投稿者: dbcheck

  • 角田裕毅 2027年インディカー参戦へMSRと交渉 66号車の有力候補に

    角田裕毅 2027年インディカー参戦へMSRと交渉 66号車の有力候補に

    角田裕毅が2027年のインディカー・シリーズ参戦に向け、メイヤー・シャンク・レーシング(MSR)と交渉を進めていることが明らかになった。レッドブル・レーシングのテスト兼リザーブドライバーを務める角田にとって、F1からアメリカ最高峰のフォーミュラカテゴリーへとキャリアの舞台を移す可能性が浮上している。

    Motorsport.comによると、角田裕毅はMSRがホンダエンジンで走らせる66号車の2027年ドライバー候補となっている。

    現在66号車をドライブするマーカス・アームストロングは、今季限りでチームを離れるフェリックス・ローゼンクヴィストに代わり、2027年から姉妹車の60号車へ移る予定で、その空席を巡る候補のひとりとして角田の名前が挙がっている。

    F1で111戦を経験した角田裕毅に新たな選択肢
    角田裕毅は2021年にF1デビューを果たし、これまで111戦に出走。2021年アブダビGPで記録した4位が自己最高位となっている。

    2026年はF1のレギュラーシートを失い、レッドブル・レーシングのテスト兼リザーブドライバーとして活動している。F1のシート争いが依然として厳しいなか、26歳の角田にとってインディカーは今後のキャリアを考えるうえで現実的な選択肢のひとつになりつつある。

    日本人F1ドライバーからインディカーへ転向した代表的な存在が佐藤琢磨だ。F1参戦後にアメリカへ活動の場を移し、インディ500を2017年と2020年に制覇。日本人として初めて世界三大レースのひとつを勝利し、インディカーで長いキャリアを築いた。

    角田裕毅がMSR入りを決断すれば、佐藤と同じホンダとの関係を維持しながらアメリカで新たなキャリアをスタートさせることになる。

    2024年にはインディカーを初ドライブ
    角田裕毅にとってインディカーはまったく未知のマシンではない。

    2024年のF1ラスベガスGPを前に行われたホンダのプロモーションイベントで、チップ・ガナッシ・レーシングが用意したホンダエンジン搭載の93号車をドライブしている。

    この際にはインディカーで6度のシリーズチャンピオンに輝いたスコット・ディクソンから直接指導を受け、ラスベガス・モーター・スピードウェイ近郊に設けられた約1.3マイルのコースで2回の走行を実施。合計約30分にわたってインディカーを体験した。

    当時、角田裕毅は将来的なインディカー参戦に興味を示す一方、オーバル、とりわけインディアナポリス・モーター・スピードウェイでのレースについては率直に恐怖心も口にしていた。

    「もし機会があって、それが適切なタイミングだと感じたら、もちろんやってみたいです」

    「アメリカ自体が好きなので、ここに住むことにも抵抗はありません。でも、今はまだそのタイミングではないと思っています。インディアナポリス・モーター・スピードウェイで2時間以上レースをして、毎周200マイル以上で走るなんて想像できません」

    「僕にとっては怖いです。2時間以上あのマシンに乗って走り続ける自分を想像できません。今のところインディカーを目指しているわけでも、具体的に考えているわけでもありません。でも、将来的にはあり得ると思います」

    2024年当時は「将来的には」と語っていた角田裕毅だが、その将来が2027年に現実となる可能性が出てきた。

    角田裕毅 インディカー

    MSR代表も交渉を否定せず「まだ何も決めていない」
    一方、MSRの共同オーナーであるマイク・シャンクは、2027年のドライバー選定がまだ進行中であることを強調している。

    「まだ何も決めていない。インディカーに適合する、あるいは関連性のあるあらゆるモータースポーツのドライバーと話をしている」

    「候補に挙がっている人たちを引き続き評価しているところで、あらゆる選択肢を検討している」

    シャンクは角田裕毅との交渉を明確に認める発言こそしていないものの、否定もしていない。現段階では66号車のドライバーが正式決定したわけではなく、複数の候補を比較している段階とみられる。

    ホンダとの関係を維持できるMSRという選択肢
    角田裕毅にとってMSRは、単なるインディカーの空席以上の意味を持つ。

    MSRはホンダのパワーユニットを使用しており、長年ホンダの支援を受けてキャリアを築いてきた角田にとって、これまでの関係を生かしやすい環境だ。さらに、F1で111戦を経験した角田のロードコースでの経験値は、チーム側にとっても魅力的な材料となる。

    一方で、インディカーではロードコースやストリートコースだけでなく、高速オーバルへの適応が必要になる。角田自身がかつて「怖い」と語ったインディ500への挑戦も、フル参戦となれば避けて通れない大きなテーマとなる。

    F1で6シーズンにわたって戦い、現在はレッドブルのリザーブを務める角田裕毅。2027年にF1復帰の道を探るのか、それともホンダとの関係を維持しながらインディカーという新天地へ向かうのか。MSRとの交渉は、角田のキャリアが大きな転換点を迎えつつあることを示している。

  • 2026年F1は人工的? ル・マン9勝 クリステンセン「適応できなければ終わり」

    2026年F1は人工的? ル・マン9勝 クリステンセン「適応できなければ終わり」

    2026年に導入された新世代F1マシンをめぐる議論が続くなか、ル・マン24時間レースで歴代最多9勝を誇るトム・クリステンセンが、新レギュレーションへの評価を語った。

    マックス・フェルスタッペンやフェルナンド・アロンソらが、オーバーテイクにおけるエネルギーマネジメントの影響が大きすぎると批判する一方、クリステンセンは新世代マシンの方向性そのものを支持。

    「現代のドライバーは適応できなければ終わりだ」と述べ、複雑化したF1への対応力もトップドライバーに求められる能力のひとつだと主張した。

    軽量・コンパクト化は「F1にとって正しい方向」
    アウディのアンバサダーを務めるクリステンセンは、2026年の新レギュレーションを完全に第三者の立場から評価しているわけではない。アウディがF1参戦を決断した背景のひとつには、今季から導入された新しいパワーユニット規則がある。

