2026年F1スペインGPで初めて決勝レースを開催したマドリンクに対し、ドライバーから厳しい評価が相次いだ。ガブリエル・ボルトレトは「僕も寝そうだった」と語り、ランド・ノリスやジョージ・ラッセルらはオーバーテイクを増やすための具体的なレイアウト変更を要求した。
マドリード北東部のIFEMA周辺に建設されたマドリンクは、公道と新設された常設区間を組み合わせた全長5.4kmのサーキット。
会場の雰囲気や施設については高く評価された一方、初開催となったF1スペインGP決勝ではオーバーテイクが極めて難しく、レース展開そのものについては多くのドライバーが不満を口にした。
「僕も寝そうだった」ボルトレトが率直な感想
決勝後、アウディのガブリエル・ボルトレトは、観戦していた側にとって退屈なレースだったのではないかと問われ、率直に答えた。
「うん。僕も寝そうだったよ」
金曜の走行ではタイヤのグレイニングが大きな問題となり、それが決勝で戦略や順位変動を生み出す可能性も予想されていた。しかし、日曜日にはその傾向が大幅に弱まり、ドライバーがタイヤを大きく労わる必要性も減少した。
ハースのエステバン・オコンは、それが単調なレースにつながったと分析した。
「ピットに入ってから最後まで、ほぼ120%で走るような感じだった。グレイニングが起きなかったから、こういうレースになった。金曜日にレースをやっていたら、ずっと良かったと思う」
実際、初日のフリー走行ではグレイニングが大きなテーマとなり、各チームが決勝でのタイヤマネジメントを警戒していた。
ノリス「ターン18と19はなくすべき」
より厳しい批判が集中したのはマドリンクのレイアウトそのものだった。
マクラーレンのランド・ノリスは、現在のコース設計について疑問を呈し、特に終盤区間を大幅に変更するべきだと主張した。
「ターン18と19はなくすべきだ。必要ない」
ノリスが提案したのは、ターン17からターン20までを直線的につなぎ、その先に幅の広い低速コーナーを設置するレイアウトだ。
「ターン17から20まで真っすぐにして、オースティンのターン1やターン10みたいに、もっと入口を広くすればいい」
「大きなヘアピンにすれば、みんなにとってずっと良いチャンスが生まれるし、レースを楽しめるようになる。簡単にできる変更もあるし、ターン5、6、7みたいに少し難しいところもある」
ノリスは記者会見でも、現在のレイアウトを見て「これで完璧だとどうして思えるのか分からない」という趣旨の厳しい評価を示した。
ラッセル「長いストレートの先には追い抜き場所が必要」
メルセデスのジョージ・ラッセルも、マドリンクには明確なオーバーテイクポイントが不足していると指摘した。
「設計についてひとつだけ小さな不満があるとすれば、明確なオーバーテイクの機会がないことだと思う」
「どんなサーキットでも、長いストレートの最後には明確なオーバーテイクのチャンスが必要だ。でも、ここで一番長いストレートの先には、あのタイトなラウンドアバウトのセクションがある。そこは変わってほしいところだ」
キャデラックのバルテリ・ボッタスも、最長ストレートの後でさえ前を走るドライバーがポジションを守るのは「かなり簡単」だったと説明した。
さらにボッタスは、セクター2からセクター3にかけてブラインドコーナーが多すぎることも問題視。低速走行中のマシンが見えにくい状況について、安全面から改善の余地があると語った。
ターン5~6にも集中する批判
特に多くのドライバーが問題視したのがターン5~6のシケインだった。
ターン5は強いブレーキングを必要とするため、一見するとオーバーテイクポイントになり得る。しかし、進入部分にはバンプがあり、高い縁石に加えてコース幅も狭い。そのため、現代の大型化したF1マシンが2台並んで進入するのは難しい。
ウィリアムズのアレックス・アルボンは、F2やF3でも同じ問題が表面化していたとして改修を求めた。
「このコースは少し見直す必要があると思う。F3やF2のレースを見ていたか分からないけど、みんなシケインでサイド・バイ・サイドになって、その後はどちらがポジションを返すべきだったのかという話になっていた」
