドライバーがより積極的にプッシュできるレースを目指している。

    ラッセルやルクレールのコメントからも分かるように、現行マシンには改善の兆しが見え始めている一方、タイヤ特性やエネルギーマネジメントなど、今後も解決すべき課題は残されており、2027年規則がそれらをどこまで改善できるかが注目される。