カテゴリー: ホンダF1

  • ニューウェイが狙う「300mm」の規則変更 アストンマーティンF1反撃の鍵

    ニューウェイが狙う「300mm」の規則変更 アストンマーティンF1反撃の鍵

    2027年のF1技術レギュレーションに盛り込まれる変更について、アストンマーティンのチーム代表兼マネージング・テクニカル・パートナーを務めるエイドリアン・ニューウェイが、最大の注目点としてフロア前方の見直しを挙げた。

    2026年に導入された新世代マシンは本来、2027年に向けて大きな基本思想を維持しながら発展していくと考えられていた。

    しかしFIAは、エネルギーマネジメントや空力面で明らかになった課題への対応として複数の規則変更を決定。なかでもフロア前方の構造変更はマシンの車高設定と空力特性に直接影響するため、ニューウェイは各チームに新たな開発競争をもたらす可能性があるとみている。

    アストンマーティンにとっては、2026年型マシンで得た経験をいったんリセットし、ニューウェイの空力設計能力をより生かせる機会にもなり得る。フェルナンド・アロンソが2027年もF1で戦う場合、その競争力を左右する重要な規則変更となりそうだ。

    2027年F1規則は「小変更」では済まない
    F1は2026年にシャシーとパワーユニットの双方で大規模な技術規則変更を実施した。当初、翌2027年はそのコンセプトを成熟させるシーズンになるとみられていた。

    しかし、実際にはFIAがフロア、リアウイング、パワーユニットなど複数の領域に修正を加えることになった。

    ニューウェイは、2027年に向けた変更について「燃料量の増加、エネルギーの貯蔵と配分に関するいくつかの変更、それにもう少し細かな調整がある」と説明している。

    背景にあるのが、2026年型パワーユニットで大きなテーマとなったエネルギーマネジメントだ。電動出力への依存度が高まったことで、コーナーでエネルギーを大量に使用した後、ストレート終盤で電力を使い切るケースが発生した。

    FIAは2027年に向けて内燃エンジン側の比率を再び高める方向で規則を修正し、ドライバーがバッテリー残量を過度に意識しなければならない状況を緩和しようとしている。

    一方、ニューウェイがより大きな技術的可能性を感じているのはパワーユニットではなくシャシー側だ。

    ニューウェイが「重要」と考えるフロア前方の変更
    2027年規則では、フロア前方に設けられているプランクの構造が見直される。前方部分が短縮されることで、その先端位置は現在より約300mm後方へ移動することになる。

    一見すると限定的な寸法変更だが、マシンのセットアップと空力に与える影響は小さくない。

    現在の構造では、フロントの車高を極端に低くするとプランクの摩耗が問題となる。前方部分が短くなれば、チームはこれまでよりフロントを低く走らせることが可能になり、マシン全体の空力マップを再構築する余地が生まれる。

    ニューウェイは、この部分こそ2027年規則の重要なポイントだと指摘する。

    「これによって、異なる空力特性が生まれることになる」

    「僕たちにとって重要な変更はフロア前方だ。これは全チームにとって、これまでとは違った空力上の課題になる」

    単純にダウンフォース量を増減させる変更ではない。マシンの前後車高、フロア下の気流、空力バランスなどを含め、基本的な設計思想そのものに影響する可能性がある。

    ニューウェイがこの変更を重視している理由もそこにある。

    300mmの変更がマシン設計を変える可能性
    グラウンドエフェクトを利用する現在のF1マシンでは、フロアと路面の距離が空力性能を大きく左右する。

    特にフロント側の車高をどこまで下げられるかは、フロアへ流れ込む空気やマシン後方までの気流構造に影響する。したがって、プランク前端が約300mm後退することは、数字以上に大きな意味を持つ。

    各チームは2026年型マシンで蓄積した空力データをそのまま発展させるだけではなく、2027年仕様に合わせて最適な車高とフロア形状を探り直す必要が出てくる。

    これはアストンマーティンにとってチャンスにもなる。

    2026年の序列を決定づけた既存コンセプトの成熟度だけでなく、2027年の変更を誰が最も早く理解し、新しい空力パッケージへ落とし込めるかが競争力を左右するためだ。

    ニューウェイはレッドブル時代を含め、規則変更時に新しい空力コンセプトを構築してきた経験を持つ。アストンマーティンが2026年にライバルへ後れを取っていたとしても、2027年の変更は差を縮めるための新たな開発ポイントになり得る。

    エイドリアン・ニューウェイ(アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム)

    リア周辺ではFIAが空力の「抜け道」を整理
    2027年にはマシン後方にも変更が加えられる。

    リアウイングはダウンフォースを抑制する方向で寸法や構造が変更される一方、新しい補強部材が認められることで、各チームがその周辺で新たな空力処理を模索する可能性もある。

    さらにFIAは、2026年に各チームが開発を進めたエキゾースト周辺の空力デバイスやリアウイング周辺の一部ソリューションを規制する。

    ニューウェイはこれについて、「FIAは、各チームがエキゾーストやリアウイング周辺で使ってきたいくつかのトリックを排除した」と説明する。

    フロア前端のデバイスについても数が削減されるため、2027年型マシンでは2026年に開発された細かな空力処理の一部が使えなくなる。

    つまりFIAは、既存の開発競争を単純に継続させるのではなく、一部を整理したうえで新たな設計条件を与えようとしている。

    アストンマーティンにとって2027年は巻き返しの機会
    ニューウェイが指摘しているのは、規則の文言を利用した単純な「抜け穴」というより、規則変更によって生まれる新たな設計自由度だ。

    特にフロア前方の変更によってフロントの車高設定に新しい可能性が生まれれば、そこからフロア全体、ディフューザー、リアウイングまで含めた空力コンセプトを組み直すことができる。

    これは既存マシンを完成させているチームだけが有利になる状況を崩す可能性がある。

    アストンマーティンはニューウェイを技術部門の中心に据え、ホンダ製パワーユニットとの組み合わせで新時代のF1に挑んでいる。2026年に直面した問題を解決するだけでなく、規則が再び動く2027年を次の大きな機会として捉えていることは明らかだ。

    わずか300mmの変更でも、F1の空力設計ではマシン全体の考え方を変えるきっかけになり得る。ニューウェイがそこからどのような解答を導き出すのか。そして、そのマシンをフェルナンド・アロンソがドライブすることになるのか。2027年に向けたアストンマーティンの開発で、フロアは最大の注目点のひとつとなりそうだ。

  • フェルナンド・アロンソ 9億円のランボルギーニでモナコを走行 世界63台限定

    フェルナンド・アロンソ 9億円のランボルギーニでモナコを走行 世界63台限定

    フェルナンド・アロンソが、約590万ドル(約9億円)とされる希少なランボルギーニ「シアン FKP 37」を運転してモナコの街を走る姿が目撃された。

    F1は現在サマーブレイクに入っており、各チームとドライバーはシーズン後半戦に向けて束の間の休暇を過ごしている。45歳のアロンソもそのひとりだが、モナコでの休日を彩ったのは、世界でもわずか63台しか生産されていない特別なランボルギーニだった。

