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  • オランダ王子がザントフォールト売却 F1復活の使命達成でAI事業へ

    オランダ王子がザントフォールト売却 F1復活の使命達成でAI事業へ

    オランダ王室のベルンハルト・ファン・オラニエ=ナッサウ王子が、サーキット・ザントフォールトの持ち分を売却した。8月23日に開催される最後のF1オランダGPを前に、F1復活という「使命は果たした」として、自身のすべての事業持ち分を手放す決断を下した。

    ベルンハルト王子はビジネスパートナーのメノ・デ・ヨング氏とともに2016年にサーキットを取得。

    2021年には36年ぶりとなるF1オランダGPの復活を実現し、マックス・フェルスタッペンの活躍とともにF1人気が急拡大するきっかけを築いた。

    今回、王子はサーキット・ザントフォールトの持ち分に加え、その他の事業や不動産投資の権益も、デ・ヨング氏とコーエン・グルーネフェルト氏へ譲渡した。売却額などの詳細は公表されていない。

    ベルンハルト王子は声明で、今回の決断について次のように説明した。

    「使命は果たした。私たちはF1をオランダへ呼び戻し、ザントフォールトは6大会にわたって世界の舞台となった。これ以上の結果は望めない。だからこそ、決断する勇気が必要だった」

    「私は、この成功をともに築き上げてきたパートナーたちに、自らの持ち分を引き継ぐ」

    今後は人工知能(AI)分野での新たな事業に注力する一方、モータースポーツとの関わりは継続するとしている。

    F1 オランダGP ザントフォールト

    フェルスタッペン「僕にとって大きく変わることはない」
    2026年のオランダGPは、現在の契約ではザントフォールトで開催される最後のF1レースとなる。

    しかし、地元の英雄であるマックス・フェルスタッペンは、別れを過度に感傷的には捉えていない。

    「これまであそこで本当に素晴らしい思い出を作ることができた。何度も優勝できたこともうれしい」

    「F1は終わるけど、サーキット自体がなくなるわけじゃない。これからも他のクルマで走ることはできる」

    「結局のところ、僕にとって大きく変わることはない」

    一方で、最後の母国GPに向けては特別仕様のヘルメットを用意していることも明かした。

    「もちろんベストを尽くすよ。オランダへの敬意を込めた特別なヘルメットも用意している。それができることの一つだね」

    また、名物コーナー「スケイフラック(Scheivlak)」を将来的に自身の名前へ変更すべきではないかと問われると、笑いながら否定した。

    「それは僕らしくないよ。普通、コーナー名ってドライバーが亡くなってから付けられるものじゃない?」

    「だから、その話は僕にはしないでほしいね」

    ハジャー「ザントフォールトを楽しむべき」
    2026年の新レギュレーションではエネルギーマネジメントの影響が大きく、スパ・フランコルシャンのような高速サーキットでは、ドライバーが全開走行を続けられない場面が多く見られている。

    しかし、ハンガロリンクではストレート終盤までフルパワーを使用できたことで、レーシングブルズのアイザック・ハジャーは「従来のF1らしさが戻った」と感じたという。

    「どれだけエネルギーを使えるかで『良いサーキット』が決まってしまうのは、少し悲しいことだ」

    「スパは世界でも最高のサーキットの一つだけど、今年のマシンでは僕たちにとって最悪のコースの一つだった」

    「ザントフォールトもきっと良いレースになると思う。だからモンツァへ向かう前に、そこで走れる時間を楽しみたい」

  • エイドリアン・ニューウェイ ホンダF1を評価「悲惨なスタートから大きく前進」

    エイドリアン・ニューウェイ ホンダF1を評価「悲惨なスタートから大きく前進」

    アストンマーティンF1のマネージング・テクニカルパートナーであるエイドリアン・ニューウェイは、ホンダとの協力関係が開幕当初の「悲惨なスタート」から大きく改善したと語り、両者の信頼関係が着実に深まっていることを明かした。

    アストンマーティンは今週、ブダペストで実施するフィルミングデーでホンダの新型パワーユニットを初走行させる予定だ。約4か月をかけて開発されたこのアップグレードは、ハンガリーGPで投入されたAMR26Bのシャシー改良と並び、今季後半戦の巻き返しを担う重要な一歩となる。

    ホンダ新PU投入でポイント争い復帰を狙う
    ハンガリーGPで投入されたAMR26Bは、中団グループで戦えるだけの競争力を示したものの、依然としてポイント獲得にはあと一歩及ばなかった。そこで期待されるのが、ザントフォールトでレースデビューを予定しているホンダの新型パワーユニットだ。

    スペインメディアでは、新仕様によって約35馬力の出力向上が見込まれ、1周あたり約0.5秒のタイム短縮につながる可能性があると報じられている。一方で、現時点ではメルセデスやレッドブル・フォード製PUとの差は依然として大きく、新型PUだけでその差を完全に埋めることは難しいとの見方もある。

    それでもアストンマーティンにとっては、これまで弱点となっていたパワーユニット性能を改善し、中団でのポイント争いに加わるための重要なアップグレードとなる。

    エイドリアン・ニューウェイ(アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム)

    ニューウェイ「悲惨なスタートが強固な関係を生んだ」
    ニューウェイは、技術面以上にホンダとの協力体制そのものが大きく進歩したと評価した。

    「本当に進歩したのは、まさに両者の関係だ。『悲惨なスタート』としか言いようのない始まりだったが、そのおかげでホンダと我々の間には非常に緊密な協力関係が築かれた」

    開幕戦オーストラリアGPでは、ニューウェイ自身がホンダのパワーユニットに厳しい評価を下し、チーム内外に大きな波紋を広げた。しかし、それから4か月が経過した現在、その姿勢は大きく変化している。

    「我々はあらゆる面で関係を築き続けている。そうした進歩には非常に満足している。通常、関係が改善すれば、パフォーマンスも改善するものだ」

    ニューウェイは、技術開発だけでなく、双方のコミュニケーションや連携体制の向上こそが今後の競争力向上につながるとの考えを示した。

    2027年を見据えホンダとの連携をさらに強化
    ホンダもここ数週間、アストンマーティンとの共同開発に手応えを示しており、新型パワーユニットによる性能向上に期待を寄せている。

