ランド・ノリス 2連勝もF1タイトル争いに慎重「今のマシンでは戦えない」

ランド・ノリス 2連勝もF1タイトル争いに慎重「今のマシンでは戦えない」

ランド・ノリスはF1オランダGPで2連勝を飾り、マクラーレンの急速な進歩を印象づけた。しかし、2025年F1王者は自身の好調を額面通りには受け取っていない。

ドライバーズ選手権首位のキミ・アントネッリとの差は83ポイントまで縮まったものの、現状のMCL40ではシーズンを通じてタイトルを争えるだけの力はないと考えている。

その最大の理由が低速コーナーでの弱さだ。ハンガリーGPとオランダGPではマクラーレンの大型アップデートが威力を発揮した一方、次戦イタリアGPの舞台モンツァは長いストレートと低速シケインを組み合わせたまったく異なるコース。ノリスだけでなく、チーム代表のアンドレア・ステラもモンツァを今後のタイトル争いを占う重要な試金石と位置づけている。

2連勝でも「簡単にタイトルを争えるとは言えない」
ノリスは夏休みを挟んでハンガリーGPとオランダGPを連勝。さらに2戦連続でポールポジションを獲得し、選手権首位アントネッリとの差を83ポイントまで縮めた。

しかし、ノリス自身は現在の結果だけを見てタイトル争いへの自信を深めているわけではない。

「『ああ、残りのシーズンは簡単にチャンピオンシップを争える』と言えるほどの自信はない。確かに2戦連続で勝って、2戦連続でポールも獲っている。でも現時点では、チャンピオンシップを争うために必要なマシンを僕は持っていない」

「かなり大きなことを言っているのは分かっている。でも去年、マシンに何が必要なのか、そして自分自身に何が必要なのかを理解した。今の自分がどのレベルにいて、どんなパフォーマンスを発揮できるのかも分かっているし、マシンに何が必要なのかも分かっている」

「これからどんなサーキットが待っているのかも分かっていて、そこで僕たちがもっと苦戦することになるのも分かっている。でも、僕はもっと苦戦したくない」

そのためノリスは、2連勝によってチーム内に安心感が生まれることを警戒している。

「だから僕は自分の役割として、チームが気を緩めたり、少しでも満足したりしないようにしている。これまで以上に取り組まなければならない。チャンピオンシップを勝った過去2年間以上にね」

最大の弱点は低速のタイトなコーナー
ノリスが懸念している最大のポイントは、MCL40の低速コーナー性能だ。

ザントフォールトの予選では、ターン7やターン8をはじめとする高速区間でメルセデス勢を大きく上回った。一方、低速区間では週末を通してタイムを失っていた。

ノリスは、この弱点が土曜日のスプリントでシャルル・ルクレールに2番手を奪われた要因のひとつだったとも考えている。

「間違いなく、低速はまだ僕たちの最大の弱点だ。特にタイトで曲がりくねったところだね」

「もう少し流れるようなコーナーなら、それほど悪くない。ブダペストにも低速コーナーはあるけど、少し開けていて流れがある。低速ではあっても、あそこでは状況が良かった」

「でも、本当にタイトで曲がりくねった場所になると、マシンはそれを好まない」

そしてノリスは、低速性能を改善できれば状況は一変すると考えている。

「この低速域を改善できれば、今シーズンのすべてのレースで勝てるという自信がある。でも改善できなければ、そう信じるのはずっと難しくなる」

アントネッリもマクラーレンの急浮上を警戒
選手権首位のアントネッリも、マクラーレンの進歩を無視できないと認めている。

オランダGPでノリスに次ぐ2位となったアントネッリは、メルセデスがもはや明確な最速マシンではないとの認識を示した。

「間違いなく、僕たちはもうグリッドで明確に最速のマシンではない。少なくとも今日のレースでは、おそらく2番目か3番目だった」

「マクラーレンはものすごく大きなステップを踏んだ。特にハンガリー以降、大型アップデートパッケージを投入してからだ」

アントネッリは選手権首位を維持しているが、2位にはチームメイトのジョージ・ラッセルとフェラーリのルイス・ハミルトンが並び、ともに59ポイント差。ノリスは83ポイント差の4位まで浮上した。