「だから、特にあのコーナーは一番手を入れる必要があると思う」
ボルトレトもターン5~6の存在そのものに疑問を示した。
「どうすればいいのか僕には分からない。コーナーをもっと遅くしたとしても、何ができるんだろう。今の僕たちが乗っている大きなマシンでは難しい。1990年代のマシンだったら何かできたかもしれないけど、今はそうじゃない」
サインツJr.はブラインド区間の安全性を懸念
カルロス・サインツJr.は、オーバーテイクだけでなく安全面にも問題があると指摘した。
特に高速で通過するブラインドのS字区間について、ジェッダやバクーと同様の問題が存在すると説明した。
「ジェッダやバクーと同じで良くない。でもFIAは、新しいサーキットについて今後もこういう方向で進むことに満足しているように見える」
「僕たちドライバーは、安全性をもっと改善していきたいという意見を伝えている。260km/h、270km/hで、先が見えないS字を走るのは間違いなく目を覚まされるような経験だし、本当にすべてが安全なのか考えさせられる」

アロンソ「広報担当でも走れる」ラ・モニュメンタルを酷評
マドリンク最大の象徴として設計されたバンクコーナー、ターン12のラ・モニュメンタル(La Monumental)についても、期待されたほどドライバーの技量を試すコーナーにはならなかった。
フェルナンド・アロンソは、現在のF1マシンでは簡単に全開で通過できるとして皮肉った。
「ある意味では残念だ。この世代のマシンで、こういう素晴らしいサーキットに来て、ラ・モニュメンタルのターン12みたいなチャレンジがあるのに、ドライバーができることはほとんどない」
そしてアストンマーティンの広報担当マイケル・クレイトンを引き合いに出した。
「マイケルでもターン12を走れるよ。デプロイメントなしで全開だからね」
アロンソはストリートサーキットそのものについても、常設サーキットほどマシンを限界まで攻めることができないとして、「僕は今でも普通のサーキットの方が好きだ」と語った。
フェルスタッペンもラ・モニュメンタルの設計変更を提案
マックス・フェルスタッペンもラ・モニュメンタルについて、バンクそのものは評価しながら、形状を逆にするべきだったとの考えを示した。
「バンクがあるのはクールだけど、逆にするべきだったと思う。最初にもっとバンクをつけて、そこから徐々にフラットにしていく方が良かった」
一方、フェルスタッペンは根本的にストリートサーキットを好んでいないことも強調した。
「僕はストリートサーキットのファンじゃない。それはこれからも変わらない。スパみたいなサーキットを走る方がいつだって好きだ」
「ここで彼らがやったこと、施設を作り上げた方法については、本当にいい仕事をしたと思う。でも、僕はストリートサーキットのファンじゃない」
フェルスタッペンは決勝前からマドリンクではオーバーテイクポイントが見当たらないと指摘しており、その懸念は実際のレースでも現実のものとなった。
初開催で浮き彫りになったマドリンクの課題
マドリンクに対する評価は一面的ではない。ドライバーからはマドリードという開催地、会場の雰囲気、施設、予選で1周を攻める際のチャレンジについて好意的な声も多かった。金曜日の初走行でも、ドライバーは高速コーナーや壁との距離の近さによる難しさを評価していた。
しかし、決勝レースとなれば話は別だった。
長いストレートの先に明確な低速コーナーがないこと、ターン5~6の狭いシケイン、ブラインド区間の多さ、そして現代の大型F1マシンでは2台が並ぶスペースが不足していることなど、複数の問題が初開催で浮き彫りになった。
実際、初開催のF1スペインGPはオーバーテイクの機会が限られ、レースの大部分が隊列状態となった。レース後にはマドリンクの改修を求める声が相次ぎ、すでに次回開催に向けた変更が議論されている。
初開催を終えたマドリンクにとって、課題は明確になった。予選でドライバーを試すだけでなく、F1決勝で実際にバトルとオーバーテイクを生み出せるサーキットへ変えられるか。ノリスらが示した具体的な改修案が、2027年のF1スペインGPに向けてどこまで反映されるかが注目される。
