カテゴリー: インディカー

  • アレックス・パロウ インディカー次世代車「IR-28」を評価「現行車にかなり近い」

    アレックス・パロウ インディカー次世代車「IR-28」を評価「現行車にかなり近い」

    インディカー・シリーズで5度のチャンピオンに輝くアレックス・パロウが、インディアナポリス・モーター・スピードウェイ(IMS)で行われた2028年導入予定の次世代マシン「IR-28」のオーバル検証テストを完了した。

    チップ・ガナッシ・レーシングのホンダ陣営を代表して走行したパロウは、予定されていたテスト項目をすべて消化。セッション終了予定時刻を15分残して走行を切り上げるなど、順調なテストとなった。

    IR-28のオーバル検証をパロウが担当
    IR-28のオーバル検証テストは2日間にわたって実施された。初日の水曜日には、シボレー陣営を代表してエド・カーペンター・レーシング(ECR)のアレクサンダー・ロッシがステアリングを握り、木曜日の2日目をパロウが引き継いだ。

    2025年のインディ500ウイナーでもあるパロウは、ホンダ勢を代表する形でIR-28をドライブした。

    ロッシが走行した初日は気温が華氏90度(約32度)に達し、湿度も高い厳しいコンディションだった。一方、寒冷前線が接近した2日目は気温が約10度下がったことで、インディカーとシャシーを製造するダラーラは異なる環境条件でデータを収集することができた。

    今回のテストで重視されたのは、純粋なラップタイムではない。さまざまなエアロダイナミクス仕様を評価するとともに、車高を大幅に変化させた際のマシンの挙動を確認することが主な目的だった。

    それでもパロウによれば、IR-28は走行を重ねるにつれて自然にスピードを上げていったという。

    「天候を考えると、予想していたよりもかなり多くの周回を走ることができたし、マシンのフィーリングもよかった」

    「実際、かなりスピードも出た。1日を通して2mph(約3.2km/h)以上速くなったけど、そのためにそれほど多くの作業をしたわけではなかった」

    インディカー・シリーズ

    「現行車にかなり近い」
    パロウは、前月にIMSのロードコースでIR-28を初めて走らせた際との違いについても説明した。

    ロードコースでは現行マシンとは明確に異なる特性を感じていたが、今回のオーバル仕様については、現在インディカーで使用されているマシンにかなり近い印象を受けたという。

    「ロードコースでは、もっとマシンと格闘しているような感じで、かなり違っていた」

    「ここではスムーズに感じたし、現行車にかなり近いと思う」

    テスト終盤には、チームがドラッグを減らした仕様を試し、IR-28はさらに1mph(約1.6km/h)以上スピードアップした。

    パロウにとって意外だったのは、本格的な予選仕様に仕上げたわけではないにもかかわらず、セットアップ変更によって明確な速度向上が確認できたことだった。

    アレックス・パロウ

    ロッシが指摘したコックピットの暑さも改善
    今回のテストでは、初日にロッシが指摘していたコックピット内部の暑さについても対策が施された。

    IR-28には現行マシンにはない冷却機能が用意されており、パロウの走行ではそのシステムを利用。結果は良好だったという。

    「昨日はロッシにとって温度が問題だったと思う。でも、僕たちは変更を加えて、このマシンで利用できる冷却を開放することができた。現行車にはないものだ」

    「それはとてもよかった。だから、細かい部分はいくつかあるけど、ロードコースのときのようなパフォーマンス面の問題ではない」

    インディカーとダラーラにとって、今回のIMSテストでは異なる気温条件でエアロ、車高、冷却など幅広いデータを収集することに成功した。

    ロードコースでは現行車との違いを強く感じていたパロウだが、オーバルでは「現行車にかなり近い」と評価。2028年の実戦投入に向けたIR-28の開発は、重要なオーバル検証のひとつを順調に終えた。

  • HRC US新社長にケルビン・フー就任 デビッド・ソルターズは退任

    HRC US新社長にケルビン・フー就任 デビッド・ソルターズは退任

    ホンダ・レーシング・コーポレーションUSA(HRC US)は、ケルビン・フーが新社長に就任すると発表した。現社長のデビッド・ソルターズはモータースポーツ業界を離れ、テクノロジー系スタートアップ企業に移る。新体制は2026年9月12日付で発足する。

    フーはこれまでHRC USの副社長を務め、インディカーやIMSAをはじめとする幅広いプログラムに携わってきた。ホンダ・パフォーマンス・デベロップメント(HPD)時代から組織を支え、ソルターズと約6年間にわたって緊密に仕事をしてきた人物である。

    デビッド・ソルターズがHRC USを退任
    ソルターズは2020年、当時のHPDの社長に就任。2015年にチーフエンジニア兼エンジン技術責任者としてHPDに加入し、2019年にはテクニカルディレクターへ昇進した。

    ホンダ加入以前には、フェラーリのF1プログラムで内燃エンジンのパワーユニット開発責任者、メルセデス・ベンツ・ハイパフォーマンス・エンジンズ(旧イルモア)でF1エンジン開発責任者を務めたほか、コスワース・レーシングではCARTインディカー向けエンジンの開発・設計エンジニアを務めた経歴を持つ。

    HRC USのトップとして、ソルターズはインディカー・シリーズで3度のマニュファクチャラーズタイトルと5度のドライバーズタイトル獲得を指揮。2022年のIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権では、チーム、ドライバー、マニュファクチャラーの各タイトルを制した。

    また、競技プログラムの電動化と近代化も推進。2023年のIMSAにアキュラARX-06 LMDhを投入し、2024年にはハイブリッドシステムを搭載したインディカーの導入に携わった。

    さらに、アパレルやパフォーマンスパーツ、ビンテージのホンダ/アキュラ・レーシングカーとコレクターを結びつけるヘリテージ・レーシング・プログラムなどを扱う新たな事業部門の立ち上げも主導した。

    ソルターズは退任にあたり、次のように語った。

    「ホンダ・レーシング・コーポレーションUSAの素晴らしいスタッフ、我々のレーシングチーム、そして才能あるドライバーたちに心から感謝したい。米国におけるホンダのレーシングヒストリーに、みんなと一緒に新たな歴史を加えられたことを光栄に思っている」

    「ホンダ・レーシングは11年前、私と家族にカリフォルニアへ移る機会を与えてくれた。私たちは米国市民になるという栄誉にも恵まれ、ホンダファミリーの一員として本当に素晴らしい人生経験をすることができた」