    ただし、このアップグレードが2026年最後のエンジン開発となる予定で、ホンダはすでに2027年型パワーユニットの開発へリソースを集中させている。

    アストンマーティンにとって、新型PUは今季の競争力向上だけでなく、2027年以降を見据えたホンダとの協力体制をさらに成熟させる試金石となりそうだ。

  • オリバー・ベアマン アストンマーティンF1躍進を警戒「本来なら争う相手ではない」

    オリバー・ベアマン アストンマーティンF1躍進を警戒「本来なら争う相手ではない」

    オリバーベアマンは、F1第11戦ハンガリーGPで大幅アップグレードを投入したアストンマーティンF1が中団争いへ加わったことについて、「本来なら争う相手ではない」と危機感をあらわにした。

    ハースF1は今季序盤こそ好調だったが、近戦ではライバル勢の開発競争についていけず苦戦が続いている。一方のアストンマーティンはハンガリーGPでBスペック仕様のAMR26を投入し、フェルナンド・アロンソが今季初めてQ1突破を果たすなど、大きな前進を示した。

    アストンマーティンの前進に「本当に苦しい」
    予選でアロンソにわずかに及ばなかったベアマンは、アストンマーティンとの争い自体がハースにとって厳しい現実を示していると認めた。

    「本当に苦しいよ。それだけ僕たちが今どれだけ苦戦しているかを物語っている」

    「ただ同時に、ここはストレートが最も短いサーキットだから、彼らにとって最も相性のいいコースだったとも思う。だから、この状況がずっと続くとは考えていない」

    「それでも、僕たちがもっとレベルアップしなければならないという現実を突きつけられた」

    キャデラックF1のバルテリ・ボッタスも、ハンガリーのレイアウトがアストンマーティンに有利だったとの見方を示している。

    しかし、その希望も長くは続かない可能性がある。アストンマーティンはハンガリーで実施したフィルミングデーで改良版ホンダ製パワーユニットを初走行させており、この新仕様は夏休み明けのオランダGPで実戦投入される予定となっている。

    オリバー・ベアマン(ハースF1チーム)

    「クルマが本来の性能を発揮していない」
    ハンガリーGPでは完走車中最後尾の17位に終わり、トップから2周遅れという厳しい結果に終わったベアマン。苦戦の原因について自身ではなくマシン側にあると説明した。

    「クルマが本来あるべき性能を発揮していないことが分かっているし、自分としてはいい仕事ができたと思っている」

    「できる限りのことはやった。でもスパで感じたクルマとはまったく別物だった。スパと比べても、チームメイトのマシンと比べても、ダウンフォース量に大きな差が出ていることを確認している」

    「だから原因はクルマだ。本当に、本当にひどい週末だった」

    さらにベアマンは、ハースが抱える最大の問題はパフォーマンスの一貫性の欠如だと指摘した。

    「今週末は僕のマシンだったけれど、別の週末にはエステバン(オコン)のクルマが突然10~15ポイント分のダウンフォースを失うこともある」

    「結局は運任せなんだ。運よく当たりのクルマならいい週末になるし、外れを引けば本当に長い週末になる。今回はその長い週末だった」

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

    アストンマーティンとの差はさらに広がる可能性
    今回のハンガリーGPでは、アストンマーティンは空力アップグレードだけで中団グループへ復帰する兆しを見せた。さらに夏休み明けのオランダGPでは、改良版ホンダ製パワーユニットの投入も控えており、ライバル勢にとっては一段と厳しい状況になる可能性がある。

    一方のハースは、コストキャップ上限を下回る予算で運営しているとみられ、開発競争で後れを取っているとの見方もある。ベアマンの「本来なら争う相手ではない」という言葉は、アストンマーティンの急速な前進以上に、ハースが置かれている厳しい現状を象徴する発言と言えそうだ。

  • アストンマーティンF1 35年支えたタイヤ技術者ミック・ファーン氏を追悼

    アストンマーティンF1 35年支えたタイヤ技術者ミック・ファーン氏を追悼

    アストンマーティンF1は、長年チームを支えたタイヤテクニシャンのミック・ファーン氏が逝去したことを発表し、その功績を称える追悼メッセージを公開した。

    「ビスケット(Biscuit)」の愛称で親しまれたファーン氏は35年にわたってF1パドックで活動し、多くのドライバーやチームスタッフから深い敬意を集めた存在だった。

    35年間F1を支えた「ビスケット」
    アストンマーティンF1は7月30日、長年チームに貢献したタイヤテクニシャンのミック・ファーン氏が30日に安らかに息を引き取ったことを明らかにした。

    ファーン氏は「ビスケット」の愛称で親しまれ、35年間にわたってF1パドックで活動。現在のアストンマーティンには2015年に復帰し、その前身チーム時代も含めて長年シルバーストンを拠点とするチームを支えてきた。

    チームはSNSを通じて次のような声明を発表した。

    「チーム全員、そしてF1コミュニティ全体が、本日安らかに旅立った私たちの仲間、ミック・ファーン、愛称『ビスケット』のご家族とご友人に心よりお悔やみを申し上げます」

    「ビスケットは真の功労者であり、周囲のすべての人に忠誠心と惜しみない支えを示してくれました。彼は誰もが温かく迎え入れ、転戦を続ける私たちの世界をまるで家族のように感じさせてくれました」

    「35年間パドックで過ごした彼は、ともに働いたすべての人から尊敬されていました。共に過ごした時間に心から感謝しており、その温かさとユーモアを私たちはいつまでも忘れません」

    ハンガリーGPではすでにチームが敬意
    ファーン氏は先週末のハンガリーGPには帯同しておらず、アストンマーティンは週末を通じて「彼はサーキットの外で自身の闘いを続けている」と伝え、敬意を表していた。

