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  • F1スペインGP:タイヤ戦略とマドリンクの注目ポイント「今季最大の垂直荷重」

    F1スペインGP:タイヤ戦略とマドリンクの注目ポイント「今季最大の垂直荷重」

    2026年F1第14戦スペインGPで、マドリードの新サーキット「マドリンク」がF1世界選手権デビューを迎える。ピレリは、全長550mのバンク付きコーナー「モニュメンタル」が、今季のF1カレンダーで最も大きな垂直荷重をタイヤに与えるコーナーになると分析している。

    マドリンクは市街地と常設区間を組み合わせた全長5.416km、22コーナーのコースだ。

    タイヤにかかるエネルギーという観点ではF1カレンダーで上位5サーキットに入る厳しさとされ、初開催だけに金曜フリー走行で得られる実走データが週末の戦略を大きく左右することになる。

    全長550mの「モニュメンタル」が最大の難所
    マドリンク最大の特徴となるのが「モニュメンタル」と呼ばれる全長550mのターンだ。最大24%のバンクを備え、その長さと傾斜によって非常に大きな負荷がタイヤにかかる。

    ピレリによれば、マドリンクはタイヤに入力されるエネルギーの面でF1カレンダーのなかでも上位5コースに位置し、横方向の負荷はバルセロナやシルバーストンに匹敵する。

    なかでもモニュメンタルは、バンク角だけでなくコーナーそのものが長いことから、今季のF1カレンダーで最も高い垂直荷重を発生させるコーナーになるという。

    さらに、この特殊なレイアウトはタイヤのグリップという面でも大きな課題をもたらす。モニュメンタルをどのようなラインで攻略するかについては、その次のコーナーへの進入でどれだけ攻めることを優先するかによって、ドライバーごとに異なるアプローチが見られる可能性がある。

    ハードC2 ミディアムC3 ソフトC4を選択
    ピレリはF1スペインGPにC2をハード、C3をミディアム、C4をソフトとして持ち込む。

    スタート/フィニッシュラインからターン1まではわずか約200m。第1セクターは非常に高速で、その後はバンクの付いたターン12を含め、中低速コーナーが連続するセクションへと入っていく。

    ラップ終盤には、バクー市街地サーキットで見られるような90度コーナーが複数配置されており、ひとつのコースのなかに異なる性格を持つ区間が組み合わされている。

    スペインGP F1 マドリンク

    ピレリは3年前からシミュレーションを開始
    ピレリがマドリンクでタイヤにかかる負荷を分析する作業を開始したのは3年前だった。

    サーキット設計者から最終レイアウトに関する最初の情報が提供されると、ピレリはシミュレーションツールを使用してF1マシンが走行すると予想されるラインを特定。そこからタイヤに加わる負荷を算出した。

    サーキット完成後にはピレリのエンジニアが現地を訪れ、路面のマクロおよびミクロの粗さを測定。そのデータを用いてシミュレーションをさらに精密化し、各チームが初開催のF1スペインGPに備えるための技術資料を作成して共有した。

    新舗装は非常に滑らか グリップは低め
    マドリンクのアスファルトは非常に滑らかで、路面が生み出すグリップは比較的低いと予想されている。

    そのため、新しく舗装された路面に残りやすいほこりや油分を除去する目的で、高圧のウォータージェットによる処理が施された。これはシンガポールなど、ほかのF1開催地でも採用されている方法だ。

    新しい路面という不確定要素に加えて、実際のF1マシンによる事前テストが行われていないことも、チームにとって大きな課題となる。

    各チームは金曜のFP1で初めて実際のタイヤ挙動やデグラデーションを確認し、その結果をもとに残りの週末の走行プログラムを組み立てることになる。

    ソフト側のコンパウンドでデグラデーションが大きいことが判明した場合、決勝に向けてハードタイヤを温存する戦略を採用する可能性もある。

    高低差26m 標高約700mまで上昇
    マドリンクには高低差も存在する。コース最高地点はターン7で、標高は約700mに達する。

    ターン6からターン7へ向かう区間には最大8%の勾配があり、約10mの高低差を一気に上っていく。一方、コース最低地点はターン2で、ターン7との標高差は26mとなっている。

    気温については、前年の同じ週にマドリードで最高気温29度を記録している。ただし、サーキット自体が比較的標高の高い場所に位置していることから、ピレリは極端な高温になる可能性は低いとみている。

    マドリードでのF1開催は45年ぶり
    マドリンクでF1世界選手権が開催されるのは今回が初めてだが、マドリード地域でF1スペインGPが行われるのは初めてではない。

    1968年から1981年にかけて、マドリード中心部から約30kmに位置するハラマ・サーキットでスペインGPが9回開催された。

    ハラマで最多勝を記録しているドライバーは2勝のマリオ・アンドレッティで、コンストラクターではロータスが4勝で最多となっている。

    スペインGP全体ではこれまで5つのサーキットで計55回開催されており、ドライバーの最多勝はミハエル・シューマッハとルイス・ハミルトンの各6勝。コンストラクターではフェラーリが12勝で最多を記録している。

    スペインGP

    マドリード限定の表彰台キャップも登場
    ピレリはF1スペインGPに合わせて、マドリード限定デザインの「Podium Cap」も用意した。

    デザイナーのデニス・デコビッチがピレリ・デザインのために手掛けたもので、クラウン部分は全面ホワイト。つばの裏側には、スペインの首都マドリードを象徴するモチーフのひとつである北斗七星の7つの星があしらわれている。

    初開催となるマドリンクでは、チームもピレリも実走データを持たない状態で週末を迎える。滑らかな新舗装、カレンダー屈指のタイヤ負荷、そして今季最大の垂直荷重を生み出す「モニュメンタル」。FP1からどれだけ早く路面とタイヤを理解できるかが、F1スペインGPの勝負を左右する重要なポイントとなりそうだ。

  • キャデラックF1 ボッタスの2027年残留を確約せず 後任候補にオコンと角田裕毅

    キャデラックF1 ボッタスの2027年残留を確約せず 後任候補にオコンと角田裕毅

    キャデラックF1の2027年ドライバーラインナップを巡る動きが活発化している。新チーム代表のマルチン・ブコウスキーは、バルテリ・ボッタスとセルジオ・ペレスの残留を明言せず、特にボッタスのシートが不透明になっている。

