タグ: メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ

  • フレデリック・ベスティ メルセデスF1リザーブの苦悩「本当に残酷」

    フレデリック・ベスティ メルセデスF1リザーブの苦悩「本当に残酷」

    メルセデスF1のリザーブドライバーを務めるフレデリック・ベスティが、自身の置かれている状況の厳しさを率直に語った。24歳のデンマーク人ドライバーは、幼いころから追い続けてきたF1のレギュラーシート、そして将来的なF1ワールドチャンピオンという夢を今も諦めていない。

    しかし現在のベスティの仕事は、メルセデスでタイトル獲得を目指すキミ・アントネッリとジョージ・ラッセルを支えることだ。

    F1の現場にいながら、自らグランプリでマシンを走らせることはできない。その状況が、次第に大きな精神的負担になっているという。

    「本当に、本当に、本当に残酷だ」
    リザーブドライバーという役割は、ベスティにとってますますつらいものになりつつある。それでもメルセデスでの仕事には全力で取り組み、F1マシンをドライブするわずかなチャンスを得るために努力を続けている。

    母国デンマークの『Ekstra Bladet』のインタビューで、ベスティは現在のフラストレーションを隠そうとはしなかった。

    「本当に、本当に、本当に残酷だ」

    さらに難しいのは、自分自身がいつかその座を手に入れたいと願っている一方で、現在はメルセデスの2人のレギュラードライバーを支えることに仕事の大部分を費やさなければならない点だ。

    「僕の持っているポジティブなエネルギーはすべて、キミかジョージがワールドチャンピオンになるのを助けるために使っている。もちろん、それは難しい。僕自身、8歳のころからワールドチャンピオンになることを夢見てきたからね」

    それでも、ベスティは現状を受け入れて諦めたわけではない。現在はレギュラードライバーの陰にいる立場だが、チャンスが訪れたときに備え、最大限の準備を続けている。

    そのなかでも、メルセデスのシミュレーターでの作業は重要な役割を占めている。

    「僕はこのツールで懸命に仕事をしているし、誰よりもよく理解している」

    フレデリック・ヴェスティ(メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ)

    2週間ごとにショブリンへ「いつ乗れる?」
    ベスティは、実際のF1マシンを次にいつドライブできるのかを確認するため、チームにも継続的に働きかけている。

    「2週間に一度、『ショブ』(トラックサイド・エンジニアリングディレクターのアンドリュー・ショブリン)に、いつまたマシンを運転できるのか聞いている。必要なチャンスを作り出すために、できる限りプッシュしているんだ」

    だが、何よりつらいのは、グランプリの現場まで足を運びながら、自分自身はレースに参加できないことかもしれない。

    ベスティは笑みを浮かべながらも、F1が常に目の前にあることが、逆に待ち続ける苦しさを増幅させていると明かした。

    「僕はF1にいるのが嫌いなんだ。笑ってしまうかもしれないけど、それが一番強く感じていることだ」

    「F1はそこにある。でも、手が届かない。あるいは、ほとんど手が届かない。その『ほとんど』という部分が、僕に希望を持たせ続け、信じさせ続けている」

    「その間、22台のマシンがぐるぐる走っているのをただ立って見ていて、自分自身は運転することを許されていない。それ以上に残酷なことなんて、僕には想像できない」

    2028年のF1レギュラーシートを目指すベスティ
    ベスティは2027年もメルセデスのリザーブドライバーを務める見通しだ。それでも2028年に向けてチャンスが生まれることを期待し、F1のレギュラーシート獲得を目指し続けている。

    その目標は、子どものころからまったく変わっていない。

    「僕は人生ずっと、F1のワールドチャンピオンになることを夢見てきた。プロのレーシングドライバーになることを夢見ていたわけじゃない」

    「夢はF1なんだ」

    F1のすぐそばまでたどり着きながら、その最後の一歩を踏み出せないベスティ。メルセデスを支える重要な役割を果たしながらも、本人が求めているのはリザーブという立場ではなく、自らグリッドに並び、F1で勝利とタイトルを争う機会である。

  • メルセデスF1 2027年開発に軸足 ヴォルフ「愚かにライバルへポイントを与えるな」

    メルセデスF1 2027年開発に軸足 ヴォルフ「愚かにライバルへポイントを与えるな」

    メルセデスF1は現在、コンストラクターズ選手権で2番手に145ポイント差をつける大きなリードを築いている。ドイツのチームはすでに次のシーズンに向けた準備を本格化させているが、チーム代表のトト・ヴォルフは2026年のタイトルが決まったとは考えていない。

    新レギュレーション時代の序盤を圧倒してきたメルセデスF1は、すでにリソースの一部を2027年型マシンの開発へと移行している。

    一方でW17には今季最後となるアップデートも予定されており、ヴォルフはジョージ・ラッセルとキミ・アントネッリに対し、不必要な接触でライバルにポイントを与えないよう釘を刺した。

    メルセデスF1はすでに2027年型マシンの開発を本格化
    グラウンドエフェクト時代に苦しい時期を経験したメルセデスF1だが、2026年は一転してシーズンを支配している。コンストラクターズ選手権ではフェラーリに大差をつけ、ドライバーズ選手権でもキミ・アントネッリが首位に立っている。

    メルセデスは今季ここまで行われた14戦のうち10戦で勝利を挙げている。ライバルも追撃を続けており、特にマクラーレンとフェラーリはメルセデスとの差を縮めるため、2026年型マシンに相次いでアップデートを投入してきた。

