2026年F1第14戦スペインGPの決勝が9月13日(日)にマドリードのマドリンクで行われ、メルセデスのアンドレア・キミ・アントネッリが優勝。2番グリッドから57周のレースを制し、F1初開催となったマドリンクの初代ウイナーに輝いた。
2位にはマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)、3位にはポールポジションからスタートしたランド・ノリス(マクラーレン)が入った。
レーシングブルズの角田裕毅は15番グリッドから14位。スタート直後にはカルロス・サインツJr.(ウィリアムズ)と接触する場面もあり、ポイント獲得には届かなかった。チームメイトのアービッド・リンドブラッドは9位入賞。アストンマーティン・ホンダはフェルナンド・アロンソが17位、ランス・ストロールはリタイアに終わった。
3種類のタイヤに分かれてスタート
決勝前のマドリンクは高温となり、各チームは大きく異なるタイヤ戦略を採用した。ポールのノリスと2番手アントネッリはミディアム。3番手フェルスタッペンと4番手ルイス・ハミルトンはソフトを選択した。
一方、シャルル・ルクレール、ジョージ・ラッセル、オスカー・ピアストリ、リアム・ローソンはハードでスタート。ガブリエル・ボルトレト、ピエール・ガスリー、角田裕毅、アロンソ、バルテリ・ボッタス、サインツJr.、ストロール、オリバー・ベアマンもハードを選んだ。
ミディアムはノリス、アントネッリのほか、フランコ・コラピント、リンドブラッド、エステバン・オコン、アレクサンダー・アルボン、セルジオ・ペレス。ニコ・ヒュルケンベルグはソフトを履き、序盤から順位を上げる戦略に出た。
ターン1から混乱 アントネッリが2度コース外へ
スタートではノリスとアントネッリがターン1で並び、アントネッリがイン側へ飛び込んだものの、止まり切れず最初のシケインをカット。ノリスが首位を守った。
その後もアントネッリはノリスへ仕掛けたが、再びコース外へ。これを見逃さなかったフェルスタッペンがBunkerでアントネッリを抜き、2番手へ浮上した。
しかし、フェルスタッペンもスタート直後にターン1でコース外へ出ながらハミルトンの前に残ったことで問題となった。ハミルトンはポジションを返すべきだと主張し、フェルスタッペンは逆に「ハミルトンが僕にぶつかりそうだった」「コントロールを失っていた」と無線で訴えた。
それでもレッドブルはペナルティ回避を優先し、フェルスタッペンに順位返上を指示。フェルスタッペンはアントネッリとハミルトンを先行させ、4番手まで後退した。
ラッセルとピアストリ接触 角田裕毅もサインツJr.と接触
後方でもスタート直後から接触が相次いだ。ラッセルとピアストリが接触し、ピアストリはフロントウイングのエンドプレートを損傷。序盤から空力性能を失い、ペースに影響を受けた。
角田裕毅もターン1でサインツJr.と接触。サインツJr.がブレーキングでロックアップし、角田とホイール同士を接触させた。一件はレースコントロールに記録された。
ピアストリはスタートで大きく順位を落とし、コラピントやローソンにも先行を許した。一方、ノリスは混乱を抜け出してクリーンエアを確保し、序盤から首位を固めていった。
ハミルトンにブレーキトラブル 序盤でリタイア
フェラーリのハミルトンには序盤からブレーキトラブルが発生した。ペースを維持できなくなり、フェルスタッペン、ルクレール、ラッセルらに次々と抜かれた。
ハミルトンは無線でブレーキが効かないと訴え、止まり切れないことを恐れて加速もできない状態に陥った。問題は急速に悪化し、フェラーリは序盤でマシンをピットへ戻してリタイアさせた。
ハミルトンが脱落する一方、ノリスはアントネッリとの差を広げ、序盤のレースを支配。アントネッリがコース外へ出る場面もあり、ノリスのリードは4秒以上に広がった。
アロンソとサインツJr.が接触 サインツJr.に5秒ペナルティ
ホームレースを戦うスペイン人同士にも接触が発生した。アロンソとサインツJr.がターン5で争い、アロンソはサインツJr.にウォール側へ押しやられたと主張した。
スチュワードは接触を審議し、サインツJr.に5秒のタイムペナルティを科した。両者ともこの時点でトップ10圏外を走っており、地元ファンにとっては厳しい展開となった。
ストロール停止でVSC ノリスの独走が一転
レースの流れを決定的に変えたのが14周目だった。ストロールがターン20でブレーキトラブルによりマシンを止め、バーチャル・セーフティカー(VSC)が導入された。