    それでも、ル・マン24時間で9度の総合優勝を飾ったクリステンセンは、2026年型マシンに導入された変更はF1にとって前向きな進化だと考えている。

    特に評価しているのが、マシンの小型化と軽量化だ。

    「マシンはよりコンパクトで軽くなった。それは見ていても分かる。マシンはより俊敏になったし、これはF1にとって正しい方向だ」

    FIAは2026年規則でマシンのサイズと重量を削減し、従来よりも扱いやすく、ドライバーがマシンの挙動により大きな影響を与えられる方向を目指した。クリステンセンは、その狙いについて一定の成果が表れていると評価している。

    エネルギーマネジメントには「人工的」に映る場面も
    一方で、クリステンセンも2026年規則が完成形だとは考えていない。特に課題として挙げたのが、新世代ハイブリッドパワーユニットにおける電気エネルギーの使い方だ。

    シーズン序盤からエネルギーマネジメントをめぐってはドライバーから不満が相次ぎ、スパ・フランコルシャンやシルバーストンといった高速サーキットでも、その特徴が顕著に表れた。

    「ドライバーたちの批判にも確かに根拠はある。特にシーズン前半や一部のサーキットではそうだった。時にはすべてが少し人工的に見えることもあった。ただ、ドライビングという面では、それ以降かなり改善されている」

    フェルスタッペンやアロンソを含む複数のF1王者は、2026年型マシンではオーバーテイクの成否が電気エネルギーをどれだけ利用できるかに左右されすぎており、純粋なドライビング能力の比重が小さくなっているとの考えを示してきた。

    クリステンセンもそうした違和感そのものは理解している。しかし、それを新世代F1が抱える根本的な欠陥だとは捉えていない。

    「アクセルとブレーキとステアリングだけ」は過去のもの
    クリステンセンが強調するのは、時代とともに変化するマシンへ適応することもドライバーの能力だという点だ。

    「現代のドライバーである以上、状況に適応できなければならない」

    F1が純粋にアクセル、ブレーキ、ステアリングだけで競うべきだという考えにも否定的だ。

    「理想的な世界ならアクセルとブレーキとステアリングだけでいい、という考え方は間違っていると思う。以前より少し複雑になっただけで、今ではドライバーがそれに適応できることが不可欠なんだ」

    そして、現代F1で生き残るための条件を端的に表現した。

    「それができなければ、終わりだ」

    クリステンセンの主張は、2026年型マシンをめぐる議論に別の視点を提示している。エネルギー管理によってレースが人工的に見えるという批判を認めつつ、そのシステムを最大限に使いこなす能力まで含めて現代のドライビングスキルだという考えだ。

    クリステンセンが最も評価するアントネッリ
    技術面だけでなく、クリステンセンは2026年シーズン前半のドライバーについても評価を語った。そのなかで最も強い印象を受けた存在として挙げたのが、メルセデスF1のキミ・アントネッリだ。

    19歳のアントネッリは現在、ルイス・ハミルトンとチームメイトのジョージ・ラッセルを上回ってF1ドライバーズ選手権をリードしている。シーズン開幕前にはラッセルが有力候補のひとりと見られていたが、アントネッリは新世代マシンへの高い適応力を示している。

    「2026年シーズンにはいくつかポジティブな点がある。でも僕にとって、キミ・アントネッリはそのなかでも圧倒的に輝いている存在だ」

    「今の彼には自信があふれている」

    クリステンセンは、その自信こそが複雑な2026年型マシンを速く走らせるうえで重要な要素になっていると分析する。

    自信がエネルギー管理と速さにつながる
    2026年のF1では、単純にマシンを限界まで走らせるだけでは十分ではない。電気エネルギーの配分やパワーユニットの各種モード、車載システムなどを把握しながら、レース全体を組み立てる能力がこれまで以上に要求されている。

    クリステンセンは、そうした状況だからこそドライバーの精神状態がパフォーマンスを大きく左右すると考えている。

    「精神的にいい状態にいれば、自然とドライビングも良くなると確信している。特にエネルギーマネジメントではそうだ」

    「こういうマシンでは、自分自身を強く信じているドライバーの確かな操作が必要になる」

    「大きな自信があれば、プレッシャーをよりうまく管理できるし、ドライビングも良くなる」

    2026年F1は、軽量化と小型化によってマシン本来の俊敏性を取り戻す一方、エネルギーマネジメントという新たな複雑さをドライバーに課した。クリステンセンは、その部分に改善の余地があることを認めながらも、変化した技術を理解し、使いこなす能力まで含めて現代のF1ドライバーに必要な資質だと評価している。

  • フェルナンド・アロンソに迫る時間 ホンダF1エンジンがトップに並ぶのは2028年?

    フェルナンド・アロンソに迫る時間 ホンダF1エンジンがトップに並ぶのは2028年?

    フェルナンド・アロンソがアストンマーティンで再びF1の頂点を目指すうえで、「時間」が大きなテーマになりつつある。

    2026年7月に45歳を迎えたアロンソに対し、アストンマーティンのワークスパートナーであるホンダは、パワーユニット(PU)がトップレベルに到達する目標時期として、2027年後半から2028年初頭という時間軸を示している。

    アロンソが2028年シーズンまでF1を続ければ、その途中で47歳を迎えることになる。

    45歳のアロンソに残されたタイトル挑戦の時間
    アロンソがアストンマーティンに加入した大きな目的のひとつは、F1で再び勝利を挙げ、2005年と2006年に続く3度目のワールドチャンピオン獲得に挑戦することにある。

    その期待を大きくしたのが、2026年から始まったホンダとのワークスパートナーシップと、エイドリアン・ニューウェイの加入だった。

    しかし、新レギュレーション初年度となった2026年は期待通りには進んでいない。AMR26はシャシーとPUの双方に課題を抱え、アストンマーティンはシーズン前に期待されたトップ争いから大きく離された。

    アロンソにとって問題なのは、単に2026年が苦戦していることだけではない。競争力を取り戻すまでにどれだけの時間が必要なのかという点だ。

    ホンダF1「2027年初めも最高のPUではない」
    ホンダ・レーシング(HRC)のF1プロジェクトでチーフエンジニアを務める折原慎太郎は、ホンダがトップレベルへ戻るまでには、まだ時間が必要だという現実的な見通しを示している。

