カテゴリー: F1イタリアGP

  • アウディF1 角田裕毅のイタリアGP無罰裁定を正式上訴 1ポイント巡る争い

    アウディF1 角田裕毅のイタリアGP無罰裁定を正式上訴 1ポイント巡る争い

    アウディF1チームは、2026年F1イタリアGPで角田裕毅にペナルティを科さなかったFIAスチュワードの裁定について、正式に上訴を提出したことを明らかにした。

    モンツァでは、赤旗後の再スタートを前に角田裕毅のグリッドへの進入と停車姿勢を受けて追加のフォーメーションラップが実施された。角田はスタート手順違反の可能性について審議されたものの、スチュワードは「これ以上の措置は取らない」と判断。角田は10位でフィニッシュし、今季初ポイントとなる1ポイントを獲得した。

    アウディが96時間以内に正式上訴
    アウディはレース後、FIAスポーティングレギュレーション第B5.9.4条の適用について異議を唱え、まず上訴の意思を通知していた。

    この手続きによって与えられた96時間の猶予期間内に、アウディは正式に上訴するかどうかを検討。その結果、チームは実際に上訴手続きを進めることを決断した。

    アウディF1チームは声明で正式な上訴提出を認めた。

    「イタリアGP後、チームは第B5.9.4条の適用について懸念を提起した。この規則では、追加のフォーメーションラップを引き起こしたドライバーはピットレーンに入り、そこからレースを再開することが義務づけられている」

    「規則で定められた96時間以内に上訴を提出したことを確認できる。現在、この件はFIAの上訴手続きの対象となっているため、現段階ではこれ以上のコメントは差し控える」

    争点となっている第B5.9.4条では、追加のフォーメーションラップを引き起こし、その追加フォーメーションラップに参加できるドライバーについて、ラップ終了時にピットレーンへ入り、ピットレーン出口からスタートしなければならないと規定されている。

    角田裕毅は正しいグリッド枠内に停止
    問題が起きたのは、シャルル・ルクレールのクラッシュによる赤旗後の再スタートだった。

    14番グリッドからスタートする角田裕毅は、グリッドへ向かう際に当初反対側へ進入しかけた後、進路を修正。最終的には指定された14番グリッドの枠内にマシンを停止させたものの、マシンはピットウォール側へ向いた斜めの状態になっていた。

    レースディレクターのルイ・マルケスは、この状態のままスタートさせることに不安があるとしてスタートを中止し、追加のフォーメーションラップを指示した。

    そのため、角田が追加フォーメーションラップを「引き起こしたドライバー」に該当するのかが争点となった。

    レース後に審議したスチュワードは、角田のマシンがグリッド枠内に正しく収まっており、他のドライバーにも影響を与えていなかったことなどを考慮した。

    さらにマルケス自身が、追加フォーメーションラップは角田の違反によって自動的に必要になったものではなく、マシンの進入時の動きを見た自身の判断だったと説明した。

    スチュワードはこれを踏まえ、追加フォーメーションラップは「22号車のドライバーによって直接引き起こされたものではなく、レースディレクターによる状況判断の結果だった」と結論づけた。

    レーシングブルズにも角田にも通知なし
    もうひとつ重要なポイントとなったのが、レースコントロールからレーシングブルズにも角田裕毅にも、追加フォーメーションラップの原因が22号車であるとの通知がなかったことだ。

    第B5.9.4条に従うのであれば、原因となったドライバーは追加フォーメーションラップ終了時にピットへ入り、ピットレーンからスタートする必要がある。

    しかしスチュワードは、その義務を履行するためには、ドライバー側が自分が追加フォーメーションラップの原因だと認識している必要があると指摘した。

    レーシングブルズ側は、過去にはフォトグラファーの位置など、ドライバーとは無関係の外的要因によって追加フォーメーションラップが実施されたケースもあると主張した。

    今回、チームにもドライバーにも原因が角田であるとのメッセージは送られていなかった。

    さらに角田のマシン自体は指定されたグリッド枠内に収まっていたため、スチュワードはレーシングブルズに角田をピットレーンへ向かわせる理由はなかったと判断。最終的にペナルティを科さないことを決定した。

    アウディ F1 角田裕毅

    アウディは規則を「明確」と主張
    一方、アウディ側はこの解釈に異議を唱えている。

    アウディは、レースディレクターが角田のマシンの状態を理由にスタートを中止して追加フォーメーションラップを指示した以上、第B5.9.4条に照らせば角田がその原因になったと考えるべきだとの立場だ。

    つまり、レーシングブルズや角田に原因であることが通知されていたかどうかとは別に、角田は追加フォーメーションラップ終了時にピットレーンへ入り、そこから再スタートする必要があったという主張になる。

    アウディは、この規則の文言は明確であると考えており、今回の上訴を通じて今後同様のケースが発生した場合の規則適用について明確化することも求めている。

    ボルトレト「正しいことは正しい」
    今回の上訴結果によって直接利益を得る可能性があるのが、アウディのガブリエル・ボルトレトだ。

    イタリアGPで角田裕毅は10位、ボルトレトは11位でフィニッシュした。角田の結果に十分なペナルティが加算されて順位が逆転すれば、ボルトレトが10位に繰り上がり、1ポイントを獲得することになる。

    F1スペインGPを前にマドリードでアウディの上訴について質問されたボルトレトは、規則は明確だとの考えを示した。

    「ルールとしてはかなり明確だと思う。ドライバーが追加のフォーメーションラップを引き起こした場合、そのドライバーはピットレーンからスタートしなければならない。でも、あのケースで裕毅はそうしなかった」

    「だから、それがアウディが上訴している理由だと思う。僕たちは結果について上訴している。僕たちにとっては、順位が上がれば1ポイントになるからね。すべてのポイントが重要だし、結局のところ、正しいことは正しいと思う」

    今季11位が多すぎるのではないかと冗談交じりに問われると、ボルトレトは「ちょっと多すぎるね。僕が望んでいるよりも多いよ」と答えた。

    角田裕毅にとってイタリアGPの10位は、レーシングブルズ復帰2戦目で手にした今季初ポイントだった。一方、11位だったアウディにとっては、わずか1つの順位が選手権ポイントを左右する。

    上訴の焦点は、追加フォーメーションラップを実施する直接の判断を下したのがレースディレクターであっても、その判断のきっかけとなったドライバーを第B5.9.4条上の「原因」とみなすのかという点にある。FIAの上訴手続きによる結論次第では、角田のイタリアGPでの10位と今季初ポイントにも影響が及ぶ可能性がある。

