カテゴリー: F1レギュレーション

  • カルロス・サインツJr. 2026年F1レギュレーション修正提言「柔軟であるべき」

    カルロス・サインツJr. 2026年F1レギュレーション修正提言「柔軟であるべき」

    カルロス・サインツJr.(ウィリアムズ)は、2026年F1レギュレーションについて、必要であれば修正を行うべきだと訴えた。

    2026年シーズン、F1は内燃機関と電力出力を50対50とする新世代ハイブリッドパワーユニットを中心とした、大幅な技術レギュレーション変更の時代に突入する。従来の80対20から大きく比率が変わり、各周回でのエネルギー回生とデプロイメント管理がこれまで以上に重要となる。

    この方向性については賛否が分かれており、マックス・フェルスタッペンは「ステロイドを打ったフォーミュラEのようだ」と評している。

    サインツはグランプリ・ドライバーズ・アソシエーション(GPDA)のディレクターも務めており、バーレーンでメディアに対し次のように語った。

    「メルボルンは確実によりチャレンジングになるだろう。ただ、どれほどかは言えない。まだメルボルンで想定される状況をシミュレーターで試していないからだ」

    「FOMとFIAへの僕のメッセージは、シーズン序盤はオープンマインドでいる必要があるということだ。我々が決めたレギュレーションが、1周あたりの回生やデプロイメント量という点で、もしかすると少し極端すぎる可能性もある」

    F1レギュレーション 2026年のF1世界選手権 カルロス・サインツJr.

    エネルギー要求の高いサーキットが焦点に
    サインツは、すべてのサーキットで問題が生じるとは考えていないとしながらも、特定のコースでは懸念があると指摘した。

    「いくつかのサーキットでは問題ないだろう。例えばここバーレーンは、おそらくうまく機能する。ただ正直に言えば、ここでも完全に問題ないとは言えない状況だ」

    「しかしメルボルンや、場合によってはジェッダのようなコースは、よりエネルギー要求が高くなるだろう」

    さらにサインツは、大規模なレギュレーション変更ゆえに、事前にすべてを正確に予測することは困難だったと認める。

    「少しレギュレーションを調整する必要が出てくるかもしれない。もちろん、これほど大きな変化だから簡単ではない。マシンがどれほどのダウンフォースやドラッグを持つのか、各チームがどのレベルのデプロイメントを見つけるのか、誰も正確には予測できなかったと思う」

    「僕の唯一のお願いは、必要であれば微調整や修正を行えるよう、オープンでいてほしいということだ。カテゴリーとショーをより良くするためだ」

    「エネルギーマネジメントのレベルを最初から固定するのではなく、柔軟にスタートすべきだと思う」

  • 2026年レギュレーション変更に広がる“パニック” F1 CEOが反論

    2026年レギュレーション変更に広がる“パニック” F1 CEOが反論

    2026年F1レギュレーションを巡る懸念がパドック内外で広がるなか、F1の最高経営責任者ステファノ・ドメニカリが強い口調で反論した。

    電動と内燃機関の出力をほぼ50/50で分け、完全持続可能燃料を使用する新時代のマシンは、アウディ、ゼネラルモーターズ、フォード、そしてワークス体制で復帰するホンダといった大手メーカーを引きつける技術的プロジェクトとなっている。

    一方で、バーレーンでのプレシーズンテストではエネルギー展開の課題が露呈し、1周を通してフルスロットルで走れない状況や、強いエネルギーハーベスティングに対するドライバーの不満も聞かれた。開幕戦オーストラリアGPを前に、オーバーテイクやクロージングスピードへの影響を懸念する声も上がっている。

    そうした空気に対し、ドメニカリは動じていない。

    「私はそのような不安は感じていない。新しいレギュレーションが導入されるときは、常にすべてが間違っているのではないかという疑念が生まれるものだ。だからこそ冷静でいる必要がある」とドメニカリは語った。

    さらに、エネルギー不足に関する議論はすでに正式な場で行われていると強調した。

    「F1コミッションでは、この種の問題に対処するための可能な解決策についてオープンな議論が行われている。シーズン開幕前にも会合が予定されており、過剰反応を避けるための話し合いが行われる。われわれは新しい旅に踏み出したばかりなのだから、冷静でいる必要がある」

