カテゴリー: FIA(国際自動車連盟)

  • BYDがモナコでFIA・F1首脳と会談 F1参戦構想の協議が進展

    BYDがモナコでFIA・F1首脳と会談 F1参戦構想の協議が進展

    BYDの副社長であるステラ・リーが2026年F1モナコGPの週末に、F1 CEOのステファノ・ドメニカリ、そしてFIA会長のモハメド・ビン・スライエムと相次いで会談していたことが明らかになった。

    世界有数の自動車メーカーであるBYDは、近年急速にグローバル市場で存在感を高めているが、今回の動きは同社のF1参入検討が単なる憶測ではなく、実際に最高レベルの協議段階へ進んでいることを示している。

    モナコで行われたトップレベル会談
    PlanetF1によると、ステラ・リーは金曜日にF1 CEOのステファノ・ドメニカリと会談し、その翌日にはモハメド・ビン・スライエムとも協議を行った。

    BYDは今年に入ってから中国メディアに対しF1への関心を認めていたが、今回のモナコでの一連の会談は、その検討がより具体的な段階へ進んでいることを示唆している。

    一方で、F1関係者の間では懐疑的な見方も残る。

    BYDは世界第3位規模の自動車メーカーではあるものの、モータースポーツ活動の実績がほとんどなく、チーム運営やレース活動のノウハウも持たない。そのため、一部では「ブランド宣伝のための調査活動に過ぎない」との声もある。

    しかし、BYDの急成長を考えれば、その可能性を軽視できないとの見方も少なくない。

    BYDは新チーム設立だけを考えているわけではない
    ステラ・リーは、BYDが新規チーム設立を最優先に考えているとは明言しなかった。

    「BYDの技術がFIAや他のチームにどのような貢献ができるのか、その機会を探っている」

    「そしてBYDとしては、この舞台でブランドを構築する必要もある」

    そう語り、複数の選択肢を検討していることを示唆した。

    F1パドックでは、既存チームの買収や出資というシナリオも取り沙汰されている。

    現時点で売却が公表されているチームは存在しないが、例えばアルピーヌの24%を保有するオトロ・キャピタルの持ち分取得などが候補として噂されている。

    V8回帰論とBYDの技術戦略
    興味深いのは、BYDが電動化技術の象徴的存在である一方、FIAが現在2031年以降のレギュレーションとしてV8エンジン回帰を模索している点だ。

    ビン・スライエムは、内燃機関を主軸とした新世代パワーユニットを推進しており、電動比率を大幅に縮小する案を支持している。

    一見するとBYDの企業戦略とは相反するように見える。

    しかしステラ・リーは、その点について柔軟な姿勢を示した。

    「たとえ内燃機関を使うとしても、最高レベルの材料工学が必要になる。その分野でBYDは非常に強い」

    BYDは2022年に純粋なガソリン車の生産を終了したが、内燃機関技術そのものを完全に否定しているわけではないことを示した格好だ。

    クリスチャン・ホーナーとの接触も判明
    今回の動きでさらに注目を集めているのが、ステラ・リーとクリスチャン・ホーナーの接触だ。

    PlanetF1は先日、リーがカンヌでホーナーと会談したことを報じている。

    ホーナーはレッドブル・レーシングで長年にわたり成功を収めた実績を持ち、将来的にF1へ復帰する場合は株式保有を含むオーナーシップを求めているとされる。

    BYDにとっては、F1経験を持たない最大の弱点を補える理想的なパートナー候補とも言える。

    リーもホーナーについて問われると笑顔を見せ、

    「彼は素晴らしい人物だ。良い友人でもある。私たちは彼を高く評価している」

    と語った。

    もっとも、BYDの参入が数年先になる可能性が高いことを考えると、ホーナーがその時期まで待つかどうかは不透明だ。

    BYDがF1にもたらすインパクト
    今回の会談で重要なのは、BYDが単なるスポンサー案件ではなく、自動車メーカーとしてF1参入の可能性を真剣に検討していることが見えてきた点だ。

    現在のF1にはメルセデス、フェラーリ、ホンダ、フォード、アウディ、GMといった世界的メーカーが集結しているが、中国メーカーはまだ存在しない。

    もしBYDが参入を実現すれば、F1にとって中国市場へのさらなる拡大を象徴する出来事になる。

    一方で、新規参入にはコンコルド協定に基づく厳格な審査が必要となる。

    FIAとFOMは現在、新たな参入希望者向けのEOI(関心表明)プロセスを共同で管理する体制へ移行しているが、関係者によれば新たな募集開始は差し迫った状況ではない。

