カテゴリー: メルセデスF1

  • キミ・アントネッリ F1オランダGP予選3番手もミス続き「いい警鐘になった」

    キミ・アントネッリ F1オランダGP予選3番手もミス続き「いい警鐘になった」

    アンドレア・キミ・アントネッリは、2026年F1オランダGPで相次いだ自身のミスを「いい警鐘になった」と受け止めている。予選では3番手を獲得したものの、最後のアタックでターン1を慎重に入りすぎたことを悔やみ、ポールポジションを狙える速さがあったと振り返った。

    今季ここまで11戦で6勝を挙げてドライバーズ選手権をリードするアントネッリだが、ザントフォールトではチームメイトのジョージ・ラッセルに後れを取っている。

    スプリントではラッセルがポール・トゥ・ウインを飾り、アントネッリは表彰台を逃した。予選でもラッセルに0.031秒及ばず3番手となった。

    「全体的に難しいセッションだった」とアントネッリは語った。

    「ずっと後手に回っているような感じだった。最後のラップではターン1でミスをして、コンマ数秒を失った。僕のミスだ。ポールを狙えるチャンスが本当にあったと思うから残念だ」

    アントネッリは予選を通じてマシンバランスにも苦戦。特にセクター3のシケインで思うような感触を得られなかったという。

    「正直、セッションを通してずっとバランスに苦しんでいた。特にセクター3で、シケインが難しかった。でも、いくつか変更を加えたことでフィーリングが戻ってきた」

    アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ)

    雨を意識しすぎたターン1がポール争いに響く
    Q3最後のアタックでは雨粒が落ち始めていた。アントネッリはバイザーに雨粒が当たるのを確認し、ターン1への進入で慎重になりすぎたことがタイムロスにつながったと説明した。

    「最後のラップではセクター1でミスをした。バイザーに雨が当たっているのが見えて、少し慎重になりすぎた。セクター1は本当に良くなかった」

    「Q3ではチャンスがあると思っていた。でも最後のラップを始めて、セクター1でコンマ2秒遅れているのを見たときは『これは厳しいな』と思った。それでも残りのラップでかなり取り戻すことができた」

    「ポールを狙えたと思うから残念だけど、明日は3番手スタートだし、まだすべてがかかっている」

    アントネッリにとって、ザントフォールトでの一連のミスは今季の好調ぶりのなかで改めて気を引き締めるきっかけにもなった。

    「余計なプレッシャーを感じているわけではない。でも、この週末はすごくいい警鐘になった。絶対に気を緩めてはいけないということだ」

    「気を緩めると、昨日のようにミスをするし、今日もQ3でミスをした。緊張して走っているとか、そういうことではない。この週末は、自分がやるべきことをもう一度正しい場所に戻して、本当に重要なときに結果を出さなければならないという、いい警鐘になったと思う」

    それでも予選3番手につけ、決勝ではラッセルとともにノリスを追う位置からスタートする。今季のタイトル争いをリードするアントネッリにとって、ミスが続いたザントフォールトでどのように立て直すかが問われる決勝となる。

  • キミ・アントネッリ F1オランダGPスプリント予選で痛恨のコースオフ「フロアに穴」

    キミ・アントネッリ F1オランダGPスプリント予選で痛恨のコースオフ「フロアに穴」

    アンドレア・キミ・アントネッリは、F1オランダGPのスプリント予選で5番手となった。SQ1でコースオフした際にマシンのフロアを大きく損傷し、その後はダウンフォースを失った状態で走っていたことを明かした。

    メルセデスのチームメイト、ジョージ・ラッセルがポールポジションを獲得する一方、アントネッリは0.227秒差の5番手。

    それでも、フロアに「いくつか穴」が開き、一時は大幅なパフォーマンス低下を抱えていたことを考えれば、ダメージを最小限に抑えた結果だった。

    SQ1のコースオフでフロアを損傷
    アントネッリはSQ1最初のタイムアタックで、終盤のコーナーへの進入時にリアを失い、そのままグラベルへ飛び出した。マシンはグラベル上を滑りながらコースへ復帰したが、その際にフロアが損傷した。

    アントネッリはピットへ戻り、メルセデスは短時間で損傷状況を確認。可能な限りの応急修理を施したものの、完全に元の状態へ戻すことはできなかったという。

    「コースオフした後、フロアにいくつか穴が開いていた」

    アントネッリはSky Sportsにそう説明した。

    「ピットに戻ったとき、最初は25ポイント分のロスがあると言われた。チームができる限り修復してくれたけど、それでもダメージは残っていた。特に低速ではかなり苦戦した。でも、仕方ない」

    ここでいう「25ポイント」は空力性能を示すダウンフォースの指標であり、フロア損傷によってマシン本来の空力性能を大きく失っていたことを意味する。

    「少し進入速度が高すぎた」
    アントネッリはコースオフについて、自らのミスだったことも認めている。

    「最初のラップの最後のコーナーで、少し進入速度が高すぎた。それでリアを失ってグラベルに入ってしまった。それだけだ」

    一度大きくマシンを乱したうえ、フロアにもダメージを負ったことで、その後のスプリント予選では再び限界まで攻めるための自信を取り戻すことも簡単ではなかった。

    「もちろん、自信を取り戻していくのは簡単ではなかった。それでもかなり近いところにはいられたし、明日また挑戦する」

    実際、アントネッリはダメージを抱えながらSQ1を突破し、最終的にSQ3まで進出。ポールポジションを獲得したラッセルとの差を0.227秒にとどめた。

    アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ)

    ダメージを抱えたままスプリントへ
    土曜日のスプリントでは5番グリッドからスタートする。フロアのダメージを抱えた状態でのレースとなるが、アントネッリは上位争いを諦めていない。

    「できる限りいいレースをしたい。もちろん、前はものすごく接近しているので、オーバーテイクは簡単ではないと思う。それでも、ダメージがある状態でもできる限りのことをする」

    スプリント終了後には通常の予選に向けてマシンを修復できるため、そこから改めて仕切り直す考えだ。

    「その後、予選に向けてマシンをきちんと直して、もう一度挑む」

    ヴォルフ「20ポイントを失っていた」
    メルセデスF1のチーム代表トト・ヴォルフも、アントネッリのフロア損傷が大きなものだったと説明した。

    「キミはフロアに穴が開いたことで20ポイントを失った。ただ、我々はそこを補修することができ、その後は完全な状態に見えた」

    アントネッリが当初伝えられた「25ポイント」に対し、ヴォルフは「20ポイント」としているが、いずれにしても無視できない規模の空力損失だったことが分かる。

    一方でヴォルフは、最終的な5番手という結果について、フロア損傷だけが原因だったわけではないとも指摘した。

    「本当に僅差だ。ギャップは非常に小さい。彼はターン11への進入で少しミスをして、プッシュしすぎた。こういう状況では、タイムはすぐに失われてしまう」

    FP1ではトップタイムを記録していたアントネッリだけに、スプリント予選でもポールポジション争いに加わるだけの速さはあった。SQ1でのひとつのコースオフがフロア損傷につながり、その後のセッション全体に影響を及ぼした形だ。