    フィンランドからの報道では、ボッタスの後任候補としてエステバン・オコンの名前がモンツァで浮上したという。さらに角田裕毅も候補のひとりとして挙げられており、前日には角田自身がキャデラックのシート獲得に向けて動いていることも伝えられている。

    ブコウスキーが2027年ラインナップの確約避ける
    キャデラックは2026年のF1参戦にあたり、ボッタスとペレスという経験豊富なコンビを起用した。両者は複数年契約を結んでおり、当時の情報では少なくとも2027年まで契約が続くとされている。

    しかし、グレアム・ロードンに代わってチーム代表に就任したブコウスキーは、現在の2人を2027年も起用するかについて明確な保証を与えていない。

    F1イタリアGPが開催されたモンツァでAFPから質問されたブコウスキーは、現在のドライバーについて次のように語った。

    「我々が抱えているドライバーには非常に満足している。経験豊富な2人のドライバーがチームの発展を助けてくれている」

    一方、2027年のラインナップについては明言を避けた。

    「発表することがあれば、そのときに発表する。今の私の優先事項はチームの組織とマシンのパフォーマンスだ」

    キャデラック側は8月の段階では2027年にドライバーを変更する計画はないとの姿勢を示していたものの、「F1では状況は常に変わり得る」とも説明していた。

    ボッタスと新代表ブコウスキーの関係も焦点
    ブコウスキーの発言を受け、フィンランドではボッタスの将来を巡る憶測が再燃している。

    『Ilta-Sanomat』のジャーナリスト、ヤンネ・オイヴィオは、ブコウスキーがキャデラックの体制を再構築していくなかで、ボッタスがシートを失う可能性があると報じている。

    ボッタスは前代表ロードンと親しい関係にあり、ロードン自身について「友人」と語っている。一方、ブコウスキーについては代表交代後、「過去からそれほどよく知っているわけではない」と説明していた。

    対照的に、ペレスはキャデラックで強力な商業的支援を持つとされるだけでなく、チーム側もこれまでその働きを高く評価してきた。

    キャデラックのダン・トウリスは8月、ペレスについて「チームにとって素晴らしい財産」と評価し、残留に強い自信を示していた。ブコウスキーも、レッドブルで長年トップチームを経験したペレスがチームを強くプッシュしていることを高く評価している。

    こうした状況から、仮にキャデラックが2027年にラインナップを変更する場合、ペレスよりもボッタスのシートが対象になるとの見方が強まっている。

    エステバン・オコン

    オコンがボッタス後任候補に浮上
    そのボッタスの後任候補として新たに名前が挙がったのが、現在ハースでF1を戦うエステバン・オコンだ。

    オイヴィオはモンツァで得た情報として、キャデラックを巡るドライバー市場について次のように伝えている。

    「モンツァでは、エステバン・オコンの名前がボッタスの後任候補として挙げられていた」

    オコンは2027年のハースでのシートが保証されているわけではなく、その去就が注目されている。

    キャデラックにとってオコンを検討する理由のひとつとなり得るのが、ブコウスキーとの過去の関係だ。

    2人はアルピーヌで一緒に仕事をした経験があり、オコンが2021年ハンガリーGPで自身初のF1優勝を飾った当時、ブコウスキーはアルピーヌの経営陣に加わっていた。

    ブコウスキーにとって能力や仕事の進め方をすでに把握しているドライバーであり、キャデラックが2027年に変更を検討する場合の候補として名前が浮上している。

    角田裕毅

    角田裕毅も2027年キャデラックF1の候補
    もうひとり、ボッタスの後任候補として名前が挙げられているのが角田裕毅だ。

    角田裕毅はアイザック・ハジャーの負傷に伴うレッドブル陣営のラインナップ再編によってF1オランダGPでレーシングブルズから実戦復帰。続くイタリアGPでは10位に入り、復帰2戦目で今季初ポイントを獲得した。

    さらに今週末のF1スペインGPでもレーシングブルズから出場することが正式に決まっており、2027年のレギュラーシート獲得に向けてアピールする機会を得ている。

    オイヴィオも角田をキャデラックの候補として挙げており、復帰後のパフォーマンスに加え、商業面での支援をもたらす可能性もあると伝えている。

    角田を巡っては、前日にもジャーナリストのジャッキー・マルテンスがPaddock Accessポッドキャストで、キャデラックのシート獲得に向けて実際に動いていると明かしていた。

    マルテンスはボッタスの2027年残留が確定しているとの見方に疑問を呈したうえで、「角田裕毅がそのシートを獲得しようと動いていることは知っている」と語っている。

    異なるルートから相次いで角田とキャデラックを結びつける情報が出てきたことで、2027年のF1復帰を目指す角田にとって、キャデラックが重要な選択肢となっている状況がより鮮明になってきた。

    コルトン・ハータの昇格可能性は後退
    一方、キャデラックの将来的なF1ドライバーとして以前から注目されてきたコルトン・ハータについては、2027年のシート獲得の可能性が後退していると報じられている。

    アメリカ人であるハータはキャデラックにとって自然な候補とみられてきたが、F1参戦に必要なスーパーライセンス取得に向けた状況は厳しい。

    オイヴィオは、F2転向後のハータの苦戦によってスーパーライセンス取得が遠のき、キャデラックのF1シート獲得も難しくなっているとの見方を示している。

    現時点でキャデラックがボッタスの交代を決定したわけではなく、オコンや角田裕毅との契約交渉が正式に確認されたわけでもない。ボッタスとペレスは複数年契約を結んでいるとされ、キャデラックもこれまで2027年の変更を積極的に示唆してはいなかった。

    それでも、新代表ブコウスキーが現在の2人の2027年残留を確約しなかったことで状況は流動的になりつつある。オコンの名前が新たに浮上し、角田についてもシート獲得に動いているとの情報が相次ぐなか、ボッタスのシートを巡る2027年のキャデラックF1のドライバー争いは今後さらに注目を集めそうだ。

  • リアム・ローソン F1初開催マドリンクへ自信「モンツァでいいペースを見つけた」

    リアム・ローソン F1初開催マドリンクへ自信「モンツァでいいペースを見つけた」

    リアム・ローソンは、2026年F1スペインGPで初開催を迎えるマドリンクを前に、前戦イタリアGPでレッドブル・レーシングとともに「いいペースを見つけた」ことが自信につながっていると語った。

