カテゴリー: F1スペインGP

  • F1スペインGPで酷評のマドリンク 設計者が反論「自由に設計できたわけではない」

    F1スペインGPで酷評のマドリンク 設計者が反論「自由に設計できたわけではない」

    F1スペインGPの新たな舞台として初開催を迎えたマドリンクについて、コース設計を手掛けた企業のCEO、ヤルノ・ザッフェリが、オーバーテイクの少なさをめぐる批判に反論した。今後レイアウトを変更することは可能だとしながらも、都市計画や環境上の制約から「最小限」にとどまると説明している。

    マドリンクでは先週末、初のF1スペインGPが開催された。

    しかし、決勝ではオーバーテイクがほとんど見られず、サポートカテゴリーでも同様の傾向が続いたことから、ファンを中心にレイアウト改善を求める声が上がっている。

    「変更は可能だが最小限」
    マドリンクの設計を担当した企業を率いるザッフェリは、motorsport.comに対し、コースを大幅に作り替えることは難しいと説明した。

    「いくつか変更できる部分はあるが、それは最小限だ」

    「公に語られている内容を見る限り、議論されている選択肢の一部は、もともと我々の当初案に盛り込まれていたものに近いように思う。当初のプロジェクトには、ターン5でオーバーテイクの機会を作ることも含まれていた」

    ザッフェリによれば、現在のターン5からターン6にかけての区間は、当初の設計とは異なる形になったという。

    「ターン5はもっとタイトで、コーナリング区間を短くする予定だった」

    「そして我々の設計では、ターン6の内側はアスファルトのランオフではなく、グラベルにする予定だった。ドライバーにより遅いラインを通らせ、直線的に走ることがラップタイム上の不利益になるようにするためだ」

    「この一連の区間の狙いは、バンクを利用してタイムを稼ぐことではなく、それぞれ異なるメリットを持つ2つのラインを作り出すことだった」

    マドリンク F1 スペイングランプリ

    「白紙から自由に設計できたわけではない」
    マドリードはF1と10年間の長期契約を結んでいるだけに、初開催後には将来に向けたコース変更の可能性も注目されている。

    一方、ザッフェリは、マドリンクが何もない土地にゼロから自由に設計されたサーキットだったとの見方を否定。実際には高度に都市化された地域であり、利用できる土地には数多くの制約が存在していたと説明した。

    「『白紙の状態から設計した』と表現されているが、実際にはF1に適したサーキットを設計するうえで明確な制約が存在する、高度に都市化された地域だ」

    「詳細な地図を見れば、レイアウトが多くの場所で非常に厳しい制約を受けていたことが分かる。新しい展示ホールはすでに設計され、都市計画当局から承認を受けていたし、道路網についても、あらかじめ定められたルートに沿って計画されていた」

    制約のなかで「独自性を持つサーキット」を追求
    ザッフェリは、こうした制約があったからこそ、マドリンクの設計には多くの創造性が必要だったと主張する。

    「だからこそ、多くの創造性が必要だった。制約によって設計の自由度は限られていたが、だからといって答えがひとつに決められていたわけではない」

    「構造上の制限とFIAの安全規則による制約のなかで、独自のアイデンティティを持つサーキットを生み出すため、ジオメトリーやコーナーの連続性、走行ラインを考え出さなければならなかった」

    初開催のF1スペインGPでは追い抜きの難しさが大きな課題として浮き彫りになったマドリンク。設計者側は当初案にオーバーテイクを促す仕掛けが存在していたことを明かした一方、都市部という立地上、大幅なレイアウト変更には限界があるとの認識を示している。

  • キミ・アントネッリ F1スペインGP勝利を呼んだメルセデスの「秘密の暗号」

    キミ・アントネッリ F1スペインGP勝利を呼んだメルセデスの「秘密の暗号」

    F1スペインGPでアンドレア・キミ・アントネッリが挙げた勝利の裏には、メルセデスがVirtual Safety Car(VSC)の発動を見越して使った「秘密の暗号」があった。わずか1秒ほどの時間を稼ぐための事前準備とドライバーの対応が、マドリンクでの勝敗を左右した。

    アントネッリの勝利にはVSCという幸運が味方したことは間違いない。しかし、単純にタイミングに恵まれただけではなかった。

    メルセデスはランス・ストロールのマシンがストップした直後からVSCの可能性を予測し、アントネッリに通常以上にペースを落とさせていた。

    VSC発動前にアントネッリが稼いだ「1秒」
    決定的な場面は14周目だった。レースエンジニアから黄旗について知らされたアントネッリは、ターン18からターン20にかけて意図的にペースを落とし、VSCが発動された場合に備えた。

    13周目と比較すると、アントネッリはターン19を29km/h低い速度で通過。ストロールのマシンが止まっていたターン20のブレーキングポイントにも24km/h低い速度で到達しており、かなり早い段階でアクセルを戻していた。

    同じ黄旗区間でマックス・フェルスタッペンは、ターン19をアントネッリより15km/h速く通過。ターン20のブレーキングポイントでも18km/h速く、アクセルを戻したタイミングもアントネッリより遅かった。

    さらにアントネッリは、黄旗区間を抜けてグリーンフラッグが提示された後も、すぐには加速しなかった。

    メルセデスのピットウォールでは、正式なVSC発動前からレースがニュートラル化される可能性が高いと判断していた。その情報をレースエンジニアのピーター・ボニントン、通称“ボノ”がアントネッリへ伝えていた。

    メルセデスが使った「秘密の暗号」
    メルセデスのトラックサイドエンジニアリングディレクターを務めるアンドリュー・ショブリンは、チームがこうした状況に備えてドライバーとの間にコードを設定していることを明かした。

    「レース中にセーフティカーが出た場合、ピットに入る可能性があることをドライバーに知らせるため、我々は秘密のコードを使っている」

    「ただ、他のチームにそのコードが何を意味するのか知られないようにしている。そのため、毎週変更している」

    今回も、そのコードが重要な役割を果たした。

    「黄旗が出て、ボノがそれを確認した。キミは実際に少しペースを落とし、さらに1秒ほど稼いだ。おそらく……それがなくてもピットには入れたと思う。ただ、その1秒によって可能になった」

    「彼のオンボードを見れば分かるが、キミにとってピットに入るのは決して簡単ではなかった。そして彼が自分のピットボックスに止まろうとしているまさにその瞬間、タイヤが運ばれてきていた。あの短い時間の中で実行するのは難しいピットストップだった」

