アウディF1チームは、2026年F1イタリアGPの再スタート手順を巡り、角田裕毅を処分なしとしたFIA(国際自動車連盟)スチュワードの決定について、上訴する意向を正式に通知した。
角田裕毅は赤旗後の再スタートでグリッドへの停止位置を巡って審議対象となったものの、スチュワードは「追加フォーメーションラップを引き起こしたとは認められない」と判断し、追加措置なし(No Further Action)としていた。
しかし、角田裕毅が10位で獲得した1ポイントによって直接的な影響を受けたアウディが、この裁定に異議を唱えた。
角田裕毅のグリッド位置を巡る審議
シャルル・ルクレールのクラッシュによる赤旗中断後、レースはスタンディングスタートで再開される予定だった。
14番グリッドからスタートする予定だった角田裕毅は、当初15番グリッドの方向へ進入したものの、その後右側へ修正。最終的には14番グリッドにマシンを停止させた。
マシンはピットウォール側にわずかに角度がついた状態だったが、フロントタイヤの接地面はグリッドボックス前端のラインを越えておらず、いわゆるフォルススタート(false start)の位置にはなかった。
しかし、レースディレクターのルイ・マルケスは、その状態でレースをスタートさせることに懸念を抱き、スタート手順を中止して追加のフォーメーションラップを実施した。
その後、角田裕毅にはFIA F1レギュレーションの第B5.9.4条に違反した疑いがあるとして審議が行われた。
同条では、ドライバーが追加のフォーメーションラップを発生させ、そのラップを走行できる場合、ラップ終了時にピットレーンへ入り、ピットレーン最後尾からスタートしなければならないと規定されている。
FIAは「角田裕毅が原因ではない」と判断
レーシングブルズ側は、角田裕毅のマシンがフォルススタートに該当する位置にはなく、他のドライバーにも影響を与えていなかったと主張。また、追加フォーメーションラップの「原因」が角田裕毅だったとは言えず、チーム側にも角田裕毅が原因だとの通知はなかったと説明した。
スチュワードはこの主張を認め、追加フォーメーションラップについて「レースディレクターによる状況の評価の結果として生じた」と判断した。
つまり、角田裕毅の停止位置そのものが規則上スタートできない状態だったため追加ラップが必要になったのではなく、レースディレクターが安全を期してスタートを中止したという整理だ。
さらにスチュワードは、レーシングブルズには角田裕毅をピットレーンに入れて、そこからスタートさせるよう指示すべき理由はなかったと結論づけた。
その結果、角田裕毅にストップ&ゴーペナルティを科す根拠はないとして「追加措置なし」とされた。

アウディがFIAの判断に異議
だが、アウディは第B5.9.4条の適用について異議を唱え、スチュワードの決定に対して上訴する意向を通知した。
「イタリアGP後、我々は追加フォーメーションラップを引き起こしたドライバーに対し、ピットレーンに入り、そこからレースを再開することを求める第B5.9.4条の適用について懸念を提起した」
アウディは声明でそう説明した。
「スチュワードは追加措置なしとの決定を下し、我々は上訴する意向を通知した。この件は現在FIAの上訴手続きの対象となっているため、現段階でこれ以上のコメントは控える」
上訴意向の通知によって、アウディには正式に上訴を進めるか、それとも取り下げるかを決定するための96時間が与えられる。
裁定が覆ればボルトレトが10位に浮上
アウディにとって、この上訴の結果はポイントに直結する。
角田裕毅はイタリアGPを10位でフィニッシュし、レーシングブルズ復帰後初となる1ポイントを獲得した。
一方、仮に角田裕毅にレース中に消化されなかったストップ&ゴーペナルティが適用される場合、F1のスポーティングレギュレーションに基づいて30秒のタイムペナルティへと換算される。
その場合、角田裕毅は10位から15位へ降格し、11位だったアウディのガブリエル・ボルトレトが10位へ繰り上がって1ポイントを獲得することになる。
アウディは現在コンストラクターズ選手権8位につけており、ポイント獲得の可能性があるだけに、第B5.9.4条の解釈を巡るFIAの判断に異議を申し立てた格好だ。
一方、現時点で正式な結果は変更されておらず、角田裕毅の10位とレーシングブルズの1ポイントは維持されている。今後はアウディが期限内に正式な上訴へ進むかどうか、そして進んだ場合にFIAの裁定が維持されるかが焦点となる。