    それでも、モナコで行われた一連の会談は、BYDがF1の未来において無視できない存在になりつつあることを示している。今後数年間の動向次第では、ホーナー率いるBYD F1チームという構想が現実味を帯びてくる可能性もある。

  • F1:FIA内部通知でレッドブルがベンチマーク認定か ADUO判定に波紋

    F1:FIA内部通知でレッドブルがベンチマーク認定か ADUO判定に波紋

    複数媒体が報じたFIA内部通知によれば、レッドブル・パワートレインズが2026年F1のADUO(Additional Development and Upgrade Opportunities/追加開発・アップグレード機会)制度において「ベンチマーク(基準エンジン)」と評価されたことが明らかになった。

    この結果はモナコGP週末に各パワーユニットメーカーへ通知されたとされ、多くの関係者がメルセデスを基準エンジンと予想していたことから、パドックでは大きな驚きをもって受け止められている。

    ただし、FIAは現時点でこの評価結果を一般向けに公式発表しておらず、評価に使用した具体的な数値や各メーカー間の性能差も公表していない。今回の内容は、メーカーへ送付された通知文書の存在を複数の専門メディアが報じたものとなる。

    レッドブルがベンチマーク メルセデスはアップグレード対象

    報道によると、FIAがメーカーへ通知した分類は以下の通りだ。

    ■ レッドブル:ベンチマーク

    ■ メルセデス:アップグレード権1回

    ■ フェラーリ:アップグレード権2回

    ■ ホンダ:アップグレード権2回

    ■ アウディ:アップグレード権2回

    ADUO制度は、2026年から導入された新パワーユニット規則の中で設けられた“追いつき支援制度”だ。

    基準エンジンから2%以上遅れていると判断されたメーカーには追加の開発機会が与えられ、4%以上遅れている場合はさらに多くの開発権が認められる。

    報道では、メルセデスが2%以上遅れているカテゴリーに分類され、2026年と2027年にそれぞれ1回のアップグレード権を獲得したとされている。

    さらにフェラーリ、ホンダ、アウディは4%以上遅れているカテゴリーに入り、2026年と2027年にそれぞれ2回ずつのアップグレード権を得たと伝えられている。

    また、カテゴリーに応じて追加の開発予算やベンチテスト時間も与えられる仕組みとなっている。

    “最強PU認定”とは意味が異なる

    今回の判定について重要なのは、「レッドブルのパワーユニット全体がF1最強と認定された」という意味ではないことだ。

    ADUOの評価は、主に内燃エンジン(ICE)の性能に基づいて行われているとされる。

    そのため、

    ■ バッテリー性能

    ■ エネルギー回生システム

    ■ 電力デプロイメント

    ■ MGU-Kの運用効率

    といった、現行の2026年型パワーユニットにおいてラップタイムへ大きく影響する要素は評価対象に含まれていない。

    つまり今回の結果は、FIAの評価基準においてレッドブルの内燃エンジンが最も優れていると判断されたことを意味するものであり、パワーユニット全体の競争力ランキングとは必ずしも一致しない。

    実際、2026年シーズン開幕以降のパドックでは、メルセデスが最も競争力の高いパワーユニットを持っているとの見方が広く共有されていた。

    レッドブル・レーシングのチーム代表ローラン・メキースもモナコGP前の時点で、メルセデスが依然として先行しているとの認識を示していた。

    FIAが詳細を非公表とする理由

    報道によると、FIAは各メーカーの具体的な数値や順位を公表していない。

    その理由のひとつとして、メーカーが評価基準を逆手に取り、特定分野で意図的に性能を抑えることで追加開発権を獲得しようとする事態を避ける狙いがあるとみられている。

    各チームに通知された内容も、正確な数値ではなくカテゴリー分けのみだったとされる。

    そのためフェラーリとホンダが同じ区分に分類されていても、両者の性能差が同じであることを意味するわけではない。

    制度見直し論が浮上する可能性

    今回の判定結果を受けて、ADUO制度そのものへの議論が活発化する可能性もある。

    現在の評価方式は内燃エンジン出力を重視しているため、実際の競争力を十分に反映していないとの指摘は以前から存在していた。

    The Raceは、この結果によって本来は後方メーカーを支援するための制度が、結果としてメルセデスにも追加開発機会を与えることになり、制度の趣旨との整合性を巡る議論が強まる可能性があると報じている。