    必要であれば即時対応も可能だという姿勢も示す。

    「すぐに実行可能で有益なことがあれば、FIAもチームも非常にオープンな姿勢を示している。テーブルにある課題は解決できるし、修正も可能だ」

    F1レギュレーション

    議論の中心にあるのはオーバーテイクの質だ。新しいパワーユニットが直線での攻防を損なうのではないかという指摘もある。

    しかしドメニカリは一蹴する。

    「なぜこれほどまでにパニックが広がっているのか理解できない。素晴らしいレースがあり、多くのアクションがあるはずだ。慎重さは私のスタイルの一部だが、もし望ましくないことがあれば、技術担当者やFIAとともに責任ある形で解決策を見つけることが、このスポーツの信頼性だ」

    バーレーンで実際にコースサイドからマシンを見た印象についても言及した。

    「私はファンの目線でコース脇から見ていたが、スピードやサウンドに違いは感じなかった。もちろん非常に詳しいファンは状況による違いを理解するだろうが、99.9%のファンは感じないはずだ。だから私は前向きでいたい。もし修正が必要なら、システムとして適切なタイミングと方法で対応できる」

    ハイブリッド時代やグラウンドエフェクト導入時と同様、F1は常に変革のたびに懐疑論にさらされてきた。だがドメニカリの口調からは、危機ではなく進化だという確信がにじむ。問題よりもパニックのほうが大きく見えている――それが現在のF1首脳部の認識である。

  • 2026年F1レギュレーションでも格差拡大? トップ4と中団の溝

    2026年F1レギュレーションでも格差拡大? トップ4と中団の溝

    2026年F1シーズンを前に、バーレーンで行われた最初の公式テストから浮かび上がったのは、レギュレーション刷新にもかかわらず勢力図が大きくは変わっていないという現実だった。マクラーレン、メルセデス、レッドブル・レーシング、フェラーリのトップ4が再び主導権を握る可能性が高いと見られている。

    新シャシー規則、アクティブエアロ、大幅に高まった電動エネルギーの比重、そして予算上限という条件のもとで、11チームすべてが横一線に並ぶはずだった。

    しかしテスト初週のデータは、むしろトップチームと中団以下の差が広がっている可能性を示している。

    ウィリアムズのカルロス・サインツはチームの動画内で次のように語った。

    「トップチーム、昨年すでに前を走っていた4チームとのギャップは広がっているように見える。あの差を埋めるには、これから数か月、そして数レースにわたって多くの作業が必要になるだろう」

    ハースF1チームのエステバン・オコンも、フェラーリ、レッドブル、メルセデスが再び支配するのかと問われ、率直に答えた。

    「違うことを言えればいいんだけどね。でも現時点ではトップ4はかなり固定されているように見える。昨年はトップ10がコンマ3〜4秒以内に収まることもあったが、今はトップ8までがその範囲かもしれない。その後は秒単位の差になる」

    オコンは、各チームがすでにアップデートを持ち込んでいたことを踏まえ、メルボルンに向けて状況が変わる可能性はあるとも強調している。

    バーレーンテストのチーム別最速タイムは以下の通りだ。

    1 シャルル・ルクレール(フェラーリ)- 1分31秒992
    2 アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)- 1分32秒803
    3 オスカー・ピアストリ(マクラーレン)- 1分32秒861
    4 マックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)- 1分33秒109
    5 ピエール・ガスリー(アルピーヌ)- 1分33秒421
    6 オリバー・ベアマン(ハースF1チーム)- 1分33秒487
    7 ガブリエル・ボルトレト(アウディ)- 1分33秒755
    8 アービッド・リンドブラッド(レーシングブルズ)- 1分34秒149
    9 カルロス・サインツJr.(ウィリアムズ)- 1分34秒342
    10 バルテリ・ボッタス(キャデラックF1チーム)- 1分35秒290
    11 ランス・ストロール(アストンマーティン)- 1分35秒974

    フェラーリはシャルル・ルクレールの1分31秒992で全体最速を記録。一方、レッドブル・レーシングのフェルスタッペンは1分33秒109をマークしたが、関係者の間ではまだ改善の余地があると見られている。

    F1レギュレーション

    レーシングブルズのチーム代表アラン・パーメインは、問題は一発の予選タイムだけではないと指摘する。

    「トップチームのレースシミュレーションを見れば、おおよその燃料搭載量は推測できる。彼らは本当に速い。だが驚きではない。大きなレギュレーション変更があると、トップチームは通常さらにリードを広げ、小規模チームは後退する傾向がある」

