マクラーレンF1のチーム代表アンドレア・ステラは、2026年F1スペインGPでランド・ノリスをVSC(バーチャル・セーフティカー)終了間際にピットインさせた判断について説明。「首位を守る選択肢はなかった」と明かした。
ポールポジションからレースをリードしていたノリスは、勝利が有力視される展開だった。しかし、ランス・ストロールのマシン回収のために導入されたVSCのタイミングに翻弄され、ピットストップ後に5番手まで後退。最終的に3位まで挽回したものの、優勝を逃した。
VSC発動時にはピット入口を通過
ノリスは予選で最後のアタックを決め、マドリンクで初開催されたF1スペインGPでポールポジションを獲得。決勝でもスタートでアンドレア・キミ・アントネッリを抑えると、その後はタイヤを管理しながらリードを広げていった。
レースの流れが変わったのは、ランス・ストロールがマシントラブルによってランオフエリアにマシンを止め、VSCが導入された場面だった。
アントネッリとマックス・フェルスタッペンはVSCによる減速中にピットストップを行うことができたが、ノリスはその恩恵を受けられなかった。VSCが発動した時点で、ノリスはわずか数秒前にピット入口を通過していたためだ。
そのためノリスはもう1周してからピットへ向かったが、今度はピットインするタイミングでVSCが終了。通常のレーシングスピードに戻った状況でピットストップを行うことになった。
さらにピットでは約7秒を要し、ノリスは5番手まで後退した。
「本来なら何秒もの差をつけて勝てた」
ノリスはそこから追い上げて3位まで挽回したが、ステラは本来なら勝利できるだけのペースがあったと振り返る。
「ポールポジションからスタートしてレースをリードし、素晴らしいペースがあった。本来なら何秒もの差をつけて勝てたレースだった。それが最終的には3位になった」
「現実として、レースには自分たちでコントロールできる要素と、できない要素がある。VSCが出たタイミングは数秒遅すぎた。ランドはすでにピット入口を通過していたからだ」
「そして今度は数秒早すぎた。ランドがピットに入ったところでVSCが終了してしまった」
つまりマクラーレンにとっては、VSCの発動があと数秒早ければノリスをすぐにピットへ入れることができ、解除があと数秒遅ければ次の周でもVSC中にタイヤ交換を完了できた可能性があった。
しかし、実際にはその両方から外れるタイミングとなった。
ステイアウトしても首位は守れなかった
一方、VSCが終了するタイミングでノリスをピットへ入れず、そのままコース上に残すという選択肢も考えられた。
だが、ステラによれば、それでも首位を維持することはできなかったという。
ノリスが使用していたミディアムタイヤにはすでにグレイニングが発生しており、最後まで走り切ることは現実的ではなかった。そのため、一時的に首位を維持したとしても、その後に通常のレーシングコンディションでピットストップを行う必要があった。
「そのまま走り続ければ、すでにグレイニングが出ている中古のミディアムで走ることになる。そして、どこかの段階でピットに入れば、すでにハードタイヤへ交換したドライバーたちの後ろに出ることになる。そうなればシャルル・ルクレールと似たようなレースになっていただろう」
「実際にはミディアムの方が早く終わるので、我々はもっと早くピットに入れる必要があった。つまり、首位を維持するための選択肢は本当になかった」
VSC中にハードタイヤへ交換したライバルに対し、ノリスだけが中古ミディアムでステイアウトすれば、後のピットストップで大きなタイムロスを負う。マクラーレンは、VSCが解除されようとしていてもタイヤ交換を行うことが最善だったと判断した。
「信じられないほど不運だった」
ステラは今回の結果について、戦略そのものではなく、VSCのタイミングというチームがコントロールできない要素が決定的だったとの認識を示した。
「タイミングが信じられないほど不運だったことを受け入れる必要がある。それでも、全体としてはポジティブなレースだった」
「我々がコントロールできなかった要素が結果を左右した。しかし、自分たちでコントロールできた部分については、今後に向けて非常に楽観的になれる」
実際、マドリンクでのマクラーレンのペースはライバルからも高く評価された。
レース終盤にノリスを抑えたフェルスタッペンは、ノリスについて「僕たち全員より速かった」と認め、アントネッリもノリスは「勝利に値していた」と語った。

異なるコースでも示したマクラーレンの競争力
マクラーレンにとって結果以上に重要なのは、特性の異なるマドリンクでも高い競争力を発揮できたことだった。
ノリスはハンガリーGPとオランダGPで勝利を挙げており、マドリンクでもポールポジションを獲得して決勝をリード。VSCがなければ勝利できた可能性が高いレース内容だった。
「本当に不運だった。ただ、ザントフォールトやハンガリーとは非常に異なるレイアウトで、マクラーレンがこれほど競争力を発揮できたというポジティブなメッセージを受け取りたい。今後に向けて非常に心強い」
ステラは最後に、今回の不運を冗談交じりに表現した。
「これは受け入れるしかない。今日はレースに勝つには速すぎたんだ。もう少し遅ければ、ピットに間に合っていたのだから!」
「我々は笑顔で受け止めているし、残りのシーズンを楽しみにしている」
F1スペインGPでノリスが勝利を逃した背景には、VSC発動時にはすでにピット入口を通過し、次の周にピットへ向かうとVSCが終了するという数秒単位の不運があった。中古ミディアムでステイアウトしても後にピットストップが必要だったため、マクラーレンには首位を守れる現実的な選択肢はなかったというのがステラの説明だ。それでも、異なる特性を持つマドリンクで優勝を狙える速さを示したことは、残るF1シーズンに向けて大きな手応えとなった。
