ニコラ・ツォロフは、2027年のF1昇格候補として注目が高まるなかでも、目の前のFIA F2選手権に集中する姿勢を崩していない。19歳のブルガリア人ドライバーは2026年シーズンのF2でランキング首位に立ち、レッドブル・ジュニア・チームの次なるF1候補として存在感を強めている。
シルバーストンではスプリントとフィーチャーレースを制覇するなど、今季ここまで6勝を記録。ランキング2位に20ポイント差をつけている。
周囲では2027年のF1シートをめぐる憶測が膨らんでいるが、ツォロフはレッドブルで受けてきた教育が、こうしたプレッシャーへの対応にも役立っていると語った。
急速に高まるF1昇格への期待
2026年のF2は夏休みに入ったが、ツォロフを取り巻く話題はむしろ熱を帯びている。
カンポス・レーシングから参戦するツォロフは今季6勝を挙げ、シルバーストンではスプリントとフィーチャーレースを連勝。さらに選手権で3連勝という新記録も樹立した。
こうした活躍によって、2027年にF1へ昇格する可能性が取り沙汰されるようになった。それでも本人は、外部の雑音から距離を置くことを意識している。
「もちろん、なるべく距離を置いて、少し自分を切り離すようにしている。周囲の雑音に入り込みすぎると、本当に厄介なことになるからね」
「でも、実際のところかなりうまく対処できていると思う。こういうことが起きるとはまったく予想していなかった、というわけではないから」
ただし、その反響の大きさは想像以上だったという。
「ここまで大きな話になるとは思っていなかった。でも、そうなったものは仕方ない。僕はこれまでやってきたことを続けるだけだ」
「今のシーズンは素晴らしいものになっているし、まだもっとできると思っている。僕たちには、まだ見せられるものがある」
レッドブル加入がもたらした成長
ツォロフにとって大きな転機となったのが、2025年シーズンを前にレッドブル・ジュニア・チームへ加入したことだった。
それ以前にもF1チームの育成プログラムに所属していたが、レッドブル加入後は速さだけでなく安定感も向上。2025年のFIA F3ではラファエル・カマラとタイトルを争い、王座には届かなかったものの、そのパフォーマンスは高く評価された。
そして2026年、F2でタイトル争いをリードするまでになった。
「レッドブルには、こうしたカテゴリーから若手ドライバーを育ててきた素晴らしい歴史がある。僕にとってレッドブル・ジュニア・チームへの移籍は本当に重要だった」
「彼らはあらゆる面で僕をサポートしてくれている。コース外での成長も、コース上でのことも、さまざまな状況への対処方法もそうだ。それはものすごく重要だった」
ツォロフ自身も、加入前後で自分が大きく変化したと感じている。
「昨年の初めからの変化を見れば、僕がかなり成長できたことは分かると思う。だから、このチームの一員でいられることに本当に感謝している」
「彼らも僕にかなり満足してくれていると思うし、いい関係ができている。すべて順調だよ。率直に言えば、僕は今、最高の場所にいると思う」
カンポス代表もF1昇格を後押し
ツォロフのF1昇格を強く支持している人物のひとりが、カンポス・レーシングのチーム代表アドリアン・カンポスだ。
シルバーストンでツォロフが予選5番手から両レースを制した後、カンポスはツォロフがすでにF1で戦う準備ができており、2027年のシートに値すると主張した。
2022年にスペインF4タイトルを獲得した時からカンポスと歩んできたツォロフにとって、その言葉は特別な意味を持つ。
「すごく大きな意味がある。彼がそう言ってくれるとは思っていなかったけど、僕がずっと言ってきたように、僕たちは家族なんだ」
ツォロフは、自身の成功がドライバーだけの力によるものではないことも強調する。
「僕も彼らと一緒に仕事ができることに感謝している。僕のキャリアにとって彼らの存在は大きかったし、彼が僕についてそう言ってくれるのと同じくらい、僕も彼らが僕に違いをもたらしてくれていると感じている」
「マシンをセットアップすることだけじゃない。チーム内に適切な環境を作ることもそうだ。そこは十分に注目されていない部分だと思う」
「マシンについては非常にうまく仕事をしていても、環境がそれほど良くないチームもある。ドライバーを正しい精神状態に置くことができれば、今年の僕たちのような結果につながると思う」