    2025年まで接近戦が実現していた背景には、安定した規則、予算上限、そして下位チームに多くの風洞時間が与えられる空力テスト制限があったとパーメインは説明する。

    それでもトップチームには構造的優位があるという。

    「最高の空力担当者は最高のチームで働きたがる。なぜトップ選手がトップクラブを選ぶのか? 人は勝ちたいからだ。このスポーツにいる人間は皆、極めて競争心が強い」

    さらに歴史的な投資の差も無視できない。

    「長年、我々は予算上限なしで戦ってきた。トップと最後尾の差は数千万、いや数億単位だった。その資金で築かれたインフラやツールは、今もなお使われている」

    パーメインは、今後レギュレーションが安定すれば再び差は縮まるとの期待も口にした。

    「我々が皆見たいのは接近戦だ。1チーム、1メーカー、あるいは1人のドライバーがすべてを支配することを望む者はいない。金曜にサーキットへ来て、日曜に誰が勝つか分からない。そこを目指している」

  • FIA 2026年F1レギュレーション調整で合意 圧縮比とスタート手順を再評価

    FIA 2026年F1レギュレーション調整で合意 圧縮比とスタート手順を再評価

    2026年F1シーズン開幕を前に、バーレーンでのプレシーズンテスト期間中にF1コミッションおよびF1パワーユニット諮問委員会が開催された。これを受け、FIA(国際自動車連盟)は両会合の内容について声明を発表した。

    2026年F1レギュレーションの導入に伴う技術的評価や圧縮比問題の検証方法などが議論され、いくつかの改良案がワールドモータースポーツ評議会へ付託されることが確認された。

    FIAは水曜日、F1コミッションおよびF1パワーユニット諮問委員会の会合後に2つのアップデートを発表した。

    FIAシングルシーター部門ディレクターのニコラス・トンバジスとF1社長兼CEOステファノ・ドメニカリが議長を務めたF1コミッションでは、2026年F1レギュレーションに関する改良が合意され、ワールドモータースポーツ評議会の承認に付されることとなった。

    F1コミッション会合に関する声明では次のように述べられている。

    「これほど大きなレギュレーション変更の導入に伴い、プレシーズンテストから得られる集団的な学びは依然として存在している」

    「チーム、パワーユニットメーカー、FIA、そしてフォーミュラワン・マネジメント(FOM)は一体となり、来月メルボルンで行われる2026年F1シーズン開幕戦に向け、すべての技術的側面を精査していくことにコミットした」

    FIA主導で実施されたドライバーアンケートの初期フィードバックを受け、すべてのチーム間で建設的な議論が行われたという。

    議題には、マシン全体の特性、エネルギーおよびパワーユニット、空力、オーバーテイクとレース展開、タイヤ、そしてメカニカルグリップが含まれた。

    「2026年型マシンの軽量化と小型化については、ドライバーからポジティブなフィードバックが寄せられた。新型車は乗り心地が向上し、初期加速もより力強いという点で概ね一致している」

    エネルギーマネジメントに関する事項については、バーレーンで行われる2回目のプレシーズンテストの残り3日間で、さらなる評価と技術チェックが実施される予定だ。

    「初期の証拠およびフィードバックはまだ成熟段階にないことから、直ちに大規模なレギュレーション変更は必要ないと合意された。時期尚早な変更は開幕前の不安定性を高めるリスクがある」

    「より多くのデータが得られ次第、さらなる見直しが行われる」

    国際自動車連盟 F1

    また、レーススタート手順に関しても建設的な議論と提案が行われた。

    その結果、現在のバーレーンテスト期間中にレースシステムおよび車載マネジメントのアップデートについてさらなる評価が行われることになった。

    さらに、ファンおよびプロモーターからの需要を受け、スプリントイベント数を最大12戦まで拡大する可能性についても議論された。

    F1パワーユニット諮問委員会からは、走行条件下における圧縮比評価に関する進展も発表された。

    声明では次のように述べられている。

    「ここ数週間および数カ月にわたり、FIAとパワーユニットメーカーは協力し、周囲温度から運転温度までの間で圧縮比がどのように変化するかを定量化する手法を開発してきた」

    このアプローチの検証を経て、2026年8月1日以降、圧縮比制限の遵守は周囲温度条件だけでなく、代表的な運転温度である130℃においても証明する必要があるという提案が提出された。

    この提案はパワーユニットメーカーに投票が付託されており、結果は今後10日以内に判明し、追って公表される見込みだ。

    なお、すべてのF1レギュレーション変更と同様に、最終的な改正はFIAワールドモータースポーツ評議会の承認を必要とする。

  • F1エンジン規則改定へ FIAがメーカー投票実施 圧縮比問題が新局面

    F1エンジン規則改定へ FIAがメーカー投票実施 圧縮比問題が新局面

    2026年F1レギュレーションを巡るパワーユニット論争が、新たな段階に入った。FIA(国際自動車連盟)は物議を醸している圧縮比測定方法について、エンジンメーカーによる投票を実施することを決定した。