  • アストンマーティンF1 キャデラックに直線だけで1秒差 ホンダPUに約50馬力不足説

    アストンマーティンF1 キャデラックに直線だけで1秒差 ホンダPUに約50馬力不足説

    アストンマーティンF1は、2026年F1イタリアGPでホンダ製パワーユニット(PU)の深刻なパワー不足を露呈した。モンツァではストレートだけでキャデラックに1秒以上を失っていたとされ、その出力差は約50馬力に達するとの推測まで浮上している。

    ハンガリーGPとオランダGPで投入されたホンダPUのアップグレードによって一時は改善の兆しを見せていたものの、パワー感度の高いモンツァでは再び弱点が表面化。

    フェルナンド・アロンソとランス・ストロールは予選で最後列に沈み、アストンマーティンにとって厳しい現実を突きつけられる週末となった。

    キャデラックにストレートだけで1秒以上の遅れ
    アストンマーティンは2026年シーズン序盤、完走することさえ難しい状況に苦しんだ。その後、ブダペストとザントフォールトでホンダPUのアップグレードを投入し、オランダGPではアロンソが9位に入り、チームの今季最高成績を記録した。

    しかし、高速のモンツァでは状況が一変した。

    イタリアGP予選でアロンソとストロールはともに最後列。ポールポジションを獲得したピエール・ガスリーからは約4秒もの差をつけられた。

    さらに深刻だったのがキャデラックとの比較だ。アロンソはキャデラック勢最速だったバルテリ・ボッタスから0.8秒遅れ、ストロールは約1秒遅れだった。

    スペイン人ジャーナリストのアントニオ・ロバトは、アストンマーティンがキャデラックに対し、ストレート区間だけで1秒以上を失っていたと指摘した。

    「アストンマーティンについて言えば、少しトンネルの先に光が見えた2レースのあとでモンツァに来た。カレンダー上で最もパワー感度が高いサーキットで、完全な悪夢になった」

    「アストンマーティンのストレートスピードはひどいものだった。予選ではフェルナンドがキャデラックに対してストレートだけで1秒以上、メルセデスに対しては3秒以上失っていた。信じられない状況だ」

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム ホンダF1

    ホンダPUは「約50馬力不足」との推測
    さらにロバトは、パドックではホンダPUの出力不足について具体的な数字まで語られていると明かした。

    「ここではパワー差が50馬力ほどあるのではないかと推測している人たちもいる。50馬力だ。そして何より悪いのは、これには解決策がないということだ。今年については解決策がない」

    2026年からアストンマーティンのワークスパートナーとなったホンダは、ADUO(追加開発・アップグレード機会)の仕組みを利用してPUの性能向上を進めている。

    しかしロバトは、アップグレードによって出力そのものは改善していても、根本的な問題は残されていると説明した。

    「これは僕だけが言っていることではない。渡辺も言っている。確かにADUOによって改善している。つまりパワーユニットは改善されているが、以前と同じアーキテクチャを維持しているため、問題そのものはまだ存在している」

    キャデラックはフェラーリ製PUを搭載しており、現状ではホンダPUより高いパフォーマンスを発揮している。それでも、F1参戦初年度のキャデラックに対してアストンマーティンがストレートでこれほど大きな差をつけられていることは深刻だ。

    エイドリアン・ニューウェイが率いる車体開発陣が改善を進めても、PUそのものの出力不足を空力だけで補うことには限界がある。

    アロンソとストロールはイタリアGPでホンダPUへの不満を表に出した。ホンダ・レーシング(HRC)の渡辺康治社長はドライバーから公然と批判される状況を避けたい考えを示していたが、モンツァではパワー不足が改めて浮き彫りになった。

    ホンダはADUOによる追加開発の機会を得ており、今後どこまで差を縮められるかが焦点となる。アストンマーティンにとって、モンツァでキャデラックにストレートだけで1秒以上を失ったという事実は、2026年型パッケージが抱える課題の大きさを象徴する結果となった。

  • 角田裕毅 F1公式パワーランキング9位「2027年のドライバー市場に再浮上も」

    角田裕毅 F1公式パワーランキング9位「2027年のドライバー市場に再浮上も」

    2026年F1イタリアGP終了後のF1公式「パワーランキング」が発表され、19番グリッドから劇的な逆転優勝を飾ったキミ・アントネッリが満点の10.0でトップに立った。

    レーシングブルズからF1復帰2戦目を迎えた角田裕毅もトップ10入り。15番グリッドから10位まで順位を上げて今季初ポイントを獲得した走りについて、F1公式は「来季のドライバー市場に再び加わる可能性がある」と評価し、2027年に向けた角田の将来にも言及した。

    1位:キミ・アントネッリ(メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ)
    週末を前にパワーユニット交換によるペナルティを受け、19番グリッドからのスタートを余儀なくされたアントネッリ。当初はドライバーズランキング首位としてダメージを最小限に抑えることが目標になると思われていた。

    しかし、メルセデスのアントネッリは次々と前車を攻略し、レース半分を迎える前にはチームメイトのジョージ・ラッセルと首位を争うまでに浮上。バーチャル・セーフティカー(VSC)中にピットインすると、より新しいタイヤを生かしてポジションを取り戻しながらラッセルとの差を急速に縮めた。

    そして残り4周でタイトル争いのライバルを抜き去り、母国ファンの前で優勝。イタリア人ドライバーとして60年ぶりとなるF1イタリアGP制覇を成し遂げた。F1公式の審査員は「歴史に残るドライブ」と絶賛し、満点の10.0を与えた。

    2位:ピエール・ガスリー(アルピーヌF1チーム)
    日曜日のアントネッリの勝利が今季最高のパフォーマンスだったとすれば、その前日にピエール・ガスリーが披露した予選での走りも、それに大きく劣るものではなかった。

    アルピーヌとガスリーはメルセデス製パワーユニットの性能を最大限に引き出し、アタックラップを完璧にまとめた。ガスリーはQ1でトップタイムを記録すると、重要なQ3でも最速タイムを叩き出し、自身初のF1ポールポジションを獲得した。

    53周の決勝で首位を守り続けるのは現実的に困難だったが、最終的に7位でフィニッシュ。それでも上位勢に次ぐ「ベスト・オブ・ザ・レスト」の座を確保した。

    3位:マックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)
    メルセデス勢のアントネッリとラッセルに対してストレートスピードで劣っていたものの、マックス・フェルスタッペンは両者を苦しめる存在となった。

    レッドブル・レーシングのフェルスタッペンは5番手から序盤に2番手まで浮上し、その後トップに立って3周にわたってレースをリードした。

    最終的にはラッセルとアントネッリに抜かれたものの、しばらくはメルセデス勢についていき、アントネッリと同様にVSC中にピットイン。そこから再び順位を上げて3位でチェッカーを受け、直近4戦で3度目となる表彰台を獲得した。