    メルセデスは5月のF1カナダGPで大規模なアップデートを導入したほか、来月マレーシアのセパンで行われるF1バーレーンGPでも新たなパッケージを投入する予定だ。

    その間にもサーキット特性に合わせた細かな変更は行ってきたが、開発ペースそのものはフェラーリやマクラーレンほど積極的ではなかった。

    そして、この傾向はシーズン終了まで続くことになりそうだ。トト・ヴォルフは、すでにチームのリソースの一部を2027年プロジェクトへ移していることを明らかにした。

    「2027年の開発はかなり前、夏よりも前から始まっている」

    「夏の間に来年へ向けてリソースを移した。そして、それは選手権での我々のポジションとは関係なく、計画通りに進んでいる」

    W17には今季最後の「強力なアップデート」
    それでも、メルセデスF1が2026年の戦いを緩めるわけではない。チームはマレーシアで「強力」と表現するアップデートを投入する予定だ。

    ただしヴォルフは、新しいパーツを投入したからといって、必ずしもサーキット上で期待通りのパフォーマンス向上につながるとは限らないと認める。ファクトリーで得られたデータと、実際のコース上での挙動との相関が問題になることもあるからだ。

    「マレーシアでは強力なアップデートを投入できると思っている。その前にまずバクーを乗り越えなければならないし、その後どうなるかを見ていく。ただ、新しいものがサーキットで期待したほど機能しないこともある」

    「だから、うまく機能してくれることを願っている。それによってアップデートという面でも他のチームと同じレベルに到達できればと思う。ただ、それは実際に走らせるまで分からない」

    メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ

    145ポイント差でもヴォルフはタイトル確定と考えず
    コンストラクターズ選手権で145ポイントのリードを持つメルセデスだが、ヴォルフはタイトル獲得を当然のものとは考えていない。

    フェラーリは依然として大きな差を埋める必要がある一方、マクラーレンもランド・ノリスが2勝を挙げて勢いを取り戻している。F1スペインGPでも、VSCのタイミングが不利に働かなければ、ノリスが3勝目を手にしていた可能性があった。

    「リタイアすることもあるし、クラッシュすることもある。それが2戦続けて起きれば、それまで十分に見えていたリードが突然そうではなくなる。まだ8戦か9戦が残っているからだ」

    「私としては、他のチームが選手権を獲得することが数学的に現実的ではなくなる、あるいは不可能になるまでは、ポイントのことを考えるべきではないと思っている。それまでは毎週の仕事に集中し、可能な限り最高の仕事をするだけだ」

    フェラーリ同士の接触寸前を受けドライバーに警告
    ヴォルフはF1イタリアGPのスタートで起きたフェラーリ勢の一件についても言及した。

    シャルル・ルクレールはレース後、1周目のターン2でチームメイトのルイス・ハミルトンをコース外へ押し出すべきではなかったと認めている。

    ヴォルフは、チームメイト同士でこのような状況を作ることに明確な否定的見解を示した。

    「シャルル自身が認めた。だから今なら私も意見を言えるが、2コーナーでチームメイトをコース外へ押し出すことは受け入れられない」

    しかし、メルセデス自身も同じレースの終盤に似たような事態に陥る寸前だった。

    タイヤが大きく摩耗したジョージ・ラッセルにキミ・アントネッリが追いつき、2人がコース上で争う状況になった。

    アントネッリはターン2の外側に落ちたタイヤかすに片輪を乗せ、そのままワイドになった。結果的に、ルクレールに押し出されたハミルトンが通ったのと同じグラベルエリアを横切ることになった。

    「残り3周か4周のところで、2人のドライバーの間にはかなり怖い瞬間があった。我々もあのような展開になるとは予想していなかった。ジョージのタイヤが完全に終わっていて、キミの方が1秒速かったからだ」

    「彼らがあのように争うことを想定していたか? あれは1台がグラベルに入って終わっていてもおかしくなかった。そうなれば、最終的にフェラーリがそう見えたように、我々もあっという間に愚か者に見えていただろう。その境界線は非常に薄い」

    「愚かにポイントを与えてはいけない」
    アントネッリとラッセルには、W17のマシンとパワーユニットにもう一段階のアップデートが用意されている。しかし、それが2026年シーズン最後の本格的な開発になる。

    「キミとジョージには、マシンとエンジンでもう一度アップデートがある。ただ、先ほど言ったようにリソースは今や2027年に向けられているので、それが最後になる」

    「それでもマクラーレンがどれだけ強いかは見てきたし、フェラーリもすべてを最適化できればそこにいる。我々としては、愚かな形でライバルにポイントを与えないことだ」

    メルセデスF1は大きなリードを築きながら、すでに2027年型マシンへ開発の重点を移し始めている。それでも2026年の戦いは終わっておらず、最後のアップデートを控えるW17で確実にポイントを積み重ねることが求められる。特にラッセルとアントネッリにとっては、チーム内バトルで不必要なリスクを冒さないことも、タイトル獲得へ向けた重要な課題となる。

  • メルセデスF1代表 ラッセルのタイヤ戦略を説明「変更のチャンスはなかった」

    メルセデスF1代表 ラッセルのタイヤ戦略を説明「変更のチャンスはなかった」

    メルセデスF1代表のトト・ヴォルフは、2026年F1第13戦イタリアGPでジョージ・ラッセルが勝利を逃す結果となったタイヤ戦略について説明した。

    ラッセルは終盤まで優勝争いを展開したものの、フレッシュなミディアムタイヤを履いたチームメイトのアンドレア・キミ・アントネッリに逆転を許して2位。ヴォルフは、結果的に2ストップ戦略が有利だったと認めながらも、ラッセルには戦略を変更する「チャンスがなかった」と語った。

    アントネッリは19番手から逆転優勝
    エンジン関連のペナルティによって19番グリッドからスタートしたアントネッリは、序盤のリスタートでリスクを避けながら着実に順位を上げた。

    レースが進むにつれてラッセルとの争いに加わり、メルセデスの2台は何度もポジションを入れ替える展開となった。

    そして終盤、ランス・ストロールがコース上でマシンを止めたことでバーチャル・セーフティカー(VSC)が導入されると、アントネッリはピットインして新品のミディアムタイヤに交換した。

    一方、ラッセルはレース再開前に装着したハードタイヤで走り続けることになった。タイヤの性能差を生かしたアントネッリは終盤にラッセルをオーバーテイクし、今季7勝目を挙げた。