    アントネッリはVSCが発動された時点ですでにピット入口のすぐ近くまで来ていた。

    仮に事前に稼いだ約1秒がなかったとしても、白線を越える直前でピットへ飛び込めた可能性はある。しかし、そのわずかな余裕によってアントネッリには判断する時間が生まれ、同時にメルセデス側もピットストップの準備を整えることができた。

    アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ)

    わずか50秒でドライバーとピットが連動
    黄旗が提示されてからVSCが正式に発動されるまでは35秒。そしてVSC発動からアントネッリがメルセデスのピットボックスに到着するまでは、さらに15秒しかなかった。

    しかも、チームがしなければならなかったのはアントネッリをピットへ呼び込むことだけではない。

    交換用タイヤを用意し、メカニックを配置する必要があり、さらにメルセデスはアントネッリだけでなくジョージ・ラッセルもピットインさせることを決断していた。メカニックにも早い段階で準備の指示が出されていたことになる。

    ショブリンは、こうした状況を想定した準備は決勝日の朝から行われていたと説明する。

    「日曜の朝は、どんなインシデントが起きても対応できるようにすることに集中していた。レースの各段階でVSCやセーフティカーが出た場合に何をするのか、それを確実に把握しておく。これは普通のことで、すべてのチームが同じようにやっている」

    ただし、事前に戦略を決めていても、実際にその状況が訪れた際に迷いが生じることはあるという。

    「計画があったとしても、『本当にこれをやるのか?』というような議論が生じる状況はある」

    「今回良かったのは、きちんと計画があったことだ。キミは自分がVSCのウインドウに入っていることを分かっていた。そしてインシデントが起きると、ボノがすぐにそれを確認した」

    追い抜きが極めて難しいマドリンクでは、このVSCを利用したピットストップがレースの流れを大きく変えた。アントネッリはミディアムからハードへ交換して実質的な首位に浮上し、そのままF1スペインGP優勝につなげた。

    VSCという偶然の要素だけでなく、その発動を予測したピットウォール、暗号を理解して即座にペースを調整したアントネッリ、そして短時間でタイヤを準備したメカニックまで、メルセデスの一連の連携が勝利を引き寄せる重要な要素となった。

  • フェラーリF1 ハミルトンのスペインGPリタイア原因を調査「主ブレーキ系ではない」

    フェラーリF1 ハミルトンのスペインGPリタイア原因を調査「主ブレーキ系ではない」

    フェラーリF1は、2026年F1スペインGPでルイス・ハミルトンがリタイアを余儀なくされたSF-26のブレーキトラブルについて詳細な調査を進めている。初期調査では、ブレーキそのものではなく、それに付随するシステムに問題が発生した可能性が浮上している。

    ハミルトンはマドリンクで行われた決勝の序盤からブレーキペダルが深くなる症状に見舞われ、次第にマシンをコース上にとどめることさえ困難になった。フェラーリは走行中に問題の解消を試みたものの改善せず、安全上のリスクを考慮してリタイアを決断した。

    ターン1直後からブレーキトラブルが悪化
    スタート直後、ハミルトンはターン1でレッドブル・レーシングのマックス・フェルスタッペンとサイド・バイ・サイドになった。フェルスタッペンはランオフエリアを通過し、その後FIAが「コース外に出てアドバンテージを得た」と確認したことを受け、レッドブルからポジションを戻すよう指示された。

    しかし、その時点ですでにハミルトンのブレーキには異常が出始めていた。

    フェルスタッペンはいったんハミルトンを前に出したものの、ブレーキ問題が悪化していたハミルトンをすぐに抜き返した。その後、ハミルトンは次々と後続車にポジションを奪われ、最終的にフェラーリからピットに戻るよう指示を受けた。

    決勝後、フェラーリF1のチーム代表フレデリック・バスールは、ターン1でのフェルスタッペンとの攻防がトラブルの原因だった可能性について質問された。

    「正直なところ、分からない。私が出たときにはまだマシンを調べているところだった」

    バスールは、ハミルトンがブレーキペダルのストロークが長くなる症状に見舞われていたことを認めた。チームはピットウォールから対応を試みたが、問題を解消することはできなかった。

    「ペダルが長くなっていた。ピットウォールから修正しようとしたが、その数コーナー後にまた同じことが起きた」

    ハミルトンはマシンをコース上にとどめるために苦戦し、トラックリミット違反も重ねていた。バスールは、その状態で走行を続けることには「意味がなかった」と説明している。

    スクーデリア・フェラーリ

    初期調査では主ブレーキシステム以外が原因か
    その後もフェラーリはハミルトンのSF-26について調査を継続。PlanetF1.comのトーマス・マーハーによると、現時点で原因は完全には特定されていないものの、初期調査ではブレーキ機構そのものとは別の補機類に問題が発生した可能性が示されているという。

    「マドリードでルイス・ハミルトンのマシンに何が起きたのか、フェラーリでは調査が続いている。ただ、初期段階では主ブレーキシステムそのものではなく、その内部にある補機類の問題だったことが示唆されている」

    さらに問題はリア側のブレーキシステムに関連していたとみられている。

    ハミルトンはレース序盤に左リアをウォールに接触させる場面もあったため、フェラーリはこうした出来事も含めて原因を調査している。

    FP3クラッシュ後の修復作業とは無関係の見通し
    ハミルトンは前日のFP3でもクラッシュを喫していた。事故後にはフロントウイングをマシンの下に巻き込み、右フロントタイヤがパンクした状態でピットまで戻ろうとしていた。

    レースエンジニアのカルロ・サンティから何度もマシンを止めるよう指示されたものの走行を続け、最終的にはFIAレースディレクターからの正式な停止要求であることを伝えられ、コース脇にマシンを止めていた。