    ホンダはオランダGPで内燃機関(ICE)を中心としたアップデートを投入し、2027年にはさらに大きなステップを計画している。

    「夏休みが終わったら、またレースの現場に戻ります。そしてファクトリーでは、2027年にさらに大きなステップを持ち込めるよう懸命に取り組んでいます。ただ、やはり現実的に考える必要があります」

    そのうえで折原慎太郎は、2027年開幕時点でホンダが最強PUになっているとは考えていない。

    「2027年の初めの段階では、おそらくまだ最高のパワーユニットにはなっていないと思います。ただ、トップの競争相手にはもっと近づいているはずです」

    「そこからさらにプッシュを続けて、2027年、あるいは2028年にはトップコンペティターになりたいと思っています」

    ホンダの時間軸とアロンソの年齢
    この「2027年あるいは2028年」という時間軸は、アロンソにとって特に重要な意味を持つ。

    アロンソは現在45歳。ホンダがトップコンペティターになる目標として挙げた最も遅い時期である2028年には47歳になる。

    もちろん、ホンダが2028年まで競争力を持たないという意味ではない。折原慎太郎は2027年にはトップとの差を縮め、より大きな性能向上を実現することを目標としている。

    それでも、アロンソが3度目のタイトルを狙える時間が限られていることを考えれば、ホンダとアストンマーティンにとって2027年の進歩は極めて重要になる。

    2027年は燃焼性能をさらに向上
    ホンダはすでに2027年型PUの開発に重点を移している。

    2027年には燃料流量に関するF1レギュレーションが変更されるが、基本的な開発方針は変わらない。最大の焦点となるのはICEの燃焼性能だ。

    「2027年には燃料流量について少し異なるレギュレーションになりますが、僕たちの開発プログラム自体は変わりません。燃焼性能をさらに改善していく必要があります」

    「そのため、引き続き内燃機関の性能向上に集中します。2027年にはそこで、より大きなステップを持ち込みたいと考えています。それが僕たちの主な重点項目です」

    さらにホンダは、単純なPU単体の性能だけではなく、アストンマーティンの2027年型シャシーとの統合にも力を入れている。

    「新しいシャシーに僕たちのパワーユニットをよりうまく統合するため、アストンマーティンとは緊密に話し合っています」

    「今は2027年に向けて良いエンジンを開発することに集中していますし、その裏側ではアストンマーティンとも密接に協力しています」

    フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム)

    それでもアロンソはホンダを信じている
    興味深いのは、厳しい2026年を経験しても、アロンソ自身はアストンマーティンの将来性に対する信頼を失っていないことだ。

    アロンソはハンガリーGPで、ニューウェイについて「遅かれ早かれグリッドで最高のマシンを届けてくれることに疑いはない」と語り、ホンダについても同様の信頼を示している。

    「パワーユニットについても疑いはない。ホンダが問題を解決するのは時間の問題だと思っている。彼らは過去40年間、モータースポーツでそうしてきたからだ」

    アロンソの言葉と折原慎太郎の発言には、実は共通する部分がある。

    ホンダが現在の問題を解決できるかどうかではなく、「いつ解決できるのか」が焦点になっているということだ。

    アロンソはホンダが最終的に競争力を取り戻すことを信じている。一方、ホンダはその到達点について2027年から2028年という現実的な時間軸を示している。

    45歳のアロンソにとって、その差は決して小さくない。

    アストンマーティンとホンダのプロジェクトが成功するまでアロンソのF1キャリアが続くのか。それとも、アロンソが現役でいる間にホンダとニューウェイが勝てるパッケージを完成させるのか。2027年は、アロンソ最後のタイトル挑戦の可能性を左右する重要なシーズンになりそうだ。

  • ミカ・ハッキネン マクラーレンF1でクルサードと築いた健全な関係を回顧

    ミカ・ハッキネン マクラーレンF1でクルサードと築いた健全な関係を回顧

    ミカ・ハッキネンが、マクラーレンF1時代にデビッド・クルサードと築いた関係について振り返った。コース上では接触や緊張もあったものの、チームとともに成功するという共通の目標があったことで、対立を長引かせることはなかったという。

    F1で2度のワールドチャンピオンに輝いたハッキネンと元チームメイトのクルサードは、ポッドキャスト『Up To Speed』で当時のライバル関係について語り、激しく競い合いながらも健全な関係を維持できた理由を明かした。

    1999年オーストリアGPでの接触も「チームメイトなら普通」
    クルサードは、2人の間に時折生じた摩擦の例として、1999年F1オーストリアGPで起きた有名な接触を挙げた。当時マクラーレンはフェラーリとタイトルを争っていたが、ハッキネンはこうした出来事もチームメイト同士なら避けられないものだったと振り返る。

    「それもモーターレーシングの一部だ。チームメイトとして過ごすうえでの一部でもある。まったく普通のことだよ」

    「でも、なぜか僕たちは2人とも、この先に未来があること、そして一緒に成功できる未来があることを分かっていた」

    「僕たちはチームのためにいい仕事ができる。だから、怒りを2カ月も3カ月も頭の中に抱えている意味はない。問題を解決して、前に進んで、またレースに戻ればいい」

    ハッキネンは、チーム首脳陣から一定のサポートがあったことも認めている。

    「もちろん、チームのマネジメントから助けてもらった。でも、それで問題はなかった。それに君が言ったように、オーストリアGPで君が僕にぶつかったときも、本当に少し触れただけだった」

    「僕のマシンも壊れなかったし、君のマシンも壊れなかった。だから僕たちはそのまま走り続けることができた」

    クルサード「今ならノリスとピアストリに近い」
    クルサードは、当時の自分たちの関係を現在のマクラーレンのランド・ノリスとオスカー・ピアストリになぞらえた。タイトルを争うチームメイト同士として競いながら、チーム側が両者の関係を管理する必要がある点に共通性を感じているという。