83ポイントは依然として大きな差だが、逆転が数学的に非現実的な数字というわけではない。

前年の同時期、マックス・フェルスタッペンは選手権首位オスカー・ピアストリから104ポイント差をつけられていた。それでもザントフォールト以降のレースでピアストリを合計115ポイント上回り、最終的にはノリスにわずか2ポイント差のランキング2位まで追い上げた。

ノリスにも同様の追い上げが可能かどうかは、マクラーレンが異なる特性のサーキットでも現在の競争力を維持できるかにかかっている。

ランド・ノリスとアンドレア・キミ・アントネッリ

次戦モンツァがマクラーレンの本当の試金石
次戦イタリアGPの舞台モンツァは、ザントフォールトやハンガロリンクとは正反対に近い特性を持つ。

長いストレートに加え、低速シケインでの強いブレーキングが要求される。低速コーナーだけでなく、比較的大きな空気抵抗によってストレートスピードにも課題を抱えてきたマクラーレンにとって、厳しい条件が重なる可能性がある。

ステラもモンツァでのパフォーマンスを重視している。

「ザントフォールトとハンガリーで求められたものを考え、その次にモンツァで求められるものを考えれば、まったく異なる領域に入る」

「もしモンツァでも我々の改善を確認できれば、残りのシーズンについてある程度楽観的に見ることができると思う。ただ、まずモンツァへ行き、長いストレートで我々のマシンが良いパフォーマンスを発揮できるかを確認する必要がある」

「ドラッグが必ずしも我々のマシンの強みではないことは分かっている。また、例えばブレーキングが多いことも必ずしも強みではない。次戦に向けて確認しなければならないことはたくさんある」

メルセデスも後半戦のアップデートを準備
仮にマクラーレンがモンツァでも速さを証明したとしても、ライバルが現状のまま留まっているわけではない。

メルセデスは今季前半、フェラーリやマクラーレンと比較して大型アップデートの投入回数を抑えてきた。チーム代表のトト・ヴォルフは、予算上限の余裕がなくライバルと同じペースで開発パーツを投入できないと説明する一方、年間を通じた予算配分を意図的に調整していることも明らかにしている。

「我々には、シーズン前半のフェラーリやマクラーレンと同じペースでマシンに開発パーツを投入できるだけの資金がない」

「以前にも話したが、最大のアップデートをいつ投入できるのか、そしてチャンピオンシップポイントをどう最適化するのかという計算に基づいて、シーズン全体にできるだけ均等に配分しようとしている。ただ、我々にできることをやるしかない」

「だからこそ開発競争なんだ。アップデートを投入すれば、トップチームならそれぞれ少なくともコンマ数秒を得る。それが我々の失っている部分だ」

「だから、これからはシーズン序盤より厳しくなるだろう。ただ、シーズン終盤になっても彼らが今と同じだけのものをマシンに投入できるかどうかは分からない。序盤から中盤に多く使い、終盤には少なくするという異なる戦略を採っているチームもあるかもしれない」

ヴォルフ「脅威なのはノリスだけではない」
ヴォルフもノリスの急浮上を警戒しているが、メルセデスにとって脅威なのはマクラーレンだけではないと考えている。

「もちろん脅威は十分に認識している。ノリスだけではない。ルイスとの差を見ても50ポイントほどしかない。それも我々が心配しなければならないことだ」

「これは厳しい戦いになる。もっと接近する可能性もある。だから毎セッション、毎週末、最適な仕事をしなければならない。我々は組織としてレースに勝てるだけの力を持っていると思っている」

一方でヴォルフは、マクラーレンが連勝したハンガロリンクとザントフォールトは、過去にも同チームが高い競争力を示してきたサーキットだったと指摘する。

「彼らはここ2戦で勝った。ただ、その2つは過去数年も彼らが非常に強かったサーキットだ。だから次の数戦で我々が勢いを取り戻せるか見てみよう」

ノリスの2連勝によって、2026年F1タイトル争いの構図は確実に変わり始めている。ただし、その勢いがマクラーレンの真の総合力を示すものなのか、それともハンガロリンクとザントフォールトというMCL40に適したコース特性によるものなのかは、まだ判断できない。

長いストレート、低速シケイン、強いブレーキングという現在のマクラーレンが苦手とする要素が揃うモンツァは、その答えを示す最初の舞台となる。そこでMCL40が再び優勝争いに加われれば、83ポイント差からのノリスのタイトル防衛は、現実的なシナリオとして一段と存在感を増すことになる。