    このクラッシュによってSF-26は予選までに修復を必要としたが、現時点では土曜日の修復作業と日曜日のブレーキトラブルに関連性はないとみられている。

    マーハーは「この問題は土曜日に急いで行われた修復作業とは関係しておらず、日曜日に発生した問題はリアブレーキシステムに関連したものと理解されている」と伝えている。

    フェラーリは引き続き詳細な調査を進め、ハミルトンのSF-26で発生した不具合の正確な原因を特定する方針だ。

    スペインGPで今季初のリタイアを喫したハミルトンはノーポイントに終わり、ドライバーズ選手権首位のアンドレア・キミ・アントネッリとの差は101ポイントに拡大した。

  • カルロス・サインツJr. マドリンク酷評への責任を否定「僕が関わる前に設計済み」

    カルロス・サインツJr. マドリンク酷評への責任を否定「僕が関わる前に設計済み」

    カルロス・サインツJr.は、初開催となったF1スペインGPで批判を浴びたマドリンクのレイアウトについて、自身に責任はないと反論した。イベントのアンバサダーに就任した時点で、コースはすでに設計され、FIAの承認も受けていたと説明している。

    マドリードで初めて開催されたF1スペインGPは、決勝でオーバーテイクが極めて少なかったことから、コースレイアウトに厳しい批判が集まった。

    そのなかでニコ・ロズベルグは日曜日、「カルロス・サインツがアンバサダーなんだから、カルロス・サインツを批判しないとね」と冗談交じりに語っていた。

    サインツJr.「僕が契約した時にはすでに設計されていた」
    しかし、ウィリアムズのカルロス・サインツJr.は、当初のサーキット設計には一切関与していなかったと強調した。

    「僕がアンバサダー契約を結んだときには、コースの設計はすでに終わっていて、FIAからも承認されていた」

    「何らかの形で関わりたかったので、本当に腹が立った」

    日曜日の決勝が隊列のまま進む展開となったことを受け、主催者側はすでにコース変更の可能性を認めている。F1とFIAも今後の改修について協議に加わっている。

    サインツJr.は、大幅なレイアウト変更ではなく、本格的なオーバーテイクポイントをひとつ設けるだけでも状況は大きく改善すると考えている。

    カルロス・サインツJr.(ウィリアムズ・レーシング)

    「必要なのはオーバーテイクポイントひとつ」
    「理想的な状況なら、ターン5で何かできないか試すべきだと思う。そこが無理ならターン1で何かをする必要があるし、ターン1でも無理ならターン13で何ができるか検討する必要がある」

    「バクーやマカオのような優れた市街地サーキットには、非常に長いストレートの先にオーバーテイクポイントがひとつしかないこともある。そうしたオーバーテイクポイントを追加できる可能性がどこにあるのか、そしてそれが実現可能なのかを確認する必要がある」

    「それができれば、このコースにとって非常に大きな助けになると思う。初開催のイベントとして見れば、それ以外の部分は成功だったと思うからだ」

    「素晴らしいサーキットだし、訪れるには素晴らしい街だ。運営も素晴らしかった……足りなかったのはオーバーテイクポイントだけだ」

    元F1ドライバーのシュトゥックは擁護
    一方、元F1ドライバーのハンス=ヨアヒム・シュトゥックは、Servus TVでマドリンクについてより肯定的な見方を示した。

    「そもそも新しいサーキットが今でも建設されているというのは素晴らしいことだ」

    「それは重要なことだ。市街地サーキットは少し多すぎるが、バンクのついたコーナーは新しい試みだった」

    マドリンクでは初開催を終えた段階で、オーバーテイクの難しさが最大の改善点として浮上した。アンバサダーを務めるサインツJr.は当初の設計への関与を否定する一方、ターン5、ターン1、ターン13を候補に挙げ、今後の改善に向けた具体的な方向性を示している。

  • メルセデスF1 ラッセルの意外な2ストップ戦略を解説「ルクレールと逆を選んだ」

    メルセデスF1 ラッセルの意外な2ストップ戦略を解説「ルクレールと逆を選んだ」

    メルセデスF1は、2026年F1スペインGPでジョージ・ラッセルに採用した意外な2ストップ戦略について、その狙いを明らかにした。ハードタイヤでスタートしながらVSC(バーチャル・セーフティカー)中にピットインしたのは、同じハードで前を走っていたシャルル・ルクレールと異なる戦略を取るためだった。

    オーバーテイクが極めて難しかったマドリンクでは、同程度のタイヤを履いたままルクレールの後方を走り続けても順位を上げる可能性は低かった。

    そこでメルセデスはラッセルをミディアムに交換し、その後再びハードへ戻す2ストップを選択。結果的にこの戦略はルクレールへのプレッシャーとなり、キミ・アントネッリの優勝にも間接的に貢献した。

    VSCはラッセルにとって「最悪のタイミング」
    ラッセルとルクレールはともにハードタイヤでF1スペインGPをスタートした。しかしVSCが導入されると、フェラーリはルクレールをコース上に残した一方、メルセデスはラッセルをピットへ呼び、ミディアムタイヤを装着した。

    ルクレールはそのまま首位を走り、45周目までピットストップを引き延ばした。対してラッセルはミディアムで約20周を走った後、28周目に再びピットインしてハードへ交換した。

    メルセデスF1の副チーム代表ブラッドリー・ロードは、VSCのタイミングそのものはラッセルにとって好都合ではなかったと説明した。

    「ジョージにとってVSCはまったく違う展開になった。彼はハードタイヤでスタートして長いスティントを走り、その後レース中に起こる何らかの出来事を利用するつもりだったから、最悪のタイミングでVSCが出たと言える」

    「彼は6番グリッドからハードタイヤでスタートし、1ストップで走る予定だった。VSCが出た時点で、ハードタイヤを履いているマシンの中ではフェラーリのルクレールに続く2台目だった。そのため、我々はジョージにルクレールと逆のことをさせた」

    同じ戦略ではルクレールを抜けないと判断
    メルセデスが戦略を変更した最大の理由は、マドリンクでのオーバーテイクの難しさだった。同じような使用歴のタイヤでルクレールの後ろを走り続ければ、そのまま順位が固定される可能性が高いと判断した。

    「なぜか。それをしなければ、彼はただルクレールの後ろについてフィニッシュまで走ることになったからだ」

    「アンダーカットできるチャンスは非常に、非常に限られていたし、同程度の使用歴のタイヤを履いたマシン同士では、オーバーテイクのチャンスは事実上なかった。そこでジョージにミディアムを履かせた」

    ただし、ミディアムでそのままチェッカーまで走り切ることは最初から想定していなかった。

    「そのミディアムが残り43周を持たないことは分かっていた。それでも違うことを試すことで、ジョージは約20周のスティントを走り、その後もう一度ハードに戻した。レースのできるだけ長い部分をハードで走りたかったからだ」