    また、FIAのニコラス・トンバジスは以前、内燃エンジン出力以外の要素も含めた、より複雑な評価方法を提案したことを明かしている。

    モナコGPで明らかになった今回のADUO判定は、単なる技術評価を超え、今後のパワーユニット開発競争や2027年以降のレギュレーション議論にも影響を及ぼす可能性がありそうだ。

  • ハミルトンがADUO評価を漏らす? レッドブルF1のPUが最強判定か

    ハミルトンがADUO評価を漏らす? レッドブルF1のPUが最強判定か

    ルイス・ハミルトンが2026年F1モナコGP後のインタビューで、FIAがまだ正式発表していないパワーユニット評価結果を明かした可能性がある。

    ハミルトンによれば、2026年から導入されたADUO(Additional Development and Upgrade Opportunities/追加開発機会制度)の初回査定で、レッドブル・フォードのパワーユニットが最も高性能と評価され、メルセデスが2番手、フェラーリはさらに後方と判断されたという。

    ハミルトンが明かした未公表の評価結果
    モナコGPで2位に入ったハミルトンは、レース後のインタビューでパワーユニット開発について語る中で、各メーカーの評価状況に言及した。

    「昨日か今日だったと思うけど、レッドブルが最もパワフルなエンジンを持っていて、メルセデスが2番手、その後ろに僕たちがいるというニュースが出た」

    「だから僕たちは開発トークンを受け取って、その差を縮めるための開発ができるようになった」

    「ただ、それは8か月から10か月規模のプロジェクトだ。来週すぐに解決できるようなものではない。できる限り全力で差を縮めていくつもりだ」

    FIAはまだ正式な評価結果を公表していないため、この発言は本来公になっていない情報をハミルトンが事実上明かしてしまった形とも受け取れる。

    パドックの予想を覆したレッドブル首位説
    今回の情報が衝撃的なのは、多くの関係者が2026年新レギュレーション下でもメルセデスが最強パワーユニットを持つと予想していたためだ。

    レッドブル・パワートレインズとフォードによる新プロジェクトは、開幕前には未知数との見方も少なくなかった。

    しかしハミルトンの発言が事実であれば、FIAの評価ではレッドブル・フォードが全メーカーの基準となる性能を示していることになる。

    さらに報道によれば、レッドブルはトップ評価を受けたため追加開発権を与えられない見通しだ。

    フェラーリやホンダには追い上げの機会
    一方で、評価が基準を下回ったメーカーには開発支援が認められる。

    メルセデスはレッドブルから2%以上遅れていると判断され、開発トークンに加えてコストキャップの追加枠やベンチテスト時間の増加が認められるとされている。

    さらにフェラーリ、アウディ、ホンダについては4%以上の差があると評価され、2回分のアップグレード・ホモロゲーションを受けられる見込みだという。

    ホンダにとっては、アストンマーティンとのワークス体制初年度における挽回の機会となる可能性がある。

    ADUOは性能調整ではない
    もっとも、FIAはADUOについて「性能調整制度ではない」と繰り返し説明している。

    FIAシングルシーター部門責任者のニコラス・トンバジスは以前、ADUOについて次のように語っていた。

    「ADUOはバランス・オブ・パフォーマンスの仕組みではない」

    「メーカーが突然大きな燃料流量を与えられたり、重量面で優遇されたりするものではない」

    「対象メーカーに追加の開発余地を与える制度であり、勝つためには依然として最高のエンジンを作らなければならない」

    つまり、たとえ開発支援を受けられたとしても、それだけで勢力図が一変するわけではない。

    近く明らかになるFIAの正式判断
    FIAはカナダGP終了後14日以内に評価結果を公表することになっている。

    正式発表前の段階で飛び出したハミルトンの発言は、2026年F1パワーユニット勢力図の一端を示すものとして大きな注目を集めている。

    そして、その内容が事実であれば、2026年シーズン序盤最大のサプライズは、レッドブル・フォードがパドックの予想を覆して最強パワーユニットを手にしていたことなのかもしれない。

  • FIA会長スライエム F1のV8エンジン復活を再表明「2030年実現を目指す」

    FIA会長スライエム F1のV8エンジン復活を再表明「2030年実現を目指す」

    モハメド・ビン・スライエム FIA会長が、F1の将来に向けた自身のビジョンを改めて示した。FIA会長は、遅くとも2031年までに自然吸気V8エンジンをF1へ復活させたいとの考えを再度表明した。

    F1は現在の2026年レギュレーション時代を迎えたばかりだが、すでに2030年以降の次世代パワーユニットに関する議論が始まりつつある。ビン・スライエムは、現在の複雑なターボハイブリッド時代から脱却し、より軽量で安価、そしてファンにとって魅力的なパワーユニットへの回帰を訴えている。