    ラッセルは2位でフィニッシュし、ドライバーズランキングでは首位アントネッリとの差が66ポイントに広がった。

    ヴォルフ「2ストップが最善だとは考えていなかった」
    ヴォルフは、アントネッリの走りを高く評価するとともに、メルセデスが当初は2ストップ戦略の方が速いとは予想していなかったことを明かした。

    「彼は集中を切らさず、序盤のリスタートではリスクを冒さず、そこから1台ずつ抜いていった。素晴らしいドライブだった」

    「結果的には2ストップが最善だった。でも、我々はそうなるとは考えていなかった」

    「だから、それが彼にとってうまく機能した。だが、今日の彼を止められるものは何もなかった。本当にうれしく思っている」

    メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ

    ラッセルは「使い古した武器」で終盤を戦った
    ヴォルフは、2ストップが有利だと判明した段階では、ラッセルの戦略を切り替える余地がなかったと説明した。

    「もちろん、ジョージは最後には使い古した武器で戦っていた」

    「だから、ワンツーという結果には本当に満足している。彼はハードを履いていた。我々は1ストップで行く必要があり、変更するチャンスはなかった」

    結果としてメルセデスはアントネッリとラッセルによるワンツーフィニッシュを達成したが、同じ戦略を採っていれば勝者が入れ替わっていた可能性も残った。

    アントネッリは19番手からの逆転で母国イタリアGP初優勝を飾り、タイトル争いでもリードを拡大。対するラッセルにとっては、終盤のVSCとタイヤ戦略が勝敗を分ける形となった。

  • メルセデスF1代表 フェルスタッペンに不満「ラッセルはマックスにしてやられた」

    メルセデスF1代表 フェルスタッペンに不満「ラッセルはマックスにしてやられた」

    メルセデスF1代表のトト・ヴォルフは、2026年F1イタリアGP予選でジョージ・ラッセルがポールポジションを逃した一因として、Q3最後のアタック直前にマックス・フェルスタッペンとの間で起きた駆け引きを挙げた。

    ラッセルは1分21秒846を記録して2番手。最後に驚異的なラップをまとめたアルピーヌのピエール・ガスリーにわずか0.060秒差で逆転され、ポールポジションを逃した。

    ヴォルフは、ラッセルの最終アタックがフェルスタッペンの動きによって妥協を強いられたと考えている。

    ヴォルフ「最終的にそれがポールを失わせた」
    予選前にはポールポジションの有力候補とみられていたラッセルだが、Q3最後のアタックでは自己ベストを更新できなかった。

    何か問題があったのかとSky Sports F1に問われたヴォルフは、フェルスタッペンとの位置取りが影響したと説明した。

    「そうだ。最後のランでラップを始めようとしたとき、ジョージはマックスにやられてしまったと思う」

    「単純に距離が近すぎた。それによって最終的にラップタイムが損なわれ、それがポールポジションを失わせた」

    ラッセル自身も、最終アタックを開始する際にフェルスタッペンとの間隔が近くなりすぎたと振り返っている。

    「すべて順調に見えていた。でもパラボリカに入るところで、マックスが急に強くブレーキを踏んだ。先頭で走りたくなかったんだ」

    「結果論だけど、こういうことをしようとしない方がよかったかもしれない。でも2番手はいいスタート位置だ」

    モンツァではスリップストリームの効果が大きいため、予選では各ドライバーが前を走ることを避けようとする駆け引きが発生する。ラッセルとフェルスタッペンも最終アタックを前に位置関係を探る形となり、その結果としてラッセルは十分な間隔を確保できないままアタックに入ることになった。

    メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ

    ガスリーのストレートスピードを警戒
    それでもラッセルは決勝をフロントロウの2番手からスタートする。さらに、タイトル争いの直接のライバルでありメルセデスのチームメイトでもあるアンドレア・キミ・アントネッリは、パワーユニット交換によるペナルティで後方からのスタートとなる。

    ラッセルにとっては59ポイントの差を縮める大きなチャンスとなるが、ヴォルフはポールポジションを獲得したガスリーを含め、周囲のライバルを軽視できないと語った。

    「誰のことも真剣に考えなければならない」

    「彼らはストレートで非常に速い。かなりドラッグを減らしてきていて、1周のラップでは、それが必要なものだったことが証明された」

    「レースはまったく別物だ。どうなるか見てみよう」

    ガスリーにとってモンツァは、2020年にF1初優勝を飾った思い出深い舞台でもある。今回はアルピーヌで自身初のポールポジションを獲得し、再び番狂わせを起こす可能性を残している。

    アントネッリの表彰台浮上には慎重
    一方、後方からスタートするアントネッリが決勝で表彰台まで挽回できる可能性について、ヴォルフは現実的には厳しいとの見方を示した。

    「それを求めるのは少し酷だと思う」

    「ある程度の後方集団を抜けていくと、そこから非常に難しくなるのが分かる。パフォーマンスの差がとても小さいからだ」

    「まったく違う戦略を採って、多少ギャンブルを仕掛けるのでなければ、表彰台まで行くのは難しいと思う」

    メルセデスにとって、ラッセルの2番手は決勝に向けて十分に勝利を狙える位置だ。一方でヴォルフには、わずか0.060秒差だっただけに、フェルスタッペンとの最終アタック前の駆け引きがなければポールポジションを獲得できたという悔しさが残った。

  • メルセデスF1 ダブル表彰台もW17に不可解な挙動「原因を調査する必要がある」

    メルセデスF1 ダブル表彰台もW17に不可解な挙動「原因を調査する必要がある」

    メルセデスは2026年F1オランダGPでキミ・アントネッリが2位、ジョージ・ラッセルが3位に入り、ダブル表彰台を獲得した。しかし、華々しい結果とは裏腹に、W17にはチーム側でも原因を完全には説明できないパフォーマンス低下が発生していた。