    ナンバープレートには「14」 アロンソ所有車と判明
    SNSに投稿された映像には、ランボルギーニ・シアン FKP 37がモナコ公国の道路を走行する様子が収められている。

    映像だけでは運転席に座っている人物を明確に確認することは難しい。しかし、ナンバープレートにはアロンソがF1で使用しているカーナンバーと同じ「14」が掲げられており、アロンソが所有する車両であることを示す大きな手掛かりとなっている。

    シアン FKP 37はランボルギーニが2019年9月に発表した限定モデルだ。クーペはわずか63台、ロードスターも19台しか生産されず、いずれもすでに完売している。

    「シアン」という名称はボローニャ地方の方言で「稲妻」を意味し、ランボルギーニにとって電動化時代への第一歩を象徴するモデルでもある。

    807馬力を発揮 0-100km/h加速は2.8秒
    シアン FKP 37は、ランボルギーニのV12エンジンに電動システムを組み合わせたハイブリッド・スーパーカーだ。

    最高出力は602kW(807馬力)に達し、登場当時はランボルギーニ史上最もパワフルな市販モデルだった。0-100km/h加速はわずか2.8秒、最高速度は355km/hに達する。

    「FKP 37」という名称は、長年フォルクスワーゲン・グループを率い、ランボルギーニの発展にも大きな影響を与えたフェルディナント・カール・ピエヒのイニシャルと、生誕年である1937年に由来している。


    アロンソが所有する数億円規模のスーパーカーコレクション
    2度のF1ワールドチャンピオンであるアロンソは、熱心な自動車コレクターとしても知られている。

    シアン FKP 37は、アロンソが所有する数百万ドル規模のカーコレクションの一台にすぎない。

    コレクションには、現在所属するアストンマーティンが開発したハイパーカー「ヴァルキリー」をはじめ、フェラーリ・エンツォ、マクラーレン・エルヴァなど、希少価値の高いモデルが含まれている。

    F1でルノー、フェラーリ、マクラーレン、アルピーヌ、アストンマーティンなど複数のメーカー系チームを渡り歩いてきたアロンソだけに、そのガレージもF1キャリアを思わせる多彩な顔ぶれとなっている。

    45歳アロンソ F1での将来にも注目
    一方、アロンソを巡っては、スーパーカーだけでなくF1での将来も大きな注目を集めている。

    アストンマーティンは2026年、エイドリアン・ニューウェイの加入とホンダとの新たなワークスパートナーシップによって大きな期待を集めた。しかし、シーズン前半は期待された競争力を発揮できず、厳しい戦いを強いられている。

    グリッド最年長のアロンソについては、2026年限りでF1を離れる可能性も取り沙汰されてきた。ただし最近では、アストンマーティンとの関係を継続する可能性が高まっている。

    ハンガリーGPでは、アストンマーティンのチーム首脳がアロンソの重要性について語った。

    「もちろん、フェルナンドは素晴らしいドライバーだ。フィードバックという面でも、ドライバーとしての能力という面でも、チームにもたらしてくれるものは非常に大きい」

    「だから、もちろん我々にとって彼は重要な存在だ。フェルナンドは我々と過ごす時間を楽しんでいると思っているし、この関係を今後も続けていけるとかなり自信を持っている」

    2026年シーズン後半、アロンソにはアストンマーティンとホンダの新プロジェクトをどこまで前進させられるかという重要な仕事が待っている。その前に、モナコで世界63台限定のV12ランボルギーニを走らせる時間は、45歳のベテランにとって貴重なサマーブレイクのひとときとなった。

  • ホンダF1 スペック2でまずICEを強化 最大30馬力アップの可能性

    ホンダF1 スペック2でまずICEを強化 最大30馬力アップの可能性

    アストンマーティンF1は、夏休み明けの第12戦オランダGPでホンダの「スペック2」パワーユニット(PU)を投入する。今回のアップデートは内燃エンジン(ICE)の性能向上に焦点を絞ったもので、一部の楽観的な推定では最大30馬力程度の向上が得られる可能性も指摘されている。

    ホンダF1のトラックサイド・ゼネラルマネージャー兼チーフエンジニアを務める折原慎太郎によれば、ライバルメーカーとの差を縮めるうえで現時点の最大の弱点はICEにある。

    プレチャンバーやピストン形状、潤滑システムにまで手を入れたスペック2によってまずICEの性能を引き上げ、その先にPU全体の最適化を進める考えだ。

    アストンマーティンは前戦ハンガリーGPで、エイドリアン・ニューウェイが手掛けたAMR26の今季初となる大型アップデートを投入した。依然として目標とする位置には届いていないものの、シャシー側では競争力を大きく改善することに成功している。

    Paceteqのデータによれば、ハンガリーGPでアストンマーティンのレースペースにおけるトップとの差は1周あたり2.034秒だった。シルバーストンとスパでは5秒以上の差があったが、両サーキットはハンガロリンクよりも全長が長く、さらにハンガロリンクはPU性能への依存度が比較的低いという条件の違いも考慮する必要がある。

    シャシー側が前進を果たした一方で、依然として弱点として残っているのがPUだ。ホンダはザントフォールトで投入するスペック2によって、その差を縮めようとしている。

    ホンダがスペック2でまずICEを強化する理由
    今回のスペック2では、ICEの性能向上がアップデートの中心となる。

    2026年F1では電動パワーの比重が大幅に高まり、MGU-Kの最大出力は350kWに引き上げられた。エネルギーを効率よく回収し、必要な場所でデプロイするエネルギーマネジメントは従来以上に重要になっている。

    それでもホンダがまずICEを改良するのは、現時点でライバルメーカーとの最大の差が内燃エンジンそのものにあると判断しているためだ。

    「我々のエンジン性能は、他のメーカーと比較すると明らかに不足しています。ですから、現時点で最も重要なのはエンジン性能を改善することだと思っています。先ほど申し上げたように、差はかなり大きいです」

    折原慎太郎は、ICEが十分な水準に達していない状態では、エネルギーマネジメントなど他の領域だけを改善しても十分な効果にはつながらないと説明する。

    「燃焼エンジンの性能を改善しない限り、ほかの部分を改善しても十分な効果にはつながりません。例えばエネルギーマネジメントを改善したとしても、エンジン性能そのものが不足していれば意味がありません」

    「今は純粋にエンジン性能の改善に集中しています。そこで目標を達成できれば、そのあとでほかの細かな部分を最適化できると思います。ただ、依然として最大の重点項目はエンジン性能、つまり燃焼エンジンです」

    つまり、ホンダがバッテリーや電動系を軽視しているわけではない。まずICEを必要な水準まで引き上げ、そのうえで電動系を含めたPU全体の最適化へ進むという開発の順序だ。

    プレチャンバーやピストンまで変更したスペック2
    今回のスペック2は、単なる制御変更やセッティングの最適化ではない。ホンダはICE内部の複数の領域に手を入れている。