    「そこからジョージは本当に印象的なペースを発揮した」

    ジョージ・ラッセル(メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ)

    ラッセルの速さがルクレールのピットインを誘発
    新品タイヤを履いたラッセルのペースは、前方を走るルクレールに対してフェラーリが反応せざるを得ない状況を作り出した。

    「彼は十分に速く走っていたので、実際にはフェラーリが望んでいたよりも早くルクレールをピットに入れさせることができたと思う」

    「それによってルクレールをピットへ引き込み、前を走るキミにはクリーンエアが与えられた。同時にジョージも終盤、かなりデリケートだったソフトタイヤを履くルクレールにプレッシャーをかけることができた。そして最終的にはわずか0.7秒差でレースを終えた」

    ルクレールを予定より早くピットへ向かわせたことで、前方のアントネッリには自由に走れる状況が生まれた。メルセデスにとってラッセルの戦略は、自身の順位を上げるだけではなく、チームメイトのレース展開にも影響を与えるものとなった。

    ラッセル本人は「結局5位だったと思う」
    一方、ラッセル自身はレース後、戦略の違いが最終順位を大きく変えたとは考えていなかったという。

    「レース後、ジョージは非常に現実的だった。我々が何をしたかは、それほど重要ではなかったと思うと言っていた」

    「コース上に残していても、ピットストップさせていても、マドリンクではオーバーテイクがあれほど難しかったことを考えれば、どちらにしてもおそらく5位でフィニッシュしていただろう、と」

    結果としてラッセルは5位に終わったものの、メルセデスF1が選んだ2ストップは単純なタイヤ交換ではなく、ルクレールと同じ戦略から抜け出すための戦術的な判断だった。ラッセルの終盤のペースによってフェラーリに対応を迫り、アントネッリの前方を開ける効果も生み出したことで、チーム全体のレース展開に重要な役割を果たした。

  • ランド・ノリスのF1スポンサー騒動が皮肉な結末「今ごろコカ・コーラは笑っている」

    ランド・ノリスのF1スポンサー騒動が皮肉な結末「今ごろコカ・コーラは笑っている」

    ランド・ノリスが、2026年F1スペインGPの決勝後にコカ・コーラを飲んだことで思わぬ騒動の中心となった。表彰台前のクールダウンルームでF1関係者から注意を受けたノリスは「レースを終えたばかりだから、好きなものを飲む権利がある」と反論した。

    この一件について、元ハースF1チーム代表のギュンター・シュタイナーは、ノリスの行動を「プロフェッショナルではない」と指摘。

    一方で、F1側がわざわざ注意したことで、結果的にコカ・コーラに大きな宣伝効果を与えてしまったとの見方も示した。

    表彰台前のクールダウンルームで異例のやり取り
    マドリンクで行われたF1スペインGPで、ノリスはポールポジションからスタート。レースではバーチャル・セーフティカー(VSC)のタイミングに恵まれず、キミ・アントネッリ、マックス・フェルスタッペンに続く3位でフィニッシュした。

    レース後、ノリスは優勝したアントネッリ、2位のフェルスタッペンとともに、表彰台へ向かう前のクールダウンルームに入った。

    そこでレース映像を見ながらノリスが手にしていたのが、コカ・コーラの缶だった。

    すると、画面外にいた関係者から、その飲料を飲まないよう求められたとみられる。ノリスはまず、自分が注意されていることを確認するような反応を見せた後、関係者に対して言い返した。

    「僕は今レースを終えたばかりだから、好きなものを飲む権利がある。どうもありがとう」

    このやり取りが注目された背景には、F1とペプシコの商業契約がある。F1は2025年にペプシコとの複数年契約を発表しており、契約は2030年まで。さらに2026年からは、グランプリ会場におけるペプシコの幅広いソフトドリンクおよびスナック製品の供給がF1の商業展開に組み込まれている。

    そのため、F1の公式映像に映るクールダウンルームで競合ブランドであるコカ・コーラの商品が目立つ形で露出したことが、関係者の介入につながったとみられている。

    シュタイナー「プロならやらない」
    この一件について、『The Red Flags Podcast』で見解を求められたシュタイナーは、ノリスの対応に否定的な考えを示した。

    「プロフェッショナルなら、ああいうことはしない。それで終わりだ」

    「何をしてよくて、何をしてはいけないのかは分かっている。彼らはそういうことについて十分に教育されている。彼はやるべきではなかった」

    シュタイナーは、F1ドライバーであればスポンサーや商業契約に関するルールを理解しているはずだと指摘する。

    ただし、ノリスの行動そのものを重大な問題と捉えているわけではない。

    「彼がやったことは悪いことなのか? 誰かが傷つくのか? いや、そんなことはない。ただ、プロとしてはやるべきではない。でも彼はやった。それだけだ」

    「コカ・コーラにとってはいい宣伝になった」
    一方でシュタイナーは、今回の騒動には皮肉な側面があるとも指摘した。

    F1のスポンサー契約では、それぞれの商品カテゴリーごとに権利が設定されており、その対価を支払った企業のブランドが優先的に露出する仕組みになっている。

    「すべてカテゴリーごとに分かれている。彼らはその権利を販売しているわけだから、当然、お金を払っていなければそこには出せない。彼はコーラを持っていた。あれは最も賢いやり方ではなかった」

    しかし、F1関係者がノリスに注意したことで、もともとはほとんど注目されなかった可能性があるコカ・コーラの缶が、一気に話題の中心になった。

    「でも、僕は気にしていない。結果としてコカ・コーラにとってはかなりうまくいったからね。コカ・コーラにとってはいい宣伝になった」

    「もし誰も何も言わなかったら、誰も気づかなかっただろう。でも、あれだけ大きく取り上げられたことで話題になった。今ごろコカ・コーラは笑っているだろうね」

    実際、ノリスと関係者とのやり取りはSNSなどで拡散され、コカ・コーラを飲んでいたという事実以上に、なぜF1側がそれを止めようとしたのかが注目される結果となった。ノリスの反応を支持するファンの声も多く上がった。

    スポンサーの権利を守るための介入が、結果として競合ブランドの露出を拡大させる形となった今回の騒動。シュタイナーはノリスの行動をプロとして適切ではなかったとしながらも、F1側の対応がコカ・コーラに思わぬ宣伝効果をもたらしたという皮肉な結末を指摘した。