    V8復活を目指すFIA会長の構想
    モハメド・ビン・スライエムは自身のSNSで次のように述べた。

    「私はV8エンジンをF1に復活させることに全力で取り組んでいる」

    「理想的には2030年、遅くとも2031年には次のFIAレギュレーションサイクルの一環として実現したい」

    「V8はより軽く、よりシンプルで、コスト効率にも優れている。また持続可能燃料を使用することで、環境目標とも両立できる」

    「そして何より、世界中のファンがF1と結びつけている独特で力強いサウンドを取り戻すことができる」

    ビン・スライエムの主張は一貫している。コスト削減、技術の簡素化、そしてファン体験の向上という3つの要素を重視しており、現在の高度に複雑化したハイブリッド時代とは対照的な方向性を示している。

    次世代パワーユニットを巡る政治戦が始動
    現行のパワーユニット規則は2030年まで継続される見込みだが、2027年には内燃機関と電動出力の配分見直しが検討されている。

    その一方で、2030年以降の次世代エンジンについては、すでに舞台裏でメーカー間の駆け引きが始まっている。

    ハイブリッド技術への投資を進めてきたメーカーの中にも、将来的な別コンセプトへの移行に前向きな姿勢を示す企業が現れ始めている。

    アウディは柔軟姿勢を示す
    その代表例がアウディだ。

    アウディF1プロジェクトを率いるマッティア・スピーニは、将来の議論に積極的に参加する考えを明らかにした。

    「アウディはこの議論に協力する。アウディはF1の一員であり、長期的にF1に参戦し続ける意思がある」

    「我々は議論の一部となるだけでなく、積極的かつ前向きな役割を果たしたい。将来に向けた適切なレギュレーションを定義するためだ」

    さらにスピーニは、エンジン形式そのものよりもF1が技術の頂点であり続けることが重要だと説明した。

    「F1は技術の最高峰であり続ける。それはF1のDNAの一部だからだ」

    「V6かV8かという形式そのものは、それほど本質的な問題ではないと思う」

    「もちろんアウディにとって高効率エンジンは重要だ。しかし一方で、FIA会長の提案の重要な要素のひとつはパワーユニットのコスト削減だ」

    V型8気筒 F1 国際自動車連盟

    2030年代のF1を左右する大きなテーマ
    現時点でF1はハイブリッド路線を維持しており、2026年に導入された新世代パワーユニットも今後数年間は使用される。

    しかし、モハメド・ビン・スライエムがV8復活を強く訴え続ける中で、メーカー各社も次のレギュレーションサイクルに向けた立場固めを始めている。

    2027年の出力配分見直しを巡る議論に続き、2030年以降のF1が「高効率ハイブリッド路線」を継続するのか、それとも「持続可能燃料を使用する自然吸気V8路線」へ舵を切るのか――。

    F1のエンジン哲学を巡る次の政治戦は、次の規則書が作られるはるか前から静かに動き始めている。

  • 2027年F1パワーユニット規則に妥協案浮上 出力増は13%ではなく5%か

    2027年F1パワーユニット規則に妥協案浮上 出力増は13%ではなく5%か

    2027年F1パワーユニット規則を巡る議論が、新たな局面を迎えている。

    FIA(国際自動車連盟)は2026年から導入された内燃エンジン(ICE)と電動システムの50対50という出力配分を見直し、2027年から60対40へ変更する案を推進している。しかし、この計画には大きな反発があり、現在は「13%増」ではなく「5%増」に抑える妥協案が検討されている。

    なぜFIAは出力配分変更を目指しているのか
    2026年の新レギュレーションでは、内燃エンジンと電動システムがほぼ同等の出力を担う設計となった。

    しかし一部サーキットでは、バッテリーの充電不足による「クリッピング」や「スーパークリッピング」が問題視されている。FIAはこれを解消するため、燃料流量を増やして内燃エンジン側の出力を高め、約70馬力の上積みを実現したい考えだ。

    当初、この方向性には6社すべてのパワーユニットメーカーが原則的に同意していた。

    ところが具体的な規則案が示されると状況は一変した。

    メーカー間で意見が真っ二つに分裂
    現在の勢力図は大きく二つに分かれている。

    ■ 賛成:メルセデス、レッドブル・パワートレインズ

    ■ 反対:アウディ、ホンダ、フェラーリ、キャデラック

    記事によると、PUAC(パワーユニット諮問委員会)で必要な「スーパー・マジョリティ(特別多数)」が得られないため、F1コミッションやFIA世界モータースポーツ評議会へ進めることができない状況となっている。