    優勝したランド・ノリスには11秒以上の差をつけられ、さらに後方からはフェラーリのルイス・ハミルトンとシャルル・ルクレールが接近。

    メルセデスのトラックサイド・エンジニアリングディレクターを務めるアンドリュー・ショブリンは、特にザントフォールトの高速コーナー区間で現れた弱点について詳細な調査が必要だと明かした。

    ターン7〜9で顕著だったW17の弱点
    メルセデスが最も問題視しているのが、ザントフォールトのターン7、8、9と続く高速セクションだ。この区間ではW17とマクラーレンのMCL40との差が特に大きくなっていた。

    「調査しなければならないパフォーマンス上の疑問がいくつかある」とショブリンはNu Silver Arrows Podcastで語った。

    「特にターン7、8、9で弱かった。この高速セクションでは左側のタイヤにも継続的に大きな負荷がかかるが、なぜそこで苦戦したのか、まだ完全には理解できていない」

    メルセデスには原因についていくつかの仮説があるものの、今季の他のサーキットでは同様の現象が確認されていないという。

    「いくつか考えていることはあるが、今シーズンの他の場所では遭遇していない問題だ。単純に速度だけが原因ではなく、右コーナーが連続するレイアウトそのものが関係している可能性もある」

    「最も高速なコーナーで少しペースが不足していて、その後のコーナーに進むにつれて問題が大きくなっていった。それ以外のラップについてはしっかりしていた」

    つまりW17が高速コーナー全般で単純に遅かったわけではない。高速右コーナーが連続し、左側タイヤに負荷が蓄積していくザントフォールト特有の条件で弱点が表面化した可能性がある。

    予選で改善すると別の場所に悪影響
    メルセデスは予選に向けて問題の改善を試み、アントネッリのマシンでは一定の成果を得た。しかし、それも完全な解決策にはならなかった。

    「決勝グリッドを決める予選では、キミについてその部分を少し改善することができた。ただ、そこで得たものによって、別の場所では何かを失ったように見えた」

    これはセットアップ変更によって単純に解消できる問題ではなかったことを示している。特定区間にW17を合わせれば、ラップの別の部分で性能を犠牲にするというトレードオフが生じていた。

    スティントごとに変化したマシンバランス
    さらにメルセデスを悩ませたのが、72周の決勝を通じてW17の挙動が一定ではなかったことだ。

    「スティントごとのペースにも変動があった。ジョージは最初のスティントがその後と比較して比較的弱かった一方、キミは序盤が強く、その後にペースが落ちていった」

    通常であれば、セットアップや電子制御などを大きく変更すればマシンバランスが変化することは説明できる。しかし、今回はそうではなかった。

    「電子制御の設定やフラップ角を大きく変更していたわけではない。それにもかかわらず、スティントごとにバランスが違って感じられた」

    タイヤのコンディションや燃料搭載量などはレース中に変化するが、ショブリンが問題として挙げているのは、それだけでは説明しきれないほどW17のバランスが変化していた点だ。

    メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ

    ラッセルはアンダーステア アントネッリはオーバーステア
    さらに興味深いのは、同じW17を走らせた2人のドライバーが、レース終盤には正反対ともいえるバランスを抱えていたことだ。

    「2人のドライバーは最終的に対照的なバランス特性になっていた。ジョージはよりアンダーステアが強く、キミはよりオーバーステアが強かった」

    「なぜこれほど大きな違いが生じたのかを理解する必要がある」

    同じサーキット、同じレースでありながら、ラッセルとアントネッリで異なる症状が発生した。この点も、メルセデスが単純なセットアップ上の問題として片付けられない理由になっている。

    ダブル表彰台でも「頭を悩ませる必要がある」
    結果だけを見れば、オランダGPはメルセデスにとって成功した週末だった。アントネッリが2位、ラッセルが3位に入り、大量得点を持ち帰った。

    一方で、ノリスのマクラーレンには明確な差をつけられ、ハミルトンはラッセルからわずか0.8秒差、ルクレールもさらに0.5秒後方まで迫った。少なくともザントフォールトの決勝では、マクラーレンだけでなくフェラーリに対しても余裕のある状況ではなかった。

    ショブリンは、それでも本来の力を発揮できない週末にダブル表彰台を確保したことを前向きに評価している。

    「それでも、ベストの状態ではないときに多くのポイントを獲得できたことは励みになる。日曜日のレースは楽しめたし、ピットウォールは素早く判断しなければならなかった。そしてチームはその状況にしっかり対応した」

    「良い結果だった。ただ、少し頭を悩ませる必要がある」

    モンツァで行われる次戦イタリアGPは、ザントフォールトとは性格が大きく異なる超高速・低ダウンフォースのサーキットとなる。そのため今回の弱点がそのまま再現されるとは限らない。

    それでも、高速右コーナーの連続でなぜ性能を失ったのか、なぜスティントごとにバランスが変化したのか、そしてなぜラッセルとアントネッリでアンダーステアとオーバーステアという異なる症状が現れたのか。ダブル表彰台の裏で残された複数の疑問を解明することが、メルセデスにとって今後のW17の競争力を左右する重要な課題となる。

  • メルセデスF1 アントネッリの母国イタリアGPでPU交換 10グリッド降格へ

    メルセデスF1 アントネッリの母国イタリアGPでPU交換 10グリッド降格へ

    メルセデスF1は、2026年F1第13戦イタリアGPでアンドレア・キミ・アントネッリのパワーユニット(PU)を全面的に交換することを決定した。

    年間使用上限を超えるコンポーネントが投入されるため、アントネッリには10グリッド降格ペナルティが科される見通しだ。

    ドライバーズ選手権首位を走るアントネッリにとって、モンツァは母国レース。メルセデスはシーズン序盤に発生した信頼性問題の影響で複数のPUコンポーネントが使用上限に達しており、シーズン終了までにペナルティを受けることは避けられない状況だった。