    ホンダのSNS動画で新仕様について質問された折原慎太郎は、詳細については「秘密」としながらも、その一部を明らかにした。

    「エンジン性能を向上させること、つまり燃焼を速くすることに重点を置きました」

    「ある意味では秘密なのですが、少しだけ明かすことはできます」

    「燃焼を速くするためにプレチャンバーを変更しました。また、より良い燃焼を得るためにピストン形状も変更しています」

    さらに、性能向上は燃焼側だけではない。機械的な損失を減らすため、潤滑システムの一部にも変更を加えた。

    「摩擦を減らすために潤滑システムの一部も変更しました。エンジン性能を向上させるために、かなり多くの項目に取り組みました」

    プレチャンバーは燃焼室内で混合気を効率的かつ素早く燃焼させるうえで重要な要素であり、ピストン形状も燃焼状態に直接影響する。さらに潤滑系で機械的な摩擦損失を減らすことで、燃料から得られるエネルギーを可能な限り出力へ変換することを狙っている。

    最大30馬力アップの可能性 50馬力説には否定的
    注目されるのは、スペック2によって実際にどれほどICEの性能が向上するのかだ。

    ホンダは具体的な出力向上幅を公表していないが、一部の楽観的な推定では最大30馬力程度の向上が得られる可能性が指摘されている。一方、別の報道では30~50馬力程度との推測も出ている。

    特に50馬力という数字について質問された折原慎太郎は、その規模には否定的な見方を示した。

    「その数字があればうれしいですが、かなり大きな数字です」

    さらに、50馬力という報道について折原慎太郎は次のように説明した。

    「詳細なパワーの数字はお話しできませんが、私の感覚では、それは実際の数字ではないと思います」

    具体的な出力向上幅こそ明かしていないものの、スペック2の開発自体については予定していた水準に到達したという。

    「詳細な数字は明かせませんが、我々の内部目標は達成しました。スペック2エンジンについて、HRC Sakuraのファクトリーのみんなが成し遂げたことには自信を持っています」

    「新しいスペックのエンジンをオランダに持ち込むことを楽しみにしています」

    したがって「最大30馬力」はホンダが公式に示した数字ではなく、あくまで外部から出ている楽観的な推定となる。ただし、ホンダ自身が内部目標を達成したと説明していることからも、一定の性能向上に手応えを得ていることはうかがえる。

    目標は「レースができる集団」へ戻ること
    折原慎太郎がザントフォールトでのアップデートに掲げる目標は、単純な最高出力の数字だけではない。

    アストンマーティンがシャシー側で前進したように、PU側でも他車と直接競争できる領域へ戻ることを目指している。

    「我々の目標はレースができる集団に戻ることです。毎週末、0.01秒や0.02秒を見つけるために懸命に取り組んでいますが、そうした小さな改善が実際に意味を持つ状況に戻したいです」

    現状ではPU性能の不足が大きいため、セットアップや細かな最適化によって0.01秒、0.02秒を削っても、それが結果に反映されにくい。まず大きな性能差を縮め、そのうえで細部の改善が順位につながる状態へ戻すという考えだ。

    スペック2でドライバビリティは再調整へ
    ただし、ICEの性能を大きく変更すれば、新たな課題も生まれる。そのひとつが、2026年シーズン前半を通じてホンダが改善を続けてきたドライバビリティだ。

    ドライバビリティとは、ドライバーがアクセルを操作した際のトルクの出方や、コーナリング中のPUの反応など、ドライバーが感じる出力特性を指す。

    「ドライバビリティを最適化するためのツールを開発し、大きく前進しました。目標としていたところにかなり近づいていました」

    しかし、スペック2ではICEの燃焼特性そのものが変化する。

    「ただ、スペック2エンジンを投入すると燃焼特性が大きく変化します。非常に大きくというほどではないかもしれませんが、かなり違うものになります」

    「それによってコーナリング中のエンジンの挙動も変わります。ですから、ドライバビリティについてはもう一度開発していく必要があります」

    最高出力を引き上げるだけでは十分ではない。新しいICEの特性に合わせて、アクセル操作に対するトルク供給やコーナリング中の挙動を再び最適化する必要がある。

    ホンダ・レーシング 折原慎太郎

    AMR26の進化もPUへの要求を変える
    さらにホンダにとって重要なのが、アストンマーティンのシャシーそのものが進化していることだ。

    ハンガリーGPで投入されたアップデートによってコーナリング性能が改善すれば、ドライバーがPUに求める特性もこれまでとは変わる。

    「マシンの仕様が変われば、コーナリングスピードもかなり高くなります。そうすると、ドライバビリティに対する要求も変化します」

    PUとシャシーは独立して存在するものではない。コーナリング速度やアクセル開度などが変化すれば、それに合わせてPU側の制御も適応させなければならない。

    ニューウェイを中心としたアストンマーティンの開発が進むほど、ホンダ側にも新たな要求が生じることになる。

    「ゼロからではない」前半戦の経験をスペック2へ
    スペック2の投入によって再びドライバビリティの調整が必要になるとはいえ、ホンダがシーズン開幕時の状態に逆戻りするわけではない。

    折原慎太郎は、前半戦を通じてドライバビリティを改善する方法そのものを理解できたことが大きいと語る。

    「シーズン前半を通じて大きく前進しました。我々なりの最適化の方法を開発することができました」

    「新しいエンジンを投入すれば、おそらくドライバビリティを改善するために、また作業が必要になると思います。ただ、今は何をすべきか、どこを改善すべきかが分かっています」

    「そこは非常に大きな学びでした。その経験をBスペックのエンジンにも持ち込むことができます」

    新しいICEによって燃焼特性が変わっても、前半戦で確立した開発手法まで失われるわけではない。ホンダにとっては、スペック1で得た知見をスペック2へ持ち込みながら、新たな特性に合わせて最適化を進めることになる。

    スペック2はホンダのキャッチアップの第一歩
    スペック2だけですべての性能差を埋められるわけではない。ホンダには今後もPUを改良する機会が残されている。

    2026年から導入されたADUO(Additional Development and Upgrade Opportunities)は、PUメーカー間に一定以上の性能差が確認された場合、後れを取っているメーカーに追加開発を認めるキャッチアップ制度だ。

    ホンダは最初の評価で追加開発の対象となっており、今回のスペック2はライバルとの差を縮めるための重要なステップとなる。

    折原慎太郎自身も、ICEで目標を達成したあとには「ほかの細かな部分を最適化できる」と説明している。つまり、ザントフォールト仕様が2026年型ホンダPUの完成形というわけではない。

    まず最大の弱点であるICEの性能を必要な水準まで引き上げ、その後にエネルギーマネジメントを含むほかの領域を最適化していく。スペック2は、そのキャッチアップ計画における重要な第一歩と位置づけられる。

    アストンマーティンとホンダ 反撃の第2段階へ
    アストンマーティン側でも状況は変わり始めている。ハンガリーGPでは大型アップデートを投入したAMR26が一定の前進を示し、夏休み明けにはそこへホンダのスペック2が加わる。

    シーズン前半にはシャシーとPUの双方で苦戦したが、シャシー側に続いてPU側でも性能差を縮めることができれば、アストンマーティンとホンダの2026年シーズンは新たな段階に入る。