    左手首を負傷したアイザック・ハジャーの代役を務めるローソンは、マドリードでもレッドブルから出場する。オランダGP、イタリアGPに続き、今季3戦目のレッドブルでのレースとなる。

    初開催マドリンク「FP1で多くのことが分かる」
    2026年にF1初開催となるマドリンクは、タイトかつ高速なコーナーを備えた新しい市街地サーキットであり、ドライバーとチームの双方にとって未知の挑戦となる。

    ローソンも現時点ではシミュレーターでしかマドリンクを経験しておらず、実際の勢力図については金曜日のフリー走行が始まるまで予想することは難しいと考えている。

    「マドリードは全員にとって興味深い週末になると思う」

    「これまでのところ、僕たちはシミュレーターでしかこのコースを走っていない。だから最初のフリー走行で、実際に僕たちがどの位置にいるのかについて多くのことが分かると思う」

    「ユニークなサーキットだし、バンクのついたコーナーも面白いものになるはずだ」

    リアム・ローソン(レッドブル・レーシング)

    モンツァではPU交換で後方スタート
    ローソンは前戦F1イタリアGPで厳しい週末を過ごした。新しいパワーユニットを投入したことによるグリッド降格ペナルティを受け、後方から決勝をスタートすることになった。

    レースではヒュルケンベルグとの接触によってフロントウイング交換も強いられ、最終的に14位。今季の完走レースでは最も低い順位となった。

    それでも、週末が進むにつれてレッドブルのマシンからペースを引き出せるようになったことを、ローソンはポジティブな材料として捉えている。

    「モンツァは最初から難しい週末だった。エンジン交換によって不利な状況からスタートすることになったから、僕たちに何ができたのかを完全に示すのは難しかった」

    「ポジティブなのは、週末が進むにつれていいペースを見つけられたこと。それがマドリードに向けて僕たちに自信を与えてくれている」

    ハジャーの代役として再びレッドブルのステアリングを握るローソン。全ドライバーにとって未知となるマドリンクでは、シミュレーターで得た経験を実走へとつなげ、モンツァでつかんだ手応えを結果に結びつけられるかが注目される。

  • フェルスタッペン F1初開催マドリンクに“大クラッシュ”警告「ジェッダに似ている」

    フェルスタッペン F1初開催マドリンクに“大クラッシュ”警告「ジェッダに似ている」

    マックス・フェルスタッペンは、2026年F1第14戦スペインGPで初開催を迎えるマドリンクについて、レッドブルのシミュレーターで走行した印象を明かし、「大きなクラッシュ」が起きる可能性があると警告した。

    マドリード市街地に新設されたマドリンクは、壁が迫る高速区間を含む難易度の高いレイアウトが特徴だ。フェルスタッペンは、その性格をF1屈指の高速市街地コースであるジェッダに例え、1周を完璧にまとめることは非常に難しいと語っている。

    シミュレーターでも「非常に難しい」
    フェルスタッペンは自身のシミュレーターだけでなく、レッドブルのF1シミュレーターでもマドリンクを走行しており、すでに新コースの特徴を確認している。

    「自宅でも走ったし、F1のシミュレーターにも入っている」

    「ものすごく難しくなると思う。簡単なコースではない。何周か続けて走っても、ラインを通過したときに『よし、完璧なラップだった』と言うのはいつも難しい」

    マドリンクは完全な新設コースであり、F1ドライバーの大半にとって実車での経験がない状態で週末を迎える。初開催という条件に加え、壁に囲まれた区間では小さなミスが即座に大きな代償につながる可能性がある。

    フェルスタッペンが特に懸念しているのが、速度の高いコーナーと壁との距離だ。

    「本当に難しい。それに、場所によっては大きなクラッシュが起きやすいようにも感じる」

    「ある意味ではジェッダを少し思い出す。高速コーナーがあって、壁がすごく近いんだ」

    サウジアラビアGPの舞台であるジェッダ市街地コースも、高速コーナーが連続する一方でランオフエリアが限られ、コースのすぐ近くに壁が迫ることで知られる。フェルスタッペンは、マドリンクにもそれに近い緊張感があると感じている。

    マックス・フェルスタッペン マドリンク

    F3テストでは2日間で赤旗19回
    フェルスタッペンの警告を裏付けるように、F1に先立ってマドリンクで行われたFIA F3のテストでは、2日間で計19回の赤旗が提示された。

    そのうち11回はバリアへの接触が原因で、10人のドライバーが壁にヒット。ターン3やターン5~7、ターン17など複数の場所で事故が発生しており、特定のコーナーだけではなく、コースのさまざまな場所にリスクが存在することが浮き彫りとなった。

    特にターン7はブラインドの頂点を越えて右へ向きを変える難しい区間となっており、出口側には壁が迫る。また、ターン17周辺も壁に囲まれた90度コーナーが続くセクションへの入口となり、F3テストでは複数のアクシデントが確認された。

    もちろん、F3で赤旗が相次いだことが、そのままF1でも同じ状況になることを意味するわけではない。それでも、フェルスタッペンがシミュレーター上で感じた難しさと、実際のF3テストで起きた出来事は、新コースがミスに厳しい性格を持っていることを示している。

    初開催ならではの未知数も
    さらにF1各チームにとって難題となるのが、実戦データがほとんど存在しないことだ。

    フェラーリは7月にマドリンクでフィルミングデーを実施しているものの、走行距離や使用できるタイヤには制約があり、通常のテストとは性格が異なる。F1フィールドの多くはシミュレーションを頼りに金曜日のフリー走行を迎え、路面のグリップやタイヤの挙動、セットアップの方向性を短時間で見極めなければならない。

    フェルスタッペンにとっても、シミュレーターでの準備と実際のコースを走ることは別物だ。壁が迫る高速区間では、金曜日から限界を探る必要がある一方、わずかなミスがマシンの損傷やセッション中断につながるリスクもある。

    2026年F1スペインGPでは、純粋な速さだけでなく、新しいマドリンクにどれだけ早く適応できるかが重要になる。フェルスタッペンが「ジェッダに似ている」と評した高速コーナーと壁の組み合わせが、初開催の週末でどのようなドラマを生むのか注目される。

  • ラファエル・カマラ ハースF1テストでベアマン超え「唯一の障壁はトヨタ」

    ラファエル・カマラ ハースF1テストでベアマン超え「唯一の障壁はトヨタ」

    ラファエル・カマラが、2027年のF1シート獲得に向けて大きく前進している。ハースがポルティマオで実施したTPC(旧型車テスト)で、現役ドライバーのオリバー・ベアマンが設定した基準タイムを上回ったという。