    その後、30日に逝去が発表され、多くのF1関係者から追悼の言葉が寄せられている。

    かつて2017年から2018年に同チームで戦い、現在はハースF1に所属するエステバン・オコンは自身のSNSで次のようにコメントした。

    「本当に素晴らしい人だった。一緒に過ごした時間や、笑い合った思い出を決して忘れない」

    「ご家族とご友人に心からお悔やみを申し上げます。安らかに眠ってください、伝説のビスケット」

    また、元フォース・インディアのストラテジストで、現在はSky Sports F1の解説者を務めるバーニー・コリンズも追悼のメッセージを投稿した。

    「安らかに眠ってください、ビスケット。向こうでもおいしい紅茶を飲んでいることを願っています。あなたがいなくなり、パドックは少し寂しくなってしまいました」

    アストンマーティンF1にとってファーン氏は単なるスタッフではなく、長年にわたりチーム文化を支え続けた存在だった。ドライバーやエンジニア、ライバルチームの関係者からも慕われたその人柄は、多くの追悼の言葉が示すように、F1パドック全体に大きな足跡を残した。

  • メルセデスF1代表が警告「タイトル争いで問題を起こせばドライバーを降ろす」

    メルセデスF1代表が警告「タイトル争いで問題を起こせばドライバーを降ろす」

    メルセデスF1のチーム代表トト・ウォルフは、2026年のF1タイトル争いが激化するなか、キミ・アントネッリとジョージ・ラッセルに対し、2014年から2016年にかけてのルイス・ハミルトンとニコ・ロズベルグのようなチーム内抗争は二度と許さないと明言した。

    現在、メルセデスは2016年以来となるチーム内での本格的なドライバーズタイトル争いを迎えている。

    ランキング首位のアントネッリとラッセルがタイトルを争う一方、フェラーリのルイス・ハミルトンもその間に割って入る構図となっている。

    「二度と同じ過ちは繰り返さない」と断言
    2014年から2016年にかけて、メルセデスではハミルトンとロズベルグのライバル関係が激化し、コース上だけでなくチーム内でも緊張が高まった。その経験を踏まえ、ウォルフは同じ状況を再び招くつもりはないと強調した。

    RacingNews365の取材に対し、ウォルフはチーム内対立が再発する可能性について次のように語った。

    「私はそんなことは絶対に許さない」

    「そんなことは二度と私の下では起こらないし、チームでも起こらない。シンプルな話だ。もしそんなことをするドライバーがいたら、私はそのドライバーを降ろす」

    ウォルフはこれまでも、ハミルトンとロズベルグのタイトル争いからメルセデスは多くを学んだと語ってきた。ただし同様の発言は2015年シーズン開幕前にも行われており、その後も両者の関係はさらに悪化していた経緯がある。

    メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ

    ラッセルの不運がポイント差拡大の一因
    現時点ではアントネッリがランキング首位を59ポイント差でリードしているが、ウォルフはこの差が実力だけによるものではないと考えている。

    ラッセルは今季、マシントラブルやセーフティカーのタイミングなど、不運に見舞われるレースが続いており、ポイント差は実際以上に広がっているとの見方を示した。

    ハンガリーGPでもラッセルはスタート時のシステムトラブルに苦しんだ。ウォルフはSky Sports F1に対し、チームの責任を率直に認めた。

    「またしてもジョージのスタートを台無しにしてしまった。これは受け入れられない。我々として十分ではない」

    青旗混乱にも不満「満足できる一日ではなかった」
    ウォルフはハンガリーGPで発生した青旗運用の混乱にも言及した。自動青旗システムの不具合により各チームがドライバーへの情報共有に苦戦したことについて、他チームのエンジニアを「テレタビーズ」と皮肉った発言にも触れ、レース全体への不満を隠さなかった。

    「全体として、今日の状況にはまったく満足していない」

    「でも気持ちが落ち着けば、ドライバーズ選手権では夏休み前にしっかりとしたリードを築けたし、コンストラクターズ選手権でも良い差をつけられていることを実感できるだろう」

    「それは速いマシンと素晴らしいチームのおかげだ。VSCのタイミングのように運が悪かった場面もあったが、信頼性という点ではまだ十分とは言えない」

    メルセデスはドライバーズ、コンストラクターズの両タイトル争いで優位な立場を維持している。しかしウォルフは、チーム内の規律とマシンの信頼性を維持することが、悲願のダブルタイトル獲得に向けた最大の課題だと位置づけている。

  • フェルナンド・アロンソ アストンマーティンF1の前進を実感「中団で戦えている」

    フェルナンド・アロンソ アストンマーティンF1の前進を実感「中団で戦えている」

    フェルナンド・アロンソは、アストンマーティンF1が投入した大規模アップグレードによって「もう中団グループで戦えている」と手応えを示した。一方で、その戦いを継続するにはホンダの新型パワーユニットによるさらなるパフォーマンス向上が不可欠だとの見方を示した。

    アストンマーティンはF1ハンガリーGPで16項目に及ぶ“Bスペック”アップグレードを投入。アロンソは今季初のQ2進出を果たし、決勝では14位でフィニッシュした。

    チームメイトのランス・ストロールも13位となり、今季最高成績を記録したことで、新パッケージの効果が明確に表れた。

    アロンソ「ようやく中団グループと戦えるようになった」
    アロンソはレース後のテレビインタビューで、新型マシンによって久しぶりに競争力を感じられたと振り返った。

    「また競争力を感じられたのは良かった」

    「特にレース序盤は、中団グループについていけるくらいのペースがあった」

    「この新しいクルマで仕事を進めていくための、いいベースラインになったと思う」

    その一方で、次戦オランダGPで投入予定のホンダ新型パワーユニットに大きな期待を寄せている。

    「特にエンジンについては、ザントフォールトを楽しみにしている。ストレートスピードの面でもう少し競争力を高めたい」

    「レースではもう中団グループの争いに加われている。だからこそ、ストレートでのもうひと押しの速さが必要なんだ」

    「後半戦に向けて、新たなスタートになればいいと思っている」

    フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム)

