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  • フェラーリF1 “小径ターボ”路線で2026年にライバルを出し抜く可能性

    フェラーリF1 “小径ターボ”路線で2026年にライバルを出し抜く可能性

    2026年F1シーズンに向けた新レギュレーション下で、フェラーリが下したひとつの重要な設計判断が注目を集めている。バーレーンテストで見せた鋭いレーススタートは、その方向性を裏付けるものだった。

    ハイブリッド時代を通じて各PUメーカーが選択してきたターボサイズの思想に対し、フェラーリは一貫して異なるアプローチを取ってきた。その選択が、MGU-H廃止という2026年の大変革によって大きな意味を持つ可能性がある。

    MGU-H廃止で一変したターボ設計の前提
    2014年に導入されたハイブリッド規則では、1.6リッターV6ターボにMGU-H(ターボ軸直結の電動モーター/ジェネレーター)が組み合わされていた。

    MGU-Hは主に2つの役割を担っていた。

    ■ ターボを電動で回転させ、低回転域でも即座にブーストを立ち上げる
    ■ ターボの過回転や過給圧を抑えつつ、電力を回収してバッテリーを充電する

    この存在により、ターボサイズの選択はそれほどシビアではなかった。大型ターボでも電動アシストでレスポンスを補え、小型ターボでも余剰回転を電力に変換できたからだ。

    しかし2026年からMGU-Hは廃止される。ターボは排気ガスの流量だけで過給圧を生み出さなければならない。最大回転数は15万rpmに制限され、制御はより機械的な領域へと戻る。

    フェラーリだけが“小径ターボ”路線を継続
    ハイブリッド時代を通じ、フェラーリは他メーカーが“大径ターボ”を採用する中で“小径ターボ”を使ってきたとされる。

    正確なサイズは公表されないため相対的な表現になるが、重要なのはポンピング容量とレスポンス特性だ。

    小径ターボの特性は以下の通りだ。

    ■ 低回転域から素早く立ち上がる
    ■ スロットルオン/オフ時の応答が速い
    ■ 最大ブースト到達が早い

    一方で大径ターボは高流量域での余裕があるが、回転上昇には時間がかかる。

    MGU-Hが存在した時代であれば、この差は電動制御で補正できた。しかし現在は排気エネルギーのみが頼りだ。

    フェラーリ F1

    スタートダッシュが示したアドバンテージ
    バーレーンテストでフェラーリ勢が見せた鋭いプラクティススタートは、この小径ターボ思想の優位性を示唆している。

    グリッドスタートや低速コーナー立ち上がりでは、ICE回転数が低い領域から急速に排気流量を増やす必要がある。ここで小径ターボは有利だ。

    特に2026年は電動出力比率が高まり、エネルギーマネジメントが厳格化される。排気による即時ブースト確保は、ドライバーにとって扱いやすさに直結する。

    大径ターボ勢に残る制御リスク
    MGU-Hがない状況で大径ターボを用いる場合、過給圧制御は主に以下に依存する。

    ■ ポップオフバルブ(吸気側の過給圧解放)
    ■ ウエストゲート(排気側のバイパス)

    だが、これらは“余剰エネルギーを捨てる”制御だ。ハイブリッド時代のように電力へ変換することはできない。制御応答が遅れればオーバースピードや過給過多のリスクもある。