    フェラーリ・ドライバー・アカデミーに所属する21歳のカマラは、8月末にポルトガルのアルガルベ・インターナショナル・サーキットで行われたハースの3日間のテストに参加。レオナルド・フォルナローリ、平川亮とともに評価を受け、ベアマンが比較対象として走行した。

    ベアマンを上回ったカマラ
    ブラジル人F1ジャーナリストのジュリアン・セラソリによると、カマラは単にベアマンのペースに迫っただけではなく、最終的にそのタイムを上回ったという。

    「ラファ・カマラはハースのテストでベアマンのペースに並んだだけではありません。実際にベアマンより速かったんです」

    セラソリは自身のポッドキャスト『In the F1 Paddock with Ju Cerasoli』でそう説明した。

    「私が聞いた表現をそのまま使うと、『まるでもう1段ギアを持っているようだった』ということでした。テストにはさまざまな項目がありましたが、そのすべてで非常に良かったそうです」

    テスト終盤には、各ドライバーがほぼ同じ条件で3周のアタックを行う比較プログラムが組まれたという。

    「最後に各ドライバーが3周の速いラップを走りました。基本的には同じ条件です。そのとき、ラファはベアマンより速かったんです。ベアマンは基準を作るためにこのテストに参加していました」

    カマラのパフォーマンスについては、ブラジルのgeもベアマンが記録した基準タイムを上回ったと報道。さらにフォルナローリに約0.2秒、平川に0.3秒以上の差をつけたと伝えられている。

    今回使用されたのは2025年型のVF-25であり、ベアマンにとっては前年のF1シーズンを戦った経験のあるマシンだった。一方、カマラにとってハースでのテストは初めてで、ポルティマオでの走行経験もなかった。

    それでも純粋な速さだけでなく、マシンへの適応力やエンジニアへのフィードバックでも高い評価を得たとされている。

    2027年ハースF1シート争いで急浮上
    ハースは2027年のドライバーラインナップをまだ確定していない。

    オリバー・ベアマンは残留する可能性が高い一方、エステバン・オコンの将来は不透明となっており、そのシートを巡って複数の候補が争っている。

    カマラはその有力候補のひとりだ。現在F2に参戦しており、ランキングでは首位ニコラ・ツォロフと11ポイント差の2位につけている。

    さらにフェラーリ側もカマラのF1昇格を強く後押ししている。

    フェラーリのフレデリック・バスール代表は以前、カマラについて、単なる資金面だけでなく旧型F1マシンを使ったテストなどにも多額の投資を行い、F1昇格に向けた準備を進めていることを明かしている。

    今回のハースでのテスト結果によって、その評価はさらに高まったようだ。

    「シートは彼のもの。ただしリスクはトヨタ」
    しかし、セラソリによれば、カマラが2027年のハースF1シートを獲得するうえで、まだひとつ大きな障壁が残されている。

    それがトヨタだ。

    ハースはフェラーリからパワーユニットやギアボックスなどの供給を受ける一方、トヨタとも技術提携を結んでいる。今回のTPCプログラムを拡大できた背景にも、トヨタとの協力関係がある。

    そのため、すでにベアマンというフェラーリ育成出身のドライバーを起用しているハースが、さらにフェラーリ育成のカマラを加入させることに対して、トヨタ側がどのような判断を下すかがポイントになるという。

    「シートは彼のものです。ただし、リスクはトヨタです」

    セラソリはそう説明した。

    「彼らが『ちょっと待ってくれ。フェラーリのドライバーを2人乗せるのか? 我々のスポンサーシップやパートナーシップについて分かっているのか? それなら見直さなければならない』と言う可能性があります」

    トヨタが支援する平川亮も今回のテストに参加しており、ハースのリザーブドライバーを務めている。

    一方、フォルナローリにはマクラーレンの支援がある。つまり、2027年のシート争いは単純なラップタイムだけでなく、フェラーリ、トヨタ、マクラーレンとハースの関係も絡む複雑な構図となっている。

    ラファエル・カマラ ハースF1チーム トヨタ

    カマラは「できることをすべてやった」
    それでも、カマラ自身がコントロールできる部分については、ほぼ最高の結果を残したとセラソリは評価する。

    「ラファはテストで素晴らしいパフォーマンスを見せましたし、非常に優れたスポンサーのパッケージも持っています。だからハースに対して、自分を可能な限り最高のポジションに置いています。彼にこれ以上できることはありません」

    「パドックで多くの人と話しましたが、彼からシートを奪う可能性があるとすれば、トヨタとフォルナローリを巡る動きです。あのテストの後、彼の評価は非常に、非常に、非常に高くなりました。ただ、状況はより複雑になっています」

    ハースが最終的に純粋なパフォーマンスをどこまで重視し、フェラーリとトヨタという2つの重要なパートナーとの関係をどう整理するのか。

    少なくともポルティマオでカマラは、現役のベアマンを基準とした直接比較で自らの速さを示した。2027年のF1デビューに向け、コース上でできるアピールを終えたカマラにとって、残された最大の不確定要素はハースとトヨタの判断になりそうだ。

  • コルトン・ハータ F1参戦遠のく「スーパーライセンスまであと2点」

    コルトン・ハータ F1参戦遠のく「スーパーライセンスまであと2点」

    コルトン・ハータのF1参戦への道が、再び厳しい状況に直面している。キャデラックF1のテストドライバーを務めるハータは、スーパーライセンス取得に必要なポイントについて「まだ2ポイント足りない」と明かした。

    2026年はFIA F2に参戦しながらキャデラックF1でFP1走行を重ねているハータだが、F1イタリアGPでは油圧系のトラブルによって走行がわずか数周で終了。スーパーライセンスポイント獲得に必要な100kmを走破できず、貴重な1ポイントを取り逃した。

    モンツァのFP1で痛恨のトラブル
    ハータにとって、モンツァでの週末は厳しいものとなった。

    F2のフリー走行でクラッシュを喫した後、F1のFP1ではセルジオ・ペレスに代わってキャデラックのマシンをドライブ。しかし、わずか5周を走ったところで油圧系の問題が発生し、コース脇にマシンを止めなければならなかった。