    それでも大きな空力ロスを抱えながら5番手を確保し、ラッセルとの差を0.227秒に抑えたことは、アントネッリとメルセデスの基礎的な速さを示す結果でもある。まずはダメージを抱えた状態で臨むスプリントを乗り切り、その後の予選では修復されたマシンで改めて上位を狙う。

  • ジョージ・ラッセル F1オランダGPスプリントPP「婚約指輪を渡して軽くなったかな」

    ジョージ・ラッセル F1オランダGPスプリントPP「婚約指輪を渡して軽くなったかな」

    ジョージ・ラッセルは、2026年F1オランダGPのスプリント予選でポールポジションを獲得。サマーブレイク中に長年のパートナーであるカルメン・モンテロ・ムントと婚約したことを引き合いに出し、無線で喜びを表現した。

    メルセデスのラッセルは、ザントフォールトで行われたスプリント予選でランド・ノリス(マクラーレン)をわずか0.041秒差で退けてトップタイムを記録。今季3度目のスプリントポールを獲得し、厳しい形で終えたシーズン前半戦からの再スタートを飾った。

    「婚約指輪で少し軽くなったかな」
    ポールポジションを決めた直後、ラッセルはチーム無線でジョークを飛ばした。

    「よし! 婚約指輪のおかげで少し軽くなったかな!」

    28歳のラッセルはサマーブレイク中、長年交際してきたカルメン・モンテロ・ムントにプロポーズし、婚約を発表していた。

    パルクフェルメでは、好調な形で後半戦をスタートできたことへの安堵を口にした。

    「シーズン前半の最後は厳しかったから、こうして戻ってこられて本当にうれしい」

    「ラップの感触はすごくよかった。スプリント予選はまとめるチャンスが1周しかないから、いつも難しい。でも今回はすべてがうまくまとまった」

    ラッセルにとって、セッションをトップで終えるのは久しぶりだった。

    「どのセッションでもタイムシートのトップに立つのはしばらくぶりだった。最後がいつだったのか思い出せないくらいだ。まだ自分が運転できるんだって、自分自身に思い出させることができてよかったし、今回の休みはいいタイミングだった」

    ただし、ラッセルはスプリントのポールだけで週末の勢力図を判断することには慎重だ。

    「でも、これはまだスプリントにすぎない。重要なのはメインの予選だ。マクラーレンは本当に速そうだし、フェラーリも速い。ここ数戦はチームとして僕たち自身も驚くようなところがあったけど、今はいい位置にいる」

    「今週末は本当に先入観を持たずに入った。どうなるのかまったく分からなかったからね」

    「自信が最高の状態だったわけではない。でも、自分自身とマシンからどんなフィーリングが必要なのかを思い出して、シーズン最初のレースのように考えて、あまり考えすぎないようにした」

    ジョージ・ラッセル(メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ) / オランダグランプリ

    ヴォルフも婚約をネタに「肩の荷が下りた」
    メルセデスF1のチーム代表トト・ヴォルフも、ラッセルの復調と婚約を結びつけて冗談を飛ばした。

    「ジョージが戻ってきた。カルメンが彼のプロポーズを受け入れてくれたことで、肩にかかっていたプレッシャーがずいぶん減ったんじゃないかな!」

    「日々の仕事をしっかり積み重ね、すべてをつなぎ合わせて、とてもいいラップを走った」

    ラッセルは現在、ドライバーズ選手権でチームメイトのアンドレア・キミ・アントネッリに59ポイント差をつけられている。シーズン前半の終盤は思うような結果を残せなかっただけに、ザントフォールトでのスプリントポールは後半戦に向けた重要な一歩となった。

    「婚約でコンマ数秒速くなれば」
    ラッセルは木曜日のドライバー記者会見でも、サマーブレイク中のプロポーズについて語っていた。

    「すごく特別だったし、本当にいい時間だった。かなりいろいろ考えたし、指輪をデザインしたりする過程もすごく興味深かった」

    「いざその瞬間になったら、実際には言葉が出てこなかった。片膝をついた瞬間に突然ものすごく緊張してしまった。でも素晴らしかったよ」

    さらに、婚約がF1でのパフォーマンスにも好影響を与えることを期待していると冗談を交えていた。

    「コンマ数秒でも速くなればいいね。もし婚約でコンマ数秒速くなるなら、ランドだって婚約すると思うよ」

    その一方で、ラッセルはF1ドライバーとして戦ううえで、私生活の安定が大きな意味を持つとも説明している。

    「プライベートの生活はすごく重要だ。僕たちはみんな本当に慌ただしい生活を送っている。その生活を一緒に過ごし、感情の浮き沈みを共有してくれる人は、とても大切な存在だ。僕はカルメンと本当に長い間一緒にいる」

    「彼女はずっと僕の人生ですごく重要な存在だったから、何かが大きく変わるとは思っていない。ただ、僕たちにとって必要だった次のステップに進むということだった」

    サマーブレイク前には自信を失いかけていたことも認めたラッセルだが、休暇を挟んだザントフォールトではスプリント予選で即座に速さを示した。婚約による“コンマ数秒”の効果が本当にあったかはともかく、後半戦最初の予選セッションでトップに返り咲いたことは、ラッセルにとって大きな自信につながる結果となった。

  • ジョージ・ラッセル メルセデスF1での立場に自信「不安は一度もなかった」

    ジョージ・ラッセル メルセデスF1での立場に自信「不安は一度もなかった」

    ジョージ・ラッセルは、マックス・フェルスタッペンのメルセデス移籍説が長期間にわたって取り沙汰されていたなかでも、自身のF1シートが脅かされていると感じたことは「一度もなかった」と明かした。チーム代表のトト・ヴォルフとメルセデスから「100%の安心感」を得ていたという。

    フェルスタッペンはレッドブル・レーシングとの契約を2030年末まで延長することを発表し、将来を巡って続いてきた移籍の憶測に事実上の終止符を打った。

    そのなかでも繰り返し移籍先の候補として名前が挙がってきたのがメルセデスだったが、ラッセルは外部での報道とチーム内部で認識されていた状況には違いがあったと説明している。

    フェルスタッペン移籍説「僕たちにとって話題になるのは記者会見くらい」
    2026年F1第12戦オランダGPを前に行われたFIA木曜記者会見では、フェルスタッペンがレッドブルとの新契約を結んだことを受け、ラッセルに長く続いたメルセデス移籍説について質問が飛んだ。

    フェルスタッペンがメルセデスと結びつけられ続けたことに、苛立ちを感じることはなかったのか。そう問われたラッセルは、ランド・ノリスが同様の話題について語ったことを引き合いに出しながら答えた。