    「HRC USはこれまで以上に強い組織になっている。素晴らしいチームがあり、インディカーには非常にエキサイティングな未来があり、さらに多くのクールな新プロジェクトも控えている。今こそケルビンにバトンを渡す最高のタイミングだ。私たちはこの6年間、緊密に仕事をしてきた。ケルビンはHRC USのチームを支え、未来へ導いていく理想的な人物だ」

    ケルビン・フーが9月12日付で新社長に就任
    新社長となるフーは、副社長としてHRC USの活動を支え、ホンダがこれまで記録したインディアナポリス500での17勝のうち4勝に携わった。

    フーは2015年にHPDへ加入。当初はシャシー設計、エアロダイナミクス、パフォーマンスエンジニアリング部門を統括した。2020年にプログラムディレクターとなり、2021年には副社長へ昇進した。

    ホンダでモータースポーツの世界に入る以前は、防衛・航空宇宙産業でキャリアを築いた。ミシガン大学で機械工学の学士号と修士号を取得し、その後カリフォルニア大学バークレー校で博士号を取得してポスドク研究員を務めた。さらにウィスコンシン大学マディソン校でもポスドクを経験した。

    その後、HRテキストロンに研究開発エンジニアとして入社してプロダクトマネージャーまで昇進し、ITTエアロスペースではエンジニアリングディレクターを務めた。

    フーは新社長就任について次のようにコメントした。

    「HRC USに加入したとき、いつかこの素晴らしい組織を率いる機会を与えられるとは想像もしていなかった。本当に身の引き締まる思いだ」

    「HPDとHRC USでのキャリアを通じて、NSX GT3、アキュラDPiレーシングカー、LMDhのエンジンと車両の開発から、レーシングチームとの長期的なパートナーシップ構築まで、幅広いプログラムに携わる幸運に恵まれた」

    「デビッド・ソルターズには、リーダーシップ、友情、そして指導に心から感謝したい。デイブは常に我々全員に、もっと大きく考え、もっと速く動き、そして自分たちが根っからの競争者であることを決して忘れないよう求めてきた」

    「彼は真のレーサーだ。そのビジョンと献身によって、HRC USは今日の世界トップクラスの組織へと形作られた。その影響は今後何年にもわたって残り続けるだろう」

    インディカー継続と新事業を軸にHRC USの次章へ
    HRC USは今後も北米モータースポーツを重要な活動領域と位置づける。特にインディカーについては参戦継続を改めて決定しており、フーはシリーズの成長に期待を示した。

    「これからのHRC USの未来をとても楽しみにしている。我々は最近、インディカーへのコミットメントを更新した。シリーズは成長を続け、北米モータースポーツにおける地位をさらに強固なものにしている」

    「新たなビジネス事業によって、ホンダのレーシングファンにこれまで以上のサービスを提供できる体制も整っている。我々はこれからもイノベーションと競争に取り組み、モータースポーツの未来を形作る人材と技術の育成に力を注いでいく」

    「ホンダのレーシングスピリットは、常に既成概念に挑み、限界を押し広げることにある。HRC USを率い、みんなと一緒にその物語の次の章を書いていくことを楽しみにしている」

    ソルターズの退任によってHRC USはひとつの節目を迎えるが、その後任にはHPD時代から技術開発と事業運営の双方を熟知するフーが就く。インディカー、IMSA、新規ビジネスを含むHRC USの次の時代を、新たなリーダーとして率いることになる。

  • ミック・シューマッハ 2027年インディカーでMSR移籍決定 66号車をドライブ

    ミック・シューマッハ 2027年インディカーでMSR移籍決定 66号車をドライブ

    ミック・シューマッハが、2027年のNTTインディカー・シリーズでメイヤー・シャンク・レーシング(MSR)に移籍することが正式に決定した。MSRは9月4日、シューマッハが66号車のホンダをドライブすると発表した。

    元F1ドライバーのミック・シューマッハは、2026年にレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングからインディカーにフル参戦。北米のオープンホイールレース、そして自身にとって初めてとなるオーバルで急速な適応を見せており、そのパフォーマンスがMSRから高く評価された。

    ミック・シューマッハがMSRの66号車へ
    2027年、ミック・シューマッハはMSRの66号車を担当する。一方、チーム残留がすでに決まっているマーカス・アームストロングは、現在の66号車から60号車へと移り、シューマッハとコンビを組む。アームストロングは複数年契約を締結しており、MSRで3シーズン目を迎える。

    シューマッハは新天地への移籍について喜びを語った。

    「メイヤー・シャンク・レーシングのみんなと仕事ができることを本当に楽しみにしているし、これほど野心的なチームに加入できることにすごくワクワクしている」

    「MSRと一緒に仕事を始めるのは特別な旅になると思う。チームからさらにどんなことを学べるのか楽しみにしている。彼らは素晴らしい成功を収めてきたし、もちろんインディ500で優勝したチームに加入できるのは最高だ」

    「チームのみんなと会って、MSRのパートナーのみなさんと仕事を始めるのも楽しみだ。2027年に向けて一緒に取り組み始め、どうすれば素晴らしいパートナーシップを築けるのかを考えていくことが本当に楽しみだ」

    インディカー参戦1年目からオーバルで速さ
    2026年にインディカーへ転向したミック・シューマッハは、経験のなかったオーバルでも印象的なスピードを披露した。

    フェニックス・レースウェイでは予選4番手を獲得し、ミルウォーキーのレース2でも4番グリッドを確保。ナッシュビル・スーパースピードウェイではシーズン自己最高となる8位でフィニッシュした。

    さらに5月にはインディ500に初出場。インディアナポリス・モーター・スピードウェイで200周を走り切って18位で完走し、インディ500のルーキー・オブ・ザ・イヤーに選出された。

    F1やWECでロードコースを中心にキャリアを積んできたシューマッハにとって、オーバルへの対応はインディカー転向における大きな課題だった。しかし、ルーキーシーズンから予選で上位に食い込む速さを示したことが、MSR移籍につながる大きな要素となった。

    MSR共同オーナー「彼には大きな可能性がある」
    MSR共同オーナーのマイク・シャンクは、ミック・シューマッハがインディカー参戦初年度に見せた成長を高く評価している。

