アウディF1チームは、2026年F1イタリアGPで角田裕毅にペナルティを科さなかったFIAスチュワードの裁定について、正式に上訴を提出したことを明らかにした。
モンツァでは、赤旗後の再スタートを前に角田裕毅のグリッドへの進入と停車姿勢を受けて追加のフォーメーションラップが実施された。角田はスタート手順違反の可能性について審議されたものの、スチュワードは「これ以上の措置は取らない」と判断。角田は10位でフィニッシュし、今季初ポイントとなる1ポイントを獲得した。
アウディが96時間以内に正式上訴
アウディはレース後、FIAスポーティングレギュレーション第B5.9.4条の適用について異議を唱え、まず上訴の意思を通知していた。
この手続きによって与えられた96時間の猶予期間内に、アウディは正式に上訴するかどうかを検討。その結果、チームは実際に上訴手続きを進めることを決断した。
アウディF1チームは声明で正式な上訴提出を認めた。
「イタリアGP後、チームは第B5.9.4条の適用について懸念を提起した。この規則では、追加のフォーメーションラップを引き起こしたドライバーはピットレーンに入り、そこからレースを再開することが義務づけられている」
「規則で定められた96時間以内に上訴を提出したことを確認できる。現在、この件はFIAの上訴手続きの対象となっているため、現段階ではこれ以上のコメントは差し控える」
争点となっている第B5.9.4条では、追加のフォーメーションラップを引き起こし、その追加フォーメーションラップに参加できるドライバーについて、ラップ終了時にピットレーンへ入り、ピットレーン出口からスタートしなければならないと規定されている。
角田裕毅は正しいグリッド枠内に停止
問題が起きたのは、シャルル・ルクレールのクラッシュによる赤旗後の再スタートだった。
14番グリッドからスタートする角田裕毅は、グリッドへ向かう際に当初反対側へ進入しかけた後、進路を修正。最終的には指定された14番グリッドの枠内にマシンを停止させたものの、マシンはピットウォール側へ向いた斜めの状態になっていた。
レースディレクターのルイ・マルケスは、この状態のままスタートさせることに不安があるとしてスタートを中止し、追加のフォーメーションラップを指示した。
そのため、角田が追加フォーメーションラップを「引き起こしたドライバー」に該当するのかが争点となった。
レース後に審議したスチュワードは、角田のマシンがグリッド枠内に正しく収まっており、他のドライバーにも影響を与えていなかったことなどを考慮した。
さらにマルケス自身が、追加フォーメーションラップは角田の違反によって自動的に必要になったものではなく、マシンの進入時の動きを見た自身の判断だったと説明した。
スチュワードはこれを踏まえ、追加フォーメーションラップは「22号車のドライバーによって直接引き起こされたものではなく、レースディレクターによる状況判断の結果だった」と結論づけた。
レーシングブルズにも角田にも通知なし
もうひとつ重要なポイントとなったのが、レースコントロールからレーシングブルズにも角田裕毅にも、追加フォーメーションラップの原因が22号車であるとの通知がなかったことだ。
第B5.9.4条に従うのであれば、原因となったドライバーは追加フォーメーションラップ終了時にピットへ入り、ピットレーンからスタートする必要がある。
しかしスチュワードは、その義務を履行するためには、ドライバー側が自分が追加フォーメーションラップの原因だと認識している必要があると指摘した。
レーシングブルズ側は、過去にはフォトグラファーの位置など、ドライバーとは無関係の外的要因によって追加フォーメーションラップが実施されたケースもあると主張した。
今回、チームにもドライバーにも原因が角田であるとのメッセージは送られていなかった。
さらに角田のマシン自体は指定されたグリッド枠内に収まっていたため、スチュワードはレーシングブルズに角田をピットレーンへ向かわせる理由はなかったと判断。最終的にペナルティを科さないことを決定した。

アウディは規則を「明確」と主張
一方、アウディ側はこの解釈に異議を唱えている。
アウディは、レースディレクターが角田のマシンの状態を理由にスタートを中止して追加フォーメーションラップを指示した以上、第B5.9.4条に照らせば角田がその原因になったと考えるべきだとの立場だ。
つまり、レーシングブルズや角田に原因であることが通知されていたかどうかとは別に、角田は追加フォーメーションラップ終了時にピットレーンへ入り、そこから再スタートする必要があったという主張になる。
アウディは、この規則の文言は明確であると考えており、今回の上訴を通じて今後同様のケースが発生した場合の規則適用について明確化することも求めている。
ボルトレト「正しいことは正しい」
今回の上訴結果によって直接利益を得る可能性があるのが、アウディのガブリエル・ボルトレトだ。
イタリアGPで角田裕毅は10位、ボルトレトは11位でフィニッシュした。角田の結果に十分なペナルティが加算されて順位が逆転すれば、ボルトレトが10位に繰り上がり、1ポイントを獲得することになる。
F1スペインGPを前にマドリードでアウディの上訴について質問されたボルトレトは、規則は明確だとの考えを示した。
「ルールとしてはかなり明確だと思う。ドライバーが追加のフォーメーションラップを引き起こした場合、そのドライバーはピットレーンからスタートしなければならない。でも、あのケースで裕毅はそうしなかった」
「だから、それがアウディが上訴している理由だと思う。僕たちは結果について上訴している。僕たちにとっては、順位が上がれば1ポイントになるからね。すべてのポイントが重要だし、結局のところ、正しいことは正しいと思う」
今季11位が多すぎるのではないかと冗談交じりに問われると、ボルトレトは「ちょっと多すぎるね。僕が望んでいるよりも多いよ」と答えた。
角田裕毅にとってイタリアGPの10位は、レーシングブルズ復帰2戦目で手にした今季初ポイントだった。一方、11位だったアウディにとっては、わずか1つの順位が選手権ポイントを左右する。
上訴の焦点は、追加フォーメーションラップを実施する直接の判断を下したのがレースディレクターであっても、その判断のきっかけとなったドライバーを第B5.9.4条上の「原因」とみなすのかという点にある。FIAの上訴手続きによる結論次第では、角田のイタリアGPでの10位と今季初ポイントにも影響が及ぶ可能性がある。