    ホンダ新型PUはフィルミングデーで初走行
    ホンダはハンガロリンクで実施されるフィルミングデーで、新仕様パワーユニットをAMR26に搭載して初走行させる予定だ。その後、夏休み明け最初のレースとなるF1オランダGPで実戦投入される。

    ホンダF1プロジェクトリーダーの折原慎太郎は、投入計画について次のように説明した。

    「次の重要なステップとして、オランダで新仕様のパワーユニットを投入します」

    「その前に、水曜日のフィルミングデーでAMR26に新しいエンジンを搭載し、夏季休暇前に初走行を行います」

    今回のアップデートで車体側の課題が大きく改善されたことで、ホンダ製パワーユニットの性能向上が実現すれば、中団争いでさらに存在感を高める可能性がある。

    ストロールもアップグレードの効果を実感
    チームメイトのランス・ストロールも、アップグレードによってようやく中団グループと互角に戦えたと評価した。

    「今年初めて中団グループの争いに加われた。それは本当に良かった」

    「今後も開発を続けていかなければならない。今週末は大きな前進だったけれど、さらにプッシュし続ける必要がある」

    レース前にはチームオーナーのローレンス・ストロールも、新パッケージの出来栄えに高い満足感を示していた。

    「間違いなく大きな前進を遂げた。これは数ある前進の第一歩に過ぎない。非常に満足している」

    「実現してくれたファクトリーのスタッフ全員の努力に感謝したい」

    アストンマーティンはハンガリーで車体性能の改善を証明し、後半戦はホンダの新型パワーユニット投入によってさらなる飛躍を目指す。ザントフォールトで予定される新仕様PUが期待どおりの性能を発揮できれば、チームは本格的に中団争いの常連へと返り咲く可能性が高まる。

  • フェラーリF1代表 ハミルトンの5秒ペナルティは「一連のミスの積み重ね」

    フェラーリF1代表 ハミルトンの5秒ペナルティは「一連のミスの積み重ね」

    ルイス・ハミルトンが2026年F1第11戦ハンガリーGPで受けた5秒ペナルティについて、フェラーリF1代表のフレデリック・バスールは「一連のミスの積み重ね」が原因だったと説明した。

    ハンガロリンクではSF-26のシャシー性能を武器に優勝候補と目されていたフェラーリだったが、表彰台を逃す結果に終わった。ハミルトンは予選での進路妨害ペナルティに続き、決勝ではピットレーン速度違反により5秒ペナルティを科され、悔しい週末となった。

    ピット進入のロックアップが連鎖の始まり
    決勝終盤、オスカー・ピアストリがマシントラブルでストップしたことによるバーチャル・セーフティカー(VSC)中、フェラーリはハミルトンをソフトタイヤへ交換。ハミルトンは表彰台争いを続けていたが、ピットレーンで制限速度を0.1km/h超過したことで5秒ペナルティを受け、最終的に5位へ後退した。

    バスールは、ハミルトンがピット進入時にタイヤをロックさせたことが、その後の判断に影響したと説明した。

    「すべてのペナルティを同じように考えるのは難しい。私にとってスパでの(ジョージ・)ラッセルとの接触はレーシングインシデントだ」

    「もし同じ場面をもう一度やるとしても、私は彼にまったく同じことをするよう求める。縁石へ逃げることはできなかったからだ」

    「今日については、一連のミスだった。ピット進入でタイヤをロックさせ、ピットストップでコンマ数秒を失った。そして、その遅れを取り戻そうとして、ピットレーン速度制限解除のタイミングを最適より少し早めてしまったのだろう」

    ルイス・ハミルトン(スクーデリア・フェラーリ)

    「一つのミスが次のミスを招いた」
    バスールは、一度ミスが起きると、その後も焦りからミスが連鎖しやすくなると語り、今回のレースはその典型例だったと振り返った。

    「一つミスをすると、その後にさらにミスをしてしまうのは珍しいことではない。この週末はその良い例だった」

    「ピットストップで限界まで攻めようとした結果、ピット出口ではコンマ2秒ほど前車に遅れていた。そうした出来事が積み重なった結果だ」

    「ペース自体は悪くなかった。しかし序盤はマックス(フェルスタッペン)をまったく攻略できず、その後は(オスカー・)ピアストリも抜けなかった。この経験を今後のシーズンに生かさなければならない」

    直近3戦で4件目のペナルティ
    ハミルトンはハンガリーGPで予選と決勝の2件のペナルティを受けた。これにより、スパ・フランコルシャンでのジョージ・ラッセルとの接触、シルバーストンでのフォルススタート(false start)と合わせ、直近3戦で4件目のペナルティとなった。

    その結果、夏休み前の時点でドライバーズランキング首位のアンドレア・キミ・アントネッリとの差は50ポイントに広がっている。

    フェラーリはハンガリーGPで勝利を狙えるだけの競争力を示しながらも、細かなミスが重なったことで大きな代償を払うことになった。バスールは、この経験を残りシーズンの改善につなげたい考えを示している。

  • ハースF1富士TPCで見えた坪井翔と福住仁嶺起用の賛否 議論を分けたTPCの役割

    ハースF1富士TPCで見えた坪井翔と福住仁嶺起用の賛否 議論を分けたTPCの役割

    TGRハースF1チームが7月28日から29日にかけて富士スピードウェイで実施したTPC(Testing of Previous Cars)は、日本のモータースポーツファンにとって特別な2日間となった。

    2025年型VF-25を使用した今回のテストでは、坪井翔と福住仁嶺がF1マシンをドライブ。日本人ドライバーが母国で最新世代に近いF1マシンを走らせる機会は極めて珍しく、平日の開催にもかかわらず多くのファンが富士スピードウェイを訪れ、その走りを見守った。

    しかし、今回のTPCを巡る議論は、単純な賛否では語れないものだった。

    日本では「国内トップドライバーがF1マシンに乗る姿を見られた」という喜びが広がる一方で、「TPCは本来、若手育成のための制度ではないのか」という疑問も投げかけられた。そして海外では、坪井翔や福住仁嶺という個人以上に、「トヨタとハースはTPCをどのような育成プログラムとして運用していくのか」という点が大きな論点となった。