    4位:アービッド・リンドブラッド(ビザ・キャッシュアップ・RB・フォーミュラワン・チーム)
    レーシングブルズのアービッド・リンドブラッドは、今回も目立たないながら堅実な仕事をやってのけた。

    9番グリッドからスタートし、シャルル・ルクレールのクラッシュやフランコ・コラピントのコースオフもあって順位を上げ、8位でフィニッシュ。貴重なポイントをチームにもたらした。

    これでリンドブラッドは直近8戦のうち7戦でポイントを獲得。レーシングブルズがコンストラクターズランキングでアルピーヌを上回るうえでも重要な役割を果たしている。

    5位:ジョージ・ラッセル(メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ)
    ラッセルは、チームメイトのアントネッリがグリッド降格ペナルティを受けることから、ドライバーズランキングで59ポイントあった差を縮める絶好のチャンスとしてモンツァに乗り込んだ。

    予選では最終アタックでフェルスタッペンの影響を多少受け、わずかな差でポールポジションを逃したものの、決勝では首位に浮上。アントネッリとの間で激しいトップ争いを繰り広げた。

    しかし、バッテリーマネジメントやスリップストリームの効果もあり、アントネッリを引き離すことはできなかった。さらにハードタイヤを装着していたため、ミディアムを履いていたアントネッリのようにVSCでピットインする選択肢も現実的ではなかった。

    大きなミスのない堅実な週末だったが、最終的にはアントネッリに敗れ、タイトル争いではさらに厳しい一撃を受ける結果となった。

    6位:オスカー・ピアストリ(マクラーレン)
    ザントフォールトではチームメイトのランド・ノリスに及ばず苦戦したオスカー・ピアストリだったが、モンツァでは本来の調子を取り戻した。

    予選では3番手タイムを記録したものの、Q2の第1シケインでリアム・ローソンを妨害したとして3グリッド降格ペナルティを受けた。

    それでも決勝では順位を上げ、前半には4位を巡ってルイス・ハミルトンとバトル。フェラーリを攻略すると、終盤にはチームメイトのノリスとの直接対決となり、最終ラップで先行を許して5位となった。

    7位:ランド・ノリス(マクラーレン)
    2連勝を飾ってモンツァに乗り込んだランド・ノリスだったが、メルセデス製パワーユニットを搭載するマクラーレンは優勝争いに加わるだけのパフォーマンスを発揮できなかった。

    ノリス自身も予選最後のアタックをまとめ切れず、8番グリッドからスタート。決勝ではスリップストリームの列の中で走る時間が長くなった。

    それでもガスリーやハミルトンを攻略し、終盤にはピアストリとの激しいバトルを展開。最終ラップのアスカリ・シケインへのアプローチでチームメイトを抜き、4位まで挽回した。

    8位:ガブリエル・ボルトレト(アウディ)
    ガブリエル・ボルトレトとアウディにとって、あと一歩が届かない週末となった。

    予選ではわずか0.001秒差でQ3進出を逃したが、アントネッリのグリッド降格によって決勝はトップ10圏内からスタートした。

    しかし決勝ではレーシングブルズやアルピーヌに対抗するだけのペースがわずかに足りず、ポイント圏内まで7秒差でフィニッシュした。

    9位:角田裕毅(ビザ・キャッシュアップ・RB・フォーミュラワン・チーム)
    レーシングブルズでF1復帰を果たしてからわずか2戦目となった角田裕毅は、15番グリッドから順位を上げ、10位でフィニッシュしてポイントを獲得した。

    F1公式はこのパフォーマンスについて、角田が「来季のドライバー市場に再び加わる可能性がある」と指摘。2027年のF1レギュラーシート獲得を目指す角田にとって、復帰後早い段階で結果を残したことを評価した。

    角田は次戦F1スペインGPでもレーシングブルズから出場することが決定している。負傷したアイザック・ハジャーに代わってリアム・ローソンが引き続きレッドブル・レーシングをドライブするため、角田にも再びチャンスが与えられる。

    10位:カルロス・サインツJr.(ウィリアムズ)
    メルセデス製パワーユニットを搭載しているものの、ウィリアムズはモンツァで苦戦することを事前に予想しており、実際に厳しい週末となった。

    それでもカルロス・サインツJr.は13位まで順位を上げ、ローソンのレッドブルやアップグレードを投入した2台のハースを上回った。ポイント獲得には届かなかったものの、10位から16秒差まで迫る堅実なレースを見せた。

    トップ10入りを逃したドライバー
    今回のパワーランキングで惜しくもトップ10入りを逃したのは、フランコ・コラピントとオリバー・ベアマンだった。

    コラピントは一時3番手まで浮上しながらコースオフで後退したものの、アルピーヌを9位に導いた。ベアマンはアップグレードが投入されたハースを駆り、15位でレースを終えている。

    アントネッリの歴史的な逆転優勝が最大のハイライトとなったF1イタリアGPだが、角田にとってもレーシングブルズ復帰2戦目でポイントを獲得し、F1公式パワーランキングで9位に選ばれた意味は小さくない。

    2027年のレギュラーシートはまだ決まっていないものの、F1公式がドライバーマーケットへの「再浮上」にまで言及したことは、角田が短期間で自身の評価を取り戻しつつあることを示すものとなった。次戦F1スペインGPは、その流れをさらに強められるかを占う重要な一戦となる。

    2026年のF1世界選手権 イタリアグランプリ

  • ランス・ストロール F1イタリアGP無線でエンジニアに激怒「目を覚ませ!」

    ランス・ストロール F1イタリアGP無線でエンジニアに激怒「目を覚ませ!」

    ランス・ストロールが、2026年F1イタリアGPの決勝中にアストンマーティンのレースエンジニアへ「目を覚ませ!」と怒りをぶつけていたことが、テレビでは放送されなかったチーム無線から明らかになった。

    ストロールはモンツァでエネルギーマネジメントとパワー不足に苦しみ、順位を落とした末、油圧系のトラブルによって27周目にマシンを止めた。アストンマーティンにとってはフェルナンド・アロンソもリタイアとなり、厳しいダブルDNFの週末となった。