    反対派が懸念する技術的な問題
    反対派の主張は単なる政治的駆け引きではない。

    出力を約70馬力増やす場合、現在設計されているパワーユニットでは対応が難しくなる。

    まずV6エンジンそのものを再設計する必要が生じる。

    さらに現在のギアボックスも限界近くまで軽量化・最適化されているため、トランスミッションの再設計が必要になる可能性が高い。

    問題はそれだけではない。

    燃料流量が増えれば現在の燃料タンク容量では不足する恐れがあり、シャシー設計そのものにも手を加えなければならなくなる。

    つまり影響はエンジン単体ではなく、マシン全体に及ぶというわけだ。

    時間不足も大きな障害
    技術面以上に深刻なのがスケジュールである。

    現在はすでに2026年シーズンの中盤に差し掛かっており、多くのメーカーはADUO(性能差是正のためのアップデート制度)への対応にリソースを割いている。

    エンジン開発は半年程度で完了できるものではない。

    そのためホンダやアウディなどは、2027年向けの大規模改修とADUO対応を同時進行させることに強い懸念を示している。

    メルセデスとレッドブルが有利になるとの見方
    反対派には別の警戒感もある。

    現状で競争力の高いパワーユニットを持つメルセデスとレッドブル・パワートレインズは、ADUOによる大幅な性能改善を必要としていない。

    そのため2027年用パワーユニット開発へより多くの人員や資金を投入できる可能性がある。

    一方で他メーカーは性能改善と新開発を並行して進めなければならず、開発競争で再び差が広がるリスクがある。

    ADUOの目的が勢力均衡の実現にあることを考えると、この懸念は無視できない。

    浮上した「5%増」の妥協案
    こうした対立を受け、現在は中間案が検討されている。

    それが出力増加幅を13%ではなく5%程度に抑える案だ。

    この案であればエンジン、ギアボックス、燃料タンク、シャシーの全面的な再設計を回避できる可能性がある。

    そして2028年に正式なホモロゲーションを実施する際に、当初予定していた13%増へ段階的に移行するという考え方である。

    背景にあるV8移行構想
    今回の議論の裏側では、将来的な自然吸気V8エンジン復活構想も影響している。

    現在の計画では2030年までパワーユニットを凍結する方向だが、一部では2.6リッター自然吸気V8エンジンに小型KERSを組み合わせた新世代パワーユニットを2029年にも前倒し導入する可能性が取り沙汰されている。

    そのためメーカー側には、短期間しか使用しないかもしれない2027年仕様のために大規模投資を行うことへの抵抗感もある。

    モナコが重要な交渉の場に
    現時点では最終決定には至っていない。

    ただし各メーカーによる妥協点探しは続いており、モナコで行われる協議が重要な転換点になる可能性がある。

    現在はメルセデスとレッドブル・パワートレインズが当初案を支持し、アウディとホンダが妥協案を推進。フェラーリは依然として反対姿勢を維持しているが、最終的には妥協案側へ加わるとの見方もある。

    最大の敵は時間だ。

    交渉が長引けば長引くほど、2027年に向けた設計変更の余地は失われていく。今回の議論は単なる出力配分の問題ではなく、F1の次世代パワーユニット時代の勢力図そのものを左右する重要な分岐点となりそうだ。

  • F1コミッションが2027年F1レギュレーション修正を承認 TPC規則も見直し

    F1コミッションが2027年F1レギュレーション修正を承認 TPC規則も見直し

    F1コミッションは、2026年2回目の会合を開き、2027年F1シーズンに向けた複数の変更で合意した。会合にはFOM会長兼CEOのステファノ・ドメニカリも出席した。

    2026年F1レギュレーションの大幅変更を受け、F1コミッションの会合は安全性とレースの質を高めることを目的として行われている。議論の詳細は公表されていないが、FIA(国際自動車連盟)は主要な論点をまとめたメディア向け概要を発表した。

    今回の発表では、2027年F1シーズンに向けたさまざまな変更が確認された。2027年F1テストの日数を3日間から4日間へ延長する大きな変更から、各コンポーネントに関する小規模な修正まで幅広い内容が含まれている。

    2027年F1テストを1日延長
    2027年F1シーズン前のプレシーズンテストは、これまでの3日間から4日間へ拡大される。これは各チームにとって重要な変更となる。