    「来年、ミックとENVEを迎えられることを非常にうれしく思っている。彼はインディカーでの最初のシーズンに我々へ強い印象を与えた」

    「このシリーズに入ってくるのは簡単なことではないし、競争は信じられないほど接近している。しかし、彼が成し遂げてきたこと、そしてシーズンを通して見せてきた進歩を見ると、彼には大きな可能性があると考えている」

    特にシャンクが注目しているのがオーバルでのパフォーマンスだ。

    「彼はオーバルでも素晴らしいペースを示している。オーバル経験のないドライバーがインディカーに参戦するうえで、これは非常に大きなハードルだ」

    「彼は素早く適応した。さらに1年間の経験を積み、我々のグループが彼を支えることで、どんなことができるのかを見るのが楽しみだ」

    ミック・シューマッハ インディカー・シリーズ

    F1からWECを経てインディカーへ
    7度のF1ワールドチャンピオンであるミハエル・シューマッハの息子であるミック・シューマッハは、2018年にFIA F3ヨーロッパ選手権、2020年にはFIA F2選手権のタイトルを獲得した。

    その後、2021年にハースからF1デビュー。2021年と2022年の2シーズンで計43回のF1グランプリに出場した。

    F1のレギュラーシートを失った後はスポーツカーレースにも活動の場を広げ、FIA世界耐久選手権(WEC)の最高峰ハイパーカークラスに参戦。ル・マン24時間レースへの出場やWECでの表彰台を経験した後、2026年からインディカーへと舞台を移した。

    2027年はアームストロングとのコンビ
    今回の発表によって、MSRの2027年ドライバーラインナップはミック・シューマッハとマーカス・アームストロングで確定した。

    また、シューマッハの加入と同時に、ユタ州を拠点とするENVE CompositesがMSRのパートナーに加わることも発表された。同社は高性能カーボンファイバー製自転車やホイール、コンポーネントを手掛け、近年はUSF2000やINDY NXTを通じてモータースポーツにも進出している。

    MSRは2026年のインディ500でフェリックス・ローゼンクヴィストとともに優勝しており、シューマッハがコメントで触れた「インディ500優勝チーム」でもある。

    2027年のインディカーは3月7日のセントピーターズバーグで開幕する予定で、ミック・シューマッハはMSRの66号車、アームストロングは60号車を駆り、新たなコンビとしてシーズンをスタートさせる。

  • アレックス・パロウ インディカー史上最年少5冠「もう一度やろう」8冠も視野

    アレックス・パロウ インディカー史上最年少5冠「もう一度やろう」8冠も視野

    アレックス・パロウが、インディカーの歴史に新たな記録を刻んだ。

    2026年NTTインディカー・シリーズで自身5度目のチャンピオンを獲得し、アレックス・パロウは29歳で史上最年少の5冠王となった。しかも、チップ・ガナッシ・レーシング(CGR)加入後の6シーズンで5度のタイトルという驚異的なペースである。

    だが、パロウに立ち止まるつもりはない。ミルウォーキー・マイルでタイトルを決めた直後、チームオーナーのチップ・ガナッシに伝えた言葉は「もう一度やろう」だった。すでに視線は6冠目、そしてその先へ向けられている。

    29歳で5冠 インディカー史上最速のタイトル量産
    パロウは2021年にCGRへ加入し、No.10 DHLホンダを駆って初めてインディカー王者に輝いた。それから6年間で獲得したタイトルは5つ。29歳で5度のシリーズチャンピオンとなったのは史上最年少であり、5冠到達までの期間も史上最短となった。

    さらに直近4シーズンはすべてパロウが王座を獲得。4年連続タイトルは、セバスチャン・ブルデーに並ぶシリーズ史上最長記録である。

    通算タイトル数では、7冠のA.J.フォイト、6冠のスコット・ディクソンに次ぐ歴代3位。しかもパロウはまだ29歳だ。

    CGR加入後の成績も圧倒的で、25勝、インディ500優勝、19回のポールポジションを記録している。

    それほどの成功を重ねながらも、パロウ自身はいまだに現在の状況を信じられないことがあるという。

    「まず、自分がインディカーのドライバーになるなんて思ってもいなかった。ここまで来られるとも思っていなかったし、プロのレーシングドライバーになれるチャンスがあるとも思っていなかった。それが僕の夢だった」

    「インディカーのドライバーになるチャンスを得た時点で、僕にとってはすでに大きな成果だった。夢を生きていたんだ。そしてチップが、チャンピオンを獲得できるチームで走るチャンスを与えてくれた。2020年にはスコットがタイトルを獲得したばかりだったから、本当に信じられなかった」

    「それ以来、ずっと信じられないような雲の上にいる感覚で、すべてが本当にうまくいっている。これがいつまで続くのかは分からない。あと1年なのか、10年なのか、15年なのか、5年なのか。僕たちがいつまでトップにいられるのかは分からない。でも、このチーム、このマシンと過ごす毎日を楽しんでいる」

    タイトル決定直後に「もう一度やろう」
    パロウの5度目のタイトルを祝う時間が始まったばかりの段階で、本人はすでに次の王座について口にしていた。

    ガナッシは、パロウを祝福した際のやり取りを明かしている。

    「もう一度やりたいと誰よりも思っているのはドライバー本人だ。彼はまたやりたいと思っている。私が祝福したとき、彼が最初に言ったのは『もう一度やろう』だった」

    今回のタイトルによって、ガナッシ自身もインディカーで史上最多となる18度目のシリーズタイトルを手にした。

    パロウは今季途中にCGRとの複数年契約延長にも合意しており、チームとの関係は今後も続く。そのため、焦点は単に「次のタイトル」だけではなく、歴代記録をどこまで塗り替えられるかへと移りつつある。

    モータースポーツの「7冠」そして8冠の可能性
    モータースポーツにおいて「7」は特別な数字だ。

    F1ではミハエル・シューマッハ、インディカーではA.J.フォイト、NASCARではリチャード・ペティ、デイル・アーンハート、ジミー・ジョンソンが7度の最高峰タイトルを獲得している。

    パロウはすでに5冠。あと2度タイトルを獲得すれば、フォイトが持つインディカー最多7冠に並ぶ。

    さらにガナッシは、その先の「8冠」さえ現実的な可能性として否定していない。

    「もちろんだ。そう信じない方がおかしい。少なくとも私は、それに逆らって賭けたいとは思わない」

    「ラスベガスでどんなオッズになるのかは知らないが、私は反対側には賭けたくない。実現する可能性はある。間違いなく実現し得る」

    33戦連続で崩れない驚異的な安定感
    パロウとNo.10チームが記録更新を期待される最大の理由は、単純な速さだけではない。シーズンを通じて大きく崩れない圧倒的な安定感にある。