    問題となっているのは、圧縮比16:1という規定が「外気温条件でのみ」測定される形で明文化されている点だ。この解釈を巡り、メルセデスとレッドブルのパワートレイン部門がレギュレーションの“穴”を突いたとされ、冬の間から大きな論争を呼んでいた。

    現行規則では、パワーユニットの圧縮比は外気温条件で16:1であることが求められている。しかし、作動温度下での測定については明確な記載がなく、これがパフォーマンス上の優位性につながる可能性が指摘されてきた。

    アウディ、フェラーリ、ホンダの3メーカーは、この状況について明確化と是正を求め、FIAとの協議を重ねてきた。一方でメルセデスは当初の立場を維持していたが、レッドブルがアウディ、フェラーリ、ホンダ側に歩調を合わせたことで、構図は4対1へと変化した。

    FIAは最終的に、民主的な手法で結論を導く方針を採用。エンジンメーカーに対し電子投票(e-vote)を実施することを決定した。

    圧縮比 F1 エンジン 国際自動車連盟

    FIAの声明では次のように説明している。

    「このアプローチ(外気温および作動温度の双方で圧縮比を測定する方式)の検証を経て、2026年8月1日以降、圧縮比制限への適合は外気条件のみならず、130℃という代表的作動温度においても証明されなければならないとする提案が提出された」

    「投票はパワーユニットメーカーに提出されており、結果は今後10日以内に判明し、適切な時期に公表される予定である」

    「すべてのF1レギュレーション改定と同様に、最終的な承認はFIA世界モータースポーツ評議会の承認を必要とする」

    提案が可決された場合、2026年8月1日から新たな測定方式が適用される見通しだ。これは夏休み明けのシーズン後半戦再開に合わせたタイミングとなる。

    仮に4メーカー側の主張が通れば、シーズン後半11戦にわたりメルセデス製パワーユニットが再検証の対象となる可能性がある。8月23日のオランダGPを皮切りに、勢力図が変化する展開も否定できない。

    技術論争が政治的判断へと移行した今回の一件は、2026年F1の勢力図を左右しかねない重大局面となりつつある。

  • フェラーリF1、2026年F1エンジン規則の“サンドバッグ論”を一蹴

    フェラーリF1、2026年F1エンジン規則の“サンドバッグ論”を一蹴

    スクーデリア・フェラーリは、2026年F1パワーユニットに導入される新たな救済制度を巡り、一部でささやかれている「意図的に性能を隠す(サンドバッグ)」可能性を明確に否定した。

    2026年F1ではエンジン開発が凍結される一方で、性能面で後れを取ったメーカーに対しては、シーズン中の追加開発を認める新制度が導入される。フェラーリのエンジン責任者エンリコ・グアルティエリは、この仕組みについて「十分に定義されており、悪用される心配はない」との認識を示している。

    新制度ADUOへの評価
    FIAは2026年F1から「追加開発・アップグレード機会(ADUO)」と呼ばれる制度を導入した。これは、メルセデス、フェラーリ、レッドブル・フォード、ホンダ、アウディの5メーカーを対象に、シーズン進行率25%、50%、75%の時点で性能測定を行い、遅れが確認された場合に限り追加開発を認めるというものだ。

    この制度について、グアルティエリは次のように語っている。

    「このADUOのメカニズムは、シーズン中に追加のアップグレードや開発機会を得られるというものだ」

    「これは我々全員にとって新しいプロセスだ。FIAにとっても新しく、パワーユニットメーカーにとっても新しい。だが、何が許されているのかという定義は非常によく定められていると感じている」

    「当然、実際の結果や運用には慣れるまで時間がかかるだろう。しかし、この仕組みが最終的に目指している目的に対しては、十分に堅牢だと考えている」

    「現時点では、我々はこのプロセスに完全に納得している」

    さらに、制度の運用についてはFIAと継続的に連携していることも明かした。

    「必要であれば、常にFIAと連絡を取り合っている。ただ、今のところ特に問題はない」

    サンドバッグの懸念を否定
    この制度については、将来的な開発優遇を狙って意図的に性能を抑える、いわゆる「サンドバッグ」が起こり得るのではないかという指摘もある。しかし、フェラーリはその懸念を共有していない。

    グアルティエリの発言からは、ADUOが十分に細かく規定されており、制度を“ゲーム化”する余地は小さいという自信がうかがえる。

    スクーデリア・フェラーリ F1 エンジン

    持続可能燃料への対応
    2026年F1パワーユニットでは、電動化の拡大に加え、完全な持続可能バイオ燃料の使用が義務付けられる。これについてもグアルティエリは、フェラーリにとって本質的な変化は限定的だと説明している。