    「ランドがさっき言っていたことと似ている。僕たちにとってこういうことが話題になるのは、基本的に君たち記者の前に座って、こういう質問をされるときくらいなんだ」

    外部では大きな話題となっていたものの、ラッセル自身が日常的にフェルスタッペンの動向を気にしていたわけではなかったという。

    「この数年間、メルセデスの内部では現実がどういうものなのか、常に非常に明確だった」

    フェルスタッペンとメルセデスを巡る報道が続いていた間も、チーム内部では自身の立場について疑念を抱くような状況ではなかったとラッセルは強調した。

    「僕のシートが脅かされていると感じたことは一度もない」
    ラッセルはさらに、フェルスタッペン側とメルセデスの間で何らかの話し合いが行われていたとしても、それ自体はF1では特別なことではないとの見方を示した。

    「もしかすると、彼のチームがマクラーレンやフェラーリ、あるいはその他のチームと行っていた話し合いより、メルセデスとの話の方が少し公になっていただけなのかもしれない」

    「それがこのスポーツの性質なんだ。ドライバーはいろいろなチームと話をするし、チームもいろいろなドライバーと話をする。誰もが自分の手札がどうなっているのか確認しなければならない」

    そのうえで、自身のメルセデスでの立場について明確に語った。

    「でも、僕のシートが脅かされていると感じたことは一度もなかった。トトとチームから100%の安心感を得ていたし、それはもちろん今も続いている」

    フェルスタッペンというF1屈指のドライバーがメルセデス移籍候補として名前を挙げられていても、ラッセル自身はそれを自分のシートを失う可能性と結びつけてはいなかった。

    ヴォルフもドライバー変更を否定
    フェルスタッペンとメルセデスを巡る憶測は長く続いてきたが、ヴォルフも今季、ラッセルとアンドレア・キミ・アントネッリによる現在のラインアップを変更する考えがないことを明確にしていた。

    ヴォルフは6月、メルセデスのドライバーラインアップについて「我々は変更したくない」と発言。現在の2人に「非常に満足している」として、フェルスタッペンとの関連が取り沙汰されるなかでもラッセルとアントネッリへの信頼を示していた。

    そしてフェルスタッペンが2030年までレッドブルに残留することを決めたことで、少なくとも当面の間、メルセデス移籍を巡る議論には区切りがつくことになった。

    ラッセルにとっても、外部から見れば自身の将来に影響しかねない話題だったが、本人の受け止め方は大きく異なっていたことになる。

    ジョージ・ラッセル(メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ)

    2026年はタイトルを争う立場
    ラッセルが自らの立場に強い自信を持つ背景には、現在のメルセデスで担っている役割とパフォーマンスもある。

    2026年シーズン前半を終えた時点でメルセデスはコンストラクターズ選手権をリード。ドライバーズ選手権ではアントネッリが首位に立ち、ラッセルもタイトル争いに加わっている。

    オランダGP前の時点でラッセルはアントネッリから59ポイント差。会見でタイトル争いについて聞かれると、現時点ではポイント差そのものを意識するより、自身のパフォーマンスを改善することが重要だと語った。

    「それについてはあまり考えていない。ひとつひとつのレースに取り組んでいるだけだ」

    「争いに加わりたいなら、自分のパフォーマンスを改善する必要があることは分かっている。それが一番の優先事項だ。パフォーマンスが良くなればポイント差は縮まる。それだけのことだよ」

    サマーブレイク前には難しいレースも続いたが、後半戦では再び自身のリズムを取り戻すことを目指している。

    フェルスタッペン残留で長年の憶測に区切り
    フェルスタッペンの将来を巡る議論では、メルセデスが有力な選択肢として取り上げられるたびに、ラッセルの立場にも注目が集まってきた。

    しかし、ラッセルによれば、そうした状況はあくまで外部から見たものだった。メルセデス内部では自身の立場について明確な認識が共有されており、ヴォルフとチームから「100%の安心感」を得ていた。

    また、ライバルチームのドライバーと話をすること自体についても、ラッセルはF1では当然のプロセスだと受け止めている。各チームが将来の選択肢を探り、ドライバー側も可能性を確認するのは「このスポーツの性質」だという考えだ。

    フェルスタッペンが2030年までレッドブルに残ることを決断したことで、長く続いたメルセデス移籍説はひとまず終息する。それでもラッセルにとっては、自らの将来を脅かしていた問題が解決したという感覚ではない。「僕のシートが脅かされていると感じたことは一度もなかった」という言葉からは、外部の移籍報道に左右されることなく、メルセデスとの関係に確信を持ち続けていたことがうかがえる。

  • ジョージ・ラッセル F1王座争いで59点差 クルサード「考えすぎ」に警告

    ジョージ・ラッセル F1王座争いで59点差 クルサード「考えすぎ」に警告

    ジョージ・ラッセルは、2026年F1シーズン前半戦を終え、メルセデスのチームメイトであるアンドレア・キミ・アントネッリに59ポイント差をつけられている。開幕戦オーストラリアGPを制した好スタートから一転、タイトル争いでは追う立場となった。

    元F1ドライバーのデビッド・クルサードは、ラッセルが不運やトラブルを重ねるなかで「考えすぎ」に陥る危険性を指摘。

    一方、経験の浅いアントネッリについては、若さゆえに余計なことを考えず、本能的にドライブできていることが強みになっているとの見方を示した。

    開幕戦勝利から一転 ラッセルを襲った不運
    ラッセルはメルボルンで行われた開幕戦を制し、2026年シーズンを最高の形でスタートさせた。しかし、その後の勝利は1回にとどまっている。

    対照的にアントネッリは6勝を挙げ、ドライバーズランキング首位を確立。シーズン折り返し時点でラッセルとの差は59ポイントまで広がった。

    純粋な速さでアントネッリが上回る場面もあった一方、ラッセルは信頼性トラブルやコース上でのアクシデントにも見舞われてきた。クルサードは『Up To Speed』ポッドキャストで、ラッセルの前半戦について厳しい状況だったと振り返った。

    「ひどいシーズンになっている。ひとりの人間に、いったいどれだけ不運が続くんだというくらいだ」

    「その不運については、チームが解決しなければならない部分もある。一方で、ジョージは今、勢いに乗れていない」

    クルサードが警告「考えすぎ」の悪循環
    クルサードが懸念しているのは、不運そのものだけではない。結果が出ない状況が続くことで、ラッセルがドライビングについて必要以上に考え始める可能性があると指摘した。

    その状況をクルサードはテニスに例えている。

    「テニス選手が高く上がったボールを迎えて、簡単なスマッシュを決めればポイントを取れるという場面があるだろう。それなのに、考えすぎてネットにかけてしまうことがある」

    「ジョージは今、そういうシーズンの段階にいる。キミは本能的にドライブしていて、バルセロナを除けば信頼性にもかなり恵まれている。一方でジョージは、ずっとパンチを受け続けている」