    一見すると、日本は歓迎、海外は批判という構図にも見える。

    だが、実際に交わされていた議論を追っていくと、対立していたのは坪井翔と福住仁嶺の評価ではなかった。

    議論の中心にあったのは、「TPCを何のための制度と考えるのか」という認識の違いである。

    日本では、国内トップカテゴリーで実績を積み重ねたドライバーがF1マシンへ乗ること自体に大きな価値が見いだされた。一方、海外ではTPCをF1への育成プロセスの一部と捉える見方が強く、限られた走行機会を誰へ与えるべきかという議論へ発展していった。

    同じ出来事でありながら、評価の出発点は大きく異なっていたのである。

    TPCとは何か 今回の議論を理解するための前提
    今回の反応を理解するうえで、まず整理しておきたいのがTPCという制度の位置付けだ。

    TPC(Testing of Previous Cars)は、FIAが認める旧型F1マシンによるテスト制度である。原則として使用できるのは2年以上前のマシンだが、2026年はレギュレーションが全面的に変更されたことから、前年型となる2025年型マシンの使用が特例として認められた。

    現在のF1では、現行マシンによるプライベートテストは厳しく制限されている。そのためTPCは、若手ドライバーへF1マシンを経験させる場として活用されるだけでなく、リザーブドライバーの走行機会やチームスタッフの育成、オペレーション確認、各種システムの習熟など、多くの目的を担うプログラムとなっている。

    ハースも今回の富士テストについて、ドライバー育成だけではなく、エンジニアやメカニックを含めたチーム全体の育成プログラムであることを強調していた。

    つまりTPCは、単なるデモランでもファンサービスでもない。

    一方で、将来のF1ドライバー候補へ経験を積ませる役割も期待されていることから、「誰を起用するのか」が常に議論の対象となる制度でもある。

    今回の富士テストも、その二面性が色濃く表れたケースだった。

    トヨタとハースは2025年から技術提携を進め、その一環としてTPCを活用してきた。平川亮や宮田莉朋、小林可夢偉、そして坪井翔もこれまでテストへ参加しており、今回初めて福住仁嶺が加わった。

    そのため、今回の起用は単独の出来事ではなく、「トヨタ・ハース提携がどのような育成プログラムを目指しているのか」を示す一つの材料として受け止められたのである。

    ハースF1チーム 富士スピードウェイ

    日本では「F1に乗る姿」そのものが歓迎された
    日本国内で最も目立ったのは、坪井翔と福住仁嶺の起用を歓迎する声だった。

    その多くは、「F1デビューへ近づいた」という期待よりも、「国内トップドライバーがF1マシンを走らせる姿を日本で見られる」という事実そのものを喜ぶものだった。

    平日開催にもかかわらず、「2日とも富士へ行く」「仕事を調整してでも見たい」「日本でF1マシンの本格走行を見られる機会は貴重だ」といった声が相次ぎ、現地からは走行写真や動画、ガレージ周辺の様子が次々と発信された。

    イベントとしての注目度の高さは、TPCという制度の認知度以上に、「F1マシンが富士を走る」という特別感の大きさを物語っていた。

    福住仁嶺の起用には、とりわけ感慨深いという反応が多かった。

    GP3でランキング3位に入り、欧州でF1を目指した経験を持ちながら、その夢は叶わなかった。それでも帰国後はSUPER GTやスーパーフォーミュラで第一線を走り続け、日本を代表するドライバーの一人としてキャリアを築いてきた。

    そうした歩みを知るファンからは、「ようやくF1マシンへ乗る姿を見ることができた」「長年応援してきたので本当にうれしい」「努力が報われた瞬間だった」といった声が多く聞かれた。

    坪井翔についても同様である。

    スーパーフォーミュラ王者、SUPER GT王者という国内最高峰カテゴリーでの実績を考えれば、「国内でこれだけ結果を残したドライバーがF1マシンへ乗るのは当然」「トップカテゴリーを戦ってきた証しだ」と受け止める意見が目立った。

    現地ではガレージ前へ姿を見せた福住に拍手が送られたという報告や、坪井を含めてサインを求めるファンの列ができたという投稿も見られ、会場全体が2人を温かく迎える雰囲気に包まれていたことが伝わってくる。

    ここで印象的なのは、多くのファンが今回のTPCを「F1昇格への選考」ではなく、「国内モータースポーツで積み重ねてきたキャリアが最高峰カテゴリーで評価された瞬間」と受け止めていたことだ。

    もちろん、年齢や現在の立場を考えれば、今回の走行がそのままF1レギュラーシートにつながると考えているファンは多くない。

    それでも、「F1へ乗る価値」と「F1へ昇格する可能性」は別の話だという見方が、日本では広く共有されていた。

    国内最高峰で結果を残したドライバーが、世界最高峰のマシンを操る。その姿を見ること自体に意味がある――。

    そう考えるファンが多かったからこそ、今回のTPCはまず歓迎ムードで受け止められたのである。

    しかし、その一方で、「だからこそ別の選択肢もあったのではないか」という声も確かに存在した。

    その議論は、坪井や福住の実力を疑問視するものではなく、TPCという制度の目的そのものへ向けられていくことになる。

    歓迎一色ではなかった国内 「若手を乗せるべき」という声はなぜ上がったのか
    歓迎ムードが広がる一方で、日本国内ではもう一つの議論も静かに広がっていた。

    それは、「TPCは本来、誰のための制度なのか」という問いである。

    「坪井も福住も素晴らしいドライバーだと思う」

    「2人の実績に異論はない」

    そう前置きしたうえで、「それでもTPCは若手へ経験を積ませる場ではないのか」という意見が少なからず見られた。

    「育成プログラムというなら、将来F1を目指す若いドライバーへ機会を与えた方がいい。」

    「国内トップドライバーへの評価としては理解できるが、育成とは少し意味が違う。」

    「限られた走行日数だからこそ、将来につながる投資に使ってほしい。」

    こうした声は、坪井や福住を否定するものではなく、TPCという制度の運用方法に対する問題提起だった。

    実際、「坪井が日本で最速クラスのドライバーであることは誰もが認めている」「福住にもF1マシンへ乗る資格は十分ある」と評価するコメントと、「それでも若い世代へ機会を与えるべきではないか」という意見は矛盾なく共存していた。