    「今のドライバーを見ると、チームメイトとしての僕たちに最も近い例は、ランドとオスカーの関係かもしれない」

    「昨年も、彼らが接触しそうになった場面が何度かあった。チームがドライバーそれぞれの期待をコントロールしようとしていた場面も何度かあった」

    クルサード「最高の中の最高ではなかった」
    クルサードはF1でワールドチャンピオンになることはできなかったが、イギリス出身のドライバーとしてウィリアムズとマクラーレンというトップチームで走れたキャリアを誇りに感じている。

    「僕はそれなりの成功を収めた。でも、間違いなく最高の中の最高というカテゴリーには入っていなかった」

    「それでも、このスポーツにたどり着けるだけの力は明らかにあったし、主にイギリスのチームから素晴らしい支援を受けることができた」

    「サー・フランク・ウィリアムズが僕にチャンスを与えてくれた。デイモン・ヒルやジェンソン・バトンにも同じようにチャンスを与えた。ナイジェル・マンセルはロータスを経て加入したけど、ワールドチャンピオンになったのはウィリアムズだった」

    ハッキネンとクルサードはマクラーレンで長年コンビを組み、時にはコース上で衝突しながらも、対立を引きずらずチームの成功を優先した。その関係性は、現在のノリスとピアストリにも通じるチームメイト同士のライバル関係として、クルサードの目には映っている。

  • アウディF1の現状は「1995年のフェラーリ」 ビノットが2030年王座へ描く再建計画

    アウディF1の現状は「1995年のフェラーリ」 ビノットが2030年王座へ描く再建計画

    アウディF1の責任者を務めるマッティア・ビノットは、現在のチームが「1995年のフェラーリ」に似た段階にあるとの見方を示した。

    施設や人員、組織体制ではトップチームとの差が残る一方、2030年までにF1世界選手権を争うという目標については「具体的な目標」であり、達成可能だと強調している。

    アウディは2026年、ザウバーを完全に引き継ぐ形でワークスチームとしてF1に参戦した。ニコ・ヒュルケンベルグとガブリエル・ボルトレトを擁し、11戦終了時点で12ポイントを獲得しているものの、6レースで11位フィニッシュを記録するなど、トップグループとの差は依然として大きい。

    2030年のタイトル争いを見据えるアウディF1
    アウディはF1参戦当初から、短期間での成功ではなく長期的なプロジェクトとしてチームを構築する方針を明確にしてきた。そのなかで掲げているのが、2030年までに世界選手権を争えるチームになるという目標だ。

    現時点で競争力向上の最大の焦点となっているのは、自社開発するパワーユニットである。一方、ビノットは課題がパワーユニットだけにあるわけではないと考えている。

    アウディがザウバーから引き継いだスイス・ヒンウィルのファクトリーは、近年トップチームほど大規模な投資を受けてこなかった。ザウバーは2016年にスウェーデンの実業家フィン・ラウジングの支援を受けて以降、ザウバー、アルファロメオ、ステークと名称を変えながら参戦を続けたが、基本的には中団下位で戦うシーズンが続いていた。

    そのため、現在のアウディにはメルセデス、フェラーリ、マクラーレン、レッドブル・レーシングと競争するためのインフラ整備も求められている。

    ビノットはRacingNews365のインタビューで、トップチームとの差について率直に認めた。

    「メルセデス、フェラーリ、あるいはマクラーレンを訪れ、そのあとで我々のところを訪れれば、そこにギャップ、明確な違いがあることに気づくだろう」

    「我々の建物やインフラはトップチームと同じレベルにはない。ただ、それを誰かの責任だと言っているわけではない。以前のチームオーナーがどのような野心を持っていたのかという事実の結果だ。だから現在はギャップがあり、それを埋めていかなければならない」

    「もっと大きくならなければならない」
    アウディがタイトルを争うためには、単純に既存設備を改善するだけでは十分ではないとビノットは考えている。人員、製造能力、ファクトリーそのものを拡大する必要があるという。

    「将来的にはもっと大きくならなければならない。もっと多くの人材が必要だし、製造のためのスペースもさらに必要になる」

    「だから当然、拡張計画について検討している。拡張は将来の成功を左右する要素になるからだ」

    ただし、大規模な施設拡張は短期間で完成するものではない。

    「拡張は一夜にして実現するものではない。それでも、そうしたプロジェクトについて検討しているし、真剣に考えている。決定が下されれば、そのときに知らせることになる」

    ビノットが重ねる「1995年のフェラーリ」
    ビノットにとって現在のアウディの状況は、自身がフェラーリに加入した1995年と重なって見えるという。

    当時のフェラーリは、現在のようなF1を代表する巨大組織とは大きく異なっていた。ジャン・トッドの指揮下でチーム再建が始まっていた時期であり、その後、ミハエル・シューマッハ、ロス・ブラウン、ロリー・バーンらを迎え、2000年代初頭の黄金時代につながる基盤が築かれていった。

    ビノット自身も1995年にエンジンのテストエンジニアとしてフェラーリに加入。その後、技術部門でキャリアを重ね、最終的には2019年から2022年までチーム代表を務めた。

    「僕がここに来たときに目にしたものは、1995年のフェラーリのようだった。僕にとって比較対象になるのは1995年のフェラーリだ」

    「古くて小さなファクトリーで、人員も少なく、導入されているプロセスも限られている。だから僕にとっては、本当に当時のフェラーリとの比較になる。1995年のフェラーリと現在のフェラーリを比較するようなものだ」

    1995年のフェラーリは、まだタイトルを争える完成された組織ではなかった。しかし、その翌年にはシューマッハを迎え、その後の数年間をかけて組織、技術、人材を整備。最終的にコンストラクターズ選手権6連覇、ドライバーズ選手権5連覇という黄金期につなげた。

    ビノットが現在のアウディに重ねているのも、当時のフェラーリの成績そのものではなく、トップチームになるための土台を構築している「段階」だ。

    アウディ F1

    表から見えないところで進むアウディの再建
    2026年の結果だけを見れば、アウディはまだF1のトップチームとは大きな隔たりがある。しかしビノットは、レース結果には現れない部分で重要な変化が進んでいると説明する。

    「これまでやってきたことは正しい方向に進んでいると思う。チームは改善し、前進している。そしてファクトリーでは、メディアやファンからは見えないところで多くのことが起きている」