    小径ターボは最大回転域に早く到達するが、その分コントロール幅が取りやすく、無駄な排気放出を減らせる可能性がある。

    2026年レギュレーションとの整合性
    2026年のPUは内燃機関と電動出力がほぼ50:50に近づく。電力依存度が高まる一方で、MGU-Hは存在しない。

    この環境下では、以下の条件が重要になる。

    ■ 低回転域での確実なブースト確保
    ■ 無駄な排気エネルギー損失の最小化
    ■ スロットル応答の一貫性

    これらを満たす設計思想は、むしろ“小径ターボ寄り”である可能性が高い。

    フェラーリは本当に出し抜いたのか
    もし他メーカーがハイブリッド時代にMGU-Hを多用して大型ターボを最適化していたとすれば、その前提は崩れたことになる。

    MGU-H廃止は単なる部品削減ではなく、ターボ哲学そのものを変える決断だった。

    フェラーリが長年続けてきた小径ターボ路線が、偶然ではなく思想的選択だったのなら――2026年はその真価が問われる年になる。

    バーレーンの鋭いスタートは、その序章にすぎないのかもしれない。

  • フェラーリF1、SF-26初走行でアクティブ・エアロが実走初公開

    フェラーリF1、SF-26初走行でアクティブ・エアロが実走初公開

    ルイス・ハミルトンが、2026年F1レギュレーションの象徴となる「アクティブ・エアロダイナミクス」を実走で初めて披露した。舞台はフェラーリのフィオラノ・サーキット。フェラーリの2026年F1マシンSF-26のシェイクダウン走行で、新世代マシンの可動式ウイングが作動する様子が初めて映像に収められた。

    この日、ハミルトンは最初の走行を担当し、その後シャルル・ルクレールにステアリングを引き継いだ。

    アウディ、キャデラック、レーシングブルズ、メルセデス、アルピーヌといった他チームの2026年型マシンのシェイクダウンでは、これまでアクティブ・エアロの動作が確認できる映像は公開されておらず、フェラーリが最初にその挙動を明確に示した形となった。

    2026年から導入されるアクティブ・エアロでは、リアウイングは従来のDRSと同様にスロットギャップが開く構造を採用。一方でフロントウイングは、作動時にダウンフォースを生み出すウイング要素そのものが下がる仕組みとなっており、直線区間で大幅な空気抵抗低減を狙っている。前後ウイングの可動化は、DRSに代わるシステムとして位置づけられ、ストレートでは常時使用が可能とされている。


    この新システムについて、フェラーリのシャシー・テクニカルディレクターであるロイック・セラは、その技術的な難しさを次のように説明している。

    「これまでと大きく違うのはハードウェア面だ。高速域で動作する部品を成立させる必要があり、信頼性とパフォーマンスの両方で目標を満たさなければならない。そこが技術的な課題になる」

    セラはまた、アクティブ・エアロが正しく機能すれば、マシン全体の効率を大きく高められると強調する。

    「ラップタイムに重要な場面ではダウンフォースを確保し、直線ではドラッグを削減する。グリップに制約される区間ではダウンフォースに集中し、そうでない区間では空気抵抗を最大限減らすことになる」

    さらにセラは、開発の中心にシミュレーションがあることも明かした。前年型マシンという基準が存在しないため、仮想環境での作業が不可欠だという。

    「頼れる前年型マシンがないため、シミュレーションが開発の中核になる。ファクトリーではまず純粋な性能を積み上げ、その性能をドライバーが最大限使える形にする。その過程でドライバーの役割は非常に重要になる。人とマシンの相互作用が鍵であり、レギュレーションが完全に新しい今回、その重要性はこれまで以上に高い」

    ルイス・ハミルトンによるフィオラノでの初走行は、2026年F1マシンが目指す方向性を視覚的に示す最初の瞬間となった。アクティブ・エアロという新時代の中核技術が、今後のテストやシーズン開幕後にどのような差を生むのか。フェラーリSF-26は、その行方を占う存在として注目を集めている。

  • オリバー・ベアマン、フェラーリF1代表と定期的に協議「将来ではなく今の走り」

    オリバー・ベアマン、フェラーリF1代表と定期的に協議「将来ではなく今の走り」

    オリバー・ベアマンは、フェラーリF1チーム代表のフレデリック・バスールと、自身のF1でのパフォーマンスについて定期的に話し合っていることを明かした。

    イギリス人ドライバーのベアマンは、2025年にルーキーとして好シーズンを過ごした後、ハースF1チームでF1フル参戦2年目のシーズンに向けた準備を進めている。

    現在はハースF1チームからレースに出場しているものの、ベアマンはフェラーリ・ジュニア・アカデミーの一員であり、将来的にシートに空きが生じた際の有力候補として名前が挙がっている。

