ホンダは、2026年F1オランダGPで投入した新パワーユニット(PU)「スペック2」について、期待された効果が得られなかったとの見方を否定した。HRC(ホンダ・レーシング)の折原伸太郎は、ベンチテストで確認していたパワー向上を実際の走行でも確認できたと説明している。
一方で、燃焼仕様の変更に伴ってエンジンブレーキやトルクデリバリーの不安定さが再び表面化したことも認めた。
フェルナンド・アロンソとランス・ストロールから厳しい評価が出たものの、ホンダは改善可能な問題だと捉えており、「スペック2を失敗とは考えていない」と強調している。
ベンチで確認したパワー向上をサーキットでも確認
ホンダはオランダGPが行われたザントフォールトで、2026年型PUの新仕様「スペック2」を投入した。事前には30~40馬力程度の向上を目標としているとの情報もあったが、各チームのGPSデータを基にした推定では、実際の向上幅は20馬力未満だったとも伝えられている。
さらにアストンマーティンのドライバーからは、絶対的なパワー以上にPUの扱いにくさを指摘する声が上がった。
しかし、ホンダ側はスペック2によるパワー向上そのものについては、当初の想定通りだったとしている。
イタリアGPを前に折原は、「パフォーマンスに関しては、ベンチで確認していた数値が実際の走行でも再現できていることをデータで確認しています」と説明した。
信頼性についても大きな問題は発生しなかった。
「はい。信頼性については、問題なく週末を走り切ることができました。その点では、すべて予定通りに進みました」
燃焼変更でドライバビリティの問題が再発
一方、ホンダが認めている最大の課題がドライバビリティだ。
スペック2では燃焼仕様に変更が加えられたが、その影響によってシーズン前半に改善を進めてきたPUの挙動に関する問題が再び現れた。
アロンソはオランダGPで新PUについて「振り出しに戻った」と厳しく評価していた。
それでも折原は、スペック2そのものが失敗だったとの見方を否定した。
「エンジンの挙動について難しい部分があるのは確かです。ただ、対策を施し、改善するためのプロセスを進めていけばパフォーマンスを向上させられることは確認できています。ですから、スペック2が失敗だったとは考えていません」
つまり、絶対的なパワー向上は実現しているものの、それをドライバーが安定して引き出せる状態にはまだ達していないということだ。
「パフォーマンス面では一定の進歩が確認できています。ただ、安定したトルクを供給し、アクセル操作やブレーキング時のPUの反応にドライバーが自信を持てるレベルにはまだ到達していません」

エンジンブレーキとトルク応答にばらつき
ザントフォールトでアロンソとストロールが特に問題視していたのが、エンジンブレーキとアクセル操作に対するトルクの応答だった。
折原は、その症状について具体的に説明している。
「具体的には、ブレーキング時のエンジンブレーキに問題があり、ラップごとに挙動が一定ではありませんでした」
「アクセルを踏んだ量に対して想定したトルクが出なかったり、逆にトルクが出すぎたりすることがありました。そうなるとコーナー出口で突然ホイールスピンが発生する可能性があり、ドライバーは自信を持って攻めることができません」
2026年のF1では電動化の比率が大幅に高まり、PUとエネルギーの制御がマシンパフォーマンスを左右する重要な要素となっている。そのため、ドライバーがアクセルやブレーキ操作に対する反応を予測できないことは大きなハンディキャップとなる。
ただし、折原はスペック1でも同様の問題を改善してきた実績があることから、今回も解決できるとの見通しを示した。
「PUの反応を正確に予測できないことは大きな問題です。ただ、良い点としては、スペック1のときと同じように、これについても少しずつコントロールして改善していけるということです」
「スペック1より確実に向上」もトップには届かず
ホンダはスペック2によって前仕様から前進したと評価している一方、現時点でライバルPUに追いついたとは考えていない。
折原は「パフォーマンスはスペック1と比較して確実に向上しています」と述べた。
その一方で、次戦イタリアGPについては厳しい戦いになることを覚悟している。
モンツァは長いストレートが特徴で、PUの絶対的な性能とエネルギーマネジメントがラップタイムに大きく影響する。新仕様の実力を測るうえでも、ザントフォールト以上に厳しいテストになる。
「残念ながら、PUをアップデートしたとはいえ、まだベストのPUではありません。そのため、モンツァでは厳しい戦いになると考えて準備しています」
ホンダにとってスペック2のザントフォールト投入は、狙ったパワー向上を確認できた一方、その代償としてドライバビリティの課題を再び浮き彫りにする結果となった。アストンマーティンがその性能を最大限に引き出すためには、エンジンブレーキとトルクデリバリーの安定化が急務となる。
最高速とPU効率が重要になるモンツァでは、スペック2による純粋なパワー向上と、ザントフォールトで露呈した挙動面の改善がどこまで進んでいるかが改めて試されることになる。