    「新しい燃料、つまり先進的な持続可能燃料について言えば、最終的な燃料組成という意味では、大きな変化ではない」

    「結局のところ重要なのは分子そのものと、その分子が持つ性質だ。燃料は従来とほぼ同じ考え方で設計されている」

    「エンジンが求める特性自体は大きく変わらない。つまり、燃料設計は以前使っていたものとかなり似ている」

    一方で、これまでとの大きな違いは供給プロセスにあるという。

    「大きく変わった点は、燃料がサプライチェーンや原料に関する制約を満たさなければならないことだ。これは持続可能性の観点から求められている」

    「性能や効率だけでなく、原材料の出所まで考慮する必要があり、それが我々と燃料サプライヤーの燃料設計の進め方を変えた」

    フェラーリは、新制度と新燃料の双方に対し、現時点では冷静かつ前向きな姿勢を示している。2026年F1のパワーユニット競争において、制度面での“抜け道”よりも、純粋な開発力が問われることになりそうだ。

  • F1エンジン圧縮比論争 メルセデスのライバル勢が開幕前の規則変更を画策

    F1エンジン圧縮比論争 メルセデスのライバル勢が開幕前の規則変更を画策

    メルセデスのライバル陣営が、2026年F1シーズン開幕戦となるオーストラリアGPまでに、パワーユニットの圧縮比に関する規則変更案をまとめようとしていることが分かった。

    ただし、仮にメーカー間で合意に達したとしても、短期間で新規則を施行するにはFIAとFOMの支持が不可欠であり、その実現性は現時点では不透明だ。

    問題の発端は、圧縮比の上限を16:1と定めた現行レギュレーションの解釈にある。規則では、圧縮比の適合チェックは「常温状態」で行うと明記されており、メルセデスがエンジン稼働時、すなわち高温状態ではより高い圧縮比で運用できる手法を見出した可能性があると、ライバル側は疑念を抱いている。

    ここ数週間、メルセデス以外のメーカー間では、圧縮比をエンジン高温時に測定する新たな検査手順を導入できないか協議が続いてきた。今週に入ってからもFIAとの会合が2度行われ、月曜日には技術専門家会合、木曜日にはPUアドバイザリー委員会(PUAC)が開催された。

    一部では、これらの会合を経て新たな検査方法がシーズン開幕から導入されるとの報道もあったが、複数の関係者は「現行規則と検査方法は変更されていない」と否定している。それでも舞台裏では、ライバル勢が規則改定に向けた動きを加速させている。

    4メーカー結集で“即時改定”の条件が整う可能性
    関係者によると、ライバル陣営の狙いは、エンジン高温時に圧縮比を測定する新手順についてメーカー間で合意し、その案をPUACに提出して投票にかけることだ。早ければオーストラリアGP前の導入を目指しているという。

    検討されている方法には、走行中の車両にセンサーを装着して計測する案や、ガレージ内でエンジンが作動温度に達した状態で測定する案などが含まれている。

    注目すべきは、当初からこの問題に強く反発し、FIA宛てに共同書簡を提出していたフェラーリ、アウディ、ホンダに加え、レッドブルも支持に回る可能性が浮上している点だ。4メーカーが足並みを揃えれば、即時の規則変更に必要とされる「スーパーマジョリティ」の条件を満たすことになる。

    レッドブルは、メルセデスと同様の解釈で規則から利益を得られる可能性があると見られてきたが、期待した成果を引き出せなかったため、この抜け道を封じる側に回った可能性も指摘されている。

    PUACの規定では、パワーユニット規則の即時かつ重要な変更には、5メーカー中4社の賛成に加え、FIAとFOMの支持が必要だ。通常、FIAとFOMは同じ投票行動を取ることが多く、両者が分裂するのは極めて稀とされる。

    これまでの流れを見る限り、FIAは一貫して「圧縮比は常温で測定する」というメルセデス側の解釈を支持してきた。2026年のPUレギュレーションも、10月16日の改訂でその点が強調されている。

    エンジン F1

    ホモロゲーション目前 規則変更は事実上“時期尚早”か
    メルセデス代表のトト・ヴォルフは、オーストラリアGPでライバルが抗議に踏み切る可能性について問われ、「パワーユニットは合法だ。規則の文言にも、検査方法にも合致している」と主張している。

    「これはF1以外のエンジンでも一般的な測定方法だ。我々はFIA、そして会長の見解を踏まえ、現行規則が明確だと考えている。抗議については判断できないが、我々は揺るがない立場だ」と述べた。