    ラッセルにとって経験は本来、大きな武器になる。だが、クルサードはタイトル争いという極度のプレッシャーのなかでは、その経験が逆に思考を複雑にする可能性もあると考えている。

    アントネッリは「知らないことを知らない」若さが武器
    2026年のタイトル争いでアントネッリが持つ強みについて、クルサードはF1経験の少なさそのものがプラスに働いている可能性を挙げた。

    「彼(ラッセル)は少し年上で、経験がある。経験はもちろん良いことだ。ただ、若さの利点というのは、自分が何を知らないのかさえ知らないことにある」

    「経験のマイナス面は、どれほど難しいのか、どんな課題があるのか、勢いがどれほど重要なのか、そういうことを全部知っていることだ」

    アントネッリにとって、F1でタイトルを争うこと自体が初めての経験だ。そのため、過去の失敗やタイトル争いの難しさを必要以上に意識せず、目の前のレースに集中できる。

    対するラッセルは、F1で積み重ねてきた経験があるからこそ、59ポイントという数字やシーズンの流れ、失ったポイントの意味まで理解できる。その違いが心理面に影響する可能性をクルサードは指摘している。

    59点差から逆転は可能も「ロッキーでも書かない」
    もちろん、59ポイント差は数学的に逆転不可能な数字ではない。クルサードも、過去のF1タイトル争いを振り返れば、大きなポイント差から流れが変わる可能性があることは認めている。

    「昨年のマックス・フェルスタッペンを見ても分かるように、このポイント差からでも挽回することはまだ可能だ」

    しかし、ラッセルが今季経験してきたトラブルや不運まで考慮すれば、実際に逆転タイトルを実現するハードルは極めて高いという。

    クルサードは映画『ロッキー』シリーズを引き合いに出し、ラッセルの置かれた状況を表現した。

    「でも、これだけパンチを受け続けたところから逆転するような『ロッキー』の映画は、シルベスター・スタローンだって書かないだろう」

    「だから、ジョージにとっては人間的な強さを築く一年になるだろう」

    メルセデス内のタイトル争いで問われるラッセルの立て直し
    メルセデスが2026年F1で高い競争力を示すなか、ラッセルにとって最大の比較対象は同じマシンを駆るアントネッリだ。

    59ポイント差という状況では、ラッセル自身が速さを取り戻すだけでは十分ではない。信頼性問題を減らし、取りこぼしを防ぎながら、アントネッリより多くのポイントを継続的に獲得していく必要がある。

    クルサードの指摘は、ラッセルの能力そのものを疑問視するものではなく、不運が続いたことで生じる心理的な悪循環への警告と言える。タイトル争いの経験を持たないアントネッリが本能的に結果を積み重ねる一方、ラッセルには経験を「考えすぎ」ではなく立て直しの武器に変えられるかが問われる。

    シーズン後半戦、ラッセルが59ポイント差をどこまで縮められるのか。逆転タイトルへの道のりは厳しいが、クルサードが語るように、この苦境をどう乗り越えるかはラッセルのF1キャリアにとって重要な意味を持つことになりそうだ。

  • メルセデスF1 同じPUでもカスタマーと性能差「ツールセットが違う」

    メルセデスF1 同じPUでもカスタマーと性能差「ツールセットが違う」

    メルセデスF1は、2026年に導入された新世代パワーユニット(PU)を巡り、ワークスチームとカスタマーチームの間で性能を引き出す能力に差が生じている理由を説明した。

    メルセデスは現在、マクラーレン、アルピーヌ、ウィリアムズにPUを供給している。しかし、同じメルセデス製PUを使用していても、ワークスチームほど性能を引き出せていないとの声がカスタマー側から上がっている。

    メルセデスF1の副チーム代表ブラッドリー・ロードによれば、その背景にはPUそのものではなく、シミュレーションや予測に使用する「ツールセット」の違いがあるという。

    同じメルセデスPUでも性能を引き出せないカスタマー
    2026年はF1の新パワーユニット規則が導入された最初のシーズンであり、メルセデスはここまで11戦中8勝を挙げ、新規則への対応で一歩先を行っている。

    一方、メルセデスPUを搭載するカスタマーチームからは、シーズン序盤からワークスとの差について疑問が示されてきた。

    マクラーレンのチーム代表アンドレア・ステラは開幕戦オーストラリアGPで、メルセデスについて「彼らがやっていることを見ると、我々よりもはるかに多くのことを理解している。それに、情報の流れも想定していたものとは違っているのかもしれない」と語っていた。

    ステラは、メルセデスF1とPUを開発・製造するメルセデス・ハイパフォーマンス・パワートレインズ(HPP)がより密接に連携できることについては「当然だ」と認める一方、マクラーレンとしてHPPとの協力をさらに強化したいとの考えを示していた。

    この問題はその後も続き、イギリスGPではメルセデスがストレート上で使用していたスロットルリフトの手法が注目を集めた。

    ステラは「少し驚いた。これは我々が話し合ってきたものではないし、そもそも我々が利用できるものなのかさえ分からない」とコメント。「あのようにPUを使うには、おそらく何らかの追加要素が必要なのだと思う」と語った。

    メルセデス「すべてルールと契約に従っている」
    これに対し、ブラッドリー・ロードは、ワークスチームがPUからより多くの性能を引き出せている理由について、供給されるPU自体の違いではなく、それを使いこなすための技術基盤にあると説明した。

    「すべてルールに従っているし、すべて契約に従っている」

    ロードはそう強調した。

    「マクラーレン、そして他のカスタマーチームであるアルピーヌとウィリアムズは素晴らしいパートナーだと思っている。当然ながら彼らの要求水準は高い。優れたサポートと優れた製品を提供する会社と仕事をしたいからこそ、彼らはメルセデスを選んでいる」

    「ブリックスワースのPUチームは、長年にわたるカスタマー供給を通じて、非常に公平かつ適切な方法でそれを行っていることを証明してきた」

    つまり、メルセデスHPPはカスタマーチームに対して意図的に性能を制限したPUを供給しているわけではないということだ。

    性能差を生むのはPUではなく「ツールセット」
    では、なぜ同じPUを使いながら差が生まれるのか。

    ロードは、最大の要因としてシミュレーション技術やPUとシャシーの挙動を予測するためのツールを挙げた。

    「おそらく避けられないことだが、違いがあると認識されたり、カスタマー側が一歩遅れていると感じたりする部分がある。それは多くの場合、シミュレーションツールや、PUとシャシーがどのように振る舞うかを予測する能力といったところにある」

    「そして、そうしたツールセットの多くは、ブリックスワースだけで開発したものではない。MGP(メルセデス・グランプリ)のシャシーチームとブリックスワースのHPPが共同で開発してきたものだ」

    ここが重要なポイントとなる。

    PUそのものに関する技術やデータはHPPからカスタマーへ提供できても、メルセデスF1のシャシーチームが開発に関与した技術は、F1の知的財産(IP)に関する規則によって、そのまま他チームへ渡すことはできない。