この時点でノリスはアントネッリに6秒以上のリードを築いていたが、VSCが出たタイミングが明暗を分けた。アントネッリ、フェルスタッペン、ラッセルはすぐにピットへ入り、減速区間を利用してロスタイムを抑えてタイヤ交換を完了。一方、ノリスはすでにピット入口を通過しており、もう1周する必要があった。
ストロールのマシンは短時間でバリアの外へ撤去され、ノリスがピット入口へ戻る前にVSCは終了。ノリスは通常のレーシングスピード下でピットストップを強いられたうえ、タイヤ交換にも約7秒を要した。
序盤に築いた大きなリードは完全に消え、ルクレール、アントネッリ、フェルスタッペン、ラッセルに続く5番手まで後退した。VSCのタイミングとスローストップが重なり、ノリスの勝利への道は大きく狂った。
ルクレールが首位 アントネッリが実質トップへ
VSC中にピットへ入らなかったルクレールが首位に浮上。2番手アントネッリ、3番手フェルスタッペン、4番手ラッセル、5番手ノリスというオーダーになった。
ルクレールはスタートから履くハードタイヤで走行を続け、フェラーリはセーフティカーや赤旗が出る可能性を見ながら長い第1スティントを選択した。
一方、すでにピットストップを終えていたアントネッリが実質的なトップ。ハードタイヤの耐久性が予想以上に高かったこともあり、ルクレールは首位を維持しながら長く引っ張ることが可能になった。
アントネッリにステアリングの違和感 メルセデスは異常確認できず
VSC後に実質的な首位となったアントネッリだったが、中盤には「ステアリングホイールの感触がおかしい」と無線で訴えた。
メルセデスはテレメトリを確認したものの、データ上で明確な異常は発見できなかった。さらにチームは、トラックリミット違反を重ねればタイムペナルティを受ける可能性があるとして注意を促した。
それでもアントネッリはハードタイヤを管理しながらペースを維持。ルクレールがピットへ入るまで、実質的なトップの座を守り続けた。
ハードタイヤが予想以上の耐久性 ラッセルは2ストップへ
レース中盤になると、ハードタイヤのデグラデーションが想定ほど大きくないことが明らかになった。ルクレールをはじめ、ローソン、ピアストリ、ガスリー、ボルトレトらも長い第1スティントを続けた。
その中でメルセデスはラッセルを2ストップへ切り替えた。ラッセルは2度目のピットストップ後、「なぜピットに入れた? ノリスを抑えられた」と無線で戦略に疑問を呈した。
ハードが最後まで持つ可能性が高まるにつれ、2ストップを選んだラッセルは上位争いから距離を置かれる形となった。
ノリスが反撃 フェルスタッペンを追う
VSCで勝機を失ったノリスだったが、クリーンエアを得るとペースを上げ始めた。マクラーレンはハードタイヤの状態が良好だと判断し、ノリスにプッシュを指示。ノリスはファステストラップを刻みながら前方との差を削った。
39周目にはウォールをかすめる場面もあったが、大きなダメージなく走行を継続。やがてフェルスタッペンとの差を1秒台まで縮め、再び表彰台争いに加わった。
ピアストリは序盤のフロントウイング損傷に苦しみながら中団で順位を回復。ボルトレト、コラピント、リンドブラッドらと激しいトップ10争いを繰り広げた。
ルクレールが48周終了まで粘る セーフティカーに賭ける
フェラーリはルクレールをコース上に残し続けた。狙いはセーフティカー、あるいは赤旗が出た場合にピットロスを抑え、表彰台争いへ加わることだった。
しかし、大きなアクシデントは起こらず、ルクレールは48周を終えたところでピットイン。新品ソフトへ交換した。
ルクレールはラッセルの前となる4番手でコースへ復帰。これでアントネッリが正式に首位となり、フェルスタッペン、ノリスが続いた。残り周回でトップ3による勝負が始まった。
アントネッリがペースアップ ノリスはフェルスタッペンに接近
ルクレールがピットへ入ると、アントネッリはペースを上げてフェルスタッペンとの差を広げ始めた。
その一方でフェルスタッペンの背後にはノリスが迫った。ノリスは終盤に1秒以内まで接近し、オーバーテイクの機会をうかがった。
アントネッリは終盤にウォールへ触れる場面もあったが、マシンに致命的な問題はなく首位を維持。タイヤを管理しながら残り周回を走り切る態勢に入った。
フェルスタッペンがターン5をカット ノリス最大のチャンス
終盤、フェルスタッペンがターン5でコース外へ出る場面が発生。これによりノリスが一気に接近し、2位奪取の最大のチャンスを迎えた。
ノリスはフェルスタッペンに並びかけたものの、完全に前へ出ることはできず、フェルスタッペンが2番手を守った。