    「本当に多くのことが進んでいる。我々は正直に、そして本当の意味で将来のための基盤を築いている」

    そのうえでビノットは、2030年という目標が単なるスローガンではないことを強調した。

    「だから、2030年までに世界選手権を争うという目標は間違いなく達成可能だと確認できる。2030年は具体的な目標だ」

    アウディにとって2026年は完成形を示すシーズンではなく、タイトルを争う組織へ変貌するための出発点に位置づけられている。ビノットが経験した1995年のフェラーリと同じように、現在の成績以上に、今後数年間でどこまで人材、設備、開発体制を積み上げられるかが2030年の成否を左右することになりそうだ。

  • 2026年F1バーレーンGP マレーシア開催のチケット販売開始

    2026年F1バーレーンGP マレーシア開催のチケット販売開始

    バーレーン・インターナショナル・サーキット(BIC)とセパン・インターナショナル・サーキット(SIC)は、マレーシアで開催される2026年F1バーレーンGPのチケット販売を開始した。

    2026年F1バーレーンGPは10月2日から4日にかけてセパン・インターナショナル・サーキットで開催される。2017年以来となるF1のセパン復帰に向け、グランドスタンド席と一般入場券の販売がスタートした。

    マレーシア国籍を持たない海外ファン向けのチケットは、バーレーン・インターナショナル・サーキットの公式サイトで販売されている。3日間の一般入場券は1人219ドルから、グランドスタンド席は350ドルから、メイングランドスタンドは566ドルとなっている。価格はいずれも税込みだ。

    一方、マレーシア国民の身分証明書「MyKad」の保有者には、3日間チケットの特別料金が設定される。一般入場券は200リンギットから、グランドスタンド席は1,291.4リンギットからとなる。この特別料金を利用するにはMyKadの確認手続きが必要となる。

    3歳から6歳までの子どもには25%の割引が適用され、3歳未満は無料となる。また、追加のサポートを必要とする観客向けにアクセシブルシートも用意される。

    主催者はレースウイークエンドのチケットに高い需要が見込まれるとして、希望する座席を確保するため早めに購入するよう呼びかけている。

    F1がマレーシアのセパン・インターナショナル・サーキットで最後にレースを開催したのは2017年。今回のイベントでは、バーレーンGPの名称と雰囲気をマレーシアへ持ち込み、セパンで開催する異例のグランプリとなる。

    ホスピタリティパッケージについては今後数日以内に詳細が発表される予定で、レースウイークエンドに関する最新情報はBICおよびSICの公式サイトで案内される。

    また、ガルフ・エアはバーレーンとクアラルンプールを結ぶ直行便を2026年9月29日から運航すると発表している。これにより、同社のネットワークを利用する海外ファンがレースウイークエンドに合わせてマレーシアへアクセスしやすくなる。

    「F1の歴史の一部になる機会」
    バーレーン・インターナショナル・サーキットの最高経営責任者(CEO)を務めるシェイク・サルマン・ビン・イサ・アル・ハリファは、チケット販売開始について次のように語った。

    「チケット販売の開始は、セパンでの歴史的なレースウイークエンドに向けて準備を進めるなかで、大きな節目となる」

    「マレーシアでバーレーンGPを開催すると発表して以来、ファンやこのスポーツに関わる人々から寄せられた反響は信じられないほど大きかった。ファンにとって、F1の歴史におけるこのユニークな瞬間の一部となる機会がついに訪れた」

    「できるだけ幅広いファンが利用できるよう、多様なチケットの種類と価格設定を用意するため、セパン・インターナショナル・サーキットの仲間たちと緊密に取り組んできた」

    「また、SICおよびF1とともに、コース外でも素晴らしいエンターテインメントを提供するための準備がかなり進んでいる。近いうちにさらに詳しい内容を発表できることを楽しみにしている」

    セパンでは2017年以来のF1開催
    セパン・インターナショナル・サーキットのCEOを務めるアズハン・シャフリマン・ハニフも、チケット発売をF1復帰に向けた重要な節目と位置づけた。

    「今日のチケット販売開始は、2017年以来初めてとなるF1のセパン復帰に向けて準備を進めるなかで、もうひとつの重要な節目となる」

    「マレーシアのファンがホームサーキットでF1を体験することをどれほど待ち望んでいたか、私たちは理解している。バーレーン・インターナショナル・サーキット、そしてF1とともに、マレーシア、地域各国、そして世界中からファンを迎え、セパンで素晴らしいF1ウイークエンドを開催できることを楽しみにしている」

    「特に、マレーシアの皆さんにこの特別なレースウイークエンドをより身近に感じてもらえるよう、MyKad保有者限定の料金を提供できることをうれしく思う」

    「コース上での世界最高峰のレースに加え、今後発表する刺激的なファン体験も用意している。残念な思いをすることがないよう、早めにチケットを購入し、セパンで素晴らしいF1の祭典に参加してほしい」

    2026年F1バーレーンGPは10月2~4日にセパンで開催される。2017年以来9年ぶりとなるF1のマレーシア復帰は、バーレーンGPを国外で開催するという異例の形で実現する。

  • デビッド・クルサード レッドブルF1時代の激怒無線「全員バカ!」マテシッツも傍受

    デビッド・クルサード レッドブルF1時代の激怒無線「全員バカ!」マテシッツも傍受

    デビッド・クルサードが、レッドブル・レーシングでF1を戦っていた時代の印象的な無線エピソードを明かした。

    姉妹チームのトロロッソに行く手を阻まれ、怒りのあまりチーム無線で「全員バカだ!」と罵倒。そのやり取りを、当時レッドブルのオーナーだったディートリッヒ・マテシッツが聞いていたという。

    クルサードが振り返ったのは、レッドブルがまだ現在のようなF1のトップチームへと成長する前の出来事だ。レッドブル・レーシングとトロロッソは同じオーナーの傘下にありながら、コース上では独立したチームとして競争する。その方針を、クルサードは身をもって知ることになった。

    新品タイヤでトロロッソの後方へ
    クルサードは自身のF1キャリア終盤をレッドブル・レーシングで過ごし、クリスチャン・ホーナーらとともにチームの黎明期を支えた。