    ただしベアマンは、バスールとの会話は将来のシートに関するものではなく、あくまで現在のドライビングパフォーマンスに関するものだと強調した。

    「シーズンを戦う中で僕が直面している課題について、ときどき話をしている」とベアマンはRacingNews365を含むメディアに語った。

    「本当にオープンな対話という感じだ。紙の上に出てくる結果だけを見るのは簡単だけど、それがすべてを物語っているわけじゃないからね。だから自分の側で何が起きているのかを、はっきり伝えるようにしている」

    「そこにはたいてい、もっと多くの要素がある。だけど将来については、何の話もない。ただ僕はクルマをドライブするだけだ。良いレベルで走れていれば、あとのことは自然とついてくると思っている」

    ベアマンはすでにフェラーリF1でのレース出走経験も持っており、2024年F1サウジアラビアGPでは体調不良となったカルロス・サインツの代役を務めている。

    その後フルタイムドライバーへと移行したベアマンは、フェラーリから改善点についてのコミュニケーションも受けていることを明かした。

    「ポジティブでもネガティブでもないフィードバックだ」とベアマンは述べた。

    「さっき言ったように、オープンな話し合いなんだ。僕が直面している課題について話す。それから将来、新しいレギュレーションも重要になる。僕は彼らと同じエンジンを使っているからね」

    「特定の部分を改善してほしいと言われた場面もあった」

    「でも僕にとっては、経験を積めば自然とそうした部分は良くなっていくものだ。経験値が上がれば、時間とともに自然に成長していくからね」

  • フェラーリF1、BingXと初の暗号資産取引所パートナーとして複数年契約

    フェラーリF1、BingXと初の暗号資産取引所パートナーとして複数年契約

    スクーデリア・フェラーリは、暗号資産取引所を運営するBingXと複数年契約を締結し、新たなチームパートナーとして迎えることを発表した。

    2026年のF1世界選手権を戦う新車SF-26の発表を1週間後に控えるなか、マラネロのチームは、パートナーシップのポートフォリオにBingXを加えたことを明らかにした。

    フェラーリとBingXの契約は複数年にわたるもので、イタリアのチームによれば、継続的なイノベーションの推進と、新技術やグローバルな新規オーディエンスとのエンゲージメント拡大に貢献することが期待されている。

    両者に共通する価値観として挙げられたのは、パフォーマンスの追求、精度、そして継続的な進歩だ。BingXにとっては、今回がモータースポーツ界への初参入となり、フェラーリF1とチームパートナーとして手を組むことは、国際的な成長戦略において重要な第一歩となる。

    フェラーリのチーフ・レーシング・レベニュー・オフィサーであるロレンツォ・ジョルジェッティは、BingXとの複数年契約について次のようにコメントしている。

    「フェラーリF1として、初の暗号資産取引所パートナーとしてBingXを迎えられることを嬉しく思う。このコラボレーションは、未来志向の哲学に沿って新興テクノロジーを受け入れていく我々の姿勢を反映したものだ」

    「FIAによる2026年F1レギュレーションというモータースポーツの新時代を見据えるなかで、この提携は、伝統である精度と卓越性の追求に忠実でありながら、サーキット内外で最先端のイノベーションを探求していく我々の意欲を示している」

    「暗号資産取引所分野で初のパートナーとしてBingXを選んだことで、この分野が持つ変革のポテンシャル、そして新たなデジタル体験を通じて、より幅広いグローバルなファン層とつながる機会を認識している」

    このフェラーリF1とBingXのパートナーシップは、イベント、デジタルプラットフォーム、グローバルコンテンツ、そしてファンのために企画・制作された限定的な体験など、チームのさまざまな活動に統合されていく予定だと、マラネロのチームは説明している。