19歳ながら積み重ねた豊富な経験
ツォロフの強みのひとつが、年齢以上の経験だ。
16歳という若さでF3に参戦し、同選手権史上でも最年少クラスのドライバーとなった。F3で3シーズンを経験してからF2へ昇格したため、19歳ながらジュニアカテゴリーで豊富な経験を持っている。
「僕はずっと自分が若いと感じている。ちょっと面白いんだけど、今のF2グリッドでは僕が2番目に若いんだ」
「すごく良かったのは、若いうちに多くの経験を積めたことだ。だから今はいいポジションにいると思う」
「若くて、経験もあって、結果も出せている。それは大きなポイントだし、さらに上へ進む助けになると思う」
F2では数年間の年齢差が外見上は分かりにくいこともあり、ツォロフは自身が実際以上に年長だと思われていると感じることもあるという。
「僕や他のドライバーを見ても、みんな年齢差をあまり意識していないと思う。2歳とか3歳くらいの違いだから、今の年齢だと同じように見える」
「でも、僕がグリッドの平均的な年齢になるまで、たぶんまだ2年くらいある。それを考えると悪くないよね」

リンドブラッドから学んだ「F1ドライバーの仕事」
F2への適応を加速させたもうひとつの要因が、現在レーシングブルズでF1を戦うアービッド・リンドブラッドの存在だった。
ツォロフは2025年シーズン終盤の2大会でF2に昇格し、カンポスでリンドブラッドのチームメイトとなった。F2参戦3レース目となったヤス・マリーナのスプリントでは早くも3位表彰台を獲得している。
当時すでに2026年のF1昇格へ向けて準備を進めていたリンドブラッドから、ツォロフは多くを学んだという。
「昨年最後の2大会でアービッドの隣に入れたことは、間違いなく僕にとって重要だった」
「彼はその時点ですでにF1とかなり密接に仕事をしていたし、アブダビの頃にはF1昇格も決まっていた」
特に印象的だったのは、ドライビングそのもの以上に仕事への取り組み方だった。
「彼にはF1ドライバーとしての仕事の進め方があった。それを見たことで、自分に何が必要なのか、何をすべきなのか、どう準備すべきなのかをより理解できた」
「もし彼が隣にいなかったら、ここまで準備できていなかったと思う。間違いなく彼から学んだし、あの2大会を一緒に戦えたことには感謝している」
2027年F1シートについて「まだ何も決まっていない」
現在のツォロフは、F2ランキング首位を20ポイント差で走り、勝利数は他のどのドライバーの2倍に達している。
当然ながら焦点は2027年のF1昇格へ向かう。しかし、ツォロフによれば、レッドブルとの間で具体的な将来について話し合われた段階にはまだ至っていない。
「もちろん彼らは僕にすごく満足してくれている。でも、何かについて話し合ったわけではないし、明確なものは何もない」
「『今やっていることを続けろ。素晴らしい仕事をしている』という感じだ。でも正直、それ以上のことはあまりない」
その一方で、F1昇格をめぐる注目やプレッシャーに冷静に対応できている背景には、レッドブルの存在があるという。
「レッドブル自身が、今起きているすべてのことに向けて僕を準備してくれた。そして彼らの助けがあるからこそ、こういう結果を残せている」
「でも、まだそれ以上の話をする段階には達していない。今はF2だけに集中している」
ツォロフはF1への意欲を隠してはいない。現在の成績を考えれば、自分にはチャンスを得るだけの資格があるとも考えている。
「僕にとって大きな意味がある。みんなが僕のやっていることを評価して、信じてくれているということだからね」
「僕自身も自分を信じている。今年は本当に素晴らしいシーズンになっているし、チャンスを得るに値すると思っている」
「でも、このスポーツでは何も確実じゃない。だから、これから与えられるすべてのチャンスを生かして、F2に集中することが大事だ。それだけが、僕が次のステップへ進むために本当にできることだから」
2027年のF1ドライバー市場が動き始めるなか、ツォロフにできる最も確実なアピールはF2で結果を残し続けることだ。19歳という若さ、ジュニアカテゴリーで積み上げた経験、そしてレッドブルの育成環境。そのすべてを武器に、まずはF2タイトル獲得という目前の目標を追うことになる。