    「技術レギュレーションでは、シャシーチームのIPについて、チーム間で何を共有できて何を共有できないかが非常に明確に定められている」

    メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ

    カスタマー側も独自開発への投資が必要
    そのため、メルセデスがワークスチームで使用している技術をカスタマーへ提供する場合、シャシーチームのIPに該当する部分を切り離す作業が必要になるケースもある。

    あるいは、カスタマーチーム自身が予算を投入し、同様の能力を持つ独自のツールを開発しなければならない。

    「場合によっては、カスタマーチームに提供できるようにする前に、要素を切り分ける作業が必要になる」

    「あるいは、カスタマーチーム自身が作業を行い、PUを最大限に活用するためのツールを開発するために、自分たちのコストキャップ内のリソースを使って投資する必要がある」

    ロードは、これが2026年の新規則で浮上した複雑な問題のひとつだと説明する。

    「おそらく、これが我々が直面している複雑さのひとつだ。ただ、まったく新しいレギュレーションであり、しかも以前より複雑な規則であることを考えれば理解できることでもある」

    シーズン中盤でも続く新PUの学習
    2026年のPU規則は従来以上に複雑であり、ロードによれば、ワークスのメルセデス自身もまだ完全に理解し尽くしたわけではない。

    「メルボルンで開幕を迎えられるところまで持っていくこと自体、全員にとって本当に大仕事だった」

    「ここ数戦を見ても、まだ急激な学習曲線の途中にいる。シーズンの半分まで来ても、我々はデバッグを続けているし、思わぬ問題につながるものを発見し続けている」

    それでも、現時点で新PU規則を最もうまく活用しているのはメルセデスだ。

    2026年シーズン前半の11戦でメルセデスは8勝を挙げ、フェラーリが2勝、マクラーレンがハンガリーGPで1勝を記録している。

    コンストラクターズ選手権ではメルセデスがフェラーリに72ポイント差をつけて首位。ドライバーズ選手権でもキミ・アントネッリがルイス・ハミルトンに50ポイント差をつけてランキングトップに立っている。

    同じメルセデスPUを搭載していても、PUの性能を最大限に引き出すには、エンジンそのものだけでなく、シャシーとの統合、シミュレーション、制御方法を予測する技術基盤が不可欠となる。2026年の新規則では、その「使いこなす能力」がワークスとカスタマーの新たな差になっている。

  • メルセデスF1 ヴォルフは“迷信深い” アントネッリ50点リードにも慎重

    メルセデスF1 ヴォルフは“迷信深い” アントネッリ50点リードにも慎重

    メルセデスF1のチーム代表を務めるトト・ヴォルフは、2026年F1世界選手権でランキング首位に立つアンドレア・キミ・アントネッリについて、現時点でタイトル最有力候補と位置づけるのは「まだ早すぎる」と慎重な姿勢を示した。

    アントネッリはシーズン前半に6勝を挙げ、ドライバーズ選手権でルイス・ハミルトンに50ポイント差をつけて首位に立っている。それでもヴォルフが警戒しているのが、残されたレース数の多さとメルセデスが抱える信頼性の問題だ。

    アントネッリが50ポイント差で首位
    2026年のアントネッリは、F1キャリアでいくつもの「初」を経験してきた。初ポールポジションを獲得し、中国GPではF1初勝利。その後も勝利を重ね、シーズン前半だけで6勝を記録した。

    現在、ランキング2位のハミルトンとの差は50ポイント。メルセデスのチームメイトであるジョージ・ラッセルは、そこからさらに9ポイント後方につけている。

    メルセデスのW17は今季ここまで総合的に最速と評価できるパッケージを備えてきた。一方、夏休み前にはフェラーリ勢やランド・ノリスも勝利を挙げ、直近5戦では5人の異なるウイナーが誕生。シーズン序盤と比べてトップ争いは混戦の様相を強めている。

    50ポイントというリードは、現在のポイント制度ではグランプリ2勝分に相当する。それでもヴォルフは、アントネッリをタイトル争いの明確な本命と呼ぶことを避けた。

    「そう言うにはまだ早すぎる」

    アントネッリがタイトル最有力候補と考えられるかを問われたヴォルフはそう答えた。

    「私は迷信深いんだ。たとえ50ポイントの差があったとしてもね。まだ非常に多くのレースが残っている。1回か2回リタイアするだけで、選手権の状況は大きく変わってしまう。それに、我々は信頼性の面で素晴らしかったわけではない」

    「だから、金曜日から日曜日まで、毎日すべてを最大限に生かし続けなければならない。そして最後に、それで十分だったという結果になればいい」

    メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ

    最大の不安材料はパワーユニットの信頼性
    ヴォルフが慎重になる背景には、単なる警戒心だけでなく具体的なリスクがある。

    アントネッリとラッセルは今季、いずれもパワーユニット関連のトラブルによるリタイアを経験している。シーズン後半に向けて規定数を超えるパワーユニットコンポーネントが必要になれば、グリッド降格ペナルティを受ける可能性がある。

    メルセデスの副チーム代表ブラッドリー・ロードも、追加コンポーネントの投入によるグリッドペナルティについて、今季のどこかで「避けられない」との見方を示している。

    アントネッリが50ポイントのリードを持っていても、リタイアとグリッド降格が重なれば、その優位は急速に縮小する可能性がある。ヴォルフの発言は、タイトル争いを左右しかねないメルセデスの弱点を踏まえたものでもある。

    アップグレードとコスト上限のバランス
    さらにメルセデスは、W17の開発をどこまで継続するかという判断も迫られている。

    F1ではコスト上限の中でマシン開発を進める必要があり、シーズン中の追加支出は無制限ではない。アップグレードの投入時期や追加パーツにかかるコストを管理しながら、タイトル争いに必要なパフォーマンスを確保する必要がある。

    ヴォルフは、こうした要素がチーム運営に影響することを認めている。

    「すべてが影響してくる」

    「もちろんマレーシアに行くのは素晴らしいことだが、我々はチームとしてのコストも引き続き監視しなければならない」

    「これはマレーシアそのものに関係する話ではない。むしろ、いつアップグレードを投入できるかということだ。ただ、我々はアップグレードを投入していく」

    メルセデスにとってシーズン後半は、W17の速さを維持するだけでは十分ではない。信頼性を確保しながら、コスト上限の範囲内で開発を続け、パワーユニットのグリッドペナルティによる損失も最小限に抑える必要がある。

    6勝を挙げ、50ポイント差でランキング首位に立つアントネッリは数字上ではタイトル争いをリードしている。しかし、ヴォルフが「まだ早すぎる」と強調するように、メルセデスにとって最大の課題は、その優位をシーズン最後まで守れるだけの信頼性と開発力を確保できるかどうかにある。