  • ロス・ブラウンが語るフェラーリF1黄金時代の終焉「FIAの介入は正しかった」

    ロス・ブラウンが語るフェラーリF1黄金時代の終焉「FIAの介入は正しかった」

    ロス・ブラウンは、ミハエル・シューマッハのF1ドライバーズタイトル7回すべてに深く関わった人物だが、フェラーリという「ジャガーノート(圧倒的存在)」を打ち破るために、FIAが介入したのは正しかったと、今では受け止めていると明かした。

    ブラウンは1996年シーズン終盤、ベネトンからフェラーリへ移籍してきたシューマッハと再びタッグを組んだ。

    シューマッハはベネトン時代に2度のドライバーズタイトルを獲得しており、その際ブラウンはテクニカルディレクターを務めていた。

    フェラーリではブラウンもテクニカルディレクターとしての役割を担い、彼の戦略的手腕と、シューマッハ、そしてチーム代表ジャン・トッドが築いた体制が、スクーデリアを根本から変革していった。トッドは1993年にフェラーリに加わり、F1史上屈指の「ドリームチーム」を作り上げていった。

    フェラーリは1979年以降、長らくドライバーズタイトルから遠ざかっていたが、2000年にシューマッハがタイトルを獲得し、その状況は一変する。そこから2004年まで5連覇を達成し、これは現在でもシューマッハだけが保持するF1記録だ。

    その支配を終わらせたのが2005年だった。フェルナンド・アロンソがルノーで初タイトルを獲得したシーズンであり、FIAがレース中のタイヤ交換を禁止した年でもある。この規則変更により、ブリヂストンはミシュランに対抗できず、フェラーリは競争力を失った。

    フェラーリが2005年に挙げた唯一の勝利は、物議を醸したアメリカGPだった。ミシュラン勢が安全上の理由でフォーメーションラップ後に全車棄権し、ブリヂストン勢の6台だけが決勝を戦った一戦である。

    それでもブラウンは、このタイヤ規則変更について、FIAの判断は正しかったと認めている。2017年から2022年までF1のマネージングディレクターを務めた経験を通じ、当時の状況を別の立場から理解できるようになったという。

    「フェラーリでの時間の頂点は、2004年のマシンだったと思う。すべてが噛み合っていた」とブラウンは公式F1サイトに語っている。

    「フェラーリで好きだったのは、毎年すべてが前年より良くなっていったことだ。チームも、マシンも、組織の機能の仕方も、すべてが少しずつ前進していた。それが2004年という、史上最高だと思えるマシンに結実した」

    「その後、タイヤ規則が変わって、我々は“やられた”。だが、あまりにも成功しすぎていたし、何らかの形で止められる必要があったとも思う。あのジャガーノートは、別の方法では止まらなかっただろう。我々は、あらゆるものが完璧に機能していたのだから」

    「その後、反対側の立場を経験したことで、バーニー(エクレストン)やマックス(モズレー)、プロモーターたちのフラストレーションも理解できるようになった。勝たなかった時が驚きで、勝った時は驚きではない、そんな状況になっていた。あれは本当に特別なマシンだった」

    ミハエル・シューマッハとロス・ブラウン(スクーデリア・フェラーリ)

    シューマッハは2002年と2004年にとりわけ圧倒的な強さを見せた。2002年は17戦中11勝を挙げ、全レースで表彰台に立った。2004年には18戦中13勝を記録し、最初の13戦のうち12勝を獲得している。唯一の例外は、モナコでのクラッシュだった。

    2006年になると、FIAは再びレース中のタイヤ交換を認める規則に戻した。2005年のヨーロッパGPで、キミ・ライコネンが右フロントサスペンション破損により首位からリタイアするなど、タイヤを巡る問題が続いたことが背景にあった。

