F1の2026年第2四半期決算で、売上高が前年同期比38%減、調整後OIBDA(減価償却前営業利益)が61%減となったことが明らかになった。
一見すると大幅な業績悪化だが、主因は中東情勢によるバーレーンGPとサウジアラビアGPの中止や開催時期の変更などにより、第2四半期に実施されたレース数が前年の9戦から5戦へ減少したことにある。
F1のステファノ・ドメニカリCEOは、年間では22~23戦を確保できる見通しを示し、今後はスプリントの増加やプレミアム体験、ライセンス事業などを通じて収益拡大を図る方針を明らかにした。
F1売上高38%減 営業利益は大幅に縮小
F1を傘下に持つリバティ・メディアが発表した2026年第2四半期決算によると、4月から6月までのF1の売上高は7億6400万ドルとなり、前年同期の12億2000万ドルから38%減少した。
営業利益も前年同期の2億9300万ドルから7300万ドルへ大幅に減少。調整後OIBDAは3億6100万ドルから1億3900万ドルとなり、前年同期比61%減を記録した。
ただし、この数字だけでF1の事業そのものが急速に悪化していると判断するのは適切ではない。2026年はカレンダー構成が前年から大きく変化しており、第2四半期に開催されたレース数そのものが大幅に減っているためだ。
2025年第2四半期には9戦が開催されたのに対し、2026年は5戦のみ。レース数は44%減少しており、売上高の38%減は開催数の減少と密接に連動している。
中東情勢と日程変更で第2四半期は4戦減
レース数減少の背景には、開催時期の変更と中東情勢の影響がある。
日本GPは前年より早い3月開催となり、2026年は第1四半期の売上として計上された。また、中東情勢の緊迫化によってバーレーンGPとサウジアラビアGPが中止となり、イモラも2026年のカレンダーから外れた。
その結果、上半期全体でも開催数は2025年の11戦から2026年の8戦へ27%減少した。
上半期のF1の売上高は前年同期比15%減にとどまっており、レース数が27%減少したことを踏まえれば、収益基盤そのものが大きく崩れたわけではないことが分かる。
また、レース開催数の減少は各F1チームへの分配金にも影響した。2026年第2四半期にチームへ支払われた総額は3億1600万ドルで、前年同期の5億1300万ドルから減少した。
上半期では5億ドルとなり、2025年同期の6億2700万ドルを下回っている。
後半戦でレース数回復 年間22~23戦を想定
一方、2026年後半は開催数が増えるため、年間ベースでは財務への影響が縮小すると見込まれている。
第3四半期にはマドリードで開催されるスペインGPを含む7戦が予定されており、前年同期の6戦を上回る。さらにカタールGPとアブダビGPが予定通り開催されれば、第4四半期は前年の7戦に対して8戦となる。
当初中止となったバーレーンGPについても、10月にマレーシアのセパンで開催することで合意しており、失われたレースの一部を補う。
仮にカタールGPとアブダビGPが中止となった場合について、ドメニカリはシーズンを欧州で終える可能性にも言及している。その場合、12月の最終戦候補としてイモラが有力視されている。
こうした対応によって、F1は2026年シーズンを最終的に22戦または23戦で構成し、中東情勢による年間収益への影響を最小限に抑える考えだ。
2027年はF1スプリント増加へ
F1は将来的な収益拡大を目指しているものの、短期的にグランプリそのものを増やす余地はない。ドメニカリによれば、F1カレンダーは2028年まで事実上埋まっているという。
そこで新たな収益源として重視されているのがF1スプリントだ。
スプリントが開催される週末は金曜日と土曜日の集客力が高まるため、プロモーター側にも通常のグランプリ以上の開催料を支払うメリットが生まれる。
ドメニカリは投資家向けの電話会議で、2027年からスプリントの開催数を増やすことを明言した。
「来年はスプリントレースを増やす。何戦になるのかについては、2027年カレンダーを発表するときに知らせる」
「原則はシンプルだ。これは商業的な観点から本当に活用できる、収益源を拡大する機会なんだ」
ただし、全グランプリでスプリントを開催する考えは否定した。開催数を限定することによる希少価値を維持する必要があると考えているためだ。
「商業的な理由だけでどこでも開催するようになれば、商業面で生み出せる価値ではなくなってしまう」
「ただ、将来的に開催数をさらに増やしていくことは間違いない。それは1000%、すでに来年から起きることだ」
1人1万ユーロ超のプレミアム体験も展開
F1はレース開催数だけに頼らない収益拡大にも力を入れている。
若年層や女性ファンの増加に加え、米国ではApple TVへの移行後、総視聴時間が13%増加したという。こうしたファン層の拡大を背景に、ドメニカリはサーキットで提供する高価格帯の商品や体験の拡充を進める考えを示した。
F1のホスピタリティサービス「パドッククラブ」は2026年分が完売しており、2027年のチーム向け割り当てもすでに確定している。このためF1は、既存のパドッククラブとは異なる富裕層向けサービスの開拓を進めている。
ドメニカリは「我々が将来に向けて重点を置いているのは体験型の機会だ」と説明し、通常では購入できないような「お金では買えない」体験を増やしていく方針を示した。
その一例が、ベルギーGPで導入された「Outlap」だ。
LVMHとの協力による高級ディナー体験で、特別に製作されたコンテナ内で12人のゲストが食事を楽しみながらサーキットを周回する。料金は1人あたり1万ユーロ(約182万円)を超え、2027年には他の欧州ラウンドにも展開される予定だ。
ライセンス事業拡大 AIは1社独占にせず
ドメニカリは、ライセンス契約の拡大や既存契約の更新についても、F1のさらなる成長余地があるとみている。
一方、AI分野については、F1全体を1社の公式パートナーに独占させる考えはないという。
「この分野を誰か1社、あるいは単一のパートナーに渡すことは決してない。あまりにも大きな分野だからだ」
「このビジネス領域を分割できることが、我々に多くの機会を生み出している」
2026年第2四半期の売上高38%減、調整後OIBDA61%減という数字は大きいものの、背景にはレース数が前年同期から44%減少した特殊事情がある。後半戦で開催数が回復するF1にとって、より重要なのは年間業績とその先の成長戦略となる。スプリントの拡大、プレミアム体験、ライセンス、AI関連ビジネスなど、グランプリ開催料や放映権以外の収益源をどこまで伸ばせるかが今後の焦点となりそうだ。