    2006年にはレッドブルが2チーム体制を確立。レッドブル・レーシングに加え、ミナルディを買収して誕生したトロロッソが参戦していた。後者は現在のレーシングブルズにつながるチームである。

    クルサードがポッドキャスト『Up To Speed』で語ったエピソードは、その初期の時代に起きたものだった。

    「かなり昔の話だけど、ホッケンハイムで、おそらく2007年だったと思う。ピットストップを終えてコースに戻ったら、当時トロロッソと呼ばれていたマシンの後ろに出た。今のレーシングブルズだね」

    クルサードは新品タイヤを履いていた一方、前を走るトロロッソは使用済みタイヤだった。両者は同じレッドブル傘下であり、レース戦略も異なっていたことから、クルサードはすぐに道を譲ってもらえると考えていた。

    「僕は新品タイヤで、向こうは古いタイヤだった。それに僕たちは同じファミリーだった。どちらもレッドブルのチームだったからね」

    そこでクルサードは無線を通じ、トロロッソ側に自分を先行させるよう伝えてほしいとチームに求めた。

    「無線で『トロロッソに、僕たちはレースの違うフェーズにいると伝えてくれ』と言った。当時はレッドブル・レーシングもトロロッソも、コンスタントにポイントを獲得していた時代ではなかった。まだチームを作り上げている段階だったんだ」

    譲らない姉妹チームにクルサードが激怒
    しかし、前を走るトロロッソはポジションを譲らなかった。

    「向こうは退かなかった。それでまた無線を入れて、『みんな、僕はここで時間を失っているだけだ』と言った」

    現在とは違い、当時のF1にはDRSがなく、KERSもまだ導入されていなかった。ペース差があっても、コース上で追い抜くのは簡単ではなかった。

    「KERSもなかったし、DRSもなかった。何とかして自分でオーバーテイクのチャンスを見つけるしかなかったんだ」

    クルサードの苛立ちは次第に高まり、ついに我慢の限界を迎えた。

    「結局、彼らは退かなかった。それで無線で『お前たちはバカだ。全員どうしようもない奴らだ!』って言っていたんだ」

    この無線はテレビ中継では放送されなかった。クルサードとしては、あくまでチーム内部だけで交わされた怒りの言葉だった。

    ところが、その無線を聞いていた人物の中には、レッドブルという組織で最も重要な人物のひとりがいた。

    「そのあと、レッドブルのオーナーだったマテシッツさんが無線を聞いていたことを知ったんだ」

    デビッド・クルサードとディートリッヒ・マテシッツ

    マテシッツが示した「2チームは独立」の哲学
    ディートリッヒ・マテシッツに直接聞かれていたとなれば、クルサードが叱責されても不思議ではなかった。しかし、実際にはそうならなかった。

    むしろクルサードは、この出来事を通じてマテシッツがレッドブルの2チームをどのように位置づけているのかを理解したという。

    「彼の考え方はこうだった。レッドブルが所有するチームは2つある。でも、それぞれ独立して運営されていて、どちらがトップまで上がれるかを競っているんだ、とね」

    レッドブル・レーシングとトロロッソは同じ企業の所有下にあっても、一方がもう一方をコース上で優遇することを前提としていなかった。少なくともマテシッツは、両チームを競争させることを重視していた。

    クルサードは、その姿勢に敬意を抱いたという。

    「僕はそれを尊重している。それに、彼があとから僕のところへ来て『二度と無線であんなことを言うな』と言わなかったことも尊敬しているよ」

    ホーナーからは「褒め言葉をありがとう」
    もっとも、クルサードの怒りの無線がチーム内で聞き流されていたわけではなかった。

    ピットへ戻ると、当時レッドブル・レーシングのチーム代表だったクリスチャン・ホーナーやスタッフから反応があったという。

    「放送には流れていなかった。でもピットに戻ったら、クリスチャン・ホーナーとチームのみんなから『ああ、褒め言葉をありがとう!』って言われたよ」

    クルサードは2005年のレッドブル・レーシングF1参戦初年度からチームに所属し、2008年シーズン限りで現役を引退した。F1通算13勝を挙げ、ウィリアムズで1勝、マクラーレンで12勝を記録している。

    レッドブルでは勝利を挙げることはできなかったものの、2006年モナコGPでチーム初表彰台を獲得するなど、その後の飛躍につながる基盤づくりに貢献した。

    一方、ホーナーは2005年の参戦開始から長年にわたってレッドブル・レーシングを率い、複数のF1世界タイトル獲得を指揮。2025年イギリスGP後にチームを離れ、約20年に及ぶ代表としての時代に幕を下ろした。

    同じレッドブル傘下だからといって、コース上で特別扱いするわけではない。クルサードの怒りの無線と、それを聞いても介入しなかったマテシッツの対応は、後にF1を代表する勢力へと成長するレッドブルの競争哲学を象徴するエピソードでもある。

  • メルセデスF1 開発速度は昨年の「6〜7倍」アリソンが明かす驚異的な進歩

    メルセデスF1 開発速度は昨年の「6〜7倍」アリソンが明かす驚異的な進歩

    メルセデスのテクニカルディレクターを務めるジェームス・アリソンは、2026年に導入された新F1レギュレーションのもとで、各チームの開発速度が「桁違い」のレベルに達していることを明かした。

    F1では新たなレギュレーションが導入されると、エンジニアが規則への理解を深め、さまざまな可能性を発見していくことで、通常よりも開発ペースが速くなる傾向がある。

    特に2025年から2026年にかけてはマシン規則が大幅に変更された。そのため今季は比較的小規模なアップグレードでも大きな効果を生み、グリッド上の勢力図が頻繁に変化している。