    シューマッハは2006年にタイトル争いへと復帰したが、最終的にはアロンソに13ポイント届かず、その年限りでF1から引退した。ブラウンもまた、2006年シーズン終了をもってフェラーリを去る決断を下している。

    この一連の出来事を振り返り、ロス・ブラウンは今、フェラーリとミハエル・シューマッハの時代が、あまりにも完成されすぎていたがゆえに、規則の力で終わりを迎える必要があったと、静かに受け止めている。

  • バルテリ・ボッタス、F1復帰を前に伝説のフェラーリで市街地ラン

    バルテリ・ボッタス、F1復帰を前に伝説のフェラーリで市街地ラン

    バルテリ・ボッタスは、3月1日(日)に開催されるレプコ・アデレード・モータースポーツ・フェスティバルでクラシックフェラーリのステアリングを握り、現代F1の激務から一転、栄光の過去へとタイムスリップすることになる。ファンにとっては見逃せない機会だ。

    キャデラックで2026年にF1グリッド復帰するボッタスは、アデレード市街地で行われる特別デモンストレーションランにおいて、フェラーリの伝説的マシン156/85をドライブする。

    現代F1ドライバーが、この競技史上屈指のターボモンスターを操る姿を、歴史ある市街地コースで目にできる貴重な機会となる。

    ターボ時代のフェラーリがアデレードに帰還
    ボッタスがドライブするフェラーリ156/85は、博物館で埃をかぶっている展示物ではない。このマシンは、1985年シーズンにミケーレ・アルボレトがワールドチャンピオン争いを演じ、ドライバーズタイトルにはわずかに届かなかったものの、フェラーリをコンストラクターズ栄冠の目前まで導いた実車である。

    さらに特別なのは、ボッタスがアルボレト本人が使用したオリジナルの27号車シャシーをドライブする点であり、アデレードとF1の象徴的な時代を再び結びつける。

    バルテリ・ボッタス フェラーリ

    アデレードの市街地が初めてF1を迎えたのも同じ1985年であり、1996年にメルボルンへ移るまで10年間にわたってオーストラリアGPの舞台となった。真紅のフェラーリが再びこの地を駆け抜ける光景は、現代のスターがコックピットに収まることで、強烈なノスタルジーを呼び起こすことになる。

    このイベントでは、フェラーリ勢はボッタスだけではない。1985年当時にアルボレトのチームメイトだったステファン・ヨハンソンも、自身の28号車156/85をドライブして走行を披露する。

    サーキット外では、ボッタスはイベントアンバサダーとしての役割も担い、アデレード・マリオット・グランド・マーキーでファンと交流し、フェスティバルの雰囲気を満喫する予定だ。

    また、週末の土曜日にはホールデンHQモナロをドライブし、オーストラリアン・マッスルカーも体験する。

    アデレードでの登場は、フェラーリ製パワーユニットを搭載するキャデラックとともにF1グリッドへ復帰する新たな章を正式に始める直前のタイミングとなる。

    それに先立ち、ボッタスは今月後半にバルセロナでキャデラックの初テストを非公開で行う予定だが、アデレードでは祝祭、ヘリテージ、そしてフェラーリのターボエンジンが放つ独特のサウンドが歴史の中に響き渡る瞬間が主役となる。

  • フェラーリがキャデラックF1チームに託した“先行データ”の価値

    フェラーリがキャデラックF1チームに託した“先行データ”の価値

    2026年F1参戦を控えるキャデラックF1チームにとって、フェラーリとの技術的連携は単なるエンジン供給にとどまらない意味を持つ。マラネロから提供されるのは2026年F1パワーユニットそのものだけでなく、これまで蓄積されてきた膨大な知見と実務経験だ。

    新レギュレーションは未知数が多く、各チームにとって“走り出す前”の準備段階こそが成否を左右する。そうした状況で、キャデラックF1チームは、フェラーリから得られる事前情報を武器に、参戦初年度から確かな地盤を築こうとしている。