    ホンダにとってザントフォールトのスペック2は、単純な馬力向上だけを目的としたアップデートではない。プレチャンバー、ピストン、潤滑システムまで変更してICEそのものの性能を引き上げる一方、その結果として変化する燃焼特性に合わせ、ドライバビリティも改めて作り込む必要がある。

    最大30馬力という数字はあくまで外部の楽観的な推定であり、ホンダは具体的な向上幅を明らかにしていない。それでも「内部目標は達成した」という折原慎太郎の言葉からは、スペック2への手応えがうかがえる。

    シャシー側で前進したアストンマーティンに、ICEを重点的に改良したホンダのスペック2が加わるオランダGP。そこで「0.01秒や0.02秒の改善が意味を持つ」レースの集団まで戻れるかどうかが、後半戦に向けた最初の試金石となる。

  • アストンマーティンF1 ニューウェイに着想を得た限定ウイスキーを発売

    アストンマーティンF1 ニューウェイに着想を得た限定ウイスキーを発売

    アストンマーティンF1チームは、スコッチウイスキーブランドのグレンフィディックとコラボレーションし、エイドリアン・ニューウェイの設計哲学から着想を得た2種類の限定シングルモルトウイスキーを発売した。

    2026年シーズン前半はコース上で苦戦を強いられているアストンマーティンだが、コース外では積極的な商業展開を続けている。F1がサマーブレイクに入るなか、グレンフィディックとのパートナーシップから16年物と19年物の限定ボトルが登場した。

    ニューウェイの「見えない部分へのこだわり」をウイスキーで表現
    「Glenfiddich & Aston Martin Formula One Team Limited Edition」と名付けられた今回の商品は、アストンマーティンのマネージング・テクニカル・パートナーを務めるエイドリアン・ニューウェイのデザインとエンジニアリングへのアプローチからインスピレーションを得ている。

    ラインナップは16年物と19年物の2種類。ボトルとパッケージにはアストンマーティンをイメージしたデザインが施され、英国での販売価格は16年物が73.25ポンド、19年物が139ポンドとなっている。

    グレンフィディックは今回のウイスキーに、ファーストフィルのバーボン樽、ポートワイン樽、オロロソ・シェリー樽、ワイン樽などを使用し、最後にフィノ・シェリー樽による仕上げを加えた。

    グレンフィディックのモルトマスター、ブライアン・キンズマンは、ニューウェイの仕事とウイスキー造りには共通する哲学があると説明した。

    「エイドリアンの仕事で最も魅力的だと感じるのは、決定的なパフォーマンスを生み出すものが、必ずしもすぐ目に見えるものではないという点だ。それはウイスキー造りにも通じるものがある」

    「シングルモルトの個性は、樽の選択、バランス、熟成、タイミングといった、長い時間をかけて積み重ねられる無数の正確な判断によって形作られる。それぞれは単独では小さな違いかもしれないが、それらが組み合わさることで大きな変化をもたらす」

    16年物は熟した果実とトフィーの甘み
    16年物の「Glenfiddich & Aston Martin Formula One Team 16-Year-Old Limited-Edition Release No.2」は、煮込んだ果実の豊かな香りに華やかなフローラルノートが重なり、マジパンや磨かれたレザーを思わせるニュアンスを持つ。少量の水を加えることで、新鮮な熟した果実の香りがさらに際立つという。

    味わいはまろやかでシルキー。クリーミーでバターのようなトフィーの甘さと、キャラメリゼしたサトウキビの風味が特徴で、ドライなオークのタンニンがバランスを取る。フィニッシュにはオーク由来の甘さが長く残る。アルコール度数は43%。

    19年物はバニラとジンジャーに柑橘系のアクセント
    19年物の「Glenfiddich & Aston Martin Formula One Team 19-Year-Old Limited-Edition Release No.2」は、鮮やかなバニラ、結晶化したジンジャー、昔ながらのキャンディを思わせる香りが特徴だ。砂糖漬けのオレンジとレモンの皮に、温かみのあるオークスパイスが加わる。

    口に含むと柑橘系の爽快感とシャーベットを思わせる刺激があり、ワックスのようになめらかで豊かな口当たりを持つ。焼きリンゴとシナモンのニュアンスも感じられ、甘く濃厚な余韻が長く続く。こちらもアルコール度数は43%となる。

    アストンマーティンとグレンフィディックは、ニューウェイがF1マシン開発で重視する細部の積み重ねと、長期間にわたる熟成や樽選びによって完成するウイスキー造りを重ね合わせた。コース上の技術だけでなく、その設計思想そのものを商品に落とし込んだユニークな限定コラボレーションとなっている。

  • アストンマーティンF1 苦境を未来への糧に「時が来れば準備はできている」

    アストンマーティンF1 苦境を未来への糧に「時が来れば準備はできている」

    アストンマーティンF1は、厳しい2026年シーズン前半戦を経験する一方で、その苦境を将来の飛躍につなげようとしている。ハンガリーGPで投入した大規模アップデートによってAMR26には改善の兆しが見え始め、次戦オランダGPではホンダの新パワーユニットも投入される予定だ。

    アストンマーティンのリザーブドライバーを務めるジャック・クロフォードは、現在の厳しい状況で積み重ねている経験こそが、チームが本来目指す競争力を手にしたときの大きな財産になると考えている。

    実車とシミュレーターの両方でAMR26に携わってきたクロフォードは、「僕たちの時が来れば、チーム全体が準備できている」と語った。

    11戦でわずか1ポイント アストンマーティンを苦しめたAMR26
    アストンマーティンの2026年シーズンは、ここまで苦戦の連続となっている。昨年の開発開始が遅れたAMR26に加え、ホンダのパワーユニットも期待された性能を発揮できず、開幕から11戦で獲得したポイントはわずか1点にとどまっている。

    しかし、夏休み前最後のハンガリーGPでは、ようやく明確な前進が見えた。アストンマーティンはロングノーズやフロア、サイドポッド周辺など広範囲に及ぶアップデートを投入。フェルナンド・アロンソは今季初めてQ2進出を果たし、決勝ではランス・ストロールが13位、アロンソが14位でフィニッシュした。

    ポイント獲得には届かなかったものの、それまでの戦いを考えればAMR26の競争力が改善していることを示す週末となった。

    さらにオランダGPでは、ホンダが改良型パワーユニットを投入する予定だ。この新PUはハンガロリンクで行われたフィルミングデーですでに実走しており、クロフォードがステアリングを握って初期確認を担当した。

    リザーブでも「できる限りクルマとガレージにいる」
    クロフォードはレギュラードライバーではないものの、アストンマーティンで過ごす時間そのものがF1ドライバーとして大きな経験になっていると語る。

    「はい。こうしたことすべてが、僕に経験を積ませてくれていると思う」

    「本当の意味で経験を増やすには、それしかない。F1では、時には単純にもっと経験することが必要なんだ」

    クロフォードにとって重要なのは、レースに出場するかどうかだけではない。チームの現場に継続的に身を置き、実車やシミュレーターを通じてF1チームがどのように仕事を進めているのかを吸収することに価値があるという。