    仮にFIAが開幕直前に測定方法を変更する判断を下せば、勢力図に大きな影響を及ぼす可能性がある。だが、パワーユニットの最終ホモロゲーションは3月1日に控えており、設計変更の余地はほぼ残されていない。

    そのため、ライバル勢が望むような即時改定が実現する可能性は低く、仮に方向転換があったとしても、早くて2027年からの適用になるとの見方が強い。

    ヴォルフは、他チームがこの問題に過度なエネルギーを割いていることに不満を示し、「他チームのことより自分たちに集中すべきだ。圧縮比だけでなく、他の点でもFIAとのコミュニケーションは常に前向きだった。規則は非常に明確だ」と語っている。

  • ランド・ノリス「2026年F1はもっとカオスになる」新レギュレーションが生む混戦

    ランド・ノリス「2026年F1はもっとカオスになる」新レギュレーションが生む混戦

    2026年F1レギュレーション下では、レース展開がこれまで以上に「カオス」になる可能性がある。そう語るのは、現ワールドチャンピオンのランド・ノリスだ。新世代マシン特有のエネルギーマネジメントが、順位の入れ替わりを激しくすると見ている。

    2026年型マシンは、バッテリー要素への依存度が大きく高まっている。一方で、そのバッテリーは走行中に枯渇し、常に回生が必要となる。

    結果として、ラップ中にブーストを使い切る場面が生まれ、エネルギーに余裕のあるライバルに攻撃されやすくなる。

    「余分なスピードがあれば、より多くの動きが見られるようになる」とノリスは、今週の囲み取材で語った。

    「でも、そのあとにそのドライバーは、これまで以上に守らなきゃいけなくなる。それが、もっとカオスを生む。それは、皆さんにとっては最高だと思う」

    ブースト次第で“あり得なかった”追い抜きが発生
    ノリスは、ストレートでの追い抜きが容易になるだけでなく、これまでほぼ不可能だった場所でもオーバーテイクが起き得ると指摘する。

    「基本的に、誰がいつブーストボタンを使うかで、かなりカオスなレースになると思う」

    「バルセロナでも、バッテリーをあまり使わないストレートがいくつもある。例えばターン5からターン7までの短い区間だ」

    「でも、そこでブーストを使えば、かなりの馬力を得られる。そうすると、普通は絶対に見ないような形でT7に飛び込んでオーバーテイクできる」

    ただし、その代償も大きい。

    「問題は、そのあとT10までが最悪になることだ。だから、これまでとは違う場所で相手にプレッシャーをかけられるし、ある意味で、より良い形でレースを作れる可能性がある」

    ランド・ノリス マクラーレン F1 レギュレーション

    高速チェスのような駆け引き
    エネルギー残量の増減によって順位が頻繁に入れ替わる状況は、ドライバーに高度な判断力を求める。どこで回生し、どこで使うのか。その選択が勝敗を分ける。

    メルセデスのキミ・アントネッリも、コクピット内での戦略思考が重要になると語る。

    「他のドライバーと戦いながら、どうエネルギーを使うか。その点は本当に大きなステップだ」

    「今年は、すごくオープンな考え方でシーズンに入る必要があるし、ある意味では、かなりクリエイティブでいないといけない」

    「特にバトル中は、エネルギーでいろんなことができる。チェスをしているような感覚だけど、スピードチェスみたいなものだ。ひとつひとつの手を考える時間はないけど、常に相手より2手先を考えていないといけない」

    ドライバーの力量がより問われる時代へ
    ノリスもまた、ドライバーの対応力がこれまで以上に重要になると同意する。

    「予選の1周でも、レース中でも、ドライバーがこれらをどう扱って、どうコントロールするか、その重要性は確実に高まっている」

    「特にオーバーテイクの準備は、かなり複雑になると思う」

    「以前は、とにかく速く走って、ダーティエアを避ければよかった。バッテリーを効率よく溜めるのも、かなりシンプルだった」

    「でも今は、バッテリーを使い切ると、大きくタイムを失う。特にストレートでは、その影響がかなり大きい」

    「だから、もっとカオスなレースになると思うし、ドライバーは、起こり得るあらゆる状況を常に把握していないといけなくなる」

    まだ確信は持てず
    ノリスは、2026年型マシンのいくつかの特性、特にパワーの立ち上がりの鋭さには手応えを感じているという。

    「間違いなく、よりパワフルに感じる。今はストレートの途中でデプロイが止まるけど、もし最後まで使えたら、簡単に時速380キロくらいには達すると思う」

    「つまり、マシン自体は、もっと多くのことができる。もしF1マシンを完全に解放したら、さらにとんでもない領域に行けるはずだ」

    一方で、バルセロナでのハンドリング面の印象については、まだ判断を保留している。

    「運転の仕方という意味では、少しF2カーに近い感覚がある。それが好きかどうかは、正直まだ分からない」

    「バルセロナでは、4速や3速のコーナーが多くて、開けていて、幅も広い。でも市街地コースや、もっとバンピーで低速なトラックではどうなるのか。その答えは、まだ出ていない」