    「いつも言うのが遅すぎる」ストロールが無線で激怒
    問題のやり取りは、レース序盤のリスタート後に起きた。

    モンツァではアストンマーティンの直線での弱さが顕著となっており、ストロールはパラボリカからの加速でセルジオ・ペレスのキャデラックに引き離される場面もあった。

    その後、メインストレートでアレクサンダー・アルボンのウィリアムズを抜いた際、ストロールはバッテリーに問題があることを無線で報告した。

    「バッテリー……」

    これに対し、レースエンジニアのゲイリー・ギャノンは設定変更を指示した。

    「モード9、モード9」

    しかし、アルボンが再び勢いを取り戻してターン1への進入でストロールを抜き返すと、ギャノンは再度指示を伝えた。

    「できるときにモード9。集団についていくためだ」

    ストロールは、そのタイミングの遅さに強い苛立ちを示した。

    「いつも僕に言うのが遅すぎる! まったく、目を覚ませよ!」

    順位を落とした背景にエネルギー不足
    ストロール自身もレース後、リスタート後に順位を失った原因のひとつがエネルギーマネジメントだったことを認めている。

    何が問題だったのかと聞かれると、ストロールは簡潔に答えた。

    「エネルギーの問題だ」

    2026年のF1ではパワーユニットの電動領域がこれまで以上に重要となっており、バッテリーから十分な電力を使えない状態ではストレートで大きな不利を背負う。

    特にモンツァは長い全開区間を持つ超高速サーキットであり、アストンマーティンが抱えているパワー面の弱点が表面化しやすいコースだった。

    予選でもアロンソが21番手、ストロールが22番手に沈み、チームは最後列から決勝をスタートしている。

    ランス・ストロール(アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム)

    「もっとパワーが必要」ホンダPUの不足を改めて指摘
    ストロールはレース後、モンツァがアストンマーティンにとって難しい週末になることは予想していたかと問われ、ホンダ製パワーユニットを含めたパワー不足に言及した。

    「そうですね、間違いなく。ホンダのこともあるし、とにかくパワーが足りないんだ」

    さらに、今回のイタリアGPから何を学べるかとの質問には笑いながら答えた。

    「もっとパワーが必要だ! それは分かっている。僕たちは分かっているよ。今回もそれを証明しただけだ」

    アストンマーティンは前戦オランダGPで2026年シーズン2度目となるポイント獲得を果たしていたが、モンツァでは再び直線速度不足という根本的な課題に直面した。

    27周目には油圧トラブルでストップ
    ストロールのレースは、最終的に別の機械的トラブルによって終わった。

    27周目、ギャノンはストロールにマシンを安全な場所へ止めるよう指示した。

    「マシンを止めろ、ランス。止めるんだ。油圧系の問題がある。シフト操作はしないでくれ。ペダルは長くなり、ステアリングも重くなる。安全な場所に止めてくれ」

    ストロールは指示に従ってマシンを停止。アストンマーティンはアロンソもマシンダメージによってレースを終えており、2台そろって完走できなかった。

    F1スペインGPでは改善を期待
    一方、ストロールは次戦F1スペインGPの舞台となるマドリンクについては、アストンマーティンにより適したレイアウトになる可能性があるとみている。

    「紙の上では、僕たちにはもっと良さそうだ。コーナーが多いからね」

    「すごく単純なんだ。コーナーが多くてストレートが少ない場所は僕たちに向いている。長いストレートが多くてコーナーが少ない場所は、あまり良くない」

    モンツァで露呈したエネルギー不足と直線でのパワー不足は、ストロールがエンジニアに怒りを爆発させた無線の背景にもなっていた。アストンマーティンにとって、よりコーナーの多いマドリンクでどこまで弱点を隠し、競争力を取り戻せるかが次の焦点となる。

  • オスカー・ピアストリ F1イタリアGPで“転機” F1TV記者「今季初めて本来の走り」

    オスカー・ピアストリ F1イタリアGPで“転機” F1TV記者「今季初めて本来の走り」

    オスカー・ピアストリにとって、2026年F1第13戦イタリアGPは今季の転機となるレースだったのかもしれない。F1TVのローレンス・バレットは、モンツァでのピアストリについて、今季初めてマクラーレンのマシンで「自分ができると分かっている走り」ができたように感じたと指摘した。

    2026年の新レギュレーションへの適応に苦しんできたピアストリだが、イタリアGPでは予選でリアム・ローソンを妨害したとして3グリッド降格ペナルティを受けながら、決勝では5位まで挽回。

    終盤にはチームメイトのランド・ノリスと激しい4位争いを繰り広げ、最終的には敗れたものの、レース後には自身のパフォーマンスに前向きな手応えを示していた。

    2026年で初めて見えたピアストリ本来の走り
    ピアストリは今季、マクラーレンMCL40から安定してパフォーマンスを引き出すことに苦戦してきた。特にレースペースは本人も課題として認めており、ブレーキングスタイルがエネルギーマネジメントにも影響を及ぼしているとされている。

    その一方で、ノリスはハンガリーGPとオランダGPで優勝。チームメイトが結果を積み重ねるなか、ピアストリにとってモンツァは重要な週末になっていた。

    F1TVのレポーターとしてシーズンを通してピアストリを取材してきたバレットは、『F1 Nation』で、その表情や言葉にこれまでとは異なるものを感じたと語った。

    「オスカーにとって非常に大きな週末だった。彼自身も本当に必要としていたと思う。ランドはハンガリーとザントフォールトで2勝を挙げていたからね」

    「才能が突然なくなるわけではない。だから、彼にとって重要な週末だったと思う。金曜日から感触が良かった。それが非常に重要だったと思う」

    「予選では徐々に調子を上げて、ポールポジション争いに加われるところまで来ていた」

    ピアストリは予選Q2でローソンを妨害したとして3グリッド降格を科され、決勝ではノリスより後方からスタート。それでも順位を上げ、終盤にはノリスと直接対決するところまで追い上げた。

    2人の争いではノリスが一時コース外の芝生に出る場面もあったが、ピアストリはポジションを守る権利を持ちながらフェアにバトルした。最終ラップにノリスの先行を許し、4位と5位でチェッカーを受けた。

    「今日のレースでの彼の対処の仕方は印象的だった」とバレットは続ける。

    「TVペンで話したとき、コース上ではまたチームメイトに負けたにもかかわらず、自分自身のレースの進め方や、非常にフェアにバトルできたことにかなり満足していた」

    そして、バレットが最も大きな変化として挙げたのが、ピアストリがMCL40を自分の望むようにドライブできているように見えたことだった。

    「彼は今年、自分にはできないのではないかと個人的には心配していたかもしれないような方法で、マシンをドライブすることができた」

    「まだひとつのサーキットにすぎないから、あまり興奮しすぎるつもりはない。ただ、今年ずっと彼と話してきた僕にとっては、オスカーがこのマクラーレンで、自分ができると分かっていることをできたと感じたのは初めてだった」

    オスカー・ピアストリ(マクラーレン)

    ノリスに敗れても得られた手応え
    結果だけを見れば、ピアストリはイタリアGPでもノリスの後塵を拝した。しかし、モンツァで重要だったのは5位という順位以上に、2026年型マシンを自分のスタイルで操れる感覚をつかみ始めたことだった。