  • アストンマーティン・ホンダF1 マドリンクで最高速苦戦 アロンソは11.3km/h差

    アストンマーティン・ホンダF1 マドリンクで最高速苦戦 アロンソは11.3km/h差

    アストンマーティン・ホンダは、2026年F1第14戦スペインGPの舞台となったマドリンクで、最高速の面で苦しい数字を記録した。予選までのスピードトラップではフェルナンド・アロンソが298.0km/hで16番手、ランス・ストロールは296.8km/hで19番手にとどまった。

    トップはアウディのガブリエル・ボルトレトが記録した309.3km/h。アロンソは11.3km/h、ストロールは12.5km/hの差をつけられており、アストンマーティン・ホンダにとってストレートスピードが厳しい状況にあることを示すデータとなった。

    アロンソはトップから11.3km/h差
    マドリンクのスピードトラップはセクター1終盤、高速で駆け抜けるターン4付近に設置されている。最高速が伸びるポイントで、各マシンの空力設定や直線での速度特性の違いが表れた。

    最速だったボルトレトは309.3km/hを記録。チームメイトのニコ・ヒュルケンベルグも307.3km/hで2番手となり、アウディ勢がスピードトラップの上位2台を占めた。

    3番手はメルセデスのジョージ・ラッセルで306.7km/h。ハースのエステバン・オコンが306.5km/h、アルピーヌのピエール・ガスリーが304.9km/hで続いた。

    これに対してアロンソは298.0km/hで16番手。ボルトレトとの差は11.3km/hだった。ストロールはさらに低い296.8km/hで19番手となり、下回ったのはキャデラックのバルテリ・ボッタスとセルジオ・ペレスだけだった。

    レーシングブルズの角田裕毅は302.6km/hで10番手。アロンソより4.6km/h、ストロールより5.8km/h高い最高速を記録している。

    フィニッシュラインでもアストンマーティン勢は下位
    スタート/フィニッシュラインを通過した際の速度でも、アストンマーティン勢は下位に並んだ。

    アロンソは218.8km/hで20番手、ストロールは208.4km/hで21番手。トップはレッドブル・レーシングのマックス・フェルスタッペンで236.2km/hだった。

    ただし、フィニッシュライン通過速度はスピードトラップとは意味合いが異なる。スピードトラップが高速区間に設置された計測地点での速度なのに対し、フィニッシュラインの数値は最終コーナーからの立ち上がりや加速、ERSの使い方、計測時の走行状況などにも左右される。

    そのため、アロンソの218.8km/hやストロールの208.4km/hを、そのままマシンの「最高速」として比較することはできない。それでも、異なる計測地点でアストンマーティンの2台がともに下位に位置したのは興味深いデータだ。

    ポールのノリスは最高速9番手
    一方、マドリンクでは最高速がそのままラップタイムに直結しているわけではない。

    ポールポジションを獲得したマクラーレンのランド・ノリスは302.9km/hで9番手。ボルトレトより6.4km/h低い最高速ながら、コーナリングを含めたラップ全体では最速タイムを記録した。

    マックス・フェルスタッペンも302.4km/hで12番手、ルイス・ハミルトンは300.6km/hで14番手、オスカー・ピアストリは300.4km/hで15番手だった。

    マドリンクは高速区間に加え、中低速コーナーや90度コーナーが組み合わされたレイアウトであり、ダウンフォースを削って最高速を伸ばすことが必ずしも最速のセットアップになるわけではない。

    また、F1は開催前にマドリンクで340km/h前後の最高速に達する可能性を示していたが、実際のスピードトラップではトップでも309.3km/h。シミュレーションから実走へ移るなかで、各チームが実際のグリップやタイヤの挙動などに合わせた空力設定を選択した結果、事前予測には届かなかった。

    アストンマーティン・ホンダは今回、2台ともスピードトラップで下位に沈んだ。最高速だけでマシンやホンダF1パワーユニットの性能を切り分けることはできないものの、アロンソがトップから11.3km/h差という数字は、マドリンクで直線速度が強みになっていなかったことを示している。

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

    ■ F1スペインGP スピードトラップ
    1.ガブリエル・ボルトレト(アウディ)- 309.3km/h
    2.ニコ・ヒュルケンベルグ(アウディ)- 307.3km/h
    3.ジョージ・ラッセル(メルセデス)- 306.7km/h
    4.エステバン・オコン(ハース)- 306.5km/h
    5.ピエール・ガスリー(アルピーヌ)- 304.9km/h
    6.フランコ・コラピント(アルピーヌ)- 304.2km/h
    7.リアム・ローソン(レッドブル・レーシング)- 303.4km/h
    8.キミ・アントネッリ(メルセデス)- 303.3km/h
    9.ランド・ノリス(マクラーレン)- 302.9km/h
    10.角田裕毅(レーシングブルズ)- 302.6km/h
    11.アービッド・リンドブラッド(レーシングブルズ)- 302.6km/h
    12.マックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)- 302.4km/h
    13.アレクサンダー・アルボン(ウィリアムズ)- 301.2km/h
    14.ルイス・ハミルトン(フェラーリ)- 300.6km/h
    15.オスカー・ピアストリ(マクラーレン)- 300.4km/h
    16.フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)- 298.0km/h
    17.カルロス・サインツJr.(ウィリアムズ)- 297.4km/h
    18.シャルル・ルクレール(フェラーリ)- 297.2km/h
    19.ランス・ストロール(アストンマーティン)- 296.8km/h
    20.バルテリ・ボッタス(キャデラック)- 289.8km/h
    21.セルジオ・ペレス(キャデラック)- 289.5km/h