    「常にそこにいて、できる限りクルマに乗ったり、ガレージで時間を過ごしたりするだけでも経験になる。すべてのレースに出場していなくてもね」

    「チームの雰囲気は素晴らしい。みんな本当に僕をサポートしてくれているし、成功してほしいと思ってくれている。僕がシミュレーターでいい仕事をしていることも分かっていて、そのうえで可能な限り実車で走る時間を与えようとしてくれている。それは本当に素晴らしいことだ。この2年間でF1マシンをドライブする機会をたくさんもらった」

    ジャック・クロフォード(アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム)

    難しいAMR26だからこそ学べること
    クロフォードはFP1への出走だけでなく、シミュレーターでもAMR26の開発作業に深く関わっている。そのため、アロンソやストロールと同様に、今季のマシンが抱えてきた難しさを実際に経験してきた。

    競争力の低いマシンをドライブする経験が自身をより良いドライバーにしているかと問われると、クロフォードは迷うことなく肯定した。

    「はい、間違いなくそうだ。競技面ではフラストレーションがたまる状況だけど、チームの考え方は一度も変わっていない」

    「このクルマをドライブした僕たち3人にとって、もちろん望んでいた状況ではない。でも、それでも僕たちはものすごくハードに働き続けなければならない」

    結果が期待できない状況だからといって、準備の質を落とすことはできない。それがクロフォードの考えだ。

    「残りのレースに向かうとき、現実的には何かを争える状況ではないと分かっていたとしても、まったく同じ仕事への姿勢を維持しなければならない」

    「いつもと同じように準備を続ける必要がある。僕たちの時が来たときに、準備ができているようにするためだ」

    「ポイントや表彰台を争えるときには全員が準備できている」
    アストンマーティンは現在のAMR26だけではなく、その先を見据えて開発を続けている。クロフォードは、今の苦境の中で培われているチームの仕事の質が、競争力を取り戻したときに生きると確信している。

    「ポイントや表彰台を争えるクルマを手にしたとき、僕たちは完璧に準備できているはずだし、チーム全体が準備できていると思う」

    そして、競争力の低いマシンだからこそ、ドライバーは通常以上に細かな部分からラップタイムを探し出さなければならない。

    「もちろん、こういう経験はドライバーを成長させる。可能なところなら、どこからでもタイムを探そうとするからね」

    「100分の1秒でも、10分の1秒でも必死になって探す。そして、僕たちがミッドフィールドで戦えるようになったときにも、同じように10分の1秒単位で戦い続けると思う。それが週末ごとの結果を大きく左右することになるからだ」

    2026年のアストンマーティンにとって、ここまでの結果は期待から大きく外れている。それでもハンガリーGPでAMR26の改善が確認され、オランダGPではホンダの新PUという次の一手も控えている。クロフォードが強調するのは、苦しい時期だからこそ妥協せず経験を積み続ける重要性だ。現在の積み重ねを、将来ポイントや表彰台を争うための準備へと変えられるかが、アストンマーティンの今後を左右する。

  • フェルナンド・アロンソ ニューウェイとの意見対立を告白「データが議論に勝った」

    フェルナンド・アロンソ ニューウェイとの意見対立を告白「データが議論に勝った」

    アストンマーティンF1のフェルナンド・アロンソが、エイドリアン・ニューウェイとマシンの問題点をめぐって意見が食い違っていたことを明かした。ドライバーが感じていたAMR26の弱点と、ファクトリーで示されるデータとの間にはズレがあり、シーズン序盤にはチーム内部で議論が交わされていたという。

    ニューウェイは以前、アロンソとランス・ストロールに対して十分な時間を割き、開発方針を説明できていなかったとして公に謝罪していた。

    しかしアロンソによれば、問題は単純なコミュニケーション不足ではなく、マシンの問題をどのように捉えるかという、より技術的な部分にあった。

    ニューウェイが認めたドライバーとのコミュニケーション不足
    ニューウェイは数週間前、AMR26の開発を進める過程で、ドライバーへの情報共有が十分ではなかったと認めていた。

    「人は自分の話を聞いてもらえていないと感じれば、大きなフラストレーションを抱く。それは人間として自然な反応だ。だから、フェルナンドとランスに十分な時間を割き、アップグレードで何を達成しようとしているのか、そして来季に向けて何をしようとしているのかを説明してこなかったことについては、私に全面的に責任がある」

    一方、アロンソはその後、ストロールとともに開幕戦オーストラリアGPの時点からチームの開発計画を把握していたと説明。シミュレーターを使用するため何度もファクトリーを訪れており、チームの計画やパフォーマンスについて「常に情報を共有してもらっていた」と語っている。

    では、ニューウェイはなぜ公の場で謝罪する必要があると感じたのか。アロンソの今回の説明から、その背景がより明確になった。

    AMR26の弱点をめぐり「異なる意見があった」
    アロンソによると、シーズン序盤にはAMR26の問題点をめぐり、ドライバーの感覚とデータが必ずしも一致していなかったという。

    「エイドリアンのコメントは、どちらかというと過去のことを指していたんだと思う。実際、以前はレース週末にマシンのフィーリングや弱点について、時々違う意見を持っていた」

    アロンソとストロールは、実際にコース上でライバルと戦うなかでAMR26の問題を感じ取っていた。しかし、ファクトリーに戻ってデータを分析すると、別の結論が示されることもあったという。

    「他のマシンと戦っているときに僕たちがステアリングを握って感じていたことと、ファクトリーに戻ってデータを確認したときに見えてくるものが違うことがあった。空力に問題が見つかって、それがマシンを僕たちが感じていたものとは違う方向へ導いていたのかもしれない」

    「そうした議論では、データの方が勝ったのかもしれない」

    ドライバーの体感よりもシミュレーションや解析結果が優先される場面があり、それがニューウェイの後の謝罪につながった可能性をアロンソは示唆している。

    エイドリアン・ニューウェイ(アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム)

    ニューウェイもAMR26の問題を見誤った
    AMR26をめぐっては、シーズン序盤にニューウェイ自身も問題の所在について現在とは異なる見方を示していた。

    当初、ニューウェイはアストンマーティンのシャシーと空力にはグリッドのトップ5を狙えるポテンシャルがあると考え、パフォーマンス不足の大きな要因としてホンダのパワーユニットを挙げていた。

    しかし、その後に分析と開発が進むにつれて、AMR26には空力面を含めた車体側にも改善すべき領域が存在することが明らかになった。アロンソの今回の発言は、ドライバーが実際のコース上で感じ取っていた問題と、当初チーム側がデータから導き出していた評価との間にギャップが存在していたことを示すものでもある。

    それでもアロンソは、ニューウェイがデータだけを絶対視するエンジニアではないと強調する。

    「データは絶対的な真実ではない」
    アロンソは、F1マシンの挙動を理解するには、データとドライバーのフィードバックを組み合わせることが重要だと語った。

    「エイドリアンは両方の意見を聞くタイプのデザイナーだと思う。もちろんデータも見るけど、ドライバーのフィーリングにも耳を傾ける」

    「F1はものすごく複雑で、ダイナミックなスポーツだ。状況は毎周変わる。同じ燃料搭載量で走ることはないし、タイヤのデグラデーションも同じではない。風の状況も違うし、他のマシンを追っているのか、それとも単独で走っているのかによっても変わる」