    「その疑問には、バーレーンが答えてくれると思う」

  • レッドブルF1、2026年PU規則に警鐘「エンジンの優位が固定化される恐れ」

    レッドブルF1、2026年PU規則に警鐘「エンジンの優位が固定化される恐れ」

    レッドブルは、2026年F1パワーユニット・レギュレーションが初期の勢力図を固定化してしまう危険性をはらんでいるとして、FIAのホモロゲーション制度に警鐘を鳴らした。

    2026年F1バルセロナ・シェイクダウンが終盤を迎えるなか、レッドブル・フォード・パワートレインの責任者ベン・ホジキンソンは、現行のホモロゲーション枠組みが、序盤で優位に立ったメーカーを意図せず利する可能性があると指摘する。

    パドック内では、メルセデスがすでに明確なベンチマークを築きつつあるとの見方が広がっている。

    「個人的には、ホモロゲーション制度は撤廃して、制限なしで全力で競争したい。それが本音だ」とホジキンソンは語った。

    「すでにコストキャップもダイノ(エンジンベンチ)の稼働制限もある。制約としては十分に足りていると思う」

    ホジキンソンは、パワーユニット開発がシャシー開発とは根本的に異なる時間軸で進む点が、規則策定側に十分理解されていないと強調する。

    「ルールを作る側が完全には理解していないと思うのは、パワーユニットのアイデアを成熟させるまでの時間は、シャシーよりもはるかに長いということだ」と説明した。

    「何かを変更する場合、単に2台のマシンをアップデートするわけではない。エンジンプール全体、つまり最大12基のエンジンを更新する可能性がある。それには時間がかかる」

    さらにホモロゲーション規則は、技術的なリスクテイクを抑制する方向に働くとも述べている。

    「完全に証明されていないものに賭けることはできない。それをやれば、非常に厳しい立場に追い込まれる」とホジキンソンは語る。

    「部品によっては製造に12週間、検証に同程度の時間、さらにレース用エンジンプールに投入するまでにも同じくらいの時間が必要になる」

    エンジン F1 レッドブル

    その結果、新しいパワーユニットのコンセプトが実際にレースで使える状態になるまで、半年以上、最長で36週間を要することもあるという。

    「こうした理由から、もし開幕戦の時点でパワーユニットに差があれば、他が追いつくまでには相当な時間がかかることになる」とホジキンソンは警告した。

    この発言は、バルセロナでの走行を通じてメルセデスが頭一つ抜けた存在と見られている状況と重なる。2014年のハイブリッド時代初期を想起させるとの声も出ている。一方で、デビューイヤーとなるレッドブル・フォードの新パワーユニットも、水面下では好印象を残しており、チームが公の場で期待値を抑えているのとは対照的だ。

    ウィリアムズのチーム代表ジェームス・ボウルズは、レッドブルの取り組みを「見事な仕事だ」と評価している。また、一部で囁かれたオーバーヒートの噂についても、実際にドライバーがサーキットで走行を重ねることで打ち消されつつある。

    レーシングブルズで同ユニットをテストしたリアム・ローソンも、手応えを口にした。

    「信頼性は良好だ。そこはクリアできたと思う」と、ローソンはバルセロナで語っている。

  • 2026年F1レギュレーション解説:アドバンスト・サステナブル燃料とは何か

    2026年F1レギュレーション解説:アドバンスト・サステナブル燃料とは何か

    2026年F1は、パワーユニットの刷新、新しい空力思想、スポーティングレギュレーションの改定など、過去10年以上で最大級の変革を迎える。その中で、意外と注目度が高くないのが「アドバンスト・サステナブル燃料」だ。

    しかしこの変更は、技術的にも思想的にも極めて大きな意味を持つ。しかも成功の尺度は、皮肉なことに「誰も気づかないこと」にある。

    なぜF1は今、サステナブル燃料に踏み切るのか
    F1は2030年までに「ネット・ゼロ」を達成するという明確なコミットメントを掲げている。そのための取り組みは、マシンそのものだけでなく、ガレージ、パドック、放送センターの電力供給、使い捨てプラスチックの禁止など、多岐にわたる。