    このプロジェクトを率いるグレアム・ロードンは、フェラーリの2026年F1パワーユニット計画に強い信頼を寄せており、その完成度が次世代F1で十分に戦える水準にあると確信している。

    マラネロで共有された“現場の時間”
    ルーキーとしてF1に参戦するチームにとって、最大の課題は経験値の不足だ。キャデラックはこの弱点を補うため、シミュレーターと実地作業の両面で徹底的な準備を進めてきた。

    2025年末、フェラーリはフィオラノでの作業にキャデラックの多数の技術者を受け入れ、実車とシミュレーションを結びつけるプロセスを共有した。これは単なる視察ではなく、トップチームが長年かけて築いてきた運用ノウハウに直接触れる機会だった。

    この経験によって、キャデラックは新レギュレーション下で必要となる作業フローや判断基準を、参戦前の段階で具体的に理解することができた。

    キャデラック F1 フェラーリ

    周冠宇という“経験の橋渡し役”
    キャデラックの体制構築において、決定的な役割を担うのが周冠宇だ。彼はフェラーリでリザーブドライバーを務め、2026年F1マシン開発の中核となる「プロジェクト678」に深く関与してきた。

    周冠宇は3シーズンにわたるF1参戦経験を持ち、若手候補とは一線を画す実戦的な知識を備えている。キャデラックが彼を選んだ理由は明確で、不確実性を極力排除し、確かな判断ができる人物を据える必要があったからだ。

    シルバーストンの欧州拠点を拠点に活動する周冠宇は、イタリアで培ったフェラーリ流の開発思想を、アメリカとイギリスにまたがるキャデラックの組織へと伝える役割を担う。

    フェラーリのノウハウを“使いこなす”ために
    周冠宇はレース出走こそしないものの、その存在価値は極めて大きい。彼はバルテリ・ボッタス、セルジオ・ペレスと連携し、シミュレーター相関や開発方向性の精度向上に貢献する。

    フェラーリで培った知識、2026年タイヤへの初期対応、トップチーム特有の運用プロトコル。これらすべてが、キャデラックにとっては“時間を買う”ための資産となる。

    新たなF1チームが短期間で競争力を得るためには、技術だけでなく、それを扱う人材の質が問われる。フェラーリのノウハウを理解し、翻訳できる存在として、周冠宇はキャデラックF1にとって欠かせない触媒となっている。

  • ハミルトンはフェラーリF1に溶け込めるのか ベッテルが助言した「イタリア語」

    ハミルトンはフェラーリF1に溶け込めるのか ベッテルが助言した「イタリア語」

    セバスチャン・ベッテルは、ルイス・ハミルトンがフェラーリF1へ移籍するにあたり、自身が伝えたアドバイスの中身を明かした。要点は極めてシンプルだ。「言語を学ぶこと」。それも、形だけではなく“本気で”学ぶことだという。

    2015年から2020年までフェラーリで戦ったセバスチャン・ベッテルは、マラネロでの時間を「大好きだったし、後悔はない」と振り返る一方、文化への踏み込みが十分ではなかったと自己分析する。

    「違っていた。とても違っていた。でも楽しかった。僕は順応したし、その時間を愛していた。イギリスのユーモアも、人々も、レースへのアプローチも好きだった。ただ、母国語が英語ではない自分が、さらに別の国へ行くという状況を想像すると、その難しさは計り知れない」

    フェラーリの“心臓”はイタリア文化
    18年間、マクラーレンとメルセデスという英国系チームで戦ってきたルイス・ハミルトンにとって、フェラーリは大きな転換点になるとベッテルは語る。

    「言語としては英語で仕事はできる。彼はチームの誰とでも意思疎通できる。でも、英語を話せない、あるいは流暢でない人たちもいる。言葉が十分に分からなくても仕事は進む。でも、その人たちや文化を“本当に理解できているか”は別の話だ。フェラーリの心と文化はイタリアにある」