    キャデラックも後に油圧系の問題だったと説明しており、ハータが本格的なプッシュラップを走れたのはわずか1周だった。

    このトラブルは、単にF1マシンでの貴重な走行時間を失ったというだけではない。

    FP1で100km以上を走行するなど所定の条件を満たせば、ドライバーはスーパーライセンスに向けて1ポイントを獲得できる。ハータはこの制度を利用して必要なポイントを積み上げる計画だったが、モンツァでは必要な距離に届かなかった。

    キャデラックで追加走行も「それでは足りない」
    今後、ハータにはキャデラックF1で再び走行する機会が予定されているものの、具体的な日程についてはまだ正式に発表されていないという。

    「キャデラックでの追加走行については、まだ具体的なことは何も発表されていない」

    ハータはそう説明したうえで、モンツァで予定していた走行距離を消化できなかったことが今後の計画にも影響したことを認めた。

    「モンツァで早い段階に走行を終えることになったことで、当然ながら僕たちの計画にはブレーキがかかった。現時点では、もう1回のセッションが予定されている」

    だが、その1回だけではスーパーライセンス取得条件を満たせない可能性が高い。

    追加のFP1走行で必要なポイントをすべて獲得できるのかと尋ねられたハータは、次のように答えた。

    「そうは思わない。僕が把握している限りでは、スーパーライセンスまでまだ2ポイント足りない」

    キャデラックは当初、2026年にハータを4回のFP1で起用する計画を発表していた。FP1はF1経験を積ませるだけでなく、スーパーライセンス取得に向けた重要な機会として位置づけられている。

    F2でもポイント獲得に苦戦
    もうひとつのルートとなるF2での成績も、ハータにとって思うようなものにはなっていない。

    インディカーで実績を残してきた26歳のアメリカ人は、2026年にF2へと舞台を移した。その大きな目的のひとつが、F1参戦に必要なスーパーライセンスポイントの確保だった。

    しかし、シーズンを通じて期待した成績を残せず、モンツァでもF2のフリー走行でクラッシュ。決勝レースもリタイアに終わり、ポイント獲得への道はさらに厳しくなった。

    ハータは現在の状況について、チームのパフォーマンス不足も大きな要因になっていると語った。

    「ほとんどすべての領域で十分な速さがない。それは僕にとってフラストレーションがたまることだ」

    「結果が出なくて、必要なペースを見つけるのも難しい状況はフラストレーションがたまる」

    F2でスーパーライセンスポイントを補うことができれば状況は変わるものの、現在の成績を考えれば簡単な道ではない。

    コルトン・ハータ F1 スーパーライセンス

    2027年もF2継続する考えはなし
    スーパーライセンス取得が不透明になるなか、ハータの2027年の去就にも注目が集まっている。

    キャデラックF1での将来的なレースシート獲得を目指して欧州へ渡ったハータだが、現時点では来季の具体的なプログラムは決まっていない。

    2026年シーズン終了後について尋ねられると、ハータは「待って、どうなるかを見る必要があると思う」と話すにとどめた。

    一方で、ひとつだけ明確に否定した選択肢がある。

    「でも、もう1年F2をやることには興味がない」

    キャデラックF1で追加のFP1を走り、スーパーライセンスポイントを獲得できる可能性は残されている。しかし、モンツァで本来得られるはずだった1ポイントを逃したことで、ハータにはなお2ポイントが必要だという。

    F2での苦戦も続くなか、スーパーライセンスをどのように確保するのか。そして2027年にどこでレースをするのか。キャデラックF1での将来的なレギュラー参戦を目指すハータにとって、残されたシーズンの走行機会がこれまで以上に重要になっている。

  • アストンマーティンF1 キャデラックに直線だけで1秒差 ホンダPUに約50馬力不足説

    アストンマーティンF1 キャデラックに直線だけで1秒差 ホンダPUに約50馬力不足説

    アストンマーティンF1は、2026年F1イタリアGPでホンダ製パワーユニット(PU)の深刻なパワー不足を露呈した。モンツァではストレートだけでキャデラックに1秒以上を失っていたとされ、その出力差は約50馬力に達するとの推測まで浮上している。

    ハンガリーGPとオランダGPで投入されたホンダPUのアップグレードによって一時は改善の兆しを見せていたものの、パワー感度の高いモンツァでは再び弱点が表面化。

    フェルナンド・アロンソとランス・ストロールは予選で最後列に沈み、アストンマーティンにとって厳しい現実を突きつけられる週末となった。

    キャデラックにストレートだけで1秒以上の遅れ
    アストンマーティンは2026年シーズン序盤、完走することさえ難しい状況に苦しんだ。その後、ブダペストとザントフォールトでホンダPUのアップグレードを投入し、オランダGPではアロンソが9位に入り、チームの今季最高成績を記録した。

    しかし、高速のモンツァでは状況が一変した。

    イタリアGP予選でアロンソとストロールはともに最後列。ポールポジションを獲得したピエール・ガスリーからは約4秒もの差をつけられた。

    さらに深刻だったのがキャデラックとの比較だ。アロンソはキャデラック勢最速だったバルテリ・ボッタスから0.8秒遅れ、ストロールは約1秒遅れだった。

    スペイン人ジャーナリストのアントニオ・ロバトは、アストンマーティンがキャデラックに対し、ストレート区間だけで1秒以上を失っていたと指摘した。

    「アストンマーティンについて言えば、少しトンネルの先に光が見えた2レースのあとでモンツァに来た。カレンダー上で最もパワー感度が高いサーキットで、完全な悪夢になった」

    「アストンマーティンのストレートスピードはひどいものだった。予選ではフェルナンドがキャデラックに対してストレートだけで1秒以上、メルセデスに対しては3秒以上失っていた。信じられない状況だ」

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム ホンダF1

    ホンダPUは「約50馬力不足」との推測
    さらにロバトは、パドックではホンダPUの出力不足について具体的な数字まで語られていると明かした。

    「ここではパワー差が50馬力ほどあるのではないかと推測している人たちもいる。50馬力だ。そして何より悪いのは、これには解決策がないということだ。今年については解決策がない」

    2026年からアストンマーティンのワークスパートナーとなったホンダは、ADUO(追加開発・アップグレード機会)の仕組みを利用してPUの性能向上を進めている。

    しかしロバトは、アップグレードによって出力そのものは改善していても、根本的な問題は残されていると説明した。

    「これは僕だけが言っていることではない。渡辺も言っている。確かにADUOによって改善している。つまりパワーユニットは改善されているが、以前と同じアーキテクチャを維持しているため、問題そのものはまだ存在している」

