アウディは、F1プロジェクトへの外部投資家からの関心が高まるなか、さらなる資本受け入れに門戸を開いている。ただし、チームの主導権を手放す考えはない。
フォルクスワーゲン・グループ全体でコスト削減が進められるなか、アウディのF1参戦計画の財務面にも関心が集まっている。しかし、アウディCEOのゲルノート・デルナーはF1スペインGPが行われたマドリンクで、プロジェクトには十分な資金基盤があり、計画を変更する理由はないと強調した。
アウディF1は2030年までに損益分岐点へ
アウディは2026年からワークスチームとしてF1に参戦している。フォルクスワーゲン・グループが幅広いコスト削減策を進めていることから、F1プログラムへの影響も注目されている。
デルナーは、F1参戦に向けた財務計画は十分な準備を経て構築されたものだと説明した。
「我々はF1参戦に向けて非常に綿密な準備を行い、強固な資金基盤とパートナーを備えたプロジェクトを構築した」
さらに、現在のビジネスプランは予定通り進んでいるとして、方針転換の必要性を否定した。
「我々のビジネスプランでは、2030年までに損益分岐点に到達する。我々は計画を堅持しており、何かを変更する理由はない」
新たな投資家に門戸も「チームの支配権は維持する」
アウディF1にはすでに大規模な外部資本が入っている。カタールの政府系ファンドは、アウディがワークスチームとして正式参戦する以前に、チームの約3分の1とされる少数株式を取得した。
そして現在、ほかの投資家からも関心が寄せられているという。デルナーは追加の資本受け入れを否定しなかった一方、アウディがチームの支配権を維持することは明確にした。
「ほかの潜在的なパートナーからも多くの関心が寄せられている。しかし、我々は常にチームの支配権を維持する」
その理由について、デルナーはF1特有の意思決定の速さを挙げた。
「F1チームを民主的なマネジメントスタイルで運営することはできるかもしれない。しかし、それでは決して十分な速さで動けない」
「パートナーには我々を信頼してもらい、レーシングチームの運営そのものは我々に任せてもらう必要がある」

V8エンジン復活でもアウディF1参戦に影響なし
アウディは市販車事業で電動化を重要な柱に据えている。一方、F1では2030~2031年以降の将来的なパワーユニット規則をめぐり、V8エンジンを軸とする方向性も議論されている。
こうした動きがアウディの電動化戦略と矛盾する可能性について問われたデルナーは、その見方を否定した。
「いや、そこまでの問題だとは考えていない」
ただし、アウディにとって譲れない条件がひとつある。それが持続可能燃料の継続使用だ。
「燃料は引き続き持続可能なものでなければならない。それは我々にとって重要だ。そこは我々にとってレッドラインになる。ただし、それ自体は議論の対象にはなっていない」
つまり、将来的にF1がV8エンジンへ移行したとしても、持続可能燃料という基本原則が維持される限り、それだけでアウディの参戦方針が揺らぐことはないという立場だ。
ヒュルケンベルグとボルトレトのコンビを高く評価
スポーツ面では、デルナーはニコ・ヒュルケンベルグとガブリエル・ボルトレトのドライバーラインアップにも満足している。
特にヒュルケンベルグについては、そのパフォーマンスや中期的な将来をめぐる憶測もあるが、デルナーは明確な支持を示した。
「我々はヒュルケンベルグとボルトレトの両方に非常に満足している。2人ともアウディF1チームのために同じ方向を向いて取り組んでいる」
また、ドイツメーカーであるアウディにとって、ヒュルケンベルグがドイツ人であることにも一定の意味があると認めた。
「ニコがドイツ人であることは、アウディ社内において特別な価値を持っている」
ただし、国籍がドライバー選考を左右するわけではないと付け加えた。
「もちろん、それによってパフォーマンスがチーム編成を決める基準であるという原則が変わることはない。それでも、我々は2人をチーム全体を引き上げてくれる素晴らしいコンビだと考えている」
ドイツGP復活を希望もアウディによる資金援助は否定
アウディは、F1カレンダーへのドイツGP復活についても前向きな姿勢を示している。ただし、レース開催のためにメーカー自身が資金を拠出する計画はない。
「我々が財政的に参加する計画はない」
「自動車メーカーとして我々にできるのは、チームを参戦させることで貢献することだ。しかし、そのようなイベントを実現するためには、ほかの関係者が動き、構築していかなければならない」
フォルクスワーゲン・グループを取り巻くコスト削減圧力が続くなかでも、アウディはF1プロジェクトを長期的な事業として位置づけている。外部資本のさらなる受け入れには柔軟な姿勢を示す一方、チーム運営の主導権、持続可能燃料、そしてパフォーマンスを軸とするドライバー選考という基本方針については明確な一線を引いている。

