    こうした条件の変化がマシンバランスに大きな影響を与える以上、数値だけですべてを判断することはできないというのがアロンソの考えだ。

    「マシンのバランスに影響を与える要素はたくさんある。だから、データは絶対的な真実ではない。両方を組み合わせる必要があると思う」

    「ニューウェイには世界最高の経験がある」
    意見の食い違いがあったことを認めながらも、アロンソはニューウェイへの信頼が揺らいでいないことを強調した。

    「エイドリアンには、マシンの設計と開発において世界最高の経験がある。僕たちは正しい方向に進んでいると思う」

    2026年からホンダのワークスパワーユニットを搭載し、新たな体制でシーズンを迎えたアストンマーティンだが、序盤は期待した競争力を発揮できず、AMR26の問題究明には時間を要した。

    その過程では、ドライバーの感覚とファクトリーのデータが異なる答えを示し、アロンソとニューウェイの間にも意見の相違が生まれた。しかし、その議論を経たことで問題への理解は深まりつつある。アロンソはデータとドライバー双方の声を取り入れるニューウェイの姿勢を評価し、アストンマーティンが現在は「正しい方向」に進んでいるとの手応えを示している。

  • ホンダF1 スペック2の改良内容を公開 オランダGP投入へ「目標を達成」

    ホンダF1 スペック2の改良内容を公開 オランダGP投入へ「目標を達成」

    ホンダ・レーシング(HRC)は、2026年F1オランダGPで新仕様の「スペック2」パワーユニットを投入する。HRCのトラックサイド・ゼネラルマネージャー兼チーフエンジニアを務める折原慎太郎が、燃焼室やピストン、潤滑システムにまで及ぶ改良内容の一端を明らかにした。

    ハンガリーGPで行われたインタビューで、折原慎太郎はホンダでF1に携わることになった経緯や、アストンマーティンとの関係、そしてオランダGPから投入予定のスペック2について質問に答えた。

    燃焼高速化を狙ったスペック2
    ホンダが現在、最も力を注いでいるのがパワーユニットの性能向上だ。折原慎太郎は、スペック2では燃焼そのものに手を加えていることを明かした。

    「僕たちはエンジン性能の向上に集中しています。たとえば、燃焼をより速くすることです。ある意味では秘密なのですが、少しだけお話しできます」

    「燃焼を速くするためにプレチャンバーを変更しました。また、より良い燃焼を得るためにピストンの形状も変更しています」

    改良は燃焼系だけではない。内部の機械的損失を減らすため、潤滑システムにも変更を施したという。

    「さらに、フリクションを低減するために潤滑システムの一部も変更しました。そのため、エンジン性能を向上させるために、かなり大きなリスクを取っています」

    2026年のF1パワーユニットは新たな技術規則の下で開発されており、シーズン中の性能向上は各メーカーにとって重要なテーマとなっている。ホンダもHRC Sakuraを中心に改良を続け、スペック2で設定していた社内目標に到達したという。

    「具体的な数値についてはお話しできませんが、社内で設定していた目標は達成できました。HRC Sakuraのメンバーがスペック2エンジンで成し遂げた仕事には自信を持っていますし、とても楽しみにしています」

    「オランダに新しいスペックのエンジンを持ち込みます。そこで自分たちがどの位置にいるのかを確認したいと思います」

    アストンマーティンとの関係も「かなり良い位置」
    2026年からワークスパートナーとして組むアストンマーティンとの関係についても、折原慎太郎はシーズンを戦うなかで着実に深まってきたと説明した。

    「アストンマーティンとホンダの関係は、トラックサイドだけでなくファクトリー側でも発展してきました」

    「最初から関係は良かったですが、厳しい時期も一緒に経験しました。シーズンを通してそうした難しい時間を乗り越えることで関係を築いてきましたし、今はかなり良い状態にあると思っています」

    新規則初年度ということもあり、マシンとパワーユニット双方を最適化していくには密接な連携が不可欠だ。実戦を重ねることで、アストンマーティンとホンダのコミュニケーションも成熟してきたという認識だ。

    ホンダ・レーシング / ホンダF1

    高校時代から目指していたF1エンジニア
    折原慎太郎は自身がF1エンジニアを志したきっかけについても語った。

    「高校生のころからF1エンジニアになりたいと思っていました。そして最終的に、ホンダがF1で自分がどこまでできるのか挑戦する機会を与えてくれました」

    F1エンジニアを目指す若者へのアドバイスとして強調したのは、「諦めないこと」だった。

    「僕自身の経験から言えば、とても大切なのは決して諦めないことです。F1エンジニアになりたいと言い続けること、そして挑戦し続けることだと思います」

    また、ホンダならではの特徴として、市販車部門とモータースポーツ部門の間でエンジニアやメカニックが行き来する人材育成の文化を挙げた。

    「技術そのものは市販車のプロジェクトとは大きく異なります。ただ、ホンダではF1という世界でエンジニアを育ててきました。そこはホンダ独自の文化だと思います」

    「エンジニアやメカニックが市販車のプロジェクトからF1へ移り、逆にF1から市販車のプロジェクトへ移ることもあります。F1の大きなプレッシャーや素早い対応が求められる環境のなかで、エンジニアやメカニックの能力を高めてきました」

    燃焼室やピストン形状、潤滑システムまで変更し、一定のリスクを取って性能向上を狙ったホンダのスペック2。HRC Sakuraが目標としていた性能を達成したという新仕様が、オランダGPでアストンマーティンの競争力をどこまで押し上げるのかが注目される。

  • アストンマーティンがブランド権の過半数を譲渡 1100億円規模の資金調達

    アストンマーティンがブランド権の過半数を譲渡 1100億円規模の資金調達

    アストンマーティンは、深刻な財務圧力への対応として総額5億5000万ポンド(約1,150億円)規模の資金調達を確保した。その条件として、自動車事業以外で使用される「アストンマーティン」ブランドの知的財産権について、過半数の支配権を手放す大規模な再編に踏み切った。

    今回の取引によるアストンマーティンF1チームへの影響はない。

    アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラワン・チームは自動車会社とは別の事業体として運営されており、今回の資金調達およびブランド権移転の対象には含まれていない。

    アストンマーティンのブランド権50.1%を米企業へ移転
    ローレンス・ストロール率いるYew Treeコンソーシアムが大株主となっているアストンマーティンは、自動車事業以外に関する知的財産権の50.1%を、米国のブランド管理会社Authentic Brandsに移転することで合意した。

    Authentic Brandsは、リーボックやブルックス・ブラザーズなど多数のブランドを保有・管理する企業である。

    今回対象となる権利には、アストンマーティンの名称やロゴを使用するライフスタイル商品、マーチャンダイズ、ラグジュアリー商品、さらに幅広いライセンス事業などが含まれる。