    ピアストリは2026年シーズンを通じて新世代F1マシンへの適応という課題と向き合ってきた。モンツァだけで復調を断定することはできないものの、金曜日から競争力を示し、予選ではポール争いが視野に入るペースを発揮。決勝でもノリスと直接争えるところまで持ち込んだ。

    次戦F1スペインGPの舞台となるマドリンクは、全ドライバーにとって未知の新コースとなる。イタリアGPで得た感触を異なる特性のサーキットでも再現できれば、モンツァはピアストリにとって2026年シーズンの転機だったと振り返られる一戦になるかもしれない。

  • 角田裕毅をF1公式がイタリアGP“勝者”に選出 「2027年のレギュラーシートに期待」

    角田裕毅をF1公式がイタリアGP“勝者”に選出 「2027年のレギュラーシートに期待」

    角田裕毅が、F1公式サイトが選ぶ2026年F1イタリアGPの“勝者”のひとりに選出された。レーシングブルズから参戦した角田裕毅は、予選Q1敗退から決勝で挽回し、10位で貴重な1ポイントを獲得した。

    F1公式のローレンス・バレットは、2026年型マシンでまだ2戦目ながら角田裕毅が見せたクリーンなレースを評価。「2027年にレギュラーシートを見つけられるかもしれないという期待を高める」と、そのパフォーマンスを称えた。

    勝者:キミ・アントネッリ
    キミ・アントネッリは、近年のF1でも屈指のパフォーマンスを披露した。エンジンコンポーネント交換による複数のグリッド降格ペナルティで19番手からスタートしたものの、わずか18周でトップに浮上した。

    20歳のアントネッリは、その後メルセデスのチームメイトであるジョージ・ラッセルとのコース上での争いも制し、今季そして自身通算7勝目を獲得。1953年にイタリア人最後のF1ワールドチャンピオンとなったアルベルト・アスカリ以来、最も成功を収めたイタリア人ドライバーとなった。

    また、イタリア人によるF1イタリアGP優勝は、1966年のルドヴィコ・スカルフィオッティ以来60年ぶり。19番グリッドからの優勝はF1史上2番目に低いスタート位置からの勝利で、記録は1983年ロングビーチで22番手から勝ったジョン・ワトソンが保持している。

    さらにドライバーズ選手権では、ラッセルに対するリードを66ポイントに拡大。3位のルイス・ハミルトンはそこからさらに10ポイント後方となり、残り9戦を迎える。

    敗者:ジョージ・ラッセル
    結果だけを見れば、ジョージ・ラッセルにとってモンツァにはいくつかのポジティブな材料があった。2戦連続で本来のパフォーマンスに近づいている印象を与え、モンツァで自己最高となる2位を獲得。ドライバーズ選手権でも2位の座を固めた。

    しかし、それ以上に大きかったのは、17グリッド後方からスタートしたチームメイトに完敗したという事実だ。

    アントネッリがエンジンペナルティで後方に沈んだことは、ラッセルにとって選手権のポイント差を縮める絶好のチャンスだった。それにもかかわらず、逆にリードを広げられる結果となった。

    さらにラッセルも近いうちにエンジン交換によるグリッドペナルティを受ける必要があり、そのタイミングは次戦以降になる可能性がある。

    勝者:メルセデス
    シャシーとパワーユニットの競争力を考えれば意外にも、メルセデスにとって今回が第2戦中国GP以来となる今季2度目のワンツーフィニッシュだった。

    アントネッリとラッセルはトップを巡って激しくもフェアな戦いを展開し、最終的にはアントネッリが勝利。メルセデスのドライバーがモンツァの象徴的な表彰台に立ったのも2022年以来となった。

    大量得点によってチームズ選手権ではフェラーリとの差を122ポイントまで拡大。残り9戦で獲得可能なポイントは402ポイントとなっている。

    敗者:フェラーリ
    フェラーリはホームレースに2度目のパワーユニットアップグレードとシャシーの改良を投入し、大きな期待を背負ってモンツァに乗り込んだ。

    金曜のフリー走行ではまずまずの速さを示し、予選自体は順調とは言えなかったものの、アントネッリとオスカー・ピアストリのペナルティによって3番手と4番手からスタートすることになった。

    しかし、決勝は開始直後から崩れた。ターン1からターン2にかけてハミルトンとシャルル・ルクレールがサイド・バイ・サイドとなり、ハミルトンはグラベルに押し出されて10番手まで後退。さらにルクレールがパラボリカでクラッシュし、モンツァを埋め尽くしたティフォシにとって厳しい展開となった。

    ハミルトンは最終的に6位まで挽回したものの、選手権首位アントネッリとの差は3勝分を超えるポイント差に広がった。

    勝者:マックス・フェルスタッペン
    レッドブル・レーシングは2026年マシンを改善するために多くの課題を抱えているが、マックス・フェルスタッペンは見事なオーバーテイクを連発し、マシンを3位表彰台まで引き上げた。

    フェルスタッペンは週末を通じてマシンバランスに満足しておらず、決勝でもデプロイメントの問題に苦しんでいる様子があった。それでもメルセデス勢に続く表彰台を確保した。

    モンツァでは2022年、2023年、2025年に優勝しており、今回が勝利以外では初めての表彰台。今季では5度目のトップ3入りとなった。

    敗者:アストンマーティン
    アストンマーティンは、ホンダ製パワーユニットの弱点を考えれば「スピードの神殿」と呼ばれるモンツァが厳しい戦いになることを事前に認識していた。そして、その懸念が現実となった。

    予選Q1では今季7度目となる最も遅い2台となり、ランス・ストロールは22番手で自身通算100回目のQ1敗退を喫した。

    決勝ではフェルナンド・アロンソのマシンにトラブルが発生してリタイア。ストロールも油圧系とみられる問題によってレースを終えた。これでアストンマーティンは今季4度目のダブルリタイアとなった。

    角田裕毅 イタリアグランプリ

    勝者:ピエール・ガスリー
    ピエール・ガスリーは、F1史に残る予選パフォーマンスのひとつを披露し、191回目のグランプリ出走で自身初のポールポジションを獲得した。

    決勝ではそのポジションを維持することはできなかったものの、巧みなレース運びで7位フィニッシュ。中団勢のトップとしてチェッカーを受けた。

    今季9度目のポイント獲得となり、レッドブル/レーシングブルズのリアム・ローソンまで10ポイント差に迫った。

    チームメイトのフランコ・コラピントもグラベルへのコースオフがありながら9位でフィニッシュ。アルピーヌはチームズ選手権5位のレーシングブルズとの差を13ポイントまで縮めている。