    CGRとパロウが支配的な強さを見せた直近2シーズン、33レースを通じてトップ10圏外が2戦連続したことは一度もない。

    ワシントンD.C.では20位に終わったが、その翌戦となったミルウォーキーのダブルヘッダーでは5位と10位。すぐに本来の安定した成績へ戻した。

    しかもワシントンD.C.での20位以下という結果は、この2年間でわずか3度目だった。それ以前の5戦では2勝を挙げ、残る3戦もすべてトップ5に入っていた。

    ミルウォーキーを迎えた時点で、5冠達成は「できるかどうか」ではなく「いつ決まるか」という状況だった。

    パロウはミルウォーキー終了時点でクリスチャン・ルンガードに100ポイント差をつけ、ラグナ・セカでの最終戦を残してタイトルを確定。これで4年連続してシーズン最終戦を待たずに王座を決めたことになる。

    アレックス・パロウ(インディカー・シリーズ)

    オワード「パドック全員の頭の中に住みついている」
    その圧倒的な存在感はライバルも認めている。

    ミルウォーキーの日曜日に行われた2レースをともに制したパト・オワードは、パロウについてこう表現した。

    「彼はパドックのみんなの頭の中に家賃なしで住みついているよ」

    「彼とガナッシが基準を引き上げた。あの10号車は信じられないくらい強い。うらやましいよ。いつか僕たちもそこへたどり着く」

    パロウの存在は、単にポイントランキングで首位にいるというだけではなく、ライバルたちが常に意識せざるを得ない基準になっている。

    ガナッシ「我々は世代を代表するドライバーを目撃している」
    ガナッシは、パロウの強さにはCGRで過去にタイトルを獲得してきた名手たちと共通するものがあると語る。

    ジミー・バッサー、アレックス・ザナルディ、ファン・パブロ・モントーヤ、ダリオ・フランキッティ、スコット・ディクソン。CGRはこれまで数々のチャンピオンを生み出してきた。

    「私はこういうドライバーたちの目を見てきた。彼らには強い欲求がある。優れたビジョンがあり、成功しようとする強烈な意志がある。それがいつも目に表れている。アレックスにもそれがある。これまで我々が迎えてきたすべてのチャンピオンに共通するものだ。ある種の輝きがある」

    CGRが4年連続タイトルを達成するのは今回が3度目だ。しかし、過去2回は複数のドライバーによって成し遂げられたのに対し、今回はパロウひとりが4連覇を達成した。

    そしてガナッシが特に重視しているのが、「6年間で5冠」という数字だ。

    「我々はいま、世代を代表するような出来事の真っただ中にいる。世代を代表するドライバーだ。4連覇は過去にもあった。しかし6年間で5冠というのはこれまでなかった。それは前例のないことだ」

    「我々はいま、その真っただ中にいる。そして、まだ終わっていない」

    29歳で5冠に到達したパロウは、すでにインディカー史に残る存在となった。それでも本人がタイトル決定直後に発したのは過去を振り返る言葉ではなく、「もう一度やろう」という次への意思だった。フォイトの7冠、そしてガナッシが可能性を認める前人未到の8冠へ――パロウがどこまで記録を伸ばすのかが、今後のインディカーにおける大きな焦点となる。

  • アレックス・パロウ インディカー4連覇達成 史上3人目の通算5度目王者

    アレックス・パロウ インディカー4連覇達成 史上3人目の通算5度目王者

    アレックス・パロウが、2026年インディカー・シリーズのチャンピオンに輝いた。ミルウォーキー・マイルで行われたレースを10位で終え、最終戦を残して4年連続、通算5度目となるタイトルを確定させた。

    4年連続のシリーズ制覇は、セバスチャン・ブルデーが2004年から2007年にかけて達成した記録に並ぶものだ。さらに通算5度のタイトル獲得は、A.J.フォイト、スコット・ディクソンに続く史上3人目の快挙となった。

    パロウが4年連続でアスター・カップ獲得
    チップ・ガナッシ・レーシングのパロウは、日曜日に行われたミルウォーキーでの「Snap-On Makers and Fixers 250」を10位でフィニッシュ。これにより、カリフォルニア州ラグナ・セカで行われる最終戦を待たずして2026年のシリーズチャンピオンを決めた。

    29歳のスペイン人ドライバーは2021年に初タイトルを獲得。その後、2023年から2026年まで4シーズン連続で頂点に立ち、通算タイトル数を5に伸ばした。

    インディカー史上、5回以上のタイトルを獲得したドライバーはわずか3人。最多はA.J.フォイトの7回で、現チームメイトのスコット・ディクソンが6回、パロウが5回で続く。

    また、4年連続タイトルはセバスチャン・ブルデーがチャンプカー時代の2004年から2007年に記録して以来となる。ブルデーは4連覇を達成した翌年の2008年にF1へ転向している。

    2026年も圧倒的な安定感
    パロウは今季17レースで6勝を挙げ、トップ5フィニッシュ12回、トップ10フィニッシュ14回を記録した。

    ミルウォーキーでは土曜日に予定されていた250周のレースが、90周を消化したところで雨とウエットコンディションのため中断。残りのレースは日曜日に再開され、パロウは10位でフィニッシュした。

    さらに、同日に行われた当初の日曜日開催予定のレースでも5位に入り、過酷なダブルヘッダーを安定した成績で乗り切った。

    パロウの強さを象徴しているのが、その驚異的な安定感だ。過去2シーズンの33レースで、トップ10圏外が2戦連続したことは一度もない。

    前戦ワシントンD.C.のフリーダム250グランプリでは20位に終わったが、過去2年間で20位以下となったのはわずか3回だった。

    アレックス・パロウ インディカー・シリーズ

    2年間で14勝 インディ500制覇も達成
    2025年のパロウは8勝を挙げ、自身初となるインディアナポリス500制覇も達成した。2026年の6勝を合わせると、わずか2シーズンで14勝を挙げたことになる。

