メルセデスのアンドレア・キミ・アントネッリは、2026年F1スペインGPで今季8勝目を挙げたものの、「今日は僕たちは勝利に値しなかった」と振り返り、本来ならランド・ノリスが勝つべきレースだったとの考えを示した。
マドリンクで初開催されたF1スペインGPで2番グリッドからスタートしたアントネッリは、序盤にノリスと首位を争った後、バーチャル・セーフティカー(VSC)のタイミングを生かして首位に浮上。最終的にマックス・フェルスタッペンを抑え、2戦連続となる勝利を手にした。
「ランドが勝利に値した」
しかし、チェッカー後のアントネッリは、勝利を手放しでは喜ばなかった。
「勝てたのはもちろんうれしい。でも、今日はそれほど気分がいい勝利ではない。ランドが勝利に値したと思うからだ」
ノリスはポールポジションからレースをリードし、アントネッリとのギャップを築いていた。しかし、VSCが導入された時点ですでにピット入口を通過しており、その恩恵を受けることができなかった。
一方、アントネッリはVSC導入直後にピットへ入り、ハードタイヤへ交換。通常より大幅に少ないタイムロスでタイヤ交換を済ませ、実質的な首位に立った。
「VSCが出た瞬間にピットへ飛び込んで、少ないロスでハードに交換し、実質的な首位に立つことができた。だから、おそらく僕たちは勝利に値しなかったと思う。でも、もちろんこの結果は受け取る」
それでも、純粋なレースペースについては手応えを感じている。
「それ以外では、とても強いレースだった。特に最後のハードでは本当にいいペースがあった。これからもプッシュし続けないといけない」
「本来なら2位か3位」スタートの攻防を反省
FIAのレース後記者会見でも、アントネッリは自身の勝利を冷静に評価した。
「現実的に、正直に言えば、今日は僕たちは勝利に値しなかった。ランドが勝つべきレースだったと思う」
「僕たちの結果は、おそらく2位、あるいは3位だったと思う。スタートで僕が十分にいい仕事をできなかった。少しアグレッシブになりすぎて、自分を悪いポジションに追い込んでしまった。間違いなく改善しなければならない部分がある」
スタート直後、アントネッリはノリスに対して積極的に仕掛けた。しかし、シケインをカットする形となり、その後の攻防でも再びコースをショートカットすることになった。
「仕掛けてみたけど、当然ランドだって簡単に抜かせてくれるわけではない。彼はやるべきことをやった」
「2つ目のシケインでは行けるかもしれないと思ったけど、接触するにはリスクが高すぎると感じた。それで諦めることにした」
無理にターンインしていれば、レースそのものを失う可能性もあったという。
「もし僕がターンインしていたら、ランドと接触して、おそらくウォールに行って道路を塞いでいたと思う。間違いなくいい結果にはならなかった」
この一連の攻防によってアントネッリは難しい位置に置かれ、フェルスタッペンにも先行を許した。
「その後は少し厄介なポジションになって、マックスにターン7のアウト側から抜かれた。見直すべきところは間違いなくあるけど、それでもチームとしては素晴らしい仕事だった」

フェルスタッペンの順位返上にも「少し混乱した」
アントネッリは、序盤にフェルスタッペンからポジションを返された場面についても説明した。
フェルスタッペンはルイス・ハミルトンとの攻防でコース外へ出たことを受け、レッドブルからポジションを戻すよう指示された。その過程でアントネッリも再びフェルスタッペンの前に出ることになった。
「少し混乱した。マックスが僕をコース外から抜いたとは思っていなかったからだ。普通に抜かれたと思っていた」
「その後、彼がルイスにポジションを返さなければならないと聞いた。ルイスにはブレーキの問題も出ていたから、特にマックスにとっては少し変な状況だったと思う」