  • マクラーレンF1 同じメルセデスPUでなぜ遅い? ワークスとの差は「投資」

    マクラーレンF1 同じメルセデスPUでなぜ遅い? ワークスとの差は「投資」

    マクラーレンは2026年F1シーズン、メルセデスと同じパワーユニット(PU)を搭載しながら、その性能をワークスチームほど引き出せていない。この差をめぐり、メルセデスとマクラーレン双方の技術陣が、その背景にある複雑な事情を明らかにしている。

    問題の核心にあるのは、単純なPUの仕様差ではない。新世代PUを車体と組み合わせて最適に運用するためのシミュレーションツールやソフトウェア、そしてそれらを開発・運用するためのリソースだ。

    メルセデス側は、マクラーレンがさらに自ら投資する必要があるとの見方を示している。

    同じメルセデスPUでも生まれた性能差
    2025年にドライバーズ、コンストラクターズの両タイトルを獲得したマクラーレンだが、新しいテクニカルレギュレーションが導入された2026年は苦戦を強いられている。

    夏休み前のハンガリーGPではランド・ノリスが今季初のポールポジションから勝利を挙げたものの、それまでの10戦で表彰台は4回。コンストラクターズランキングでは、前年に364ポイント差をつけて破ったメルセデスに対し、現在は159ポイントのビハインドを抱えている。

    その要因のひとつとして注目されてきたのがPUの使い方だ。

    2026年のF1では、内燃エンジンと電動部分の出力比率が53対47となり、従来以上にエネルギーマネジメントが重要になった。同じメルセデス製PUを使用していても、車体特性に合わせた制御やエネルギー配分によって実際のパフォーマンスには差が生じる。

    マクラーレンのチーム代表アンドレア・ステラは6月末、ストレートでメルセデスに最大約0.15秒/周を失っていると説明していた。

    さらに7月のイギリスGPでは、メルセデスのワークス車両が予選で使用していたPUのパフォーマンスを引き出す手法について、マクラーレン側が驚きを示す場面もあった。

    「HPP(メルセデス・ハイパフォーマンス・パワートレインズ)とは技術レベルで継続的に話し合っている。この素晴らしいPUで利用可能なものを確実に使えるようにするためだ」とステラは語った。

    「これは本当に素晴らしい技術で、多くのパフォーマンスがある。ただ、その性能は細かな使い方の部分にも存在している」

    「ストレートでのパフォーマンスを見ると、彼らの方がドラッグが少ない可能性を考慮しても、まだいくつか疑問が残っている」

    メルセデス「意図的に差をつけているわけではない」
    この問題について、メルセデスの副チーム代表ブラッドリー・ロードは、ワークスチームが意図的にカスタマーチームへ情報を与えていないという見方を否定している。

    「すべてはレギュレーションと契約に従っている。マクラーレンだけでなく、アルピーヌやウィリアムズも素晴らしいパートナーだ。彼らが要求の高い存在なのは当然だし、優れたサポートと製品を提供する会社としてメルセデスを選んでいる」

    ロードによれば、ブリックスワースのHPPは長年にわたりカスタマー供給において公平な対応を続けてきた。

    それでもワークスとカスタマーの間で差が生まれる理由として、ロードが挙げたのがシミュレーションツールだ。

    「違いがあると認識されたり、カスタマー側が一歩遅れていると感じたりする部分があるとすれば、多くの場合、それはシミュレーションツールやPUとシャシーの挙動を予測する能力といったところにある」

    ここで重要なのは、メルセデスが使用するツールのすべてがHPPだけで開発されたものではないという点だ。

    ワークス専用の技術はそのまま渡せない
    メルセデスのPU運用ツールには、ブリックスワースのHPPだけでなく、F1ワークスチームであるメルセデスのシャシー部門と共同開発したものも含まれている。

    F1の技術規則では、チーム間で共有できる知的財産(IP)について厳格な制限が設けられている。そのため、メルセデスが持っているツールをそのままマクラーレンへ渡せるわけではない。

    「そうしたツールの多くはブリックスワースだけでなく、MGP(メルセデスF1チーム)のシャシー部門とHPPが共同で開発したものだ」とロードは説明する。

    「当然ながら技術規則では、シャシーチームのIPについて、チーム間で何を共有できて何を共有できないのかが非常に明確に定められている」

    このため、カスタマーへ提供する前にワークス側のIPを切り離す作業が必要になるケースがある。

    そして、ここからマクラーレン自身の「投資」という問題が浮上する。

    「場合によっては、カスタマーチーム自身が作業を行い、自分たちのコストキャップのリソースを使って、PUから最大限の性能を引き出すためのツールを開発する必要がある」

    「おそらく、これが我々が直面している複雑さのひとつだ。ただ、新しいレギュレーションであり、しかも以前より複雑な規則になっていることを考えれば理解できることでもある」

    つまり、同じPUを購入すれば同じ性能が自動的に手に入るわけではない。PUそのものに加えて、それを最大限に活用するための解析環境にもマクラーレン自身がリソースを投入しなければならない。

    マクラーレンも「リソース不足」を認める
    この点については、マクラーレン側の説明とも一致する。

    マクラーレンのエンジニアリング担当テクニカルディレクター、ニール・ホールディは、2026年シーズン開幕前の準備について、自分たちとHPPの双方で十分なリソースを投入できていなかったと認めている。

    「PUという観点では、その運用方法や複雑さについて、まだ学ばなければならないことが多いのは明らかだった。僕たちとHPPの間で、そこに十分なリソースを投入できていなかった」

    「このレギュレーションではエネルギーマネジメントが難しくなることは分かっていたし、スタートするために良いと思えるものは準備していた」

    しかし、特にソフトウェア面ではさらに準備できる余地があったという。

    「テストや最初の数戦までに、僕たちもHPPもソフトウェア面でもっと作業できたと思う。そうしていれば、エネルギーマネジメントについて、もっと能力の高い状態でシーズンを始められたはずだ」

    マクラーレンとメルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ

    MCL40専用のキャリブレーションが必要
    問題をさらに複雑にしているのが、マクラーレンMCL40とメルセデスのマシンでは車体特性が異なることだ。

    PUが同じでも、空力特性やドラッグ、車速、燃料搭載量などが違えば、最適なエネルギーの使い方も変わる。そのためマクラーレンにはMCL40専用のキャリブレーションが必要になる。

    「僕たちのマシンはワークスチームとは違う。だから僕たちのマシン専用のキャリブレーションが必要になるが、現時点ではそれを素早く承認できるだけの能力がない」とホールディは説明する。

    開幕から3〜4戦では大きな進歩を遂げたものの、まだPUから引き出せていない性能が残されているという。

    「今後数戦、そして2027年に向けても、さらにステップを踏む必要がある。PUから得られる可能性がある最後の0.1秒を、現時点では完全には引き出せていない」

    マクラーレンは「メインループ」の外側
    マクラーレンのパフォーマンス担当テクニカルディレクター、マーク・テンプルも、カスタマーチーム特有の難しさを説明している。