    ベッテルは、自身のフェラーリ時代を振り返り、イタリア語への向き合い方が足りなかったと率直に認めている。

    「今振り返ると、それは決定的なミスだった。イタリア語は学んだし、レッスンも受けた。でも完璧ではなかった。もっと本気で勉強すべきだったし、もっとイタリアで過ごすべきだった。文化とは、人そのものだからだ」

    ハミルトンに伝えた“唯一の助言”
    だからこそ、ベッテルは移籍前のハミルトンに、こう伝えたという。

    「僕ができる唯一で、最高のアドバイスは『言語を学べ。本当に、徹底的に学べ』ということだ。言語を学ぶには、環境に身を置く必要がある。その国で、人々と話し、文化に触れる。そうすれば、他のことは自然と噛み合ってくる」

    セットアップや技術的な会話においては不要だという意見もあるが、「大きな視点で見れば、文化とスピリットを理解するために、言語は極めて重要だ」と強調した。

    ルイス・ハミルトン F1 スクーデリア・フェラーリ

    ハミルトン本人の自己評価「今はあまり良くない」
    2025年7月のペローニのイベントで、イタリア語の習得状況を問われたハミルトンは、率直にこう答えている。

    「正直、あまり良くない。最初はたくさんレッスンを受けていたけど、シーズンが忙しくなりすぎて、完全に止まってしまった。Duolingoもやっていたし、数週間は順調だったけど、ここ数カ月は何もしていない」

    「本当はイタリアに住みたい。でも今年はそれがほぼ不可能だった。毎週のように行ってはいるけど、ちゃんとイタリア語を話せるようになるのが夢だ」

    ハミルトンはフェラーリでの初年度をドライバーズランキング6位で終え、キャリアで初めて“シーズン無表彰台”という結果も経験した。ベッテルの言う「言語と文化への没入」は、単なるコミュニケーション手段ではなく、フェラーリというチームの中核に溶け込むための鍵であり、今後の巻き返しに向けた重要な要素になっていく。

  • 周冠宇、フェラーリF1のテスト兼リザーブドライバーの役割を終了

    周冠宇、フェラーリF1のテスト兼リザーブドライバーの役割を終了

    スクーデリア・フェラーリは、2026年のF1世界選手権シーズンを前に周冠宇がテスト兼リザーブドライバーの役割を離れたことを発表した。

    周冠宇は、2024年末でザウバーのレースシートを失った後、2014年から2018年まで在籍していたフェラーリ・ドライバー・アカデミーの縁もあり、フェラーリに復帰していた。フェラーリでは、世界耐久選手権(WEC)でのフェラーリドライブと役割を兼務するアントニオ・ジョヴィナッツィとともに、リザーブドライバーを務めていた。

    中国人ドライバーの周は、パドックにとどまり続けることで、2026年にF1参戦を予定しているキャデラックのシート獲得につなげたいと考えていた。しかし、マネージャーであるグレアム・ロードンがキャデラックのチーム代表を務めているにもかかわらず、同チームはバルテリ・ボッタスとセルジオ・ペレスを起用する決断を下した。

    周冠宇はフェラーリ復帰以前の時点で、フルタイムのシートを得られない場合でも、リザーブドライバーに甘んじる状況は避けたいという考えを明かしていた。

    「F1では、とにかく速く、効率的である必要がある。チャンスがあるのに待ち続けてしまえば、ずっとサードドライバーのままで終わる可能性もある。それは僕が望んでいることではない」

    周冠宇の今回の離脱は、2026年に向けたF1ドライバー市場の厳しさを改めて浮き彫りにした形だ。新規参戦のキャデラックでさえ即戦力と経験を優先した現実は、周のような若手ドライバーにとって、リザーブという立場が必ずしも将来への近道ではないことを示している。今後、周がどのカテゴリーで次のキャリアの一手を打つのかが注目される。