    ライバルたちも、パロウとチップ・ガナッシ・レーシングの完成度を認めている。

    ランキング3位につけるカイル・カークウッドは、ポートランドでパロウについて次のように語っていた。

    「彼らはすべてを正しくやっている。あいつには不運がほとんどないし、4年か5年にわたって、すべてを完璧にやり続けている。彼らには脱帽だ。本当に素晴らしい仕事をしている。僕たちにとっては地獄だけどね」

    ランキング2位のクリスチャン・ルンガードも、開幕戦セントピーターズバーグでパロウが優勝した際、その圧倒的な強さについて冗談交じりに語っていた。

    「僕が表彰台で2位か3位になるたびに、彼が1位にいる。かなり鬱陶しいよ」

    チップ・ガナッシも最多18度目のタイトル
    パロウのタイトル獲得によって、チップ・ガナッシ・レーシングにとっても歴史的な記録が生まれた。

    同チームのインディカーにおけるドライバーズタイトルは通算18回となり、17回で並んでいたチーム・ペンスキーを抜いて歴代最多となった。

    パロウは8月のポートランドで優勝した際、現在の成功が永遠に続くものではないと理解していることが、チーム全体のモチベーションにつながっていると話していた。

    「僕たちは、このポジションにいられることが本当に幸運なんだ。すべてが揃っている。これが次の週末に終わるのか、来年なのか、2028年なのかは分からない。いつかは終わる。永遠に続くことなんてあり得ないからね」

    「僕たちは、自分たちがどれだけ恵まれているのかを理解しながら、すごくいい仕事ができていると思う。“僕たち”というのはチームも、10号車のみんなも、CGR全体も含めてだ。それが僕たちのモチベーションを維持しているんだと思う」

    マクラーレンとの訴訟を経てガナッシと長期契約
    2026年のパロウは、コース外では大きな問題を抱えた状態でシーズンを迎えていた。

    ロンドンの高等法院は、パロウがマクラーレン・レーシングとの2つの契約を履行しなかったことを巡る訴訟で、1200万ドル(約17億円)を超える支払いを命じた。

    それでもパロウはチップ・ガナッシ・レーシングに残留。2021年に同チームへ加入して以来、インディカーを代表するドライバーへと成長した。2026年5月には、それまで2027年末までとなっていた契約をさらに延長する複数年契約を結んでいる。

    4年連続、そして通算5度目のシリーズタイトル。2025年にはインディ500も制し、2シーズン続けて最終戦を待たずに王座を決めたパロウは、30歳を迎える前にインディカー史上最多タイトルを持つフォイトとディクソンに次ぐ位置まで到達した。

  • 角田裕毅 インディカー移籍報道 F1を最優先も「2年間ガレージにいる気はない」

    角田裕毅 インディカー移籍報道 F1を最優先も「2年間ガレージにいる気はない」

    角田裕毅が、2027年に向けてインディカーへの転向を模索しているとの報道について言及した。自身のマネジメント側の動きについては関与していないとしながら、最優先の目標はあくまでF1で走り続け、成功を収めることだと強調している。

    一方で、F1のシートを待つために長期間レースから離れる考えもない。2027年のF1シートを確保できなかった場合には他カテゴリーを検討する可能性を認め、現役ドライバーとしてレースを続けることへの強い意欲を示した。

    8カ月ぶりのF1復帰で存在感
    角田裕毅は2025年シーズン限りでレッドブル・レーシングのレースシートを失い、2026年はリザーブドライバーを務めてきた。

    しかし、アイザック・ハジャーが負傷したことで、先週末のF1オランダGPでは急きょドライバーラインアップが変更された。リアム・ローソンがハジャーの代役としてレッドブル・レーシングに昇格し、角田裕毅はレーシングブルズからアービッド・リンドブラッドとともに出場した。

    角田裕毅にとっては2025年最終戦以来となるF1レースへの復帰だった。ザントフォールトでは短い準備期間ながらマシンへの適応を進め、決勝では11位。ポイント獲得にはあと一歩届かなかったものの、久々の実戦でF1復帰へのアピールを果たした。

    インディカーの約半数のチームと接触との報道
    そうしたなか、アメリカの『Racer』は、角田裕毅のマネジメントチームが2027年に向けてインディカー参戦の可能性を探っていると報じた。

    報道によれば、角田裕毅のマネジメント側は2027年にどのような選択肢があるのかを確認するため、インディカーに参戦するチームのほぼ半数と話をしたという。

    F1で2027年のレギュラーシートを確保できる保証がない状況だけに、将来に備えて選択肢を広げているとみられている。

    ただし、角田裕毅本人はそうした交渉について、自分が直接関与する仕事ではないとの姿勢を示している。

    「そういうことを見るのは僕の仕事ではないです」と角田裕毅はRacingNews365を含む一部メディアに語った。

    「そこは完全にマネージャーに任せていますし、僕の仕事は速く走ることです」

    「僕の気持ちは常にF1にある」
    角田裕毅は、インディカー移籍の可能性そのものを完全に否定したわけではない。ただ、現在の自身の目標がF1にあることについては明確にしている。

    「僕の気持ちは常にF1にあります。僕の一番の目標は、ずっとF1で走って、そこで成功することです。それは何があっても変わりません」

    2026年はレッドブル・レーシングのリザーブとしてF1に残っているものの、レースに出場する機会は限られている。オランダGPで久々に実戦復帰した角田裕毅にとって、レースから長期間離れ続けることも望む選択肢ではない。

    「でも、2年間ずっとガレージにいるつもりもないです。僕はレースもしたいです」

    この言葉からは、F1残留を最優先としながらも、レースに出場できない状態を無期限に受け入れるつもりはないという角田裕毅の考えがうかがえる。

    2027年F1シートがなければ他カテゴリーも検討
    角田裕毅は、2027年のF1シートを確保できなかった場合には、他カテゴリーへ目を向ける必要があることも認めた。

    「もし何か可能性が出てきたり、来年のシートを見つけられなかったりしたら、そのときは他のカテゴリーを探さなければならないと思います」

    それでも、F1への挑戦を諦めるタイミングを現時点で設定するつもりはない。

    「でも、来年実際にどこかでコースを走るその瞬間までは、僕の気持ちはずっとF1にあります」

    角田裕毅にとって最優先事項は2027年のF1レギュラーシート獲得であり、その姿勢に変わりはない。一方で、レースから長期間離れることを避けるため、マネジメント側がインディカーを含む別カテゴリーの可能性を探ることについても扉は閉ざしていない。