    ■ F1スペインGP フィニッシュライン通過速度
    1.マックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)- 236.2km/h
    2.リアム・ローソン(レッドブル・レーシング)- 235.4km/h
    3.ピエール・ガスリー(アルピーヌ)- 234.7km/h
    4.フランコ・コラピント(アルピーヌ)- 234.0km/h
    5.ランド・ノリス(マクラーレン)- 233.8km/h
    6.ニコ・ヒュルケンベルグ(アウディ)- 233.5km/h
    7.オスカー・ピアストリ(マクラーレン)- 233.3km/h
    8.ルイス・ハミルトン(フェラーリ)- 233.2km/h
    9.エステバン・オコン(ハース)- 232.6km/h
    10.アレクサンダー・アルボン(ウィリアムズ)- 232.6km/h
    11.シャルル・ルクレール(フェラーリ)- 232.4km/h
    12.カルロス・サインツJr.(ウィリアムズ)- 232.4km/h
    13.角田裕毅(レーシングブルズ)- 232.3km/h
    14.アービッド・リンドブラッド(レーシングブルズ)- 232.2km/h
    15.ガブリエル・ボルトレト(アウディ)- 231.6km/h
    16.バルテリ・ボッタス(キャデラック)- 231.5km/h
    17.セルジオ・ペレス(キャデラック)- 229.9km/h
    18.ジョージ・ラッセル(メルセデス)- 224.0km/h
    19.キミ・アントネッリ(メルセデス)- 223.5km/h
    20.フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)- 218.8km/h
    21.ランス・ストロール(アストンマーティン)- 208.4km/h

  • F1スペインGPで警察官がカメラマンを拘束か 表彰式直前に「首を絞める」騒動

    F1スペインGPで警察官がカメラマンを拘束か 表彰式直前に「首を絞める」騒動

    2026年F1スペインGPで、長年F1を撮影してきた著名フォトグラファー、ピーター・フォックスが、表彰式へ向かう途中でスペイン国家警察の警察官に拘束される騒動が発生した。SNSに公開された写真には、警察官がフォックスの首付近に腕を回して押さえているように見える場面が収められている。

    Getty Imagesで活動し、ウィリアムズとも契約しているフォックスは、FIAの認定を受けたフォトグラファーとして表彰式へ向かっていたとされる。

    現場を捉えた動画では、ウィリアムズの公式チームウェアを着たフォックスが地面で拘束されている様子も確認できる。

    FIA認定カメラマンと警察官が衝突
    問題が発生したのは、初開催となったマドリンクでのF1スペインGP決勝終了後、表彰式が始まる直前だった。

    フォックスは、認定フォトグラファーが表彰台へ移動するために用意された通路を使ってポディウムへ向かおうとしていたが、警備にあたっていたスペイン国家警察(Policía Nacional)の警察官に制止されたという。

    スペインのモータースポーツフォトグラファー兼ジャーナリスト、ダニエル・アタンが撮影した写真はSNSで広まり、警察官がフォックスの背後から首付近に腕を回して拘束しているように見える場面が確認できる。

    アタンはXで次のように状況を説明した。

    「今日起きた完全にシュールな出来事。マドリードで、フォトグラファー用に用意された通路を通って表彰台へ行こうとしたカメラマンに、警察官がチョークホールドをかけた」

    別のSNS投稿では、警察官が「クレデンシャルによって立ち入る権利がある場所へ行こうとしたフォトグラファーに暴行し、地面に投げ倒した」と主張されている。また、フォックスは当時、約1万5000ユーロ相当の撮影機材を所持していたとも伝えられている。

    長年F1を撮影するピーター・フォックス
    フォックスはGetty Imagesで活動するとともに、ウィリアムズとも契約しているベテランのF1フォトグラファーだ。

    長年にわたってグランプリを撮影してきた人物で、Crash.netは代表的な作品のひとつとして、2016年F1日本GPで鈴鹿サーキットのデグナーを走行するニコ・ロズベルグを捉えた写真を挙げている。

    今回の騒動が発生した際にも、フォックスはウィリアムズの公式チームウェアを着用し、認定フォトグラファーであることを示すクレデンシャルを身につけていた。

    その後SNSに投稿された短い動画には、フォックスが地面で警察官に拘束されている場面も映っており、写真だけでなく映像でも現場の様子が拡散されている。


    同業カメラマン「何十年もF1を取材してきたプロ」
    F1フォトグラファーのジェイミー・プライスもSNSでフォックスについて言及し、長年F1の現場で活動してきた同僚を擁護した。

    「ここで何があったのか、すべての事情を知っているわけではない。ただ、チョークホールドをかけられているフォトグラファーのことは知っている。彼は何十年にもわたってF1を取材してきた長年のプロフェッショナルだ」

    そのうえでプライスは、自身もレース会場で警察や警備担当者と接してきた経験があるとして、「自分自身の豊富な経験から言えば、まったく驚いていない」と付け加えた。

    ただし、プライス自身も「事情を知らない」と明記しており、警察官がフォックスを制止するに至った具体的な経緯について証言しているわけではない。

    警察側が制止した理由は現時点で不明
    一方、フォックスが認定フォトグラファー用の通路を進もうとしたにもかかわらず、なぜ警察官に制止されたのかは明らかになっていない。

    公開された写真や映像は拘束が行われた場面とその前後を捉えたもので、そこに至るまでにフォックスと警察官の間でどのようなやり取りがあったのか、その全容までは確認できない。

    Motorsport Weekも警察側がこの対応を取った「正確な理由はまだ分かっていない」と報じている。

    FIAの認定を受け、ウィリアムズのチームウェアとクレデンシャルを身につけたベテランF1フォトグラファーが、表彰式へ向かう途中で警察官に拘束された今回の一件。SNSで写真や映像が広く拡散されるなか、主催者や警察側から経緯について説明が行われるかが注目される。

  • マックス・フェルスタッペン 2ポジション返還に激怒 レッドブルF1「苦渋の決断」

    マックス・フェルスタッペン 2ポジション返還に激怒 レッドブルF1「苦渋の決断」

    マックス・フェルスタッペンがF1スペインGPの序盤に2つのポジションを返すよう指示された判断について、レッドブル・レーシングのチーム代表ローラン・メキースが説明した。

    フェルスタッペンはスタート直後にルイス・ハミルトンと争った際、ターン1でコース外を通過して3番手を維持。その後、キミ・アントネッリを抜いて2番手に浮上したが、レッドブルはハミルトンとの一件でペナルティを科されるリスクを避けるため、ポジションを返すよう指示した。

    しかし、その時点でアントネッリがハミルトンとの間に入っていたため、フェルスタッペンはハミルトンだけでなくアントネッリも先行させる必要があり、一気に2つのポジションを失うことになった。

    フェルスタッペン「何を言ってるんだ?」
    スタートではハミルトンがフェルスタッペンの前に出たものの、両者はターン1で激しく争った。フェルスタッペンはコース外へ逃れ、ハミルトンの前でコースに復帰した。