    敗者:ハース
    ハースはモンツァに今季最大規模となるシャシーアップグレードを持ち込み、オリバー・ベアマンとエステバン・オコンの2台に新パーツを投入した。

    さらにベアマンには、フェラーリから供給された新仕様パワーユニットが搭載され、序盤にはポイント争いへの復帰を期待させる兆候が見られた。

    ベアマンは第2戦中国GPでQ3に進出して以来となる好位置の12番グリッドを獲得したが、決勝ではそこから順位を上げるだけのペースがなく14位。オコンもライバル勢よりタイヤデグラデーションが大きく、16位に終わった。

    ハースはこれで7戦連続ノーポイント。それでもチームズ選手権7位を維持している。

    勝者:アービッド・リンドブラッド
    アービッド・リンドブラッドは、印象的なルーキーシーズンをモンツァでも継続した。レーシングブルズのリンドブラッドは6戦連続でQ3進出を果たし、ポイント獲得を狙える位置につけた。

    決勝でも力強い走りを見せて8位に入り、直近9戦で8度目となるポイントを獲得した。

    純粋なパフォーマンスではアルピーヌに先行された週末だったが、レーシングブルズにとってはダメージを最小限に抑える結果となり、チームズ選手権5位を守った。

    敗者:リアム・ローソン
    リアム・ローソンにとって、レッドブル・レーシングの代役として臨んだ2戦目は、前戦オランダGPほどスムーズには進まなかった。

    エンジンコンポーネント交換によるグリッドペナルティを受けることが決まった段階から厳しい状況となり、予選では15番手だったものの、チームはピットレーンスタートを選択した。

    序盤には好スタートでいくつか順位を上げたが、ニコ・ヒュルケンベルグのアウディと接触してフロントウイングを破損。早期のピットストップを余儀なくされ、ポイント争いの可能性を失った。

    勝者:角田裕毅
    角田裕毅は、レーシングブルズの代役として2戦目となったF1イタリアGPで浮き沈みのある週末を過ごした。フリー走行では速さを見せた一方、予選ではQ1敗退を喫した。

    決勝のスタートでは理想的な位置にマシンを置くことができなかったものの、それはレース全体で見れば小さなミスにすぎなかった。その後はクリーンなレースを展開し、トップ10まで順位を上げて10位で1ポイントを獲得した。

    2026年型シャシーでまだ2戦目という状況を考えれば、評価できるパフォーマンスだった。2027年にF1のレギュラーシートを確保できるのではないかという期待を高める結果にもなった。

    アントネッリが19番手から母国優勝を成し遂げたメルセデスが最大の勝者となった一方、フェラーリやアストンマーティン、ハースには厳しいモンツァとなった。そして角田裕毅にとっては、レーシングブルズ復帰後2戦目で結果を残し、2027年のF1シート獲得に向けて存在感を示す週末となった。

  • F1と『カーズ』が交差した20年 ライトニング・マックィーンがモンツァに登場

    F1と『カーズ』が交差した20年 ライトニング・マックィーンがモンツァに登場

    ディズニー&ピクサーの人気アニメーション映画『カーズ』が、2026年で公開20周年を迎えた。これを記念し、F1イタリアGPが開催されたモンツァには、主人公ライトニング・マックィーンをモチーフにした特別車両が登場。F1パドックを彩った。

    2006年に公開された『カーズ』とF1のつながりは今回が初めてではない。ミハエル・シューマッハやフェルナンド・アロンソ、ルイス・ハミルトン、セバスチャン・ベッテルらF1王者がシリーズに参加してきたほか、現在のF1ドライバーにも同作品のファンは多い。

    F1公式サイトは公開20周年に合わせ、両者が交差してきた歴史を振り返った。

    ライトニング・マックィーンがF1イタリアGPに登場
    『カーズ』公開20周年を記念し、ライトニング・マックィーンは2026年F1イタリアGPで「名誉トラックオフィシャル」としてモンツァに姿を見せた。

    登場した車両には、ライトニング・マックィーンをイメージしたワンオフの特別リバリーが施され、トラックオフィシャルとしての役割を表現するセーフティライトも装着された。さらにFIA F1公式セーフティカーのメルセデスにも『カーズ』をテーマにした特別な装いが施された。

    パドックではカルロス・サインツJr.がライトニング・マックィーンとセルフィーを撮影し、メルセデスのキミ・アントネッリも対面。映画の世界と現代のF1がモンツァで交わる形となった。

    2006年公開の第1作では、若きレーサーのライトニング・マックィーンが成功だけを追い求めるルーキーから、仲間との絆を知るレーサーへと成長していく姿が描かれた。その後2本の続編が製作され、世界的な人気シリーズへ成長した。

    その影響を受けた世代は現在F1にも到達している。アントネッリやアイザック・ハジャー、リアム・ローソンらが『カーズ』に親しんで育ち、とりわけローソンはライトニング・マックィーンを子供時代のヒーローとして公言するほどのファンとして知られている。

    ミハエル・シューマッハがフェラーリF430として出演
    『カーズ』とF1の結びつきは、第1作が公開された2006年から存在していた。

    作品にはオーウェン・ウィルソン、ポール・ニューマン、リチャード・ペティといった著名人が声優として参加したが、モータースポーツ界からも世界王者たちが登場している。

    そのひとりが、F1とアメリカのトップカテゴリーの双方でタイトルを獲得したマリオ・アンドレッティだ。劇中では1967年型フォード・フェアレーンをモデルとした自身の自動車版キャラクターとして登場する。

    さらに、F1で7度のワールドチャンピオンに輝いたミハエル・シューマッハも出演。2005年型フェラーリF430の姿となり、映画終盤にルイジのタイヤショップ「Casa Della Tires」を訪れる。

    フェラーリを愛するルイジにとって、シューマッハの登場は作品を象徴する場面のひとつとなった。


    アロンソやハッキネン ラウダも各国版に参加
    『カーズ』では各国向けの吹き替えにもモータースポーツ界のスターが起用された。

    スペイン語版ではフェルナンド・アロンソがマリオ・アンドレッティのキャラクターを担当。ドイツ語版ではアンドレッティに代わってミカ・ハッキネンのキャラクターが登場した。

    ハッキネンはフィンランド語版で「キング」の声も担当し、ドイツ語版ではF1で3度のワールドチャンピオンとなったニキ・ラウダが同じ役を務めている。また、イタリア語版ではジャンカルロ・フィジケラがブーストの声を担当した。

    単にF1を題材として取り入れるだけではなく、各地域で知名度の高いレーシングドライバーを作品世界に組み込んだことが、『カーズ』シリーズと実際のモータースポーツとの距離をさらに縮めることになった。