    オランダGPで久々にF1のグリッドへ戻った角田裕毅は、F1で走り続けることを最後まで追求しながら、ドライバーとしてレースを続けるための現実的な選択肢も視野に入れている。

  • トランプ大統領 インディカー初のワシントン市街地戦でグリーンフラッグ

    トランプ大統領 インディカー初のワシントン市街地戦でグリーンフラッグ

    ドナルド・トランプ米大統領が、ワシントンD.C.の公道を舞台に初開催されたインディカー・シリーズ「フリーダム250グランプリ」でグリーンフラッグを振り、歴史的なレースのスタートを告げた。

    米国建国250周年を記念するイベントとして行われた一戦では、トランプ大統領が大統領専用リムジン「ザ・ビースト」でコースを走行するセレモニーにも参加。レースではアメリカ人のカイル・カークウッドが優勝し、約20万人の観客が見守った首都決戦を制した。

    トランプ大統領が「ザ・ビースト」でコースを周回
    8月23日(日)に開催されたフリーダム250グランプリは、インディカーとして初めて米国の首都ワシントンD.C.の市街地を走るレースとなった。

    レース前にはトランプ大統領が会場を訪れ、大統領専用リムジンとして知られる「ザ・ビースト」に乗ってコースを周回。その後、自らグリーンフラッグを振ってレース開始を告げた。

    米国を代表する政治都市の中心部で、大統領自らがモータースポーツイベントのスタートを演出する異例の光景となった。

    ナショナル・モールとペンシルベニア・アベニューを走行
    舞台となった市街地コースは、ナショナル・モールとペンシルベニア・アベニュー周辺を縫うように設定された全長1.7マイル(約2.7km)のレイアウト。アメリカを象徴する首都の景観を背景にインディカーが高速で駆け抜けた。

    主催者側は米国建国250周年を祝う大規模イベントのひとつとして開催し、約20万人の観客が集まることが見込まれていた。

    観戦チケットは無料で提供される一方、コースサイドのプライベートクラブには5000ドル(約73万円)のパスも設定された。ペンシルベニア・アベニューのストレートでは、最高速度185mph(約298km/h)に達すると予想されていた。

    当初の計画ではコースを米連邦議会議事堂の敷地内まで延ばす構想もあったが、実現には議会の承認が必要で、計画は議会で停滞。最終的には周辺道路を利用するレイアウトとなった。

    イベント開催に伴い、ワシントンD.C.警察は歩行者の移動や警備上の理由からダウンタウンの主要道路を閉鎖するなど、大規模な交通規制も実施した。

    インディカー トランプ大統領 ザ・ビースト

    カークウッドが歴史的な初開催レースを制覇
    レースでは、アンドレッティ・グローバルのカイル・カークウッドが序盤から主導権を握った。

    カークウッドは2周目にチャンピオンシップ首位のアレックス・パロウを抜いてトップに浮上。その後もレース中の中断やリスタートを乗り越えながら首位を守り、ワシントンD.C.で初開催されたフリーダム250グランプリのウイナーとなった。

    「信じられない。もう泣きそうだ。本当に厳しいレースだった」

    カークウッドはFOXのインタビューで、地元アメリカの観衆の前で歴史的な一戦を制した喜びを語った。

    2位にはアロー・マクラーレンのクリスチャン・ルンガード、3位にはアンドレッティ・グローバルのウィル・パワーが入った。

    ランキング首位パロウはペナルティとクラッシュで失速
    一方、6勝を挙げてチャンピオンシップ首位としてワシントン入りしたチップ・ガナッシ・レーシングのアレックス・パロウにとっては厳しいレースとなった。

    パロウはコーション中にピットボックスを離れる際にタイヤと接触したことでドライブスルーペナルティを科され、大きく順位を落とした。その後には時間のかかるピットストップもあり、さらに後退を強いられた。

    それでも21番手から7番手まで挽回したが、残り25周でターン4のウォールにクラッシュ。そこでレースを終え、最終的に20位となった。

    カークウッドはパロウのトラブルを尻目に首位を維持してチェッカーを受け、この勝利によってランキング首位パロウとの差を91ポイントまで縮めた。

    次戦は翌週にミルウォーキーで開催される。

    米国建国250周年を象徴するモータースポーツイベントに
    フリーダム250グランプリは、単なるインディカーの新規市街地レースではなく、米国建国250周年を祝うイベントのひとつとして開催された。

    トランプ大統領による「ザ・ビースト」でのコース周回とグリーンフラッグ、そしてナショナル・モールやペンシルベニア・アベニューを舞台にインディカーが走るという組み合わせは、初開催ならではの光景となった。

    トランプ大統領は建国250周年と自身の2期目を象徴するイベントとして、モータースポーツ以外の大型スポーツイベントにも積極的に姿を見せている。

    そして、記念すべきワシントンD.C.初開催の一戦を制したのはアメリカ人ドライバーのカークウッドだった。米国の首都を舞台にしたインディカーの新たな市街地レースは、大統領による華やかなセレモニーとカークウッドの勝利によって、その歴史の第一歩を刻んだ。

  • 角田裕毅 2027年インディカー参戦へMSRと交渉 66号車の有力候補に

    角田裕毅 2027年インディカー参戦へMSRと交渉 66号車の有力候補に

    角田裕毅が2027年のインディカー・シリーズ参戦に向け、メイヤー・シャンク・レーシング(MSR)と交渉を進めていることが明らかになった。レッドブル・レーシングのテスト兼リザーブドライバーを務める角田にとって、F1からアメリカ最高峰のフォーミュラカテゴリーへとキャリアの舞台を移す可能性が浮上している。

    Motorsport.comによると、角田裕毅はMSRがホンダエンジンで走らせる66号車の2027年ドライバー候補となっている。

    現在66号車をドライブするマーカス・アームストロングは、今季限りでチームを離れるフェリックス・ローゼンクヴィストに代わり、2027年から姉妹車の60号車へ移る予定で、その空席を巡る候補のひとりとして角田の名前が挙がっている。

    F1で111戦を経験した角田裕毅に新たな選択肢
    角田裕毅は2021年にF1デビューを果たし、これまで111戦に出走。2021年アブダビGPで記録した4位が自己最高位となっている。