    シーズン序盤に強さを見せたメルセデスも、最近ではフェラーリをはじめとするライバル勢の追い上げを受けている。

    風洞での開発速度は昨年の6〜7倍
    アリソンによれば、2026年のレギュレーションはまだ成熟しておらず、それが驚異的な開発速度につながっているという。

    「今回のレギュレーションサイクルを特徴づけているもののひとつは、規則がまだ非常に未成熟だということだ」

    アリソンは『Nu Silver Arrows Podcast』でそう語った。

    「開発速度は過去数年と比べて桁違いに大きい。空力面では、風洞で確認している向上率は昨シーズンのおよそ6〜7倍になっている」

    それが実際のラップタイムにどれほど影響するのかについて、アリソンは次のように説明した。

    「およそ2カ月ごとに0.5秒というペースだ。これは非常に大きな進歩率だ」

    つまり、現在のF1では数カ月の開発の遅れが、そのまま大きなパフォーマンス差につながりかねない状況にある。

    メルセデスは開幕戦に向けて開発を限界まで継続
    メルセデスは2026年型マシンの初期性能を最大限に高めるため、開幕直前まで開発を続ける戦略を選択した。

    「シーズン前に、最初のマシンをこれまで以上に限界までプッシュするという意識的な決断をした」

    「通常よりも遅い段階まで作業を続け、事実上、ほとんど余裕のないプログラムを組んだ」

    その判断には大きなメリットがあった。

    「その利点は、最初のレースまでに急激な開発曲線から可能な限り多くのパフォーマンスを取り込めたことだ。それが、マシンが非常に高いパフォーマンスレベルでシーズンを迎えることができた理由だ」

    メルセデスはシーズン序盤から高い競争力を発揮したが、その代償として、シーズン中のアップグレード投入という点ではライバルに後れを取ることになった。

    メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ

    「最初にパフォーマンスを使い切った」
    アリソンは、開幕時点の性能を優先した戦略には明確なデメリットもあったと認める。

    「欠点は、基本的にそのパフォーマンスを最初にすべて使ってしまったことだ。他のチームはマシンをもっと早く確定させたため、その分、アップグレードの開発を早く始めることができた」

    「今の僕たちは、いくつかのライバルとは開発サイクルが少しずれている」

    その結果、メルセデスが次の開発段階に向けて準備を整えている間に、ライバル勢が新パーツを投入するという状況が生まれている。

    「彼らがアップグレードを投入している一方で、僕たちは開発パイプラインを再構築してきた」

    「いま分かっているのは、どのチームもおおむね同じような速度で進歩しているということだ。つまり、競争力の勢力図は非常に速く変化する可能性がある」

    次のアップグレードで再び優位を狙うメルセデス
    メルセデスの目標は、次の大型アップグレードによってシーズン序盤に築いたアドバンテージを取り戻すことにある。

    「僕たちの目標は単純に先頭を維持し、次のアップグレードによってシーズン序盤に築いたアドバンテージを取り戻すことだ」

    「それまでは、他のチームが大きな新開発を持ち込んでくるタイミングを何とか乗り切るしかない」

    2026年のF1では、風洞での開発速度が前年の6〜7倍、ラップタイム換算では約2カ月で0.5秒という驚異的なペースで性能向上が続いている。開幕時の完成度を優先したメルセデスにとって、今後投入するアップグレードでライバル勢の追い上げを再び突き放せるかが、シーズン後半の大きな焦点となる。

  • ロマン・グロージャン 残り5周でインディカー初優勝逃す「少し泣いた」

    ロマン・グロージャン 残り5周でインディカー初優勝逃す「少し泣いた」

    ロマン・グロージャンは、インディカーのマーカム戦であと一歩のところまで迫った初優勝を逃し、レース後に「少し泣いた」と明かした。

    デイル・コイン・レーシングのグロージャンは、大胆な2ストップ戦略と絶妙なタイミングで出たコーションを味方につけて首位争いに浮上。終盤にはトップに立ったものの、アンドレッティ・グローバルのマーカス・エリクソンに残り5周で逆転を許し、2位でチェッカーを受けた。

    グロージャンは54周目、その直前にピットストップを済ませた直後にコーションが出たことで大きな恩恵を受けた。

    90周で争われたレースの69周目、首位を走っていたエリクソンがグロージャンに14秒のリードを築いた状態からピットイン。これにより、スイス生まれのフランス人ドライバーであるグロージャンがトップに立った。

    しかし、エリクソンはそこから上位勢を次々と攻略。残り5周、ヘアピンでグロージャンを抜き去り、優勝を手にした。

    「エリクソンが追いつくなんてあり得ないと思った」
    レース後、グロージャンはエリクソンがピットに入った瞬間、勝利をほぼ確信していたと振り返った。

    「レース終盤は、タイヤと燃料で37周くらい走らなければならないことは分かっていた。それはチャレンジになると思っていた」

    「28号車(マーカス・エリクソン)がピットに入るのを見たとき、僕たちに追いつけるわけがないと思った」

    「10号車(アレックス・パロウ)が後ろにいた。それはいつだって心配だけど、ギャップを広げられた。これなら大丈夫だと思った。でも次に気づいたときには、28号車が迫ってきていた」

    燃料面ではホンダのサポートが大きかったという。

    「ホンダは僕たちと素晴らしい仕事をしてくれた。本当にうまくやってくれて、フィニッシュラインを越えたときにタンクが空になるよう、正確な燃料の数字を出してくれた」

    「守るためにできることはほとんどなかった。今日はそういう日じゃなかったんだ」

    「少し泣いた。嘘はつかない」
    初優勝が目前で消えたグロージャンは、レース後に感情を抑えきれなかったことを認めた。

    「少し泣いた。嘘はつかない」

    「でも、自分でコントロールできることをコントロールする。それは僕が読んだアンドレ・アガシの本に書いてあった言葉だったと思う。僕は自分にできることをすべてやった」

    「28号車の戦略がどうやって機能したのかは分からない。おそらく短いピットレーンが彼らを助けたんだと思う。それに、多くのドライバーが燃料をセーブしなければならなくなって、スペースができたことも影響したんだろう」

    「もちろん、まだレースを見返してはいない。チームと自分のパフォーマンスにはとても満足している。来週のフリーダム250に向けて希望を持てる。また素晴らしいレースになると思う」

    グロージャンはインディカー参戦5シーズンでいまだ未勝利。今回が通算6度目の2位となった。

    2位は2023年のバーバー戦以来で、その際にはチーム・ペンスキーのスコット・マクラフリンに次ぐ順位だった。

    さらにグロージャンは、カテゴリーを問わず2011年以来、レースで勝利していない。最後の勝利はGP2シリーズ(現在のFIA F2)時代にハンガロリンクで挙げたものだ。