    『カーズ2』にはハミルトンとベッテルも登場
    2011年公開の『カーズ2』では、F1との関係がさらに深まった。

    アロンソは再び作品に参加したが、今度はスペイン語版で自身をモデルとしたアニメーションキャラクターを担当。劇中のワールド・グランプリに出場し、ライトニング・マックィーンと交流する。

    セバスチャン・ベッテルはドイツ語版でレーシングカー「セバスチャン・シュネル」を担当。他地域では「マックス・シュネル」と呼ばれているキャラクターが、ドイツ語圏ではベッテルを反映した存在となった。

    そしてルイス・ハミルトンも「ルイス・ハミルトン」という自身と同名のキャラクターとして登場し、ワールド・グランプリに参戦する。F1公式サイトによると、ハミルトンは自身のキャラクターデザインにも直接関わった唯一の声優だったという。

    さらに1997年F1ワールドチャンピオンのジャック・ヴィルヌーヴは、フランスおよびフランス系カナダ向けの吹き替えで解説者デビッド・ホブスキャップ役として参加。ファン・パブロ・モントーヤもラテンアメリカ版でレーシングカー、ジェフ・ゴルベットの声を担当した。

    『カーズ3』でもF1王者3人が再登場
    シリーズ第3作『カーズ/クロスロード』でもF1とのつながりは続いた。

    ハミルトン、ベッテル、アロンソがそれぞれの地域版で再び声優を担当。レーシングドライバーのクルーズ・ラミレスをサポートする音声アシスタントの声を務めた。

    第1作でシューマッハやアンドレッティが登場したところから始まり、第2作以降は当時の現役F1スターたちが作品世界へ参加。シリーズの展開とともにF1との関係も広がっていった。

    リアム・ローソンとライトニング・マックィーン

    リアム・ローソンは筋金入りのマックィーンファン
    一方、2006年の第1作公開から20年が経った現在では、『カーズ』を見て育った世代が実際にF1グリッドを形成するようになっている。

    その代表格がリアム・ローソンだ。ローソンはライトニング・マックィーンの大ファンであることをたびたび公言しており、ディズニーランドを訪れた際だけでなく、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでもマックィーンとの写真を撮影している。

    かつてF1王者たちが『カーズ』の世界に登場し、それを見て育った子供たちが今度はF1ドライバーになる。公開20周年を迎えた2026年、ライトニング・マックィーンがモンツァのF1パドックに登場したことは、映画と現実のモータースポーツが20年にわたって影響し合ってきた歴史を象徴する出来事となった。

  • F1イタリアGPでティフォシの忠誠心 アントネッリがハミルトンを抜くと「ほぼ沈黙」

    F1イタリアGPでティフォシの忠誠心 アントネッリがハミルトンを抜くと「ほぼ沈黙」

    2026年F1イタリアGPでは、母国の英雄となったキミ・アントネッリとフェラーリのどちらをティフォシが支持するのかにも注目が集まった。その答えを象徴する場面が、アントネッリがルイス・ハミルトンをオーバーテイクした瞬間だった。

    19番グリッドから追い上げて歴史的な母国初優勝を飾ったアントネッリだが、モンツァのファンのフェラーリへの忠誠心は依然として強いようだ。

    BBC Sportのロレイン・マッケンナによると、アントネッリがハミルトンを抜いた際、グランドスタンドは「ほぼ沈黙」に包まれたという。

    アントネッリの母国初優勝でもティフォシはフェラーリ支持
    アントネッリはエンジン交換によるペナルティで19番グリッドからスタートし、猛烈な追い上げを披露。最終的に優勝を飾り、1966年のルドビコ・スカルフィオッティ以来、60年ぶりにF1イタリアGPを制したイタリア人ドライバーとなった。

    また、イタリア人がモンツァの表彰台に立つのも、2005年のジャンカルロ・フィジケラ以来だった。

    今季タイトル争いをリードするアントネッリは、すでにイタリアを代表するスポーツスターのひとりとなっている。それだけに、F1イタリアGPを前に注目されたのが、伝統的にフェラーリを熱烈に応援してきたティフォシが、アントネッリにも同じような声援を送るのかという点だった。

    決勝では、その忠誠心を測る格好の場面が訪れた。

    シャルル・ルクレールがクラッシュでリタイアしたことで、フェラーリ勢はハミルトンだけとなった。一方、後方から猛烈な勢いで順位を上げていたアントネッリは、そのハミルトンにも追いつき、オーバーテイクを決めた。

    しかし、イタリア人ドライバーが母国で7度のF1ワールドチャンピオンを抜いたにもかかわらず、スタンドの反応は意外なものだった。

    BBC Sportのロレイン・マッケンナは、モンツァの現地の様子について次のように伝えている。

    「モンツァのメディアセンターはスタート/フィニッシュストレートのすぐ後ろにあり、ルイス・ハミルトンの唯一残ったフェラーリがグランドスタンドの前を通過するたびに、大きな歓声が響いていた」

    「しかし、イタリア人のキミ・アントネッリが7度のワールドチャンピオンをオーバーテイクすると、観客は(ほぼ)静まり返った」

    アントネッリが勝利した際の熱狂とは対照的な反応だった。

    ただし、ティフォシがアントネッリを歓迎していなかったわけではない。その直後、アントネッリがオスカー・ピアストリのマクラーレンを抜いて3番手に浮上すると、今度は拍手が沸き起こったという。

    「その数分後には拍手が起きた。アントネッリがオスカー・ピアストリのマクラーレンを抜いて3番手に上がった動きを、建物の中にいた地元の人々も大いに喜んでいた。勝負開始だ」

    つまり、アントネッリへの母国の支持は確実に高まっているものの、直接フェラーリと争う場面ではティフォシの伝統的な忠誠心が勝った格好だ。

    アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ)

    ハミルトンは最終的に6位でフィニッシュ。フェラーリにとってはルクレールのリタイアも重なり、2020年に2台ともリタイアして以来となる厳しいモンツァでの結果となった。

    一方のアントネッリは19番手から優勝という劇的なレースで母国ファンを沸かせ、F1タイトル獲得へ向けても大きな一勝を挙げた。

    アントネッリ自身もレース前から、イタリアのファンの多くは依然としてフェラーリを応援するだろうと予想していた。今回のハミルトンとのバトルで見せたスタンドの反応は、その見方を裏付けるものとなった。

    それでも、アントネッリがタイトル争いを続け、イタリア人F1王者誕生への期待がさらに高まれば、ティフォシとフェラーリ、そして新たな母国の英雄との関係は今後変化していく可能性がある。