    ハミルトンは無線で、フェルスタッペンがポジションを返す必要があると主張。その無線はレースコントロールも聞くことができる。

    一方、フェルスタッペンは自分がコース外に出なければ接触していたと考えており、レースエンジニアのジャンピエロ・ランビアーゼからポジションを返すよう伝えられると強く反発した。

    「一体何を言ってるんだ? あいつはぶつけてきていただろ。何を言ってるんだ? あそこでコース上に残っていたら、僕はレースを終えていた」

    それでもフェルスタッペンは4周目にチームの指示に従い、アントネッリとハミルトンを先行させた。

    レッドブルは自主的にポジション返還を決断
    重要なのは、この指示がFIAのレースコントロールから出されたものではなかったことだ。

    レッドブル側が映像を確認し、フェルスタッペンがそのままポジションを維持した場合、スチュワードによる審議でタイムペナルティを受ける可能性があると判断。レース序盤でポジションを返し、その後に挽回する方が得策だと結論づけた。

    メキースはF1 TVに次のように説明した。

    「もちろん、常に痛みを伴う難しい決断になる。だが、ピットウォールのスタッフは非常にしっかりと状況を確認し、素早く分析した。我々は迅速に決断しなければならなかったからだ」

    「もちろん、あの瞬間にマックスから『ありがとう』というメールが届くとは思っていなかった」

    フェルスタッペンが無線で激しく反発したことについても、メキースにとっては想定外ではなかった。

    「我々としては、その時点で痛みを受け入れ、その後に反撃する方がいいと考えた。マックスはいつものように、それを非常にうまくやってくれた」

    「そのまま待って、後になってより大きなペナルティを受けるリスクを冒すより、その方が良かった。後からのペナルティは、さらに大きな代償になる可能性があった」

    ローラン・メキース(レッドブル・レーシング)

    「5秒か10秒のペナルティになっていた」
    メキースによれば、レッドブルがポジションを返さなかった場合、FIAから後になって「ポジションを返せ」と指示されるわけではない。

    スチュワードによる審議に回され、タイムペナルティが科される可能性が高かったという。

    「スチュワードの判断として、ポジションを返すよう命じられることはない。その場合、我々は単純に5秒か10秒のペナルティを受けていただろう。それは彼らの裁量になる」

    「セーフティカーなど、さまざまなレース展開を想像すれば分かると思うが、そうしたペナルティは1つ、あるいは2つのポジションを失うより、はるかに大きな代償になる可能性がある」

    実際、フェルスタッペンがポジションを返した直後、ハミルトンはブレーキトラブルによってリタイアした。

    仮にレッドブルが判断を先延ばしにし、ハミルトンがリタイアした後までフェルスタッペンを前に走らせていれば、物理的にポジションを返すことは不可能になっていた。

    「幸い、マックスはルイスがリタイアする前にポジションを返し、そこからレースを戦い続けることができた」

    レースコントロールに確認する時間はなかった
    レッドブルがFIAに確認してから判断することはできなかったのかという点について、メキースはレース中にはその時間的余裕がなかったと説明する。

    「レース後なら非常にオープンに話すことができる。もちろん、レースコントロールと話すこともあるし、スチュワードと直接話して彼らの見解を聞くこともある」

    「今回についてもチームはそうすると思う。我々は常に意見を交換し、そこから学んでいる。ただ、あの瞬間には相談している時間はそれほどなく、決断を下さなければならなかった」

    結果的にフェルスタッペンはその後ポジションを取り戻し、バーチャルセーフティカーのタイミングも生かして2位まで挽回。優勝したアントネッリに続いてチェッカーを受けた。

    メキースは、序盤に2ポジションを手放したことが勝利を逃した決定的な要因だったとは考えていない。

    「もちろんフラストレーションはある。だが、公平に見れば、今日は2位が我々に達成できた絶対的なベストだったと思う」

    レッドブルにとっては、その場で2ポジションを失うことよりも、レース後半に5秒あるいは10秒のタイムペナルティを抱えるリスクの方が大きかった。フェルスタッペンの激しい反発を承知のうえで下した即断は、最終的に2位を確保するためのリスク管理だったとメキースは強調している。

  • F1スペインGP初開催でオーバーテイク不足 マドリンクが2027年に3カ所改修へ

    F1スペインGP初開催でオーバーテイク不足 マドリンクが2027年に3カ所改修へ

    初開催となったF1スペインGPで追い抜きの難しさが浮き彫りとなったマドリンクは、2027年に向けてコースの3カ所を改修する方針を固めた。ターン5〜6、ターン13、ターン20が対象となり、より明確なオーバーテイクの機会を生み出すことを目指す。

    マドリンクは予選ではドライバーから高い評価を受けた一方、決勝ではポジション変動が極めて少ない展開となった。こうした問題は開幕前から懸念されており、今回検討されている改修案の一部は、実際には初開催のF1スペインGPを迎える前から浮上していたという。

    追い抜きの少なさが初開催で露呈
    マドリンクで行われた初のF1スペインGPでは、スタート直後を除いてコース上での追い抜きがほとんど見られなかった。

    F1は各グランプリの追い抜き回数について統一された公式集計を公表していないものの、マドリードでは今季でも特に少ないレベルだったとみられている。一部の推計では、1周目以降の追い抜きはわずか4回で、モナコGPを下回った可能性さえある。

    数少ない動きとしては、リアム・ローソンがフランコ・コラピントをオーバーテイクし、その後ジョージ・ラッセルがローソンを攻略した場面などがあった。

    ハードタイヤのデグラデーションが小さかったことも、レースを膠着させた要因のひとつだった。タイヤ性能に大きな差が生まれず、異なる戦略を採用したマシン同士でも十分なペース差が発生しなかった。

    ただし、それ以上に大きな問題とされたのが、現在のマドリンクには明確なオーバーテイクポイントが存在しないことだった。

    コースそのものについては、高速区間や壁に囲まれたセクション、そして大きなバンク角を持つラ・モニュメンタル(La Monumental)などがドライバーに高い難易度を要求し、特に予選では高く評価された。