    アドバンスト・サステナブル燃料の導入は、その全体像の一部に過ぎない。しかし、F1が「走る広告塔」として世界に与える影響を考えれば、その象徴性は非常に大きい。

    F1は常に基準を示す存在であり、持続可能な燃料へと完全に舵を切ること自体が、強いメッセージとなる。

    アドバンスト・サステナブル燃料とは何か
    F1で使用されるアドバンスト・サステナブル燃料は、いわゆるeフューエルだ。原料には以下のような先端的なソースが使われる。

    ・大気中や産業排出から回収されたCO2
    ・都市廃棄物
    ・食料と競合しない非食用バイオマス
    ・これらを組み合わせたもの

    化学者は、燃料ブレンドに使う分子を精密に選び出し、厳格なサステナビリティ基準を満たすよう設計する。重要なのは、この燃料には原油由来の成分が一切含まれていない点だ。

    本当に環境に優しいのか
    サステナブル燃料の製造は、現時点ではエネルギー集約的なプロセスになることも多い。ただし、生産規模が拡大すれば効率は大きく改善すると考えられている。

    F1向け燃料の条件として、製造プロセスは再生可能エネルギーによって賄われなければならず、化石燃料由来の電力は認められない。また、独立機関による認証が必須となる。

    例えばバイオマス由来の燃料であれば、食料生産と競合する作物ではなく、廃棄バイオマスを使用することが条件とされている。

    エンジンは専用設計が必要になるのか
    答えはノーだ。これらの燃料は「ドロップイン燃料」と呼ばれ、従来の化石燃料と置き換えて使用できるよう設計されている。

    エンジン側に特別な改造は必要なく、市販車でも使用可能な性質を持つ。実際、過去には歴史的F1マシンを用いたサステナブル燃料のデモ走行も行われてきた。

    もちろん、F1で使用される燃料は常にその時代のエンジンに最適化されている。12年間使われた従来世代のパワーユニットでは、燃料技術は成熟し、性能差を生みにくくなっていた。

    しかし2026年は新世代パワーユニットの導入年だ。仮に化石燃料を使い続けていたとしても、燃料開発は重要な競争領域になっていたはずであり、サステナブル化によってその難易度はさらに跳ね上がる。

    燃料 F1

    性能は化石燃料と同等なのか
    正直なところ、まだ完全な答えは出ていない。

    エネルギー密度という点では、化石燃料は非常に優れており、サステナブル燃料が初年度から同等の性能を持つのは簡単ではない。しかし、当初は「ほぼ同等」のレベルに近づき、その後急速に進化していくと見られている。

    さらに、2026年のパワーユニットでは、回生された電気エネルギーが全体出力の約50%を占めるため、燃料単体の差がそのままパフォーマンス差になるとは限らない。

    すでに下位カテゴリーではサステナブル燃料が導入されており、パフォーマンスへの悪影響は確認されていない。

    これまでのF1燃料との違い
    F1はここ数年、E10燃料、つまりエタノール10%混合燃料を使用してきた。これは重要なステップではあったが、2026年の変更は次元が異なる。

    一方で、マシン以外のF1運営では、すでに多くの場面でサステナブル燃料が使われている。チームの発電機やフォークリフト、物流トラックなどがその例だ。

    特定のグランプリでは、パドック全体を太陽光と植物油由来燃料で賄う試みも行われ、実用性が示されている。

    燃料使用量の測定方法も変わる
    2014年以降、F1では燃料流量とレース全体の使用量に制限が設けられてきた。2026年も制限は残るが、考え方が変わる。

    これまでは「質量(kg/h)」が基準だったが、2026年からは「エネルギー量(MJ/h)」が基準となり、上限は3000MJ/hに設定される。

    計算は極めて複雑だが、車載電子システムが事前に認証された燃料データを基に処理する。レース中に抜き取られる燃料サンプルは、事前登録された指紋データと照合され、厳格に管理される。

    この技術は市販車に活かされるのか
    答えはイエスだ。それが最大の目的のひとつでもある。

    F1は長年にわたり「公道に存在し得る燃料」を使うことを原則としてきた。2026年の燃料も、研究室で生まれた最先端技術ではあるが、成分やオクタン価は市販燃料と大きくかけ離れたものではない。

    蒸留特性、清浄剤、オクタン設計など、F1で培われる知見は、将来のロードカーや物流車両に直接フィードバックされていくことになる。

    2026年のアドバンスト・サステナブル燃料は、静かだが確実に、F1とモビリティの未来を変えていく。