  • メルセデスF1代表 ラッセルのタイヤ戦略を説明「変更のチャンスはなかった」

    メルセデスF1代表 ラッセルのタイヤ戦略を説明「変更のチャンスはなかった」

    メルセデスF1代表のトト・ヴォルフは、2026年F1第13戦イタリアGPでジョージ・ラッセルが勝利を逃す結果となったタイヤ戦略について説明した。

    ラッセルは終盤まで優勝争いを展開したものの、フレッシュなミディアムタイヤを履いたチームメイトのアンドレア・キミ・アントネッリに逆転を許して2位。ヴォルフは、結果的に2ストップ戦略が有利だったと認めながらも、ラッセルには戦略を変更する「チャンスがなかった」と語った。

    アントネッリは19番手から逆転優勝
    エンジン関連のペナルティによって19番グリッドからスタートしたアントネッリは、序盤のリスタートでリスクを避けながら着実に順位を上げた。

    レースが進むにつれてラッセルとの争いに加わり、メルセデスの2台は何度もポジションを入れ替える展開となった。

    そして終盤、ランス・ストロールがコース上でマシンを止めたことでバーチャル・セーフティカー(VSC)が導入されると、アントネッリはピットインして新品のミディアムタイヤに交換した。

    一方、ラッセルはレース再開前に装着したハードタイヤで走り続けることになった。タイヤの性能差を生かしたアントネッリは終盤にラッセルをオーバーテイクし、今季7勝目を挙げた。

    ラッセルは2位でフィニッシュし、ドライバーズランキングでは首位アントネッリとの差が66ポイントに広がった。

    ヴォルフ「2ストップが最善だとは考えていなかった」
    ヴォルフは、アントネッリの走りを高く評価するとともに、メルセデスが当初は2ストップ戦略の方が速いとは予想していなかったことを明かした。

    「彼は集中を切らさず、序盤のリスタートではリスクを冒さず、そこから1台ずつ抜いていった。素晴らしいドライブだった」

    「結果的には2ストップが最善だった。でも、我々はそうなるとは考えていなかった」

    「だから、それが彼にとってうまく機能した。だが、今日の彼を止められるものは何もなかった。本当にうれしく思っている」

    メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ

    ラッセルは「使い古した武器」で終盤を戦った
    ヴォルフは、2ストップが有利だと判明した段階では、ラッセルの戦略を切り替える余地がなかったと説明した。

    「もちろん、ジョージは最後には使い古した武器で戦っていた」

    「だから、ワンツーという結果には本当に満足している。彼はハードを履いていた。我々は1ストップで行く必要があり、変更するチャンスはなかった」

    結果としてメルセデスはアントネッリとラッセルによるワンツーフィニッシュを達成したが、同じ戦略を採っていれば勝者が入れ替わっていた可能性も残った。

    アントネッリは19番手からの逆転で母国イタリアGP初優勝を飾り、タイトル争いでもリードを拡大。対するラッセルにとっては、終盤のVSCとタイヤ戦略が勝敗を分ける形となった。

  • フェラーリF1 チームオーダー方針転換か バスール代表が検討を示唆

    フェラーリF1 チームオーダー方針転換か バスール代表が検討を示唆

    フェラーリF1のチーム代表フレデリック・バスールは、2026年F1イタリアGPを経て、ルイス・ハミルトンとシャルル・ルクレールの間でチームオーダーを導入する可能性について話し合う考えを示した。

    これまでバスールは、シーズン途中で一方のドライバーを優先することに慎重な姿勢を貫いてきた。しかし、モンツァでルクレールがリタイアし、ハミルトンとのポイント差が36点に拡大。

    さらに決勝1周目には両者が接触する場面もあり、フェラーリは今後のタイトル争いを見据えてドライバー間の運用を改めて検討する局面を迎えている。

    モンツァの1周目でハミルトンとルクレールが接触
    チームオーダーをめぐる議論が再び注目された直接のきっかけは、F1イタリアGP決勝のオープニングラップだった。

    ハミルトンは第1シケインのターン1でルクレールのイン側に入り、ターン2ではアウト側に並んだ。しかし、ルクレールとの攻防でコース外のグラベルへ押し出される形となり、ハミルトンは10番手まで順位を落とした。

    これによってフェラーリは、2台を使って戦略的にレースを組み立てる機会を事実上失った。その後、ルクレールは次の周にクルバ・アルボレート(パラボリカ)で激しくクラッシュし、レースを終えている。

    レース後、バスールは1周目の一件について、まずドライバー本人たちと話をしたいとの姿勢を示した。

    「ルイスとは2秒くらい話したが、シャルルとはまったく話していない。だから、この件について話し合う時間はまだなかった」

    何が起きたと考えているのかと問われても、バスールは評価を控えた。

    「いや、まず君たちと話すより先に、彼らと話をしたい」

    チームオーダーに慎重だったバスール
    バスールはこれまで、ハミルトンとルクレールのどちらかを明確に優先するチームオーダーの導入には慎重だった。

    その考えを説明する際には、前年のマクラーレンを例に挙げている。シーズンの同じ段階でオスカー・ピアストリを明確に優先していれば、結果としてマックス・フェルスタッペンにF1ドライバーズタイトルを渡すことになっていた可能性があるというのがバスールの見方だった。

    つまり、タイトル争いの可能性を持つ2人のドライバーがいる段階で、早々に一方へチームのリソースを集中させることにはリスクがあるという考えだ。

    フェラーリもこれまで、ハミルトンとルクレールを基本的に対等な立場で競わせてきた。

    スクーデリア・フェラーリ

    ハミルトンとルクレールの差は36ポイント
    しかし、F1イタリアGPを終えて状況は変化しつつある。

    ルクレールがモンツァでノーポイントに終わったことで、ハミルトンのリードは36ポイントまで拡大した。シーズンが終盤へ向かうなか、この差はフェラーリがドライバーズ選手権を戦ううえで無視できないものになりつつある。

    そのためバスールは、これまでの慎重な姿勢から一歩踏み込み、今後のチームオーダーについてハミルトン、ルクレールと話し合う可能性を示唆している。

    一方で、ハミルトン自身はチームオーダーを導入するのであれば、すでにタイミングを逸しているとの考えを持っている。

    フェラーリにとって問題となるのは、単純な36ポイントという数字だけではない。モンツァではスタート直後に2台が直接争ったことでハミルトンが大きく順位を落としており、タイトル争いが佳境に入るなかで同様の事態を繰り返すリスクも浮き彫りになった。

    バスールはイタリアGP直後の段階では具体的なチームオーダー導入を明言していない。それでも、まず両ドライバーと話し合う姿勢を示したことは、これまで対等な競争を重視してきたフェラーリが今後の運用を再検討する可能性を示すものとなった。