    つまり、日本で起きていた議論は「起用された2人がふさわしくない」という話ではなく、「TPCという限られた機会を、どのような目的で使うべきか」という制度論だったのである。

    その背景には、トヨタとハースの提携に対する期待の大きさもある。

    2025年に両者の技術提携が発表された際、多くのファンは「日本人ドライバーがF1へ近づく新たなルートができるのではないか」と期待を寄せた。

    宮田莉朋がF2へ参戦し、平川亮がリザーブドライバーとして活動するなど、少しずつF1との接点は増えていたものの、「トヨタからF1ドライバーが誕生する」という明確な道筋は、まだ見えているとは言い難い。

    だからこそ、TPCにも「未来への投資」という役割を期待する声が生まれた。

    もし将来的にF1を目指す若手がいるのであれば、その経験を少しでも早く積ませるべきではないか――。

    そうした考え方は決して否定的なものではなく、トヨタ・ハース提携への期待が大きいからこそ生まれた意見でもあった。

    もっとも、その一方で、「TPCを若手だけの制度と考える必要はない」という反論もあった。

    ハース自身が説明しているように、TPCはドライバーだけではなく、エンジニアやメカニックを含めたチーム全体の育成プログラムでもある。

    そうした環境では、経験豊富なドライバーが的確なフィードバックを返すことに大きな意味がある。

    マシンの挙動を正確に伝えられるドライバーであれば、エンジニアにとっても貴重なデータが得られる。レースオペレーションを確認するうえでも、安定して走行できるベテランドライバーを起用するメリットは小さくない。

    そのため、「育成とは若手だけを意味するものではない」「チーム全体を育てるというTPC本来の目的を考えれば、今回の人選は十分理解できる」という意見も少なくなかった。

    つまり、日本国内でも議論は単純な賛成と反対には分かれていない。

    「国内トップドライバーへの評価」という考え方と、「未来のF1ドライバーへの投資」という考え方。その二つの価値観がTPCという制度の中で交差し、「誰を乗せるべきだったのか」という議論につながっていったのである。

    ハースF1チーム トヨタ

    海外では最初から論点が違っていた
    海外でも、坪井翔と福住仁嶺の起用は大きな話題となった。

    しかし、日本とは異なり、議論の出発点は2人への評価ではなかった。

    多くのファンにとって最初の疑問は、「彼らは誰なのか」という点だった。

    スーパーフォーミュラやSUPER GTを日常的に追っている海外ファンは決して多くない。坪井の名前を初めて目にしたという反応も珍しくなく、福住についても「GP3時代は知っているが、その後はどういうキャリアを歩んだのか」という質問が目立った。

    そのため、SNSや掲示板では、日本のファンが2人の実績を紹介し、それを受けて「国内でそこまで成功しているドライバーなら理解できる」というやり取りが数多く見られた。

    ただ、海外ではそこで議論が終わらない。

    2人の経歴を理解した後、多くのファンが関心を向けたのは、「では、なぜ今この2人だったのか」という点だった。

    「TPCは将来のF1ドライバーへ経験を積ませる場ではないのか。」

    「もっと若い育成ドライバーを起用する選択肢はなかったのか。」

    「このプログラムはトヨタのF1育成戦略の一部なのか。」

    こうした疑問が次々と挙がり、議論は自然とトヨタとハースの提携全体へ広がっていった。

    特にRedditなどでは、「actual young drivers(本当に若い育成対象のドライバー)」という表現が繰り返し使われ、TPCを将来のF1候補へ経験を積ませる制度として捉える意見が目立った。

    一方で、「経験豊富なドライバーから得られるフィードバックはチームにとって非常に重要だ」「TPCはオーディションではなく、チーム全体の開発と育成を目的とした制度だ」と擁護する声もあり、海外でも意見は決して一方向ではなかった。

    興味深いのは、ここでも議論の中心が坪井や福住個人ではなく、TPCという制度の使い方に置かれていたことである。

    海外が注目したのは「トヨタはF1への道筋を描けているのか」
    海外で交わされた議論は、やがてTPCという制度そのものから、トヨタの育成戦略全体へと広がっていった。

    繰り返し見られたのが、「このTPCは、トヨタがF1ドライバーを育成するプロジェクトの一部なのか」という問いだった。

    トヨタとハースは2025年から技術提携を開始し、TPCやシミュレーター、エンジニア交流などを含む協力関係を築いてきた。しかし、その先にどのような育成ロードマップがあるのかは、まだ明確には示されていない。

    そのため海外では、「TPCの先に何があるのか」という視点から提携を評価する声が少なくなかった。

    「この経験はFP1につながるのか。」

    「リザーブドライバーへの昇格を見据えたものなのか。」

    「最終的にF1レギュラーシートまで到達できる仕組みが用意されているのか。」

    こうした疑問は、今回の起用だけに向けられたものではなく、トヨタがF1とどう向き合おうとしているのかという、より大きなテーマへと発展していった。

    その過程で、しばしば比較対象となったのがホンダだった。

    ホンダは長年にわたり、若手ドライバーを欧州へ送り出し、F3、F2を経てF1へ挑戦する環境づくりを続けてきた。もちろん、そのすべてが成功したわけではないが、「F1へ向かうルート」が見えやすかったことは事実である。

    一方、トヨタは国内モータースポーツへの関与が非常に深く、スーパーフォーミュラやSUPER GTとの結び付きも強い。そのため、欧州のジュニアカテゴリーを軸とするホンダとは育成の考え方自体が異なっている。

    海外ファンの中には、「トヨタは国内カテゴリーを重視しすぎているのではないか」という見方もあれば、「国内で経験を積んだドライバーへF1マシンを経験させることにも十分な価値がある」と評価する声もあった。