    テストは3月に中東で開幕するシーズンを前に、バーレーンで実施される可能性が高い。

    現在はパワーユニットにおける内燃機関と電動出力の比率を50対50から60対40へ変更する議論も続いており、この案が承認された場合、追加される1日間のテストは各チームにとって非常に重要な準備期間となる。

    TPC規則も見直し
    TPC(Testing of Previous Car/旧型車テスト)に関する規則変更も承認された。

    新たな規則では、翌年のF1世界選手権で開催されるサーキットにおけるテストに制限が設けられる。

    これにより、各チームはテストプログラムの計画を見直す必要があり、旧型車を活用した走行機会の運用にも影響を与える可能性がある。

    空力とボディワークにも小規模修正
    空力およびボディワーク関連のコンポーネントについても小規模な変更が合意された。

    ただしFIAは、これらの変更内容について詳細を公表していない。

    2026年F1レギュレーション導入後も競技面や安全面の最適化は継続されており、今回の修正もその一環とみられる。

    今回F1コミッションで合意されたすべての規則変更は、今後FIA世界モータースポーツ評議会(WMSC)の承認を経て正式決定される。

  • F2とF3が新ロゴ発表 F1への育成ピラミッドを明確化

    F2とF3が新ロゴ発表 F1への育成ピラミッドを明確化

    FIA F2とFIA F3は、F1への育成カテゴリーとしての位置づけをより明確にするため、新たなチャンピオンシップロゴを発表した。

    新ロゴは単色デザインに簡素化され、よりクリーンで現代的な印象を打ち出すものとなる。F2は従来のブルーを継続し、F3はこれまでのグレーとレッドに代わって、新たにオレンジを採用した。

    F3は新たにオレンジを採用
    F3の新しいオレンジは、シリーズが持つ「ダイナミックでエネルギッシュ、そして活気ある性質」を反映するために選ばれた。若いドライバーたちが競い合う選手権の精神を表すカラーとして位置づけられている。

    FIA会長のモハメド・ビン・スライエムは、F2とF3がF1と世界のモータースポーツの将来を担う人材を育てる重要なカテゴリーだと強調した。

    「FIA F2とFIA F3は、我々のグローバルなシングルシーター育成経路における基本的な柱であり、F1と世界のモータースポーツの未来を形作る才能を育てている」とモハメド・ビン・スライエムはコメント。

    「これらの新しいビジュアルアイデンティティは、両選手権を現代化すると同時に、FIAピラミッド内での重要な位置づけと、我々のスポーツの頂点とのつながりを強化するものだ」

    F1への道筋を視覚的に示す狙い
    F1会長兼CEOのステファノ・ドメニカリも、F2とF3がF1へ到達するための訓練と枠組みを提供する重要な存在だと語った。

    「F2とF3は我々のスポーツにとって極めて重要な部分であり、ドライバーがF1に到達するための訓練と枠組みを提供している」

    「ファンに対して、このピラミッドがどのように機能しているのかを明確にすることは重要だ。F1を補完するクリーンで現代的なビジュアルアイデンティティを持つことは、その実現に役立つ」

    F2は2017年にGP2から名称変更され、現在の形で運営されている。FIA F3はその2年後、2019年にスタートした。

    F2とF3のCEOを務めるブルーノ・ミシェルは、今回の新ロゴがF1とFIAとの密接な協力のもとで開発されたものだと説明した。

    「F1とFIAとの緊密な協力のもとで開発された、新しいF2とF3のロゴを発表できることをうれしく思う」とブルーノ・ミシェルはコメント。

    「我々の狙いは、エリート・モータースポーツ・ピラミッドを通じてF1へ向かう道のりを、より視覚的に伝えることだった。ブルーは常にF2のカラーであり、ファンにもよく認識されている。そしてF3については、新しく鮮やかでダイナミックなオレンジをロゴに取り入れる機会とした。ファンにも気に入ってもらえると考えている」

    新しいブランディングは今後、デジタルチャンネル、放送グラフィック、サーキットの看板、プロモーション素材などに順次展開される。

    国際自動車連盟 フォーミュラ2 フォーミュラ3

  • メルセデスF1の“圧縮比トリック”が違法化 FIA新規則で抜け穴を封鎖

    メルセデスF1の“圧縮比トリック”が違法化 FIA新規則で抜け穴を封鎖

    FIA(国際自動車連盟)は技術レギュレーション上の抜け穴を正式に封じ、メルセデスF1のパワーユニットに関する“圧縮比トリック”はもはや合法ではなくなった。新たな規則は6月1日から施行され、モナコGPがその最初の適用レースとなる。