    メルセデスがモンツァで「フル交換」を決断
    F1ではシーズン中に使用できるPUコンポーネントの数が制限されており、規定数を超えた場合にはグリッド降格ペナルティが科される。

    アントネッリはすでにV6エンジンとエキゾーストシステムが使用上限に達している。メルセデスは複数のグランプリにペナルティを分散させるのではなく、モンツァで主要なPUコンポーネントをまとめて新品に交換することを選択した。

    チーム代表のトト・ヴォルフは、どのサーキットでペナルティによる競争上の損失を最小限に抑えられるかという計算に基づいた判断だと説明した。

    「キミについては、すべてを投入する。つまりPUの主要コンポーネントをすべて交換する」

    「理論上、我々の計算ではここがペナルティを受けるのに最適なサーキットだ」

    「もちろん、アルゴリズムは国籍までは考慮してくれない。しかし、我々は選手権を戦うためにここにいるのであって、最大限のPR効果を得るためにいるわけではない」

    「だから、そうすることにした」

    アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ)

    母国GPで選手権首位のアントネッリに試練
    アントネッリにとってタイミングは皮肉なものとなった。モンツァは母国イタリアでのグランプリであり、20歳になったばかりのアントネッリは現在、ドライバーズ選手権をリードしている。

    アントネッリはチームメイトのジョージ・ラッセルとフェラーリのルイス・ハミルトンに59ポイント差をつけて首位。ラッセルとハミルトンは同ポイントでランキング2位につけている。アントネッリは今季の日本GP以降、ランキング首位を維持している。

    さらに、イタリア人F1ドライバーとして歴史的な記録にも挑むことになる。イタリア人がイタリアGPを制したのは、1966年にフェラーリのルドヴィコ・スカルフィオッティが優勝したのが最後であり、以来60年間、母国ドライバーによるモンツァ制覇は実現していない。

    グリッド降格はアントネッリにとって大きなハンデとなるが、モンツァは高速レイアウトでオーバーテイクの機会も比較的多い。それがメルセデスがPU交換の舞台としてモンツァを選んだ理由のひとつでもある。

    アントネッリ「それでもモンツァがベスト」
    前戦オランダGPでランド・ノリスに次ぐ2位に入ったアントネッリも、母国GPであることを踏まえても、モンツァでペナルティを消化するのが最善だと受け入れている。

    「もちろんモンツァではエンジンペナルティがある。でも、それでもここがペナルティを受けるには一番いいサーキットだと思う」

    「もちろん僕のホームレースだし、いろいろな意味で特別だけど、それでもここでやるのがベストだと思っている」

    「だから、それでもいい結果を出して、しっかりポイントを持ち帰るチャンスはあると思う」

    ラッセルも今季中にPUペナルティの可能性
    メルセデスは、ラッセルについてもシーズン終了までにPUの年間使用上限を超える可能性があるとみている。ただし、追加コンポーネントをどのグランプリで投入するかはまだ決定していない。

    ラッセルは夏休み前のハンガリーGPでようやく4基目のPUを投入したため、アントネッリよりもペナルティを受けるタイミングについて選択肢が残されている。

    「ジョージについては、どこでペナルティを受けるかについて現在も話し合っている」とヴォルフは語った。

    ドライバーズ選手権とコンストラクターズ選手権の両方を争っている状況を考えれば、メルセデスが同じグランプリで自主的に2台ともグリッド降格を受ける可能性は低い。

    アントネッリにとっては母国ファンの前で後方から追い上げる難しいイタリアGPとなる。それでも、高速区間が中心で追い抜きの可能性があるモンツァを選ぶことで、メルセデスは避けられないPUペナルティによる選手権へのダメージを最小限に抑える狙いだ。

  • トト・ヴォルフ メルセデスF1のチームオーダーを説明「厳しい決断も必要」

    トト・ヴォルフ メルセデスF1のチームオーダーを説明「厳しい決断も必要」

    メルセデスF1代表のトト・ヴォルフが、2026年F1オランダGP終盤にジョージ・ラッセルとアンドレア・キミ・アントネッリの順位を入れ替えたチームオーダーについて説明した。フェラーリ勢が背後に迫るなか、チームとして最大限のポイントを確保するための「論理的な判断」だったと強調している。

    アントネッリはランド・ノリスに次ぐ2番手を走行していたが、終盤のバーチャル・セーフティカー(VSC)でソフトタイヤに交換。ステイアウトしたノリスとラッセルの後ろ、3番手でコースへ戻った。

    新品タイヤのアントネッリを前へ「最も安全な方法だった」
    ハードタイヤで走り続けるラッセルに対し、新しいソフトタイヤを履いたアントネッリは明らかに速く、すぐにチームメイトの背後まで接近した。

    残り8周となった65周目、メルセデスはラッセルにアントネッリを先行させるよう指示。ラッセルは無線で不満を示し、「ダブル表彰台を失うかもしれない」と懸念したものの、最終的には指示に従った。

    その背後にはルイス・ハミルトンとシャルル・ルクレールのフェラーリ勢が急接近しており、順位交換によってラッセルが攻撃にさらされるリスクもあった。

    ヴォルフは『Sky Sports F1』に対し、チームオーダーの狙いについて次のように説明した。

    「ノリスを捕まえられる状況だったとは思わない。ポイントを獲得するという意味で、あれが最も安全な方法だった」

    「オーバーテイクモードを使わせたままにすることもできたかもしれない。でも、そうすればリスクを取りすぎることになる。後ろには2台のフェラーリが迫っていた」

    「だから厳しい決断ではあったが、コンストラクターズ選手権とドライバーズ選手権を戦いたいのであれば、そういう決断も必要になる」

    「誰が選手権で前にいるかは関係ない」
    今回の順位交換によってアントネッリはラッセルより3ポイント多く獲得し、両者のドライバーズランキングでの差は59ポイントに拡大した。