    つまり、ホンダとの比較は優劣を論じるものではなく、「トヨタはどのような方法でF1を目指す人材を育てようとしているのか」という関心の表れだったのである。

    だからこそ、「path to the grid(F1グリッドへの道筋)」という言葉が繰り返し使われた。

    海外ファンが知りたかったのは、坪井翔や福住仁嶺がF1へ行けるかどうかではない。

    TPCという取り組みが、将来の日本人ドライバーをF1へ送り出す仕組みの一部として機能するのかどうかだった。

    「ご褒美」という言葉が映し出した評価軸の違い
    今回のTPCを巡る議論を象徴する出来事の一つが、トヨタタイムズが福住仁嶺の初めてのF1走行を紹介した際に用いた「ついに”ご褒美”の日がやってきた」という表現だった。

    日本では、この言葉に共感する反応が多く見られた。

    F1という夢を追い続けながら叶わず、それでも国内トップカテゴリーで結果を残し続けてきた福住の歩みを知るファンにとって、「ご褒美」は長年の努力が報われたことを表す自然な言葉だった。

    「ここまで頑張ってきたからこそ得られた機会だ。」

    「長く応援してきたファンとして本当にうれしい。」

    「キャリアへの最高の評価ではないか。」

    そうした受け止め方は、国内ファンの間で広く共有されていた。

    一方で、「TPCは育成プログラム」という視点に立つ人たちは、この表現に少し違った印象を抱いていた。

    もしTPCが将来のF1ドライバーを育てる場なのであれば、「ご褒美」ではなく、「挑戦」や「次のステップ」といった意味合いの方が強いのではないか――。

    そんな考え方である。

    もっとも、この言葉自体が強い批判を受けたわけではない。

    むしろ印象的だったのは、「ご褒美」という一言が、それぞれのファンがTPCへ期待している役割を映し出していたことだった。

    TPCを国内トップドライバーへの評価と捉える人にとっては、「ご褒美」はしっくりくる。

    一方で、TPCをF1育成のプロセスと考える人にとっては、「未来への投資」というイメージの方が強い。

    同じ言葉であっても、TPCという制度をどう理解しているかによって、その響きは大きく変わっていた。

    TPCが残したもの
    今回の富士TPCは、イベントとして見れば大きな成功だったと言える。

    平日開催にもかかわらず多くのファンが富士スピードウェイへ集まり、日本人ドライバーがF1マシンを走らせる姿に歓声を送り、その様子は国内外で広く共有された。

    トヨタとハースの提携によって、日本でF1マシンが走る機会が増えたこと自体を歓迎する声も多く、日本のモータースポーツファンに新たな夢を示したことは間違いない。

    一方で、育成プログラムとしての評価は、今回のTPCだけで結論づけられるものではない。

    ここで得た経験がFP1出走やリザーブドライバーとしての活動、さらにはF1への挑戦へどうつながっていくのか。その積み重ねがあって初めて、トヨタ・ハース提携の育成プログラムは評価されることになる。

    今回の議論から見えてきたのは、日本と海外で賛否が真っ二つに分かれていたという単純な話ではなかった。

    日本では「国内トップドライバーへの評価」として歓迎され、海外では「将来のF1育成」という観点から議論された。その評価軸は異なっていたものの、どちらにも共通していたのは、トヨタとハースの提携が日本人ドライバーに新たな可能性をもたらしてほしいという期待だった。

    だからこそ、富士で行われた2日間のTPCが投げかけた問いは、「坪井翔と福住仁嶺を起用したことは正しかったのか」ではない。

    トヨタ・ハース提携は、日本人ドライバーをF1へ送り出す新たな道となり得るのか。

    今回交わされた数多くの議論は、その未来への期待の大きさを物語っていた。

  • セパン F1バーレーンGP開催でもチケット収入ゼロ 「すべてバーレーン側に入る」

    セパン F1バーレーンGP開催でもチケット収入ゼロ 「すべてバーレーン側に入る」

    マレーシアのセパン・インターナショナル・サーキットは、2026年F1世界選手権で『バーレーンGP』として開催される代替レースについて、チケット販売収入は一切得られず、すべてバーレーン側に帰属することを明らかにした。

    イラン情勢の悪化により中止となったバーレーンGPは、10月2~4日に約6,000km離れたマレーシアのセパンで代替開催される。2017年以来となるF1開催となるが、正式名称はあくまで『バーレーンGP』のままで実施される。

    チケット収入はすべてバーレーン側へ
    セパン・インターナショナル・サーキットのアズハン・シャフリマン・ハニフCEOは、火曜日のメディアセッションで、チケット価格の決定権も収益もバーレーン側が握っていると説明した。

    「チケット販売による収益はすべてバーレーンに戻る。そのため、私たちには価格を自由に決める権限はない」

    「マレーシア国民向けにMyKad(マレーシア国民IDカード)価格のような特別料金を設定できるよう交渉したいと思っている」

    「ただし最終的な決定権はバーレーン側にある。開催権料を支払っているのは彼らだからだ」

    今回の開催では、セパンは運営費をバーレーンGP主催者と分担する一方、F1への開催権料はバーレーン側が負担する。

    セパン・サーキット

    約1300万ドルの運営費でも経済効果を重視
    セパン側によると、コース整備やイベント運営を含めた開催コストは約1,300万ドル(約24億円)となる見込みだ。

    チケット収入は得られないものの、ハニフCEOはF1開催による経済波及効果の方がはるかに大きいと強調した。

    「全体像を見れば、経済への波及効果を考える必要がある」

    「F1開催国の事例では、投資額の3倍以上の経済効果が生まれるという報告がある」

    「つまり、マレーシアには10億リンギット(約400億円)を超える経済効果が期待できる」

    さらに、F1人気の高まりによって開催前から大きな反響が寄せられていることも明かした。

    「以前はチケットを売るために非常に苦労していた。しかし今ではF1が世界的な巨大ファンベースを築き、『見逃したくない』という心理を生み出している」

    「開催発表後にはスポンサーやフェスティバル、商業イベントに関する問い合わせが数多く寄せられている」

    「これはうれしい悩みだ」

    F1視察団が開催可能と判断
    ハニフCEOによると、すでにF1の視察団が現地調査を実施し、セパン・サーキットは開催基準を満たしているとの評価を下した。

    一方で、10月の開催に向けてランオフエリアの改修やインフラ整備など、一部の準備作業は現在も進められている。

    2017年以来となるF1復帰を果たすセパンだが、開催権料やチケット収入はすべてバーレーン側が管理する異例の形となる。それでもマレーシア側は、観光やスポンサーシップなどを通じて約400億円規模の経済波及効果を期待しており、今回の代替開催を将来的なF1復活への足掛かりとなる重要な機会と位置づけている。