    マクラーレンもPUの設計や搭載方法について相当な意見を出すことはできる。しかし最終的な決定権は、HPPとメルセデスのワークスチーム側にある。

    「僕たちにもかなりのインプットはあるが、最終的にHPPと何をするのかについて最終決定権を持つのはMGPだ。だからといって僕たちが無視されているという意味ではない。ただ、完全にコントロールしているのは僕たちではない」

    レース週末にHPPはワークス側の「メインチーム」と各カスタマー向けのサポートチームという形で活動する。

    「僕たちは少しメインループの外側にいて、プログラムへ情報を送り込むサイドループで仕事をしている。そのため、僕たちが望む設定や、自分たちに適した設定を必ずしも得られるとは限らない」

    情報が届くタイミングにも違いがある。

    「レースに向けてHPPから情報を受け取るが、その前には僕たちが参加していない意思決定や開発がある。何が使えるのか分かった時点では、それに反応して対応する時間があまり残されていないことも多い」

    マクラーレンは、この弱点を解消するために従来存在しなかった「PUパフォーマンスチーム」を新たに構築している。

    短いギア比もマクラーレンの足かせに
    もうひとつの違いがギア比だ。

    マクラーレンはシーズン開幕前に得られたメルセデス側の情報を基に、比較的短いギア比を選択した。短いギア比には加速性能やスタートなどでメリットがある一方、高速域では不利になる可能性がある。

    現在の知識を持ってもう一度選択できるならどうするかと問われたホールディは、「メルセデスにもっと近づける」と認めた。

    「もう一度やり直せるなら、メルセデスに近いギア比にすると思う」

    「短いギア比だからこそ得られるパフォーマンス上の機会もある。コーナーでより低いギアまで落とさずに済む場合もあるし、リスタートやスタートでもメリットがある」

    「ただ、高速側を考えれば、おそらく他のチームが持っているものを選ぶだろう」

    もっとも、ホールディはギア比だけで大きな差が生じているわけではないことも強調する。

    「小さなラップタイムの違いだ。ただ、そういう小さなものが積み重なると、それなりのラップタイムになる」

    「とはいえ、ここで話しているのは10分の1秒ではなく、数ミリ秒だ」

    2027年に向けて問われるマクラーレンのPU運用能力
    メルセデスとマクラーレンの説明を合わせると、2026年に生じている差を単純な「ワークス対カスタマー」という構図だけで説明することはできない。

    PUそのものは同じでも、メルセデスにはHPPとシャシー部門が共同で蓄積したシミュレーション環境があり、PUとマシンを一体として最適化できる。一方、その中には規則上マクラーレンへそのまま提供できないIPも含まれる。

    マクラーレンは独自のツールやソフトウェア、人員にコストキャップ内のリソースを投入し、MCL40に合わせたエネルギーマネジメントやキャリブレーションを構築しなければならない。

    さらに、情報を受け取るタイミング、設定に対する最終決定権、ギア比といった小さな違いも積み重なっている。

    2025年にメルセデスを364ポイント上回った王者マクラーレンが、2026年には同じPUを搭載するワークスチームを追う立場となった背景には、新世代F1で「エンジンを持っていること」と「エンジンを完全に使いこなすこと」が別の問題になったという現実がある。

    ハンガリーGPでノリスが示した速さはMCL40そのものに競争力があることを証明した。だからこそ、PUから取りこぼしている最後のパフォーマンスをどこまで回収できるか。そのための投資と技術基盤の構築が、残る2026年シーズンだけでなく2027年に向けてもマクラーレンの重要な課題となる。

  • メルセデスF1のヴォルフがV8エンジン復活を支持「純粋主義者として好きだ」

    メルセデスF1のヴォルフがV8エンジン復活を支持「純粋主義者として好きだ」

    メルセデスF1のチーム代表トト・ヴォルフが、将来のF1パワーユニット(PU)規則で検討されているV8エンジン復活を支持した。「純粋主義者として好きだ」と語り、内燃エンジンの比重を再び高める方向性に賛同している。

    2014年に始まったターボハイブリッド時代で最大級の成功を収めてきたメルセデスを率いる人物の発言だけに興味深い。

    さらにヴォルフは、2027年と2028年に予定されている現行PUの出力配分変更についても説明し、2027年により大幅な内燃エンジン出力増加を目指した案をフェラーリが阻止したことを明かした。

    V8復活を支持するトト・ヴォルフ
    FIA会長モハメド・ビン・スレイエムは、次世代PUについてV8エンジンを軸としながら電動化を残す構想を推進している。導入時期として2030年または2031年が議論されている。

    RacingNews365の独占インタビューで、ヴォルフはFIAやF1、他のPUメーカーとの協議がすでに進んでいると説明した。

    「僕はFIA会長のモハメド・ビン・スレイエムと話しているし、F1のCEOであるステファノ・ドメニカリ、それから他のエンジンメーカーとも話している」

    「現在のエンジンはとても複雑だ。そして僕たちもようやく理解し始めているところだけど、それによってレースそのものが変わった。日曜日のレースを好きな人もいる。オーバーテイクが多いからね。一方で好きではない人もいる。でも、最も適応できるドライバーが勝つ」

    ヴォルフが特に不満を示したのが、現在のPUが生み出す音だった。

    「スタート前にグリッドでマシンが10秒間エンジンを回しているのは耐えられない。火災報知器みたいな音がする」

    さらに、新しいPU特性への適応がドライバーのパフォーマンスにも影響していると指摘する。

    「ルイス(ハミルトン)を見てみればいい。彼は変わったし、パフォーマンスも大きく変わった。キミ(アントネッリ)はとてもうまくやっている。他のドライバーたちも適応しなければならなかった」

    「80対20」で1000馬力 V8+小型バッテリー構想
    ヴォルフによれば、中長期的には現在よりも内燃エンジンへの依存度を大幅に高める方向へF1が進む可能性が高い。

    「中長期的に考えると、現時点では3〜4年先ということになるけど、僕たちは再び内燃エンジンがパフォーマンスの50%以上を占めるところへ戻っていく」

    その有力案が、ビン・スレイエムが推しているV8エンジンだ。

    「ビン・スレイエムは8気筒のV8を望んでいる。いい音がするエンジンだ。それに、より小さなバッテリーを組み合わせる」

    「出力配分は内燃エンジンとバッテリーで80対20くらいになると思う。そして出力は1000馬力だ」

    自然吸気になるか、ターボなどの過給システムを残すかについては決まっていないという。

    「自然吸気になるかどうかは分からない。でも、現時点ではF1はこの方向へ進んでいると思う。僕は純粋主義者だから、これは好きだ」

    2027年はICE出力20kW増 フェラーリが50kW案を阻止
    ただし、V8時代へ移行する前にも現在のPU規則には段階的な変更が予定されている。

    2026年規則では内燃エンジンと電動側の出力を大幅に接近させたことが大きな特徴だったが、2027年以降は燃料流量を増やすことで、再び内燃エンジン側の比重を高めていく方向となっている。