    しかしヴォルフは、選手権でどちらが上位にいるかは判断に影響していないと強調する。

    「これが我々のやり方だ。2人のドライバーもそれを理解している。他のチームで見られるような、こういうことが明確に話し合われていない状況を我々は避けている」

    「これは厳しい世界だ。2500人がチャンピオンシップのために働いている。ひとりだけのゲームではない。過去15年間、我々はそうやってきた」

    外から見れば難しい決断だったのではないかと問われると、ヴォルフは否定した。

    「外から見れば難しく映るかもしれないが、内部ではそうではない」

    「これは何度も話し合ってきた状況だし、今日の朝にも話した。『お互いに争ってタイムを失い、2台のフェラーリに背後まで迫られるようなことはしない』とね」

    「逆の状況だったとしても、まったく同じことをしていた。誰が選手権で前にいるかは関係ない。可能な限り良い順位を守ることだけが目的だ」

    『F1 TV』でもヴォルフは、アントネッリがVSC前までラッセルより前を走っていたことを判断材料として挙げた。

    「これは常に我々が採用している方針だ。何度も話し合っているし、朝にも確認していた。チームメイト同士でタイムを失って、フェラーリ勢に首筋まで迫られるようなことはしない」

    「順位を入れ替える前、キミはもともと前にいた。彼はピットに入る必要もなかった。その結果としてジョージがあの位置にいて、当然ながらフェラーリの脅威もあった。だから順位交換は論理的な結果だった」

    メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ

    ラッセルも最終的に納得「キミは前でフィニッシュするに値した」
    ラッセルはその後、ハミルトンとルクレールからのプレッシャーをしのぎ切って3位を確保。アントネッリも2位を守り、メルセデスはダブル表彰台を達成した。

    レース後、ラッセル自身もチームの判断は正しかったと認めている。

    「キミはもともと僕の前にいたから、僕より前でフィニッシュするに値した」

    「レースをしていれば、すべてのポジションを争いたいと思うものだ。でも、あのペースと新品タイヤなら、いずれにしても彼は僕を抜いていただろう。だから正しい判断だった」

    「表彰台に立てたことがうれしい。僕にとっては少し久しぶりだった。週末全体として強かったので、ポジティブな部分を受け取りたい」

    アントネッリも「ジョージは素晴らしいチームプレーヤーだった。彼も3位を守ることができて本当にうれしい」とラッセルの対応を称えた。

    メルセデスはフェラーリを上回るポイントを獲得
    一方でヴォルフは、メルセデスにはオランダGPを勝てるだけのペースがあると考えていたものの、ハードタイヤに交換してから期待したパフォーマンスを発揮できなかったことを課題として挙げた。

    「良い週末だったが、厳しい時間帯もあった。今日はレースに勝てるペースがあると思っていた。でも、ハードタイヤに履き替えたところで、それが消えてしまった」

    「なぜなのかはまだ理解できていない。ただ、ほろ苦い面から見ても2位と3位でフィニッシュできた。ポイントではフェラーリを上回ったので、それは悪くない」

    ノリスが勝利した一方、メルセデスはアントネッリとラッセルによる2台揃っての表彰台を確保した。ヴォルフは今後について、アップデート投入までの期間を確実なレース運びで乗り切る必要があると語った。

    「これは開発競争だ。そして現時点では、我々は少し停滞している。アップデートが入るまではもう少し時間があるので、とにかくパフォーマンスを発揮し、週末をしっかり実行していかなければならない」

    タイトル争いを続けるメルセデスにとって、ドライバー同士を自由に争わせることよりもチーム全体の結果を優先する方針は明確だ。オランダGPでの順位交換は、その原則を改めて示すチームオーダーとなった。

  • メルセデスF1 同じPUでもカスタマーと性能差「ツールセットが違う」

    メルセデスF1 同じPUでもカスタマーと性能差「ツールセットが違う」

    メルセデスF1は、2026年に導入された新世代パワーユニット(PU)を巡り、ワークスチームとカスタマーチームの間で性能を引き出す能力に差が生じている理由を説明した。

    メルセデスは現在、マクラーレン、アルピーヌ、ウィリアムズにPUを供給している。しかし、同じメルセデス製PUを使用していても、ワークスチームほど性能を引き出せていないとの声がカスタマー側から上がっている。

    メルセデスF1の副チーム代表ブラッドリー・ロードによれば、その背景にはPUそのものではなく、シミュレーションや予測に使用する「ツールセット」の違いがあるという。

    同じメルセデスPUでも性能を引き出せないカスタマー
    2026年はF1の新パワーユニット規則が導入された最初のシーズンであり、メルセデスはここまで11戦中8勝を挙げ、新規則への対応で一歩先を行っている。

    一方、メルセデスPUを搭載するカスタマーチームからは、シーズン序盤からワークスとの差について疑問が示されてきた。

    マクラーレンのチーム代表アンドレア・ステラは開幕戦オーストラリアGPで、メルセデスについて「彼らがやっていることを見ると、我々よりもはるかに多くのことを理解している。それに、情報の流れも想定していたものとは違っているのかもしれない」と語っていた。

    ステラは、メルセデスF1とPUを開発・製造するメルセデス・ハイパフォーマンス・パワートレインズ(HPP)がより密接に連携できることについては「当然だ」と認める一方、マクラーレンとしてHPPとの協力をさらに強化したいとの考えを示していた。

    この問題はその後も続き、イギリスGPではメルセデスがストレート上で使用していたスロットルリフトの手法が注目を集めた。

    ステラは「少し驚いた。これは我々が話し合ってきたものではないし、そもそも我々が利用できるものなのかさえ分からない」とコメント。「あのようにPUを使うには、おそらく何らかの追加要素が必要なのだと思う」と語った。

    メルセデス「すべてルールと契約に従っている」
    これに対し、ブラッドリー・ロードは、ワークスチームがPUからより多くの性能を引き出せている理由について、供給されるPU自体の違いではなく、それを使いこなすための技術基盤にあると説明した。