  • F1商業化の先駆者パディ・マクナリー死去 88歳

    F1商業化の先駆者パディ・マクナリー死去 88歳

    パディ・マクナリーが、長い闘病生活の末、2026年7月22日に88歳で死去した。元『Autosport』記者でありながら、後にF1の商業的発展を支えた中心人物のひとりとして知られている。

    バーニー・エクレストンと緊密に協力したマクナリーは、サーキットごとに個別運営されていた広告や接遇サービスを世界規模の商品へと再構築した。現在のF1で当たり前となっているトラックサイド広告やパドッククラブは、その功績を象徴する存在である。

    FIAがF1の商業的成長への貢献を称賛
    FIA(国際自動車連盟)は、マクナリーが元F1最高責任者のエクレストンと長年にわたって仕事をし、F1の商業的成長において「重要な役割を果たした」と追悼した。

    マクナリーは表舞台に姿を現すことは少なかったが、各グランプリがそれぞれ独立して運営されていた時代のF1を、スポンサーや企業ゲストに対して統一された価値を提供する世界的なスポーツ商品へと変えることに貢献した。

    F1ではドライバーやチーム代表が注目を集める一方で、マクナリーはその周囲にある商業的な仕組みを設計した人物だった。

    レーシングドライバーからAutosport記者へ
    マクナリーとモータースポーツとの関わりは、競技者として始まった。1960年代にスポーツカーレースへ参戦した後、『Autosport』のジャーナリストとして活動し、グランプリ担当記者としてF1を転戦した。

    取材活動を通じて築いたパドック内の人脈と知識は、その後のビジネスキャリアの基礎となった。当時のF1は現在よりも関係者同士の距離が近く、マクナリーの記事は、その親密でありながら危険と隣り合わせだった時代を記録している。

    1968年モナコGPではリチャード・アトウッドがグラハム・ヒルを追う展開を伝え、1971年モナコGPではロニー・ピーターソンを際立ったパフォーマーとして評価した。また、クレイ・レガツォーニをはじめとするドライバーたちの妥協を許さない振る舞いについても率直に記した。

    マールボロのスポンサー活動とジェームス・ハント
    第一線のジャーナリズムから離れたマクナリーは、マールボロのスポンサーシップ・コンサルタントへと転身した。

    親交の深かったジェームス・ハントのマネジメントにも関わり、同時にエクレストンが進めていたF1の商業的再編にも深く携わるようになった。

    当時のF1では、各サーキットが広告スペースを個別に販売していた。マクナリーは、この断片的な仕組みを統合し、シーズンを通じた世界規模の広告パッケージとして販売する構想を推進した。

    トラックサイド広告を世界規模の商品に転換
    マクナリーの最も大きな功績は、ジュネーブを拠点とするオールスポーツ・マネジメントを通じた事業だった。

    同社は、各グランプリのトラックサイド広告をまとめて管理し、F1世界選手権全体を対象としたスポンサー商品として企業に提供した。

    広告看板は、拡大を続けるテレビ中継で最大限に映り込むよう配置やデザインが調整された。これにより、サーキットごとの地域的な広告取引は、世界中の視聴者にブランドを訴求する一貫した国際商品へと変わった。

    現在のF1中継で見られる、コース脇やランオフエリア、ピット周辺に統一されたスポンサー広告が並ぶ形式は、マクナリーが確立したビジネスモデルを源流としている。

    パディ・マクナリーとバーニー・エクレストン

    1984年にF1パドッククラブを創設
    マクナリーは1984年、F1パドッククラブを創設した。

    開始当初は野心的な販売目標を達成できず、事業として苦戦した。それでもマクナリーは、グランプリが世界的な一流スポーツイベントに匹敵する企業向けホスピタリティを提供すべきだという考えを貫いた。

    パドッククラブはその後、上質な観戦環境や食事、管理されたパドックへのアクセスを組み合わせたF1の主要商品へと成長した。

    スポンサー企業は顧客や取引先を招待できるようになり、F1は単なるモータースポーツイベントにとどまらず、国際ビジネスやエンターテインメント業界の関係者が集まる交流の場としての地位も確立した。

    現在ではパドッククラブは、F1の商業モデルに欠かせない高価格帯のホスピタリティサービスとなっている。

    オールスポーツを約250億円超で売却
    マクナリーは2006年、オールスポーツを当時のF1オーナーだったCVCキャピタル・パートナーズへ売却した。

    売却額は2億5000万ポンド(約500億円)を超える規模だったと報じられている。マクナリーは売却後も事業の責任者を務め、2011年に引退した。

    巨額の資産とF1界における強い影響力を持ちながら、マクナリーは意図的に控えめな公的立場を維持した。

    パドック内では、寛大で頭の回転が速く、ユーモアに富んだ人物として記憶されている。

    現在のF1に残るパディ・マクナリーの功績
    マクナリーには息子のロロがいる。もうひとりの息子ショーンは、2026年初めに死去していた。

    F1の目に見えるドラマを生み出すのはドライバーやチームだが、その競技を世界的なビジネスとして成立させる環境を整えた人物のひとりがマクナリーだった。

    世界中のサーキットに掲げられる広告看板や、企業ゲストを迎える特別なホスピタリティ施設は、現在ではグランプリに欠かせない存在となっている。F1をスポーツと国際ビジネスが交差する巨大な商業プラットフォームへと変えた仕組みは、パディ・マクナリーが残した永続的な遺産である。