    ヴォルフは、その変更にはハードウェア側の対応も必要になると説明した。

    「来年もう1年やって、その次にさらに進める。でも、エンジンを再設計する必要がある」

    「燃料流量を増やせば、今まさに僕たちがやっているように馬力が増える。そうなると、それに対応するために変更しなければならないハードウェアも出てくる」

    そしてヴォルフは、2027年にメルセデス側がさらに大きな変更を望んでいたことを明かした。

    「僕たちは来年、エンジン出力を50kW増やしたかった。でもフェラーリがそれを阻止した」

    「だから20kW増というステップになり、その後2028年に50kW増というステップになる」

    つまりF1は、V8復活という次世代規則を待つだけではなく、2027年と2028年にも段階的に内燃エンジン側の比重を引き上げていくことになる。

    F1 V型8気筒エンジン

    ドメニカリCEOも「シンプルなF1」を要求
    F1のステファノ・ドメニカリCEOも、将来規則では複雑さを減らすことが重要だとの考えを示している。

    「技術規則について最終決定権を持っているのはFIAだ。ただ、メーカー、ファン、チーム、ドライバーも含めて行っている議論は正しい方向にあると思う」

    ドメニカリが掲げるキーワードは「シンプルさ」だ。

    「将来の規則における最大の目標は、可能な限り物事をシンプルにすることだと思う。より軽いマシンをF1に導入し、持続可能燃料を使用し、もちろん電動化も残す」

    「そして何よりも、特定のモードではドライバーが可能な限り全力でプッシュできるようにしたい。それはF1ドライバーたちが常に求めてきたことでもある」

    具体的な技術仕様についてはFIAに委ねながらも、2026年末までには将来の方向性をまとめたいとしている。

    「今年末までには、議論できるパッケージを用意できると思っている」

    「現在、多くの良い話し合いが進んでいる。当然ながら、それぞれが異なる理由から異なる方向性を求めている。でも年末までには、将来に向けた適切なパッケージを用意できると思う」

    2014年以来、メルセデスは複雑なターボハイブリッド技術を最大の武器としてF1を支配してきた。そのメルセデスを率いるヴォルフ自身が、よりシンプルで内燃エンジンを中心としたV8時代への回帰を歓迎している。

    2027年、2028年と段階的にICEの比重を高め、その先にV8と小型バッテリーを組み合わせた約1000馬力のPUを導入する――。F1の次世代エンジン構想は、具体的な出力配分まで含めた議論へと進み始めている。

  • メルセデスF1 開発速度は昨年の「6〜7倍」アリソンが明かす驚異的な進歩

    メルセデスF1 開発速度は昨年の「6〜7倍」アリソンが明かす驚異的な進歩

    メルセデスのテクニカルディレクターを務めるジェームス・アリソンは、2026年に導入された新F1レギュレーションのもとで、各チームの開発速度が「桁違い」のレベルに達していることを明かした。

    F1では新たなレギュレーションが導入されると、エンジニアが規則への理解を深め、さまざまな可能性を発見していくことで、通常よりも開発ペースが速くなる傾向がある。

    特に2025年から2026年にかけてはマシン規則が大幅に変更された。そのため今季は比較的小規模なアップグレードでも大きな効果を生み、グリッド上の勢力図が頻繁に変化している。

    シーズン序盤に強さを見せたメルセデスも、最近ではフェラーリをはじめとするライバル勢の追い上げを受けている。

    風洞での開発速度は昨年の6〜7倍
    アリソンによれば、2026年のレギュレーションはまだ成熟しておらず、それが驚異的な開発速度につながっているという。

    「今回のレギュレーションサイクルを特徴づけているもののひとつは、規則がまだ非常に未成熟だということだ」

    アリソンは『Nu Silver Arrows Podcast』でそう語った。

    「開発速度は過去数年と比べて桁違いに大きい。空力面では、風洞で確認している向上率は昨シーズンのおよそ6〜7倍になっている」

    それが実際のラップタイムにどれほど影響するのかについて、アリソンは次のように説明した。

    「およそ2カ月ごとに0.5秒というペースだ。これは非常に大きな進歩率だ」

    つまり、現在のF1では数カ月の開発の遅れが、そのまま大きなパフォーマンス差につながりかねない状況にある。

    メルセデスは開幕戦に向けて開発を限界まで継続
    メルセデスは2026年型マシンの初期性能を最大限に高めるため、開幕直前まで開発を続ける戦略を選択した。

    「シーズン前に、最初のマシンをこれまで以上に限界までプッシュするという意識的な決断をした」

    「通常よりも遅い段階まで作業を続け、事実上、ほとんど余裕のないプログラムを組んだ」

    その判断には大きなメリットがあった。

    「その利点は、最初のレースまでに急激な開発曲線から可能な限り多くのパフォーマンスを取り込めたことだ。それが、マシンが非常に高いパフォーマンスレベルでシーズンを迎えることができた理由だ」

    メルセデスはシーズン序盤から高い競争力を発揮したが、その代償として、シーズン中のアップグレード投入という点ではライバルに後れを取ることになった。

    メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ

    「最初にパフォーマンスを使い切った」
    アリソンは、開幕時点の性能を優先した戦略には明確なデメリットもあったと認める。

    「欠点は、基本的にそのパフォーマンスを最初にすべて使ってしまったことだ。他のチームはマシンをもっと早く確定させたため、その分、アップグレードの開発を早く始めることができた」

    「今の僕たちは、いくつかのライバルとは開発サイクルが少しずれている」

    その結果、メルセデスが次の開発段階に向けて準備を整えている間に、ライバル勢が新パーツを投入するという状況が生まれている。

    「彼らがアップグレードを投入している一方で、僕たちは開発パイプラインを再構築してきた」

    「いま分かっているのは、どのチームもおおむね同じような速度で進歩しているということだ。つまり、競争力の勢力図は非常に速く変化する可能性がある」

    次のアップグレードで再び優位を狙うメルセデス
    メルセデスの目標は、次の大型アップグレードによってシーズン序盤に築いたアドバンテージを取り戻すことにある。

    「僕たちの目標は単純に先頭を維持し、次のアップグレードによってシーズン序盤に築いたアドバンテージを取り戻すことだ」

    「それまでは、他のチームが大きな新開発を持ち込んでくるタイミングを何とか乗り切るしかない」

    2026年のF1では、風洞での開発速度が前年の6〜7倍、ラップタイム換算では約2カ月で0.5秒という驚異的なペースで性能向上が続いている。開幕時の完成度を優先したメルセデスにとって、今後投入するアップグレードでライバル勢の追い上げを再び突き放せるかが、シーズン後半の大きな焦点となる。