    プレシーズン中、メルセデスHPPは新型エンジンの圧縮比を18:1まで高める方法を見つけたと報じられていた。

    レギュレーション上の上限は16:1だが、当初の文言では圧縮比の測定条件がピットレーン内の外気温時に限定されていたため、走行中にはより高い圧縮比で作動させる余地が生まれていた。

    測定条件の変更で抜け穴を封鎖
    ライバルのパワーユニットメーカーから反発が起きたことを受け、FIAは6月1日からレギュレーションを変更することに合意した。これにより、圧縮比はエンジン周辺温度が130度の状態で測定されることになった。

    メルセデスHPPは、熱で膨張する金属をエンジン設計に用いることで、18:1の圧縮比を実現できる条件を作り出していたと考えられている。

    この抜け穴の封鎖は当初、ハンガリーGP後の8月1日に予定されていた。しかし、その時期は前倒しされ、ヨーロッパラウンド開始に合わせて施行されることになり、モンテカルロでの一戦から適用される。

    メルセデス優位を崩す決定打になるのか
    メルセデスは2026年にここまで開催された5戦すべてで優勝しており、コンストラクターズ選手権ではフェラーリに74ポイント差をつけている。

    ただし、フェラーリ代表のフレデリック・バスールは、圧縮比の抜け穴が閉じられること以上に、ADUOによる開発機会の方が各陣営のメルセデス追撃を早める要素になると見ている。

    ADUOは、パワーユニットメーカーに性能向上アップグレードを認める制度で、トップユニットから2%以内と判断されたメーカーにはシーズン1回、2%以上遅れているメーカーには2回のアップグレードが認められる。

    【関連】
    ・メルセデスF1の“圧縮比トリック”はアウディとポルシェの要求が生んだ?

  • エイドリアン・ニューウェイの“ホンダF1救済策”は成功? FIAルール変更の舞台裏

    エイドリアン・ニューウェイの“ホンダF1救済策”は成功? FIAルール変更の舞台裏

    アストンマーティンのエイドリアン・ニューウェイが、ホンダの2026年F1パワーユニット開発を巡る状況に大きな影響を与えた可能性が浮上している。

    F1では2026年から新たなPUレギュレーションが導入されたが、ホンダは開幕前から深刻な課題を抱えていると伝えられていた。そんな中、FIAは5月に開発支援制度「ADUO(Additional Development and Upgrade Opportunities)」を拡充し、新たな救済枠を設けた。

    ホンダ向けとも言われる新たな救済措置
    ADUOは2026年に導入された制度で、メーカー間の性能差が長期間固定化されることを防ぐことが目的だ。

    従来は基準エンジンから2%以上遅れているメーカー向けの支援枠と、4%以上遅れているメーカー向けのより大きな支援枠の2段階が用意されていた。

    しかしFIAは今月、この制度に新たなカテゴリーを追加。基準性能から10%以上遅れているメーカーに対して、さらに大きな開発支援を与えることを決定した。

    パドックでは、この措置は事実上ホンダを念頭に置いたものだとみられている。

    メルセデスが2026年型PUのベンチマークと考えられている一方、プレシーズン段階ではホンダが約80馬力以上遅れているとの推定もあった。

    今回の制度変更により、ホンダは開発予算上限が数百万ドル規模で引き上げられ、性能向上に向けた追加開発が可能になった。

    ニューウェイ発言がパドックで波紋
    こうした流れの背景として注目されているのが、ニューウェイが開幕戦オーストラリアGP前に行った異例の発言だ。

    ニューウェイは当時、アストンマーティンとホンダが直面している問題について非常に率直に語った。

    特にバッテリー不足については「恐ろしい」と表現し、さらにPU由来の振動が深刻で、ドライバーが長時間走行すると神経への影響が懸念されるレベルだと明かした。

    通常、こうした技術的な問題はチーム内部に留められることが多いため、パドック関係者の間では大きな話題となった。

    アストンマーティン内部でも「話し過ぎではないか」と受け止める声があったとされる。

    意図的な“危機アピール”だったのか
    一方でパドックでは別の見方も存在する。

    ニューウェイは当初のADUO制度だけではホンダの立て直しには不十分だと考えており、FIAや関係者に追加支援の必要性を認識させるため、あえて問題の深刻さを強調したのではないかという見方だ。

    実際、ニューウェイはメディア露出が極めて少ない人物として知られる。そのニューウェイが自ら詳細な問題点を語ったことで、ホンダの置かれた厳しい状況は一気にF1界全体へ共有された。