    「すべてルールに従っているし、すべて契約に従っている」

    ロードはそう強調した。

    「マクラーレン、そして他のカスタマーチームであるアルピーヌとウィリアムズは素晴らしいパートナーだと思っている。当然ながら彼らの要求水準は高い。優れたサポートと優れた製品を提供する会社と仕事をしたいからこそ、彼らはメルセデスを選んでいる」

    「ブリックスワースのPUチームは、長年にわたるカスタマー供給を通じて、非常に公平かつ適切な方法でそれを行っていることを証明してきた」

    つまり、メルセデスHPPはカスタマーチームに対して意図的に性能を制限したPUを供給しているわけではないということだ。

    性能差を生むのはPUではなく「ツールセット」
    では、なぜ同じPUを使いながら差が生まれるのか。

    ロードは、最大の要因としてシミュレーション技術やPUとシャシーの挙動を予測するためのツールを挙げた。

    「おそらく避けられないことだが、違いがあると認識されたり、カスタマー側が一歩遅れていると感じたりする部分がある。それは多くの場合、シミュレーションツールや、PUとシャシーがどのように振る舞うかを予測する能力といったところにある」

    「そして、そうしたツールセットの多くは、ブリックスワースだけで開発したものではない。MGP(メルセデス・グランプリ)のシャシーチームとブリックスワースのHPPが共同で開発してきたものだ」

    ここが重要なポイントとなる。

    PUそのものに関する技術やデータはHPPからカスタマーへ提供できても、メルセデスF1のシャシーチームが開発に関与した技術は、F1の知的財産(IP)に関する規則によって、そのまま他チームへ渡すことはできない。

    「技術レギュレーションでは、シャシーチームのIPについて、チーム間で何を共有できて何を共有できないかが非常に明確に定められている」

    メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ

    カスタマー側も独自開発への投資が必要
    そのため、メルセデスがワークスチームで使用している技術をカスタマーへ提供する場合、シャシーチームのIPに該当する部分を切り離す作業が必要になるケースもある。

    あるいは、カスタマーチーム自身が予算を投入し、同様の能力を持つ独自のツールを開発しなければならない。

    「場合によっては、カスタマーチームに提供できるようにする前に、要素を切り分ける作業が必要になる」

    「あるいは、カスタマーチーム自身が作業を行い、PUを最大限に活用するためのツールを開発するために、自分たちのコストキャップ内のリソースを使って投資する必要がある」

    ロードは、これが2026年の新規則で浮上した複雑な問題のひとつだと説明する。

    「おそらく、これが我々が直面している複雑さのひとつだ。ただ、まったく新しいレギュレーションであり、しかも以前より複雑な規則であることを考えれば理解できることでもある」

    シーズン中盤でも続く新PUの学習
    2026年のPU規則は従来以上に複雑であり、ロードによれば、ワークスのメルセデス自身もまだ完全に理解し尽くしたわけではない。

    「メルボルンで開幕を迎えられるところまで持っていくこと自体、全員にとって本当に大仕事だった」

    「ここ数戦を見ても、まだ急激な学習曲線の途中にいる。シーズンの半分まで来ても、我々はデバッグを続けているし、思わぬ問題につながるものを発見し続けている」

    それでも、現時点で新PU規則を最もうまく活用しているのはメルセデスだ。

    2026年シーズン前半の11戦でメルセデスは8勝を挙げ、フェラーリが2勝、マクラーレンがハンガリーGPで1勝を記録している。

    コンストラクターズ選手権ではメルセデスがフェラーリに72ポイント差をつけて首位。ドライバーズ選手権でもキミ・アントネッリがルイス・ハミルトンに50ポイント差をつけてランキングトップに立っている。

    同じメルセデスPUを搭載していても、PUの性能を最大限に引き出すには、エンジンそのものだけでなく、シャシーとの統合、シミュレーション、制御方法を予測する技術基盤が不可欠となる。2026年の新規則では、その「使いこなす能力」がワークスとカスタマーの新たな差になっている。

  • メルセデスF1 開発速度は昨年の「6〜7倍」アリソンが明かす驚異的な進歩

    メルセデスF1 開発速度は昨年の「6〜7倍」アリソンが明かす驚異的な進歩

    メルセデスのテクニカルディレクターを務めるジェームス・アリソンは、2026年に導入された新F1レギュレーションのもとで、各チームの開発速度が「桁違い」のレベルに達していることを明かした。

    F1では新たなレギュレーションが導入されると、エンジニアが規則への理解を深め、さまざまな可能性を発見していくことで、通常よりも開発ペースが速くなる傾向がある。

    特に2025年から2026年にかけてはマシン規則が大幅に変更された。そのため今季は比較的小規模なアップグレードでも大きな効果を生み、グリッド上の勢力図が頻繁に変化している。

    シーズン序盤に強さを見せたメルセデスも、最近ではフェラーリをはじめとするライバル勢の追い上げを受けている。

    風洞での開発速度は昨年の6〜7倍
    アリソンによれば、2026年のレギュレーションはまだ成熟しておらず、それが驚異的な開発速度につながっているという。

    「今回のレギュレーションサイクルを特徴づけているもののひとつは、規則がまだ非常に未成熟だということだ」

    アリソンは『Nu Silver Arrows Podcast』でそう語った。

    「開発速度は過去数年と比べて桁違いに大きい。空力面では、風洞で確認している向上率は昨シーズンのおよそ6〜7倍になっている」

    それが実際のラップタイムにどれほど影響するのかについて、アリソンは次のように説明した。

    「およそ2カ月ごとに0.5秒というペースだ。これは非常に大きな進歩率だ」

    つまり、現在のF1では数カ月の開発の遅れが、そのまま大きなパフォーマンス差につながりかねない状況にある。

    メルセデスは開幕戦に向けて開発を限界まで継続
    メルセデスは2026年型マシンの初期性能を最大限に高めるため、開幕直前まで開発を続ける戦略を選択した。

    「シーズン前に、最初のマシンをこれまで以上に限界までプッシュするという意識的な決断をした」

    「通常よりも遅い段階まで作業を続け、事実上、ほとんど余裕のないプログラムを組んだ」

    その判断には大きなメリットがあった。

    「その利点は、最初のレースまでに急激な開発曲線から可能な限り多くのパフォーマンスを取り込めたことだ。それが、マシンが非常に高いパフォーマンスレベルでシーズンを迎えることができた理由だ」