    一方、決勝で前車を抜くとなると話は別だった。

    ターン5〜6のシケインを拡幅へ
    最大の問題として指摘されているのが、ターン5〜6のシケインだ。

    序盤のコーナー群を抜けた後の長い加速区間の先に位置するため、本来であれば有力なオーバーテイクポイントになり得る。しかし、現在のレイアウトではシケインへの進入が非常にタイトで、2台が並んでブレーキングできるだけの自由度がない。

    オリバー・ベアマンも週末前から、このレイアウトについて懸念を示していた。

    「こういうコーナリングしながらのブレーキングでは、違うラインを取ってイン側から仕掛ける可能性がなくなってしまう。残念だし、設計上で少し見落とされた部分なのかもしれない」

    もっとも、現在の形状になった背景には安全上の理由もある。

    ターン5〜6の出口にはトンネル区間があり、マシンがそこへ進入する速度や角度を考慮する必要がある。ランオフエリアにも制約があり、単純にストレートを延長して強いブレーキングゾーンを設けることは難しかった。

    それでも初開催の決勝で問題が明確になったことで、2027年に向けてターン5〜6のアプローチとシケインそのものを広げる方向で検討が進められる。

    今回のレースではコーナーへの進入形状と縁石の配置によって、2台がクリーンに並走するスペースが十分ではなかった。そのため、前車を抜くには非常にアグレッシブな仕掛けが必要となり、相手をコース外へ押し出すリスクも高かった。

    ターン13を強いブレーキングゾーンに変更か
    2カ所目の改修候補はターン13だ。

    ラ・モニュメンタルの直後に位置する左コーナーで、現在は中速で通過するレイアウトとなっている。

    ラ・モニュメンタルで前車のスリップストリームを利用できても、ターン13で十分に大きな減速が必要ないため、そのままブレーキング勝負へ持ち込むことが難しい。

    そこでターン13を現在よりタイトな形状に変更し、より明確なブレーキングゾーンを作る案が検討されている。

    これが実現すれば、ラ・モニュメンタルからターン13までの区間で前車に接近し、ブレーキングでイン側へ飛び込むという新たな攻防が期待できる。

    ターン20の“ボトルネック”も解消へ
    3カ所目はターン20だ。

    マドリンクでも特にタイトなコーナーのひとつだが、現在はバリアの配置によって進入部分がボトルネックのように狭くなっている。

    そのため、前車のイン側に飛び込むスペースが限られており、仮に並びかけても出口まで安全に2台が走れる余裕が少ない。

    2027年に向けてはコーナー進入部の形状とバリアの配置を変更し、ドライバーがより安心してオーバーテイクを仕掛けられるスペースを確保することが検討される。

    今後数週間でマドリンク側、FIA、F1チーム、ドライバーの間で協議が行われ、具体的な変更内容が詰められる予定だ。

    実は初開催前から3カ所の改修を検討
    興味深いのは、今回対象となった3カ所の変更が、F1スペインGPの決勝を受けて初めて考えられたものではないという点だ。

    ターン5〜6、ターン13、ターン20の変更案は、追い抜きが難しくなる可能性への懸念から、初開催前の段階ですでにFIAへ提案されていた。

    しかし、マドリンクの建設スケジュールには余裕がなかった。

    コース建設は2025年4月に始まり、さらにマドリードを襲った非常に雨の多い冬によって工事が遅延。レイアウトを変更する場合には新たなシミュレーションや安全性の検証、FIAによる承認手続きを行う必要があり、初開催に間に合わせるにはリスクが大きすぎると判断された。

    変更を急いだ結果、ホモロゲーションや建設そのものが遅れれば、F1スペインGPの開催に影響する可能性もあった。

    特にマドリンクは一般的な常設サーキットとは異なり、道路の変更だけでなく、鉄道や航空関連の事業者、緊急サービス、水道・排水、環境関連の当局など、多数の関係機関との調整を必要とする。

    ターン5〜6についても、出口に位置するトンネルの存在によって設計の自由度が制限された。トンネルへ向かうマシンの進入角度や速度、限られたランオフエリアなどを考慮する必要があったためだ。

    こうした事情から、まず2026年の初開催を現在のレイアウトで実施し、その結果を踏まえて2027年に変更する方が現実的だと判断された。

    マドリンク F1 スペイングランプリ

    ルクレール「小さな変更で大きく変わる」
    ドライバー側も、マドリンクそのものを否定的に評価しているわけではない。

    シャルル・ルクレールは、予選でのドライビングという点では非常に魅力的なサーキットだと評価したうえで、決勝についてはわずかな変更だけでも大きな改善につながると考えている。

    「素晴らしいサーキットだし、特に予選については、今のレイアウトを作った全員が本当に素晴らしい仕事をしたと思う」

    「でもレースになると、いくつかのコーナーが……大きな変更が必要だとは思わない。小さな変更、あるいは2つくらいの小さな変更だけでも、僕たちがここでやるレースは大きく変わると思う」

    重要なのは、サーキット全体で数多くのオーバーテイクポイントを作ることではなく、確実に勝負できる場所を少なくともひとつ設けることだ。

    その代表例として挙げられるのがマカオだ。市街地コースの大部分は狭く曲がりくねっているため追い抜きは難しいが、長いストレートの先にあるリスボアでは、タイトなコーナーでありながら進入部分に十分な幅があり、ブレーキング勝負が可能になっている。

    サインツJr.「バクーやマカオを参考に」
    マドリンクのアンバサダーでもあるカルロス・サインツJr.も、今後FIAとコース変更について話し合う意向を示している。

    サインツJr.は、成功している市街地サーキットの特徴としてバクーとマカオを挙げた。

    「バクーやマカオのような良い市街地サーキットには、非常に長いストレートの先に、本当に追い抜ける場所がひとつあることが多い」

    そのうえで、マドリンクでも同様の場所を作れるかを検討すべきだと語った。

    「そうだね。どこにそういうオーバーテイクゾーンを追加できるのかを見て、それが実現可能かどうかを確認するだけだと思う」

    マドリンクは初開催で、予選ではドライバーの技量を試すチャレンジングなコースとして一定の評価を得た一方、決勝では追い抜きの少なさという明確な課題を残した。

    ターン5〜6、ターン13、ターン20という3カ所の改修案は、その弱点を解消しながら現在のコースが持つ個性を残すことを狙ったものとなる。初開催では安全性や建設スケジュール、ホモロゲーションを優先したマドリンクだが、2027年にはよりバトルを生み出せるF1サーキットへと進化することになりそうだ。