    「勝ち方を忘れたわけじゃない」
    長く続く未勝利について、グロージャンは冗談交じりに、勝つためにはカテゴリーを下げる必要があるかもしれないと語った。

    「僕はできることをすべてやった。F1には10年間いた。F1では、勝てるマシンがなければレースには勝てない」

    「確かに、レースで勝っていない期間は長い。でも、勝ち方を忘れたとは思っていない。ただ、それをするチャンスに恵まれなかっただけだと思う」

    「だから、これからも挑戦する。レースを続けるよ。もしかしたらゴーカートのレースに出たほうが勝つチャンスはあるかもしれない。あるいは自転車レースかな」

    「確かに長いよ。最悪だ。今日、パロウとの差を広げたときは、これはいいと思った。でも、もう燃料もタイヤも何も残っていなかった。ただ、すべてを出し切った」

    あと一歩でインディカー初優勝を逃したグロージャンだが、戦略と燃料管理を駆使して勝利争いを演じた今回の2位は、次戦に向けた大きな手応えとなった。インディカーは8月23日にワシントン市街地で開催されるフリーダム250で次戦を迎える。

  • エイドリアン・ニューウェイに「終焉」説 アストンマーティンF1苦戦で浮上

    エイドリアン・ニューウェイに「終焉」説 アストンマーティンF1苦戦で浮上

    アストンマーティンF1は2026年シーズン、エイドリアン・ニューウェイを中心とする新体制とホンダとのワークス提携で大きな期待を集めたが、ここまでその期待に応える結果を残せていない。

    元F1ドライバーのジョニー・ハーバートは、この苦戦を受け、ニューウェイがキャリアの「下降スパイラル」に入り始めた可能性があるとの大胆な見方を示した。

    一方で、アストンマーティンはF1ハンガリーGPで大幅改良型のAMR26Bを投入し、フェルナンド・アロンソがQ2進出、決勝ではランス・ストロールが13位、アロンソが14位でフィニッシュした。

    さらにホンダもオランダGPで新スペックのパワーユニットを投入する予定であり、チームが復調への足掛かりをつかみつつある段階でニューウェイの「終焉」を論じるのは、時期尚早ともいえる。

    ハーバートが唱えるニューウェイの「下降スパイラル」
    2026年からアストンマーティンのチーム代表を務めるニューウェイは、F1史上屈指のデザイナーとして知られている。これまで関わったマシンはドライバーズ選手権とコンストラクターズ選手権を合わせて計26回のタイトル獲得に貢献してきた。

    しかし、3度のF1優勝経験を持つハーバートは、アストンマーティンの現状について疑問を投げかけた。

    「アストンマーティンが揃えたものを見てみれば、エイドリアン・ニューウェイがいて、新しいファクトリーがあって、さらにフェルナンドもいる。それなのに、なぜこれほどまでうまくいかなかったのか理解するのは難しい」

    「理由が何であれ、エイドリアンは彼らが目指しているものに対して、優れたマシン、あるいは少なくともある程度競争力のあるマシンを作れるチームをまとめ上げることができていない」

    そしてハーバートは、ニューウェイ自身のキャリアが転換点を迎えている可能性にまで言及した。

    「興味深いのは、これがエイドリアン・ニューウェイの終焉なのかということだ。彼が下降スパイラルに入り始めた最初の兆候なのだろうか?」

    「スポーツでは、最高の人間にだってそういうことは起こる。いつかは必ず起きることだった。まだその時ではないとしても、いずれそういう時点はやって来る」

    AMR26の開発方針が前半戦の低迷につながる
    ただし、アストンマーティンの2026年前半戦の低迷を、単純にニューウェイの能力低下と結びつけることには慎重になる必要がある。

    アストンマーティンとホンダは2026年の新レギュレーション導入に合わせてワークス体制をスタートさせたが、AMR26は開幕当初から期待された競争力を発揮できなかった。

    ニューウェイは小規模なアップデートを連続して投入するのではなく、マシンの根本的な問題に対応する大規模な改良パッケージに開発リソースを集中させる方針を選択。その結果、アップデートを待つ間にライバルとの差が広がり、シーズン前半にはグリッド後方へと沈んだ。

    その大規模改良の成果としてハンガリーGPに登場したのがAMR26Bだった。

    アロンソは予選でQ2に進出し、決勝ではストロールが13位、アロンソが14位。ポイント獲得には届かなかったものの、従来型AMR26と比較してマシンの挙動や競争力には改善が見られた。

    ハーバートの発言はアストンマーティンの期待値の高さを反映したものではあるが、AMR26Bの投入によってニューウェイが進めてきた開発の方向性がようやく形になり始めたタイミングでもある。

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

    ホンダの新スペックPUでオランダGPから次の段階へ
    さらにアストンマーティンは、オランダGPで復調に向けた次のステップを踏み出す予定だ。

    ホンダはハンガリーGP終了後、ハンガロリンクでAMR26を使用してアップグレード版パワーユニットの走行テストを実施。ホンダ側は新スペックが社内で設定していた目標を達成したことを確認しており、オランダGPでの正式投入を予定している。

    ニューウェイ自身も、シーズン序盤に課題を抱えていたホンダとの関係について、改善が進んでいることを強調している。

    「ホンダとの関係という点では、我々が進めている進歩に非常に満足している」

    さらに、オランダGP以降に向けてニューウェイはこう付け加えた。

    「通常、関係が改善すれば、パフォーマンスも改善するものだ」

    アストンマーティンとホンダが目指している最終的な目標は、F1世界選手権のタイトル獲得である。2026年のスタートが期待を大きく下回ったことは事実だが、AMR26Bとホンダの新スペックPUという2つの大きなアップデートが揃うのはこれからだ。

    ハーバートが指摘するニューウェイの「下降スパイラル」が本当に始まっているのか、それとも2026年前半の苦戦が新体制構築に伴う一時的なものだったのか。アストンマーティンの今後のパフォーマンスが、その評価を大きく左右することになりそうだ。