    メルセデスはシーズン序盤から高い競争力を発揮したが、その代償として、シーズン中のアップグレード投入という点ではライバルに後れを取ることになった。

    メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ

    「最初にパフォーマンスを使い切った」
    アリソンは、開幕時点の性能を優先した戦略には明確なデメリットもあったと認める。

    「欠点は、基本的にそのパフォーマンスを最初にすべて使ってしまったことだ。他のチームはマシンをもっと早く確定させたため、その分、アップグレードの開発を早く始めることができた」

    「今の僕たちは、いくつかのライバルとは開発サイクルが少しずれている」

    その結果、メルセデスが次の開発段階に向けて準備を整えている間に、ライバル勢が新パーツを投入するという状況が生まれている。

    「彼らがアップグレードを投入している一方で、僕たちは開発パイプラインを再構築してきた」

    「いま分かっているのは、どのチームもおおむね同じような速度で進歩しているということだ。つまり、競争力の勢力図は非常に速く変化する可能性がある」

    次のアップグレードで再び優位を狙うメルセデス
    メルセデスの目標は、次の大型アップグレードによってシーズン序盤に築いたアドバンテージを取り戻すことにある。

    「僕たちの目標は単純に先頭を維持し、次のアップグレードによってシーズン序盤に築いたアドバンテージを取り戻すことだ」

    「それまでは、他のチームが大きな新開発を持ち込んでくるタイミングを何とか乗り切るしかない」

    2026年のF1では、風洞での開発速度が前年の6〜7倍、ラップタイム換算では約2カ月で0.5秒という驚異的なペースで性能向上が続いている。開幕時の完成度を優先したメルセデスにとって、今後投入するアップグレードでライバル勢の追い上げを再び突き放せるかが、シーズン後半の大きな焦点となる。

  • メルセデスF1が後半戦を警戒「夏休み後に選手権は様変わりする」

    メルセデスF1が後半戦を警戒「夏休み後に選手権は様変わりする」

    メルセデスF1は、2026年シーズン後半が前半戦とはまったく異なる戦いになると予想している。コンストラクターズ選手権とドライバーズ選手権の両方で首位に立ちながらも、チームは夏休み明けのオランダGPからタイトル争いがさらに激化すると警戒している。

    メルセデスF1の副テクニカルディレクターを務めるシモーネ・レスタは、F1では夏休みを境に選手権の流れが大きく変わることが多く、タイトル争いではプレッシャーへの対応力が勝敗を左右すると強調した。

    メルセデスF1 「失ったポイントがなければもっとリードしていた」
    ハンガリーGP終了時点で、メルセデスはドライバーズ、コンストラクターズの両ランキングで首位に立ち、2020年以来となるダブルタイトル獲得へ向けて有利な立場で夏休みに入った。

    しかし、チーム代表のトト・ヴォルフは、今季の戦いは本来ならさらに優位に進められていたと振り返る。パワーユニットとシャシーを一体で開発するワークス体制が好スタートにつながった一方で、信頼性トラブルによって大きな代償を払ったという。

    「シーズン序盤は非常に良いスタートを切れた。パワーユニットとシャシーを統合した体制、そしてチーム全体の準備が成果につながったと思う」

    「一方で、信頼性の問題には明らかに苦しんだ。3回か4回のリタイアがあり、直接のライバルであるフェラーリに対して70~80ポイントは失ったはずだ。今のリードは70ポイント余りなので、それらを加えれば非常に大きな差になっていた」

    「だが、そのポイントは失われた。そして当然ながらライバルとの差は縮まった。難しいグランプリもいくつかあった」

    さらにヴォルフは、フェラーリが挙げた直近2勝についても、メルセデス側のミスや不運が大きく影響したとの見方を示した。

    「実際、フェラーリのここ2勝は我々自身の失敗によるものだ。バルセロナではセーフティカーの不運があり、シルバーストンではキミ(アンドレア・キミ・アントネッリ)のホイールトラブルがあった」

    メルセデスAMG・ペトロナス・モータースポーツ

    シモーネ・レスタ 「夏休み後は選手権の流れが変わる」
    シーズン前半はメルセデスが優位に立ったものの、ここ数戦ではフェラーリやマクラーレンが着実にパフォーマンスを向上させ、その差は縮まりつつある。

    レスタは、こうした流れが夏休み明けのオランダGP以降、さらに顕著になると予想している。

    「歴史を振り返れば、選手権は夏休み後に必ず変化する」

    「首位に立つチームには大きなプレッシャーがかかるが、追う側にも同じようにプレッシャーがかかる」

    「シーズン後半はチームにとってまったく別の局面になる。環境はさらに厳しくなり、一つひとつの結果の重みが増していく」

    現在、メルセデスはコンストラクターズ選手権でフェラーリに72ポイント差、ドライバーズ選手権ではアンドレア・キミ・アントネッリがルイス・ハミルトンに50ポイント差をつけている。

    それでもレスタは、このリードがタイトル獲得を保証するものではないと断言する。

    「この時期こそ、組織の強さとレジリエンス(対応力)が本当に試される」

    「プレッシャーに耐え、さらに重要性が増した状況でも結果を出し続けられるかどうかを、チームは証明しなければならない」

    そして、2026年シーズン終盤はわずかな差がタイトルの行方を左右する激戦になると予想した。

    「このシーズン後半がどう展開していくのか、とても興味深い。多くの場合、選手権はこの時期に勝ち取られるか、あるいは失われるものだからだ」