    結果としてFIAは新たな救済カテゴリーを創設し、ホンダは追加予算を獲得した。

    もちろんニューウェイの発言と制度変更の因果関係が公式に認められているわけではない。しかしパドックでは「ニューウェイが意図的に流れを作ったのではないか」という見方が広がっている。

    ホンダの逆襲はここから始まるか
    興味深いのは、ホンダがこれまで性能向上よりも信頼性対策を優先してきたとみられている点だ。

    今回の追加支援によって開発余力が生まれれば、本格的なパフォーマンス改善に着手できる可能性がある。

    かつてマクラーレンとの苦闘を経て、レッドブルとの黄金期を築いたホンダは、一度大きく出遅れた状況から巻き返した前例を持つ。

    2026年の苦戦が一時的なものに終わるのか。それともアストンマーティンとの新プロジェクトが長期的な苦戦に陥るのか。ニューウェイの“マスタープラン”が真価を発揮するかどうかは、今後数カ月の開発成果によって明らかになりそうだ。

    Source: F1 OVERSTEER

  • FIAがF1新LED表示をテスト MGU-Kの状態を青・紫・黄で可視化

    FIAがF1新LED表示をテスト MGU-Kの状態を青・紫・黄で可視化

    2026年F1カナダGPのフリー走行で、FIAは新たなLEDリアライト表示システムの試験運用を開始した。2026年レギュレーションで大幅に強化されたMGU-K(運動エネルギー回生システム)の作動状況を、後続車のドライバーがより直感的に把握できるようにすることが目的だ。

    これまでの点滅回数による表示は、コックピット内の激しい振動の中では判別が難しいとの指摘がドライバーから寄せられていた。

    FIA(国際自動車連盟)は安全性向上の観点から、色によってMGU-Kの状態を示す新システムを導入し、カナダGPで実戦テストを行った。

    2026年F1で重要性を増したリアLEDライト
    2026年のF1マシンでは、電動出力が大幅に増加した新世代パワーユニットが導入された。これに伴い、リアLEDライトの役割も従来の「エネルギー回生中の表示」から大きく拡張されている。

    今年からリアライトは、ハイブリッドシステムの作動状況を外部へ伝える情報ツールとして機能しており、ルーキードライバーの走行や特別なテストプログラムなども識別できるようになった。

    特にMGU-Kの出力状態は、マシンの速度変化に直結するため、後続車へ正確に伝えることが安全面で重要視されている。

    従来は点滅回数で3つの状態を表示
    これまでFIAはLEDライトの点滅パターンによってMGU-Kの状態を示していた。

    1回点滅はMGU-Kが最大出力350kWを発生していない状態を意味する。この段階では電力供給は継続しているものの、マシンはデレーティング領域に入り始め、加速性能が徐々に低下する可能性がある。

    2回連続点滅はMGU-Kが完全に電力供給を停止した状態を示し、マシンは内燃エンジンのみで走行している。

    高速点滅は「スーパークリッピング」と呼ばれる回生モードを表す。この状態ではMGU-Kが発電側に回り、バッテリーへエネルギーを回収している。

    しかし、こうした点滅の違いは走行中に判別しづらく、ドライバーから改善要望が出されていた。

    青・紫・黄の3色で状態を識別
    カナダGPで試験導入された新システムでは、点滅回数ではなく色そのものでMGU-Kの状態を表示する。

    青色はMGU-Kが最大出力350kWを発揮していない状態を示す。従来の1回点滅に相当する。

    紫色はMGU-Kがエネルギー供給を停止している状態で、マシンは内燃エンジンのみで走行していることを意味する。従来の2回点滅に相当する。

    黄色はスーパークリッピングによる充電状態を示す。MGU-Kが発電側として作動し、バッテリーを充電している状況だ。

    色による表示に変更することで、後続車のドライバーは一目でライバル車のエネルギー状態を把握できるようになる。

    安全性向上が最大の狙い
    FIAがこの変更を進める最大の理由は安全性の向上にある。

    MGU-Kが充電モードへ移行した際には、特にスーパークリッピング中にマシンの速度が低下するケースがある。後続車がその変化を事前に認識できなければ、接近時のリスクが高まる可能性がある。

    新しい色分けシステムによってドライバーは前方車両の状況を瞬時に把握できるようになり、不意の速度差による危険を軽減できると期待されている。

    カナダGPのフリー走行ではデータ収集とドライバーからのフィードバックが行われており、FIAは評価結果を踏まえたうえで正式導入を判断する見込みだ。