    2026年はF1のレギュラーシートを失い、レッドブル・レーシングのテスト兼リザーブドライバーとして活動している。F1のシート争いが依然として厳しいなか、26歳の角田にとってインディカーは今後のキャリアを考えるうえで現実的な選択肢のひとつになりつつある。

    日本人F1ドライバーからインディカーへ転向した代表的な存在が佐藤琢磨だ。F1参戦後にアメリカへ活動の場を移し、インディ500を2017年と2020年に制覇。日本人として初めて世界三大レースのひとつを勝利し、インディカーで長いキャリアを築いた。

    角田裕毅がMSR入りを決断すれば、佐藤と同じホンダとの関係を維持しながらアメリカで新たなキャリアをスタートさせることになる。

    2024年にはインディカーを初ドライブ
    角田裕毅にとってインディカーはまったく未知のマシンではない。

    2024年のF1ラスベガスGPを前に行われたホンダのプロモーションイベントで、チップ・ガナッシ・レーシングが用意したホンダエンジン搭載の93号車をドライブしている。

    この際にはインディカーで6度のシリーズチャンピオンに輝いたスコット・ディクソンから直接指導を受け、ラスベガス・モーター・スピードウェイ近郊に設けられた約1.3マイルのコースで2回の走行を実施。合計約30分にわたってインディカーを体験した。

    当時、角田裕毅は将来的なインディカー参戦に興味を示す一方、オーバル、とりわけインディアナポリス・モーター・スピードウェイでのレースについては率直に恐怖心も口にしていた。

    「もし機会があって、それが適切なタイミングだと感じたら、もちろんやってみたいです」

    「アメリカ自体が好きなので、ここに住むことにも抵抗はありません。でも、今はまだそのタイミングではないと思っています。インディアナポリス・モーター・スピードウェイで2時間以上レースをして、毎周200マイル以上で走るなんて想像できません」

    「僕にとっては怖いです。2時間以上あのマシンに乗って走り続ける自分を想像できません。今のところインディカーを目指しているわけでも、具体的に考えているわけでもありません。でも、将来的にはあり得ると思います」

    2024年当時は「将来的には」と語っていた角田裕毅だが、その将来が2027年に現実となる可能性が出てきた。

    角田裕毅 インディカー

    MSR代表も交渉を否定せず「まだ何も決めていない」
    一方、MSRの共同オーナーであるマイク・シャンクは、2027年のドライバー選定がまだ進行中であることを強調している。

    「まだ何も決めていない。インディカーに適合する、あるいは関連性のあるあらゆるモータースポーツのドライバーと話をしている」

    「候補に挙がっている人たちを引き続き評価しているところで、あらゆる選択肢を検討している」

    シャンクは角田裕毅との交渉を明確に認める発言こそしていないものの、否定もしていない。現段階では66号車のドライバーが正式決定したわけではなく、複数の候補を比較している段階とみられる。

    ホンダとの関係を維持できるMSRという選択肢
    角田裕毅にとってMSRは、単なるインディカーの空席以上の意味を持つ。

    MSRはホンダのパワーユニットを使用しており、長年ホンダの支援を受けてキャリアを築いてきた角田にとって、これまでの関係を生かしやすい環境だ。さらに、F1で111戦を経験した角田のロードコースでの経験値は、チーム側にとっても魅力的な材料となる。

    一方で、インディカーではロードコースやストリートコースだけでなく、高速オーバルへの適応が必要になる。角田自身がかつて「怖い」と語ったインディ500への挑戦も、フル参戦となれば避けて通れない大きなテーマとなる。

    F1で6シーズンにわたって戦い、現在はレッドブルのリザーブを務める角田裕毅。2027年にF1復帰の道を探るのか、それともホンダとの関係を維持しながらインディカーという新天地へ向かうのか。MSRとの交渉は、角田のキャリアが大きな転換点を迎えつつあることを示している。

  • ロマン・グロージャン 残り5周でインディカー初優勝逃す「少し泣いた」

    ロマン・グロージャン 残り5周でインディカー初優勝逃す「少し泣いた」

    ロマン・グロージャンは、インディカーのマーカム戦であと一歩のところまで迫った初優勝を逃し、レース後に「少し泣いた」と明かした。

    デイル・コイン・レーシングのグロージャンは、大胆な2ストップ戦略と絶妙なタイミングで出たコーションを味方につけて首位争いに浮上。終盤にはトップに立ったものの、アンドレッティ・グローバルのマーカス・エリクソンに残り5周で逆転を許し、2位でチェッカーを受けた。

    グロージャンは54周目、その直前にピットストップを済ませた直後にコーションが出たことで大きな恩恵を受けた。

    90周で争われたレースの69周目、首位を走っていたエリクソンがグロージャンに14秒のリードを築いた状態からピットイン。これにより、スイス生まれのフランス人ドライバーであるグロージャンがトップに立った。

    しかし、エリクソンはそこから上位勢を次々と攻略。残り5周、ヘアピンでグロージャンを抜き去り、優勝を手にした。

    「エリクソンが追いつくなんてあり得ないと思った」
    レース後、グロージャンはエリクソンがピットに入った瞬間、勝利をほぼ確信していたと振り返った。

    「レース終盤は、タイヤと燃料で37周くらい走らなければならないことは分かっていた。それはチャレンジになると思っていた」

    「28号車(マーカス・エリクソン)がピットに入るのを見たとき、僕たちに追いつけるわけがないと思った」

    「10号車(アレックス・パロウ)が後ろにいた。それはいつだって心配だけど、ギャップを広げられた。これなら大丈夫だと思った。でも次に気づいたときには、28号車が迫ってきていた」

    燃料面ではホンダのサポートが大きかったという。

    「ホンダは僕たちと素晴らしい仕事をしてくれた。本当にうまくやってくれて、フィニッシュラインを越えたときにタンクが空になるよう、正確な燃料の数字を出してくれた」

    「守るためにできることはほとんどなかった。今日はそういう日じゃなかったんだ」

    「少し泣いた。嘘はつかない」
    初優勝が目前で消えたグロージャンは、レース後に感情を抑えきれなかったことを認めた。

    「少し泣いた。嘘はつかない」

    「でも、自分でコントロールできることをコントロールする。それは僕が読んだアンドレ・アガシの本に書いてあった言葉だったと思う。僕は自分にできることをすべてやった」

    「28号車の戦略がどうやって機能したのかは分からない。おそらく短いピットレーンが彼らを助けたんだと思う。それに、多くのドライバーが燃料をセーブしなければならなくなって、スペースができたことも影響したんだろう」