ハミルトンはその後、ブレーキシステムのトラブルによってリタイア。アントネッリにとっては、序盤の順位変動からVSCまで、複数の展開が自身に有利に働いたレースでもあった。
「だから今日の勝利は、さっき言ったように素晴らしいものだけど、僕が望んでいた勝ち方ではない」
予想を下回ったタイヤデグラデーション
レース前にはマドリンクで高いタイヤデグラデーションが予想されていたが、実際には想定ほど激しくなかった。
アントネッリは、路面にラバーが乗っていったことに加え、ハードタイヤが特にグレイニングに対して強かったことを理由に挙げた。
「デグラデーションはかなり低かった。もちろん多少はあったけど、予想よりずっと低かった。路面にラバーが乗っていったこともあって、1ストップが可能になった」
「最後にはタイヤはかなり終わっていたけど、このコースはオーバーテイクが難しい。だからタイヤを持たせながら、そのまま最後まで走ることができる」
シャルル・ルクレールがハードタイヤで約50周に及ぶロングスティントを敢行しながら、一定のペースを維持したことも、その耐久性を示していた。
「シャルルもハードでほぼ50周走って、それでもまずまずのペースを維持していた。予想外だったけど、一番大きかったのはハードタイヤが特にグレイニングに対して強かったことだと思う」

81ポイント差にも「タイトルを考えながら走りたくない」
アントネッリは今回の勝利で今季8勝目を記録。13戦連続で少なくとも1周をリードし、ドライバーズランキングでは2位に対するリードを81ポイントまで広げた。
それでも、20歳のアントネッリはタイトルを意識して守りに入る考えを否定した。
「それこそ僕がやりたくないことだ。1レースずつプッシュして、結果を出し続けて、最後まで楽しみたい。そして毎レース、自分のベストを尽くす。そのうえで年末にどこにいるかを見るだけだ」
「もちろん大きなリードはある。でも何が起こるかは分からない。だから何にでも対応できるようにして、得られるすべてのチャンスを最大限に生かしていかないといけない」
記者会見では、すでにF1ワールドチャンピオン経験者であるフェルスタッペンとノリスにも、若きランキングリーダーへのアドバイスを求める質問が飛んだ。
アントネッリはすかさず「彼らは逆転を願っていると思うけどね」と冗談を飛ばしたが、フェルスタッペンは「キミは今やっていることを続ければいい」と高く評価した。
ノリスも「80ポイント以上リードしているのは、彼が信じられないほどいい仕事をしているからだ」と称え、「20歳になったばかりで、恐ろしいほどいい仕事をしている」とそのパフォーマンスを評価した。
好調でも父親が「地に足をつけてくれる」
圧倒的なリードを築く中で、どう冷静さを保っているのか。アントネッリは家族とチームの存在が大きいと語った。
「本当にいい人たちが周りにいるのは幸運だと思う。素晴らしいチームが支えてくれているし、家族もいる。特に父は僕を地に足をつけさせてくれる存在だ」
「僕が少し道を外れそうになっていると感じたら、遠慮なく叱ってくれるし、ちゃんと地に足をつけるように言ってくれる。いい人たちが周りにいることは間違いなく大きな助けになっている」
自身としては、タイトル争いを必要以上に意識することなく、これまでと同じ姿勢を貫くつもりだ。
「僕は毎レース、自分のベストを尽くそうとしているだけだ。マシンに乗ったらできるだけ速く走る。そして年末にどこにいるかを見る」
「物事を複雑に考えすぎたり、チャンピオンシップや結果を心配しながら走ったりしたくない。ただ走って、自分のベストを尽くすだけだ」
VSCという幸運を最大限に生かしてマドリンク初代ウイナーとなったアントネッリ。それでも本人は勝利そのものより、自身のスタートでの判断や改善点に目を向けている。81ポイントという大きなリードを築いたタイトル争いでも姿勢を変えず、次戦アゼルバイジャンGPに向けて「バクーではもっと良くなりたい」とさらなる改善を誓った。