    これにより、自動車会社としてのアストンマーティンはロードカー事業の支配権を引き続き保持する一方、ライフスタイル、マーチャンダイズ、エンターテインメントなど自動車以外の分野では、アストンマーティンブランドの保有比率が50%を下回ることになる。

    つまり、世界的に知られる「アストンマーティン」という名称が、自動車事業と、それ以外の商業利用という2つの領域に事実上分割される形だ。

    5億5000万ポンドの資金調達で財務基盤を補強
    今回の資金調達はHPS Investment Partnersが主導し、4億5000万ポンドの担保付きタームローンと、将来的に利用可能な追加1億ポンドの融資枠で構成される。合計額は5億5000万ポンドに達する。

    アストンマーティンにとって重要な資金を確保できる一方、その代償は小さくない。同社は英国を代表する高級車ブランドとして長年築き上げてきた「アストンマーティン」の名称そのものを、救済的な資金調達の一部として活用することになった。

    業界報道によれば、自動車以外の知的財産権の一部は、今回の資金調達に関連する別の持株会社へ移されたという。

    資金繰りを改善するための重要な再編であると同時に、アストンマーティンにとって極めて価値の高いブランド資産にまで踏み込んだ措置であり、同社が置かれている財務状況の厳しさを示している。

    約13億ポンドの債権者が反発 法的措置も検討
    この取引に対しては、既存の社債保有者から強い反発が起きている。

    アストンマーティンに対して約13億ポンドの債権を持つ債権者側は、価値の高いブランド資産を新たな枠組みに移すことで、自分たちの債権者としての立場が弱められると主張している。

    さらに、この資産移転が既存の債務契約に違反する可能性も指摘されている。

    報道によると、債権者はすでにアストンマーティン取締役会に正式な法的警告を送り、今回の取引を撤回させる、あるいはブランド資産のさらなる移転を阻止するための法的措置を検討しているという。

    そのため、5億5000万ポンドの資金調達を確保したことで問題が完全に解決したわけではなく、今後は債権者との対立が新たなリスクとなる可能性がある。

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

    アストンマーティンF1チームには影響なし
    今回のニュースで重要なのは、自動車メーカーのアストンマーティンとF1チームを区別することだ。

    アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラワン・チームは、自動車会社とは完全に独立して運営されている。そのため、自動車会社が実施する今回のブランド権移転および資金調達は、F1チームの所有権や運営体制には影響しない。

    一部の財務関連の議論ではF1との関係も取り上げられているが、今回の取引にF1チームそのものは含まれていない。

    アストンマーティンは今年、レーシング事業に関連するネーミングライツを活用した別のスキームでも追加資金を調達している。ただし、これはローレンス・ストロール会長に関連する事業体が関与した別個の取引であり、今回の自動車会社による資金調達とは異なる。

    したがって、アストンマーティンF1が現在進めているチーム強化や技術開発に、今回のブランド権移転が直接的な変更をもたらすものではない。

    名門ブランドを切り分けて時間を買ったアストンマーティン
    今回の5億5000万ポンドの資金調達は、アストンマーティンに財務面で貴重な時間を与える可能性がある。

    その一方で、自動車以外の分野とはいえ、アストンマーティンブランドの50.1%を外部企業へ移転するという決断は大きい。英国を代表する高級車ブランドの名称が、自動車とライフスタイル・ライセンス事業に事実上切り分けられる歴史的な転換点となる。

    F1チームには直接影響しないものの、ロードカーを手掛けるアストンマーティン本体が、ブランドという最重要資産の一部を使って財務基盤を立て直そうとしている事実は、同社が直面する厳しい経営環境を象徴している。

  • アストンマーティンF1 ニューウェイが組織再編を予告「あと少し調整する」

    アストンマーティンF1 ニューウェイが組織再編を予告「あと少し調整する」

    アストンマーティンF1は、チーム上層部の体制をめぐって今後も一部の調整を行う方針だ。マネージング・テクニカルパートナー兼チーム代表を務めるエイドリアン・ニューウェイは、現在の組織についてほぼ理想的な状態に近づいていると評価する一方、「あと少し調整する」と明かした。

    ローレンス・ストロールがオーナーとなって以降、アストンマーティンは技術部門、経営部門の双方で幾度となく組織を再編してきた。

    2026年にはニューウェイを中心として新たな体制づくりが進められており、ハンガリーGPで投入されたAMR26Bによってマシン面でも改善の兆しを見せている。

    ニューウェイ「スタッフには非常に満足している」
    ニューウェイは、アストンマーティンのシニアスタッフを中心とした現在の組織について、大幅な改革を必要とする段階は過ぎたとの認識を示している。

    「チームのシニアメンバーの組織については、おそらくあと少し調整することになるだろう。ただ、今いるスタッフには非常に満足している」

    アストンマーティンは過去5年間、チーム代表や技術責任者を含む上層部を繰り返し変更してきた。ニューウェイ自身も2025年3月にレッドブル・レーシングから加入し、同年11月にはアンディ・コーウェルに代わってチーム代表に就任。技術面だけでなく組織全体の再構築にも深く関わっている。

    ニューウェイは、現在重視しているのは単純な人員の入れ替えではなく、チーム内の文化や仕事の進め方を成熟させることだと説明した。

    「チーム文化については、大きく前進していると思う。メルボルンでマシン開発をいったん先送りし、統合や協力体制、文化、ツールの開発に集中することを決めた」

    「少しプレッシャーを取り除き、深呼吸をして、どう前に進むべきなのかを分析した。その結果、非常に良い進歩を遂げていると思う」

    マシン開発を急がず組織の「統合」を優先
    ニューウェイが言及した決断は、2026年シーズン序盤のアストンマーティンを理解するうえで重要なポイントとなる。

    チームは開幕直後から目先のアップデートを急ぐのではなく、ファクトリー内の各部門を結びつけ、開発ツールや作業プロセスを整えることに時間を割いた。ニューウェイは、こうした土台づくりを優先したことが現在の改善につながっていると考えている。

    その成果のひとつとして表れたのが、ハンガリーGPでデビューした大幅改良型AMR26Bだ。アストンマーティンはノーズやフロア、サイドポッド、リアサスペンションなど広範囲を変更し、シーズン序盤から続いていた苦戦から抜け出すための大きな一歩を踏み出した。

    つまり、ニューウェイが語る「調整」は、再び組織を全面的に作り直すという意味ではない。現在の基本構造を維持しながら、必要なポジションを整えて完成度を高める段階に入ったということだ。

    ジョナサン・ウィートリー加入が最大の変更へ
    今後予定されている調整のなかでも、最大の動きになるとみられているのがジョナサン・ウィートリーの加入だ。

    Motor.esによれば、ウィートリーは2026年末から2027年初頭にかけてアストンマーティンに加わり、ニューウェイに代わってチーム代表を務める計画だという。これが実現すれば、ニューウェイは日々のチーム運営から離れ、技術開発と組織全体のマネジメントにより集中できるようになる。