    「もちろん、まだレースを見返してはいない。チームと自分のパフォーマンスにはとても満足している。来週のフリーダム250に向けて希望を持てる。また素晴らしいレースになると思う」

    グロージャンはインディカー参戦5シーズンでいまだ未勝利。今回が通算6度目の2位となった。

    2位は2023年のバーバー戦以来で、その際にはチーム・ペンスキーのスコット・マクラフリンに次ぐ順位だった。

    さらにグロージャンは、カテゴリーを問わず2011年以来、レースで勝利していない。最後の勝利はGP2シリーズ(現在のFIA F2)時代にハンガロリンクで挙げたものだ。

    「勝ち方を忘れたわけじゃない」
    長く続く未勝利について、グロージャンは冗談交じりに、勝つためにはカテゴリーを下げる必要があるかもしれないと語った。

    「僕はできることをすべてやった。F1には10年間いた。F1では、勝てるマシンがなければレースには勝てない」

    「確かに、レースで勝っていない期間は長い。でも、勝ち方を忘れたとは思っていない。ただ、それをするチャンスに恵まれなかっただけだと思う」

    「だから、これからも挑戦する。レースを続けるよ。もしかしたらゴーカートのレースに出たほうが勝つチャンスはあるかもしれない。あるいは自転車レースかな」

    「確かに長いよ。最悪だ。今日、パロウとの差を広げたときは、これはいいと思った。でも、もう燃料もタイヤも何も残っていなかった。ただ、すべてを出し切った」

    あと一歩でインディカー初優勝を逃したグロージャンだが、戦略と燃料管理を駆使して勝利争いを演じた今回の2位は、次戦に向けた大きな手応えとなった。インディカーは8月23日にワシントン市街地で開催されるフリーダム250で次戦を迎える。

  • インディカー初開催マーカムでコース建設遅延 金曜走行が全面中止

    インディカー初開催マーカムでコース建設遅延 金曜走行が全面中止

    カナダ・オンタリオ州マーカムで初開催されるインディカー・シリーズの「オンタリオ・ホンダ・ディーラーズ・インディ」が、コース建設の遅れによって異例のスタートを迎えた。金曜日に予定されていたすべての走行が中止され、インディカーのJ・ダグラス・ボールズ会長はイベントプロモーターを公然と批判した。

    新設されたマーカム市街地コースでは、レース用ブリッジやセーフティフェンス、タイミング&スコアリング用ケーブルなどの設置作業が予定通り完了しなかった。

    当初は金曜午後にインディカーのプラクティス1を実施する予定だったが、安全な走行環境を確保できず、最終的に金曜日のコース上での活動はすべて取りやめとなった。

    初開催のマーカムでコース建設が間に合わず
    混乱は木曜日から始まっていた。恒例のトラックウォークは木曜日から金曜朝へ延期され、ドライバーとチームがコースを確認している最中にも建設作業が続けられていた。

    また、コース両側を使用する特殊なピットレーンへの機材搬入についても、チームは木曜午後遅くまで待つようシリーズ側から指示されていた。

    金曜日はサポートカテゴリーが午前8時から走行を開始する予定だったものの、コース建設が完了せず、1台も走ることができなかった。

    インディカーのプラクティス1は午後3時05分から予定されていたが、これも保留となった。

    インディカーは当初、「マーカム市街地コースの準備が続いているため、本日午後3時05分に予定されているNTTインディカー・シリーズのプラクティス1は保留となっています」と説明していた。

    「レースプロモーターがコース建設を完了し、インディカーが競技を行ううえで安全かつ適切な状態であると判断した時点で、今週末最初のコース上でのセッションを開始します」

    その後、午後6時までに作業を終えて走行を開始する可能性も模索されたが、コースは時間内に完成せず、金曜日の走行は全面的に中止された。

    インディカー会長「非常に失望している」
    この事態を受け、インディカーのJ・ダグラス・ボールズ会長は、イベントを運営するグリーン・サヴォリー・レーシング・プロモーションズへの不満を隠さなかった。

    「現地にいる我々のチームから多大なサポートを受けていたにもかかわらず、プロモーターが期限までにコース建設を完了できなかったことに、インディカーは非常に失望している」

    「オンタリオは常に我々のスポーツにとって素晴らしいマーケットであり、今日これだけ多くの観客が来場してくれたことが、その何よりの証拠だ」

    「新しいイベントには常に物流面での課題が伴う可能性がある。我々も忠実なファンの皆さんと同じようにフラストレーションを感じており、お詫びしたい」

    一方でボールズ会長は、完成後のマーカム市街地コースそのものについては高く評価している。

    「実際にコースを走り始めれば、素晴らしいサーキットになると確信している」

    「インディカーのために多大な支援を行い、速く、テクニカルで、日曜日には素晴らしいショーを生み出すレイアウトを提供してくれたマーカム市にも感謝したい」

    土曜日に2回のプラクティスと予選を実施
    金曜日の全面中止を受け、インディカーは8月15日(土)のスケジュールを変更した。

    プラクティス1は午前10時から11時30分、プラクティス2は午後2時30分から4時まで行われ、予選は午後6時30分から開始される予定となった。

    夕方の限られた時間内で予選を終える必要があることから、予選は通常のロードコースで採用されるノックアウト方式で実施される。

    日曜日の決勝については現時点で予定に変更はなく、現地時間正午から放送が開始される。

    トロントから移転した新たなカナダ戦
    マーカムでのレースは、インディカーのカナダ戦にとって大きな転換点となるイベントだ。

    2025年9月3日に正式発表され、1980年代からインディカーを開催してきたトロントのエキシビション・プレイスから、グレーター・トロント・エリアに位置するマーカムへ開催地が移された。

    新設されたマーカム市街地コースは全12コーナー、全長2.19マイル(約3.52km)のテンポラリーサーキット。短いストレートとハードブレーキングを要求されるテクニカルセクションを組み合わせ、両側にガレージを配置するダブルサイド式のピットレーンも特徴となっている。

    期待を集めていた初開催イベントは、コース建設の遅延という予想外の問題で幕を開けた。プロモーターは安全設備を含む残りの作業を急いでおり、インディカーは土曜日のプラクティス1までにコースを安全な競技状態へ仕上げることを目指している。