    キャデラックはフェラーリ製PUを搭載しており、現状ではホンダPUより高いパフォーマンスを発揮している。それでも、F1参戦初年度のキャデラックに対してアストンマーティンがストレートでこれほど大きな差をつけられていることは深刻だ。

    エイドリアン・ニューウェイが率いる車体開発陣が改善を進めても、PUそのものの出力不足を空力だけで補うことには限界がある。

    アロンソとストロールはイタリアGPでホンダPUへの不満を表に出した。ホンダ・レーシング(HRC)の渡辺康治社長はドライバーから公然と批判される状況を避けたい考えを示していたが、モンツァではパワー不足が改めて浮き彫りになった。

    ホンダはADUOによる追加開発の機会を得ており、今後どこまで差を縮められるかが焦点となる。アストンマーティンにとって、モンツァでキャデラックにストレートだけで1秒以上を失ったという事実は、2026年型パッケージが抱える課題の大きさを象徴する結果となった。

  • ナイジェル・マンセル 最も愛したF1マシンはFW14Bではなく「1500馬力」のFW11B

    ナイジェル・マンセル 最も愛したF1マシンはFW14Bではなく「1500馬力」のFW11B

    F1世界チャンピオンのナイジェル・マンセルが、自身のキャリアで最も愛したマシンと、最も嫌ったマシンを明かした。

    数々の個性的なF1マシンを経験したマンセルが最高の1台に挙げたのは、タイトルを獲得したウィリアムズFW14Bではなく、ホンダ製ターボエンジンを搭載した1987年のウィリアムズFW11Bだった。

    一方、マンセルが「嫌いだった」と振り返ったのはロータス時代のマシンだ。特にF1史上初のアクティブサスペンションを搭載したロータス92は、直線を走っているだけでも事故につながりかねないほど予測不能だったという。F1.comの企画でマンセルが自身の記憶を振り返り、テクニカルエキスパートのマーク・ヒューズが各マシンの背景を解説した。

    マンセルが最も愛したF1マシン ウィリアムズFW11B
    マンセルが真っ先に名前を挙げたのが、1987年にドライブしたウィリアムズFW11Bだ。

    「何よりも本当に愛していたマシンはFW11Bだった。あれはF1史上最速、あるいは史上最もパワフルなマシンだったと思う。予選用タイヤを履いて1500馬力もあった。頭がおかしくなるようなマシンだったよ」

    FW11Bは、ホンダの1.5リッターV6ターボ「RA167E」を搭載していた。ターボ全盛期を象徴する1台であり、マンセルはその強烈なパワーを「モンスター」と表現する。

    「マーティン・ブランドルが言っていたことはまさにその通りだった。あのマシンは、すべてのコーナーで僕を殺そうとしていた。だから僕はあのマシンを愛していたし、同時に嫌いでもあった。僕を殺そうとしていたからね!」

    「でも、あれをドライブすると本当にモンスターだった。モンスターだよ。マシンから降りて、自分の身体が無事だったときには、それなりにいい仕事をしたんだと分かった」

    FW11Bでマンセルは1987年シーズンに6勝を挙げた。チームメイトのネルソン・ピケを上回る勝利数を記録しながらも、サンマリノGPや日本GPでの事故などもあり、ドライバーズタイトルはピケが獲得した。

    マンセル自身がF1世界王者となるのは5年後の1992年。アクティブサスペンションを備えたウィリアムズFW14Bで圧倒的なシーズンを送り、念願のタイトルを手にした。しかし、純粋に「最も愛したマシン」として選んだのはFW14BではなくFW11Bだった。

    ホンダRA167Eが生み出した圧倒的なパワー
    F1テクニカルエキスパートのマーク・ヒューズによれば、FW11Bは1986年型FW11をベースに低くパッケージングした1987年仕様だった。

    1987年のレギュレーションでは燃料搭載量の上限が220リットルから195リットルへ削減された。そのため燃料タンクを小型化でき、FW11Bではそれに合わせた車体パッケージが採用された。サスペンションにも変更が加えられたが、基本的なコンセプトはFW11を受け継いでいた。

    最大の特徴はホンダRA167Eだった。

    1987年にはターボの過給圧が最大4バールに制限されたが、ホンダはその条件下でも強大な出力を引き出した。ヒューズによれば、RA167Eは過給圧が無制限だった1986年型エンジンを上回るほどのパワーを発揮していたという。

    マンセルが語った「1500馬力」という数字は、当時の予選仕様がいかに極端な領域にあったかを物語っている。耐久性や燃費を重視する決勝仕様とは異なり、予選では短時間の性能を最大限に引き出すセッティングが用いられていた。

    ナイジェル・マンセル ロータス92

    マンセルが嫌ったロータス92「直線でも事故を起こした」
    対照的に、マンセルが最も嫌ったマシンのひとつとして挙げたのが1983年のロータス92だった。

    「ある時期、本当にまったく楽しめず、嫌いだったマシンは、僕たちが開発していた最初のアクティブサスペンションのロータス、92だったと思う」

    ロータス92は、F1で初めてアクティブサスペンションを実戦投入したマシンとして知られる。しかし、その革新的な技術は当初、ドライバーに大きな負担を強いるものでもあった。

    「マシンが僕をコースの外へ放り出して、直線を走っているときでさえ事故を起こす原因になっていた。あれは本当にひどい経験だった」

    ロータス92のアクティブサスペンションは、油圧によって車高や姿勢を制御する先進的なシステムだった。しかし信頼性が十分ではなく、重量増加という問題も抱えていた。

    ヒューズによれば、ロータスはわずか2戦でアクティブサスペンションの使用を断念した。

    ロータス92は過渡期に生まれたつなぎのマシン
    ロータス92が特殊な存在となった背景には、1983年にチームが迎えていたエンジン移行期がある。

    ロータスはこの年からルノー製ターボエンジンの使用を開始し、そのために専用設計された93Tを用意していた。しかし当初、ルノーから2台分のエンジンを十分に供給してもらうことができなかった。

    そこで従来の自然吸気コスワースDFVを搭載するために製作されたのが92だった。

    マンセルはシーズン前半をこのマシンで戦ったが、特にアクティブサスペンション仕様を嫌っていたという。一方、ターボエンジンを搭載した93Tも競争力を発揮できず、両車はイギリスGP以降、ルノーターボを搭載する94Tへと置き換えられた。

