FIAは、2026年F1第13戦イタリアGPを「ヒートハザード(Heat Hazard)」対象イベントに指定した。モンツァでは週末を通して厳しい暑さが予想されており、ドライバーの安全を守るため、冷却ベストを含む特別な暑熱対策が適用される。
イタリアGPの週末は平年を大きく上回る気温となる見通しで、金曜日は最高34度、土曜日は35度、日曜日も34度まで上昇すると予想されている。
FIAの規定では、イベント中に気温が31度を超えることが予想され、定められたヒートインデックスの条件を満たした場合、ヒートハザードを宣言することができる。
FIAがイタリアGPを「ヒートハザード」に指定
ヒートハザードは、極端な暑さによってドライバーの健康や安全が脅かされる可能性がある場合に適用される制度だ。
今回のイタリアGPは、2025年のシンガポールGPとアメリカGP、2026年のオーストリアGPに続き、F1で4例目のヒートハザード指定となる。
モンツァではグリッド上でファンやアイスベスト、日よけなどの暑熱対策が強化されるほか、マシンにはFIAが承認したドライバー冷却システムを搭載することが認められる。
冷却ベストは着用を選択可能
ヒートハザードが宣言されると、ドライバーは液体冷却式のベストを使用できる。耐火性のアンダーウェアにチューブを組み込み、冷却された液体を循環させることで、走行中の体温上昇を抑える仕組みだ。
システムではグリコールなどの液体を使用し、ドライアイスを入れたタンクを通して冷却したうえでドライバーの身体周辺に循環させる。
ただし、冷却ベストの着用自体は義務ではない。ドライバーは快適性などを理由に使用しないことも選択できる。
一方、冷却システムを使用しないことで重量面のアドバンテージを得ることは認められない。そのため、ヒートハザードが適用された場合には冷却システム搭載を考慮してマシンの最低重量が5kg引き上げられ、システムを使用しないドライバーも相当するバラストを搭載しなければならない。

ラッセルは冷却システムを評価
GPDA(グランプリ・ドライバーズ・アソシエーション)のディレクターを務めるジョージ・ラッセルは、2025年シンガポールGPで冷却ベストを着用して優勝しており、このシステムを評価している。
「全員がこのトップを快適だと感じるわけではないけど、人によっては他の人より快適に感じると思う。もちろん、時間が経てば自分の好みに合わせて調整できるようになるだろう」
「でも、コンセプトはいい。湿度90%のなかでレースをして、コックピットが60度近くになると、マシンの中はちょっとしたサウナみたいになる。だから、僕たちはみんな歓迎していると思う」
一方で、冷却ベストへの評価はドライバーによって異なる。マックス・フェルスタッペンはこれまで、ベストの着心地やシステムに問題があるとして否定的な見解を示している。
また、冷却に使用するドライアイスが走行中になくなる可能性も課題のひとつだ。その場合、十分に冷却されなくなった液体がシステム内を循環し、ドライバーにとって逆に不快になる可能性がある。
きっかけは2023年カタールGPの過酷なレース
FIAがこうした暑熱対策を導入する大きなきっかけとなったのが、2023年F1カタールGPだった。
極端な高温と高湿度のなかで行われた決勝では、複数のドライバーが深刻な体調不良に陥った。エステバン・オコンはヘルメット内で嘔吐しながら走行を続け、ローガン・サージェントは体調悪化によってリタイア。ランス・ストロールやアレクサンダー・アルボンもレース後に暑さによる体調不良の処置を受けた。
複数のドライバーが高速走行中に意識を失いかけるほどだったことから、FIAは同様の事態を防ぐための暑熱対策を制度化した。
2026年はスプリントと決勝を別々に指定可能
2026年にはヒートハザード規定にも変更が加えられ、スプリントと決勝について、それぞれ個別に宣言できるようになった。
FIAは規定について、「ヒートハザードの宣言は、スプリントと決勝で分けることができるようになった。ヒートハザードはスプリント、決勝、またはその両方について、競技開始24時間前までに宣言される」と説明している。
これにより、週末途中で気象予報が変化した場合にも、実際のコンディションに応じて柔軟に暑熱対策を適用できる。
最高35度という厳しい暑さが予想される2026年F1イタリアGPでは、純粋なマシン性能だけでなく、コックピット内の温度管理とドライバーの体調管理も重要な要素となる。特に高速コースのモンツァで長時間にわたって集中力を維持するため、各ドライバーが冷却システムを使用するかどうかも注目点となりそうだ。
