アストンマーティンにとって、2026年F1シーズン前半戦は期待とは大きく異なる厳しいものとなった。新レギュレーションとホンダとのワークス体制が始まった重要なシーズンだが、11戦を終えた段階でチーム選手権では下位に低迷している。
それでも、サマーブレイク直前のハンガリーGPで投入した大規模アップデートには明確な前進が見られた。
フェルナンド・アロンソとランス・ストロールが初めて純粋なペースで中団勢と争えるところまで接近し、後半戦に向けてようやく反撃への足掛かりをつかんでいる。
ベストリザルト:アロンソのモナコGP 10位
アストンマーティンのシーズンは、開幕前から厳しい状況にあった。AMR26はシャシーとホンダ製パワーユニット(PU)の双方に問題を抱え、プレシーズンテストでは全チーム中最少の走行距離に終わった。
開幕戦オーストラリアGPでも慢性的な振動に悩まされ、アロンソとストロールは十分な周回を重ねることができなかった。その後、対策は段階的に進められたものの、ライバルとのパフォーマンス差は依然として大きかった。
そのなかで結果を残したのがモナコGPだった。アストンマーティンは積極的な戦略を採用し、展開にも恵まれたことでアロンソが10位に入り、今季初ポイントを獲得した。
アロンソはこの結果について、苦しい状況で作業を続けてきたチーム全体にとって「いいご褒美になった」と振り返っている。
現時点で、この1ポイントがアストンマーティンの2026年前半戦における唯一の得点となっている。
予選対決:アロンソがストロールに9勝2敗
AMR26の競争力不足は予選でも顕著だった。アロンソとストロールはグリッド後方からスタートするレースが多く、Q1突破そのものが大きな目標となる状況が続いた。
それでもチームメイト対決ではアロンソが明確に優位に立っている。前半11戦の予選対決はアロンソの9勝2敗だ。
さらに、ハンガリーGPではアロンソがアストンマーティンにとって今季初となるQ2進出を果たした。単なるチーム内対決以上に、この結果はアップデートされたAMR26の進歩を示す材料となった。
決勝対決:アロンソが6勝2敗
決勝でもアロンソがストロールを上回っている。両者がともにリタイアしたオーストラリア、中国、バルセロナの3戦を除く直接対決では、アロンソが6勝2敗となっている。
ただし、サマーブレイク前最後のハンガリーGPではストロールが13位でフィニッシュし、14位のアロンソを上回った。
重要なのは順位そのものだけではない。大規模アップデートを投入したAMR26で、2台がそれまでより明確にライバルとのギャップを縮めたことだった。

ベストモーメント:ハンガリーでAMR26の大規模アップデートが機能
結果だけを見れば、アロンソがポイントを獲得したモナコGPが前半戦最大のハイライトとなる。しかし、チームの将来という観点では、ハンガリーGPの方が重要な週末だったと言える。
アストンマーティンはシーズン中に小規模なアップデートを繰り返すのではなく、変更をまとめて投入する方針を選択した。その結果、最初の10戦ではライバルが進歩する一方で、自分たちは「立ち止まっている」ように感じる期間を受け入れなければならなかった。
チーム代表のエイドリアン・ニューウェイも、この方針を「苦しい決断だった」と認めている。
しかし、その我慢はハンガロリンクで一定の成果につながった。アップデートを施されたAMR26は最も近いライバルとのギャップを縮め、決勝では複数のマシンを実力で上回った。
2026年に入ってから、アストンマーティンが純粋なパフォーマンスで中団グループと戦える兆候を示したのは、このハンガリーGPが初めてだった。
ワーストモーメント:開幕前に判明した想定以上の遅れ
アストンマーティンの前半戦には厳しい場面がいくつもあったが、最大の打撃はシーズンが始まる前に、自分たちが置かれている状況の深刻さを認識したことだった。
チームはバルセロナでのシェイクダウンへの参加が遅れ、続くバーレーンでのプレシーズンテストでも十分な準備を整えられなかった。
テストのラップタイムだけから各チームの実力を判断することは難しいが、新規参戦のキャデラックに対しても明確なペース不足が見られたことは、AMR26に根本的な問題が存在する可能性を示していた。
さらにホンダ製PUにも信頼性上のトラブルが発生した。結果としてアストンマーティンのテスト走行距離はメルセデスのおよそ3分の1にとどまり、シーズン開幕を前に大きな遅れを背負うことになった。
新レギュレーション初年度に加え、ホンダとの新たなワークス体制をスタートさせるシーズンだけに、この走行不足はシャシーとPU双方の理解を深めるうえでも大きな痛手となった。
後半戦:ザントフォールトでホンダのPUアップデート投入へ
それでもハンガリーGPを終えた時点で、チーム内の空気には変化が生まれている。
アロンソはブダペストでのレース後、新しいマシンについて「取り組んでいくためのいいベースができた」と評価。サマーブレイク後についても「チャンピオンシップが新しく始まるような感覚」にできる可能性があるとの期待を示した。
もちろん、課題が解決したわけではない。わずか3年前には定期的に表彰台を争っていたチームが本来の位置へ戻るには、まだ大幅な改善が必要だ。ハンガリーGPの金曜日にもストロール車で信頼性問題が発生しており、安定してパフォーマンスを引き出せる段階には達していない。
そして後半戦最初のザントフォールトでは、ホンダのPUアップデートが投入される予定となっている。
チーフ・トラックサイド・オフィサーのマイク・クラックは、今後について「次の数レースで何を引き出せるのかを見ていく」と説明している。
アストンマーティンにとって2026年前半戦は、モナコでの1ポイントよりも、なぜこれほど苦戦したのかを理解するための期間だったとも言える。開幕前から露呈したシャシーとPUの問題、少ない走行距離、そしてライバルに対する大幅な性能不足。その代償は大きかった。
一方、ハンガリーでAMR26の大規模アップデートが一定の成果を示したことで、後半戦への方向性はようやく見え始めた。ザントフォールトから加わるホンダPUの進化と合わせて、この改善を継続できるか。アストンマーティンの2026年は、サマーブレイク明けから事実上の「再スタート」を迎える。


















