元F1ドライバーで、FIAスチュワードやテレビ解説者を務めたジョニー・ハーバートが、マックス・フェルスタッペンを批判したことで受けた誹謗中傷について振り返った。
ハーバートは、フェルスタッペンの熱狂的なファンから「ハーバートに死を」といったメッセージまで送られたと明かし、スチュワードや解説者として活動してきたなかで「彼らが最悪だった」と語った。
フェルスタッペン批判をきっかけに激しい反発
ジョニー・ハーバートとフェルスタッペン陣営の対立が表面化したのは、2024年F1メキシコシティGPだった。
このレースでフェルスタッペンはランド・ノリスとのバトル中、同一周回で発生した2つのインシデントについて、それぞれ10秒のタイムペナルティを科された。
当時FIAスチュワードも務めていたハーバートは、レース後にベッティング関連サイトの取材に応じ、フェルスタッペンのドライビングについて「やりすぎだ」と批判。さらに、ライバルをコース外へ押し出すことでアドバンテージを得ようとする「ひどい考え方」に陥っているとの見解を示した。
この発言は大きな反響を呼び、フェルスタッペン本人だけでなく、父ヨス・フェルスタッペンも反発した。
ヨス・フェルスタッペンは当時、「FIAはスチュワードの人選をしっかり見直すべきだ。誰を配置しているのか、利益相反と受け取られる可能性がないのかも含めてだ」と語り、ハーバートがスチュワードを務めながらメディアで意見を発信している状況に疑問を呈した。
「『ハーバートに死を』とまで言われた」
その翌年1月、ハーバートは2025年F1シーズン開幕を前にFIAのスチュワード職を離れることになった。
今回、別のベッティング関連サイトのインタビューで、スチュワードや解説者として活動してきたなかで、どのファンから最も激しい攻撃を受けたかと問われると、ハーバートは迷わずフェルスタッペンのファンを挙げた。
「それは簡単だ! 僕がマックス・フェルスタッペンに疑問を呈したことに腹を立てたオランダのファンだ」
「実際にはオランダ人だけじゃなかった。他の国の人たちもいた。『ハーバートに死を』とまで言われた。彼らが最悪だった。僕が偏っていると非難するんだ。今でもマーティン・ブランドルに対して同じことを言っている」
ハーバートによれば、自身がイギリス人ドライバーをひいきしているという批判も繰り返し浴びたという。
「『ルイス・ハミルトンに偏っている』と言われる。でも僕たちはイギリス人で、ルイスもイギリス人だ。あなたたちはオランダ人でマックスを応援している。それなのに僕たちを偏っていると言いながら、僕たちにもマックスを応援してほしいと言うんだ」

「もちろんイギリス人ドライバーを応援する」
一方でハーバートは、イギリス人としてハミルトンら母国のドライバーを応援することと、F1を評価する際の客観性は別のものだと主張した。
「もちろん僕たちはイギリス人ドライバーを応援する。でも、それでも客観的に見ている。僕たちだって“フライング・ダッチマン”には驚かされている」
「もしサッカーでイングランドとオランダが対戦するなら、もちろん僕はイングランドを応援する」
ハーバートはフェルスタッペンの能力そのものを否定しているわけではなく、あくまで特定のドライビングやインシデントについて批判的な意見を示してきたという立場だ。
F1で問題となるファンによる誹謗中傷
F1ではSNSの普及とともにドライバーへの支持が世界規模で拡大する一方、ライバルや評論家、関係者に対する攻撃が過激化するケースも問題となっている。
フェルスタッペンやハミルトンのように巨大なファンベースを持つドライバーの場合、コース上の接触やタイトル争いをきっかけに、ドライバー本人だけでなくチーム関係者、ジャーナリスト、解説者、スチュワードにまで批判が向かうことがある。
今回ハーバートが「最悪だった」と表現したのは、フェルスタッペンを支持するすべてのファンではなく、自身に誹謗中傷を浴びせた熱狂的なファンについてだ。実際、ハーバート自身も「オランダ人だけではなかった」と説明しており、国籍ではなくフェルスタッペンへの批判に反発した人々を指している。
「死」を持ち出すようなメッセージは、ドライバーへの支持やスポーツに対する意見の範囲を明らかに逸脱している。ハーバートの告白は、2024年メキシコシティGPをめぐるフェルスタッペン陣営との対立を改めて浮かび上がらせるとともに、F1の巨大なファンコミュニティが抱える誹謗中傷の問題を示すものとなっている。