  • フェラーリ、2026年F1エンジンで鋼合金ヘッド採用を決断

    フェラーリ、2026年F1エンジンで鋼合金ヘッド採用を決断

    フェラーリは、2026年F1パワーユニットにおいて、アルミニウムではなく鋼合金製のシリンダーヘッドを採用する決定を下した。エンジン部門のテクニカルディレクターであるエンリコ・グアルティエリがこの解決策を承認し、ダビデ・マッツォーニが持ち込んだ案を、経験豊富なエンジニアであるグイド・ディ・パオラが再検討した。ディ・パオラは、ツィンマーマンとシュミットの離脱以前から、より積極的な役割に復帰していた。

    フェラーリは、プロジェクト678がマラネロの同一ファクトリーで設計・製造されたという利点を最大限に活かそうとしている。2026年型フェラーリは、エンリコ・グアルティエリ率いるエンジン部門と、テクニカルディレクターにロイック・セラを据えるシャシー部門との、極めて高い統合による成果だ。

    2026年パワーユニットは、ディエゴ・トンディおよびフランク・サンチェスが率いる空力部門に対し、空気抵抗低減に有効なコンセプトを極限まで追求する余地を与えるよう構想されている。すでに報じられている通り、新型フェラーリは放熱系のマスを縮小し、電動バッテリーも軽量かつ非常にコンパクトに設計されており、空力的により有利な形状設計を可能にするはずだ。

    フレデリック・バスールのテクニカルスタッフは、4月末に風洞でのSF-25開発を停止した判断が、新レギュレーション導入初年度に結果として現れることを示さなければならない。前例のない規模の規則刷新を前に、エンジン部門がもたらす大胆な設計解によって空力面を攻められる機会を、無駄にすることは許されない。

    マラネロでは、2025年の厳しいシーズンを受けてトーンを抑えている。その中で明らかになったのが、メルセデスとレッドブルが、レギュレーション上は常温測定で16:1と定められた圧縮比を、エンジン作動時の温度上昇によって18:1まで引き上げる仕組みを有しているという事実だった。

    この情報は大きな反響を呼び、フェラーリはホンダおよびアウディとともにFIAに説明を求めた。しかしFIAは、ブリックスワースで生まれ、メルセデスからレッドブルへの技術者移籍後にミルトンキーンズでも採用されたこのアイデアを、完全に合法と判断した。

    一部の関係者によれば、計測上のアドバンテージは約13馬力とされている。1馬力あたりのラップタイム短縮が約0.02秒であるならば、効果は0.25秒程度であり、報じられていたような0.4秒以上にはならないという。

    フェラーリ F1 エンジン

    そして、これまでほとんど伏せられてきた事実として、エンリコ・グアルティエリが、アルミニウム製と並行開発されていた案に代わり、鋼合金製シリンダーヘッドを正式に承認したことがある。4基のパワーユニットを1シーズンで使用する耐久性が確保できない場合に備え、代替案として検討されていたものだ。

    ヴォルフ・ツィンマーマンと副官のラース・シュミットがアウディへ移籍したことで、銅やセラミックを含む鋼合金製ヘッドは短命に終わると見られていた。しかし、2026年パワーユニットのプロジェクトリーダーであるダビデ・マッツォーニはすでに以前から、グイド・ディ・パオラに対し、オーストリアのAVLと共同でまとめられたこの極端な解決策を見直し、信頼性の基礎を確立するよう指示していた。

    鋼はアルミニウムより重いものの、これまで到達したことのない燃焼室内の圧力と温度条件を試すことが可能になる。2026年のパワーユニットは重量が30kg増加し、150kgとなるため、この特性はむしろ利点になり得る。

    ディ・パオラにより積極的な役割を再び与えたことは、マラネロのエンジン部門における重要な柱が戻ったことを意味する。ルノーやメルセデスから加わった有能な人材も含め、結束力のある作業グループが再形成されつつあるようだ。