    F1デビューを飾ったロータス81Bも「曲がらなかった」
    マンセルがもう1台、嫌いだったマシンとして名前を挙げたのがロータス81Bだ。

    これはマンセルが1980年にF1デビューを果たしたマシンでもある。

    「もう1台は、僕が初めてドライブして、グランプリの予選通過を目指したロータス、81Bだったと思う」

    「僕たちが開発していた通常のロータスより7インチ長くて、長すぎたから素早く曲がらなかった。僕たちが試していたもののひとつだったけど、あれも楽しめなかったね!」

    ロータス81Bは、標準型81のホイールベースを延長した仕様だった。

    当時のロータスはグラウンドエフェクト技術でF1をリードした79の成功を再現しようとしていたが、81は期待された競争力を発揮できず、中団で苦戦していた。

    ヒューズによれば、81が抱えていた空力上の問題のひとつとして、エンジン後端とディフューザーの間隔が小さすぎることが疑われた。そのためホイールベースを延長した81Bが製作された。

    しかし、その変更は別の問題を生んだ。

    車体を長くしたことでマシンはターンインを極端に嫌うようになり、標準型81以上に競争力を欠く結果となった。マンセルが感じた「長すぎて曲がらない」という印象は、マシンの設計上の特徴そのものだった。

    危険さも含めて愛したFW11B
    マンセルの選択は興味深い。最も成功したマシンではなく、最も強烈な体験を与えたマシンを「愛した1台」として選んだからだ。

    1992年のFW14BはマンセルにF1世界タイトルをもたらした歴史的なマシンだった。一方のFW11Bではタイトルを逃している。それでも、1500馬力級のホンダターボを操り、マシンから無事に降りること自体に達成感を覚えた1987年の経験が、マンセルにとって特別な記憶として残っている。

    そして皮肉にも、マンセルが嫌ったロータス92のアクティブサスペンションは、その後F1で急速に進化することになる。マンセル自身も約10年後、完成度を大幅に高めたアクティブサスペンションを備えるFW14Bを駆り、1992年のF1世界チャンピオンに輝いた。

  • マックス・フェルスタッペン 角田裕毅の即戦力ぶりを例示「今のF1マシンは鈍感」

    マックス・フェルスタッペン 角田裕毅の即戦力ぶりを例示「今のF1マシンは鈍感」

    レッドブル・レーシングのマックス・フェルスタッペンは、2026年F1マシンがドライバーの操作に対して「あまりにも鈍感」になっていると批判。その具体例として、角田裕毅がレーシングブルズに乗り換えてすぐに競争力を発揮したことを挙げた。

    BBC Sportの独占インタビューに応じたフェルスタッペンは、新世代パワーユニットのエネルギーマネジメントによって、ブレーキングやスロットル操作でドライバーが差を生み出せる余地が大幅に制限されていると主張した。

    ただし、角田裕毅やリアム・ローソンの能力を否定する意図はないことを強調し、「最速のドライバーは常にトップに出てくる」とも付け加えている。

    「角田裕毅を見てほしい」フェルスタッペンが挙げた具体例
    フェルスタッペンが問題視しているのは、2026年から導入された新世代F1パワーユニットに伴うドライビングの変化だ。

    従来のF1では、より深くブレーキングし、より早くスロットルを開け、高速コーナーでより大胆に攻めたドライバーが、その技量に応じてラップタイムを稼ぐことができた。

    しかし、現在はバッテリーのエネルギーマネジメントがドライビングを大きく左右する。

    「F1の歴史では普通、最も攻めるドライバー、最も遅くブレーキを踏み、より早くスロットルを開け、高速コーナーで攻め込むドライバーが報われてきた。コーナーでその分だけタイムを稼げるからだ」

    「でも今は常に『このコーナーでは少し抑えた方がいいかもしれない。スロットルを開けるのを遅らせよう。あるいは早めにブレーキを踏もう。リフトしよう。そうすればトップスピードが伸びる』といったことを考えている。すごく不自然だ。こんな形であるべきではない」

    その問題を説明する際、フェルスタッペンが具体例として名前を挙げたのが角田裕毅だった。

    「悪く言うつもりはない。それに、ここだけ切り取られないことを願っている。でも裕毅を見てほしい。彼はオランダGPでレーシングブルズのマシンに乗った。それまで一度もそのマシンをドライブしたことがなかったのに、すぐに競争力を発揮した」

    続けて、レーシングブルズからレッドブルへ移ったリアム・ローソンについても言及した。

    「リアムはレーシングブルズからレッドブルに乗り換えて、すぐに競争力を発揮した。それは、今のマシンがドライバーの操作に対して鈍感だからだ」

    フェルスタッペンがここで指摘しているのは、角田やローソンの速さそのものではなく、異なるマシンへ乗り換えた際にもすぐに競争力を発揮できるほど、現在のF1ではドライバーの操作によって生み出せる差が限定されているという点だ。

    実際、フェルスタッペンは直後にドライバーの能力が依然として重要であることを強調している。

    「もちろん、それでも良いラップを走らなければならないし、攻めなければならない。最速のドライバーは常にトップに出てくる。でも、それが本当に、本当に制限されている。何というか、締め付けられているような感じだ。抑え込まれている」

    角田裕毅(ビザ・キャッシュアップ・RB・フォーミュラワン・チーム)

    2026年F1は「不自然」 エネルギーマネジメントを批判
    2026年のF1では、電動側の比率を大幅に高めた新パワーユニット規則が導入された。その結果、ドライバーは純粋にコーナーを最速で走るだけではなく、ラップ全体を通じたエネルギーの回生と使用を考えながら走る必要がある。

    フェルスタッペンは、これによって従来のような「攻めれば攻めるほどタイムにつながる」という関係が崩れていると感じている。

    今季の新規則については以前から批判的で、日本GPではF1を続けることについて「その価値があるのか」とまで口にしていた。

    それでもF1にとどまることを決めた理由を問われると、フェルスタッペンは将来的な改善への期待と、競技そのものへの愛情を挙げた。

    「将来もっと良くなることを願っている。今の状況を受け入れること。そして、このスポーツへの愛情だ。今のドライビングが好きという意味ではない。でも、このスポーツは好きだ」