    ニューウェイとウィートリーはレッドブル・レーシング時代に長期間にわたって共に働いた経験を持つ。レッドブルがタイトルを争う組織へと成長していく過程を知る2人が再び同じチームで仕事をすることになれば、アストンマーティンにとって組織面でも重要な補強となる。

    一方、長年チームに在籍してきたトム・マッカローは2026年シーズン終了後に退団することが確認されている。マッカローはフォース・インディア、レーシング・ポイント時代を含めて13年間にわたり組織を支えてきた人物であり、その退団もニューウェイが進める新体制への移行を象徴する動きのひとつとなる。

    アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

    5年間で繰り返されたアストンマーティンの組織再編
    アストンマーティンが安定性を重視する背景には、これまでの頻繁な組織変更がある。

    2021年にはルカ・フルバットがエンジニアリングディレクターとして加入することが発表され、翌2022年にはオトマー・サフナウアーがチームを離れ、マイク・クラックがチーム代表に就任。同年にはレッドブルからダン・ファローズ、メルセデスからエリック・ブランディンを迎え、技術部門を大幅に強化した。

    2024年にはボブ・ベルがエグゼクティブ・テクニカルディレクターとして加入し、フェラーリからエンリコ・カルディレを獲得することも発表された。同年10月にはアンディ・コーウェルがグループCEOに就任した一方、ファローズは技術責任者を退いている。

    2025年1月にはコーウェルがチーム代表を兼任し、クラックはチーフ・トラックサイド・オフィサーへと役割を変更。3月にはニューウェイが加入し、11月にはニューウェイ自身がコーウェルからチーム代表職を引き継いだ。

    こうした度重なる変更は、それぞれチーム強化を目的としたものだったが、組織として継続的に機能する体制を築くという点では課題も残した。

    ニューウェイが目指すのは「変え続けない」組織
    ニューウェイはレッドブル・レーシングで約20年間を過ごし、同チームがF1屈指の強豪へ成長する過程を経験してきた。その成功を支えた要素のひとつが、主要メンバーを長期間維持した組織の安定性だった。

    アストンマーティンでも最終的に求められているのは、毎年のように責任者を入れ替えることではなく、適切な人材を適切なポジションに置いたうえで、その体制を長期間機能させることにある。

    ニューウェイが「あと少し調整する」と語ったことは、さらなる大規模再編を示唆するものというより、長く続いた組織変更を終わらせるための最終調整という意味合いが強い。

    ウィートリーの加入を含む新たな体制が固まれば、アストンマーティンはようやく組織の安定を優先するフェーズへ移ることになる。ニューウェイとストロールがその体制を維持し、結果が出るまで時間を与えられるかどうかが、今後のプロジェクトを左右する重要なポイントとなりそうだ。

  • フェルナンド・アロンソ アストンマーティンF1との契約延長に年俸73億円要求報道

    フェルナンド・アロンソ アストンマーティンF1との契約延長に年俸73億円要求報道

    フェルナンド・アロンソが、アストンマーティンF1との契約延長に向け、年間4000万ユーロ(約72億8000万円)の年俸を求めていると報じられた。現在の年俸とされる3000万ユーロ(約54億6000万円)から約33%の増額となる。

    アロンソの現在の契約は2026年末がひとつの区切りとなっているが、現役を続ける場合には2027年だけでなく2028年までアストンマーティンで走る可能性が浮上している。

    一方、本人が将来を決断するうえでは、金銭面以上にマシンの競争力が重要になるとみられている。

    年俸4000万ユーロを要求か
    F1のビジネス事情を扱う『Business Book GP』の著者マルク・リマッハー氏は、アロンソがアストンマーティンとの契約を2027年と2028年まで延長するため、年間4000万ユーロを求めているとの情報を伝えた。

    リマッハー氏によれば、アロンソの現在の年俸は年間3000万ユーロ。要求通りなら1000万ユーロの増額となり、約33%の昇給に相当する。

    アロンソは2023年にアルピーヌからアストンマーティンへ移籍。当時締結された契約を経て現在もチームに所属しており、45歳となった現在もF1でトップレベルのパフォーマンスを維持している。

    『MARCA』によれば、年間4000万ユーロという金額はトップドライバーの市場価値から大きく外れたものではない。アロンソが持つ知名度やマーケティング面での価値、スポンサーへの訴求力などを考えれば、アストンマーティンにとって十分に正当化できる金額だとの見方もある。

    2028年まで現役続行の可能性
    今回の情報が事実であれば、注目されるのは年俸だけではない。アロンソが新契約を結べば、2027年だけでなく2028年シーズンまでF1で現役を続ける可能性がある。

    アロンソは2026年ハンガリーGPで、レースを続ける意思があれば2027年もアストンマーティンに残ることのできる契約が存在することを明かしている。一方で、2026年限りでF1から引退する可能性も完全には否定していない。

    さらに、アロンソには古巣アルピーヌへの復帰説も浮上しており、2027年のドライバー市場における重要人物のひとりとなっている。

    ただし、『MARCA』が得た情報では、アロンソが今後の進退を決めるうえで、現時点で金銭面が最大の問題になっているわけではないという。

    フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム)

    最大の判断材料はマシンの競争力
    アロンソが重視しているのは、2027年に競争力のあるマシンで戦えるかどうかだとされる。

    年間24戦という長いF1シーズンを戦ううえで、勝利や表彰台を狙えない状況が続けば、現役を継続するモチベーションにも影響する。アロンソは自身が競争を楽しめる環境にあるかどうかを含め、複数の要素を検討しているという。

    アストンマーティンは2026年シーズン序盤に大きく苦戦したが、エイドリアン・ニューウェイの指揮のもとでAMR26の改良を進めている。ハンガリーGPでは大規模なアップデートを投入し、シーズン序盤と比較して改善の兆しを見せた。

    さらに、ワークスパートナーであるホンダもパワーユニットの改善を進めており、夏休み明けのオランダGPでは改良版パワーユニットの投入が予定されている。アロンソにとって、こうしたプロジェクトの進展も将来を判断する重要な材料になる。

    オランダGPで進退表明の可能性
    『MARCA』によると、アロンソは夏休み明けに自身の将来について結論を出す可能性があり、8月21~23日に開催されるオランダGPの週に進退を明らかにする可能性もあるという。ただし、本人は決断を急いでいるわけではないとされる。

    パドックでは、アロンソとアストンマーティンの間ですでに条件面の合意が成立しており、正式発表のタイミングを待っているだけとの見方さえある。ただし、発表されるまでは契約延長が決まったと断定することはできない。

    アストンマーティンのマネージングテクニカルパートナーを務めるニューウェイも、アロンソの将来について継続を期待する姿勢を示している。

    「彼が残ってくれることを強く期待している」

    アロンソが年間4000万ユーロの条件で契約を延長すれば、F1でも最高額クラスの報酬を受け取るドライバーとなる。

    しかし、45歳のアロンソにとって最終的な焦点は年俸そのものではなく、アストンマーティンとホンダのプロジェクトで再びF1のトップを争えるかどうかにある。契約延長が実現すれば、アロンソは2028年までアストンマーティンのF1プロジェクトを牽引することになる。