ノリスは無線で、フェルスタッペンがコース外へ出なければ自分が抜いていたはずだと主張。レース後、スチュワードはフェルスタッペンの走行を確認したものの、「さらなる調査なし」と判断した。

アントネッリが今季8勝目 マドリンク初代ウイナーに
57周のレースを走り切り、アントネッリがトップチェッカー。2番グリッドから今季8勝目を挙げ、初開催となったマドリンクで最初のF1ウイナーとなった。
2位にはフェルスタッペン、3位にはノリス。序盤にレースを支配したノリスはVSCのタイミングとスローストップによって勝利を逃した。
4位はルクレール、5位はラッセル。ローソンが6位に入り、レッドブルでの代役3戦目で好結果を残した。7位コラピント、8位ピアストリ、9位リンドブラッド、10位ヒュルケンベルグとなった。
アントネッリはこの勝利でドライバーズ選手権のリードをさらに拡大。チームメイトのラッセルに対するリードは81ポイントとなった。
アントネッリ「ランドが勝つに値したと思う」
優勝したアントネッリは、タイヤマネジメントを含めて非常に難しいレースだったと振り返った。また、VSCで不運に見舞われたノリスについて、勝利に値する走りだったとの見方を示した。
「とても難しいレースだった。まったく簡単ではなかったし、特にタイヤをマネジメントするのが大変だった」
「勝てたのはうれしいけど、ランドが今日は勝つに値したと思うから、それほどいい気分ではない。でも、もちろんこの勝利は受け取るよ」
「全体としてはとても強いレースだった。特に最後のハードでは本当にいいペースがあったし、これからもプッシュしていくよ」
フェルスタッペン「レースペースを考えれば素晴らしい結果」
2位のフェルスタッペンは、レッドブルのレースペースを考えれば満足できる結果だったと評価した。
「レースペースを考えれば、僕たちにとって素晴らしい結果だった。ランドがVSCで不運だったことは分かっている。彼がどれだけ僕に追いついてきたかを見ても、2位は素晴らしい結果だ」
終盤にはノリスから強いプレッシャーを受けたが、最後までポジションを守って2位表彰台を獲得した。
ノリス「完璧なレースだったけど運が味方しなかった」
3位のノリスは、VSCによってレースの流れが変わったことを悔やんだ。
「VSCはその後に出たから、僕には何もできなかった。キミとマックスにはおめでとうと言いたい。今日は2人とも素晴らしいレースをした。僕たちには運がなかったけど、追いつこうと全力を尽くした」
「厳しいレースだった。勝利が僕たちの手から離れていってしまった。勝つに値するレースだったと思うけど、受け入れるしかない」
「僕は本当に懸命に取り組んでいるし、マシンからかなり多くを引き出せていると感じている。今日は完璧なレースができたと思う。ただ、運が味方しなかった」

角田裕毅14位 リンドブラッドは9位入賞
角田裕毅は15番グリッドからハードタイヤでスタート。序盤のターン1でサインツJr.と接触する場面もあり、厳しいレースを強いられた。
その後もポイント圏へ進出するだけのペースを得られず、14位でフィニッシュ。レーシングブルズ復帰後3戦目となったスペインGPでもポイント獲得には届かなかった。
一方、チームメイトのリンドブラッドは10番グリッドから9位に入り、ポイントを獲得。角田はチームメイトから5ポジション後方でレースを終えることになった。
アストンマーティン・ホンダ無得点 アロンソ17位
アストンマーティン・ホンダにとっては厳しいホームレースとなった。アロンソは後方からのスタートとなり、サインツJr.との接触もありながら17位でフィニッシュ。ポイント獲得には遠く及ばなかった。
ストロールはブレーキトラブルによってターン20で停止し、リタイア。これによって出されたVSCが結果的に勝敗を大きく左右することになった。
アストンマーティン・ホンダは2台とも無得点でスペインGPを終えた。
ペレスは水系統の問題 サインツJr.も完走できず
リタイアは4台。ハミルトンとストロールがともにブレーキトラブルでレースを終えたほか、ペレスは水系統の問題が疑われるトラブルによってリタイアした。
サインツJr.もマシントラブルによってホームレースを完走できず。予選でのグリッド降格、角田やアロンソとの接触、5秒ペナルティに続き、厳しい週末となった。
初開催のマドリンクでは、事前に懸念されていた赤旗やセーフティカーによる大混乱は起こらなかった。それでも、わずかなVSCのタイミングがレース全体を大きく動かした。
序盤を支配したノリスが最大の不運に見舞われる一方、その機会を最大限に生かしたアントネッリが勝利。タイヤ戦略、ピットストップ、トラックポジションが最後まで勝敗を左右するF1スペインGPとなった。