    「僕はもともと競争することが大好きだ。2030年に向かうこれからの数年間で、良くなっていくことを願っている。今後4年か5年はこのルールなんだから、その中で最大限のことをするしかない」

    次世代F1にはV8復活を要求
    F1はすでに2026年規則の問題に対応するため、ICEと電動側の出力配分を段階的に見直す方向に動いている。それでもフェルスタッペンが2030年以降の次世代パワーユニットに望んでいるのは、さらに大幅な方向転換だ。

    「V8に戻す必要がある。ドライバビリティという点だけでもそうだ。昔のマシンを運転すると、エンジンのレスポンスやドライバビリティがどれだけ違うか想像できないと思う。そして、V8と比べれば今がどれだけひどいものなのかも分かる」

    前年まで使用されていたターボハイブリッド時代のパワーユニットとの比較を問われても、その評価は厳しかった。

    「それもV8と比べればひどかった。V8の方がはるかにいい。もっと自由で、軽い。今のマシンは本当に重すぎる」

    フェルスタッペンが理想とするのは、より小型で軽量なV8エンジンと、限定的な電動システムを組み合わせたF1だ。

    「もっと小さなV8エンジンにして、大幅に軽くした方がいい。バッテリーのサイズも、プッシュ・トゥ・パスのようなものに使える程度まで本当に制限する。でも、通常のパフォーマンス走行には関与させるべきではない」

    ターボについても「理想を言えば、ない方がいい。ターボラグが生じるからだ」と語った。

    フェルスタッペンが求めているのは、最高速度の数字を追求するF1ではなく、ドライバーがマシンを限界まで攻めることで違いを生み出せるF1だ。

    「昔、僕が子どもだったころのV8やV10の感情が好きだった。歩いているとマシンがコースに出ていく音が聞こえて、鳥肌が立った」

    「今みたいに350km/h、360km/hではなく、300km/hだったとしても関係ない。あのマシンから得られる音の感情、振動、それはまったく別次元だ。本当に、あれが戻ってくることを願っている」

    角田裕毅とローソンを例に挙げた発言も、その主張の延長線上にある。異なるマシンへ乗り換えて即座に競争力を発揮した2人を引き合いに出しながら、フェルスタッペンは2026年F1ではドライバーが操作によって違いを生み出せる領域が狭められていると訴えた。

    それでも「最速のドライバーは常にトップに出てくる」と語ったように、角田らの実力を否定したわけではない。フェルスタッペンが問題視しているのはドライバーではなく、その能力を発揮できる余地を狭めている現在のF1のあり方だ。

  • カルロス・サインツJr. F1初開催マドリンクの“マシンキラー”説に疑問「F3の話」

    カルロス・サインツJr. F1初開催マドリンクの“マシンキラー”説に疑問「F3の話」

    カルロス・サインツJr.は、2026年F1スペインGPで初開催を迎えるマドリンクについて、ウィリアムズのジェームス・ボウルズ代表が表現した“マシンキラー”という評価に慎重な見方を示した。

    事前に行われたFIA F3のテストでは2日間で19回もの赤旗が発生し、3台のシャシーと6台のサスペンションが損傷。だが、サインツJr.は、それがそのままF1マシンにも当てはまるかどうかは実際に走ってみなければ分からないと考えている。

    「マシンキラーは今のところF3の話」
    マドリンクではF1初開催に先立ってF3による2日間のテストが実施されたが、そこで相次いだアクシデントが大きな話題となった。

    テストでは計19回の赤旗が提示され、3台のシャシーが破損したほか、6台にサスペンションの損傷が発生。これを受け、ボウルズはマドリンクについて「マシンを壊すサーキット」と警告していた。

    しかし、ウィリアムズのドライバーであり、地元マドリード出身でもあるサインツJr.は、この評価をF1にもそのまま当てはめるのは早いと語った。

    「“マシンキラー”というのは、今のところF3マシンについての話だと思う」

    「F1でも“マシンキラー”になるのかどうかは、これから見てみないと分からない」

    一方で、マドリンクそのものが非常に難しいサーキットになることには疑いを持っていない。

    サインツJr.はすでにウィリアムズのシミュレーターで新コースを走行しており、その難易度は予想以上だったという。

    「はっきりしているのは、非常に複雑で、とてもスペクタクルなサーキットだということだ」

    「シミュレーターで走った後、僕たちはみんな、その複雑さに驚いた。どれだけ難しくなるのかということにも驚かされた」

    カルロス・サインツJr.(ウィリアムズ・レーシング)

    F3テストでは19回の赤旗
    マドリンクの難しさを象徴しているのがF3テストでのアクシデントの多さだ。

    2日間を通じて10人のドライバーがウォールに接触し、ターン5~6の高速シケインやブラインドとなるターン7、ウォールに囲まれたターン17など、特定の1カ所だけではなくコース各所で事故が発生した。

    そのため、F1でもドライバーが限界を探る金曜日のフリー走行から赤旗や黄旗が相次ぐ可能性が指摘されている。

    サインツJr.自身も、F3テストの結果とコースレイアウトを踏まえ、F1スペインGPではセーフティカーや赤旗、予選での黄旗が発生する可能性が高いと予想している。

    最大の特徴「ラ・モヌメンタル」
    マドリンクを象徴するセクションが、大きなバンク角を持つ「ラ・モヌメンタル」だ。

    24%のバンクを備えたこのコーナーでは長時間にわたって高いGがかかり、ボウルズはタイヤだけでなく油圧系を含むマシン全体にとって大きな試練になると指摘している。

    ピレリの分析でも、その負荷の大きさが示されている。ラ・モヌメンタルでタイヤに加わるエネルギーは、同じくバンクを持つザントフォールトのコーナーより20~30%高くなると予想されている。

    それでもサインツJr.は、こうした難しさをマドリンクの欠点とは考えていない。むしろ新しいF1サーキットに独自の個性を与える要素として前向きに捉えている。

    「少なくとも、その点ではキャラクターがあって、難しさのあるサーキットになると思う。ただカレンダーに追加されただけのサーキットではない」

    「もし難しすぎるとか、どこかのコーナーや縁石を変えなければならないということになれば、これから何年かかけて改善していく時間はある」

    マドリンクがF3だけでなくF1にとっても本当に“マシンキラー”となるのか。それともF1ドライバーとF1マシンなら問題なく攻略できるのか。サインツJr.が指摘するように、その答えはF1スペインGPの最初のフリー走行で明らかになりそうだ。